(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020772
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】外科用縫合糸および外科用縫合針
(51)【国際特許分類】
A61L 17/14 20060101AFI20240207BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20240207BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20240207BHJP
A61B 17/06 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61L17/14 100
A61L17/12
A61L17/10
A61B17/06 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123206
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】591075467
【氏名又は名称】冨士色素株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311007545
【氏名又は名称】GSアライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】森 良平
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC05
4C081BA16
4C081BB03
4C081CA052
4C081CA162
4C081CD022
4C081CD032
4C081CF162
4C081DA02
4C081DC01
4C160BB18
(57)【要約】
【課題】紫外線により効率よく発光して肉眼で容易に識別でき、励起発光部等が脱落した場合でも、人体への影響が少ない、外科用縫合糸および外科用縫合針を提供する。
【解決手段】外科用縫合糸は、縫合糸と、前記縫合糸を被覆するコート層とを備え、前記コート層がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する。また、外科用縫合針は、縫合針と、前記縫合針の本体部1の溝又は前記本体部1より縫合糸6側に設けられた励起発光部8とを備え、前記励起発光部8がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸と、前記縫合糸を被覆するコート層とを備え、前記コート層がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する、外科用縫合糸。
【請求項2】
縫合針と、前記縫合針の本体部の溝又は前記本体部より縫合糸側に設けられた励起発光部とを備え、前記励起発光部がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する、外科用縫合針。
【請求項3】
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトン、デンプン系生分解性樹脂、セルロース系生分解性樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項4】
前記生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部のグラフェン量子ドット、又は0.001~0.5質量部の炭素量子ドットを含有する、請求項1又は3に記載の外科用縫合糸。
【請求項5】
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトン、デンプン系生分解性樹脂、セルロース系生分解性樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載の外科用縫合針。
【請求項6】
前記生分解性樹脂が、更にセルロースナノファイバーとセルロース分解酵素とを含むものである、請求項5に記載の外科用縫合針。
【請求項7】
前記生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部のグラフェン量子ドット、又は0.001~0.5質量部の炭素量子ドットを含有する、請求項2に記載の外科用縫合針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光剤を含有する生分解性樹脂を一部に有する外科用縫合糸および外科用縫合針に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用縫合糸は古くから用いられており、近年では手術後の抜糸が不要である生体内分解吸収性の縫合糸が多用されるようになってきている。かかる吸収性縫合糸としては、ポリグリコリド(ポリグリコール酸)等を原料とした縫合糸が市販されている。
【0003】
外科用縫合糸としては、単一の繊維のみからなるモノフィラメント縫合糸や、複数の繊維からなるマルチフィラメント縫合糸が知られている。また、縫合糸の表面にコーティングを施して作業性を向上させることが提案されている。
【0004】
一方、外科用縫合針は、鋼材金属からなるものであり、外科用縫合針等が体内に遺残されることがないようにするため、術野内に医療品が存在するか否かを、医療品の使用状況として確認したいという要請がある。特に、外科用縫合糸と外科用縫合針は、非常に細くまたは小さいために、術中に非常に見にくく見失い易いため、手術のストレス・時間延長になるといった障害が発生している。そして、出血により糸及び針が紛れてしまうと更に困難な状況になっている。
【0005】
このような問題を解消するために、例えば特許文献1には、外科用縫合針等の医療品であって、励起光が照射されることによって近赤外蛍光を発する発光剤を表面に含む発光可能な構成部材を少なくとも1つ備え、前記構成部材における一部が破損にともなって分離片として前記構成部材から分離された場合にも前記発光剤が前記分離片の表面にも含まれてなる、近赤外蛍光を発する医療品が提案されている。また、この文献には、近赤外蛍光を発する発光剤をポリグリコール酸等の生分解性樹脂に混練した縫合糸が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2013/180127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、発光剤として有機系の蛍光体を用いる場合、一般的に、発光効率が高くないため、樹脂中の蛍光体の濃度を高める必要があり、コーティング層の形成には適さないという問題があった。また、特許文献1のように、近赤外蛍光を発する発光剤を用いると、発光状態の確認を肉眼で行うことができず、観察のための特殊な装置が必要になるという問題もある。なお、有機系の蛍光体を用いる場合、蛍光体の種類にもよるが、人体への影響も懸念される。
【0008】
そこで、本発明の目的は、紫外線により効率よく発光して肉眼で容易に識別でき、励起発光部等が脱落した場合でも、人体への影響が少ない、外科用縫合糸および外科用縫合針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、グラフェン量子ドット又は炭素量子ドットを含有する生分解性樹脂を用いることで、微量でも紫外線により効率よく発光して肉眼で容易に識別できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の内容を含む。
【0011】
[1]縫合糸と、前記縫合糸を被覆するコート層とを備え、前記コート層がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する、外科用縫合糸。
【0012】
[2]縫合針と、前記縫合針の本体部の溝又は前記本体部より縫合糸側に設けられた励起発光部とを備え、前記励起発光部がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する、外科用縫合針。
【0013】
[3]前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトン、デンプン系生分解性樹脂、セルロース系生分解性樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、[1]に記載の外科用縫合糸。
【0014】
[4]前記生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部のグラフェン量子ドット、又は0.001~0.5質量部の炭素量子ドットを含有する、[1]又は[3]に記載の外科用縫合糸。
【0015】
[5]前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトン、デンプン系生分解性樹脂、セルロース系生分解性樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、[2]に記載の外科用縫合針。
【0016】
[6]前記生分解性樹脂が、更にセルロースナノファイバーとセルロース分解酵素とを含むものである、[5]に記載の外科用縫合針。
【0017】
[7]前記生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部のグラフェン量子ドット、又は0.001~0.5質量部の炭素量子ドットを含有する、[2]、[5]又は[6]に記載の外科用縫合針。
【発明の効果】
【0018】
本発明の外科用縫合糸によると、発光剤としてグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドットを用いるため、一般的な蛍光体と比較して人体への影響が小さいと考えられ、コート層が脱落した場合でも、人体への影響が少ないと推定される。また、一般的な蛍光体と比較して発光効率が高いため、低濃度でコート層を形成して、紫外線により効率よく発光させることができるので、肉眼で容易に識別できるようになる。その結果、紫外線により効率よく発光して肉眼で容易に識別でき、コート層が脱落した場合でも、人体への影響が少ない、外科用縫合糸を提供することができる。
【0019】
また、本発明の外科用縫合針によると、発光剤としてグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドットを用いるため、一般的な蛍光体と比較して人体への影響が小さいと考えられ、励起発光部が脱落した場合でも、人体への影響が少ないと推定される。また、一般的な蛍光体と比較して発光効率が高いため、低濃度で励起発光部を形成して、紫外線により効率よく発光させることができるので、肉眼で容易に識別できるようになる。その結果、紫外線により効率よく発光して肉眼で容易に識別でき、励起発光部が脱落した場合でも、人体への影響が少ない、外科用縫合針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】実施例2と比較例1で得られた外科用縫合糸の蛍光スペクトルを示すグラフ
【
図6】実施例6~7と比較例3で得られたペレットの蛍光スペクトルを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
<外科用縫合糸>
本発明の外科用縫合糸は、縫合糸と、前記縫合糸を被覆するコート層とを備え、前記コート層がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有することを特徴とする。
【0022】
本明細書において、「被覆」とは被覆対象物の表面積の60%以上を被覆している状態をいい、好ましくは90%以上を被覆している状態であり、より好ましくは100%を被覆している状態である。
【0023】
図1は、本発明の外科用縫合糸の一例を示す斜視図である。
図1には、モノフィラメントの縫合糸11が、コート層12により、完全に被覆されている外科用縫合糸10の例を示しているが、縫合糸11がコート層12によって、完全に被覆されている必要はない。
【0024】
(縫合糸)
コート層を形成する縫合糸としては、抜糸が必要な非吸収性の縫合糸でもよいが、抜糸が不要である生体内分解吸収性の縫合糸を用いることが好ましい。非吸収性の縫合糸を用いる場合でも、本発明の外科用縫合糸を用いることにより、コート層の脱落による問題を低減でき、術中の縫合糸の存在位置を容易に確認できるようになる。
【0025】
非吸収性の縫合糸としては、特に限定されず、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニリデンフルオライド、絹糸、金属ワイヤーなどが挙げられる。
【0026】
吸収性の縫合糸としては、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリ-ε-カプロラクトン、ラクチド-グリコール酸共重合体、グリコリド-ε-カプロラクトン共重合体、ラクチド-ε-カプロラクトン共重合体、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-α-シアノアクリレート、ポリ-β-ヒドロキシ酸、ポリトリメチレンオキサレート、ポリテトラメチレンオキサレート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタメート、ポリ-γ-メチル-L-グルタメート、ポリ-L-アラニン、ポリグリコールセバスチン酸等の合成高分子や、デンプン、アルギン酸、ヒアルロン酸、キチン、ペクチン酸及びその誘導体等の多糖類や、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、フィブリン等のタンパク質等の天然高分子等が挙げられる。なかでも、適度な生体分解速度と強度を有することから、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸)ホモポリマーまたはポリ(3-ヒドロキシブタン酸)コポリマーなどのポリグリコリド(ポリグリコール酸)が好ましい。
【0027】
縫合糸の構造としては、複数の繊維からなるマルチフィラメント縫合糸でもよいが、コート層の形成のしやすさの観点から、単一の繊維のみからなるモノフィラメント縫合糸が好ましい。縫合糸の直径は、例えば0.01~1mmであるが、コート層の厚みとのバランスを考慮すると0.05~0.5mmが好ましい。
【0028】
(コート層)
前記縫合糸を被覆するコート層は、グラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有する。
【0029】
量子ドットは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの粒子のことを指し、粒子サイズによって光学特性を調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持つ。本発明では、発光剤として、グラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット(以下、両者を総称して「炭素系量子ドット」という)を使用する。また、これらから選択した複数の量子ドットを用いて、各々の含有量を調整することで、所望の発光波長を得ることができる。
【0030】
炭素系量子ドットの含有量としては、グラフェン量子ドットの場合、紫外線により効率よく可視光を発光させる観点から、コート層を形成する生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部を含有することが好ましく、0.0015~0.15質量部がより好ましい。グラフェン量子ドットを用いる場合、特に、紫外光~紫色光(200nm~410nm)の励起光によって、445nmをピークとして発光するコート層を形成することが好ましい。
【0031】
炭素量子ドットの場合、紫外線により効率よく可視光を発光させる観点から、コート層を形成する生分解性樹脂100質量部に対して、0.001~0.5質量部を含有することが好ましく、0.0075~0.45質量部がより好ましい。炭素量子ドットを用いる場合、特に、紫外光~青色光(200nm~500nm)の励起光によって、550nmをピークとして発光するコート層を形成することが好ましい。
【0032】
(炭素系量子ドット)
炭素系量子ドットは、炭素原子間のπ結合に起因して、粒径に依存した発光特性を有するものである。炭素系量子ドットとしては、グラフェン構造を有するグラフェン量子ドット、グラフェン構造を有しない炭素量子ドット、これらを化学修飾した量子ドット等が挙げられるが、量子収率の観点からグラフェン量子ドット又は化学修飾したグラフェン量子ドットが好ましい。
【0033】
これらの炭素系量子ドットは、シグマ-アルドリッチ社、冨士色素株式会社、GSアライアンス株式会社、フナコシ株式会社、キシダ化学株式会社などから、市販されており、これらを何れも使用することができる。
【0034】
(グラフェン量子ドット)
グラフェン量子ドットとしては、非官能化グラフェン量子ドット、官能化グラフェン量子ドット、原初の(pristine)グラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
官能化グラフェン量子ドットは1つ以上の官能基で官能化されていてもよい。官能基には、酸素基、カルボキシル基、カルボニル基、非晶質炭素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、エステル、アミン、アミド、ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
また、グラフェン量子ドットには、1つ以上のアルキル基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットが含まれる。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびこれらの組み合わせが含まれる。幾つかの態様において、アルキル基にはオクチル基(例えば、オクチルアミン)が含まれる。
【0037】
また、グラフェン量子ドットは、1種以上のポリマー先駆物質で官能化することができる。例えば、グラフェン量子ドットは1種以上のモノマー(例えば、ビニルモノマー)で官能化することができる。
【0038】
グラフェン量子ドットは、重合するポリマー先駆物質で官能化することにより、ポリマー官能化グラフェン量子ドットを形成することができる。例えば、重合するビニルモノマーで端部を官能化することにより、端部官能化ポリビニルの付加物を形成することができる。
【0039】
グラフェン量子ドットは、1種以上の親水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。親水性官能基には、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0040】
グラフェン量子ドットは、1種以上の疎水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。疎水性官能基には、アルキル基、アリール基、およびこれらの組み合わせが含まれる。疎水性官能基には1種以上のアルキルアミドまたはアリールアミドが含まれる。
【0041】
グラフェン量子ドットは端部官能化グラフェン量子ドットを含む。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述した1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述したような1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、やはり前述したような1種以上の親水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の酸素の付加物が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の非晶質炭素の付加物が含まれる。
【0042】
グラフェン量子ドットは、アルキルアミドまたはアリールアミドなどの1種以上のアルキル基またはアリール基で端部が官能化されている。アルキル基またはアリール基を用いるグラフェン量子ドットの端部官能化は、グラフェン量子ドットの端部におけるアルキルアミドまたはアリールアミドのカルボン酸との反応によって行われる。
【0043】
グラフェン量子ドットには原初の(pristine)グラフェン量子ドットが含まれる。原初のグラフェン量子ドットは、合成後に未処理のままのグラフェン量子ドットを含む。原初のグラフェン量子ドットは、合成後にいかなる追加の表面変性も行われていないグラフェン量子ドットを含む。
【0044】
グラフェン量子ドットは様々な発生源から得ることができる。例えば、グラフェン量子ドットには、石炭由来のグラフェン量子ドット、コークス由来のグラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが含まれる。グラフェン量子ドットにはコークス由来のグラフェン量子ドットが含まれる。グラフェン量子ドットには石炭由来のグラフェン量子ドットが含まれる。石炭には、(これらに限定はされないが)無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、変性瀝青炭、アスファルテン、アスファルト、泥炭、亜炭、ボイラー用炭、石化油(petrified oil)、カーボンブラック、活性炭、およびこれらの組み合わせが含まれる。炭素源は瀝青炭である。炭素には瀝青炭が含まれる。
【0045】
グラフェン量子ドットは様々な直径を有することができる。例えば、グラフェン量子ドットは約1nmから約100nmまでの範囲の直径を有することが好ましく、約1nmから約50nmまでの範囲の直径を有することがより好ましく、約1nmから約20nmまでの範囲の直径を有することが更に好ましい。
【0046】
グラフェン量子ドットはまた、様々な構造を有することもできる。例えば、グラフェン量子ドットは結晶質の構造を有していてもよく、例えば結晶質の六方晶構造を有する。グラフェン量子ドットは単層又は複層を有していてもよく、例えばグラフェン量子ドットはおよそ2つの層からおよそ4つの層までを有する。
【0047】
グラフェン量子ドットは、様々な量子収率を有することもできる。グラフェン量子ドットは約30~80%までの範囲の量子収率を有することが好ましい。また、グラフェン量子ドットの水分散体における蛍光特性は、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長が380nm~650nmであることが好ましい。
【0048】
グラフェン量子ドットは粉末の形態であってもよく、ペレットの形態であってもよい。グラフェン量子ドットは液体状態であってもよく、分散液、溶液、溶融した状態であってもよい。
【0049】
グラフェン量子ドットを形成するために、様々な方法を利用することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成する工程は、炭素源を酸化剤に曝し、その結果としてグラフェン量子ドットを形成することを含むことができる。炭素源には、石炭、コークス、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0050】
酸化剤には酸が含まれ、酸には、硫酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、発煙硫酸、塩化水素酸、オレウム、クロロスルホン酸、およびこれらの組み合わせが含まれる。また、酸化剤には、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、次亜リン酸、硝酸、硫酸、過酸化水素、およびこれらの組み合わせが含まれる。好ましい酸化剤は過マンガン酸カリウム、硫酸および次亜リン酸の混合物である。
【0051】
酸化剤の存在下で炭素源を音波処理することによって炭素源は酸化剤に曝される。酸化剤の存在下で炭素源を加熱することが含まれる。加熱は少なくとも約100℃の温度において行われる。
【0052】
グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法の使用も想定することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法は、国際特許出願であるPCT/US2014/036604号に開示されている。グラフェン量子ドットを製造するさらなる適当な方法は、次の参考文献にも開示されている:ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 7041-7048;および、Nature Commun. 2013, 4:2943, 1-6。
【0053】
(炭素量子ドット)
炭素量子ドットは、グラフェンのような環状構造を持っていない量子ドットである。pH値によってグラフェン量子ドットより影響を受け易く、発光強度、ピーク位置が変化する性質を有する。
【0054】
炭素量子ドットは様々な直径を有することができる。例えば、炭素量子ドットは約1nmから約100nmまでの範囲の直径を有することが好ましく、約1nmから約50nmまでの範囲の直径を有することがより好ましく、約1nmから約30nmまでの範囲の直径を有することが更に好ましい。
【0055】
炭素量子ドットはまた、様々な量子収率を有することもできる。炭素量子ドットは約20~50%までの範囲の量子収率を有することが好ましい。また、炭素量子ドットの水分散体における蛍光特性は、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長が380nm~600nmであることが好ましい。
【0056】
炭素量子ドットの製造方法は、グラフェン量子ドットの製造方法と大差はなく、使用原料や製造条件がグラフェン構造を形成し易いか否かの違いのみである。
【0057】
従って、両者を含む炭素系量子ドットは、例えば、炭素ターゲットをレーザーアブレーション(laserablation)後、化学処理を実施して製造する手法(特表2012-501863号公報)や蝋燭の煤から製造する手法(H. Liu, et al., Angew. Chem.Int. Ed. 2007, 46, 6473-6475.)、グラファイト酸化物を化学処理して製造する手法(G. Eda, et al., Adv. Mater.2010, 22, 505-509.)、グラファイト酸化物を前駆体とする化学反応から製造する手法(特開2012-136566号公報)、フラーレンの転換反応から製造する手法(J. Lu, et al., Nature Nanotech.2011, 6, 247-252.)、更に、炭素繊維や活性炭など、より安価な炭素原料を化学処理して製造する手法(J. Peng, et al., Nano Lett. 2012, 12, 844-849.、Z.A. Qiao, ChemCommun. 2010, 46,8812-8814.、Y. Dong, et al., Chem. Mater.2010, 22, 5895-5899.)で製造することも可能である。
【0058】
なお、これらの手法は、大別してトップダウン(top-down)の手法であるが、有機前駆体分子のポリマー化から炭素量子ドットを製造するボトムアップ(bottom-up)の手法(G. A. Ozin, et al., J. Mater. Chem., 2012, 22, 1265-1269.)でも製造可能である。
【0059】
また、炭素材と過酸化水素とを混合し、過酸化水素により炭素を分解反応させ、炭素量子ドット生成液を調製する工程と、炭素量子ドット生成液中の炭素量子ドットと過酸化水素を分離して分解反応を停止させ、炭素量子ドットを取得する工程と、を含む炭素量子ドットの製造方法(特開2014-133685号公報)で製造することも可能である。
【0060】
(生分解性樹脂)
コート層に含まれる生分解性樹脂としては、塗膜が形成可能な生分解性樹脂であれば何れも使用できるが、コート層がより剥離し難くなる観点から、上記縫合糸に近い材料を用いることが好ましい。
【0061】
生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトン、デンプン系生分解性樹脂、セルロース系生分解性樹脂からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。セルロース系生分解性樹脂を用いる場合、セルロース分解酵素を併用することが好ましい。
【0062】
縫合糸としては、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸)ホモポリマーまたはポリ(3-ヒドロキシブタン酸)コポリマーなどのポリグリコリド(ポリグリコール酸)が、好適に使用されるが、その場合、コート層に使用する生分解性樹脂としては、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエートが好ましく使用される。
【0063】
(コート層の形成)
コート層を形成する方法としては、グラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、生分解性樹脂、並びに溶媒を含有する塗布液を調製し、縫合糸に塗布液を塗布・乾燥させればよい。塗布の方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、コーター塗布、はけ塗り、へら塗りなどが挙げられる。
【0064】
塗布液に使用する溶媒としては、使用する生分解性樹脂を分散又は溶解させるものであればよく、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、水等が挙げられる。
【0065】
コート層を形成するための塗布液には、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩等の滑剤、クエン酸エステル等の可塑剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤等を含有していてもよい。
【0066】
炭素系量子ドットは、例えば水系分散体として入手できるため、上記の溶媒と水系溶媒とを置換した上で、使用することで、炭素系量子ドット、生分解性樹脂、並びに溶媒を含有する塗布液を容易に調製することができる。
【0067】
コート層の厚みとしては、脱落を防止しつつある程度の発光強度を得る観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、コート層の厚みが大きくなり過ぎると、全体の太さが大きくなるため、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0068】
<外科用縫合針>
本発明の外科用縫合針は、縫合針と、前記縫合針の本体部の溝又は前記本体部より縫合糸側に設けられた励起発光部とを備え、前記励起発光部がグラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有することを特徴とする。励起発光部は、縫合針の本体部より外径が大きくないことが好ましい。このため、本体部の溝に励起発光部を設ける場合には、溝の深さより励起発光部の厚みが小さいことが好ましい。また、縫合針の本体部より縫合糸側に励起発光部を設ける場合、縫合糸に沿って、縫合針の本体部より外径が小さい励起発光部を設けることが好ましい。
【0069】
本発明の外科用縫合針は、例えば
図2に示すように、先端の鋭利な針先部2、半円弧状に形成された胴部3とからなる本体部1を有し、胴部3の縫合糸6側には基端部4が設けられ、基端部4から先端部側に向かい胴部3の長さ方向に沿って穿設された取付穴部5を有している。取付穴部5に挿入された縫合糸6は、基端部4の外面と平行で、基端部4より縮径された外面を備えるかしめ部7によりかしめ止めされている。
【0070】
縫合針の本体部1は、例えば、ステンレス鋼、4310SS、ニッケル-チタン(NiTi)SS及び420SS等の金属合金、又はタングステン-レニウム(W-Re)合金及び耐火合金等の高度合金を含む、頑丈な生体適合性材料から作製することができる。
【0071】
図2に示す実施形態では、励起発光部8としてスリーブ状の励起発光部材8aが設けられている例を示す。この励起発光部材8aは、例えば、2分割したものを成形しておき、これを縫合糸6又は基端部4に接着することで、一体化することが可能である。また、予め縫合糸6に接着等で固着しておき、励起発光部材8aが固着した縫合糸6を、縫合針の本体部1にかしめ止めすることも可能である。
【0072】
図3に示す実施形態では、スリーブ状の励起発光部材8aを縫合糸6側に設けると共に、胴部3にも、励起発光部8として帯状の励起発光部材8bが胴部3の周囲に設けられている例を示す。この励起発光部材8bは、例えば、胴部3に溝を設けておき、溝内に帯状の励起発光部材8bを接着等することで、一体化することが可能である。また、帯状の励起発光部材8bは、溝内に炭素系量子ドット及び生分解性樹脂を含有する塗布液を、塗布・乾燥させることで形成することも可能である。
【0073】
図4に示す実施形態では、胴部3の長手方向に沿って、励起発光部8として帯状の励起発光部材8cが長手方向に設けられている例を示す。この励起発光部材8cは、例えば、胴部3に長手方向に沿った溝を設けておき、溝内に帯状の励起発光部材8cを接着等することで、一体化することが可能である。また、帯状の励起発光部材8cは、長手方向に沿った溝内に炭素系量子ドット及び生分解性樹脂を含有する塗布液を、塗布・乾燥させることで形成することも可能である。
【0074】
その他、かしめ部7の外径が、胴部3の外径より小さい場合、かしめ部7に励起発光部8を塗布形成することも可能である。
【0075】
塗布液を用いて励起発光部8を形成する場合、本発明の外科用縫合糸について説明したような、コート層の塗布液と同じ塗布液を使用することが可能である。また、フィルムに成形した励起発光部8を用いて、帯状の励起発光部材8bを作製する場合にも、コート層の塗布液と同じ塗布液を使用することが可能である。
【0076】
スリーブ状の励起発光部材8aを成形する場合、炭素系量子ドット及び生分解性樹脂を含有する樹脂組成物を、環状ノズルから押出成形して、スリーブ状の励起発光部材8aを製造することができる。また、断面がC字型のノズルを用いて、断面がC字型の励起発光部8を形成することが可能である。
【0077】
樹脂組成物としては、前述した生分解性樹脂の1種以上を含む他、更にセルロースナノファイバー等の繊維を含むものであってもよい。セルロースナノファイバーを用いる場合、セルロース分解酵素を併用することが好ましい。また、前述した、滑剤、可塑剤、界面活性剤、結晶核剤等を添加することも可能である。
【0078】
なお、
図2~
図4には、通常の縫合糸6を用いた例が示されているが、本発明の外科用縫合糸のように、グラフェン量子ドット及び/又は炭素量子ドット、並びに生分解性樹脂を含有するコート層により、縫合糸を被覆したものを用いることも可能である。
【実施例0079】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0080】
(1)蛍光スペクトルの測定
実施例で作製した外科用縫合糸又はペレットを使用して、液体用セルの中に、外科用縫合糸を約10本配置し、又はペレットを約30個充填して測定用試料とし、蛍光分光光度計(RF-5300PC、島津製作所製)を用いて、励起光波長375nm又は435nmにより蛍光スペクトルを測定した。
【0081】
(2)コート層の耐久性の評価
コート層を形成した縫合糸を、曲率半径が10mmの円柱に沿って1回だけ屈曲させ、コート層の剥離や脱落を有無を確認した。
【0082】
(3)UVランプによる発光状態の評価
暗所において、作製した試料にUVランプ(波長375nm)を当てて、発光の色調と度合いを目視で確認した。
【0083】
(4)ペレット状の成形品の耐荷重の評価
成形品の1つを試料として水平な金属台上に置いて、上方から金属板を介して荷重を負荷して、試料が破損する際の荷重を測定した。
【0084】
<実施例1>(ポリ乳酸+グラフェンQD→外科用縫合糸)
ポリグリコール酸からなる生体内分解吸収性の市販の縫合糸(河野製作所社製、直径0.5mm)を準備した。
【0085】
また、ポリ乳酸PLA(富士フイルム和光社製、ポリ(dl-乳酸))100質量部に対して、グラフェン量子ドットの水分散体(GSアライアンス社製FUJI QD Graphene 818、固形分濃度0.15質量%)10質量部、水を1質量部、溶媒としてエタノールを10質量部を容器に入れて、攪拌機で十分混合して、コート層を形成するための塗布液を調製した。
【0086】
この塗布液に縫合糸を浸漬して、引き上げ後に余分な塗布液を除去した後、70℃で10分乾燥させ、縫合糸を被覆するコート層(厚み約1μm)を形成した。この縫合糸を用いてコート層の耐久性を評価したところ、コート層の剥離や脱落がないことを確認した。
【0087】
また、UVランプによる発光状態を評価したところ、青色に発光していることを目視で確認した。
【0088】
<実施例2>(ポリビニルアルコール+グラフェンQD→外科用縫合糸)
実施例1において、ポリ乳酸を用いる代わりにポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA-210、ケン化度88%)を同量使用したこと以外は、実施例1と同じ条件で外科用縫合糸を作製し、コート層の耐久性とUVランプによる発光状態を評価した。その結果、実施例1と同等のコート層の耐久性とUVランプによる青色の発光が確認できた。また、得られた外科用縫合糸の励起光375nmでの発光波長を測定した、蛍光スペクトルの測定結果を、
図5に示す。
【0089】
<実施例3>(ポリビニルアルコール+炭素QD→外科用縫合糸)
実施例2において、ポリグリコール酸縫合糸の代わりに、ポリ乳酸PLAからなる生体内分解吸収性の市販の縫合糸(河野製作所社製、直径0.5mm)を使用し、グラフェン量子ドットの水分散体を用いる代わりに、炭素量子ドットの水分散体(GSアライアンス社製FUJI QD CARBON 308、固形分濃度0.3質量%)を1質量部を用いたこと以外は、実施例2と同じ条件で外科用縫合糸を作製し、コート層の耐久性とUVランプによる発光状態を評価した。その結果、実施例1と同等のコート層の耐久性が得られ、UVランプによる緑色の発光が確認できた。
【0090】
<比較例1>(未処理の外科用縫合糸)
ポリ乳酸PLAからなる生体内分解吸収性の市販の縫合糸(河野製作所社製、直径0.5mm)を準備した。これを用いて、蛍光スペクトルの測定を行なった。その結果を
図5に示す。
【0091】
<比較例2>(ポリ乳酸+蛍光体→外科用縫合糸)
実施例1において、グラフェン量子ドットを用いる代わりに、UV光で発光する市販の蛍光体(ローダミン、CAS RN 81-88-9)を1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で外科用縫合糸を作製し、コート層の耐久性とUVランプによる発光状態を評価した。その結果、コート層の耐久性の評価において、脱落が生じる結果となり、またUVランプによる発光強度が時間経過と共に目視で確認できないほど低下することが判明した。
【0092】
以上の結果を表1にまとめた。
【0093】
【0094】
<実施例4>(ポリ乳酸+炭素QD→励起発光部)
ポリ乳酸(富士フイルム和光社製)100質量部に対して、炭素量子ドットの水分散体(GSアライアンス社製FUJI QD CARBON 308、固形分濃度0.3質量%)10質量部を190℃にて二軸スクリュー押出機を用いて混練を行い、ストランド状に押し出して、冷却後に切断したペレット状の成形品(2mmφ×4mm長)を得た。
【0095】
この成形品を用いて、耐荷重を評価したところ、ポリ乳酸のみで作製したペレット状の成形品とほぼ同じ荷重となった。また、この成形品のUVランプによる発光状態を評価したところ、緑色に発光していること目視を確認した。
【0096】
<実施例5>(ポリ乳酸+炭素QD+CNF→励起発光部)
実施例4において、更にセルロースナノファイバー(GSアライアンス社製 GS CNF )を2質量部を添加したこと以外は、実施例4と同じ条件でペレット状の成形品を作製し、この成形品のUVランプによる発光を評価した。その結果、実施例4と同等のUVランプによる発光が確認できた。また、実施例4と比較して、成形品の耐荷重の低下はなかった。
【0097】
<実施例6>(セルロース+炭素QD→励起発光部)
セルロース樹脂(GSアライアンス社製 GS BR CELLULOSE)100質量部に対して、炭素量子ドットの水分散体(GSアライアンス社製FUJI QD CARBON 308、固形分濃度0.3質量%)10質量部を190℃にて二軸スクリュー押出機を用いて混練を行い、ストランド状に押し出して、冷却後に切断したペレット状の成形品(2mmφ×4mm長)を得た。
【0098】
この成形品を用いて、耐荷重を評価したところ、セルロース樹脂のみで作製したペレット状の成形品とほぼ同じ荷重となった。また、この成形品のUVランプによる発光状態を評価したところ、緑色に発光していること目視を確認した。また、この成形品を用いて励起光435nmでの発光波長を測定した際の蛍光スペクトルの測定結果を、
図6に示す。
【0099】
<実施例7>(セルロース+炭素QD+CNF→励起発光部)
実施例6において、更にセルロースナノファイバー(GSアライアンス社製 GS CNF )を2質量部を添加したこと以外は、実施例6と同じ条件でペレット状の成形品を作製し、この成形品のUVランプによる発光を評価した。その結果、実施例6と同等のUVランプによる緑色の発光が確認できた。また、実施例6と比較して、成形品の耐荷重の低下はなかった。また、この成形品を用いて励起光435nmでの発光波長を測定した際の蛍光スペクトルの測定結果を、
図6に示す。
【0100】
<比較例3>(セルロース→励起発光部)
実施例6において、炭素量子ドットの水分散体を用いないこと以外は、実施例6と同じ条件でペレット状の成形品を作製した。この成形品を用いて励起光435nmでの発光波長を測定した際の蛍光スペクトルの測定結果を、
図6に示す。
【0101】
以上の結果を表2にまとめた。
【0102】
【0103】