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特開2024-20783携帯端末、表示処理方法、及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020783
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】携帯端末、表示処理方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 15/80 20110101AFI20240207BHJP
   G06T 15/04 20110101ALI20240207BHJP
【FI】
G06T15/80
G06T15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123227
(22)【出願日】2022-08-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu-ray
2.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】赤木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】品田 咲弥
(72)【発明者】
【氏名】梅村 純
(72)【発明者】
【氏名】小林 尊道
(72)【発明者】
【氏名】山口 博幸
(72)【発明者】
【氏名】知見 徹摩
【テーマコード(参考)】
5B080
【Fターム(参考)】
5B080AA19
5B080CA00
5B080FA02
5B080GA11
5B080GA23
(57)【要約】
【課題】表面加工が施された金属素材又はその成形品の傾け方に応じて変化する外観の見え方を、ユーザがより容易に認識できるように表示させること。
【解決手段】本発明の携帯端末は、表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、前記センサ部により検出した前記傾き状態と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理部と、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、
前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理部と、
前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、
を備える、携帯端末。
【請求項2】
前記表面加工は、前記金属素材の表面に酸化膜を形成する加工を含み、
前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記酸化膜の膜厚を示す情報を取得し、
前記演算処理部は、
金属表面に膜厚既知の薄膜が存在する場合の光の干渉状態をモデル化した薄膜干渉モデルを用いて、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定取得部により取得した前記膜厚を示す情報と、大気の屈折率、前記金属素材の屈折率、及び、前記酸化膜の屈折率と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における光の反射率を演算し、
得られた前記反射率を用いて、特定の色空間における色を演算する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記演算処理部は、
光が、前記表面加工が施された金属素材の表面に、前記センサ部により取得した前記センサ情報に対応する入射角で入射し、前記入射角と同じ角度の反射角で反射するとしたときの前記反射率を演算し、
前記表面加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布と、得られた前記反射率と、等色関数と、に基づいて、前記色空間における色を演算する、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記表面加工は、前記金属素材の表面に凹凸を形成する加工を含み、
前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の形状を示す情報、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさと前記凹凸の分布状態を示す情報を取得し、
前記表示部の表面法線ベクトルの方向に光源が存在するとしたときの反射モデルを用いて、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記形状を示情報と、前記金属素材の種別を示す情報と、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさ及び前記凹凸の分布状態を示情報と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における陰影の分布状態、又は、特定の色空間における色の少なくとも何れかを演算する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記センサ部は、第1の時間間隔ごとに前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得し、
前記演算処理部は、取得した前記センサ情報に基づいて、前記第1の時間間隔ごと、又は、前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔ごとに、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する、請求項1~4の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、
前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とを、通信可能に接続された外部の情報処理装置に出力する出力部と、
前記出力部から出力した前記センサ情報及び前記設定値に基づいて演算された、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観の演算結果を、前記情報処理装置から取得する演算結果取得部と、
前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、
を備える、携帯端末。
【請求項7】
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観に対応する画像情報を、携帯端末に表示する表示処理方法であって、
前記携帯端末が有するセンサ部により、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記携帯端末を介して、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得ステップと、
前記センサ情報取得ステップで取得した前記センサ情報と、前記設定値取得ステップで取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理ステップと、
前記携帯端末において、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示ステップと、
を有する、表示処理方法。
【請求項8】
請求項1~4、6の何れか1項に記載の携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続された情報処理装置と、を備えるシステムであって、
前記携帯端末は、
前記表示部に表示された前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の作製指示を受け付ける作製指示受付部と、
受け付けた前記作製指示に対応する前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品に関連付けられた前記表面加工条件の設定値を、前記情報処理装置に出力する設定値出力部と、
を更に備え、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記表面加工条件を取得する条件取得部と、
前記表面加工条件に基づき、前記作製指示に対応する前記金属素材に対し、前記表面加工条件に対応する前記表面加工を施す工程の管理を行う工程管理部と、
を備える、システム。
【請求項9】
請求項5に記載の携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続された情報処理装置と、を備えるシステムであって、
前記携帯端末は、
前記表示部に表示された前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の作製指示を受け付ける作製指示受付部と、
受け付けた前記作製指示に対応する前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品に関連付けられた前記表面加工条件の設定値を、前記情報処理装置に出力する設定値出力部と、
を更に備え、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記表面加工条件を取得する条件取得部と、
前記表面加工条件に基づき、前記作製指示に対応する前記金属素材に対し、前記表面加工条件に対応する前記表面加工を施す工程の管理を行う工程管理部と、
を備える、システム。
【請求項10】
前記携帯端末は、
前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観についての特徴を示すキーワードを取得するキーワード取得部と、
取得した前記キーワードを前記情報処理装置に出力するキーワード出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記キーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記携帯端末は、
顧客情報を取得する顧客情報取得部と、
取得した前記顧客情報を前記携帯端末に出力する顧客情報出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記携帯端末は、
前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観についての特徴を示すキーワードを取得するキーワード取得部と、
取得した前記キーワードを前記情報処理装置に出力するキーワード出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記キーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記携帯端末は、
顧客情報を取得する顧客情報取得部と、
取得した前記顧客情報を前記携帯端末に出力する顧客情報出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、表示処理方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
チタンやステンレス等の金属素材に対して様々な表面(意匠)加工を施して、金属素材の表面性状を所望の状態とすることで、金属表面に独特の意匠性を付与する技術が知られている。このような意匠性の付与された金属素材は、高い意匠性が求められる物品の素材として、適用が拡大している。このような表面加工の一例として、発色加工、光沢加工、梨地加工等が知られている。
【0003】
上記のような表面加工の施された金属素材の中には、その素材自体の傾け方に応じて、人によって視認される外観(例えば、表面の色など)が変化するものがある。このような金属素材は、博物館や美術館等といった建造物の屋根に代表される建築用材料、飲料用カップ、腕時計、装飾品の素材など、様々な用途に用いられている。意匠デザイナーにとって、どのような意匠性を有する素材を用いるかは、着目する物品のデザインを検討する際に重要な選択となる。
【0004】
一般に、意匠デザイナーが素材を選択する際には、写真カタログや小片サンプルのカタログ等を参考にすることが多い。しかしながら、これらカタログに対して、素材の提供者が取り扱っている全ての素材を掲載することは、多大な手間とコストを要するため、素材の提供者は、これらカタログに掲載するサンプルの内容を厳選することが求められる。
【0005】
そこで、例えば以下の特許文献1では、布素材に柄を付与する意匠加工を施すことで製造される布製品について、その意匠加工を仮想的にシミュレーションして、ユーザに提供する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/069090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1で着目されているような布製品の柄の場合であれば、用いる糸素材の組み合わせを変更することで、実現される柄をシミュレートすることは容易であり、また、意匠デザイナー等のユーザにおいても、シミュレーション結果を理解することは容易である。しかしながら、チタンやステンレス等の金属素材において、素材自体の傾け方に応じて、人によって視認される外観が変化するようなものの場合では、上記特許文献1で開示されている技術を単に適用するだけでは不十分であると考えられる。また、たとえ外観をシミュレートできたとしても、意匠デザイナー等のユーザがその外観の変化の様子を直感的に把握可能なようにシミュレーション結果を提示することは、困難であると考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、表面加工が施された金属素材又はその成形品の傾け方(傾き方向、傾き角など)に応じて変化する外観の見え方を、ユーザがより容易に認識できるように表示させることが可能な、携帯端末、表示処理方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、傾け方を検出可能なセンサ部を有する携帯端末を用い、かかるセンサ部により取得されたセンサ情報と、設定された表面加工条件とに基づき、上記のような表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観を演算した上で、ユーザに提示することに想到した。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
【0010】
(1)表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理部と、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、を備える、携帯端末。
(2)前記表面加工は、前記金属素材の表面に酸化膜を形成する加工を含み、前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記酸化膜の膜厚を示す情報を取得し、前記演算処理部は、金属表面に膜厚既知の薄膜が存在する場合の光の干渉状態をモデル化した薄膜干渉モデルを用いて、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定取得部により取得した前記膜厚を示す情報と、大気の屈折率、前記金属素材の屈折率、及び、前記酸化膜の屈折率と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における光の反射率を演算し、得られた前記反射率を用いて、特定の色空間における色を演算する、(1)に記載の携帯端末。
(3)前記演算処理部は、光が、前記表面加工が施された金属素材の表面に、前記センサ部により取得した前記センサ情報に対応する入射角で入射し、前記入射角と同じ角度の反射角で反射するとしたときの前記反射率を演算し、前記表面加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布と、得られた前記反射率と、等色関数と、に基づいて、前記色空間における色を演算する、(2)に記載の携帯端末。
(4)前記表面加工は、前記金属素材の表面に凹凸を形成する加工を含み、前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の形状を示す情報、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさと前記凹凸の分布状態を示す情報を取得し、前記表示部の表面法線ベクトルの方向に光源が存在するとしたときの反射モデルを用いて、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記形状を示す情報と、前記金属素材の種別を示す情報と、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさ及び前記凹凸の分布状態を示す情報と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における陰影の分布状態、又は、特定の色空間における色の少なくとも何れかを演算する、(1)に記載の携帯端末。
(5)前記センサ部は、第1の時間間隔ごとに前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得し、前記演算処理部は、取得した前記センサ情報に基づいて、前記第1の時間間隔ごと、又は、前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔ごとに、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する、(1)~(4)の何れか1つに記載の携帯端末。
(6)表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とを、通信可能に接続された外部の情報処理装置に出力する出力部と、前記出力部から出力した前記センサ情報及び前記設定値に基づいて演算された、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観の演算結果を、前記情報処理装置から取得する演算結果取得部と、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、を備える、携帯端末。
(7)表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観に対応する画像情報を、携帯端末に表示する表示処理方法であって、前記携帯端末が有するセンサ部により、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、前記携帯端末を介して、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得ステップと、前記センサ情報取得ステップで取得した前記センサ情報と、前記設定値取得ステップで取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理ステップと、前記携帯端末において、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示ステップと、を有する、表示処理方法。
(8)(1)~(4)、(6)の何れか1つに記載の携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続された情報処理装置と、を備えるシステムであって、前記携帯端末は、前記表示部に表示された前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の作製指示を受け付ける作製指示受付部と、受け付けた前記作製指示に対応する前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品に関連付けられた前記表面加工条件の設定値を、前記情報処理装置に出力する設定値出力部と、を更に備え、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記表面加工条件を取得する条件取得部と、前記表面加工条件に基づき、前記作製指示に対応する前記金属素材に対し、前記表面加工条件に対応する前記表面加工を施す工程の管理を行う工程管理部と、を備える、システム。
(9)(5)に記載の携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続された情報処理装置と、を備えるシステムであって、前記携帯端末は、前記表示部に表示された前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の作製指示を受け付ける作製指示受付部と、受け付けた前記作製指示に対応する前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品に関連付けられた前記表面加工条件の設定値を、前記情報処理装置に出力する設定値出力部と、を更に備え、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記表面加工条件を取得する条件取得部と、前記表面加工条件に基づき、前記作製指示に対応する前記金属素材に対し、前記表面加工条件に対応する前記表面加工を施す工程の管理を行う工程管理部と、を備える、システム。
(10)前記携帯端末は、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観についての特徴を示すキーワードを取得するキーワード取得部と、取得した前記キーワードを前記情報処理装置に出力するキーワード出力部と、を更に有し、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記キーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、を更に備え、前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(8)に記載のシステム。
(11)前記携帯端末は、顧客情報を取得する顧客情報取得部と、取得した前記顧客情報を前記携帯端末に出力する顧客情報出力部と、を更に有し、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、を更に備え、前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(8)に記載のシステム。
(12)前記携帯端末は、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観についての特徴を示すキーワードを取得するキーワード取得部と、取得した前記キーワードを前記情報処理装置に出力するキーワード出力部と、を更に有し、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記キーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、を更に備え、前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(9)に記載のシステム。
(13)前記携帯端末は、顧客情報を取得する顧客情報取得部と、取得した前記顧客情報を前記携帯端末に出力する顧客情報出力部と、を更に有し、前記情報処理装置は、前記携帯端末から出力された前記顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、を更に備え、前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(9)に記載のシステム。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、表面加工が施された金属素材又はその成形品の傾け方に応じて変化する外観の見え方を、ユーザがより容易に認識できるように表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る携帯端末の構成の一例を示したブロック図である。
図2】同実施形態に係る携帯端末の傾き状態について説明するための説明図である。
図3】同実施形態において、表面加工として陽極酸化処理による発色加工が施された金属素材又はその成形品の外観を演算する処理について説明するための説明図である。
図4】同実施形態に係る演算処理部で用いられる外観演算モデルの一例である薄膜干渉モデルを説明するための説明図である。
図5】標準光源の一つであるD65標準光源の分光分布を示したグラフ図である。
図6】XYZ表色系における等色関数を示したグラフ図である。
図7】同実施形態に係る演算処理部で実施される演算処理の流れの一例を示した流れ図である。
図8】酸化チタンTiOの屈折率n及び吸収率kの波長依存性を示したグラフ図である。
図9】酸化膜の形成されたチタン板の色の変化の様子を示した演算結果の一例である。
図10】バイブレーション加工による梨地加工が施された金属素材の外観を演算する演算処理について説明するための説明図である。
図11】鋼板の表面にバイブレーション加工による梨地加工を施した場合の陰影を演算した演算処理結果を示した説明図である。
図12】同実施形態に係る携帯端末の構成の変形例を示したブロック図である。
図13】同実施形態に係る表示処理方法の流れの一例を示した流れ図である。
図14】同実施形態に係るシステムについて説明するための説明図である。
図15】同実施形態に係るシステムにおける携帯端末の構成の一例を示したブロック図である。
図16】同実施形態に係るシステムにおける情報処理装置の構成の一例を示したブロック図である。
図17】同実施形態に係るシステムにおける各処理の流れの一例を示した流れ図である。
図18】同実施形態に係る携帯端末のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
(携帯端末について)
<携帯端末の全体的な構成について>
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る携帯端末10について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る携帯端末10の構成の一例を示したブロック図である。
【0015】
本実施形態に係る携帯端末10は、表面加工が施された金属製の素材(以下、単に「金属素材」と称する場合がある。)の営業支援に用いられる。携帯端末10は、表面加工が施された金属素材又はその成形品について、その外観を所定の演算方式に従って演算し、得られた演算結果を、着目する金属素材又はその成形品の外観に対応する画像情報として、携帯端末10が有する表示部に表示する。これにより、本実施形態に係る携帯端末10のユーザは、表面加工が施された金属素材のサンプル品等を実際に作製しなくても、その表面加工が施された状態の金属素材又はその成形品の外観を、画像によって容易に把握することが可能となる。
【0016】
ここで、本実施形態において着目する金属素材又はその成形品(以下、「その成形品」との記載を省略することがある。)は、かかる金属素材の傾け方に応じて、その金属素材の外観の見え方(人による視認のされ方)が変化するものである。特に、金属素材に意匠性を付与するために、金属素材(例えばステンレスやチタン等)に対して、各種の表面加工が施されることがあるが、その場合はその表面加工が施された金属素材又はその成形品の傾け方に応じて、外観の見え方がより複雑に変化することがある。
【0017】
このような表面加工が施された金属素材又はその成形品を販売するユーザ(営業担当者)にとって、傾け方によってどのように意匠性が変化するのか事前に顧客に提示できることが好ましいが、サンプル品を一つ一つ作製すると多大な手間とコストを要する。そこで、本実施形態に係る携帯端末10は、実際に表面加工が施された金属素材又はその成形品の実物(サンプル品)を手に持たなくとも、このような外観の見え方の変化を、携帯端末10のユーザが体験可能なものとなっている。
【0018】
ここで、上記の表面加工としては、例えば、(a)陽極酸化処理等に代表される発色加工、(b)バフ処理、鏡面処理等に代表される光沢加工、(c)ヘアライン加工、バイブレーション加工、ブラスト加工、ダル加工等に代表される梨地加工等が挙げられる。
【0019】
例えば、ステンレスやチタン等の金属素材に対して、発色加工の一種である陽極酸化処理を施すと、金属素材の表面に酸化膜が形成される。かかる酸化膜が形成された金属素材を傾けると、酸化膜内に入射した光の干渉効果によって色調が変化し、表面が様々な色に発色したように視認される。また、ステンレス、チタン、鋼板等の金属素材の表面にヘアライン加工等の梨地加工を施して、その表面に微細な凹凸を形成した場合に、かかる凹凸が形成された金属素材を傾けると、光の当たり方に応じて陰影のつき方が変化する。また、ステンレス、チタン、鋼板等の金属素材の表面に鏡面加工等の光沢加工を施した場合に、かかる光沢加工が施された金属素材を傾けると、金属素材が元来有している表面の微細な凹凸度合いに応じて、陰影のつき方が変化する。
【0020】
本実施形態に係る携帯端末10は、上記に例示したような、実際の金属素材の傾け方に応じた外観の変化を、各種の演算方式に従って模擬して、携帯端末10を手に持っているユーザに視認させる。すなわち、本実施形態に係る携帯端末10は、このような金属素材の実物の代わりに、その外観を、実際の金属素材に生じる変化と同様に変化させて、ユーザに視認させるものである。
【0021】
かかる携帯端末10は、当該装置のユーザが実際に手に持って傾け方(傾き方向、傾き角など)を変化させるものであるため、ユーザが手に持つことが可能な装置であることが好ましい。このような装置として、例えば、スマートフォンやタブレット型端末のような、各種の携帯情報端末を挙げることができる。これらの携帯情報端末は、自装置の傾け方を把握するための各種のセンサを有していることから、携帯端末10として機能する装置として好適なものである。
【0022】
かかる機能を有する携帯端末10は、図1に模式的に示したように、センサ部101と、設定値取得部103と、演算処理部105と、出力部107と、表示部109と、記憶部111と、を主に備える。
【0023】
センサ部101は、例えば、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)、メモリ(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)、及び、センサ(例えば、加速度センサ、角速度(ジャイロ)センサ、GPS(Glоbal Positioning System)センサ等)等により実現される。センサ部101は、所定の時間間隔ごとに、実空間における携帯端末10の傾け方(傾き状態)を特定可能な情報、すなわち、携帯端末10の傾き方向、傾き角を示すセンサ情報を取得する。かかるセンサ情報に着目することで、携帯端末10の傾け方、すなわち携帯端末10が実空間における鉛直方向(重力が作用している方向とも捉えることができる。)に対してどの方向に傾いているか、どの程度傾いているのかを、特定することが可能となる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る携帯端末10の傾き状態について説明するための説明図である。本実施形態に係る携帯端末10では、携帯端末10が有する表示部109の一例である表示画面が、実空間(ユーザが携帯端末10を操作する空間)においてどの方向にどの程度傾いているのかに注目することが重要である。そこで、表示画面が規定する表面について、表面法線ベクトルに着目する。その上で、かかる表面法線ベクトルの方向(すなわち、傾き方向及び傾き角)を特定するために用いるセンサ情報として、本実施形態に係る携帯端末10では、図2に例示したようなピッチ角θとロール角θという2つの角度に着目する。
【0025】
本実施形態に係るセンサ部101は、携帯端末10が有する各種センサを用いて、このような2つの角度θ、θの大きさを取得して、後述する演算処理部105に出力する。
【0026】
本実施形態に係る携帯端末10が有しているセンサについては、上記のような2つの角度θ、θの大きさを取得可能なものであれば、特に限定されるものではなく、公知の各種センサを用いることが可能である。このようなセンサとして、上述したとおり、例えば、加速度センサや、角速度(ジャイロ)センサ等を挙げることができる。これらセンサの少なくとも何れかを適切に稼働させることで、携帯端末10に作用している加速度や角速度の方向と大きさを取得することができ、その結果、上記のような2つの角度θ、θから、携帯端末10の傾き方向及び傾き角を特定することが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態では、図2に示したような表面法線ベクトルが、鉛直方向に対して平行、かつ、逆向きになっている状態を基準(θ、θ=0°)とし、θ、θは、それぞれ独立に、0°≦θ、θ≦90°の範囲内であるとする。θ、θの何れかが90°となっている状態では、表面法線ベクトルは、鉛直方向に対して直交するような位置関係となる。
【0028】
設定値取得部103は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、入力装置、通信装置等により実現される。設定値取得部103は、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観の見え方に影響を与える因子について、その設定値を取得する。なお、成形品とは、表面加工が施された金属素材に対して各種成形加工が施されて製品化されたものを指す。
【0029】
先だって言及したように、金属素材に対して施される表面加工としては、例えば、発色加工、光沢加工、梨地加工等がある。これらの表面加工によって、金属素材の表面性状が特定の状態となることによって、作製される金属素材(すなわち、表面加工が施された金属素材又はその成形品)においては、金属素材自体の傾け方に応じて、外観の見え方が変化するようになる。このような表面加工によって金属素材の表面に付与される表面性状の状態が、金属素材の外観の見え方に影響を与える因子となる。
【0030】
また、どのような種類の金属素材に対して、どのような表面加工を、どの程度施すかによって、作製される金属素材の外観の見え方が制御される。
【0031】
そこで、本実施形態に係る携帯端末10においては、このような表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観の見え方に影響を与える因子(換言すれば、金属素材の表面に入射した光の反射状態に影響を与える因子)を、設定値として取得して、後段の演算処理部105における演算処理において、パラメータとして利用する。
【0032】
具体的には、設定値取得部103は、金属素材の表面加工条件の設定値を取得する。例えば、表面加工として、発色加工が選択された場合には、素材となる金属素材の種別に加えて、光の干渉を生じさせる酸化膜の膜厚が重要な因子となる。そこで、表面加工として発色加工がユーザにより事前に選択された場合には、設定値取得部103は、表面加工条件の設定値として、選択する表面加工の種別を示す情報(以下、「表面加工種別設定値」ともいう。本例では、発色加工を示す情報となる。)、素材となる金属素材の種別を示す情報(以下、「素材設定値」ともいう。)と、発色加工(例えば、陽極酸化処理)により生成させる酸化膜の膜厚を示す情報(以下、「膜厚設定値」ともいう。)を、ユーザによる携帯端末10の入力装置(例えば、キーボードやタッチパネル等)を介した入力操作、又は、携帯端末10の通信装置を介した入力操作(例えば、インターネット等の各種のネットワークを介した入力操作)により取得する。
【0033】
また、例えば、表面加工として、光沢加工や梨地加工が選択された場合には、選択する表面加工の種別(例えば、どのような光沢加工又は梨地加工を選択するのか)、素材となる金属素材の種別、作製される金属素材(すなわち、表面加工が施された金属素材又はその成形品)の表面形状(表面粗さ・凹凸形状、断面形状)等が、金属素材の表面に入射する光の反射状態に影響を与える重要な因子となる。そこで、表面加工として光沢加工や梨地加工がユーザにより事前に選択された場合には、設定値取得部103は、表面加工条件の設定値として、表面加工種別設定値と、素材設定値と、表面加工された金属素材の表面形状を示す情報(最終的に、どのような表面形状(表面粗さ・凹凸形状、断面形状)を有する金属素材とするのかを決める設定値、以下、「形状設定値」ともいう。)とを、ユーザによる携帯端末10の入力装置を介した入力操作、又は、携帯端末10の通信装置を介した入力操作により取得する。なお、表面加工の選択は、1種類に限らず、複数の種類の中からいくつか選択(例えば、発色加工と梨地加工など)するようにしてもよい。また、表面加工種別設定値や素材設定値は固定であるなら、入力を要しないようにしてもよい。
【0034】
設定値取得部103は、上記のようにして取得した各種の設定値に関する情報を、後述する演算処理部105に出力する。また、このような設定値は、携帯端末10を操作するユーザ(例えば、物品の作製を依頼する顧客等)の嗜好を反映した情報とも捉えることができる。そこで、設定値取得部103は、このような設定値に関する情報を後述する記憶部111にデータベースとして記憶しておき、ユーザの嗜好を反映した情報として活用してもよい。
【0035】
演算処理部105は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)等により実現される。演算処理部105は、センサ部101により取得したセンサ情報と、設定値取得部103により取得した上記のような設定値とに基づいて、携帯端末10の傾け方に応じた金属素材(すなわち、表面加工が施された金属素材又はその成形品)の外観を演算する。これにより、着目している金属素材の外観に対応する画像情報が生成される。かかる画像情報が、携帯端末10が有する表示画面に表示されることで、携帯端末10のユーザは、携帯端末10の傾け方に応じて変化する金属素材の外観を、その場で把握することが可能となる。なお、演算処理部105で実施される演算の詳細については、以下で例を挙げながら説明を行う。
【0036】
本実施形態に係る演算処理部105は、金属素材の外観に対応する画像情報を生成すると、かかる画像情報を、当該画像情報を生成する際に用いたセンサ情報及び設定値、並びに、当該画像情報を生成した日時等の時刻データと関連付けた上で、後述する記憶部111に履歴情報として格納することが好ましい。
【0037】
また、センサ部101がセンサ情報を取得する時間間隔を、第1の時間間隔としたときに、演算処理部105は、かかる第1の時間間隔ごと、又は、第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔ごとに、金属素材(すなわち、表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品)の外観を演算することが好ましい。これにより、携帯端末10は、ユーザが携帯端末10の傾け方を変化させることに追随させて、金属素材の外観を演算することが可能となり、携帯端末10のユーザは、金属素材に生じる外観の変化を、ほぼリアルタイムで把握することが可能となる。
【0038】
なお、第2の時間間隔をどの程度の間隔とするかについては、演算処理部105が演算に用いることが可能な演算リソース等に応じて適宜決定すればよい。ただし、かかる第2の時間間隔が第1の時間間隔に近ければ近いほど、傾け方の変化に演算結果の提示を追随させることが可能となり、ユーザの利便性をより向上させることが可能となる。
【0039】
出力部107は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、出力装置、通信装置等により実現される。出力部107は、演算処理部105により実施される各種の演算処理の結果を、携帯端末10のユーザに出力する。具体的には、出力部107は、演算処理部105から出力された各種の演算処理結果を示すデータや、かかる演算処理結果に関連するデータや、演算処理結果を基に作成された2次的なデータ等を、当該データが生成された日時等に関する時刻データと共に、携帯端末10の外部に設けられたプリンタ等の外部出力装置に出力する。また、出力部107は、演算処理結果に関するデータを、外部に設けられたコンピュータ等の各種の情報処理装置や各種の記録媒体に出力してもよい。
【0040】
また、出力部107は、後述する表示部109と連携して、演算処理部105による演算処理結果に関するデータを、画像情報として表示画面に出力することも可能である。
【0041】
表示部109は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、ディスプレイ等の表示装置、通信装置等により実現される。表示部109は、出力部107から出力された演算処理結果に対応する情報(例えば、画像情報や文字情報等)を、携帯端末10が備えるディスプレイ等の出力装置や携帯端末10の外部に設けられた出力装置等に表示する。これにより、携帯端末10のユーザは、演算処理結果(すなわち、着目している物品の外観に対応する画像情報等)を、その場で把握することが可能となる。
【0042】
記憶部111は、携帯端末10が備える記憶装置の一例であり、例えば、ROM、RAM、ストレージ装置等により実現される。この記憶部111には、本実施形態に係る携帯端末10が、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観を演算する際に用いる外観演算モデルや各種プログラム、素材として用いられる金属素材をはじめとする各種の金属や化合物(例えば酸化物等)に関する各種の物性データ、各種の表面加工により金属素材の表面に形成される凹凸の大きさとその分布状態に関するデータ等が記録されている。また、この記憶部111には、本実施形態に係る携帯端末10が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過(例えば、事前に格納されている各種のデータやプログラム等)が、適宜記録される。この記憶部111は、センサ部101、設定値取得部103、演算処理部105等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
【0043】
<演算処理部105による演算処理について>
続いて、演算処理部105による表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観を演算する演算処理について、例を挙げながら具体的に説明する。なお、以下に示す演算処理方法は、本実施形態に係る演算処理部105が実施する演算処理の一例に過ぎず、演算処理部105が実施する演算処理が下記の例に限定されるものではない。
【0044】
[発色加工が施された金属素材の場合]
まず、陽極酸化処理による発色加工が施された金属素材の外観について演算する演算処理について、図3図9を参照しながら、具体的に説明する。
【0045】
図3は、陽極酸化処理による発色加工が施された金属素材の外観を演算する演算処理について説明するための説明図である。
かかる発色加工では、素材となる金属素材の表面に、酸化膜が形成される。そこで、本実施形態に係る携帯端末10の設定値取得部103は、先だって説明したように、外観に影響を与える金属素材の表面加工条件の設定値として、施される表面加工の種別を示す情報の一例である表面加工種別設定値(この場合、発色加工に対応する表面加工種別設定値)、金属素材の種別を示す情報の一例である素材設定値、及び、酸化膜の膜厚情報の一例である膜厚設定値を取得する。
【0046】
また、本実施形態に係る携帯端末10の演算処理部105は、先だって言及した外観演算モデルとして、金属表面に膜厚既知の薄膜が存在する場合の光の干渉状態をモデル化した「薄膜干渉モデル」を用い、演算処理を行う。具体的には、センサ部101により取得したセンサ情報と、設定値取得部103により取得した設定値と、記憶部111に物性データとして格納されている大気の屈折率、金属素材の屈折率、及び、酸化膜の屈折率と、に基づき、発色加工が施された金属素材の表面部分における光の反射率を演算する。かかる演算により算出される反射率を用いることで、発色加工が施された金属素材の表面に入射した光が酸化膜を含む表面部分で反射した際の反射光が有する光のスペクトルを算出することができる。
【0047】
その上で、演算処理部105は、反射率を用いて算出されたスペクトルを、人間が視認可能な色調に変換する色変換処理を実施する。具体的には、演算処理部105は、得られたスペクトルを用いて、特定の色空間(例えば、JIS Z8781-4:2013で規定されたL色空間)における色を演算する。
【0048】
更に、演算処理部105は、特定の色空間における色の演算処理結果を画像化して、外観に関する演算処理結果として出力する。これにより、演算処理部105は、陽極酸化処理による発色加工が施された金属素材の外観に対応する画像情報を生成することができる。
【0049】
図4は、演算処理部105で用いられる外観演算モデルの一例である薄膜干渉モデルを説明するための説明図である。
本モデルでは、金属素材の表面部分を、図4に示したように、金属で構成される領域、酸化膜を構成する酸化物で構成される領域、大気(空気)で構成される領域、という3種類の媒質からなる層でモデル化する。図4では、媒質1として、複素屈折率Nの空気が存在し、媒質2として、複素屈折率Nの酸化物が存在し、媒質3として、複素屈折率Nの金属が存在するものとしている。また、酸化膜の膜厚を、dと表記するものとする。
【0050】
なお、複素屈折率Nは、虚数単位iを用いて、以下の式(101)に示したように表記することができる。以下の式(101)において、nは、媒質jの屈折率であり、kは、媒質jの吸収率である。
【0051】
空気中から酸化膜の表面に対して入射角θで入射した、波長λ[nm]の光E(λ)は、酸化膜の表面で反射したり、酸化膜との界面を透過して、金属の表面で反射したり、酸化膜と空気との界面、又は、酸化膜と金属との界面で反射したりしながら、再び空気中へと射出され、観察者に視認されるものとする。また、以下では、媒質pから媒質qに向かうときの光の反射率をrpqと表し、媒質pから媒質qに向かうときの光の透過率をtpqと表すものとする。
【0052】
観察者が視認する光E(λ)は、酸化膜の表面で1回だけ反射した光E(λ)、酸化膜を透過し、金属の表面で1回だけ反射して、空気へと射出した光E(λ)、酸化膜を透過し、金属の表面で反射し、酸化膜と空気との界面で1回反射し、金属の表面で再び反射した後、空気へと射出した光E(λ)、・・・等が互いに干渉し、重ね合わされたものとなる。上記のような反射率rpq、透過率tpqを用いて、上記E(λ)について定式化すると、以下の式(103)のように表される。
【0053】
【数1】
【0054】
一方、式(105)に示したスネルの法則が成立することを留意した上で、波長λの光に関する振幅反射率r(λ)を、E(λ)/E(λ)と定義すると、この振幅反射率r(λ)は、以下の式(107)のように定式化することができる。ここで、以下の式(111)におけるΔは、以下の式(109)で表されるような位相差である。なお、上記式(103)~式(109)等に示した関係の詳細については、構造色研究会ホームページ(http://www.syoshi-lab.sakura.ne.jp/)等に記載されている。
【0055】
【数2】
【0056】
また、フレネルの公式によれば、隣り合う媒質jと媒質(j+1)との界面(jは、整数)での振幅反射率rj、j+1(λ)は、S偏光の光については以下の式(111)の右辺上段のように定式化することができ、P偏光の光については以下の式(111)の下段のように定式化することができる。一方、空気中を進行する光は、無偏光の光であるから、かかる光が有するエネルギー反射率をR(λ)と表すこととすると、このエネルギー反射率R(λ)は、S偏光の光が示す振幅反射率r(S)(λ)と、P偏光の光が示す振幅反射率r(P)(λ)と、を用いて、以下の式(113)のように表すことができる。すなわち、式(111)の右辺上段で表される関係を、式(107)に代入したものを、式(113)の右辺カッコ内第1項に代入し、式(111)の右辺下段で表される関係を、式(107)に代入したものを、式(113)の右辺カッコ内第2項に代入することで、エネルギー反射率R(λ)を算出することができる。このエネルギー反射率R(λ)が、「光が、発色加工が施された金属素材の表面に、ある入射角で入射し、入射角と同じ角度の反射角で反射するとしたときの反射率」であって、発色加工が施された金属素材を構成する金属と酸化膜とを一体として見たときの反射率であると言える。
【0057】
【数3】
【0058】
ここで、本実施形態に係る演算処理部105において、光E(λ)の入射角θとして、センサ部101が取得したセンサ情報から特定される、携帯端末10の傾き状態(図2に示す表面法線ベクトルの鉛直方向に対する傾き方向及び傾き角)を用いることとし、携帯端末10のユーザは、入射した光E(λ)の正反射方向から、反射光E(λ)を視認するものとする。
【0059】
ヒトは、可視光波長帯域に属する光(波長λが、例えば360~780nm程度の範囲内に属する光)の集合体を、色として視認する。そのため、上記のようなエネルギー反射率R(λ)についても、可視光波長帯域に属する波長の全てに対して考慮することが重要である。
【0060】
本実施形態に係る演算処理部105は、センサ部101から取得した傾き状態を示すセンサ情報と、設定値取得部103から取得した表面加工条件の設定値(表面加工種別設定値、素材設定値、膜厚設定値を含む。)と、記憶部111に記憶されている物性データ(大気の屈折率、金属素材の屈折率、酸化膜の屈折率を含む)と、に基づいて、上記のようにしてエネルギー反射率R(λ)を算出する。また、演算処理部105は、得られたエネルギー反射率R(λ)と、発色加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布(すなわち、入射光E(λ)の分光スペクトル)と、等色関数と、を用いて、XYZ表色系における色座標を算出する。
【0061】
ここで、本実施形態に係る演算処理部105では、上記の発色加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布として、CIE(国際照明委員会)に規定された標準光源の分光分布を用いることが好ましい。図5は、標準光源の一つであるD65標準光源の分光分布を示したグラフ図である。図5において、縦軸は、相対発光強度であり、横軸は、波長である。このような分光分布と、生成したエネルギー反射率R(λ)とを掛け合わせることで、各波長における光の強度を得ることができる。
【0062】
また、等色関数とは、ヒトによる色の見え方の標準的な感度を表したもの(換言すれば、ヒトの標準的な色覚を数値化した関数)である。図6は、XYZ表色系における等色関数を示したグラフ図であり、図6の縦軸は相対強度であり、横軸は波長である。XYZ表色系では、色は、図6に示したように、赤色に対応する色覚の刺激値x(チルダ、本明細書では、便宜上、チルダ記号を上付き文字として記載している。以下同様。)、緑色に対応する色覚の刺激値y(チルダ)、青色に対応する色覚の刺激値z(チルダ)の3種類の変数で構成されている。
【0063】
演算処理部105は、得られたエネルギー反射率R(λ)と、発色加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布(すなわち、標準光源の分光スペクトル)と、等色関数と、を用いて、以下の式(121)~式(125)に示したような演算を、可視光波長帯域に属する波長について行うことで、XYZ表色系における色座標(すなわち、色彩値XYZ)を算出する。ここで、以下の式(121)~式(125)におけるkは、任意の定数パラメータであり、S(λ)は、標準光源の分光分布の相対発光強度を表している。
【0064】
【数4】
【0065】
続いて、演算処理部105は、得られた色彩値XYZを、Y値で正規化して色彩値X’Y’Z’(すなわち、X’=X/Y、Y’=Y/Y=1、Z’=Z/Y)とした後、かかる色彩値を、L色空間における色彩値に変換する。かかる変換は、用いた標準光源における白色点の色彩値(X、Y、Z)を用いて、以下の式(131)~式(137)に基づき実施される。
【0066】
【数5】
【0067】
演算処理部105は、このようにして得られる色彩値Lを、外観に対応する画像情報として、出力部107に出力する。なお、本実施形態では、L色空間における色(座標)を外観に対応する画像情報としているが、これに限定されず、他の表色系により色を表現してもよい。
【0068】
以上のような演算の流れを、図7に流れ図として図示した。図7は、演算処理部105で実施される演算処理の流れの一例を示した流れ図である。このような流れで演算が行われることで、表面加工として発色加工が施された金属素材の外観に対応する画像情報を得ることができる。
【0069】
いま、金属素材としてチタン板の表面に対し、陽極酸化処理により膜厚10nm~300nmの範囲で酸化膜(TiO膜)を生成させたものに着目する。空気の複素屈折率Nは、N=1.00+0iであり、チタンの複素屈折率Nは、波長依存性を考慮しない複素屈折率を用いて、N=2.89+3.35iとする。また、酸化チタンTiOの複素屈折率Nは、波長依存性を考慮して、図8に示したような屈折率n及び吸収率kを示す複素屈折率とする。図8は、酸化チタンTiOの屈折率n及び吸収率kの波長依存性を示したグラフ図である。
【0070】
このようなチタン板の例について、上記の演算を実施することで、携帯端末10の傾け方に応じて変化する色を再現できる。図9は、酸化膜の形成されたチタン板の色の変化の様子を示した演算結果の一例である。図9において、横軸は色彩値aであり、縦軸は色彩値bである。また、図中の曲線は、携帯端末10がある傾きとなったときに、酸化膜の膜厚が0nmであった場合(すなわち、酸化膜を形成しなかった場合)から膜厚300nmであった場合まで、色彩値(a、b)の推移の様子を示している。曲線に沿って随所に記載されている数値が、酸化膜の膜厚を表している。このような色彩値を、表示部を構成する画素ごとに算出して表示させてもよいし、表示部の全面を同一色として表示させてもよい。
【0071】
なお、上記の例では、チタンの複素屈折率Nとして、波長依存性を考慮しない複素屈折率を用いているが、波長依存性を考慮した複素屈折率を用いてもよい。チタンの複素屈折率Nとして、波長依存性を考慮した複素屈折率を用いることで、演算結果を、実際のチタン板の外観の変化により一層近づけることができる。
【0072】
[梨地加工が施された金属素材の場合]
次に、バイブレーション加工による梨地加工が施された金属素材の外観について演算する演算処理について、図10及び図11を参照しながら、具体的に説明する。
【0073】
図10は、バイブレーション加工による梨地加工が施された金属素材の外観を演算する演算処理について説明するための説明図である。
バイブレーション加工は、金属素材の表面に、数μm~数百μm程度の深さを持つ、多数の渦状の研磨筋を付ける加工方法である。なお、梨地加工の他の一例であるヘアライン加工は、渦状の研磨筋ではなく、互いに略平行な多数の直線状の研磨筋を付ける加工方法である。
【0074】
かかる梨地加工では、素材となる金属素材の表面に凹凸が形成される。そこで、本実施形態に係る携帯端末10の設定値取得部103は、先だって説明したように、外観に影響を与える金属素材の表面加工条件の設定値として、金属素材の形状を示す情報の一例である形状設定値、金属素材の種別を示す情報の一例である素材設定値、及び、施される表面加工の種別を示す情報の一例である表面加工種別設定値を取得する。
【0075】
本実施形態に係る携帯端末10の記憶部111には、金属素材の表面に付与される凹凸の大きさ及び凹凸の分布状態を示す情報の一例として、図10に例示したような凹凸マップが、例えば、バイブレーション加工の場合の凹凸マップ、ヘアライン加工の場合の凹凸マップ・・・等のように、表面加工の種別ごと(更には、加工強度ごと)に格納されているものとする。なお、図10に例示した凹凸マップは、金属素材の表面は白く表示され、研磨筋は黒く表示されるように画像化したものであり、輝度が低い(すなわち、色が黒い)ほど、研磨筋が深いことを表している。
【0076】
また、本実施形態に係る携帯端末10の演算処理部105は、先だって言及した外観演算モデルとして、着目する金属素材の表面に所定の方向から入射した光について、その反射状態をモデル化した「反射モデル」を用いる。具体的には、センサ部101から取得した傾き状態を示すセンサ情報から算出される、表示部109の一例である表示画面の表面法線ベクトルの方向に光源が存在するとし、鉛直方向上方からヒトが物品の表面を観察する、とした反射モデルを用いる。
【0077】
この際、演算処理部105は、まず、センサ部101が取得した傾き状態のセンサ情報を用いて、図2に例示したような表面法線ベクトルの方向を設定する。その上で、演算処理部105は、上記のような反射モデルに基づき、形状設定値と、素材設定値と、表面加工種別設定値と、を用いて、陰影の分布状態、又は、特定の色空間(例えば、L色空間)における色の少なくとも何れかを演算する。
【0078】
演算処理部105は、上記設定値に基づき、記憶部111等から、対応する金属素材の色調(色合い)を示すデータ(例えば、色彩値のデータ等)、金属素材の屈折率を示すデータ、該当する凹凸マップのデータ等を取得し、反射モデルに基づく演算を行う。
【0079】
ここで、反射モデルに基づく具体的な演算の内容については、特に限定されるものではなく、市販されている、又は、オープンソースで提供されている各種のCG作成用レンダリングエンジン等を適宜用いて、演算結果を画像化することが可能である。
【0080】
図11は、平板状態の鋼板の表面にバイブレーション加工による梨地加工を施した場合の陰影を演算した演算処理結果を示したものである。図11に例示したように、上記のような演算処理を行うことで、演算処理部105は、梨地加工が施された金属素材について、その陰影の変化や色調の変化を画像化することが可能となる。
【0081】
なお、例えば光沢加工の場合は、表面に凹凸がほとんどない状態となるため、全面白色の凹凸マップを用いることで、反射モデルに基づく演算が行われる。また、成形品の場合は、成形品の形状を3次元モデルで定義して形状設定値として用い、素材設定値、表面加工種別設定値と共に、反射モデルに基づく演算が行われる。
【0082】
以上、演算処理部105で実施される演算処理について、例を挙げながら具体的に説明した。
【0083】
以上、本実施形態に係る携帯端末10の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0084】
例えば、以上説明したような本実施形態に係る携帯端末10が備える各処理部は、携帯端末と、外部に設けられたコンピュータ等の各種の情報処理装置との間で、分散して設けられていてもよい。この場合、携帯端末と、携帯端末の外部に、相互に通信が可能なように接続された情報処理装置と、が互いに連携することで、以上説明したような携帯端末10の機能が実現される。
【0085】
図12は、本実施形態に係る携帯端末の構成の変形例を示した説明図である。
例えば図12に示したように、以上説明したような演算処理部105の機能を、通信可能に接続された外部の情報処理装置に設けてもよい。この場合、携帯端末10Aの出力部107Aは、センサ部101により取得したセンサ情報と、設定値取得部103により取得した設定値とを、外部の情報処理装置に出力する。また、携帯端末10Aは、出力部107Aから出力したセンサ情報及び設定値に基づいて演算された、表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観の演算結果を、情報処理装置から取得する演算結果取得部115を更に備える。
【0086】
なお、上述のような本実施形態に係る携帯端末の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0087】
(表示処理方法について)
次に、図13を参照しながら、本実施形態に係る携帯端末10を用いた表示処理方法の流れについて、簡単に説明する。図13は、本実施形態に係る表示処理方法の流れの一例を示した流れ図である。
【0088】
本実施形態に係る表示処理方法は、先だって説明したような携帯端末10により実現されるものである。かかる表示処理方法は、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観に対応する画像情報を、携帯端末10が有する表示部109に表示する方法である。なお、かかる表面加工が施された金属素材又はその成形品は、その傾け方に応じて外観の見え方が変化する。
【0089】
かかる表示処理方法は、図13に示したように、設定値取得ステップ(ステップS101)と、センサ情報取得ステップ(ステップS103)と、演算処理ステップ(ステップS105)と、表示ステップ(ステップS107)と、を有している。
【0090】
設定値取得ステップ(ステップS101)は、先だって説明した携帯端末10を介して、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観の見え方に影響を与える金属素材の表面加工条件の設定値を取得するステップである。かかる設定値取得ステップにより、携帯端末10は、素材設定値、膜厚設定値、形状設定値、表面加工種別設定値等の各種の設定値を取得し、後段の演算処理ステップで実施される演算処理の設定値とする。
【0091】
センサ情報取得ステップ(ステップS103)は、携帯端末10が有するセンサ部101により、携帯端末10の傾き状態を示すセンサ情報を取得するステップである。ここで、傾き状態を示すセンサ情報は、上述したとおり、携帯端末10が実空間における鉛直方向に対してどの方向に傾斜しているか、どの程度傾斜しているかを特定する情報であり、例えば、図2に示したようなピッチ角θやロール角θ等からセンサ部101により求められる。センサ情報から特定される携帯端末10の傾き状態(傾き方向、傾き角)に応じて、後段の演算処理ステップにおいて、演算処理が実施されて、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観に対応する画像情報が生成される。
【0092】
演算処理ステップ(ステップS105)は、携帯端末10により、予め設定された上述の外観演算モデルに基づき、ステップS103で取得したセンサ情報(傾き方向)と、ステップS101で取得した表面加工条件の設定値とを用いて、携帯端末10の傾け方に応じた金属素材の外観を演算するステップである。これにより、携帯端末10の傾け方に応じた金属素材の外観に対応する画像情報が生成される。
【0093】
表示ステップ(ステップS107)は、携帯端末10により、外観の演算結果に対応する画像情報を、表示部109に表示するステップである。これにより、演算処理ステップにおいて生成された、金属素材の外観に対応する画像情報が表示画面に表示され、携帯端末10のユーザは、着目している金属素材に対して所望の表面加工(設定した表面加工条件での表面加工)を施した場合に、その金属素材の傾け方に応じて外観がどのように変化するのかを、注文前にその場で把握することが可能となる。
【0094】
なお、上記図13において、設定値取得ステップ(ステップS101)と、センサ情報取得ステップ(ステップS103)の順序は、逆であってもよいし、設定値取得ステップ(ステップS101)とセンサ情報取得ステップ(ステップS103)とを並行して実施してもよい。
【0095】
以上、図13を参照しながら、本実施形態に係る情報処理方法の流れについて、簡単に説明した。
【0096】
(システムについて)
<システムの全体的な構成について>
次に、上記のような携帯端末を用いたシステムの全体的な構成について、図14を参照しながら説明する。図14は、本実施形態に係るシステムについて説明するための説明図である。
【0097】
図14に模式的に示したように、本実施形態に係るシステム1は、インターネットをはじめとする各種のネットワーク3を介して、携帯端末10Bと、情報処理装置20と、が相互に接続されている。
【0098】
携帯端末10Bは、先だって説明したように、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観に対応する画像情報を、表示部109に表示する装置であり、金属素材の営業支援に用いられる。ここで、表面加工が施された金属素材又はその成形品は、その傾け方に応じて、外観の見え方が変化する。かかる携帯端末10Bの構成については、以下で改めて説明する。
【0099】
情報処理装置20は、着目している金属素材に対して、携帯端末10Bにおいて設定(指定)された表面加工条件で表面加工を施す工程を管理する装置である。かかる情報処理装置20の構成については、以下で改めて説明する。
【0100】
このような携帯端末10B及び情報処理装置20で構成されるシステム1のユースケースとしては、例えば、金属素材に対して各種の表面加工を施す加工業者が情報処理装置20を保持しており、かかる加工業者の営業担当者が、顧客のもとに携帯端末10Bを持参して、商談を行うような場合が考えられる。
【0101】
この際、顧客のもとに出向く営業担当者は、表面加工が施された金属素材又はその成形品のサンプル品を持参するかわりに、携帯端末10Bを用いて、顧客に対して、様々なサンプル品に対応する画像情報(以下、「サンプル画像」と称する場合もある。)を提示する。顧客に提示したサンプル画像の中に、顧客のニーズに合致するものが存在した場合、携帯端末10Bを用いて、顧客のニーズに合致した金属素材の作製指示(依頼)を受け付ける。携帯端末10Bは、顧客のニーズに合致した表面加工条件の設定値を示す情報とあわせて、作製指示(依頼)を表すデータを、ネットワーク3を介して情報処理装置20に送信する。
【0102】
情報処理装置20は、作製指示を表すデータを取得すると、かかるデータに関連付けられている、表面加工条件の設定値を示す情報を用いて、顧客の所望する金属素材を作製する工程の管理(例えば、表面加工を実施する工程の管理)を行う。これにより、顧客の求める金属素材(すなわち、所望の表面加工条件で表面加工が施された金属製品又はその成形品)をよりスムーズに作製することが可能となる。
【0103】
<携帯端末10Bの構成について>
以上概略を説明したようなシステム1における携帯端末10Bの構成について、図15を参照しながら説明する。図15は、本実施形態に係るシステムにおける携帯端末の構成の一例を示したブロック図である。
【0104】
かかる携帯端末10Bは、図15に示したように、センサ部101と、設定値取得部103Aと、演算処理部105と、出力部107と、表示部109と、記憶部111と、作製指示受付部121と、を有しており、出力部107は、更に、設定値出力部123を有している。また、かかる携帯端末10Bは、更に、キーワード取得部125と、キーワード出力部127と、顧客情報取得部129と、顧客情報出力部131と、を有していることが好ましい。
【0105】
ここで、センサ部101、演算処理部105、出力部107、表示部109、及び、記憶部111については、図1に示した携帯端末10における各処理部と同様の構成を有し、同様の機能を示すものであるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0106】
また、設定値取得部103Aは、先だって説明したような、各種の表面加工条件の設定値を取得する処理部である。かかる設定値取得部103Aは、図1を参照しながら説明したような設定値取得部103の機能に加え、更に、情報処理装置20から送信された設定値を取得して、演算処理部105に出力する機能を有している。
【0107】
作製指示受付部121は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、入力装置、通信装置等により実現される。作製指示受付部121は、携帯端末10Bの表示部109(例えば、表示画面)に表示された金属素材について、その作製指示(依頼)を受け付ける処理部である。これにより、例えば携帯端末10Bの利用者が指定した金属素材について、その作製指示(依頼)を電子的に取得して、情報処理装置20へと伝達することが可能となる。
【0108】
作製指示受付部121は、ある金属素材又はその成形品について、その作製指示を取得すると、記憶部111等に格納されている履歴情報を参照して、作製指示を受け付けた金属素材又はその成形品に関連付けられた各種の設定値を取得する。その後、受け付けた作製指示を表すデータと、取得した設定値を示すデータと、を互いに関連付けて、後述する設定値出力部123へと出力する。
【0109】
設定値出力部123は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。設定値出力部123は、受け付けた作製指示に対応する金属素材に関連付けられた表面加工条件の設定値を、情報処理装置20に出力する。これにより、情報処理装置20には、金属素材の作製指示(依頼)が、その作製指示に合致した表面加工条件の設定値と共に出力されるようになり、作業の効率化を図ることが可能となる。
【0110】
キーワード取得部125は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、入力装置、通信装置等により実現される。キーワード取得部125は、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観についての特徴(顧客が希望する外観の特徴)を示すキーワードを取得する。取得したキーワードに基づき、情報処理装置20が後述するような処理を実施することで、顧客が好みそうな特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出することが可能となる。キーワード取得部125は、取得したキーワードを示す情報を、キーワード出力部127へと出力する。
【0111】
キーワード出力部127は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。キーワード出力部127は、キーワード取得部125が取得したキーワードを示す情報を情報処理装置20に出力する。
【0112】
顧客情報取得部129は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、入力装置、通信装置等により実現される。顧客情報取得部129は、顧客に関する各種の情報(顧客情報)を取得する。このような顧客情報として、例えば、個人名、企業名、性別、年齢、職業、関心事項等を挙げることができる。取得した顧客情報に基づき、情報処理装置20が後述するような処理を実施することで、顧客が好みそうな特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出することが可能となる。顧客情報取得部129は、取得した顧客情報を、顧客情報出力部131へと出力する。
【0113】
顧客情報出力部131は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。顧客情報出力部131は、顧客情報取得部129が取得した顧客情報を情報処理装置20に出力する。
【0114】
以上、本実施形態に係る携帯端末10Bの機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0115】
なお、上述のような本実施形態に係る携帯端末の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0116】
<情報処理装置の構成について>
次に、図16を参照しながら、本実施形態に係るシステム1が有する情報処理装置20の構成について、詳細に説明する。図16は、本実施形態に係るシステムにおける情報処理装置の構成の一例を示したブロック図である。
【0117】
本実施形態に係る情報処理装置20は、金属素材に対して表面加工を施す工程を統括的に管理する装置である。かかる情報処理装置20は、図16に模式的に示したように、条件取得部201と、工程管理部203と、キーワード取得部205と、顧客情報取得部207と、推奨加工条件抽出部209と、推奨加工条件出力部211と、記憶部213と、を主に備える。
【0118】
条件取得部201は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。条件取得部201は、携帯端末10Bから出力された作製指示を表すデータを参照し、かかるデータに関連付けられている、表面加工条件を示す情報(より詳細には、表面加工条件の設定値)を取得する。条件取得部201は、表面加工条件の設定値を取得すると、かかる設定値を示す情報を、工程管理部203へと出力する。また、条件取得部201は、取得した作製指示を表すデータに、当該データを取得した日時等に関する時刻データを関連付けた上で、後述する記憶部211に対し、履歴情報(過去の注文実績、各種設定値の入力実績等)や顧客情報(個人名、企業名、性別、年齢、職業、関心事項等)として記録することが好ましい。
【0119】
工程管理部203は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、出力装置、通信装置等により実現される。工程管理部203は、取得した表面加工条件に基づき、金属素材に対し、条件に対応する表面加工を施す工程の管理を行う。これにより、受注した作製指示に合致した表面加工が実施されるようになる。本実施形態において、「工程の管理」とは、着目する表面加工処理工程が適切に実施されるように、作業者や加工機器等に作業を促したり、作業者や加工機器等に表面加工処理を実施させたり、表面加工処理工程の実施状況を確認したり、適切に表面加工処理工程が終了したかを確認したりすることを含む。
【0120】
ここで、工程管理部203は、取得した表面加工条件に基づき、条件に対応する表面加工を実施するための制御信号を、表面加工工程を管理するプロセスコンピュータ等の制御装置に対して出力することで、表面加工工程を直接的に管理してもよい。また、工程管理部203は、取得した表面加工条件を示す情報を、紙媒体に出力したり、表面加工工程を担当する作業者が保持する携帯情報端末に出力したりして、表面加工工程を担当する作業者に、該当する表面加工を実施させてもよい。
【0121】
キーワード取得部205は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。キーワード取得部205は、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観についての特徴(ユーザが希望する外観の特徴)を示すキーワードを、携帯端末10Bから取得する。キーワード取得部205は、かかるキーワードを示す情報を取得すると、かかるキーワードを示す情報を、推奨加工条件抽出部209へと出力する。
【0122】
顧客情報取得部207は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。顧客情報取得部207は、顧客情報を、携帯端末10Bから取得する。顧客情報取得部207は、顧客情報を取得すると、かかる顧客情報を、推奨加工条件抽出部209へと出力する。
【0123】
推奨加工条件抽出部209は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)等により実現される。推奨加工条件抽出部207は、携帯端末10Bから出力された、表面加工が施された金属素材又はその成形品の外観についての特徴を示すキーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、その特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する。これにより、推奨加工条件抽出部209は、携帯端末10Bのユーザ(すなわち、携帯端末10Bを利用している顧客)が気に入りそうな表面加工条件を抽出することが可能となり、場合によっては、顧客が想像すらしていない、顧客が好みそうな表面加工条件を、顧客に提案することが可能となる。
【0124】
また、推奨加工条件抽出部209は、携帯端末10Bから出力された顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、かかる顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する。これにより、推奨加工条件抽出部209は、携帯端末10Bのユーザ(すなわち、携帯端末10Bを利用している顧客)が気に入りそうな表面加工条件を抽出することが可能となる。
【0125】
ここで、かかる機械学習モデルは、例えば、記憶部213に格納されている。また、かかる機械学習モデルは、顧客の業種や過去の注文履歴等を含む教師データに基づき、公知の様々な機械学習アルゴリズムに即して、学習が行われたものとする。また、かかる機械学習モデルは、蓄積されていく顧客情報等に応じて、随時更新されることが好ましい。
【0126】
推奨加工条件抽出部209は、推奨加工条件を抽出すると、かかる推奨加工条件に関する情報を、推奨加工条件出力部211へと出力する。
【0127】
推奨加工条件出力部211は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ(ROM、RAM等)、通信装置等により実現される。推奨加工条件出力部211は、抽出された推奨加工条件を示す情報を、携帯端末10Bに出力する。これにより、携帯端末10Aの演算処理部105は、取得した推奨加工条件に基づき、携帯端末10Bの傾け方に応じた金属素材の外観について演算することが可能となり、携帯端末10Bの表示部109は、推奨加工条件に基づく金属素材の外観の演算結果に対応する画像情報を、表示部109に表示できる。
【0128】
記憶部213は、情報処理装置20が備える記憶装置の一例であり、例えば、ROM、RAM、ストレージ装置等により実現される。この記憶部213には、本実施形態に係る情報処理装置20が、各種の処理を実施する際に用いる各種の機械学習モデルや顧客情報等が記録されている。また、この記憶部213には、本実施形態に係る情報処理装置20が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過(例えば、事前に格納されている各種のデータやプログラム等)が、適宜記録される。この記憶部211は、条件取得部201、工程管理部203、キーワード取得部205、顧客情報取得部207、推奨加工条件抽出部209、推奨加工条件出力部211等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
【0129】
以上、本実施形態に係る情報処理装置20の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0130】
なお、上述のような本実施形態に係る管理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0131】
(システム1における処理の流れ)
以下では、図17を参照しながら、本実施形態に係るシステム1における各処理の流れの一例について、簡単に説明する。図17は、本実施形態に係るシステムにおける各処理の流れの一例を示した流れ図である。
【0132】
本実施形態に係るシステム1では、例えば、金属素材又はその加工品の営業担当者が、携帯端末10Bを所持して、顧客のもとまで営業に行くものとする。顧客や営業担当者は、携帯端末10Bを適宜操作しながら、金属素材又はその加工品の外観を検索していく。
【0133】
この際、携帯端末10Bの設定値取得部103Aは、営業担当者又は顧客が入力した各種の設定値を取得し(ステップS201)、得られた設定値に関する情報を演算処理部105へと出力するとともに、携帯端末10Bのセンサ部101は、携帯端末10Bの傾きを示すセンサ情報を取得して(ステップS203)、得られたセンサ情報を演算処理部105へと出力する。
【0134】
携帯端末10Bの演算処理部105は、取得した設定値及びセンサ情報を用いて、先だって例示したような演算処理を行い(ステップS205)、得られた演算処理結果(すなわち、着目している金属素材又はその成形品の外観を模擬したもの)を、携帯端末10Bの表示部109に表示する(ステップS207)。
【0135】
また、営業担当者又は顧客により、顧客に関する各種の顧客情報が携帯端末10Bに入力されると、携帯端末10Bの顧客情報取得部129は、入力された顧客情報を取得し(ステップS209)、取得した顧客情報を、顧客情報出力部131を介して、情報処理装置20へと出力する。
【0136】
携帯端末10Bから出力された顧客情報は、情報処理装置20の顧客情報取得部207により取得され(ステップS211)、顧客情報取得部207は、取得した顧客情報を、情報処理装置20の推奨加工条件抽出部209へと出力する。
【0137】
また、営業担当者又は顧客により、顧客の求める金属素材又はその成形品の外観についての特徴を示すキーワードが携帯端末10Bに入力されると、携帯端末10Bのキーワード取得部125は、入力されたキーワードに関する情報を取得し(ステップS213)、取得したキーワードに関する情報を、キーワード出力部127を介して、情報処理装置20へと出力する。
【0138】
携帯端末10Bから出力されたキーワードに関する情報は、情報処理装置20のキーワード取得部205により取得され(ステップS215)、キーワード取得部205は、取得したキーワードに関する情報を、情報処理装置20の推奨加工条件抽出部209へと出力する。
【0139】
情報処理装置20の推奨加工条件抽出部209は、取得した顧客情報やキーワードに関する情報を用いて、顧客が好みそうな外観を実現できる加工条件(すなわち、推奨加工条件)を抽出して(ステップS217)、情報処理装置20の推奨加工条件抽出部211を介して携帯端末10Bへと出力する。
【0140】
携帯端末10Bの設定値取得部103Aは、情報処理装置20から出力された推奨加工条件に対応する設定値を取得し(ステップS219)、取得した推奨加工条件に対応する設定値を演算処理部105へと出力する。また、携帯端末10Bのセンサ部101は、センサ情報を取得し(ステップS221)、取得したセンサ情報を演算処理部105へと出力する。携帯端末10Bの演算処理部105は、取得した推奨加工条件に対応する設定値と、センサ情報とを用いて演算処理を実施し(ステップS223)、得られた演算処理結果(すなわち、着目している金属素材又はその成形品の外観を模擬したもの)を、携帯端末10Bの表示部109に表示する(ステップS225)。
【0141】
上記のような流れが、営業担当者や顧客により繰り返されることで、あるタイミングで、顧客のニーズに合致した金属素材又はその成形品が見いだされると、携帯端末10Bの作製指示受付部121は、顧客のニーズに合致した金属素材又はその成形品の作成指示を受け付ける(ステップS227)。
【0142】
すると、携帯端末10Bの設定値出力部123は、作製指示を受け付けた金属素材又はその成形品に対応する表面加工処理の設定値を、情報処理装置20へと出力する(ステップS229)。
【0143】
情報処理装置20の条件取得部201は、携帯端末10Bから、作製指示を受け付けた金属素材又はその成形品の表面加工処理の設定値を取得すると(ステップS231)、取得した設定値を、情報処理装置20の工程管理部203へと出力する。情報処理装置20の工程管理部203は、取得した設定値に基づき、表面加工処理工程の管理を実施する(ステップS233)。これにより、顧客の求める金属素材又はその成形品が、適切に作製されることとなる。
【0144】
(携帯端末のハードウェア構成について)
次に、図18を参照しながら、本実施形態に係る携帯端末10、10A、10Bのハードウェア構成について、詳細に説明する。図18は、本実施形態に係る携帯端末10、10A、10Bのハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0145】
携帯端末10、10A、10Bは、主に、プロセッサ901と、メモリ903と、を備える。また、携帯端末10、10A、10Bは、更に、ホストバス907、ブリッジ909、外部バス911、インターフェース913、センサ914、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923及び通信装置925を備える。
【0146】
例えばCPU等に代表されるプロセッサ901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、メモリ903、ストレージ装置919、又はリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、携帯端末10、10A、10B内の動作全般又はその一部を制御する。例えばROMやRAM等で実現されるメモリ903は、プロセッサ901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAMは、プロセッサ901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。
【0147】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0148】
センサ914は、携帯端末10、10A、10Bの傾き度合いを検出するセンサや、ユーザの動きを検知するセンサや、現在位置を表す情報を取得するセンサ等の検出手段である。かかるセンサの一例として、加速度センサ、重力検知センサ、落下検出センサ等を含む3軸加速度センサ、角速度センサ、手振れ補正センサ、地磁気センサ等を含む3軸ジャイロセンサ等のモーションセンサや、GPSセンサ等を挙げることができる。また、センサ914は、上述のもの以外にも、温度計、照度計、湿度計などの様々な測定機器を備えていてもよい。
【0149】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、携帯端末10、10A、10Bの操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、プロセッサ901に出力する入力制御回路などから構成されている。携帯端末10、10A、10Bのユーザは、この入力装置915を操作することにより、携帯端末10、10A、10Bに対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0150】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置などがある。出力装置917は、例えば、携帯端末10、10A、10Bが行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、携帯端末10、10A、10Bが行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0151】
ストレージ装置919は、携帯端末10、10A、10Bの記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、プロセッサ901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種データなどを格納する。
【0152】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、携帯端末10、10A、10Bに内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM等に代表されるメモリ903に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD-DVDメディア、Blu-rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0153】
接続ポート923は、機器を携帯端末10、10A、10Bに直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS-232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、携帯端末10、10A、10Bは、外部接続機器929から直接各種データを取得したり、外部接続機器929に各種データを提供したりする。
【0154】
通信装置925は、例えば、通信網931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
【0155】
以上、本実施形態に係る携帯端末10、10A、10Bの機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0156】
また、本実施形態に係る情報処理装置20のハードウェア構成は、センサ914を有していない以外は、本実施形態に係る携帯端末10、10A、10Bと同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0157】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0158】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲、後述するような本発明の技術的範囲に属する構成及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は、その効果を損なわない範囲内で、任意に組み合わせることが可能である。また、当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0159】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって、限定的ではない。つまり、本発明に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0160】
なお、以下のような構成も、本発明の技術的範囲に属する。
(1)
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、
前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理部と、
前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、
を備える、携帯端末。
(2)
前記表面加工は、前記金属素材の表面に酸化膜を形成する加工を含み、
前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記酸化膜の膜厚を示す情報を取得し、
前記演算処理部は、
金属表面に膜厚既知の薄膜が存在する場合の光の干渉状態をモデル化した薄膜干渉モデルを用いて、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定取得部により取得した前記膜厚を示す情報と、大気の屈折率、前記金属素材の屈折率、及び、前記酸化膜の屈折率と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における光の反射率を演算し、
得られた前記反射率を用いて、特定の色空間における色を演算する、(1)に記載の携帯端末。
(3)
前記演算処理部は、
光が、前記表面加工が施された金属素材の表面に、前記センサ部により取得した前記センサ情報に対応する入射角で入射し、前記入射角と同じ角度の反射角で反射するとしたときの前記反射率を演算し、
前記表面加工が施された金属素材の表面に入射する光の分光分布と、得られた前記反射率と、等色関数と、に基づいて、前記色空間における色を演算する、(2)に記載の携帯端末。
(4)
前記表面加工は、前記金属素材の表面に凹凸を形成する加工を含み、
前記設定値取得部は、前記設定値として、前記金属素材の形状を示す情報、前記金属素材の種別を示す情報、及び、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさと前記凹凸の分布状態を示す情報を取得し、
前記表示部の表面法線ベクトルの方向に光源が存在するとしたときの反射モデルを用いて、前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記形状を示情報と、前記金属素材の種別を示す情報と、前記表面加工により形成される前記凹凸の大きさ及び前記凹凸の分布状態を示情報と、に基づき、前記表面加工が施された金属素材の表面部分における陰影の分布状態、又は、特定の色空間における色の少なくとも何れかを演算する、(1)に記載の携帯端末。
(5)
前記センサ部は、第1の時間間隔ごとに前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得し、
前記演算処理部は、取得した前記センサ情報に基づいて、前記第1の時間間隔ごと、又は、前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔ごとに、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する、(1)~(4)の何れか1つに記載の携帯端末。
(6)
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品を表示する携帯端末であって、
前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得部と、
前記センサ部により取得した前記センサ情報と、前記設定値取得部により取得した前記設定値とを、通信可能に接続された外部の情報処理装置に出力する出力部と、
前記出力部から出力した前記センサ情報及び前記設定値に基づいて演算された、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観の演算結果を、前記情報処理装置から取得する演算結果取得部と、
前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示部と、
を備える、携帯端末。
(7)
表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観に対応する画像情報を、携帯端末に表示する表示処理方法であって、
前記携帯端末が有するセンサ部により、前記携帯端末の傾き状態を示すセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記携帯端末を介して、前記金属素材の表面加工条件の設定値を取得する設定値取得ステップと、
前記センサ情報取得ステップで取得した前記センサ情報と、前記設定値取得ステップで取得した前記設定値とに基づいて、前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観を演算する演算処理ステップと、
前記携帯端末において、前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する表示ステップと、
を有する、表示処理方法。
(8)
(1)~(6)の何れか1つに記載の携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続された情報処理装置と、を備えるシステムであって、
前記携帯端末は、
前記表示部に表示された前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の作製指示を受け付ける作製指示受付部と、
受け付けた前記作製指示に対応する前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品に関連付けられた前記表面加工条件の設定値を、前記情報処理装置に出力する設定値出力部と、
を更に備え、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記表面加工条件を取得する条件取得部と、
前記表面加工条件に基づき、前記作製指示に対応する前記金属素材に対し、前記表面加工条件に対応する前記表面加工を施す工程の管理を行う工程管理部と、
を備える、システム。
(9)
前記携帯端末は、
前記表面加工が施された金属素材又は前記表面加工が施された金属素材の成形品の外観についての特徴を示すキーワードを取得するキーワード取得部と、
取得した前記キーワードを前記情報処理装置に出力するキーワード出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記キーワードを、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記特徴を有する外観になる表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(8)に記載のシステム。
(10)
前記携帯端末は、
顧客情報を取得する顧客情報取得部と、
取得した前記顧客情報を前記携帯端末に出力する顧客情報出力部と、
を更に有し、
前記情報処理装置は、
前記携帯端末から出力された前記顧客情報を、予め学習させた機械学習モデルに入力して、前記顧客情報により特定される顧客が過去に注文した実績と同一又は類似の表面加工条件を、推奨加工条件として抽出する推奨加工条件抽出部と、
抽出した前記推奨加工条件を前記携帯端末に出力する推奨加工条件出力部と、
を更に備え、
前記携帯端末の前記演算処理部は、取得した前記推奨加工条件で表面加工が施された金属素材又は表面加工が施された金属素材の成形品の外観を更に演算し、
前記携帯端末の前記表示部は、前記推奨加工条件に基づく前記外観の演算結果に対応する画像情報を表示する、(8)に記載のシステム。
【符号の説明】
【0161】
1 システム
3 ネットワーク
10、10A、10B 携帯端末
20 管理装置
101 センサ部
103 設定値取得部
105 演算処理部
107、107A 出力部
109 表示部
111、213 記憶部
115 演算結果取得部
121 作製依頼受付部
123 設定値出力部
125、205 キーワード取得部
127 キーワード出力部
129、207 顧客情報取得部
131 顧客情報出力部
201 条件取得部
203 工程管理部
209 推奨加工条件抽出部
211 推奨加工条件出力部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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