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特開2024-20784温度測定装置、プログラム、及び、残り寿命導出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020784
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】温度測定装置、プログラム、及び、残り寿命導出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240207BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20240207BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01N17/00
G01K7/02 Z
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123228
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池山 友悠
(72)【発明者】
【氏名】松村 能之
【テーマコード(参考)】
2G036
2G050
【Fターム(参考)】
2G036AA18
2G036AA24
2G036BA30
2G036BB02
2G050AA01
2G050BA10
2G050BA20
2G050EA01
2G050EB02
2G050EC10
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数で有寿命部品の精度良く残り寿命を導出する。
【解決手段】温度測定装置10は、電解コンデンサCと、熱電対91が接続された端子17Aとを備える。温度測定装置10は、熱電対91により温度を測定する。温度測定装置10は、熱電対91による温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された端子17Aの端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と電解コンデンサCの部品温度との関係から、電解コンデンサCの部品温度を導出する部品温度導出部15Fと、部品温度導出部15Fが導出した部品温度に基づいて、電解コンデンサCの残り寿命を導出する残り寿命導出部15Gと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有寿命部品と、熱電対が接続された端子とを備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置であって、
前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出部と、
前記部品温度導出部が導出した前記部品温度に基づいて、前記有寿命部品の残り寿命を導出する残り寿命導出部と、
を備える温度測定装置。
【請求項2】
前記部品温度導出部は、所定期間ごとに前記部品温度を導出し、
前記残り寿命導出部は、
前記所定期間ごとに、その所定期間での前記部品温度で全寿命使用され続けたとしたときの前記有寿命部品の寿命に対する、その所定期間で減った寿命の割合を導出し、
前記所定期間ごとに導出した前記割合を積算し、積算した積算割合に基づいて前記残り寿命を導出する、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記残り寿命導出部により導出される前記割合は、前記部品温度に応じて連続的に変化する値である、
請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記残り寿命導出部は、最近の前記所定期間での前記部品温度で全寿命使用され続けたとしたときの前記有寿命部品の寿命から、当該寿命に前記積算割合を乗じた値を減じて前記残り寿命を導出する、
請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記温度測定装置は、前記熱電対により測定した制御対象の温度と目標温度との偏差に応じた電流を操作端に出力することで前記制御対象の温度をフィードバック制御する制御機器として構成され、
前記部品温度導出部は、前記端子温度と、前記操作端への前記電流の電流値とに基づいて、予め定められた端子温度と前記操作端への電流の電流値と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記部品温度を導出する、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記残り寿命導出部により導出された前記残り寿命を表す情報を出力する残り寿命出力部をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項7】
熱電対が接続された端子を備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置が備える有寿命部品の残り寿命を導出するコンピュータに、
前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出ステップと、
前記部品温度導出ステップで導出した前記部品温度に基づいて前記残り寿命を導出する残り寿命導出ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
熱電対が接続された端子を備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置が備える有寿命部品の残り寿命を導出する残り寿命導出方法であって、
前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出ステップと、
前記部品温度導出ステップで導出した前記部品温度に基づいて前記残り寿命を導出する残り寿命導出ステップと、
を有する残り寿命導出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対により温度を測定する温度測定装置に使用されている有寿命部品の残り寿命を導出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電対により温度を測定する温度測定装置の電源回路などには、電解コンデンサなどの有寿命部品が使用されることがある。ユーザは、有寿命部品の寿命を管理して、当該寿命が終わる前に、有寿命部品を交換する。有寿命部品の交換は、有寿命部品単体、有寿命部品を含む所定のユニット、又は、有寿命部品を含む製品全体を単位として行われる。有寿命部品の寿命は、有寿命部品の部品温度が高くなると、その分短くなる。このような寿命の変化が寿命の管理に反映されない場合、安全のために寿命よりも相当短い期間での交換が実施されるため、不経済となる。
【0003】
特許文献1には、プログラマブルコントローラ内に、有寿命部品を有する電源部の部品温度が所定温度以上になったときに作動するサーマルリレーを設け、このサーマルリレーが作動した時間を監視することで、電源部の寿命の残り寿命を精度良く導出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-175112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は温度測定装置に係るものではないが、仮に、当該技術を、有寿命部品を備えた温度測定装置に適用した場合、この温度測定装置にサーマルリレーを設ける必要が生じる。従って、有寿命部品の残り寿命の導出に使用する部品が多くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、少ない部品点数で有寿命部品の残り寿命を精度良く導出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る温度測定装置は、有寿命部品と、熱電対が接続された端子とを備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置であって、前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出部と、前記部品温度導出部が導出した前記部品温度に基づいて、前記有寿命部品の残り寿命を導出する残り寿命導出部と、を備える。
【0008】
一例として、前記部品温度導出部は、所定期間ごとに前記部品温度を導出し、前記残り寿命導出部は、前記所定期間ごとに、その所定期間での前記部品温度で全寿命使用され続けたとしたときの前記有寿命部品の寿命に対する、その所定期間で減った寿命の割合を導出し、前記所定期間ごとに導出した前記割合を積算し、積算した積算割合に基づいて前記残り寿命を導出する。
【0009】
一例として、前記残り寿命導出部により導出される前記割合は、前記部品温度に応じて連続的に変化する値である。
【0010】
一例として、前記残り寿命導出部は、最近の前記所定期間での前記部品温度で全寿命使用され続けたとしたときの前記有寿命部品の寿命から、当該寿命に前記積算割合を乗じた値を減じて前記残り寿命を導出する。
【0011】
一例として、前記温度測定装置は、前記熱電対により測定した制御対象の温度と目標温度との偏差に応じた電流を操作端に出力することで前記制御対象の温度をフィードバック制御する制御機器として構成され、前記部品温度導出部は、前記端子温度と、前記操作端への前記電流の電流値とに基づいて、予め定められた端子温度と前記操作端への電流の電流値と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記部品温度を導出する。
【0012】
一例として、前記温度測定装置は、前記残り寿命導出部により導出された前記残り寿命を表す情報を出力する残り寿命出力部をさらに備える。
【0013】
本発明に係るプログラムは、熱電対が接続された端子を備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置が備える有寿命部品の残り寿命を導出するコンピュータに、前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出ステップと、前記部品温度導出ステップで導出した前記部品温度に基づいて前記残り寿命を導出する残り寿命導出ステップと、を実行させる。
【0014】
本発明に係る残り寿命導出方法は、熱電対が接続された端子を備え、前記熱電対により温度を測定する温度測定装置が備える有寿命部品の残り寿命を導出する残り寿命導出方法であって、前記熱電対による前記温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された前記端子の端子温度に基づいて、予め定められた端子温度と前記有寿命部品の部品温度との関係から、前記有寿命部品の部品温度を導出する部品温度導出ステップと、前記部品温度導出ステップで導出した前記部品温度に基づいて前記残り寿命を導出する残り寿命導出ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少ない部品点数で有寿命部品の残り寿命を精度良く導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る温度測定装置の構成図である。
図2図2は、図1の制御回路のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る温度測定装置10は、制御対象の温度を制御する制御機器(温度調節器、PLC(Programmable Logic Controller)など)として構成されている。制御機器としての温度測定装置10は、制御対象の温度を熱電対91により測定する機能の他、測定した当該温度と目標温度との偏差に応じた操作量(偏差に応じた電流量など)をヒータなどの操作端92に入力することで制御対象の温度をフィードバック制御する機能も備える。
【0019】
温度測定装置10は、筐体11と、電源回路12と、熱電対入力回路13と、端子温度センサ入力回路14と、制御回路15と、電流出力回路16と、端子17A及び17Bと、端子温度センサ18と、絶縁接続回路19A及び19Bと、通信部21と、表示部22と、を備える。
【0020】
筐体11は、箱状に設けられ、各種回路12~16、19A及び19Bと、端子温度センサ18と、を収容している。端子17A及び17B、通信部21、及び、表示部22のそれぞれは、一部が筐体11から露出した状態で配置される。例えば、温度測定装置10の外部に配置されている熱電対91が接続される端子17Aは、熱電対91が接続される部分が筐体11から露出した状態で配置される。
【0021】
電源回路12は、外部電源からの交流電力を直流電力に変換する。電源回路12は、変換した直流電力を各種回路12~16、絶縁接続回路19A及び19B、通信部21、及び、表示部22に供給し、これらを動作させる。電源回路12は、有寿命部品としての電解コンデンサCを備える。この実施の形態では、電解コンデンサCの残り寿命が導出される。
【0022】
熱電対入力回路13は、端子17Aを介して、熱電対91に接続されている。熱電対入力回路13には、熱電対91から、制御対象の温度に応じた電気信号が入力される。この電気信号は、熱電対91に設けられた制御対象に接する測温接点の温度と、基準接点の温度、ここでは、端子17Aの温度である端子温度と、の温度差により生じる起電力からなる。熱電対入力回路13は、入力された熱電対91からの電気信号を、アナログ・デジタル変換し、絶縁接続回路19Aを介して制御回路15に入力する。絶縁接続回路19Aは、フォトカプラ、又は、デジタルアイソレータなどを含んで構成され、熱電対入力回路13と制御回路15とを絶縁しつつ電気信号を伝達可能に接続している。
【0023】
端子温度センサ入力回路14は、端子17Aの端子温度を測定する端子温度センサ18に接続されている。端子温度センサ18は、端子17Aに直接又は端子17Aに接続された回路基板の所定箇所などに接して、端子17Aそのもの又は端子17Aの周囲の温度を端子温度として測定するように配置される。端子温度センサ18は、端子温度に応じてその抵抗値が変化する測温抵抗体からなる。端子温度センサ入力回路14には、端子温度センサ18の抵抗値を示す電気信号が入力される。端子温度センサ入力回路14は、入力された電気信号を、アナログ・デジタル変換し、絶縁接続回路19Bを介して制御回路15に入力する。絶縁接続回路19Bは、フォトカプラ、又は、デジタルアイソレータなどを含んで構成され、端子温度センサ入力回路14と制御回路15とを絶縁しつつ電気信号を伝達可能に接続している。
【0024】
制御回路15は、制御対象の温度をフィードバック制御する処理と、有寿命部品である電解コンデンサCの残り寿命を導出する処理とを行うように構成されている。制御回路15は、前者の処理系として、電圧導出部15A、端子温度導出部15B、制御対象温度導出部15C、操作量導出部15D、及び、電流値指定部15Eを備える。制御回路15は、後者の処理系として、部品温度導出部15F、残り寿命導出部15G、及び、残り寿命出力部15Hを備える。制御回路15は、後述の各種データを記憶する記憶部15Mも備える。
【0025】
制御回路15は、マイクロコンピュータなどの各種コンピュータからなる。図2に示すように、制御回路15は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ15X、プロセッサ15Xのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)15Y、及び、プロセッサ15Xにより実行又は使用されるプログラム及び各種データを記憶する不揮発性の記憶装置15Zを備える。プロセッサ15Xがプログラムを実行することで、図1の上記各部15A~15Hとして動作する。図1の記憶部15Mは、図2のRAM15Y、及び、記憶装置15Zからなる。
【0026】
図1を再び参照し、電圧導出部15Aは、熱電対入力回路13からの電気信号(デジタル信号)に基づいて、測温接点の温度と、基準接点の温度との温度差により生じる起電力の電圧値を導出する。
【0027】
端子温度導出部15Bは、端子温度センサ入力回路14からの電気信号(デジタル信号)に基づいて、端子17Aの端子温度を基準接点の温度として導出する。これにより、端子17Aの端子温度が基準接点の温度として測定される。
【0028】
制御対象温度導出部15Cは、電圧導出部15Aが導出した電圧値から温度差を導出し、当該温度差と、端子温度導出部15Bが導出した基準接点の温度とに基づいて、制御対象の温度を導出する。制御対象温度導出部15Cは、基準接点の温度に温度差を加算することで、制御対象の温度を導出する。制御対象温度導出部15Cは、表示部22に、導出した制御対象の温度を測定温度として表示してもよい。
【0029】
操作量導出部15Dは、制御対象温度導出部15Cが導出した制御対象の温度と、当該温度の目標値である目標温度とを比較し、両者の偏差から操作端92への操作量(ここでは電流値)を導出する。目標温度は、上位装置などから通信モジュールからなる通信部21を介して指定され、記憶部15Mに格納され参照される。
【0030】
電流値指定部15Eは、操作量導出部15Dが導出した操作量に応じた電流値を電流出力回路16に対して指定する。
【0031】
電流出力回路16は、端子17Bを介して操作端92に接続されており、電流値指定部15Eにより指定された電流値の電流を端子17Bを介して操作端92に供給する。
【0032】
以上のような一連の制御により、制御対象の温度のフィードバック制御が実現される。
【0033】
制御回路15の、部品温度導出部15F、残り寿命導出部15G、及び、残り寿命出力部15Hは、協働して、所定期間ごと、ここでは、1時間経過ごとに下記のように動作し、電解コンデンサCの寿命の残りである残り寿命を導出する。
【0034】
まず、部品温度導出部15Fは、端子温度導出部15Bが導出した端子温度に基づいて、端子温度と、電解コンデンサCの周囲温度又は電解コンデンサC自身の温度である部品温度との関係を示す下記の式(1)により、部品温度Tを導出する。ここで、Tは、端子温度であり、Tは、端子温度に対する部品温度の上昇偏差である。Tは、温度測定装置10の設計段階で算出又は実験で導出され、予め記憶部Mに記憶されているものとする。Tは、固定値であっても、Tに応じて異なる値であってもよい。
T=T+T・・・(1)
【0035】
残り寿命導出部15Gは、上記で導出された部品温度Tに基づいて、下記の式(2)により、部品温度導出部15Fで今回導出された部品温度Tで全寿命使用され続けたとしたときの電解コンデンサCの寿命(右辺の分母)に対する、最近の1時間(所定期間)で減った寿命の割合Rを導出する。ここで、Tは、電解コンデンサCの上限温度であり、Lは、電解コンデンサCの部品温度を上限温度としたときの電解コンデンサCの寿命(基本寿命ともいう)。L及びTは、電解コンデンサCの部品の仕様として予め用意され、記憶部15Mに記憶されているものとする。
【数1】
【0036】
残り寿命導出部15Gは、上記で導出した割合Rを、下記の式(3)のように、今までに導出した割合Rの積算値である積算割合Rに加算する。積算割合Rは、記憶部15Mに更新可能に記憶される。積算割合Rは、温度測定装置10の製造直後は「0」に初期化されている。
=R+R・・・(3)
【0037】
残り寿命導出部15Gは、上記式(2)により導出したR及び上記式(3)により導出したRに基づいて、下記の式(4)により、部品温度導出部15Fで今回導出された部品温度Tが続いた場合の、電解コンデンサCの寿命の残りである残り寿命Lnを導出し、記憶部15Mに記録する。今回導出された残り寿命Lnは、前の周期で算出された残り寿命Lnがある場合、当該残り寿命Lnに上書きされる。式(4)のように、残り寿命Lnは、今回導出された部品温度Tで全寿命使用され続けたとしたときの電解コンデンサCの寿命から、当該寿命に積算割合Rを乗じた値を減じて導出された値ともいえる。
【数2】
【0038】
残り寿命出力部15Hは、残り寿命導出部15Gにより導出された残り寿命Lnを表す情報を出力する。残り寿命Lnを表す情報は、残り寿命Lnそのものであってもよいし、残り寿命Lnが長い又は短い旨の情報であってもよい。残り寿命出力部15Hは、残り寿命Lnが所定の閾値未満となったときに、残り寿命Lnを表す情報として、電解コンデンサCの残り寿命が短い旨を出力してもよい。情報の出力は、表示部22(ディスプレイ及び又は残り寿命が短いときに点灯する警告灯)への表示であってもよいし、通信部21及び通信部21に接続された不図示のネットワークを介した上位装置又はユーザ端末への送信であってもよい。情報の出力は、音声出力であってもよい。ユーザは、出力された残り寿命Lnを確認し、必要に応じて、電解コンデンサCを単独で交換または、電源回路12のユニットごと交換する。ユーザは、温度測定装置10全体を交換してもよい。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、有寿命部品としての電解コンデンサCと、熱電対CTに接続される端子17Aと、を備え、熱電対CTにより制御対象の温度を測定する温度測定装置10に、部品温度導出部15F及び残り寿命導出部15Gを設けた。そして、部品温度導出部15Fは、温度の測定に使用される基準接点の温度として測定された端子温度Tに基づいて、予め定められた端子温度と電解コンデンサCの部品温度との関係(式(1))から、電解コンデンサCの部品温度Tを導出する。残り寿命導出部15Gは、導出された部品温度Tに基づいて、電解コンデンサCの残り寿命Lnを導出する。このような構成により、基準接点の温度として使用される、つまり、温度測定装置10で元々測定される端子温度Tに基づいて、部品温度Tが導出され、残り寿命Lnが導出される。従って、残り寿命の導出のためにサーマルリレーなどの新たな部品を温度測定装置10に設ける必要がなく、これにより、少ない部品点数での電解コンデンサCの残り寿命の精度の良い導出が可能となる。なお、本実施形態のように、残り寿命Lnの導出のための部品温度Tと、端子温度Tとに一定の関係があることは、本願発明者の知見に基づく。
【0040】
上記のように、部品温度導出部15Fは、所定期間(1時間)ごとに部品温度Tを導出するとよい。上記で導出される部品温度Tは、所定期間の終了タイミング(1時間経過時)での部品温度であるが、部品温度Tとして、例えば、所定期間での平均部品温度が導出されてもよい。上記式(2)のように、残り寿命導出部15Gは、前記の所定期間ごとに、その所定期間での部品温度Tで全寿命使用され続けたとしたときの電解コンデンサCの寿命に対する、その所定期間で減った寿命の割合Rを導出するとよい。さらに、上記式(3)及び(4)のように、残り寿命導出部15Gは、所定期間ごとに導出した割合Rを積算し、積算した積算割合Rに基づいて残り寿命Lnを導出するとよい。これにより、部品温度Tの時間変化が反映された残り寿命が導出されるので、精度の良い残り寿命が導出される。また、所定期間ごとに導出した割合Rを積算した積算割合Rに基づいて残り寿命Lnを導出することで、残り寿命Lnの導出の際に、長期間分の部品温度Tのデータを記憶部15Mに保持する必要がなくなり、処理負荷が低減される。
【0041】
また、割合Rは、上記から明らかなように、部品温度Tに応じて連続的に変化する値であり、これにより、部品温度Tが詳細に反映された残り寿命が導出される。その結果、精度の良い残り寿命が導出される。
【0042】
上記式(4)のように、残り寿命導出部15Gは、最近の所定期間(直近の1時間)での部品温度Tで全寿命使用され続けたとしたときの電解コンデンサCの寿命から、当該寿命に積算割合Rを乗じた値を減じて残り寿命Lnを導出するとよい。これにより、精度の良い残り寿命が導出される。
【0043】
さらに、本実施形態では、残り寿命出力部15Hが、残り寿命導出部15Gにより導出された残り寿命Lnを表す情報を出力する。これにより、ユーザに対して電解コンデンサCの残り寿命Ln又はこれの長短などを報知することが可能となる。
【0044】
一般的に電解コンデンサCは、温度測定装置10の部品の中で最も寿命が短い。本実施の形態では、精度の高い残り寿命の導出が可能となっており、ユーザは電解コンデンサCの寿命ぎりぎりまでの電解コンデンサCの交換時期を伸ばすことができ、これにより、コストの低減が可能になる。
【0045】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0046】
(変形例1)
部品温度Tは、操作端92への電流出力の影響を受けることがある。この場合、電流値指定部15Eにより指定される操作端92への電流の電流値が部品温度導出部15Fにも入力される(図1の点線矢印参照)。部品温度導出部15Fは、端子温度導出部15Bが導出した端子温度と、電流値指定部15Eからの、操作端92への電流の電流値と、に基づいて、端子温度と操作端92への電流値と電解コンデンサCの部品温度との関係を示す下記の式(5)により、部品温度Tを導出する。ここで、Cは、電流値であり、Kは、温度/電流上昇係数である。Kは、温度測定装置10の設計段階で算出又は実験で導出され、予め記憶部Mに記憶されているものとする。Kは、固定値であっても、端子温度Tに応じて異なる値であってもよい。電流値Cは、操作端92に実際に出力された電流を所定の電流計で測定した電流値であってもよい。
T=T+T+K*C・・・(5)
【0047】
(変形例2)
上記実施の形態では、電解コンデンサCの残り寿命を導出しているが、本発明は、端子温度に応じて部品温度が変化し、かつ、部品温度に応じて寿命が変動する有寿命部品全般の残り寿命の導出に適用可能である。例えば、絶縁接続回路19A又は19Bに使用されるフォトカプラを寿命の監視対象としてもよい。このような場合、例えば、上記の式(2)は、フォトカプラ用の式に変更される。
【0048】
(変形例3)
部品温度の導出方法及び残り寿命の導出方法は、上記実施の形態などに限定されず、任意である。
【0049】
(変形例4)
温度測定装置10のハードウェア構成は任意である。制御回路15の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種の論理回路から構成されてもよい。温度測定装置10といった装置は、その構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、その構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムも含む。制御回路15での各値の導出は、上記式での算出の他、記憶部15Mに予め用意された、上記式の関係を示すテーブルからの取得であってもよい。従って、上記部品温度Tに応じて連続的に変化する割合Rなどの各値は、より正確にいうと連続値に近い離散値も含む。割合Rは、テーブルなどを用いて導出される場合、部品温度Tに応じて変化する3段階以上の値として設定されてもよい。プロセッサ15Xにより実行される上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されればよい。
【0050】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…温度測定装置(制御機器)、11…筐体、12…電源回路、13…熱電対入力回路、14…端子温度センサ入力回路、15…制御回路、15A…電圧導出部、15B…端子温度導出部、15C…制御対象温度導出部、15D…操作量導出部、15E…電流値指定部、15F…部品温度導出部、15G…寿命導出部、15H…寿命出力部、15M…記憶部、15X…プロセッサ、15Y…RAM、15Z…記憶装置、16…電流出力回路、17A,17B…端子、18…端子温度センサ、19A,19B…絶縁接続回路、21…通信部、22…表示部、91…熱電対、92…操作端。
図1
図2