(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020786
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20240207BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123230
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 凱偉
(72)【発明者】
【氏名】結城 興仁
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD55
2G017BA09
(57)【要約】
【課題】回路の信号線に流れる微弱電流を精度よく計測する。
【解決手段】この磁気センサは、まず、4つの第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104が接続されたブリッジ回路110を備える。ブリッジ回路110は、第1接続点111と第2接続点112との間の差動電圧を検出可能に構成されている。また、この磁気センサは、第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104の各々において、固定層201の磁化方向で磁気抵抗素子を挟む状態に設けられた磁気収束板105a、105b、106a、106b、107a、107b、108a、108bを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される磁界の向きに応じて出力する抵抗値が変化する4つの磁気抵抗素子が接続され、所定の接続点間の差動電圧を検出可能に構成されたブリッジ回路と、
前記4つの磁気抵抗素子の各々において、固定層の磁化方向で磁気抵抗素子を挟む状態に設けられた2つの磁気収束板と
を備え、
前記4つの磁気抵抗素子は、直線上に配列され、
前記ブリッジ回路で直列に接続されて隣り合う磁気抵抗素子は、固定層の磁化方向が180°異なる
ことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
請求項1記載の磁気センサにおいて、
前記4つの磁気抵抗素子の固定層の磁化方向は、測定対象の磁界の方向に対して平行とされていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の磁気センサにおいて、
前記4つの磁気抵抗素子の固定層の磁化方向は、前記4つの磁気抵抗素子が配列される直線に対して90°異なる方向とされていることを特徴とする磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、業務効率化・生産性向上・品質向上を目的として工場のIoT化が活発になっている。既存工場をIoT化するにあたり、通信機能を持たない装置において状態監視の実現が求められる。装置状態を監視するために、信号線に流れる電流を計測する方法がある。一般に、制御機器の回路の信号線に流れる電流を計測するために、回路内に抵抗を直列接続し、接続した抵抗の電圧降下を測定する方法がある。
【0003】
しかし、この方法では、制御系とは異なる負荷が回路に加わることとなり、何らかの悪影響を与える可能性が生じてしまう。これに対し、回路に流れる電流によって発生する電流磁界の勾配を測定することによって、回路の信号線に流れる電流を間接的に測定する方法がある。例えば、電流線に電流が流れる事で生じる磁束をホール素子によって測定する。しかし、ホール素子では、検出感度が不足する場合がある。
【0004】
より高い検出感度を得るために、磁気抵抗効果素子でブリッジ回路を形成し、測定対象で発生する磁界の向きの変化を、磁気抵抗効果素子に入力させる磁気センサが開発されている(特許文献1)。この磁気センサによれば、磁気抵抗効果素子に入力される磁界の向きが、磁気抵抗素子間で異なる方向に変化するため、ブリッジ回路から大きな差動出力が得られ、測定精度を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、微弱電流を検出する場合には、上述した方法でも元の磁界が微小なため、精度良く測定することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、回路の信号線に流れる微弱電流が精度よく計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁気センサは、入力される磁界の向きに応じて出力する抵抗値が変化する4つの磁気抵抗素子が接続され、所定の接続点間の差動電圧を検出可能に構成されたブリッジ回路と、4つの磁気抵抗素子の各々において、固定層の磁化方向で磁気抵抗素子を挟む状態に設けられた2つの磁気収束板とを備え、4つの磁気抵抗素子は、直線上に配列され、ブリッジ回路で直列に接続されて隣り合う磁気抵抗素子は、固定層の磁化方向が180°異なる。
【0009】
上記磁気センサの一構成例において、4つの磁気抵抗素子の固定層の磁化方向は、測定対象の磁界の方向に対して平行とされている。
【0010】
上記磁気センサ一構成例において、4つの磁気抵抗素子の固定層の磁化方向は、4つの磁気抵抗素子が配列される直線に対して90°異なる方向とされている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、4つの磁気抵抗素子でブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路で直列に接続されて隣り合う磁気抵抗素子の固定層の磁化方向を180°異なるものとし、磁気抵抗素子を挟む状態に磁気収束板を設けたので、回路の信号線に流れる微弱電流が精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気センサの構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、トンネル磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る磁気センサについて
図1を参照して説明する。この磁気センサは、まず、4つの第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104が接続されたブリッジ回路110を備える。ブリッジ回路110は、第1接続点111と第2接続点112との間の差動電圧を検出可能に構成されている。
【0014】
第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104は、入力される磁界の向きに応じて出力する抵抗値が変化するものであり、例えば、トンネル磁気抵抗効果素子である。トンネル磁気抵抗効果素子は、
図2に示すように、強磁性体から構成されて磁化方向が固定された固定層201と、強磁性体から構成されて磁化方向が固定されていないフリー層202と、固定層201とフリー層202との間に形成されたバリア層203とを備える。
【0015】
固定層201とフリー層202との間にトンネル電流が流れる構成とされ、固定層201とフリー層202との磁化が互いに平行な場合、抵抗が小さくなり、固定層201とフリー層202との磁化が互いに反平行な場合、抵抗が大きくなる。フリー層202は、外部磁場が印加されるとその方向に磁化方向がむくものとなる。このため、磁気抵抗素子に計測したい磁場が印加されると、フリー層202の磁化方向が変化する。これにより、フリー層202と固定層201との磁化方向の関係が変化し、抵抗値が変化する。
【0016】
また、この磁気センサは、第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104の各々において、固定層201の磁化方向で磁気抵抗素子を挟む状態に設けられた磁気収束板105a、105b、106a、106b、107a、107b、108a、108bを備える。第1磁気抵抗素子101は、2つの磁気収束板105a、105bに挟まれている。第2磁気抵抗素子102は、2つの磁気収束板106a、106bに挟まれている。第3磁気抵抗素子103は、2つの磁気収束板107a、107bに挟まれている。第4磁気抵抗素子104は、2つの磁気収束板108a、108bに挟まれている。
【0017】
また、第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104は、直線上に配列されている。さらに、ブリッジ回路110で直列に接続されて隣り合う磁気抵抗素子は、固定層の磁化方向が180°異なるものとされている。
図1において、矢印で固定層の磁化方向を示している。この例では、第1磁気抵抗素子101および第3磁気抵抗素子103における固定層の磁化方向と、第2磁気抵抗素子102および第4磁気抵抗素子104における固定層の磁化方向とが、180°異なるものとされている。この構成によれば、磁界の向きを変化させる磁性体を用いる必要が無く、構成を簡略化できる。
【0018】
また、4つの第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104の固定層の磁化方向は、測定対象の磁界の方向に対して平行とされている。また、4つの第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104の固定層の磁化方向は、4つの第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104が配列される直線に対して90°異なる方向とされている。
【0019】
例えば、測定対象の磁場(対象となる回路に流れる電流によって発生する磁場)の方向が
図1の紙面右側から左側へ向いている場合、第1磁気抵抗素子101および第3磁気抵抗素子103は、低抵抗状態となり、第2磁気抵抗素子102および第4磁気抵抗素子104は、高抵抗状態となる。この結果、ブリッジ回路110の第1接続点111と第2接続点112との間に、大きな差動出力が得られるようになる。
【0020】
さらに、磁気収束板105a、105b、106a、106b、107a、107b、108a、108bを設けているので、第1磁気抵抗素子101、第2磁気抵抗素子102、第3磁気抵抗素子103、第4磁気抵抗素子104に入力される測定対象の磁場の磁束密度を増大させることができる。磁気収束板による磁束密度の増幅効果は、磁気抵抗素子との間隔が小さいほど大きくなる。現在の微細加工技術によれば、上述した間隔を例えば、数十μm単位とすることができる。
【0021】
したがって、実施の形態に係る磁気センサによれば、回路の信号線に流れる微弱電流による微小な磁界を、高感度で測定できるようになる。
【0022】
上述したように、本発明によれば、4つの磁気抵抗素子でブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路で直列に接続されて隣り合う磁気抵抗素子の固定層の磁化方向を180°異なるものとし、磁気抵抗素子を挟む状態に磁気収束板を設けたので、回路の信号線に流れる微弱電流が精度よく計測できるようになる。
【0023】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0024】
101…第1磁気抵抗素子、102…第2磁気抵抗素子、103…第3磁気抵抗素子、104…第4磁気抵抗素子、105a、105b、106a、106b、107a、107b、108a、108b…磁気収束板、110…ブリッジ回路、111…第1接続点、112…第2接続点。