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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020789
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】異常判定システムおよび機械室
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20240207BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240207BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20240207BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240207BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240207BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20240207BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240207BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20240207BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240207BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20240207BHJP
   B01D 46/44 20060101ALI20240207BHJP
   F24F 11/39 20180101ALI20240207BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F7/007 B
F24F13/24 242
F24F11/89
F24F11/64
F24F11/52
F24F3/044
G01H3/00 A
G01M99/00 Z
B01D46/42 A
B01D46/44
F24F11/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123235
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3L053
3L056
3L260
4D058
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA27
2G024CA13
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
3L053BB10
3L056BD06
3L260BA54
3L260BA73
3L260CA11
3L260EA07
3L260FC32
3L260HA02
4D058JA12
4D058NA10
4D058PA07
4D058PA11
4D058PA12
4D058PA20
4D058QA03
4D058QA21
4D058SA20
4D058UA18
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、送風装置の異常を判定することが可能な異常判定システムおよび機械室を提供すること。
【解決手段】異常判定システム(80)は、建物内の外部空間から隔離して設けられた機械室内に配置される送風装置の異常を判定するシステムである。異常判定システム(80)は、機械室内に配置され、送風装置とは独立して設けられる音センサ(81)と、音センサで測定した音に基づいて、送風装置の異常を判定する判定手段(84)と、判定手段(84)での判定結果を報知する報知手段(85)とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の外部空間から隔離して設けられた機械室内に配置される送風装置の異常を判定するシステムであって、
前記機械室内に配置され、前記送風装置とは独立して設けられる音センサと、
前記音センサで測定した音に基づいて、前記送風装置の異常を判定する判定手段と、
前記判定手段での判定結果を報知する報知手段とを備える、異常判定システム。
【請求項2】
前記機械室と前記外部空間とは、仕切り部によって仕切られており、
前記仕切り部は、前記機械室と前記外部空間と連通する開口を含み、
前記機械室は、前記仕切り部の開口に面し、吸音材によって取り囲まれた暗騒音除去空間を有しており、
前記音センサは、前記暗騒音除去空間から離れて配置されている、請求項1に記載の異常判定システム。
【請求項3】
前記送風装置は、ファン、および、前記ファンと前記仕切り部の開口との間に設けられ、前記外部空間から前記機械室に送り込まれた空気を浄化するためのフィルタを含む、請求項2に記載の異常判定システム。
【請求項4】
前記送風装置が定の運転モードにおける基準音データを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記記憶手段で記憶した基準音データと、所定の運転モードになった場合の実際の音データとを比較して、前記送風装置の異常を判定する、請求項1または2に記載の異常判定システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記ファンの稼働音の大きさに基づいて前記フィルタの異常を判定する、請求項3に記載の異常判定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の異常判定システムが適用される機械室であって、
当該機械室と前記外部空間とは、仕切り部によって仕切られており、
前記仕切り部は、前記機械室と前記外部空間と連通する開口を含み、
当該機械室は、前記仕切り部の開口に面し、吸音材によって取り囲まれた暗騒音除去空間を有しており、
前記音センサは、前記暗騒音除去空間から離れて配置されている、機械室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異常判定システムおよび機械室に関し、特に、建物内の外部空間から隔離して設けられた機械室内に配置される送風装置の異常を判定する異常判定システムおよび機械室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器本体に設けたセンサ等で機器の故障などを判定するシステムが知られている。このような技術として、たとえば特開2000-210518号公報(特許文献1)および実開平3-25966号公報(特許文献2)が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、熱交換換気装置や空気清浄装置などの空気を浄化するフィルタを備えた空調装置に設けられ、空気の汚れの度合いと運転時間に基づいて、フィルタのメンテナンス時期を報知できるフィルタ汚れ検知装置について開示されている。
【0004】
特許文献2には、ファンなどを有する機器の累積可動時間、累積起動・停止回数とそれらの基準設定値とを比較して、機器のメンテナンス時期を判定する機器メンテナンス時期の自動通報装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-210518号公報
【特許文献2】実開平3-25966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の装置は、それぞれの機器で完結した仕組みであるため、機器が故障した場合には機器を全交換する必要があり、他の機器に使用することができない。また、機器のメンテナンス時期を判断するためには、常時稼働させておく必要がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成で、送風装置の異常を判定することが可能な異常判定システムおよび機械室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る異常判定システムは、建物内の外部空間から隔離して設けられた機械室内に配置される送風装置の異常を判定するシステムであって、機械室内に配置され、送風装置とは独立して設けられる音センサと、音センサで測定した音に基づいて、送風装置の異常を判定する判定手段と、判定手段での判定結果を報知する報知手段とを備える。
【0009】
好ましくは、機械室と外部空間とは、仕切り部によって仕切られており、仕切り部は、機械室と外部空間と連通する開口を含み、機械室は、仕切り部の開口に面し、吸音材によって取り囲まれた暗騒音除去空間を有しており、音センサは、暗騒音除去空間から離れて配置されている。
【0010】
好ましくは、送風装置は、ファン、および、ファンと仕切り部の開口との間に設けられ、外部空間から機械室に送り込まれた空気を浄化するためのフィルタを含む。
【0011】
好ましくは、送風装置が所定の運転モードにおける基準音データを記憶する記憶手段をさらに備え、判定手段は、記憶手段で記憶した基準音データと、所定の運転モードになった場合の実際の音データとを比較して、送風装置の異常を判定する。
【0012】
好ましくは、判定手段は、ファンの稼働音の大きさに基づいてフィルタの異常を判定する。
【0013】
本発明の他の形態に係る機械室は、上述した異常判定システムが適用される機械室であって、機械室と外部空間とは、仕切り部によって仕切られており、仕切り部は、機械室と外部空間と連通する開口を含み、機械室は、仕切り部の開口に面し、吸音材によって取り囲まれた暗騒音除去空間を有しており、音センサは、暗騒音除去空間から離れて配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異常判定システムおよび機械室によれば、簡易な構成で、送風装置の異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る機械室が用いられた建物を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る機械室のドア本体を閉めた状態を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る機械室の仕切り部を取り外して示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
図4図2のIV-IV線から見た機械室の模式断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る異常判定システムの概略構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態における異常判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
本実施の形態に係る機械室1は、典型的には、熱交換した空調空気を建物の複数の部屋に送り出す空調制御室である。本実施の形態に係る機械室1の説明に先立ち、機械室1を採用した建物100について説明する。
【0018】
<概要について>
図1を参照して、建物100は、全館空調形式を採用している。建物100は、たとえば2階建ての住宅であり、屋内空間には複数の部屋が配置されている。住宅100の1階には、居室111,112および非居室113が配置されている。居室111は、たとえばリビングであり、居室112は、たとえば寝室などの個室である。非居室113は、階段114の上り口が設けられた通路室(廊下または玄関ホール)である。住宅100の2階(すなわち最上階)には、複数の居室115,116および非居室117が配置されている。居室115,116は、たとえば寝室などの個室である。非居室117は、居室115側に階段114の下り口が設けられた通路室(廊下)である。つまり、階段114は1階と2階とを吹き抜ける吹抜け部であり、この階段114を介して、2階の非居室117と1階の非居室113とは仕切りなく通じている。そのため、これらの非居室113,117は、1つのホール部を構成している。これらの非居室113,117に面するように、機械室1がそれぞれ設けられる。建物100内における機械室1以外の室内110の空間、たとえば居室111,112,115,116、非居室113,117、および階段114を、建物100内の「外部空間」ともいう。機械室1については、後述する。
【0019】
なお、本実施の形態において「部屋」とは、居室および非居室を含み、「居室」とは、居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室をいい、「非居室」とは、居室以外の室のうち、衛生目的の室(たとえばトイレ、浴室)を除く室である。
【0020】
住宅100の1階と2階の間、および、2階と屋根の間には、天井空間120がそれぞれ形成されている。この天井空間120には、機械室1から延びる主ダクト60(図4)に接続された分岐ダンパ61が設けられる。分岐ダンパ61は、複数の分岐ダクト62に分岐する。分岐ダクト62は、各部屋の天井仕切り部121に設けられる吹出し口64に接続されている。これにより、機械室1から送り出される空調空気を室内110に送り込むことが可能である。以下、機械室1について説明する。
【0021】
<機械室について>
図2図4をさらに参照して、本実施の形態に係る機械室1について詳細に説明する。図2図4において、矢印A1で示す方向を上下方向といい、図2,3において、矢印A2で示す方向を横方向といい、図4において、矢印A3で示す方向を奥行き方向という。なお、1階に設けられる機械室1について説明するが、2階に設けられる機械室1についても同様である。
【0022】
上述のように、機械室1は、非居室113,117(図1)に面している。機械室1は、住宅100内の居室111,112,115,116、非居室113,117、および階段114から隔離して設けられる。特に図4に示すように、機械室1は、室10と、第1空間10aに配置される空調機20および空調ボックス30と、第2空間10bに配置されるファン(送風機)50および主ダクト60とを備える。
【0023】
図3,4に示すように、室10は、建物100自体の立壁(間仕切壁または外壁)により構成された一対の側壁11、後壁12、前壁13、床壁14、および天壁15によって囲まれている。機械室1の平面形状は、典型的には、建築設計上の1モジュール(90cm~100cm程度)を一辺とする正方形状である。つまり、機械室1を取り囲む各立壁の幅は、80cm以上110cm以下である。
【0024】
前壁13には、非居室113,117と接する開口部が設けられている。開口部には、機械室1と非居室113,117(外部空間)とを連通するドア本体16が設けられている。そのため、ドア本体16を開放すると、空調機20および空調ボックス30の全体が、非居室117側に露出する。これにより、ドア本体16を開けて、機械室1のメンテナンスを行うことが可能である。ドア本体16は、典型的には開き戸であるが、たとえば引き戸、折れ戸などであってもよい。一対の側壁11、後壁12、前壁13、床壁14、天壁15、およびドア本体16は、機械室1と外部空間とを仕切る「仕切り部」である。
【0025】
ドア本体16の高さ寸法、すなわち前壁13の開口高さH1(図4)は、170cm以上である。図2に示すように、ドア本体16は、前壁13の開口部に設けられるドア枠17に取り付けられている。ドア本体16を閉めた場合に、ドア本体16の下端縁16a(図2)とドア枠17との間の隙間は、遮蔽部材(図示せず)で埋められるように形成される。これにより、ドア本体16とドア枠17との密着性を高めることができ、ドア本体16とドア枠17との隙間の透過音を遮断することが可能である。遮蔽部材は、たとえばゴム、樹脂などの軟質材料で形成されることが好ましい。遮蔽部材は、ドア本体16に設けられることが好ましいが、ドア枠17に設けられていてもよい。なお、ドア枠17は、ドア本体16を取り付けるための枠であり、開口部に設けられる床面または壁面であってもよい。
【0026】
ドア本体16の上方には、機械室1と外部空間とを連通する開口19が設けられている。開口19は、機械室1内に外気を取り入れる。開口19は、略矩形形状の枠体19aと、枠体19aに支持される複数の羽板19bとを含む。羽板19bは、非居室113,117に向かって斜め下方に延びている。ここで外気とは、建物100内の外部空間から取り入れられる空気であり、建物100の外部から取り入れられる空気も含む。
【0027】
図4を特に参照して、ドア本体16と後壁12との間には、隔壁18が設けられている。隔壁18は、天壁15に取り付けられており、上下方向途中位置まで延びている。また、隔壁18は、一対の側壁11間に掛け渡されている。室10は、この隔壁18によって、奥行き方向前方に位置する第1空間10aと、奥行き方向後方に位置する第2空間10bの2つの空間に仕切られる。具体的には、第1空間10aと第2空間10bとは、上方が区切られており、下方が連通している。つまり、隔壁18は、室10の上方を前後方向に分断している。隔壁18は、機械室1の奥行き方向における略中央位置に設けられている。
【0028】
上述した開口19は、外気だけでなく、外部空間の音も機械室1内に取り入れる。図3,4に示すように、機械室1において外部空間の音の影響を少なくするために、開口19の周囲には、吸音材71,73,75,78が設けられる。具体的には、側壁吸音材71は、一対の側壁11に貼り付けられており、一対の側壁11の上下方向に沿って、一対の側壁11の上端から途中位置まで延びている。同様に、隔壁吸音材78は、隔壁18上に貼り付けられており、隔壁18の上下方向に沿って、隔壁18の上端から途中位置まで延びている。天壁吸音材75は、天壁15の全面に貼り付けられている。図4に示すように、前壁吸音材73は、前壁13上に貼り付けられており、ドア本体16に到達する位置まで延びている。なお、ドア本体16は、防音仕様になっていることが好ましい。
【0029】
ドア本体16の開口19に面し、吸音材71,73,75,78によって取り囲まれた空間は、暗騒音除去空間70となり、開口19を通して外部空間の音が機械室1内に入ってくることを低減することができる。図4において、暗騒音除去空間70を一点鎖線で示している。
【0030】
隔壁18には、音センサ81が取り付けられる。本実施の形態の音センサ81は、機械室1内に配置される送風機50の音の大きさ(レベル)を測定するためのものである。具体的には、送風機50の音の大きさは、送風機50の稼働音である。機械室1には、この音センサ81を用いて、後述するフィルタ36の交換時期を判定する異常判定システム80が設けられる。異常判定システム80については、後述する。
【0031】
音センサ81は、空調機20、空調ボックス30、送風機50、および主ダクト60とは独立して設けられる。ここで、独立とは、音センサ81が上述する空調機20、空調ボックス30、送風機50、および主ダクト60とは異なる箇所に設けられることを意図するものである。音センサ81は、暗騒音除去空間70から離れて配置されている。具体的には、音センサ81は、隔壁吸音材78と空調機20との間に取り付けられる。
【0032】
上述のように、第1空間10aには、空調機20と空調ボックス30とが設けられる。第2空間10bには、送風機50と主ダクト60とが設けられる。以下、それぞれの構成について詳細に説明する。
【0033】
第1空間10aに設けられる空調機20は、たとえば家庭用の壁掛けエアコンである。空調機20は、隔壁18の下方に取り付けられる。これにより、空調機20は、室10の上下方向の略中央部に取り付けられる。床壁14を基準とした場合における空調機20の上端高さH2は、空調機20の高さを30cmと仮定した場合において、たとえば120cm以上170cm以下である。空調機20は、外気を取り入れる吸い込み口21と、吸い込み口21から吸い込んだ空気を空調空気として吐出する吐き出し口22とを含む。吸い込み口21は、上方に設けられ、吐き出し口22は下方に設けられる。空調機20は、開口19の下方に位置する。空調機20の吸い込み口21は上方に位置するため、開口19からの外気を効率よく空調機20に取り入れることができる。
【0034】
空調機20の下方には、空調ボックス30が設けられる。空調ボックス30は、空調機20から送り出された空調空気を送風機50に送り出すものである。空調ボックス30は、概略的には、風受け材31と、風受け材31から連なる筐体40とを備える。空調ボックス30の下方には、4つの脚部49が設けられていてもよい。
【0035】
空調ボックス30の上方には、風受け材31が設けられる。風受け材31は、空調機20の下方に離れて配置され、空調機20から送り出される空調空気を受け入れる。風受け材31の上端と空調機20の吐き出し口22の下端との離隔距離は、たとえば2cm以上20cm以下であることが好ましい。
【0036】
筐体40は、風受け材31に気密性を保って接続され、風受け材31を通過した空気を受け入れる。筐体40は、一対の側面と、前面と、後面とで囲まれている。筐体40は、上方が開口し、下方が閉鎖する略箱形状である。図4に示すように、筐体40は、上方領域44と下方領域47とに分けられる。上方領域44では、フィルタ36で空気を浄化し、下方領域47では、上方領域44で清浄化した空気を送風機50へ導く。
【0037】
上方領域44に設けられるフィルタ36は、筐体40の開口を覆うように設けられる。筐体40の上部の開口は、上面全体に設けられており、空調機20の吐き出し口22と対面する。フィルタ36は、筐体40の開口から上方に露出し、空調機20からの空調空気を受ける上面部を有する。本実施の形態では、フィルタ36は、たとえば略水平に配置される。
【0038】
図3(b)に示すように、下方領域47の後壁側には、送風機50を取り付ける2つの穴部48が形成されている。送風機50は、筐体40に送られてきた空調空気を主ダクト60に向けて送り出す。送風機50は、たとえば送風用ファンである。送風機50は、下方領域47に設けられる穴部48に取り付けられる。
【0039】
主ダクト60は、第2空間10bに配置され、長手方向の一方端が送風機50と気密性を保って接続され、長手方向の他方端が複数の部屋に送り込む分岐ダクト62(図1)と接続される。機械室1が各階に設けられない場合、機械室1を2階に設け、主ダクト60を上方だけではなく、下方に分岐させて1階と2階の屋内空間に空調空気を送り出すように設けてもよい。
【0040】
<空調空気の流れについて>
図4を参照して、空調機20を運転させた場合の空気の流れについて説明する。図4の矢印は、空気および空調空気の流れを示している。
【0041】
空調機20の電源をオンにすると、開口19から機械室1内に外気が吸引される。吸引された外気は、空調機20の吸い込み口21から吸い込まれ、熱変換されて空調機20の吐き出し口22から空調空気となって吐き出される。空調空気は、風受け材31からそのすべてが受け取られ、筐体40の上方領域44のフィルタ36を通って清浄化され、下方領域47を通って送風機50に送り出される。
【0042】
さらに、送風機50に送り出された空調空気は、主ダクト60を通り、図1に示すように、分岐ダンパ61を通って、複数の分岐ダクト62で分岐され、吹出し口64から各部屋に空調空気を送り出される。
【0043】
このようにして、機械室1において全館空調が行われることで、空調ボックス30に設けられるフィルタ36は汚れていくため、定期的なメンテナンスが必要となる。フィルタ36のメンテナンス時期を判定するシステムについて詳細に説明する。このシステムは、機械室1に設けられる機器の故障、部品の交換時期などを判定することができるため「異常判定システム」というが、本実施の形態では、フィルタ36のメンテナンス時期を判定するシステムだけに特化しているものとして説明する。
【0044】
<異常判定システムについて>
図5,6を参照して、異常判定システム80について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る異常判定システムの概略構成を示すブロック図である。図6は、本発明の実施の形態における異常判定処理を示すフローチャートである。
【0045】
本実施の形態に係る異常判定システム80は、機械室1内に配置されるフィルタ36のメンテナンス時期(交換時期)を判定するシステムである。本発明者は、鋭意研究の結果、フィルタ36の圧力損失と送風機50の音レベルとは、共に増加する関係があることを見出した。具体的には、フィルタ36が目詰まりすると抵抗が大きくなるため、送風機50の回転数が多くなり、送風機50の稼働音が大きくなることを見出した。そこで、音センサ81で送風機50の音レベルを測定し、送風機50の音レベルが大きくなったら、フィルタ36のメンテナンス時期であると判断することとした。
【0046】
図5に示されるように、異常判定システム80は、音センサ81と、音センサ81で測定した音に基づいて制御する制御装置82と、報知部85とを備えている。
【0047】
制御装置82は、少なくとも記憶部83と、判定部84とを含む。記憶部83は、たとえばRAMであり、送風機50が所定の運転モードにおける基準音データが記憶されている。基準音データは、音レベルの許容値である。機械室1内の空調機20は、一日の始まりに試運転を行うが、基準音データは、送風機50の試運転時の「強運転」の音データであり、具体的には送風機50の稼働音の大きさである。基準音データは、いわゆるベンチマークである。
【0048】
判定部84は、記憶部83に記憶されている基準音データと、所定の運転モードになった場合の実際の音データとを比較して、フィルタ36の交換時期を判断する。実際の音データは、音センサ81で測定した送風機50の稼働音である。空調機20は、たとえば一日の終わりにお掃除運転を行う設定となっているが、所定の運転モードは、空調機20のお掃除運転後の「強運転」である。音センサ81で測定した実際の音データが記憶部83に記憶されている基準音データよりも大きい場合には、フィルタ36がメンテナンス時期であると判断する。実際の音データが基準音データよりも大きいということは、送風機50がより稼働して送風しようとしているということであり、フィルタ36に目詰まりが発生しているということだからである。
【0049】
報知部85は、判定部84での判定結果を報知する。つまり、報知部85は、フィルタ36のメンテナンス時期の有無を報知する。具体的には、報知部85は、たとえばディスプレイ、ブザー、非常灯などであり、機械室1の外部にフィルタ36の交換時期を報知する。報知部85は、機械室1の外、たとえばドア本体16の非居室117を向く側に設置されていることが好ましい。これにより、フィルタ36の交換時期が報知されるため、居住者は目視でフィルタ36を確認する必要はない。なお、報知部85は、フィルタ36がメンテナンス時期である場合は必ず報知する必要があるが、メンテナンス時期でない場合は報知する必要はない。
【0050】
異常判定システム80が行う処理は、日中の通常運転の後、具体的には毎日行われる空調機20のお掃除運転の後に行われる。また、記憶部83に記憶される基準音データは、空調機20の試運転時、かつ、最大風量時の送風機50の騒音値である。図6を参照して、空調機20のお掃除運転の後に送風機50を運転し(ステップS2)、音センサ81が送風機50の実際の音(稼動音)を測定する(ステップS4)。判定部84は、音センサ81で測定した実際の音と、記憶部83に記憶した基準音データとを比較し、測定した実際の音が基準音データより大きく、さらにその音が1時間以上継続する場合は(ステップS6にてYES)、フィルタ36に目詰まりが発生したと判断し、フィルタ36の異常を判断する(ステップS8)。報知部85は、フィルタ36がメンテナンス時期であることを報知する。
【0051】
音センサ81で測定した実際の音(稼働音)と、記憶部83に記憶した基準音データとを比較し、測定した実際の音が基準音データよりも小さい場合、または、測定した実際の音が基準音データよりも大きい場合であっても、その音が1時間継続しない場合は(ステップS6にてNO)、フィルタ36は正常であると判断する。この場合、報知部85は、フィルタ36がメンテナンス時期ではないことを報知してもよいし、あえて報知しなくてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態によれば、送風機50とは独立して音センサ81が設けられるため、簡易な構成で、フィルタ36の交換時期を判定することができる。さらに、音センサ81が空調機20、空調ボックス30、送風機50、および主ダクト60とは独立して設けられるため、それらの装置が故障した場合でも、交換する必要はない。また、本実施の形態では、一日の終わりのお掃除運転の後に音センサ81を稼働させるだけでよいため、従来の技術のように常時稼働させておく必要はない。
【0053】
<変形例>
実施の形態において、機械室1は、熱交換した空調空気を送り出す空調制御室であるとしたが、熱交換せずに空気を送り出す換気室であってもよい。すなわち、機械室1は、建物100内の外部空間と離隔して設けられ、仕切り部によって仕切られる室であり、建物100内の空気を循環させるための室であればよい。
【0054】
また、各実施の形態の機械室1は、室10、空調機20、空調ボックス30、ファン(送風機)50、主ダクト60とを備えるとして説明したが、その構成に限定されない。たとえば、室10内に大型の空調機が設置されていてもよいし、送風機だけが設置されていてもよい。また、機械室1が室10、空調機20、空調ボックス30、ファン(送風機)50、主ダクト60とを備える場合であっても、その配置について限定されるものではない。
【0055】
本実施の形態の異常判定システム80は、送風機50の音データを利用してフィルタ36の交換時期を判定するものであったが、機械室1内に配置される「送風装置」の異常を判定するものであればよい。ここで、「送風装置」とは、空調機20、空調ボックス30、送風機50、および主ダクト60などのように、機械室1内に配置される装置すべてを指すものである。たとえば、異常判定システム80は、送風機50の音データを利用して、送風機50の故障を判定するものであってもよいし、機械室1内に配置されるすべての部品の異常を判定するものであってもよい。
【0056】
本実施の形態では、空調機20、フィルタ36が設けられる空調ボックス30、送風機50、および主ダクト60を「送風装置」としたが、空調機20単体を「送風装置」としてもよい。空調機20は、内部に設けられるファンと、空気を浄化するためのフィルタとを含む。そのため、空調機20とは独立して設けられる音センサ81により、空調機20のフィルタのメンテナンス時期を判定することが可能である。
【0057】
上記実施の形態では、音センサ81は、隔壁吸音材78と空調機20との間の隔壁18に取り付けられていたが、暗騒音除去空間70から離れて配置されていればよく、設置箇所について限定されない。音センサ81は、仕切り部に取り付けられていることが好ましいが、たとえば、図4の鎖線で示す音センサ81Aのように、後壁12に取り付けられていてもよい。音センサ81Aが送風機50の稼働音を測定するものである場合、測定対象の近くに設置させることになるため、より精度よくフィルタ36のメンテナンス時期を測定することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態の音センサ81は、機械室1内に配置される送風機50の音の大きさ(レベル)を取得するとしたが、音の内容(たとえば、周波数の変化など)を取得するものであってもよい。
【0059】
本実施の形態の記憶部83は、基準音データを記憶しており、判定部84がその基準音データと音センサ81により計測した実際の音データとを比較して、フィルタ36のメンテナンス時期を判断したが、AIによって学習した学習済み音データと実際の音データとを比較してフィルタ36のメンテナンス時期を判断してもよい
【0060】
また、本実施の形態の異常判定システム80は、フィルタ36のメンテナンス時期を判定することに特化したものであったが、音センサ81が複数の機器の音レベルを計測することが可能である場合、フィルタ36だけでなく、機械室1内の他の機器(たとえば、空調機20、空調ボックス30、送風機50、主ダクト60など)の異常を判定することが可能である。つまり、一つの音センサ81で複数の機器の異常を判定することができる。
【0061】
実施の形態において、建物100は2階建てであるとしたが、複数階建ての場合の階数は問わず、たとえば3階建て、4階建て等であってもよい。この場合、機械室1は、たとえば2階毎等、複数階毎に設けられてもよい。
【0062】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 機械室、16 ドア本体(仕切り部)、19 開口、20 空調機、30 空調ボックス、36 フィルタ、50 送風機、60 主ダクト、70 暗騒音除去空間、71,73,75,78 吸音材、80 異常判定システム、81,81A 音センサ、82 制御装置、83 記憶部、84 判定部、85 報知部、100 建物(住宅)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6