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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002079
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20231228BHJP
   H01G 9/008 20060101ALI20231228BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231228BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20231228BHJP
【FI】
H01G9/00 290D
H01G9/008
H01G4/228 F
H01G13/00 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101060
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000103220
【氏名又は名称】エルナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】木村 直純
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082BC38
5E082EE03
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082FG44
5E082FG56
5E082GG06
5E082GG08
5E082GG26
5E082LL25
5E082PP04
(57)【要約】
【課題】 リード端子のバリの発生を抑制することができる電子部品の製造方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】 電子部品の製造方法は、電気素子から延びるリード端子を、長さ方向に沿って一組のプレス型で挟み込んで板状に加工するプレス工程を含み、前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面にランダムに凹凸が形成されるようにブラスト処理が施されていることを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子から延びるリード端子を、長さ方向に沿って一組のプレス型で挟み込んで板状に加工するプレス工程を含み、
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面にランダムに凹凸が形成されるようにブラスト処理が施されていることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記リード端子は、錫メッキ膜を有することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記錫メッキ膜には、ビスマスが添加されていることを特徴とする請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面の算術平均表面粗さは、1.0~3.5(μm)であることを特徴とする請求項2または3記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面の算術平均表面粗さは、1.6(μm)であることを特徴とする請求項2または3記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面の算術平均表面粗さが1.1~2.0(μm)となるように前記ブラスト処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面の十点平均表面粗さが7.0~15.0(μm)となるように前記ブラスト処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記電気素子は、コンデンサ素子であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
電気素子と、
前記電気素子から延びる板状のリード端子とを有し、
前記リード端子の板面には、ランダムに凹凸が形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項10】
前記リード端子は、錫メッキ膜を有することを特徴とする請求項9に記載の電子部品。
【請求項11】
前記錫メッキ膜には、ビスマスが添加されていることを特徴とする請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
前記リード端子の前記板面の算術平均表面粗さは、1.1~2.0(μm)であることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の電子部品。
【請求項13】
前記リード端子の前記板面の十点平均表面粗さは、7.0~15.0(μm)であることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の電子部品。
【請求項14】
前記電気素子は、コンデンサ素子であることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば表面実装型のチップ電解コンデンサでは、リード型電解コンデンサを座板に組み付け、電解コンデンサから導出された板状の一対のリード端子が座板の溝部に収容されている。リード端子は一対のプレス型により帯板状にプレス加工される(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-16761号公報
【特許文献2】特開2020-194978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リード端子のプレス加工では、例えばリード端子の表面膜がプレスにより塑性変形して流動し、金属粉となってバリが生ずるおそれがある。例えば振動、または座板の孔とリード端子の接触によりバリが剥離して電子回路基板上に付着すると、ショートなどの問題を起こすおそれがある。
【0005】
これに関し、例えば特許文献1及び2には、溝状の複数の凹部を備えたプレス型で金属線材をプレス加工して、軸線方向に沿った複数の凸条を有するリード端子を製造することにより、リード端子の表面膜からの金属粉のカスの発生を抑制する手法が開示されている。
【0006】
しかし、上記の手法によると、凹部内に金属粉が集中的に生ずるおそれがあるため、凹部に沿ったバリの発生を抑制することが難しい。なお、この問題は、表面実装型のチップ電解コンデンサに限られず、板状のリード端子を備える表面実装型の他の電子部品にも同様に存在する。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リード端子のバリの発生を抑制することができる電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品の製造方法は、電気素子から延びるリード端子を、長さ方向に沿って一組のプレス型で挟み込んで板状に加工するプレス工程を含み、
前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面にランダムに凹凸が形成されるようにブラスト処理が施されていることを特徴とする。
【0009】
上記の電子部品の製造方法において、前記リード端子は、錫メッキ膜を有していてもよい。
【0010】
上記の電子部品の製造方法において、前記錫メッキ膜には、ビスマスが添加されていてもよい。
【0011】
上記の電子部品の製造方法において、前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面の算術平均表面粗さは、1.0~3.5(μm)であってもよい。
【0012】
上記の電子部品の製造方法において、前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面の算術平均表面粗さは、1.6(μm)であってもよい。
【0013】
上記の電子部品の製造方法において、前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面の算術平均表面粗さが1.1~2.0(μm)となるように前記ブラスト処理が施されていてもよい。
【0014】
上記の電子部品の製造方法において、前記一組のプレス型の少なくとも一方において、前記リード端子に接触する表面には、前記リード端子の板面の十点平均表面粗さが7.0~15.0(μm)となるように前記ブラスト処理が施されていてもよい。
【0015】
上記の電子部品の製造方法において、前記電気素子は、コンデンサ素子であってもよい。
【0016】
本発明の電子部品は、電気素子と、前記電気素子から延びる板状のリード端子とを有し、前記リード端子の板面には、ランダムに凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記の電子部品において、前記リード端子は、錫メッキ膜を有していてもよい。
【0018】
上記の電子部品において、前記錫メッキ膜には、ビスマスが添加されていてもよい。
【0019】
上記の電子部品において、前記リード端子の前記板面の算術平均表面粗さは、1.1~2.0(μm)であってもよい。
【0020】
上記の電子部品において、前記リード端子の前記板面の十点平均表面粗さは、7.0~15.0(μm)であってもよい。
【0021】
上記の電子部品において、前記電気素子は、コンデンサ素子であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
1つの側面として、電子部品のリード端子のバリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】アルミ電解コンデンサの一例を示す側面図である。
図2】コンデンサ素子の一例を示す斜視図である。
図3】アルミ電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
図4】リード端子のプレス工程の一例を示す側面図である。
図5】プレス加工前後のリード端子の一例を示す断面図である。
図6】プレス工程においてリード端子に凹凸が形成される様子の一例を示す正面図である。
図7】プレス面に溝状の複数の凹部を設けた場合のプレス工程の一例を示す正面図である。
図8】外型及び内型に対しブラスト処理を実行していない場合の(a)プレス面の画像、(b)リード端子の表面粗さの測定画像、(c)リード端子の表面の画像、及び(d)リード端子の断面の画像を示す図である。
図9】外型及び内型に対しRa=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合の(a)プレス面の画像、(b)リード端子の表面粗さの測定画像、(c)リード端子の表面の画像、及び(d)リード端子の断面の画像を示す図である。
図10】外型及び内型に対しRa=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合の(a)プレス面の画像、(b)リード端子の表面粗さの測定画像、(c)リード端子の表面の画像、及び(d)リード端子の断面の画像を示す図である。
図11】外型及び内型に対し、(a)ブラスト処理を実行していない場合、(b)Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及び(c)Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合におけるリード端子の断面の画像を示す図である。
図12】外型及び内型に対し、(a)ブラスト処理を実行していない場合、(b)Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及び(c)Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合におけるリード端子の断面の他の画像を示す図である。
図13】マスキング処理前後のリード端子の断面の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態]
(アルミ電解コンデンサの構成)
図1は、アルミ電解コンデンサ1の一例を示す側面図である。図1の紙面において、アルミ電解コンデンサ1の中心線Lを挟んだ右半分には、その内部の断面が示されている。
【0025】
アルミ電解コンデンサ1は電子部品の一例である。アルミ電解コンデンサ1として、本例では特に導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサを挙げるが、これに限定されない。アルミ電解コンデンサ1は、電子回路基板に実装され、例えばカップリング、デカップリング、及び平滑化などに用いられる。
【0026】
アルミ電解コンデンサ1は、コンデンサ素子10、ケース11、封口体12、座板13、一対の端子部14、及びリード端子110,111を有する。なお、図1には一方の端子部14のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の端子部14が設けられている。
【0027】
ケース11は、アルミニウムにより形成され、上部の開口が塞がった円筒形状を有する。ケース11は、コンデンサ素子10及び封口体12を覆い、アルミ電解コンデンサ1の外装として機能する。なお、ケース11の形状は円筒形状に限定されず、角筒形状であってもよい。
【0028】
封口体12は、例えばブチルゴムなどの弾性部材により形成された略円形状の部材である。封口体12は、コンデンサ素子10に隣接し、ケース11の開放端を封止する。
【0029】
コンデンサ素子10は、後述するように、陽極箔、陰極箔、及びセパレータ(電解紙)を重ねて巻き回した構成を有する。コンデンサ素子10の底部からは一対の端子部14が延びている。
【0030】
一対の端子部14及びリード端子110,111はアルミニウムなどから形成された棒状部材である。一対の端子部14は、陽極箔及び陰極箔に対し、かしめなどの接合手段によりそれぞれ接合されており、アルミ電解コンデンサ1の陽極端子及び陰極端子として機能する。各端子部14は、封口体12に形成された一対の貫通孔120にそれぞれ挿通されている。なお、図1には一方の貫通孔120のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の貫通孔120が設けられている。
【0031】
一対の端子部14の先端には板状のリード端子110,111がそれぞれ設けられている。リード端子110,111はL字形状に屈曲しており、その先端側の部分は座板13の板面に沿って延びている。リード端子110,111の端子部14側の部分は座板13の貫通孔130に挿通されている。リード端子110,111は、電子回路基板のリフロー工程において、電子回路基板上のパッドにはんだ付けされる。
【0032】
座板13は、樹脂などにより形成された板状部材であり、ケース11及び封口体12の下部に設けられている。座板13は、実装対象の電子回路基板に対してケース11及び封口体12を支持する。座板13には、リード端子110,111の貫通孔130、及びリード端子110,111の屈曲した先端部分を収容する溝部131が設けられている。溝部131は座板13の底面に沿って中央近傍から外側へ延びている。座板13の底面は、電子回路基板に対するアルミ電解コンデンサ1の実装面となるため、板状のリード端子110,111を電子回路基板上のパッドにはんだ付けすることが可能となる。
【0033】
(コンデンサ素子の構成)
図2は、コンデンサ素子10の一例を示す斜視図である。図2において、図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。コンデンサ素子10は、電気素子の一例であり、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ(電解紙)103を巻き回した巻回体100を有する。
【0034】
巻き回し体100の下方には一対のリード端子110,111が延びる。リード端子110,111は陽極箔101及び陰極箔102にそれぞれ接続されている。なお、図2では、リード端子110,111の屈曲前の状態が示されている。
【0035】
陽極箔101及び陰極箔102は、例えばアルミニウム、タンタル、チタン、及びニオブ等の弁金属およびその合金箔並びに蒸着箔等により形成されている。陽極箔101の表面には、電極面積が増加するようにエッチング処理が施されている。さらに陽極箔101の表面には極薄の酸化被膜が形成されている。このため、陽極箔101は、他の部材から絶縁されている。酸化被膜が誘電体として機能することで、コンデンサ素子10がコンデンサとして機能する。
【0036】
一方、陰極箔102の表面には、エッチング処理が施されているが、酸化被膜は形成されていない。なお、陰極箔102の表面にはエッチング処理が施されてもよい。また、陰極箔102の表面には、酸化被膜が形成されてもよいし、無機層またはカーボン層が形成されていてもよい。
【0037】
セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれた状態で巻き回される。セパレータ103はセルロース、レーヨン、ガラス繊維などから選択される少なくとも1種類以上を材料とする。セパレータ103は電解液及び導電性高分子により含浸されている。なお、アルミ電解コンデンサ1が導電性高分子ハイブリッドコンデンサではない場合、導電性高分子は用いられない。
【0038】
アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、リード端子110,111はプレス型により丸棒状から板状にプレス加工される。このため、リード端子110,111は、電子回路基板への表面実装に対応した平坦な形状となる。このプレス工程において、リード端子110,111の板面Sには、後述するように、ブラスト処理が施されたプレス型によってランダムに凹凸が形成される。
【0039】
符号Gaは、A-A線に沿ったリード端子110の断面の一例を模式的に示している。リード端子110の板面Sには、ランダムに凹凸110aが形成されている。リード端子110の板面S上の凹凸110aは、溝のような方向性を有しておらず、高さや向きがランダムである。また、符号Gbは、リード端子110の板面Sの凹凸110aを平面視で模式的に示している。ここで、xはリード端子110の幅方向を表し、yはリード端子110の長さ方向を表す。板面Sには、ランダムな形状の多数の凸部80及び凹部81が形成されている。凸部80及び凹部81の配置には規則性はなく、凸部80及び凹部81は、一定の方向ではなく、ランダムな2次元方向に配列されている。したがって、板面Sには、一定方向に沿った溝が形成されていない。この凹凸110aは、プレス工程において、ブラスト処理が施されたプレス型の表面からリード端子110に転写される。なお、図示は省略するが、他方のリード端子111の板面Sにも同様のランダムな凹凸が形成されている。
【0040】
(アルミ電解コンデンサの製造工程)
図3は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。アルミ電解コンデンサ1の製造工程は電子部品の製造方法の一例である。
【0041】
まず、事前に準備した陽極箔101及び陰極箔102にそれぞれ端子部14を接続する(ステップSt1)。接続手段としては、かしめが挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
次に、セパレータ103、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103をこの順に積層して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体100を作製する(ステップSt2)。
【0043】
次に巻回体100に化成処理を施す(ステップSt3)。これにより、陽極箔101の表面に形成された酸化被膜の欠損が修復される。化成処理には、例えばカルボン酸基を有する有機酸塩類、リン酸などの無機酸塩類の溶質を有機溶媒または無機溶媒に溶解した化成液が用いられる。
【0044】
次に減圧雰囲気中で、水と有機溶媒を含む導電性高分子分散液に巻回体100を20分間浸漬し、その後、導電性高分子分散液から巻回体100を引き上げる(ステップSt4)。このようにすることで、巻回体100に導電性高分子を含浸させることができる。
【0045】
次に減圧雰囲気中で、所定量の電解液を巻回体100に含浸させる(ステップSt5)。なお、電解液は、導電性高分子分散液内に、溶質を混合させたものであってもよい。すなわち、導電性高分子分散液を電解液として使用することができる。その場合、電解液の含浸は、導電性高分子の含浸と同時に行うこととなる。これによりコンデンサ素子10が完成する。なお、コンデンサ素子10に導電性高分子を用いない場合、ステップSt3及びステップSt4は省略できる。
【0046】
次に巻回体100をケース11に収容して封口体12によって封止する(ステップSt6)。このとき、巻回体100から延びる端子部14は封口体12の貫通孔120に挿通される。その後、コンデンサ素子10に定格電圧を印加しながらエージング処理を行なってもよい。
【0047】
次にリード端子110,111を、長さ方向に沿って一組のプレス型で挟み込んで板状にプレス加工する(ステップSt7)。これによりリード端子110,111の断面形状は、電子回路基板への表面実装に対応するように、プレス型により丸形状から板状にプレス加工される。このプレス工程において、リード端子110,111の板面Sにランダムに凹凸が形成される。なお、プレス工程の詳細は後述する。
【0048】
次にケース11に座板13を取り付ける(ステップSt8)。このとき、リード端子110,111を座板13の貫通孔130に挿通させて、適切な長さにカットしL字形状に屈曲させる。リード端子110,111の屈曲した先端部分は、座板13の底面に設けられた溝部131に収容される。これによって、アルミ電解コンデンサ1が完成する。
【0049】
(プレス工程)
図4は、リード端子110,111のプレス工程の一例を示す側面図である。プレス装置9は、プレス型として、一組の外型90,91及び内型92を有する。外型90,91及び内型92は、例えば略直方体形状の金属部材であり、リード端子110,111の芯より高い硬度を有する。
【0050】
外型90,91は内型92を挟んで互いに反対側に配置される。アルミ電解コンデンサ1は、例えばアーム装置などにより搬送されてリード端子110,111が内型92を跨ぐ位置に保持される。各外型90,91は、符号dで示されるように内型92に向かって平行に移動する。
【0051】
これにより、リード端子110,111は、その長さ方向に沿って外型90,91及び内型92で挟み込まれる。このとき、内型92のプレス面920及び外型90のプレス面900は一方のリード端子110に接触し、内型92のプレス面920及び外型91のプレス面910は他方のリード端子111に接触する。プレス時間は、バリの大きさが小さくなるように短いほうが望ましく、例えば、0.01(秒)以下である。
【0052】
図5は、プレス加工前後のリード端子110,111の一例を示す断面図である。図5には、図2のA-A線に沿った断面が示されている。
【0053】
リード端子110,111は例えば3層構造を有する。リード端子110,111は線芯層20、被覆層21、及びメッキ層22を有する。線芯層20はリード端子110,111の線材の芯であり、例えば鉄により形成される。被覆層21は、線芯層20を覆う被膜であり、例えば銅により形成されている。
【0054】
メッキ層22は、リフロー工程での半田との密着性を向上するため、例えば錫により形成されている。メッキ層22は錫メッキ膜の一例である。ここでメッキ層22は、錫にビスマスを添加して形成してもよい。ビスマスが添加された場合、メッキ層22におけるウィスカー(ヒゲ結晶)の発生が抑制される。また、メッキ層22の硬度は外型90,91及び内型92の硬度より低い。
【0055】
プレス加工前のリード端子110,111の断面形状は略円形状であるが、プレス加工後のリード端子110,111の断面形状は略帯板形状となる。最外側のメッキ層22はプレス加工により塑性変形して、メッキ層22が流動することによりバリを生ずる。
【0056】
【表1】
【0057】
上記の表1は、プレス加工前のリード端子110,111の各層の厚みDa~Dcを、No.1~3のリード端子110,111の種類ごとに示す。No.1~3のリード端子110,111の線径rは互いに異なる。線芯層20の厚みDc及び被覆層21の厚みDbは、線径rが大きいほど、大きい。また、No.1~3のメッキ層22の厚みDaは互いに同一である。
【0058】
【表2】
【0059】
上記の表2は、表1のNo.1~3のリード端子110,111のプレス加工後のサイズを示す。リード端子110,111の厚みT及び幅Wは線径rが大きいほど、大きい。
【0060】
図6は、プレス工程においてリード端子110に凹凸110aが形成される様子の一例を示す正面図である。図6において、図1及び図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。具体的には、図6は、図4の符号dで示されるように、外型90及び内型92がリード端子110を挟み込んだとき、リード端子110の先端を正面視した様子を部分的に示す(図4の符号V参照)。
【0061】
内型92のプレス面920及び外型90のプレス面900には、予め所定の表面粗さとなるようにブラスト処理が施されている。ブラスト処理に用いるメディア(研磨材)の形状としては、不定形及び球形が挙げられるが、これに限定されない。また、各プレス面900,920のブラスト処理後の表面粗さとして、Ra(算術平均表面粗さ)を1.6とする。もっとも、ブラスト処理後のRaは、これに限定されず、1.0~3.5(μm)としてもよく、好ましくは1.1~2.0(μm)としてもよい。
【0062】
ブラスト処理により各プレス面900,920にはランダムに凹凸が形成される。内型92及び外型90硬度はメッキ層22の硬度より高いため、内型92及び外型90のプレス面900,920の凹凸は実質的にリード端子110に転写される。このため、プレス面900,920がリード端子110に押し当たることにより、ランダムな凹凸110aを有する板面Sが形成される。ここで凹凸110aのRaは1.1~2.0(μm)である。また、凹凸110aのRz(十点平均表面粗さ)は7.0~15.0(μm)である。なお、Ra及びRzは「JIS(Japan Industrial Standards) B 0601(1994)」及び「JIS B 0031(1994)」に規定されている。
【0063】
このようにプレス加工することによって、メッキ層22が塑性変形してメッキ層22の端部に流動しバリPが形成される。しかし、プレス面900,920のランダムな凹凸によりメッキ層22の流動は抑制されるため、バリPの生成は、各プレス面900,920にブラスト処理を施していない場合より抑制される。なお、本例では一方のリード端子110を例に挙げたが、他方のリード端子111についても上記と同様にバリPの生成が抑制される。また、本例では外型90,91及び内型92の両方のプレス面900,910,920にブラスト処理による凹凸が設けられているが、外型90,91及び内型92の一方のプレス面900,910,920のみに凹凸が設けられてもよい。
【0064】
本実施形態とは異なり、仮にプレス面900,910,920に、上記の特許文献1と同様に溝状の複数の凹部を設けた場合、以下に述べるようにバリを増加させるおそれがある。
【0065】
図7は、プレス面900,920に溝状の複数の凹部900a,920aを設けた場合のプレス工程の一例を示す正面図である。図6において、図1及び図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。具体的には、図7は、図4の符号dで示されるように、外型90及び内型92がリード端子110を挟み込んだとき、リード端子110の先端を正面視した様子を部分的に示す(図4の符号V参照)。
【0066】
プレス面900,920には溝状の複数の凹部900a,920aが設けられている。凹部900a,920aの延びる方向はリード端子110の長さ方向に沿っている。
【0067】
プレス面900,920がリード端子110に押し当たることにより、凹部900a,920a内にメッキ層22の金属粉が集中的に流入するおそれがある。このため、リード端子110の板面Sには、本実施形態とは異なり、凹部900a,920aに沿って凸条だけでなく、多数のバリQが生ずるおそれがある。
【実施例0068】
次にアルミ電解コンデンサ1の製造方法の実施例を説明する。本例では、外型90,91及び内型92の各プレス面900,910,920に対し、Raが1.6(μm)または3.2(μm)となるようにブラスト処理を施してプレス工程を実行した。また、比較のため、ブラスト処理を施していない外型90,91及び内型92によるプレス工程も実行した。この場合の各プレス面900,910,920のRaは0.5(μm)以下とした。なお、ブラスト処理のメディアとしては、目標のRaに応じた球形のメディアを用いた。また、リード端子110,111の各層の厚さDa~Dcは、表1に記載された通りとした。
【0069】
【表3】
【0070】
表3は、外型90,91及び内型92に対しブラスト処理を実行していない場合、Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及びRa=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合において、プレス加工後のリード端子110,111の複数のサンプルのRa及びRzとその平均を示す。ブラスト処理を実行していない場合について、5個のリード端子110,111のサンプルNo.1~No.5の板面SのRaを測定した。Ra=1.6(μm)及びRa=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合について、それぞれ、10個のリード端子110,111のサンプルNo.1~No.10の板面SのRa及びRzを測定した。
【0071】
ブラスト処理を実行していない場合のサンプルNo.1~No.5のうち、メッキ層22にビスマスが添加されたリード端子110,111はNo.4,5であり、メッキ層22にビスマスが添加されていないリード端子110,111はNo.1,2,3である。Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合のサンプルNo.1~No.10のうち、メッキ層22にビスマスが添加されたリード端子110,111はNo.4,5,6,9,10であり、メッキ層22にビスマスが添加されていないリード端子110,111はNo.1,2,3,7,8である。Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合のサンプルNo.1~No.10のうち、メッキ層22にビスマスが添加されたリード端子110,111はNo.4,5,6,9,10であり、メッキ層22にビスマスが添加されていないリード端子110,111はNo.1,2,3,7,8である。
【0072】
図8は、外型90,91及び内型92に対しブラスト処理を実行していない場合の(a)プレス面900,910,920の画像、(b)リード端子110,111の表面粗さの測定画像、(c)リード端子110,111の表面の画像、及び(d)リード端子110,111の断面の画像を示す図である。(d)リード端子110,111の断面の画像において、点線はメッキ層22、被覆層21、及び線芯層20の境界を示す。なお、画像はレーザー顕微鏡を用いて撮像した。
【0073】
ブラスト処理を実行していない場合、プレス面900,910,920及びリード端子110,111の表面の凹凸は小さい。また、プレス工程においてメッキ層22の中央でほとんど流動が発生せず、その厚みは8(μm)であったが、メッキ層22の両端(丸印参照)では大きな流動が発生して、その厚みは半分の3~4(μm)となった。この流動によりリード端子110,111の端部にバリが発生した。
【0074】
図9は、外型90,91及び内型92に対しRa=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合の(a)プレス面900,910,920の画像、(b)リード端子110,111の表面粗さの測定画像、(c)リード端子110,111の表面の画像、及び(d)リード端子110,111の断面の画像を示す図である。(d)リード端子110,111の断面の画像において、点線はメッキ層22、被覆層21、及び線芯層20の境界を示す。なお、画像はレーザー顕微鏡を用いて撮像した。
【0075】
Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、プレス面900,910,920及びリード端子110,111の表面には、溝のような方向性を有しておらず、高さや向きがランダムな凹凸が形成されている。プレス面900,910,920のランダムな凹凸のため、メッキ層22の表面の流動の程度が全体的に平均化され、その厚みは全体的に8~12(μm)となった。このため、ブラスト処理を実行していない場合よりもバリの発生が抑制された。
【0076】
図10は、外型90,91及び内型92に対しRa=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合の(a)プレス面900,910,920の画像、(b)リード端子110,111の表面粗さの測定画像、(c)リード端子110,111の表面の画像、及び(d)リード端子110,111の断面の画像を示す図である。(d)リード端子110,111の断面の画像において、点線はメッキ層22、被覆層21、及び線芯層20の境界を示す。なお、画像はレーザー顕微鏡を用いて撮像した。
【0077】
Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、プレス面900,910,920及びリード端子110,111の表面には、溝のような方向性を有しておらず、高さや向きがランダムな凹凸が形成されている。凹凸の大きさは、Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合より大きい。プレス面900,910,920のランダムな凹凸のため、メッキ層22の表面上で金属粉の流動の程度が平均化され、その厚みは全体的に2~20(μm)となった。このため、ブラスト処理を実行していない場合よりバリの発生は抑制されたが、Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合より厚みのばらつきが大きいため、メッキ層22の内側の被覆層21が露出する部分が認められた(丸印参照)。
【0078】
図11は、外型90,91及び内型92に対し、(a)ブラスト処理を実行していない場合、(b)Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及び(c)Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合におけるリード端子110,111の断面の画像を示す図である。各断面は、図2のA-A線に沿った断面である。また、メッキ層22の組成は錫100(%)とした。
【0079】
丸印は、プレス工程で生じたバリを示す。図11から理解されるように、ブラスト処理を実行していない場合、バリが最大であり、Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、バリが最小である。
【0080】
図12は、外型90,91及び内型92に対し、(a)ブラスト処理を実行していない場合、(b)Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及び(c)Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合におけるリード端子110,111の断面の他の画像を示す図である。各断面は、図2のA-A線に沿った断面である。なお、画像はレーザー顕微鏡を用いて撮像した。本例では、メッキ層22の組成は錫99.5(%)及びビスマス0.5(%)とした。
【0081】
点線の丸印は、プレス工程で生じたバリを示す。図12から理解されるように、バリはリード端子110,111の両端側のメッキ層22の金属粉が外側に流動することで、リード端子110,111の板面に沿って外側に張り出すように生成された。ブラスト処理を実行していない場合、バリが最大であり、Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、バリが最小である。上記の画像をマスキング処理することによってバリの大きさを定量的に測定した。
【0082】
図13は、マスキング処理前後のリード端子110,111の断面の画像の一例を示す図である。リード端子110,111の四隅のバリの領域を除き、画像をマスキング処理したうえで総画素数を測定した。
【0083】
【表4】
【0084】
表4には、バリ領域の総画素数が示されている。画素数の測定は、ビスマスを含有していないリード端子110,111、及び0.5(%)のビスマスを含有しているリード端子110,111に対して行った。また、外型90,91及び内型92に、ブラスト処理を実行していない場合、Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、及びRa=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合について測定を行った。なお、測定結果は、表3に示されたリード端子110,111のサンプルの平均値で示されている。
【0085】
ビスマスの含有の有無にかかわらず、外型90,91及び内型92にブラスト処理を実行している場合、ブラスト処理を実行していない場合より画素数が減少した。Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合、メッキ層22がビスマスを含有していないリード端子110,111のバリ領域の画素数はおよそ40(%)減少し、メッキ層22がビスマスを含有したリード端子110,111のバリ領域の画素数はおよそ45(%)減少した。また、Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、メッキ層22がビスマスを含有していないリード端子110,111のバリ領域の画素数はおよそ56(%)減少し、メッキ層22がビスマスを含有したリード端子110,111のバリ領域の画素数はおよそ47(%)減少した。
【0086】
また、Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、Ra=1.6(μm)のブラスト処理を実行した場合より画素数が減少した。これは、上述したように、Ra=3.2(μm)のブラスト処理を実行した場合、リード端子110,111の表面粗さがより増加するためである。
【0087】
ブラスト処理を実行の有無にかかわらず、メッキ層22がビスマスを含有したリード端子110,111のバリ領域の画素数は、メッキ層22がビスマスを含有していないリード端子110,111のバリ領域の画素数より少ない。これは、ビスマスが含有される事により、錫メッキの硬度が上がりメッキ自体が流動しづらくなったからである。
【0088】
また、メッキ層22がビスマスを含有したリード端子110,111のバリ領域の画素数は、メッキ層22がビスマスを含有していないリード端子110,111と比べると、ブラスト処理のRaが1.6(μm)及び3.2(μm)のそれぞれの場合の差分が少ない。これは、ビスマスが含有される事による錫メッキ層の硬度が上がった事で、プレス時の力がより線芯層20へ伝達されやすくなったからである。
【0089】
このように、プレス工程において、プレス面900,910,920にブラスト処理を施した外型90,91及び内型92によりリード端子110,111を挟み込こんで、その板面Sにランダムに凹凸を形成することにより、バリの生成を抑制することが可能である。このとき、Raが3.2(μm)となるようにプレス面900,910,920にブラスト処理を施した場合、図10の(d)の画像のように被覆層21が露出するおそれがある。
【0090】
このため、Raが1.6(μm)となるようにプレス面900,910,920にブラスト処理を施すのが好ましい。したがって、表3に示されたリード端子110,111のRa,Rzに基づくと、板面SのRaが1.1~2.0(μm)となるように、または板面SのRzが7.0~15.0(μm)となるように、プレス面900,910,920にブラスト処理を施すのが好ましい。これにより、メッキ層22がはがれて内側の被覆層21が露出することが抑制される。
【0091】
また、ブラスト処理に用いられるメディアを複数種類用いてプレス工程を行った場合のリード端子110,111のバリの大きさ及び被覆層21の露出有無を評価した。
【0092】
【表5】
【0093】
表5は、ブラスト処理に用いたメディアごとのリード端子110,111のバリの大きさ及び被覆層21の露出有無の評価結果である。メディアとしては、Ra=1.6(μm)に対応する不定形のメディア、Ra=3.2(μm)に対応する不定形のメディア、Ra=3.2(μm)に対応する球形のメディア、及びRa=1.6(μm)に対応する球形のメディアを用いた。また、比較のため、ブラスト処理を行わない場合のリード端子110,111についても評価した(「N/A」参照)。なお、何れの場合も10個のリード端子110,111をサンプルとして評価に用いた。
【0094】
また、表5には、メディアごとの外型90,91及び内型92(プレス型)のRa、メッキ層22にビスマスが添加されていないリード端子110,111のRa、及びメッキ層22にビスマスが添加されたリード端子110,111のRaの測定結果が示されている。なお、ビスマスの含有率は上記と同様に0.5(%)とした。
【0095】
何れのメディアを用いた場合でも、ブラスト処理を行っていない場合よりバリの大きさは小さくなった。また、Ra=1.6(μm)に対応する不定形のメディア及び球形のメディアを用いた場合に被覆層21の露出は確認されなかったが、Ra=3.2(μm)に対応する不定形のメディア及び球形のメディアを用いた場合、何れも被覆層21の露出が確認された。この場合、外型90,91及び内型92(プレス型)のRaが、Ra=1.6(μm)の不定形のメディア及び球形のメディアを用いた場合より大きくなるため、メッキ層22がより深く削られてしまう。
【0096】
したがって、Ra=1.6(μm)に対応する不定形のメディアまたは球形のメディアを用いることにより、被覆層21の露出が抑えられる。
【0097】
なお、本例では、メッキ層22の厚みが9~15(μm)のリード端子110,111を用いて評価したが、これに限定されない。ブラスト処理のRaはメッキ層22の厚みに応じて適切に設定することが望ましい。
【0098】
これまで述べたように、上記のアルミ電解コンデンサ1及びその製造方法によると、リード端子110,111に生ずるバリを抑制することが可能であるが、これと同様の手法を、板状のリード端子を有する他の電子部品にも適用することが可能である。もっとも、アルミ電解コンデンサ1などのコンデンサの場合、その静電容量が大きいほど、リード端子110,111からバリが剥離した際、バリに起因するショート事故の危険度が高くなる。このため、電子部品のうち、アルミ電解コンデンサ1のような大容量のコンデンサに上記の手法を適用することは、とりわけ有用である。
【0099】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 アルミ電解コンデンサ
10 コンデンサ素子
11 ケース
12 封口体
13 座板
22 メッキ層
90,91 外型
92 内型
110,111 リード端子
P,Q バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13