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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020803
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123266
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】322003651
【氏名又は名称】岩村 努
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】岩村 努
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB73
3H178DD30X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プロペラ型の回転子を有する風力発電装置であって、回転トルクを大きくするのが容易な構成の風力発電装置を提供する。
【解決手段】風力発電装置1を、軸方向が垂直に配置された回転軸30と、回転軸30を軸受25b及び45bを介して回転自在に支持するフレーム2と、回転軸30に回転軸30とともに回転可能に且つ同軸に取り付けられた各4枚のブレード32からなるプロペラ型の推進部31A及び31Bと、回転中心軸線と直交する仮想線を境に一方の側に存在するブレード32に対して側方から吹き付ける風を導く側方開口部を側方に有し、側方開口部以外の部分は推進部31A及び31Bの周囲を覆うように配置された略筒状の風向制御板53を有する風向制御部5と、回転軸30に回転子47aが連結された発電機47とを備える構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを有するプロペラ型の推進部を備える風力発電装置であって、
軸方向が垂直に配置される回転軸と、
前記回転軸に回転可能に取り付けられた1又は複数の前記推進部と、
回転中心軸線と直交する仮想線を境に一方の側に存在する前記ブレードに対して側方から吹き付ける風を導く開口部を側方に形成するとともに、当該開口部以外の前記1又は複数の推進部の周囲を覆うように構成された側壁部を備える風向制御部と、
前記回転軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、を備えることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記風向制御部を前記回転軸とは独立して当該回転軸周りに回転可能に支持する回転支持部と、
前記回転支持部の上部に配設され、側方から吹き付ける風を受けて前記風向制御部を回転する動力を前記回転支持部に付与するとともに前記開口部が風向き方向を向くように前記回転支持部の回転を制御する回転制御部と、を備えることを特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記風向制御部は、前記側壁部の全部又は一部が、下端から上端に向かって内側へと傾斜する傾斜壁となっていることを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力により回転子を回転駆動して発電する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力によりプロペラ型の回転子を回転駆動して発電する風力発電装置として、例えば、特許文献1記載の風力発電装置が開示されている。
かかる風力発電装置は、タワーと、タワーに回転可能に設置されているナセルと、ナセルの前方で回転可能な少なくとも1枚以上のブレードと、ナセルに互いに離れて設置された複数の風速風向計とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-110272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、プロペラ型の回転子を水平軸周りに回転駆動する構成となっているため、回転トルクを大きくし難く強風や乱流下での安定動作が困難である。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、プロペラ型の回転子を有する風力発電装置であって、回転トルクを大きくするのが容易な構成の風力発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の風力発電装置は、ブレードを有するプロペラ型の推進部を備える風力発電装置であって、軸方向が垂直に配置される回転軸と、前記回転軸に回転可能に取り付けられた1又は複数の前記推進部と、回転中心軸線と直交する仮想線を境に一方の側に存在する前記ブレードに対して側方から吹き付ける風を導く開口部を側方に形成するとともに、当該開口部以外の前記1又は複数の推進部の周囲を覆うように構成された側壁部を備える風向制御部と、前記回転軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機と、を備える。
〔発明2〕 さらに、発明2の風力発電装置は、発明1の風力発電装置において、前記風向制御部を前記回転軸周りに回転可能に支持する回転支持部と、前記回転支持部の上部に配設され、側方から吹き付ける風を受けて前記風向制御部を回転する動力を当該回転支持部に付与するとともに前記開口部が風向き方向を向くように前記回転支持部の回転を制御する回転制御部と、を備える。
【0006】
〔発明3〕 さらに、発明3の風力発電装置は、発明1又は2の風力発電装置において、前記風向制御部は、前記側壁部の全部又は一部が、下端から上端に向かって内側へと傾斜する傾斜壁となっている。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、発明1の風力発電装置によれば、プロペラ型の推進部を垂直軸周りに回転駆動する構成としたので、推進部の高さ方向の寸法を短くすることができ複数の推進部を鉛直方向に並べて配置することが容易であり、推進部の段数を増やすことで容易に回転トルクを大きくすることができる。
さらに、発明2の風力発電装置によれば、回転制御部によって、開口部を風向き方向に自動で向けることができるので、開口部の向きを風向き方向に合わせて手動で変えるといった煩わしい作業を不要にできる。
さらに、発明3の風力発電装置によれば、側壁部を傾斜させることで容易に回転数を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る風力発電装置1の一構成例を示す図であり、同図では軸受の配置されている箇所の一部を断面表示しているとともに風向制御部5の一部を省略している。
図2】本実施の形態に係る風力発電装置1の一構成例を示す部分構成図であり、(a)は、平面側から視た図であり、(b)は、底面側から視た図であり、同図(a)では風向制御板53が簡略化されている。
図3】本実施の形態に係る風向制御部5の一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】(a)は、(b)のA-A’線断面図であり、(b)は、(a)のX矢視図であってブレード32の平面図である。
図5】(a)は、推進部31の平面図であり、(b)は、ブレード32の取付構造の一例を示す図である。
図6】(a)は、直立構成の風向制御板53を示す図であり、(b)は、一部傾斜構成の風向制御板53Aを示す図であり、(c)は、全傾斜構成の風向制御板53Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔構成〕
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図5は、実施の形態を示す図である。
図1は、本実施の形態に係る風力発電装置1の一構成例を示す図であり、同図では軸受の配置されている箇所の一部を断面表示しているとともに風向制御部5の一部を省略している。図2は、本実施の形態に係る風力発電装置1の一構成例を示す部分構成図であり、図2(a)は、平面側から視た図であり、図2(b)は、底面側から視た図であり、同図(a)では風向制御板53が簡略化されている。図3は、本実施の形態に係る風向制御部5の一構成例を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。図4(a)は、同図(b)のA-A’線断面図であり、図4(b)は、同図(a)のX矢視図である。図5(a)は、推進部31の平面図であり、図5(b)は、ブレード32の取付構造の一例を示す図である。
【0010】
以下、図1中に矢印で示した方向に基づいて構成を説明する。すなわち、左右側面はその方向のままで、正面を前面、背面を後面、平面を上面、底面を下面とする。そして、左側面から右側面を向く方向を右方、その逆を左方、後面から前面を向く方向を前方、その逆を後方、底面から平面を向く方向を上方、その逆を下方と定義する。
まず、風力発電装置1の概略構成を説明する。
本実施の形態の風力発電装置1は、垂直軸型の風車(回転子)の回転により発電する風力発電装置である。風力発電装置1は、図1乃至図3に示すように、フレーム2と、回転子3と、発電部4と、風向制御部5とを備えている。
フレーム2は、円形厚板状のベーステーブル20と、ベーステーブル20に取り付けられた4本の角柱状の下部支柱21と、4本の下部支柱21に取り付けられた4本の角柱状の縦支柱22と、4本の縦支柱22に取り付けられた2本の角柱状の上部支柱23とを備える。加えて、2本の上部支柱23を接合する上支柱接合板24と、上支柱接合板24の上面に設けられた軸受部25とを備える。
【0011】
発電部4は、架台40と、架台40を構成する2本の縦支柱部41及び天板部43と、天板部43の下面に設けられた軸受部45と、架台40の内側のベーステーブル20上に設置された発電機47とを備える。
回転子3は、フレーム2に軸受部25及び45を介して回転自在に支持された回転軸30と、回転軸30に回転軸30と軸を一致させて同軸に取り付けられたプロペラ型の推進部31A及び31Bとを備える。
風向制御部5は、回転台50と、4本の角柱状の下部支柱51と、4本の下部支柱51に取り付けられた4本の円柱状の縦支柱52と、4本の縦支柱52に取り付けられ、推進部31A及び31Bの周囲を覆うように配置された略円筒形状の風向制御板53と、側方から吹き付ける風を受けて回転台50の回転及び回転位置を制御する回転制御部54とを備える。
【0012】
次に、フレーム2の詳細な構成を説明する。
フレーム2を構成するベーステーブル20の側面には、周方向に等間隔に4つの下部支柱21の取付用の丸穴(不図示)が設けられている。ベーステーブル20が円形であるため、各丸穴は側面に設けられた下部支柱21の外形よりもわずかに大きい矩形状の凹部の中央に設けられている。
4本の下部支柱21は、それぞれの一端部が他部よりも小径の円柱状に構成された取付部(不図示)を備えており、それぞれの取付部がベーステーブル20の側面に設けられた丸穴に例えば「圧入」、「嵌入」、「嵌入+接着」等されて取り付けられている。これにより、4本の下部支柱21はベーステーブル20を中心に放射状に且つ周方向に等間隔に配置される。各下部支柱21の他端側の上部には、それぞれ縦支柱22の取付用の丸穴(不図示)が設けられている。
【0013】
4本の縦支柱22は、それぞれの上端部及び下端部が他部よりも小径の円柱状に構成された取付部(不図示)を備えており、それぞれの下端側の取付部が各下部支柱21の他端側の上部に設けられた丸穴に例えば「圧入」、「嵌入」、「嵌入+接着」等されて取り付けられている。
2本の上部支柱23は、それぞれの長手方向中央部に互いの上面及び下面が面一となるように互いを嵌め合わせるための凹部(不図示)が設けられており、面一且つ十字となるように嵌め合わされている。なお、嵌め合わせるだけでなく接着や、ネジ穴を設けてネジ止め等してもよい。また、それぞれの凹部の中央には回転軸30を挿通するための回転軸30の径よりも大径の貫通孔(不図示)が設けられている。十字に嵌め合わされた2本の上部支柱23の中央部は、上支柱接合板24の下部に例えば接着、ネジ止め等により取り付けられている。また、2本の上部支柱23のそれぞれの長手方向の両端部はそれぞれの対応する位置にある縦支柱22の上端部に取り付けられている。具体的に、各上部支柱23の両端部の下部には、それぞれ上部支柱23の取付用の丸穴(不図示)が設けられており、各上部支柱23の両端部は、各丸穴に縦支柱22の上端部の取付部を例えば「圧入」、「嵌入」、「嵌入+接着」等して取り付けられている。
【0014】
上支柱接合板24は、矩形板状を成しその中央部には回転軸30を挿通するための回転軸30の径よりも大径の貫通孔(不図示)が設けられている。さらに、上支柱接合板24の上部には、軸受部25が設けられている。
軸受部25は、上支柱接合板24の上部に例えば上方からネジ止め等されて取り付けられた有天且つ無底の円筒状の軸受保持部25aと、軸受保持部25aの内周面に外輪の外周面が固定されることで軸受保持部25aの内側に保持された軸受25bとを備える。
なお、フレーム2の各部材は、風力発電装置1の規模や用途等に応じて、例えば、金属材料、プラスチック等の樹脂材料、木材などから構成されている。
次に、発電部4の詳細な構成を説明する。
発電部4の架台40は、2本の矩形板状の縦支柱部41と、2本の縦支柱部41の上端に支持された矩形板状の天板部43とから構成されている。また、軸受部45は、例えば、天板部43の下部に下方からネジ止め等されて取り付けられた無天且つ有底の円筒状の軸受保持部45aと、軸受保持部45aの内周面に外輪の外周面が固定されることで軸受保持部45aの内側に保持された軸受45bとを備える。また、軸受保持部45aの底部中央部には、回転軸30を挿通するための回転軸30の径よりも大径の貫通孔(不図示)が設けられている。
【0015】
発電機47は、回転軸30の下端部に連結された回転子47aを有し、回転軸30の回転とともに回転子47aが回転することで、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。なお、発電機47は、整流子発電機(ダイナモ)、オルタネータ等から構成される。また、回転軸30と回転子47aとは、直結に限らず増速機構を介して連結する構成としてもよい。
次に、回転子3の詳細な構成を説明する。
回転子3の回転軸30は、フレーム2の軸受部25の各貫通孔、上部支柱23及び上支柱接合板24の貫通孔、風向制御部5の内輪保持部50aの貫通孔並びに発電部4の天板部43の貫通孔及び軸受保持部45aの底部の貫通孔に挿通され、上端部の外周面が軸受25bの内輪の内周面に固定され、下端部の外周面が軸受45bの内輪の内周面に固定されている。これにより、回転軸30は、その中心軸線が鉛直方向(垂直方向)を向くように配置されている。また、回転軸30の下端部は、一部が軸受保持部45aよりも下側に突き出ており、その突き出た部分が発電機47の回転子47aに連結している。
【0016】
推進部31A及び31Bは、それぞれ4枚のブレード32、円板状のハブ33及び十字状のブレード支持部34を備える。各ハブ33の円中心及びブレード支持部34の十字の中心位置には、それぞれ板面を貫通して回転軸30を挿通するための貫通穴が設けられている。推進部31A及び31Bは、鉛直方向に推進部31Bを上側にして所定間隔を空けて同じ姿勢で並べて配置するとともに、貫通穴を介して回転軸30に同軸に固定されている。すなわち、推進部31A及び31Bは、それぞれの4枚のブレード32の周方向の位置が同じ位置となるように配置されている。
以下、推進部31A及び31Bを、区別しない場合に「推進部31」と称する。
ブレード32は、例えば、木材、金属材料、プラスチック等の樹脂材料などから構成されている。例えば、炭素繊維複合材料などの軽くて強くて硬い材料から構成することができる。
【0017】
また、ブレード32は、図4(a)に示すように、最大厚みt1の部分の上面側の点P1と点P1から先端方向に距離d2の位置にある上面側の点P2との間に形成された曲面部Raと、点P1と点P1から後端方向に距離d3の位置にある上面側の点P3との間に形成された曲面部Rbとを備える。加えて、点P3と点P3から距離d4の後端位置にある点P4との間に形成された曲面部Rcと、点P4と点P4から先端方向に距離d4の位置にある下面側の点P5との間に形成された曲面部Rdとを有している。さらに、点P2と先端部の点P6との間に形成された斜面部Saと、点P5と点P6との間に形成された平坦状の底面部Sbとを備える。
数値的な具体例を挙げると、曲面部RaはR45の丸角を有する曲面を成し、曲面部RbはR20の丸角を有する曲面を成し、曲面部RcはR5の丸角を有する曲面を成し、曲面部RdはR10の丸角を有する曲面を成す構成とすることができる。また、ブレード32の最大厚みt1は9[mm]、距離d1は30[mm]、距離d2は10[mm]、距離d3は5[mm]、距離d4は5[mm]、底面部Sbの長さは35[mm]とすることができる。
【0018】
また、図4(b)に示すように、ブレード32の前後方向の幅d5は例えば40[mm]とすることができ、ブレード32の長さd6は例えば150[mm]とすることができる。
一方、推進部31の4枚のブレード32は、図5(a)に示すように、周方向に等間隔に配置されている。すなわち、ハブ33上にブレード支持部34を介して延長線が十字に交差するように配置されている。ブレード支持部34は、角棒状の4本のアーム部34aを備えており、これら4本のアーム部34aが十字を成すように構成されている。
各ブレード32は、図5(b)に示すように、ハブ33の上面に対して角度αを成す姿勢(前端部が斜め下を向く姿勢)でブレード支持部34の各アーム部34aに取り付けられる。ここで、角度αは、図5(b)に示す例では30°となっているが、この構成に限らず、設置場所での風の傾向等に合わせて他の角度に構成してもよい。各ブレード32の長手方向の一端部には、各ブレード32を各アーム部34aの先端部に角度αで取り付けるための溝部32gが設けられている。なお、各ブレード32は、溝部32gを介して接着剤による接着等によって各アーム部34aの先端部に取り付けられている。
【0019】
次に、風向制御部5の詳細な構成を説明する。
風向制御部5の回転台50は、内輪保持部50aと、外輪保持部50bと、軸受50cと、外輪押さえ部50dと、内輪押さえ部50eとを備える。
内輪保持部50aは、下端に円形のフランジ部を有し且つ上部外周面が下部外周面よりも内径側に凹んだ構成の軸受保持用の段差部を有する略円筒形状に構成され、下端のフランジ部が発電部4の架台40の上面にネジ止め等によって固定されている。また、内輪保持部50aの内周面によって形成される貫通孔は、回転軸30の外径よりも大きい径に構成されている。
外輪保持部50bは、上端に円形のフランジ部を有し且つ上部内周面が下部内周面よりも外径側に凹んだ構成の軸受保持用の段差部を有する略円筒形状に構成され、上端のフランジ部の外径側の一部が下部支柱51の下面にネジ止め等によって固定されている。なお、外輪保持部50bの内径は、内輪保持部50aの径よりも大径で且つ軸受50cの設置幅を考慮した径に構成されている。
【0020】
軸受50cは、内輪保持部50a及び外輪保持部50bの上部低段部の間に配置されている。具体的に、軸受50cの内輪の内周面は内輪保持部50aの低段部の外周面に固定され、軸受50cの外輪の外周面は外輪保持部50bの低段部の内周面に固定されている。すなわち、風向制御部5の回転台50よりも上部は回転軸30とは独立して回転軸30周りに回転可能となっている。
外輪押さえ部50dは軸受50cの外輪と略同径の円環形状を成し、内輪押さえ部50eは、軸受50cの内輪と略同径の円環形状を成している。外輪押さえ部50d及び内輪押さえ部50eは、軸受50cの外輪上部及び内輪上部を上から押さえるように外輪保持部50b及び内輪保持部50aの上面に設けられている。すなわち、外輪押さえ部50d及び内輪押さえ部50eによって軸受50cの上方への抜けを防いでいる。
【0021】
ここで、軸受25b、45b及び50cは、転動体の形状が球状の玉軸受から構成されているが、玉軸受に限らず、転動体の形状が、円錐形状、円筒形状、針状、たる状などのころ軸受から構成してもよい。
風向制御板53は、図2(a)及び図3(a)に示すように、無天且つ無底の略円筒形状の内側風向制御板53a及び内側風向制御板53aよりも大径の外側風向制御板53bを備えている。内側風向制御板53a及び外側風向制御板53bは、それぞれ厚さt2の板状体から構成されており、これらの間に各縦支柱52を挟み込むようにして各縦支柱52に取り付けられている。
具体的に、風向制御板53は、推進部31A及び31Bの周囲を一部を除いて包囲するように構成され、回転軸30の中心軸線と直交する仮想線VL(図2(a)中の一点鎖線)を境に一方側(片側)に配置されたブレード32のみに側方から吹き付ける風が直接当たるように側方に側方開口部53c(すなわち包囲されていない部分)が設けられている。但し、推進部31A及び31Bの上部側及び下部側は覆わない構成となっており、上方及び下方からの風は侵入可能となっている。
【0022】
側方開口部53cは、円筒状の側壁部分の一部を所定角度範囲で切り取った構成となっている。すなわち、側壁部分の一部が切り取られることで形成される周方向の一方の端部53d及び他方の端部53eとの間の側壁の無い範囲が側方開口部53cとなる。
側方開口部53cの開口範囲は90°~140°の範囲とすることが望ましく、図2(a)及び図3(a)の例では90°となっている。すなわち、風向制御板53は、推進部31A及び31Bの周囲220°~270°の範囲を包囲する側壁部を有するように構成される。また、風向制御板53並びに推進部31A及び31Bは、風向制御板53の下端と推進部31Aのブレード32の下端との間の距離がL1となる位置関係に設けられている。なお、このL1が短いほど回転子3の回転数が上がることが実験で解っている。
【0023】
このような構成とする理由は、通常は水平軸型で用いられるプロペラ型の推進部を垂直軸型で用いているためである。すなわち、推進部31A及び31Bは、図2(a)及び図5(a)に示すように、4枚羽のプロペラ形状に構成されている。そのため、風向制御板53が無い状態で側方の一方からの風を受けると、仮想線VLを境に一方側に存在するブレード32と他方側に存在するブレード32とに同時に側方からの風が当たるため時計回り方向の回転力を生む推力と反時計回り方向の回転力を生む推力とが均衡してしまい略静止した状態となる。
したがって、推進部31A及び31Bの側方開口部53c以外の周囲を包囲して片側のブレード32にのみ直接側方からの風が当たるようにすることで、相殺する推力をほぼ生じさせずに一方向へと回転させる推力を発生させることができる。これにより、回転子3を風力によって回転駆動することができる。
なお、図2(a)及び図3(a)の例では、それぞれ平面視で仮想線VLの左側に側方開口部53Cを設けた例を示している。この場合、推進部31A及び31Bは、図2(a)及び図3(a)の風向き方向の風に対して反時計回りの方向の回転力を生む推力を発生する。また、この構成に限らず、側方開口部53Cを仮想線VLの右側に設けることも可能である。この場合、推進部31A及び31Bは、図2(a)及び図3(a)の風向き方向の風に対して時計回りの方向の回転力を生む推力を発生する。
【0024】
回転制御部54は、風見鶏の原理を利用した構成となっており、側方からの風を受けてその風向き方向(図2(a)及び図3(a)を参照)に側方開口部53cが向くように回転台50の回転及び回転位置を制御するように構成されている。
具体的に、回転制御部54は、図3(a)及び(b)に示すように、風向制御板53上に設置されており、矩形板状の第1方向制御板54a及び第2方向制御板54bと、第1及び第2方向制御板54a及び54bよりも短い長さの矩形板状の第3方向制御板54cとを備える。加えて、矩形板状で且つ第1方向制御板54aよりも幅狭の第4方向制御板54d及び第5方向制御板54eと、矩形の板を円弧状に湾曲した形状の後方風カット板54fと、立方体形状の2個の重り54g及び54hとを備えている。さらに、矩形板状で且つ第4方向制御板54dと同じ構成の第6方向制御板54iを備えている。
【0025】
第1~第3方向制御板54a~54cのそれぞれは、風向制御板53の上端及び縦支柱52の上端に、短手方向の一端部が当接するように立設されている。第1及び第2方向制御板54a及び54bは、長手方向の一端部が側方開口部53cを形成する位置にある同じ縦支柱52上に一端部同士が接する状態で固定されている。加えて、第1及び第2方向制御板54a及び54bは、回転軸30を間に挟んで両者の成す角度が角度γとなるように他端部側が外側に広がりながら風向制御板53を横断して設置されている。ここで、角度γは、図3(a)の例では、15°に構成しているが、この構成に限らず、側方開口部53cの角度範囲に応じて別の角度に構成してもよい。これらの他端部は一部が風向制御板53よりも径方向外側に突出しており、第2方向制御板54bの突出部は後方風カット板54fの第4方向制御板54d側の周方向端部に接続され、第2方向制御板54bの突出部は後方風カット板54fの第5方向制御板54e側の周方向端部に接続されている。この構成により、一端部から回転軸30までの長さよりも回転軸30から他端部までの長さが長くなるように構成している。
【0026】
また、第1方向制御板54aの他端突出部の周方向外側の面には第4方向制御板54dの上端部が固定されており、第2方向制御板54bの他端突出部の周方向外側の面には第5方向制御板54eの上端部が固定されている。加えて、第4及び第5方向制御板54d及び54eは風向制御板53に沿って上下方向に延在しており、延在部の風向制御板53と対向する部分は風向制御板53の外周面に固定されている。さらに、第1方向制御板54aの他端突出部の周方向内側の面には重り54gが固定されており、第2方向制御板54bの他端突出部の周方向内側の面には重り54hが固定されている。これら重り54g及び54hによって、空力を受ける中心(力点)が重心より後ろとなり風見安定が確保される。
【0027】
後方風カット板54fは、第1及び第2方向制御板54a及び54bと同じ高さを有するとともに、第1及び第2方向制御板54a及び54bの他端部間の周方向の長さと略同じ周方向の長さを有しており、回転制御部54の後方側からの風の侵入をカットする。
第3方向制御板54cは、側方開口部53cによる影響を吸収するための補助板であり、第2方向制御板54bの一端部から距離L2の位置に一端部が接続されており接続位置から第2方向制御板54bとの間の角度が角度Δとなるように外側に開きながら伸びて他端部が風向制御板53の上端に固定されている。ここで、角度Δは、図3(a)の例では、30°に構成しているが、この構成に限らず、側方開口部53cの角度範囲に応じて別の角度に構成してもよい。なお、第3方向制御板54cの他端部も風向制御板53よりも径方向外側に突出しており、その突出部分の側面に第6方向制御板54iの上端部が固定されている。加えて、第6方向制御板54iも風向制御板53に沿って上下方向に延在しており、延在部の風向制御板53と対向する部分は風向制御板53の外周面に材料に応じて溶接、接着等によって固定されている。
【0028】
なお、風向制御部5の各構成部は、例えば、木材、金属材料、プラスチック等の樹脂材料などから構成されている。
〔動作〕
次に、上記構成の風力発電装置1の動作を説明する。
風力発電装置1は、風向制御板53の側方開口部53cを介して導かれた側方からの風が、回転子3の推進部31A及び31Bの片側のブレード32に当たることでプロペラ型の推進部31A及び31Bに回転方向の一方向の推力が生じる。この推力によって、推進部31A及び31Bとともに回転軸30が回転し、この回転によって発電機47の回転子47aが回転して発電される。なお、図2(a)に示す例では、図2中の矢印方向の風を受けて推進部31A及び31Bが反時計回りに回転する。
一方、側方開口部53cが風向き方向を向いていない状態では、側方から吹く風が回転制御部54の各方向制御板に当たって、回転制御部54が側方開口部53cが風向き方向を向く方向に推力を発生する。この推力により回転台50が回転して風向制御板53がその側方開口部53cが風向き方向を向く方向に回転する。これにより、回転子3が回転して発電機47にて発電が行われる。
【0029】
〔実施の形態の効果〕
次に、実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、風力発電装置1を、軸方向が垂直に配置された回転軸30と、回転軸30を軸受25b及び45bを介して回転自在に支持するフレーム2と、回転軸30に当該回転軸30とともに回転可能に且つ同軸に取り付けられた各4枚のブレード32からなるプロペラ型の推進部31A及び31Bと、回転中心軸線と直交する仮想線VLを境に一方の側に存在するブレード32に対して側方から吹き付ける風を導く側方開口部53cを側方に有し、側方開口部53c以外の部分は推進部31A及び31Bの周囲を覆うように配置された略筒状の風向制御板53を有する風向制御部5と、回転軸30に回転子47aが連結された発電機47とを備える構成とした。
【0030】
このような構成であれば、高さ寸法の比較的短いプロペラ型の推進部31を縦軸型の構成としたので、複数の推進部を鉛直方向に並べて配置することが容易であり、推進部の段数を増やすことで容易に回転トルクを大きくすることができる。
また、本実施の形態では、風力発電装置1の風向制御部5を、風向制御板53と、風向制御板53を回転軸30とは独立して当該回転軸30周りに回転可能に支持する回転台50と、風向制御板53の上部に設けられ、側方から吹き付ける風を受けて風向制御板53を回転する動力を回転台50に付与するとともに側方開口部53cが風向き方向を向くように回転台50の回転を制御する回転制御部54とを備える構成とした。
このような構成であれば、回転制御部54によって、側方開口部53cを風向き方向に自動で向けることができるので、側方開口部53cの向きを風向き方向に合わせて手動で変えるといった煩わしい作業を不要にできる。
【0031】
〔実施例1〕
風力発電装置1と同様の構成の実験装置にて、推進部31の段数を1段~4段にそれぞれした場合の風速4.2[m/s]及び5.2[m/s]の風を当てたときの発電量を測定する実験をした。但し、風向制御部5の代わりに木板によって、仮想線VLより片側に向かう風を遮断する構成とした。すなわち、片側への前面側の風をカットするがそれ以外の周囲には何も遮断するものが無い状態となる。
実験の結果、1段のときは風速4.2[m/s]で8.5[mA]、風速5.2[m/s]で10.0[mA]となった。同様に2段のときは8.5[mA]及び10.5[mA]となり、3段のときは8.5[mA]及び11.0[mA]となり、4段のときは9.0[mA]及び11.0[mA]となった。
【0032】
また、発電機47を外した状態で風速4.2[m/s]及び5.2[m/s]の風を当てたときの回転子の回転数を測定したところ、1段のときは風速4.2[m/s]で117[rpm]、風速5.2[m/s]で139[rpm]となった。同様に2段のときは135[rpm]及び170[rpm]となり、3段のときは137[rpm]及び172[rpm]となり、4段のときは135[rpm]及び174[rpm]となった。
以上のことから、回転数と発電量とは比例しており、推進部の段数を増やすことで発電量(回転数)が増加することが解った。また、推進部31の段数を増やすほど発電量及び回転数が上昇することが解った。
〔実施例2〕
風力発電装置1と同様の構成の実験装置にて、推進部31の段数を1段とし且つフレーム2を外した状態の回転子3が静止した状態の重量と、回転子3が回転した状態の重量とを比較する実験を行った。
実験装置を重量計に載せた状態で実験を行った。回転子3が静止状態のときの重量は「779[g]」であった。次に、回転子3を風速5.2[m/s]で反時計回り方向に回転させたときの重量は「786[g]」となった。この実験結果から、プロペラ型の推進部31が反時計回り方向に回転することによって、下向きの揚力が発生することが解った。次に、回転子3を風速5.2[m/s]で時計回り方向に回転させたときの重量は「774[g]」となった。この実験結果から、プロペラ型の推進部31が時計回り方向に回転することによって、上向きの揚力が発生することが解った。
以上のことから、回転子3を反時計回り方向に回転させるように構成することで、例えば回転時の回転子3の脱落等を低減することができ、回転子3を時計回り方向に回転させるように構成することで、例えば回転時の重量負荷を軽減することができる。
〔変形例〕
なお、上記実施の形態において、風向制御板53を略円筒状の構成とするとともに直立する構成としたが、この構成に限らず、以下の図6(b)及び(c)に示す構成としてもよい。図6(a)は、直立構成の風向制御板53を示す図であり、図6(b)は、一部傾斜構成の風向制御板53Aを示す図であり、図6(c)は、全傾斜構成の風向制御板53Bを示す図である。
【0033】
図6(a)に示すように、上記実施の形態の風向制御板53は、同図(a)の上図のA-A’線断面図である同図(a)の下図に示すように、推進部31A及び31Bの周囲220°~270°を覆う側壁が直立した構成となっている。
この構成に対して、例えば、図6(b)の風向制御板53Aは、上図のA-A’線断面図である図6(b)の下図に示すように、推進部31A及び31Bの周囲を覆う側壁部の途中から側方開口部53cまでの傾斜部分530Aを傾斜角度βで傾斜させた構成となっている。なお、傾斜角度βの範囲は15°~50°の範囲とすることが望ましい。また、傾斜部分350Aの側方開口部53c側とは反対側の端部は、傾斜角度βから急激に直立姿勢に戻すのではなく角度を徐々に減らしながら滑らかに傾斜をなくすように構成されている。
【0034】
また、例えば、図6(c)の風向制御板53Bは、図6(c)の上図のA-A’線断面図である図6(c)の下図に示すように、推進部31A及び31Bの周囲を覆う側壁部の全体を傾斜角度βで傾斜させた構成となっている。
また、図6(a)~(c)中の角度Cは、側方開口部53cの範囲(90°~140°)を決める際の、側方開口部53cの端部位置を決める角度である。ここで、角度Cは、0°~30°の範囲とすることが望ましい。すなわち、角度Cで決まる端部位置を基準に周囲220°~270°を覆うように側壁部が構成される。図6(a)~(c)に例示する側方開口部53cの開口範囲は、同図中の矢印に示す風向き方向に対して設定するのに適切な開口範囲を示している。
このように、側壁部の一部又は全部を傾斜させる構成とすることで、図6(a)の直立構成よりも回転子3の回転数を向上することができる。
【0035】
具体的に、推進部31Aのみの1段構成と、推進部31A及び31Bの2段構成とについて、図6(a)の直立構成と、図6(c)の全傾斜構成とで回転数を測定する実験を行った。この実験において、図6(a)及び(c)中の矢印の方向の風速4.2[m/s]及び5.2[m/s]の風をそれぞれ当てたときの回転数を測定した。
実験の結果、1段且つ直立構成のときは風速4.2[m/s]で120[rpm]、風速5.2[m/s]で155[rpm]となった。同様に2段のときは140[rpm]及び176[rpm]となった。一方、1段且つ全傾斜構成のときは風速4.2[m/s]で148[rpm]、風速5.2[m/s]で160[rpm]となった。同様に2段のときは156[rpm]及び180[rpm]となった。
【0036】
以上のことから、推進部31の段数を増やすほど回転数が上昇するとともに、風向制御板53を傾斜させることでも回転数が上昇することが解った。
また、上記実施の形態及びその変形例において、ブレード32の取付角度(羽根角)を固定の角度とする固定ピッチ構成としたが、この構成に限らず、ブレード32の羽根角を手動で変更できる可変ピッチ機構を設ける構成としてもよい。または、風速計とコントローラとを設け、さらにブレード32の羽根角をモータ等によって自動で可変できる構成とし、風速に応じて羽根角を制御する構成としてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例において、推進部31の段数を2段とした構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、例えば、1段の構成としてもよいし、高さ寸法、耐久性、回転数、回転トルク等の仕様の許す範囲内で3段以上の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…風力発電装置、 2…フレーム、 3,47a…回転子、 4…発電部、 5…風向制御部、 21,51…下部支柱、 22,52…縦支柱、 23…上部支柱、 24…上支柱接合板、 25,45…軸受部、 25a,45a…軸受保持部、 25b,45b,50c…軸受、 30…回転軸、 31A,31B…推進部、 32…ブレード、 33…ハブ、 34…ブレード支持部、 34a…アーム部、 40…架台、 41…縦支柱部、 43…天板部、 47…発電機、 50…回転台、 50a…内輪保持部、 50b…外輪保持部、 50d…外輪押さえ部、 50e…内輪押さえ部、 53,53A,53B…風向制御板、 53a…内側風向制御板、 53b…外側風向制御板、 53c…側方開口部、 53d,53e…端部、 54…回転制御部、 54a,54b,54c,54d,54e,54i…第1,第2,第3,第4,第5,第6方向制御板、 54f…後方風カット板、 530A…傾斜部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6