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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020813
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】防音装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240207BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20240207BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G10K11/16 140
F02B77/13 A
F02B77/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123280
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】塩沼 幸己
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061CC02
(57)【要約】
【課題】防音装置の質量を増大させることなく、防音装置の防音性能を向上させる。
【解決手段】防音キャップ1は、ゴム状弾性材料から形成された部材であるカバー体10と、多孔質材料から形成された部材である吸音体20とを備える。カバー体10は、前面11及び背面12と、外周端部13とを備える。吸音体20は、カバー体10の背面12に取り付けられている。吸音体20は、背面側に突出する部分である突出部30を複数有してる。複数の突出部30の各々は、隣接する他の突出部30との間に、背面側に開放された空間部40を形成するようになっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の面と、該一対の面の外周側に環状に延びる部分である外周端部とを備える、ゴム状弾性材料から形成された部材であるカバー体と、
前記カバー体の前記一対の面の一方の面に取り付けられた、多孔質材料から形成された部材である吸音体と、を備え、
前記吸音体は、前記カバー体の前記一方の面の面する側に突出する部分である突出部を複数有しており、
前記複数の突出部の各々は、隣接する他の前記突出部との間に、前記一方の面の面する側に開放された空間を形成するようになっていることを特徴とする防音装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記空間内に前記一方の面の面する側から入って、前記突出部で反射した音波の少なくとも一部が、他の前記突出部に当たるような形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の防音装置。
【請求項3】
前記空間は、前記一方の面の面する側から、前記一対の面の他方の面の面する側に向かって、狭くなっていることを特徴とする請求項2に記載の防音装置。
【請求項4】
前記突出部の各々は、前記一方の面に対して前記一方の面の面する側に面するように傾斜する面を有しており、
前記傾斜面は、前記空間を形成することを特徴とする請求項3に記載の防音装置。
【請求項5】
前記複数の突出部の各々は、前記一方の面に沿う方向において隣接する他の前記突出部との間に、前記空間を形成するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の防音装置。
【請求項6】
前記突出部の各々は、前記一方の面の面する側に向かって細くなる楔形状を有しており、
前記突出部は、前記一方の面に沿う方向において、互いに隣接する前記突出部が異なる向きとなるように並べられていることを特徴とする請求項3に記載の防音装置。
【請求項7】
前記カバー体は、前記吸音体がトーショナルダンパのハブに対向するように、前記外周端部において前記ハブに取り付け可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音装置に関し、特に振動する部材に取り付けられて、この部材の発する音の防音を図る防音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動する部材に取り付けられて、この部材の発する音の防音を図る防音装置が知られている。このような防音装置には、例えばトーショナルダンパに用いられる防音キャップがある。トーショナルダンパは、車両や汎用機械のエンジンのクランクシャフトの先端部に取り付けられ、クランクシャフトの捩じり振動を低減する部品である。トーショナルダンパは、クランクシャフトの振動を受けてクランクシャフトの軸線方向に共振する場合がある。トーショナルダンパが共振すると、トーショナルダンパから前方に向かう放射音が発生する。これは、ハブ及び振動リングの振動によってトーショナルダンパの周りの空気が押し出されて、トーショナルダンパの周りに圧力変動が生じるためと考えられている。
【0003】
このようなトーショナルダンパからの放射音を低減するために、防音キャップはトーショナルダンパに取り付けられる。トーショナルダンパに取り付けられる防音キャップには、トーショナルダンパのハブ外周端にハブを覆うように取り付けられるゴム製のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-216160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトーショナルダンパの防音キャップに対しては、トーショナルダンパからの放射音の低減効果の更なる向上が求められている。放射音の低減効果の向上について、質量則に基づき、防音キャップの質量を増加させることにより、トーショナルダンパからの放射音の遮音性能を向上させることができる。しかしながら、防音キャップの質量が増加するとその重量が増加し、防音キャップの共振周波数が低下して、トーショナルダンパの振動によって防音キャップが共振する場合がある。重量が大きい防音キャップが共振すると、防音キャップの周辺の空気に大きなエネルギーが与えられ、防音キャップの周辺の空気は大きなエネルギーで押し出される。このため、重量の大きな防音キャップが共振周波数領域で振動する場合、防音キャップの防音効果が低下する場合があった。
【0006】
このため、従来のトーショナルダンパの防音キャップに対しては、防音キャップの質量を増大させることなく、防音キャップの防音性能を向上させることができる構成が求められている。
【0007】
本発明の課題は、防音装置の質量を増大させることなく、防音装置の防音性能を向上させることができる防音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る防音装置は、一対の面と、該一対の面の外周側に環状に延びる部分である外周端部とを備える、ゴム状弾性材料から形成された部材であるカバー体と、前記カバー体の前記一対の面の一方の面に取り付けられた、多孔質材料から形成された部材である吸音体と、を備え、前記吸音体は、前記カバー体の前記一方の面の面する側に突出する部分である突出部を複数有しており、前記複数の突出部の各々は、隣接する他の前記突出部との間に、前記一方の面の面する側に開放された空間を形成するようになっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記突出部は、前記空間内に前記一方の面の面する側から入って、前記突出部で反射した音波の少なくとも一部が、他の前記突出部に当たるような形状になっている。
【0010】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記空間は、前記一方の面の面する側から、前記一対の面の他方の面の面する側に向かって、狭くなっている。
【0011】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記突出部の各々は、前記一方の面に対して前記一方の面の面する側に面するように傾斜する面を有しており、前記傾斜面は、前記空間を形成する。
【0012】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記複数の突出部の各々は、前記一方の面に沿う方向において隣接する他の前記突出部との間に、前記空間を形成するようになっている。
【0013】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記突出部の各々は、前記一方の面の面する側に向かって細くなる楔形状を有しており、前記突出部は、前記一方の面に沿う方向において、互いに隣接する前記突出部が異なる向きとなるように並べられている。
【0014】
本発明の一態様に係る防音装置において、前記カバー体は、前記吸音体がトーショナルダンパのハブに対向するように、前記外周端部において前記ハブに取り付け可能になっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る防音装置によれば、防音装置の質量を増大させることなく、防音装置の防音性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る防音装置としての防音キャップの平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る防音装置としての防音キャップの背面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る防音装置としての防音キャップの背面側の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る防音装置としての防音キャップの軸線に沿う断面における断面図である。
図5】防音キャップの突出部の1つを拡大して示す斜視図である。
図6】防音キャップの突出部の1つを拡大して示す側面図である。
図7】防音キャップが取り付けられたトーショナルダンパの正面図である。
図8】防音キャップが取り付けられたトーショナルダンパの軸線に沿う断面における断面図である。
図9】防音キャップの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明に係る防音装置は、振動する部材に取り付けられて、この部材の発する音の防音を図るためのものである。本発明に係る防音装置は、例えば、車両や汎用機械のエンジンのクランクシャフトの端部に取り付けられるトーショナルダンパに取り付けられ、トーショナルダンパから発せられる音を防音する。なお、本発明に係る防音装置が用いられる本発明に係る防音装置の適用対象は、トーショナルダンパに限られない。例えば、本発明に係る防音装置の作用が効果を奏するものは、本発明に係る防音装置の適用対象になり得る。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る防音装置としての防音キャップ1の平面図であり、図2は、防音キャップ1の背面図であり、図3は、防音キャップ1を背面側から見た斜視図であり、図4は、防音キャップ1の軸線xに沿う断面における断面図である。図1~4に示すように、防音キャップ1は、一対の面11,12と、この一対の面11,12の外周側に環状に延びる部分である外周端部13とを備える、ゴム状弾性材料から形成された部材であるカバー体10と、カバー体10の一対の面11,12の一方の面である背面12に取り付けられた、多孔質材料から形成された部材である吸音体20とを備えている。吸音体20は、カバー体10の背面12の面する側である背面側に突出する部分である突出部30を複数有してる。複数の突出部30の各々は、隣接する他の突出部30との間に、背面側に開放された空間である空間部40を形成するようになっている。なお、図2~4においては、突出部30及び空間部40の一部のみに符号が付されている。以下、防音キャップ1の構成について詳細に説明する。
【0020】
カバー体10は、図1~4に示すように、盤状の部材であり、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円盤状又は略円盤状の部材である。カバー体10において、一対の面の他方である前面11と、一対の面の一方である背面12とは、互いに背向している。なお、上述のように、説明の便宜上、背面12が面する側を背面側とし、前面11が面する側を前面側とする。前面側は、図4に示すように、軸線x方向において、矢印a方向の側であり、背面側は、図4に示すように、軸線x方向において、矢印b方向の側である。前面11と背面12とは、例えば互いに平行又は略平行に広がっている。また、前面11は、例えば図4に示すように、軸線xに直交又は略直交する平面又は略平面であり、背面12は、例えば図4に示すように、軸線xに直交又は略直交する平面又は略平面である。
【0021】
外周端部13は、カバー体10の外周側の環状の端を形成しており、例えば、図1~4に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円環状又は略円環状に延びている。外周端部13は、防音キャップ1がトーショナルダンパに取り付けられた後述する使用状態とするために、トーショナルダンパのハブに取り付けられるような形状になっている。例えば、図4に示すように、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、外周端部13は先細になっている。また、カバー体10は、例えば図2~4に示すように、背面12の外周側の端(外周端12a)と外周端部13との間に広がる環状の面である立上り面14を有している。立上り面14は、具体的には例えば、図4に示すように、前面11側から背面12側に向かうに連れて縮径する面である。
【0022】
ゴム状弾性材料が上述のような形状に成形されて、カバー体10は作られる。カバー体10の厚さT1は、カバー体10において一様又は略一様となっている。カバー体10の厚さT1は、図4に示すように、前面11と背面12との間の軸線x方向における間隔である。カバー体10の厚さT1は、例えば、3~5mmである。なお、カバー体10の厚さT1は、3~5mmに限られない。
【0023】
吸音体20は、例えば図2~4に示すように、複数の突出部30と、基体部21とを有している。突出部30は、基体部21から背面側に突出している部分である。基体部21は、カバー体10に取り付けられる部分である。
【0024】
基体部21は、具体的には、例えば図2~4に示すように、盤状の部分であり、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円盤状又は略円盤状の部分であり、一対の互いに背向する面である基面21aと取付面21bとを有している。取付面21bは、例えば、カバー体10の背面12に平行又は略平行に広がる面であり、カバー体10の背面12に密着可能になっている。また、基面21aは、例えば、取付面21bに平行又は略平行に広がる面である。基面21aは、例えば図4に示すように、軸線xに直交又は略直交する平面又は略平面であり、取付面21bは、例えば図4に示すように、軸線xに直交又は略直交する平面又は略平面である。また、基体部21は、基面21aと取付面21bとを外周側において接続する環状の面である外周面21cを有している。外周面21cは、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒面状又は略円筒面状に延びる面である。
【0025】
基体部21の取付面21bは、例えば図4に示すように、カバー体10の背面12と同じ又は略同じ大きさに広がっている。また、基面21aは、例えば図4に示すように、取付面21bと同じ又は略同じ大きさに広がっている。基体部21の厚さT2は、基体部21において一様又は略一様となっている。基体部21の厚さT2は、図4に示すように、基面21aと取付面21bとの間の軸線x方向における間隔である。
【0026】
上述のように、複数の突出部30が、基体部21の基面21aから背面側に向かって突出しており、1つの突出部30とこの突出部30に隣接する他の突出部30との間には、空間部40が形成されている。空間部40は、図2~4に示すように、隣接する他の空間部40と、基面21aの広がる方向において連通しており、全ての空間部40は、突出部30の間に広がる1つの空間である空間Sを形成している。突出部30は、例えば、その隣接する空間部40内に背面側から入って、この突出部30で反射した音波の少なくとも一部が、他の突出部30に当たるような形状になっている。空間部40は、具体的には例えば、図2~4に示すように、背面側から前面側に向かって、狭くなっている。具体的には、空間部40は、軸線xに直交する断面における面積が、軸線x方向において背面側から前面側に向かうにつれて小さくなるような形状になっている。
【0027】
突出部30が上述のように音波に対して作用する形状となるように、突出部30の各々は、例えば図2~4に示すように、背面12又は基面21aに対して背面側に面するように傾斜する面である傾斜面31を有している。この傾斜面31は、空間部40を形成している。例えば、傾斜面31が、他の突出部30の傾斜面31と、基面21aに沿う方向(軸線xに直交する径方向)において対向して、空間部40は形成される。また、例えば、傾斜面31が、他の突出部30の傾斜面31ではない部分と、基面21aに沿う方向において対向して、空間部40は形成される。また、例えば、突出部30の各々は、カバー体10の背面12に沿う方向において隣接する他の突出部30との間に、空間部40を形成する。具体的には例えば、突出部30の各々は、傾斜面31に加えて、傾斜面31と同様に傾斜する面である傾斜面32を有していてもよい。また、突出部30の各々は、傾斜面31に加えて他の面を有していてもよく、また、傾斜面31,32に加えて他の面を有していてもよい。この他の面は、背面12に対して傾斜していない面、例えば背面12又は基面21aに直交する面であってもよく、背面12又は基面21aに対して傾斜する面であってもよく、背面12又は基面21aに対して平行な面であってもよい。
【0028】
図示の例においては、図2~4に示すように、突出部30の各々は、背面側に向かって細くなる楔形状を有しており、突出部30は、背面12に沿う方向において、互いに隣接する突出部30が異なる向きとなるように並べられている。また、図2,3に示すように、突出部30は、基面21aの全体又は略全体に設けられており、複数の突出部30は、外周側に、環状の輪郭、例えば軸線x周りに環状又は円環状の輪郭を形成するように、並べられている。
【0029】
図5は、突出部30の1つを拡大して示す斜視図であり、図6は、突出部30の1つを拡大して示す側面図である。突出部30は、具体的には、例えば図5,6に示すように、互いに背向する2つの傾斜面31,32を有している。傾斜面31は、基体部21の基面21aに接続する傾斜面31の根元側の端である根元端31aと、傾斜面31の背面側(先端側)の端である先端31bとの間に広がっており、傾斜面31は、根元端31aよりも先端31bが傾斜面32に近づくように、基面21aに対して傾斜している。つまり、図6に示すように、基面21aと傾斜面31との間の角度αは、90°よりも大きくなっている(α>90°)。このように、傾斜面31は、基面21aに対して背面側に面するように傾斜している。より具体的には、傾斜面31は、軸線x方向の投影面が背面側に形成されるように基面21aに対して傾斜している。また、例えば、根元端31aの長さと先端31bの長さとは同じ又は略同じである。また、例えば、傾斜面31は平面又は略平面となっている。根元端31aの長さと先端31bの長さとは異なっていてもよい。また、傾斜面31は、平面でなくてもよく、曲面であってもよく、また、平面と曲面との組み合わせからなる面であってもよい。
【0030】
傾斜面32は、基体部21の基面21aに接続する傾斜面32の根元側の端である根元端32aと、傾斜面32の背面側(先端側)の端である先端32bとの間に広がっており、傾斜面32は、根元端32aよりも先端32bが傾斜面31に近づくように、基面21aに対して傾斜している。つまり、図6に示すように、基面21aと傾斜面32との間の角度βは、90°よりも大きくなっている(β>90°)。このように、傾斜面32は、基面21aに対して背面側に面するように傾斜している。より具体的には、傾斜面32は、軸線x方向の投影面が背面側に形成されるように基面21aに対して傾斜している。また、例えば、根元端32aの長さと先端32bの長さとは同じ又は略同じである。また、例えば、傾斜面32は平面又は略平面となっている。根元端32aの長さと先端32bの長さとは異なっていてもよい。また、傾斜面32は、平面でなくてもよく、曲面であってもよく、また、平面と曲面との組み合わせからなる面であってもよい。
【0031】
図5,6に示すように、例えば、傾斜面31と傾斜面32とは面対称又は略面対称になっており、根元端31aと根元端32aとは同じ長さ又は略同じ長さになっており、先端31bと先端32bとは同じ長さ又は略同じ長さになっており、また、傾斜面31と傾斜面32とは同じ大きさ(面積)又は略同じ大きさになっている。また、傾斜面31の角度αと傾斜面32の角度βとは同じ又は略同じとなっている。なお、傾斜面31と傾斜面32とは面対称になっていなくてもよい。傾斜面31の形状と傾斜面32の形状とは互いに異なっていてもよい。例えば、根元端31aと根元端32aとは異なる長さになっていてもよく、先端31bと先端32bとは異なる長さになっていてもよく、また、傾斜面31と傾斜面32とは異なる大きさ(面積)になっていてもよい。また、傾斜面31の角度αと傾斜面32の角度βとは異なる角度であってもよい。
【0032】
また、図5,6に示すように、突出部30は、傾斜面31の先端31bと傾斜面32の先端32bとの間に広がる面である先端面33を有している。先端面33は、背面側に面しており、例えば軸線xに直交する平面に平行又は略平行な平面又は略平面である。先端面33は、軸線xに直交する平面に対して傾斜する面であってもよい。また、先端面33は、平面でなくてもよく、曲面であってもよく、また、平面と曲面との組み合わせからなる面であってもよい。
【0033】
また、図2~5に示すように、突出部30は、一対の背向する側面34,35を有している。側面34は、傾斜面31の突出部30の延び方向において互いに背向する一対の端である側端の一方(側端31c)と、先端面33の突出部30の延び方向において互いに背向する一対の端である側端の一方(側端33a)と、傾斜面32の突出部30の延び方向において互いに背向する一対の端である側端の一方(側端32c)と、基面21aとの間に広がる面である。側面35は、傾斜面31の一対の側端の他方(側端31d)と、先端面33の一対の側端の他方(側端33b)と、傾斜面32の一対の側端の他方(側端32d)と、基面21aとの間に広がる面である。なお、突出部30の延び方向は、突出部30の基面21aに沿って延びる方向であり、根元端31a及び先端31b又は根元端32a及び先端32bが延びる方向である。
【0034】
側面34,35は、例えば、基面21aに対して直交する平面に平行又は略平行な平面又は略平面である。側面34,35は、基面21aに対して傾斜する平面又は略平面であってもよい。また、側面34,35は、平面でなくてもよく、曲面又は平面と曲面との組み合わせからなる面であってもよい。
【0035】
図示の例の突出部30においては、傾斜面31,32、先端面33、及び側面34,35は、平面である。また、傾斜面31と傾斜面32とは面対称になっている。また、先端面33は、軸線xに直交する平面に平行に延びている。また、側面34,35は、基面21aに直交している。また、突出部30において、傾斜面31の根元端31aと、傾斜面32の根元端32aと、側面34の根元端34aと、側面35の根元端35aとは、同じ長さになっている。なお、側面34の根元端34aは、基面21aに接続する側面34の端であり、側面35の根元端35aは、基面21aに接続する側面35の端である。
【0036】
図2に示すように、吸音体20は、複数の突出部30が並んで形成する複数(m個)の突出部群3Ln(nは1~mまでの自然数)を有している。突出部群3Lnは夫々、基面21aに沿う方向に、具体的には、軸線xに直交する方向又は軸線xに直交する方向に平行な方向である配列方向Ln(nは1~mまでの自然数)に沿って延びている。また、突出部群3Lnの各々において、複数の突出部30が、対応する配列方向Lnに複数並べられている。また、突出部群3Lnの各々において、複数の突出部30は、各突出部30の延び方向が隣接する他の突出部30の延び方向とは異なる方向になるように設けられている。また、互いに隣接する突出部群3Ln-1,3Lnの間で、配列方向Ln-1,Lnに直交する方向で互いに隣接する突出部30は、延び方向が互いに異なる方向となるように設けられている。
【0037】
具体的には例えば、図2~4に示すように、突出部群3Lnの各々において、複数の突出部30は、各突出部30の延び方向が隣接する他の突出部30の延び方向と直交又は略直交するように設けられている。図2に示すように、突出部群3Lnの各々において、突出部30の側面34,35の根元端34a,35aの全体が、隣接する突出部30の傾斜面31の根元端31a又は傾斜面32の根元端32aの全体に接触している。また、図2に示すように、互いに隣接する突出部群3Ln-1,3Lnの間で、配列方向Ln-1,Lnに直交する方向で互いに隣接する突出部30は、延び方向が互いに直交又は略直交するように設けられている。
【0038】
突出部群3Lnの各々において、複数の突出部30は、配列方向Lnにおいて、突出部30の延び方向が規則的に変わるように設けられていてもよく、配列方向Lnにおいて、突出部30の延び方向が不規則に変わるように設けられていてもよい。同様に、突出部群3L1~3Lmの間で、配列方向Lnに直交する方向において、突出部30は、延び方向が規則的に変わるように突出部群3Lnの夫々において設けられていてもよい。また、突出部群3L1~3Lmの間で、配列方向Lnに直交する方向において、突出部30は、延び方向が不規則に変わるように突出部群3Lnの夫々において設けられていてもよい。
【0039】
また、図示の例では、突出部30は、配列方向Lnに直交する方向においても整列して設けられているが、突出部30は、配列方向Lnに直交する方向において整列して設けられていなくてもよい。つまり、図示の例では、突出部30の側面34,35の根元端34a,35aの全体が、隣接する突出部30の傾斜面31の根元端31又は傾斜面32の根元端32aの全体に接触するように、突出部30は、配列方向Lnに直交する方向において整列して設けられているが、突出部30の側面34,35の根元端34a,35aの全体が、隣接する突出部30の傾斜面31の根元端31又は傾斜面32の根元端32aの全体に接触しないように、配列方向Lnに直交する方向において隣接する突出部30は、配列方向Lnに互いにずれていてもよい。
【0040】
多孔質材料が上述のような形状に成形されて、吸音体20は作られる。複数の突出部30及び基体部21は、同一材料から一体に形成される吸音体20の各部分である。吸音体20の多孔質材料としては、例えば、発砲ウレタン、グラスウール、ロックウール、フェルト、メラミンフォーム、petファイバー等がある。なお、吸音体20の多孔質材料は、これらの多孔質材料に限られない。吸音体20は、例えば接着剤によってカバー体10に固定される。具体的には、吸音体20の基体部21の取付面21bが、カバー体10の背面12に接着固定される。なお、吸音体20のカバー体10への固定方法は接着とは異なる方法であってもよい。
【0041】
次いで、上述の構成を有する防音キャップ1がその適用対象としてのトーショナルダンパ100に取り付けられた防音キャップ1の使用状態について説明する。図7は、防音キャップ1が取り付けられたトーショナルダンパ100の正面図であり、図8は、防音キャップ1が取り付けられたトーショナルダンパ100の軸線x1に沿う断面図である。
【0042】
トーショナルダンパ100は、従来公知の構成を有しており、例えば図7,8に示すように、ハブ110と、質量体としての振動リング120と、ハブ110と振動リング120との間に配設されたダンパ弾性体130とを備えている。ハブ110は、軸線x1を中心軸とする環状の部材であり、内周側のボス部111と、外周側のリム部112と、ボス部111とリム部112とを接続する略円盤状の円盤部113とを備えている。ハブ110は、例えば、金属材料から鋳造等によって製造されている。
【0043】
ハブ110のボス部111は、貫通孔114が形成された軸線x1を中心軸とする筒状の部分であり、その外周面から外周側に向かって円盤部113が延びている。ハブ110のリム部112は、軸線x1を中心軸とする筒状の部分であり、ボス部111に対して同心的にボス部111よりも外周側に位置する部分である。リム部112の内周側の面である内周面112aからは円盤部113が内周側に向かって延びている。リム部112の外周側の面である外周面112bにはダンパ弾性体130が圧着されている。円盤部113は、ボス部111とリム部112との間に延びて、ボス部111とリム部112とを接続している。
【0044】
振動リング120は、軸線x1を中心軸とする筒状の部材であり、ハブ110の外周側を覆う形状を呈している。具体的には、振動リング120の内周側の面である内周面121は、ハブ110のリム部112の外周面112bに間隔を空けて対向する形状を有している。また、振動リング120の外周側の面である外周面122には、環状のv溝123が複数形成されており、図示しないタイミングベルトが巻回可能になっている。ダンパ弾性体130は、ダンパゴムであり、振動リング120とリム部112との間に圧入されており、振動リング120の内周面121とリム部112の外周面112bとに嵌着されて固定されている。
【0045】
トーショナルダンパ100は、エンジンのクランクシャフトの端部にボルトによって固定されて使用される。トーショナルダンパ100において、振動リング120とダンパ弾性体130とがダンパ部を形成しており、クランクシャフトの捩じり振動を低減する。
【0046】
トーショナルダンパ100は、防音キャップ1が取り付け可能になっている。防音キャップ1は、ハブ110及び振動リング120がクランクシャフトから伝わる振動によって軸線x1方向に振動した際に発生する音を防音可能な位置に取り付け可能になっている。具体的には例えば、図8に示すように、大気側においてハブ110が形成する空間、つまり、リム部112及び円盤部113が囲む空間を防音キャップ1が覆うように、トーショナルダンパ100は、防音キャップ1が取り付け可能になっている。具体的には、リム部112の内周面112aの大気側の端部112cに、防音キャップ1のカバー体10の外周端部13を受容可能な環状の溝である受容溝115が形成されている。なお、大気側とは、エンジン側となる側とは反対の側である。
【0047】
防音キャップ1は、カバー体10の外周端部13をトーショナルダンパ100の受容溝115に入れることができるようになっており、また、受容溝115に受容されている外周端部13を受容溝115から外すことができるようになっている。また、カバー体10の外周端部13は、防音キャップ1がハブ110に固定されるように、受容溝115に係止可能になっている。また、防音キャップ1は、吸音体20の突出部30がハブ110の円盤部113に対向するように、トーショナルダンパ100に取り付けられるようになっている。
【0048】
図示の例では、受容溝115は、軸線x1を中心軸又は略中心軸とする円環状又は略円環状に延びる溝である。また、カバー体10の外周端部13は、受容溝115に受容された状態において、ハブ110に対して軸線x1方向に不動となるような形状になってる。また、図7,8に示すように、防音キャップ1が取り付けられた使用状態のトーショナルダンパ100において、防音キャップ1の吸音体20の突出部30は、ハブ110の円盤部113に対向している。また、防音キャップ1の軸線xとトーショナルダンパ100の軸線x1とは一致又は略一致している。
【0049】
次いで、防音キャップ1の作用について説明する。図9は、防音キャップ1の作用を説明するための模式図である。
【0050】
クランクシャフトが回転するとトーショナルダンパ100から種々の進行方向の音波が発せられる。これらの音波のうち、空間Sのいずれかの空間部40に入った音波は、吸音体20の突出部30に当たる。突出部30に当たった音波の一部は突出部30から吸音体20に吸収される。一方、突出部30に当たった音波の一部は、反射して、空間部40に戻る。上述したように、突出部30は、この突出部30で反射した音波の少なくとも一部が、他の突出部30に当たるような形状になっている。このため、突出部30で反射して空間部40に戻った音波の少なくとも一部は、他の突出部30に当たる。そして同様に、突出部30に当たった音波の一部は突出部30から吸音体20に吸収され、一方、突出部30に当たった音波の一部は、反射して空間部40に戻る。空間部40に戻った音波の少なくとも一部は、同様に、他の突出部30に当たり、突出部30から吸収され、または、突出部30で反射される。以降同様の音波に対する作用が繰り返される。
【0051】
突出部30から吸音体20に吸収された音波は、吸音体20内を進む。音波が吸音体20の多孔質構造を通過する際に、空気と吸音体20を形作る構成要素である肉部分との間で摩擦熱が発生し、これにより音波が減衰されて音が低減する。具体的には、音波は、突出部30の傾斜面31,32、先端面33、及び側面34,35から吸収される。また、基体部21の基面21aにおいて互いに隣接する突出部30と突出部30との間に間隔が設けられている場合は、基面21aからも音波は吸収される。
【0052】
具体的には例えば、図9に示すように、空間Sのいずれかの空間部40に入った音波Wのうち、傾斜面31又は傾斜面32で反射した音波Wの少なくとも一部が、他の突出部30に当たる。また、側面34又は側面35で反射した音波も、他の突出部30に当たり得る。また、先端面33の形状や先端面33の基面21aからの位置によっては、先端面33で反射した音波も、他の突出部30に当たり得る。傾斜面31,32は上述のように基面21aに対して傾斜しているため、傾斜面31,32で反射した音波が他の突出部30に当たり易くなっている。また、基体部21の基面21aにおいて互いに隣接する突出部30と突出部30との間に間隔が設けられている場合は、基面21aで反射した音波も、他の突出部30に当たり得る。
【0053】
また、他の突出部30で反射した音波Wが当たる突出部30の部分は、具体的には例えば、図9に示すように、傾斜面32や傾斜面31に限られず、側面34,35も含まれる。先端面33の形状や先端面33の基面21aからの位置によっては、他の突出部30で反射した音波が当たる突出部30の部分に先端面33も含まれ得る。また、基体部21の基面21aにおいて互いに隣接する突出部30と突出部30との間に間隔が設けられている場合は、他の突出部30で反射した音波は基面21aにも当たり得る。
【0054】
上述のように、吸音体20は、吸音体20に当たった音波を吸収する。また、吸音体20は、突出部30等の吸音体20の部分に当たって反射した音波の少なくとも一部を他の突出部30等の吸音体20の部分に向かって進ませるようになっているため、吸音体20で反射した音波も吸収することできる。このように、吸音体20は、音波の吸収率を向上させることができ、トーショナルダンパ100から発せられた音波をより多く吸収するこができる。このため、吸音体20は、トーショナルダンパ100から発せられた音の防音効果を高めることができる。
【0055】
上述のように、吸音体20によって弱められた音波は、カバー体10によって遮音される。これにより、トーショナルダンパ100から発せられた音がより防音される。
【0056】
上述のように、防音キャップ1は、吸音体20によってトーショナルダンパ100から発せられた音の防音効果を高めることができる。また、吸音体20は、軽量であり、カバー体10単体の重量からの防音キャップ1の重量の増加は、防音キャップ1の共振周波数をカバー体10の共振周波数から大きく変えるものではない。また、仮に防音キャップ1が共振したとしても、防音キャップ1の重量とカバー体10単体の重量との差は僅かであるため、吸音体20が、防音キャップ1の共振時に防音キャップの周辺に発生する圧力変動に大きな影響を与えることはない。
【0057】
このように、本発明の実施の形態に係る防音キャップ1によれば、防音キャップ1の質量を増大させることなく、防音キャップ1の防音性能を向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る防音キャップ1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0059】
例えば、基体部21の基面21aにおいて、互いに隣接する突出部30と突出部30との間に間隔が設けられていてもよい。また、例えば、突出部30は、先端面33を有していなくてもよい。この場合、傾斜面31と傾斜面32とが背面側において接続する。また、突出部30の中に、他の突出部30とは異なる高さの突出部30があってもよい。具体的には、基面21aからの軸線x方向における先端面33の位置(高さ)が、全ての突出部30において同じでなくてもよい。
【0060】
また、突出部30の配置は、上述のような直線的な配置ではなく曲線的な配置であってもよい。例えば、配列方向Lnは、直線ではなく曲線を描くものであってもよく、突出部群3Lnは曲線状に延びていてもよい。また、配列方向Lnは、ジグザグを描くものであってもよく、直線と曲線との組み合わせの形を描くようなものであってもよい。また、配列方向Lnは、全て同じでなくてもよく、突出部群3Lnの延び方向に亘る形状は全て同じでなくてもよい。また、突出部30の形状は上述の楔形状に限られない。
【符号の説明】
【0061】
1…防音キャップ、3Ln(n=1~m)…突出部群、10…カバー体、11…前面、12…背面、12a…外周端、13…外周端部、14…立上り面、20…吸音体、21…基体部、21a…基面、21b…取付面、21c…外周面、30…突出部、31,32…傾斜面、31a,32a…根元端、31b,32b…先端、31c,31d,32c,32d…側端、33…先端面、33a,33b…側端、34,35…側面、34a,35a…根元端、40…空間部、100…トーショナルダンパ、110…ハブ、111…ボス部、112…リム部、112a…内周面、112b…外周面,112c…端部、113…円盤部、114…貫通孔、115…受容溝、120…振動リング、121…内周面、122…外周面、123…v溝、130…ダンパ弾性体、Ln(n=1~m)…配列方向、S…空間、T1,T2…厚さ、x,x1…軸線、W…音波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9