(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020814
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60R 21/00 20060101AFI20240207BHJP
E05F 15/72 20150101ALI20240207BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60R21/00 310N
E05F15/72
B60J5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123281
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池澤 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 宇紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広直
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】福田 英士
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA02
2E052EA03
2E052EB06
2E052EC02
2E052GA02
2E052KA08
2E052LA02
(57)【要約】
【課題】車両浸水時においてドアを簡単に開く。
【解決手段】車室内外を連通させる開口部が形成された車両であって、前記開口部に開閉可能に設けられ、第1ドア部および第2ドア部からなるドアユニット、を有する。前記車両は、前記ドアユニットの下部を構成する前記第1ドア部に設けられ、車両浸水時に水圧を受けて第1位置から第2位置に動作する受圧部材を備えるロック機構、を有する。前記ロック機構は、前記受圧部材が前記第1位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを一体に開閉させるロック状態に作動している。前記ロック機構は、前記受圧部材が前記第2位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを別個に開閉させるアンロック状態に作動している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内外を連通させる開口部が形成された車両であって、
前記開口部に開閉可能に設けられ、第1ドア部および第2ドア部からなるドアユニットと、
前記ドアユニットの下部を構成する前記第1ドア部に設けられ、車両浸水時に水圧を受けて第1位置から第2位置に動作する受圧部材を備えるロック機構と、
を有し、
前記ロック機構は、
前記受圧部材が前記第1位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを一体に開閉させるロック状態に作動しており、
前記受圧部材が前記第2位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを別個に開閉させるアンロック状態に作動している、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記第1ドア部は、前記開口部に開閉可能に設けられ、かつ前記ドアユニットの前記下部を含む枠部を構成しており、
前記第2ドア部は、前記第1ドア部に開閉可能に設けられ、かつ前記ドアユニットの前記枠部の内側にある中央部を構成している、
車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両において、
前記第1ドア部は、前記開口部に開閉可能に設けられ、かつ前記ドアユニットの前記下部を構成しており、
前記第2ドア部は、前記開口部に開閉可能に設けられ、かつ前記ドアユニットの前記下部よりも上側にある上部を構成している、
車両。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の車両において、
前記ロック機構は、前記第2ドア部に係合する係合部材と、前記受圧部材の動作を前記係合部材に伝達するリンク機構と、を備えている、
車両。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の車両において、
前記ロック機構は、前記第2ドア部に係合する係合部材と、前記受圧部材の動作を前記係合部材に伝達するカム機構と、を備えている、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
豪雨などによる車両浸水時には、車室内外の圧力差によってドアを開けることが困難である。このため、車両浸水時においてもドアが開くように、車室内外の圧力差を解消する装置が提案されている(特許文献1-2参照)。また、非常時には利用者の体当たりによって破壊可能な脱出用扉も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-119275号公報
【特許文献2】特開平11-301384号公報
【特許文献3】特開平9-75955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両浸水時においては素早い脱出が求められるため、ドアを簡単に開くことが求められている。
【0005】
本発明の目的は、車両浸水時においてドアを簡単に開くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の車両は、車室内外を連通させる開口部が形成された車両であって、前記開口部に開閉可能に設けられ、第1ドア部および第2ドア部からなるドアユニットと、前記ドアユニットの下部を構成する前記第1ドア部に設けられ、車両浸水時に水圧を受けて第1位置から第2位置に動作する受圧部材を備えるロック機構と、を有し、前記ロック機構は、前記受圧部材が前記第1位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを一体に開閉させるロック状態に作動しており、前記受圧部材が前記第2位置にある場合に、前記第1ドア部と前記第2ドア部とを別個に開閉させるアンロック状態に作動している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ドアユニットの下部を構成する第1ドア部に設けられ、車両浸水時に水圧を受けて第1位置から第2位置に動作する受圧部材を備えるロック機構を有する。これにより、車両浸水時においてドアを簡単に開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である車両を示す図である。
【
図2】フロントドアおよびその近傍を示す図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿ってフロントドアおよびその近傍を示す断面図である。
【
図4】
図3のB-B線に沿ってロック機構を示す断面図である。
【
図5】
図4のC-C線に沿ってロック機構を示す断面図である。
【
図6】フロントドアおよびその近傍を示す断面図である。
【
図7】
図6のD-D線に沿ってロック機構を示す断面図
【
図8】
図7のE-E線に沿ってロック機構を示す断面図である。
【
図10】
図4と同様の断面部位におけるロック機構の断面図である。
【
図11】
図10のF-F線に沿ってロック機構を示す断面図である。
【
図12】
図7と同様の断面部位におけるロック機構の断面図である。
【
図13】
図12のG-G線に沿ってロック機構を示す断面図である。
【
図14】本発明の他実施形態である車両のフロントドアおよびその近傍を示す図である。
【
図15】
図14のH-H線に沿ってフロントドアおよびその近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[車体およびドアの構造]
図1は本発明の一実施形態である車両10を示す図である。
図1に示すように、車両10を構成する車体11には、車室内外つまり車室12の内側と外側とを連通させる複数の開口部13,14が形成されている。車体前部の開口部13は、ルーフサイドレール15、フロントピラーアッパ16、フロントピラーロア17、サイドシル18およびセンターピラー19によって区画されている。また、車体後部の開口部14は、ルーフサイドレール15、センターピラー19、サイドシル18、リアピラーロア20およびリアピラーアッパ21によって区画されている。さらに、車体前部の開口部13には、フロントドア22が開閉可能に取り付けられており、車体後部の開口部14には、リアドア23が開閉可能に取り付けられている。
【0011】
図2はフロントドア22およびその近傍を示す図である。
図2に示すように、フロントドア(ドアユニット)22は、フロントドア22の枠部を構成する第1ドア部31と、フロントドア22の枠部の内側にある中央部を構成する第2ドア部32と、を有している。第1ドア部31は、フロントドア22の下部を構成する下側縁部33と、フロントドア22の上部を構成する上側縁部34と、フロントドア22の前部を構成する前側縁部35と、フロントドア22の後部を構成する後側縁部36と、を有している。また、第1ドア部31は開口部13に対して開閉可能に取り付けられており、第2ドア部32は第1ドア部31に対して開閉可能に取り付けられている。つまり、第1ドア部31の前側縁部35は、開口部13のフロントピラーロア17に対し、ヒンジ37を介して開閉可能に取り付けられている。また、第2ドア部32は、第1ドア部31の前側縁部35に対し、ヒンジ38を介して開閉可能に取り付けられている。
【0012】
[ロック機構の構造]
図3は
図2のA-A線に沿ってフロントドア22およびその近傍を示す断面図である。また、
図4は
図3のB-B線に沿ってロック機構40を示す断面図であり、
図5は
図4のC-C線に沿ってロック機構40を示す断面図である。なお、
図4および
図5には、ロック状態に作動したロック機構40が示されている。
【0013】
図2および
図3に示すように、フロントドア22を構成する第1ドア部31の下側縁部33には、第1ドア部31と第2ドア部32とを互いに固定するロック機構40が設けられている。
図4および
図5に示すように、ロック機構40は、第2ドア部32の凹部41に挿入される係合ピン(係合部材)42と、サイドシル18のレール溝43に沿って移動するスライダ(受圧部材)44と、を有している。また、スライダ44には受圧板45が設けられており、第1ドア部31には受圧板45の両端に隣接する止水壁46が設けられている。さらに、第1ドア部31には、スライダ44を車室外に向けて付勢するスプリング47が設けられている。
【0014】
スライダ44には連結ピン48aを介してリンク49が連結されており、このリンク49には連結ピン48bを介して係合ピン42が連結されている。また、止水壁46には、ガイド溝51a,51bを備えたガイド板50が設けられている。ガイド板50のガイド溝51aには連結ピン48aの端部が収容されており、ガイド板50のガイド溝51bには連結ピン48bの端部が収容されている。さらに、ガイド板50のガイド溝51aは係合ピン42の軸方向と平行に伸びて形成されており、ガイド板50のガイド溝51bはレール溝43の長手方向と平行に伸びて形成されている。このように、スライダ44と係合ピン42とは、リンク49、連結ピン48a,48bおよびガイド板50からなるリンク機構52を介して連結されている。換言すれば、ロック機構40は、スライダ44の動作を係合ピン42に伝達するリンク機構52を有している。
【0015】
[ロック機構の作動]
フロントドア22に設けられるロック機構40は、車両10の浸水状況に応じて、第1ドア部31と第2ドア部32とを互いに固定するロック状態と、第1ドア部31と第2ドア部32とを互いに分離するアンロック状態と、に作動可能である。後述するように、サイドシル18を越えて水位が上昇していない場合、つまりフロントドア22の下側縁部33に水位が到達していない場合には、ロック機構40がロック状態に作動する。一方、サイドシル18を越えて水位が上昇している場合、つまりフロントドア22の下側縁部33に水位が到達している場合には、ロック機構40がアンロック状態に作動する。
【0016】
ロック機構40のロック状態について説明する。
図3~
図5に示すように、フロントドア22の下側縁部33に水位が到達していない場合には、スプリング47のバネ力によってスライダ44が係合ピン42の直下のロック位置(第1位置)に保持される。このように、ロック機構40のロック状態においては、スライダ44がロック位置に保持されるため、係合ピン42が第2ドア部32の凹部41に挿入された状態となる。つまり、ロック機構40のロック状態においては、係合ピン42が第2ドア部32の凹部41に挿入されるため、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに固定された状態となる。
【0017】
続いて、ロック機構40のアンロック状態について説明する。ここで、
図6はフロントドア22およびその近傍を示す断面図であり、
図6にはアンロック状態に作動したロック機構40が示されている。また、
図7は
図6のD-D線に沿ってロック機構40を示す断面図であり、
図8は
図7のE-E線に沿ってロック機構40を示す断面図である。なお、
図6には、
図3と同様の断面部位が示されている。
【0018】
図6~
図8に示すように、例えば、車両10が冠水した道路等を走行することにより、フロントドア22の下側縁部33まで水位WLが上昇している場合には、サイドシル18とフロントドア22との隙間から下側縁部33の内側に水Xが入り込む。このように、第1ドア部31の下側縁部33が浸水すると、スライダ44の受圧板45に対して水圧が作用する。そして、
図8に矢印αで示すように、水圧を受けたスライダ44は、スプリング47のバネ力に抗して車室12側のアンロック位置(第2位置)に移動する。このように、スライダ44がアンロック位置に移動すると、
図8に矢印βで示すように、第2ドア部32の凹部41から抜けるように係合ピン42が下降する。つまり、ロック機構40のアンロック状態においては、係合ピン42が第2ドア部32の凹部41から抜けるため、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに分離された状態となる。
【0019】
[フロントドアの開閉状況]
図9はフロントドア22の開閉状況を示す図である。
図9には、ロック機構40がロック状態である場合のフロントドア22の開閉状況と、ロック機構40がアンロック状態である場合のフロントドア22の開閉状況と、が示されている。
図9に示すように、ロック機構40がロック状態に作動している場合には、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに固定されるため、第1ドア部31と第2ドア部32とが一体となって開閉される。一方、ロック機構40がアンロック状態に作動している場合には、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに分離されるため、第1ドア部31を残して第2ドア部32だけを開閉することができる。つまり、ロック機構40がアンロック状態に作動している場合には、第1ドア部31と第2ドア部32とが別個に開閉される。
【0020】
例えば、車両10が冠水した道路等を走行することにより、サイドシル18を越えて水位WLが上昇した場合には、ロック機構40がロック状態からアンロック状態に作動する。つまり、水位WLが第1ドア部31の下側縁部33に到達する状況とは、水圧によってフロントドア22を開くことが困難な状況であるが、ロック機構40がアンロック状態に作動することから、第1ドア部31を残して第2ドア部32だけを開閉することができる。しかも、水位WLがスライダ44の受圧板45まで上昇した場合には、ロック機構40が自動的にアンロック状態に切り替えられる。これにより、車両浸水時には自動的に第1ドア部31から第2ドア部32が切り離されるため、乗員は簡単に第2ドア部32を開いて車両10から脱出することができる。なお、ロック機構40は電気的ではなく機械的にアンロック状態に切り替えられるため、車両浸水時にもロック機構40を適切に動作させることができる。
【0021】
[他実施形態1]
図3~
図8に示した例では、ロック機構40に対してリンク機構52を組み込んでいるが、これに限られることはなく、ロック機構に対してカム機構を組み込んでも良い。ここで、
図10~
図13は変形例のロック機構60を示す断面図である。
図10は
図4と同様の断面部位におけるロック機構60の断面図であり、
図11は
図10のF-F線に沿ってロック機構60を示す断面図である。また、
図12は
図7と同様の断面部位におけるロック機構60の断面図であり、
図13は
図12のG-G線に沿ってロック機構60を示す断面図である。なお、
図10および
図11にはロック状態のロック機構60が示されており、
図12および
図13にはアンロック状態のロック機構60が示されている。また、
図10~
図13において、
図4に示した部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
図10に示すように、フロントドア22を構成する第1ドア部31の下側縁部33には、第1ドア部31と第2ドア部32とを互いに固定するロック機構60が設けられている。ロック機構60は、第2ドア部32の凹部41に挿入される係合ピン(係合部材)61と、第1ドア部31の下側縁部33内を移動するスライダ(受圧部材)62と、を有している。また、スライダ62には、平坦面63,64および傾斜面65からなるカム66が形成されている。さらに、スライダ62には受圧板67が設けられており、第2ドア部32には受圧板67の両端に隣接する止水壁68が設けられている。さらに、第1ドア部31には、係合ピン61をカム66に向けて付勢するスプリング69が設けられるとともに、スライダ62を車室外に向けて付勢するスプリング70が設けられている。このように、スライダ62と係合ピン61との間には、カム66からなるカム機構71が設けられている。換言すれば、ロック機構60は、スライダ62の動作を係合ピン61に伝達するカム機構71を有している。
【0023】
ロック機構60のロック状態について説明する。
図10および
図11に示すように、フロントドア22の下側縁部33に水位が到達していない場合には、スプリング70のバネ力によってスライダ62がロック位置(第1位置)に保持され、係合ピン61の先端はカム66の平坦面63に接触している。このように、ロック機構60のロック状態においては、スライダ62がロック位置に保持されるため、係合ピン61は第2ドア部32の凹部41に挿入された状態に保持される。つまり、ロック機構60のロック状態においては、係合ピン61が第2ドア部32の凹部41に挿入されるため、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに固定された状態となる。
【0024】
続いて、ロック機構60のアンロック状態について説明する。
図12および
図13に示すように、例えば、車両10が冠水した道路等を走行することにより、フロントドア22の下側縁部33まで水位WLが上昇している場合には、サイドシル18とフロントドア22との隙間から下側縁部33の内側に水Xが入り込む。このように、第1ドア部31の下側縁部33が浸水すると、スライダ62の受圧板67に対して水圧が作用する。そして、
図13に矢印αで示すように、水圧を受けたスライダ62は、スプリング70のバネ力に抗して車室12側のアンロック位置(第2位置)に移動する。このように、係合ピン61の先端に傾斜面65を接触させるようにスライダ62がアンロック位置に移動すると、
図13に矢印βで示すように、第2ドア部32の凹部41から抜けるように係合ピン61が下降する。つまり、ロック機構60のアンロック状態においては、係合ピン61が第2ドア部32の凹部41から抜けるため、第1ドア部31と第2ドア部32とが互いに分離された状態となる。
【0025】
このように、カム機構71を備えたロック機構60を用いた場合であっても、車両10が冠水した道路等を走行することにより、サイドシル18を越えて水位WLが上昇した場合には、ロック機構60がロック状態からアンロック状態に作動する。つまり、水位WLが第1ドア部31の下側縁部33に到達する状況とは、水圧によってフロントドア22を開くことが困難な状況であるが、ロック機構60がアンロック状態に作動することにより、第1ドア部31を残して第2ドア部32だけを開閉することができる。しかも、水位WLがスライダ62の受圧板67まで上昇した場合には、ロック機構60が自動的にアンロック状態に切り替えられる。これにより、車両浸水時には自動的に第1ドア部31から第2ドア部32が切り離されるため、乗員は簡単に第2ドア部32を開いて車両10から脱出することができる。なお、ロック機構60は電気的ではなく機械的にアンロック状態に切り替えられるため、車両浸水時にもロック機構60を適切に動作させることができる。
【0026】
[他実施形態2]
図1~
図3に示した例では、フロントドア22の枠部を構成する第1ドア部31と、フロントドア22の中央部を構成する第2ドア部32と、を用いてフロントドア22を構成しているが、これに限られることはない。例えば、第1ドア部と第2ドア部とを上下に分割しても良い。ここで、
図14は本発明の他実施形態である車両80のフロントドア81およびその近傍を示す図である。また、
図15は
図14のH-H線に沿ってフロントドア81およびその近傍を示す断面図である。なお、
図14および
図15において、
図2および
図3に示した部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図14および
図15に示すように、車体前部の開口部13には、フロントドア81が開閉可能に取り付けられている。フロントドア(ドアユニット)81は、フロントドア81の下部を構成する第1ドア部91と、フロントドア81の下部よりも上側の上部を構成する第2ドア部92と、を有している。また、第1ドア部91は、開口部13のフロントピラーロア17に対し、ヒンジ93を介して開閉可能に取り付けられている。さらに、第1ドア部91は、開口部13のフロントピラーロア17に対し、ヒンジ94を介して開閉可能に取り付けられている。そして、フロントドア81を構成する第1ドア部91には、第1ドア部91と第2ドア部92とを互いに固定するロック機構40が設けられている。
【0028】
このように、第1ドア部91と第2ドア部92とが上下に分割されていた場合であっても、車両浸水時には第1ドア部91から第2ドア部92を切り離すことができるため、乗員は第2ドア部92を開いて車両80から素早く脱出することができる。つまり、前述の
図7および
図8に示したように、サイドシル18を越えて水位WLが上昇した場合には、ロック機構40がロック状態からアンロック状態に作動する。このように、車両浸水時にはロック機構40がアンロック状態に作動し、第1ドア部91から第2ドア部92が切り離されるため、乗員は上側の第2ドア部92を開いて車両80から素早く脱出することが可能である。
【0029】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、右側のフロントドア22,81を第1ドア部31,91と第2ドア部32,92とに分割しているが、これに限られることはなく、左側のフロントドアや左右のリアドアを、第1ドア部31,91と第2ドア部32,92とに分割してロック機構40,60を組み込んでも良い。また、前述の説明では、第2ドア部32の凹部41に対してロック機構40,60の係合ピン42,61を挿入しているが、これに限られることはない。例えば、第2ドア部32,92にストライカを設けるとともに、このストライカに噛み合うラッチをロック機構40,60に設けても良い。
【0030】
前述の説明では、リンク機構52やカム機構71によってロック機構40,60を構成しているが、これに限られることはなく、他の機構を用いてロック機構40,60を構成しても良い。また、
図5に示した例では、ロック機構40に対してスライダ44を付勢するスプリング47を設けているが、これに限られることはなく、ロック機構40からスプリング47を削減しても良い。また、
図11に示した例では、ロック機構60に対して係合ピン61を付勢するスプリング69やスライダ62を付勢するスプリング70を設けているが、これに限られることはなく、ロック機構60からスプリング69やスプリング70を削減しても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 車両
13,14 開口部
22 フロントドア(ドアユニット)
31 第1ドア部(枠部)
32 第2ドア部(中央部)
33 下側縁部(下部)
40 ロック機構
42 係合ピン(係合部材)
44 スライダ(受圧部材)
52 リンク機構
60 ロック機構
61 係合ピン(係合部材)
62 スライダ(受圧部材)
71 カム機構
80 車両
81 フロントドア(ドアユニット)
91 第1ドア部(下部)
92 第2ドア部(上部)