(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020826
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 13/66 20060101AFI20240207BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A62C13/66
A62C35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123302
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA05
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、温度上昇による消火剤の漏れを防止することができる消火設備を提供する。
【解決手段】ガス容器3と、消火剤容器5と、ガス容器3から消火剤容器5の内部に加圧されたガスを供給する第1の配管7と、第1の配管7の流路を開閉する開閉弁9と、消火剤容器5の内部の消火剤15を放出する第2の配管11と、第2の配管11の、上部気体空間17内に位置する肉部を貫通するようにして、第2の配管11に設けられている貫通孔21とを有し、開閉弁9が第1の配管7の流路を開いている状態で、第2の配管11を通って消火剤15が放出されるように構成されている消火設備1である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されたガスが内部空間に入るガス容器と、
内部空間の上部に気体が入っている空間である上部気体空間が形成されるようにして前記内部空間に消火剤が入る消火剤容器と、
前記ガス容器から前記消火剤容器の内部空間に加圧されたガスを供給するために、前記ガス容器の内部空間と前記消火剤容器の内部空間とをつないでいる第1の配管と、
前記第1の配管の流路を開閉する開閉弁と、
前記消火剤容器の内部空間の消火剤を放出するために、前記消火剤容器の内部空間と前記消火剤容器の外部とをつないでいる第2の配管と、
前記第2の配管の、前記上部気体空間のところに位置する肉部を貫通するようにして、前記第2の配管に設けられている貫通孔と、
を有し、前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いている状態で、前記ガス容器から前記消火剤容器の内部空間に前記加圧されたガスが供給され、前記第2の配管を通って前記消火剤容器の外側に前記消火剤が放出されるように構成されている消火設備。
【請求項2】
前記第2の配管の途中には、封板が設けられており、
前記開閉弁が前記第1の配管の流路を閉じている状態では、前記封板が前記第2の配管の流路を閉じており、
前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いた状態では、前記ガス容器から供給されたガスの圧力によって前記消火剤容器内の前記消火剤の圧力が上昇し、前記消火剤の圧力の上昇によって前記封板が破壊され、前記第2の配管の流路が開き、前記消火剤容器の外側に消火剤が放出されるように構成されている請求項1に記載の消火設備。
【請求項3】
前記封板は、円環状の外周部と、膜状に形成されており厚さ方向が前記外周部の円環の中心軸の延伸方向と一致するようにして、前記外周部の環の内側に配置されている封板本体部とを備えて構成されており、
前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いた状態で、前記封板本体部が破壊されるように構成されている請求項2に記載の消火設備。
【請求項4】
前記ガス容器と前記消火剤容器と前記第1の配管と前記開閉弁と前記第2の配管とを内部に、収容する筐体を有し、
前記筐体は、矩形な枡状の筐体本体部と、この筐体本体部の開口部を開閉する矩形な平板状の第1の筐体蓋部と、前記筐体本体部の開口部を開閉する矩形な平板状の第2の筐体蓋部を備えて構成されており、
前記第1の筐体蓋部は矩形の所定の1つの辺部が前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部で前記筐体本体部に係合しており、この係合をしている部位で前記筐体本体部に対して回動するようになっており、
前記第2の筐体蓋部も矩形の所定の1つの辺部が前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部であって前記第1の筐体蓋部が係合している1つの辺部に対向している辺部で前記筐体本体部に係合しており、この係合をしている部位で前記筐体本体部に対して回動するようになっており、
前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部と前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部とを互いに結ぶ方向での、前記第1の筐体蓋部の寸法と前記第2の筐体蓋部に寸法との比が、2:8~4:6の範囲内になっている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の消火設備。
【請求項5】
前記筐体本体部の開口部が前記第1の筐体蓋部と前記第2の筐体蓋部とで閉じられている状態で、前記筐体本体部の開口部と前記第1の筐体蓋部と前記第2の筐体蓋部とを見ると、前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部と前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部とを互いに結ぶ方向での中央部であって、前記第2の筐体蓋部の部位に、表示灯、発信機、表示灯一体型発信機、ベル用孔の少なくともいずれかが設けられている請求項4に記載の消火設備。
【請求項6】
前記消火剤容器は円柱状に形成されており、前記消火剤容器は、前記消火剤容器の円柱の高さ方向が上下方向になるようにして、前記筐体内に設置されており、前記消火剤容器は2本設けられており、2本の前記消火剤容器は、前記筐体の横方向では互いが離れてならんでおり、前記筐体の前後方向では互いの位置が概ね一致している請求項4に記載の消火設備。
【請求項7】
前記ガス容器は円柱状に形成されており、前記ガス容器の上端には前記開閉弁が設けられており、前記開閉弁のハンドルを回転することで前記開閉弁が開閉するようになっており、前記ガス容器は、前記開閉弁のハンドルが前記筐体本体部の開口部側に位置し、下端が前記筐体本体部の奥側に位置するようにして、前記筐体内に設置されている請求項4に記載の消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧されたガスが入るガス容器と、消火剤が入る消火剤容器とを備えた消火設備(パッケージ型消火設備)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加圧されたガスが入るガス容器と、消火剤が入る消火剤容器とを備えたパッケージ型消火設備が知られている(特許文献1参照)。従来のパッケージ型消火設備では、ガス容器から高圧のガスを消火剤容器に供給し、消火剤容器内の消火剤を大気に放出する。
【0003】
パッケージ型消火設備は定置設備である。従来のパッケージ型消火設備(特許文献1に記載されているもの以外の一般的なパッケージ型消火設備)では、周囲の温度の上昇により、消火剤容器内の空気や消火剤の圧力が上昇し、消火剤が外部に漏れてしまうおそれがある。この対策として、パッケージ型消火設備の設置場所を比較的温度変動の少ない場所にすることがある。一方、特許文献1に記載のパッケージ型消火設備では、バイパス管と弁を設けることで、温度上昇による消火剤の漏れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のパッケージ型消火設備では、バイパス管と弁とを設けているので、構造が複雑になっている。これにより、従来のパッケージ型消火設備は、高価であり、また、従来のパッケージ型消火設備の筐体内では、配管や装置などの設置スペースが圧迫されてしまう。
【0006】
本発明は、簡素な構成で、温度上昇による消火剤の漏れを防止することができ、パッケージ型消火設備の筐体内のスペースに余裕を持たせ、使いやすい消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様にかかる消火設備は、加圧されたガスが内部空間に入るガス容器と、内部空間の上部に気体が入っている空間である上部気体空間が形成されるようにして前記内部空間に消火剤が入る消火剤容器と、前記ガス容器から前記消火剤容器の内部空間に加圧されたガスを供給するために、前記ガス容器の内部空間と前記消火剤容器の内部空間とをつないでいる第1の配管と、前記第1の配管の流路を開閉する開閉弁と、前記消火剤容器の内部空間の消火剤を放出するために、前記消火剤容器の内部空間と前記消火剤容器の外部とをつないでいるとともに、前記消火剤容器の内部空間内の端の開口部が、前記消火剤容器の内部空間に入った消火剤内に位置する第2の配管と、前記第2の配管の、前記上部気体空間のところに位置する肉部を貫通するようにして、前記第2の配管に設けられている貫通孔とを有し、前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いている状態で、前記ガス容器から前記消火剤容器の内部空間に前記加圧されたガスが供給され、前記第2の配管を通って前記消火剤容器の外側に前記消火剤が放出されるように構成されている消火設備である。
【0008】
また、本発明の態様にかかる消火設備では、前記第2の配管の途中に、封板が設けられており、本発明の態様にかかる消火設備は、前記開閉弁が前記第1の配管の流路を閉じている状態では、前記封板が前記第2の配管の流路を閉じており、前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いた状態では、前記ガス容器から供給されたガスの圧力によって前記消火剤容器内の前記消火剤の圧力が上昇し、前記消火剤の圧力の上昇によって前記封板が破壊され、前記第2の配管の流路が開き、前記消火剤容器の外側に消火剤が放出されるように構成されている消火設備である。
【0009】
また、本発明の態様にかかる消火設備では、前記封板が、円環状の外周部と、膜状に形成されており厚さ方向が前記外周部の円環の中心軸の延伸方向と一致するようにして、前記外周部の環の内側に配置されている封板本体部とを備えて構成されており、本発明の態様にかかる消火設備は、前記開閉弁が前記第1の配管の流路を開いた状態で、前記封板本体部が破壊されるように構成されている。
【0010】
また、本発明の態様にかかる消火設備は、前記ガス容器と前記消火剤容器と前記第1の配管と前記開閉弁と前記第2の配管とを、内部に収容する筐体を有し、前記筐体は、矩形な枡状の筐体本体部と、この筐体本体部の開口部を開閉する矩形な平板状の第1の筐体蓋部と、前記筐体本体部の開口部を開閉する矩形な平板状の第2の筐体蓋部を備えて構成されており、前記第1の筐体蓋部は矩形の所定の1つの辺部が前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部で前記筐体本体部に係合しており、この係合をしている部位で前記筐体本体部に対して回動するようになっており、前記第2の筐体蓋部も矩形の所定の1つの辺部が前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部であって前記第1の筐体蓋部が係合している1つの辺部に対向している辺部で前記筐体本体部に係合しており、この係合をしている部位で前記筐体本体部に対して回動するようになっており、前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部と前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部とを互いに結ぶ方向での、前記第1の筐体蓋部の寸法と前記第2の筐体蓋部に寸法との比が、2:8~4:6の範囲内になっている。
【0011】
また、本発明の態様にかかる消火設備は、前記筐体本体部の開口部が前記第1の筐体蓋部と前記第2の筐体蓋部とで閉じられている状態で、前記筐体本体部の開口部と前記第1の筐体蓋部と前記第2の筐体蓋部とを見ると、前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の1つの辺部と前記筐体本体部の矩形な開口部の所定の他の1つの辺部とを互いに結ぶ方向での中央部であって、前記第2の筐体蓋部の部位に、表示灯、発信機、表示灯一体型発信機、ベル用孔の少なくともいずれかが設けられている。
【0012】
また、本発明の態様にかかる消火設備では、前記消火剤容器が円柱状に形成されており、前記消火剤容器が、前記消火剤容器の円柱の高さ方向が上下方向になるようにして、前記筐体内に設置されており、前記消火剤容器が2本設けられており、2本の前記消火剤容器が、前記筐体の横方向では互いが離れてならんでおり、前記筐体の前後方向では互いの位置が概ね一致している。
【0013】
また、本発明の態様にかかる消火設備では、前記ガス容器が円柱状に形成されており、前記ガス容器の上端には前記開閉弁が設けられており、前記開閉弁のハンドルを回転することで前記開閉弁が開閉するようになっており、前記ガス容器が、前記開閉弁のハンドルが前記筐体本体部の開口部側に位置し、下端が前記筐体本体部の奥側に位置するようにして、前記筐体内に設置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素な構成で、温度上昇による消火剤の漏れを防止することができ、パッケージ型消火設備の筐体内のスペースに余裕を持たせ、使いやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る消火設備の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る消火設備の斜視図であって第2の筐体蓋部を開いた状態を示す図である。
【
図5】
図3に対応した図であって、第1の筐体蓋部と第2の筐体蓋部とを取り除いた状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る消火設備の系統図である。
【
図11】
図9で示す封板を示す図であって、(b)は(a)におけるXI矢視図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る消火設備の筐体に設置される脚の設置態様を示す斜視図である。
【
図13】
図7に対応した図であって、変形例に係る消火設備の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る消火設備(パッケージ型消火設備)1は、
図5~
図9で示すように、ガス容器3と消火剤容器5と第1の配管7と開閉弁9と第2の配管11とを備えて構成される。
【0017】
ここで説明の便宜のために、消火設備における水平な所定の一方向を横方向とし、水平な所定の一方向であって横方向に対して直交する方向を前後方向とし、横方向と前後方向とに対して直交する方向を上下方向とする。
【0018】
ガス容器3の内部空間(ガス容器内部空間)には、加圧されたガス(たとえば窒素ガス)が入る。消火剤容器5の内部空間(消火剤容器内部空間)13には消火剤15が入る。消火剤容器内部空間13に消火剤15が入ったときには、消火剤容器内部空間13の上部に気体(たとえば空気)が入っている空間である上部気体空間17が形成される。消火剤15は、上部気体空間17を除く消火剤容器内部空間13の下側の空間に入る。消火剤15として、たとえば、水、強化液、機械泡(水成膜)、浸潤剤等入り水、第3種浸潤剤等入り水、鑑剤第11~1号等の液体状の消火剤が採用される。
【0019】
第1の配管7は、ガス容器3から消火剤容器5の内部空間13に加圧されたガスを供給するために、ガス容器3の内部空間と消火剤容器5の内部空間13とをつなぐ。また、第1の配管7は、消火剤容器5の内部空間13内の端の開口部が、消火剤容器内部空間13に消火剤15が入ったことで形成される上部気体空間17に位置する。
【0020】
開閉弁9は、たとえば、ガス容器3のガスの出口のところに設けられる。なお、開閉弁9が、第1の配管7の途中に設けられてもよい。開閉弁9は、第1の配管7の流路を開閉する。
【0021】
第2の配管11は、消火剤容器5の内部空間13の消火剤15を大気に放出するために、消火剤容器5の内部空間13と消火剤容器5の外部とをつなぐ。第2の配管11は、消火剤容器5の内部空間13内の端の開口部が、消火剤容器5の内部空間13に入った消火剤15内に位置する。
【0022】
第2の配管11は、たとえば、消火剤容器5の上端から消火剤容器5内に入り、消火剤容器5の内部空間13で上下方向に延びる。第2の配管11の、消火剤容器内部空間13内で上下方向に延びている部位はサイフォン管19と呼ばれる。第2の配管11の、消火剤容器内部空間13内における下端の開口部が、上述した消火剤15内に位置する開口部になる。なお、第2の配管11は、消火剤容器5の外でも所定の長さ延びる。
【0023】
第2の配管11には、
図8で示すように、貫通孔21が設けられる。貫通孔21は、第2の配管11の、上部気体空間17のところに位置する肉部を貫通するようにして第2の配管11に設けられる。また、貫通孔21は、たとえば直径が3mm以下の小径になっており、気体や液体等の流動体の流れに対して所定の大きな流路抵抗を持つ。流路抵抗を大きくして所期の性能を得るためには、好ましくは1mm以下が良く、さらに好ましくは0.5mm以下が良い。
【0024】
消火設備1では、開閉弁9が第1の配管7の流路を閉じている状態で、上部気体空間17が大気圧の気体(たとえば、空気または窒素)で満たされ、第2の配管11を通って消火剤容器5の外側の空間に消火剤15が放出されない構成になっている。
【0025】
また、消火設備1では、開閉弁9が第1の配管7の流路を開いている状態で、ガス容器3から消火剤容器5の内部空間13に、第1の配管7によって加圧されたガスが供給される。そして、消火設備1では、消火剤容器5の内部空間13の圧力が上昇し、第2の配管11を通って消火剤容器5の外側の空間に消火剤15が放出される構成になっている。
【0026】
ここで、貫通孔21の流路抵抗についてさらに説明する。上部気体空間17内で筒状の第2の配管11(サイフォン管19)が上下方向に延びている。サイフォン管19の内側の空間の部位であって上下方向で上部気体空間17と同じところに位置している空間の部位を、第2の配管内上部空間23とする(
図8参照)。貫通孔21は、第2の配管内上部空間23を上部気体空間17につなぐ。
【0027】
開閉弁9が第1の配管7の流路を閉じており、上部気体空間17内の気体の圧力と第2の配管内上部空間23内の気体の圧力との差が僅かである(たとえば0.05MPa以下である)場合を想定する。さらに、消火設備1の設置箇所の温度変化による上部気体空間17内の気体の圧力と第2の配管内上部空間23内の気体の圧力との差の変化が緩やかであること(ほぼ準静的過程で変化すること)を想定する。このような想定下では、貫通孔21を気体(空気)がゆっくりと流れ、上部気体空間17内の気体の圧力と第2の配管内上部空間23内の気体の圧力との差を無くすことができる。
【0028】
開閉弁9が第1の配管7の流路が開き高圧のガスが上部気体空間17に供給される。これにより、上部気体空間17内の気体の圧力と第2の配管内上部空間23内の気体の圧力との差が急激に大きくなったとき(たとえば、5MPa以上になったとき)でも、貫通孔21を気体が流れる。
【0029】
しかし、貫通孔21の流路抵抗により、上部気体空間17内の気体の圧力は殆ど低下せず、第2の配管内上部空間23内の気体の圧力は殆ど上昇しない。すなわち、上部気体空間17内の気体の圧力と第2の配管内上部空間23内の気体の圧力との比は、ほとんど変化しない。これにより、上部気体空間17の気体の圧力によって消火剤15が押され、第2の配管11内を通って、消火剤容器5の外側の空間に消火剤15が放出される。
【0030】
消火設備1では、第2の配管11の途中に、
図9等で示すように、封板(ラプチャーディスク)25が設けられている。開閉弁9が第1の配管7の流路を閉じている状態では、封板25が第2の配管11の流路を閉じている。開閉弁9が第1の配管7の流路を開いた状態では、ガス容器3から供給されたガスの圧力によって消火剤容器5内の消火剤15の圧力が上昇する。そして、消火剤15の圧力の上昇によって封板25が破壊され、第2の配管11の流路が開き、消火剤容器5の外側の空間に消火剤15が放出される。
【0031】
図9で示す封板25は、薄い円板状に形成される。ここで、封板25が、
図10、
図11で示すように、外周部27と封板本体部29とを備えて構成されてよい。外周部27は、円環状(たとえば、Oリングのようなトーラス形状)に形成される。また、外周部27は、パッキンとしての機能を備えている。封板本体部29は、薄い膜状に形成されており厚さ方向が外周部27の円環の中心軸に延伸方向と一致するようにして、また、外周部27の環の内側の空間を閉じるようにして、外周部27の環の内側に配置される。
【0032】
そして、開閉弁9が第1の配管7の流路を開いた状態で、消火剤15の圧力の上昇によって封板本体部29が破壊され、第2の配管11の流路が開くように構成されている。封板25は、たとえばシリコンゴム等の弾性を備えた部材で一体成形されている。また、封板本体部29には、
図11で示すように、上記破壊をしやすくするための凹部30が形成されている。凹部30は「V」字状の2本の溝で構成されており、凹部30を封板本体部29の厚さ方向で見ると、「X」字状になっている。
【0033】
凹部30は、封板本体部29の厚さ方向の両面に設けられており、この両面に設けられている凹部30を、封板本体部29の厚さ方向で見ると、互いが重なる。また、封板本体部29の厚さ方向で見ると、凹部30の「X」字の2本の線分の4つの端は、外周部27の内周のところに位置する。
【0034】
また、消火設備1は、
図1~
図6で示すように、筐体31を備えて構成される。筐体31は、ガス容器3と消火剤容器5と第1の配管7と開閉弁9と第2の配管11とを内部(筐体内空間)33に収容する。
【0035】
筐体31は、矩形な枡状の筐体本体部35と、この筐体本体部の開口部37を開閉する矩形な平板状の第1の筐体蓋部(第1の扉)39と、筐体本体部35の開口部37を開閉する矩形な平板状の第2の筐体蓋部(第2の扉)41を備えて構成される。第1の筐体蓋部39と第2の筐体蓋部41とで、筐体本体部35の開口部37の全体が閉じるように構成される。
【0036】
第1の筐体蓋部39は矩形の所定の1つの辺部が筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の1つの辺部で筐体本体部35に係合しており、この係合をしている部位(第1の係合辺部)43で筐体本体部35に対して回動する。
【0037】
第2の筐体蓋部41も矩形の所定の1つの辺部が筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の他の1つの辺部であって第1の筐体蓋部39が係合している1つの辺部に対向している辺部で筐体本体部35に係合している。そして、この係合をしている部位(第2の係合辺部)45で筐体本体部35に対して回動する。
【0038】
筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の1つの辺部(第1の係合辺部)43と筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の他の1つの辺部(第2の係合辺部)45とを互いに結ぶ方向は横方向になっている。そして、横方向での、第1の筐体蓋部39の寸法L1と第2の筐体蓋部41に寸法L2との比が、2:8~4:6の範囲内になっている(
図3参照)。
【0039】
なお、上記比は、好ましくは、2.5:7.5~3.5:6.5の範囲内であり、より好ましくは、2.8:7.2~3.2:6.8の範囲内であり、理想的には3:7である。また、上記比を語ることなく横方向での第2の筐体蓋部41の寸法の値が、横方向での第1の筐体蓋部39の寸法の値よりも大きくなっている構成としてもよい。
【0040】
また、消火設備1(筐体31)の前側から筐体31を見ると、第1の筐体蓋部39は左側に位置し、第2の筐体蓋部41は右側に位置している。さらに説明すると、筐体本体部35の開口部37の4つの辺部のうちの1つ目の辺部は、筐体本体部35の開口部37の左端で上下方向に延びている。筐体本体部35の開口部37の4つの辺部のうちの2つ目の辺部は、筐体本体部35の開口部37の右端で上下方向に延びている。筐体本体部35の開口部37の4つの辺部のうちの3つ目の辺部は、筐体本体部35の開口部37の上端で横方向に延びている。筐体本体部35の開口部37の4つの辺部のうちの4つ目の辺部は、筐体本体部35の開口部37の下端で横方向に延びている。第1の係合辺部43は上記1つ目の辺部のところに位置しており、第2の係合辺部45は上記2つ目の辺部のところに位置している。
【0041】
筐体本体部35の開口部37が第1の筐体蓋部39と第2の筐体蓋部41とで閉じられている状態で、筐体本体部35の開口部37と第1の筐体蓋部39と第2の筐体蓋部41とを見る。すると、横方向での中央部に、表示灯47、発信機(図示せず)、表示灯一体型発信機(図示せず)、ベル用孔(図示せず)の少なくともいずれかが設けられる。横方向は、筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の1つの辺部と筐体本体部35の矩形な開口部37の所定の他の1つの辺部とを互いに結ぶ方向である。なお、筐体本体部35の開口部37が第1の筐体蓋部39と第2の筐体蓋部41とで閉じられている状態は、所定の大きさの外力を筐体蓋部39、41に別途加えない限り維持される。
【0042】
上記中央部に設けられている表示灯47、発信機、表示灯一体型発信機、ベル用孔のところには、第2の筐体蓋部41が存在している。表示灯47、発信機、表示灯一体型発信機、ベル用孔は、第2の筐体蓋部41に設けられていることになる。なお、
図3等に参照符号49で示すものは、第2の筐体蓋部41を開閉するための取っ手である。
【0043】
消火剤容器5は円柱状に形成されている。消火剤容器5は、消火剤容器5の円柱の高さ方向が上下方向になるようにして、筐体31内に設置される。消火剤容器5は2本設けられている。2本の消火剤容器5は、筐体31の横方向では互いが離れてならんでおり、筐体31の前後方向(筐体本体部35の深さ方向)では互いの位置が概ね一致しており、上下方向でも互いの位置が概ね一致している。さらに、2本の消火剤容器5は、横方向に対して直交し筐体31の中心を含む平面に対して対称に配置される。これにより、筐体31の内部であって2本の消火剤容器5の間には、ガス容器3等が設置される空間(中央空間)51が形成される(
図5参照)。さらに、ガス容器3等が設置される空間(中央空間)51の下部にガス容器3が設置されると、空間(中央空間)51の上部の空間に、第2の筐体蓋部41に設けた表示灯47、発信機、表示灯一体型発信機、ベルならびにベル用孔などの機材を受け入れる空間が形成される。
【0044】
ガス容器3も円柱状に形成されており、ガス容器3の上端には開閉弁9が設けられており、開閉弁9のハンドル53を手動で回転することで開閉弁9が開閉するように構成される。ガス容器3の円柱の高さは、消火剤容器5の円柱の高さよりも低くなっており、ガス容器3の円柱の径は、消火剤容器5の円柱の径よりも小さい(
図5参照)。
【0045】
ガス容器3は、開閉弁9のハンドル53が筐体本体部35の開口部側に位置し、下端が筐体本体部35の奥側(前側)に位置するようにして、筐体31内に設置される。これにより、ガス容器3の円柱の高さ方向が上下方向に対して僅かな角度傾いている(僅かに斜めになって起立している;
図6参照)。
【0046】
ガス容器3は、2本の消火剤容器5の間の空間51に配置されている。なお、前後方向で見ると、ガス容器3は傾いておらず、ガス容器3の円柱の中心軸は上下方向に延びている(
図5参照)。また、ガス容器3は、上下方向では、筐体31の下側に配置されている。上下方向での開閉弁9のハンドル53の位置は、ハンドル53を手で回しやすくするために、起立して腕や手を下におろしている成人の手の指とほぼ同じところに位置している。
【0047】
また、
図12で示すように、筐体本体部35の下端には、筐体31を支えるための脚55が設けられている。脚55は、筐体31の設置場所の形態に合わせて、筐体本体部35に対する取付けの姿勢(向き)を容易に変更できるように構成される。
【0048】
ここで、消火設備1についてさらに詳しく説明する。筐体本体部35は、1枚の矩形な平板状の底板部57と、4枚の矩形な平板状の側板部59(59A、59B、59C、59D)とを備えて矩形な枡状に形成されている。第1の筐体蓋部39は、たとえば蝶番(図示せず)介して、側板部59Aに支持されており、第2の筐体蓋部41も、たとえば蝶番(図示せず)介して、側板部59Bに支持される。
【0049】
脚55として、所定の長さ(筐体本体部35の前後方向の寸法と等しいかもしくは僅かに短い長さ)のミゾ型鋼が採用される。脚55は2本使用される。また、脚55は、ボルト等の締結部材(図示せず)を用いて、筐体本体部35の側板部59Dに容易に着脱できる構成になっている。そして、
図12で示すように、脚55の向きが選択されて、筐体本体部35に脚55が設置される。
【0050】
図5で示すように、2本の消火剤容器5は、下側の側板部59Dに載置されている。2本の消火剤容器5は互いが同形状になっており、2本の消火剤容器5と、上側の側板部59Cとの間には、僅かな空間が形成されている。2本の消火剤容器5のうちの1本の消火剤容器5は、側板部59Aに接しているかもしくは側板部59Aの近傍に位置している。また、2本の消火剤容器5のうちの他の1本の消火剤容器5は、側板部59Bに接しているかもしくは側板部59Bの近傍に位置している。
【0051】
開閉弁9(ハンドル53)は、ガス容器3の上端に設けられている。
図5に参照符号61で示すものは、ガス容器3から消火剤容器5に供給されるガスの圧力を調整するレギュレータである。
【0052】
図5で示すように、第1の配管7は、消火剤容器5の数に合わせて、2本設けられる。2本の第1の配管7それぞれの長手方向の一方の端は、開閉弁9に接続される。1本目の第1の配管7の長手方向の他方の端は、1つ目の消火剤容器5に接続される。2本目の第1の配管7の長手方向の他方の端は、2つ目の消火剤容器5に接続される。なお、
図7では、第1の配管7が上部気体空間17内で一切延伸していないが、第1の配管7が上部気体空間17内で若干延伸してもよい。
【0053】
第2の配管11は、
図5で示すように、2本の消火剤容器5それぞれに設けられている2本のサイフォン管19それぞれの出口(消火剤容器5からの出口)同士をつないでいる接続配管63と、延出配管67とを備えて構成されている。接続配管63の途中にはティー65が設けられている。延出配管67は、ティー65から延出する。これにより、2本の消火剤容器5から吐出した消火剤15が合流し延出配管67内を流れて放出される。なお、延出配管(ホース)67は、可撓性を備えた保形配管で構成される。
【0054】
図5で示すように、延出配管67の先端には、延出配管67を流れてきた消火剤15の吐出口が設けられているノズル69が設けられており、ノズル69には、操作レバー71が設けられている。操作レバー71が操作されることで、ノズル69の消火剤15が流れる流路が開閉する構成になっている。
【0055】
火災が発生していない状態では、延出配管67およびノズル69は筐体31内に収められる。この状態では、延出配管67が筐体31内で適宜巻かれ、筐体31内に収容される。火災が発生したときに、延出配管67が、筐体31の外部で延出する。
【0056】
ここで、消火設備1における消火剤15の放出動作について説明する。初期状態では、ガス容器3に圧縮されたガスが入っており、消火剤容器5に消火剤15が入っており、開閉弁9が第1の配管7の流路を閉じており、ノズル69の流路も閉じられている。また、初期状態では、第1の筐体蓋部39、第2の筐体蓋部41が閉じられている。
【0057】
消火剤15の放出をするときには、上記初期状態で、少なくとも第2の筐体蓋部41を開き、開閉弁9のハンドル53を回して第1の配管7の流路を開く。このときの圧力上昇で封板25は破れる。続いて、延出配管67を筐体31から引き出し適宜延出させる。続いて、操作レバー71を操作してノズル69の流路を開くと、ノズル69の先端から消火剤15が放出される。そして、火点に向けて消火剤15を放出し消火活動を行う。このときの封板25の破封圧力は0.3~0.4MPaであり、加圧ガスの調整圧力は0.8~0.99MPaとしており、好ましくは0.98MPaとしている。
【0058】
消火設備1では、第2の配管11の肉部を貫通するようにして貫通孔21が設けられている。そして、季節や昼夜の温変温度変化によって温度が上昇したときでも、上部気体空間17の圧力と第2の配管内上部空間23との圧力が互いに等しくなる。これにより、バイパス経路等を設けることなく簡素な構成で、温度上昇による消火剤15の漏れを防止することができる。
【0059】
また、消火設備1では、第2の配管11の途中に封板25が設けられている。そして、開閉弁9が第1の配管7の流路を閉じている状態では、封板25が第2の配管11を閉じている。一方、開閉弁9が第1の配管7の流路を開いた状態で封板25が破壊されるようになっている。これにより、温度上昇による消火剤15の漏れを一層確実に防止することができるとともに、消火剤15の放出が必要な場合には、確実に消火剤15を放出することができる。
【0060】
また、消火設備1では、封板25が、円環状の外周部27と、外周部27の環の内側に配置されている封板本体部29とを備えて構成されている。これにより、封板25の構成が簡素化されているとともに、封板25の外周部27にパッキンの機能を持たすことができる。
【0061】
また、消火設備1では、第1の筐体蓋部39の寸法と第2の筐体蓋部41に寸法との比が、2:8~4:6に範囲内になっている。これにより、筐体31内の、2本の消火剤容器5の間にできた空間51に特殊仕様の設備を設け、その操作を容易に行うことができる。また、特殊仕様の設備を第2の筐体蓋部41に設けることで筐体31の正面中央の前端に表示灯47、発信機、表示灯一体型発信機、ベルならびにベル用孔を配置することができる。
【0062】
また、2本の消火剤容器5の間にできた空間51に第2の配管11を構成するホース(延出配管)67やガス容器3等を設置する。この設置をした場合、第2の筐体蓋部41を開けるだけで、ホース67を筐体31から取り出すことができ、また、開閉弁9を操作することができ、使い勝手がよくなる。
【0063】
また、消火設備1では、筐体31の中央部であって第2の筐体蓋部41の部位に、表示灯47、発信機、表示灯一体型発信機、ベル用孔が設けられる。これにより、表示灯47等の視認性が向上し、デザイン的にも優れたものになる。
【0064】
また、消火設備1では、2本の消火剤容器5が、筐体31の横方向では互いが離れてならんでいる。これにより、消火剤15の収容量を増やしても消火剤容器5の外径寸法の値が大きくなることが防止され、筐体31の前後方向の寸法を小さくすることができる。また、開閉弁9のハンドル53が筐体本体部35の開口部37側に位置しているので、第2の筐体蓋部41を開けての、開閉弁9のハンドル53の操作がしやすくなる。さらに、筐体31の設置場所の形態に合わせて、脚55の、筐体本体部35に対する取付けの姿勢(向き)を容易に変更できるように構成されている。これにより、様々な設置場所に消火設備1を設置することができる。
【0065】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0066】
たとえば、封板25の代わりに、
図13(a)で示すように、第2の配管11の途中にパイロットチェック弁73を設けてもよく、
図13(b)で示すように、パイロットチェック弁73の代わりに、チェック弁75を設けてもよい。チェック弁75を設けた場合、消火剤容器5内の消火剤15の圧力がチェック弁75のクラッキング圧力に達するまでは、第2の配管11の流路がチェック弁75で閉じられる。
【符号の説明】
【0067】
1 消火設備
3 ガス容器
5 消火剤容器
7 第1の配管
9 開閉弁
11 第2の配管
13 内部空間(消火剤容器内部空間)
15 消火剤
17 上部気体空間
21 貫通孔
25 封板
27 外周部
29 封板本体部
31 筐体
35 筐体本体部
37 筐体本体部の開口部
39 第1の筐体蓋部(第1の扉)
41 第2の筐体蓋部(第2の扉)
43 係合をしている部位(第1の係合辺部)
45 係合をしている部位(第2の係合辺部)
47 表示灯
53 開閉弁のハンドル
L1 第1の筐体蓋部の寸法
L2 第2の筐体蓋部に寸法