(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020842
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】二元冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20240207BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240207BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F25B7/00 D
F25B1/00 399Y
F25B1/00 351K
F25B1/00 321C
F25B47/02 550F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123334
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】兼井 一樹
(57)【要約】
【課題】二元冷凍装置において、立ち上がり運転を速やかに行うことにより、立ち上がり運転の悪化による暖房能力の低下を抑制することができる二元冷凍装置を提供する。
【解決手段】高元側圧縮機10、熱媒体と熱交換する高元側熱交換器11、カスケード熱交換器13を備え、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路2と、低元側圧縮機20、熱源側熱交換器22を備え、カスケード熱交換器13で高元側冷媒と熱交換する第1循環路23、および、熱媒体と熱交換する低元側熱交換器24を有する第2循環路26とを備え、低元側冷媒が循環する低元側冷媒回路3を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高元側圧縮機と、熱媒体と熱交換する高元側熱交換器と、高元側減圧機構と、カスケード熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路と、
低元側圧縮機と、前記カスケード熱交換器と、低元側第1減圧機構と、熱源側熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、低元側冷媒が循環する第1循環路を備える低元側冷媒回路と、
前記高元側冷媒回路、前記低元側冷媒回路を制御する制御部と、を備え、
前記カスケード熱交換器で前記高元側冷媒と前記低元側冷媒とが熱交換し、
前記低元側冷媒回路は、前記低元側圧縮機と前記カスケード熱交換器との間と、前記低元側第1減圧機構と前記熱源側熱交換器との間とを、前記熱媒体と熱交換する低元側熱交換器および低元側第2減圧機構が設けられた冷媒配管で接続し、前記低元側圧縮機と、前記低元側熱交換器と、前記低元側第2減圧機構と、前記熱源側熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、前記低元側冷媒が循環する第2循環路を備えていることを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項2】
循環ポンプと、利用側熱交換器と、前記低元側熱交換器と、前記高元側熱交換器とが、配管で順次接続されて熱媒体が循環し、前記高元側熱交換器で前記高元側冷媒と前記熱媒体とが熱交換し、前記低元側熱交換器で前記低元側冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体回路を備え、
前記制御部は、前記熱媒体回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の二元冷凍装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記二元冷凍装置を起動する際に、前記高元側圧縮機および前記低元側圧縮機を起動させ、前記低元側第1減圧機構および前記低元側第2減圧機構の開度を所定の開度に維持して、前記第1循環路および前記第2循環路に前記低元側冷媒を循環させる立ち上がり運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の二元冷凍装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定時間経過後、前記立ち上がり運転から前記カスケード熱交換器および低元側熱交換器の出口冷媒が所定の過冷却度になるよう前記低元側第1減圧機構および前記低元側第2減圧機構を制御する通常運転に切り換えて、前記第1循環路および前記第2循環路に前記低元側冷媒を循環させることを特徴とする請求項3に記載の二元冷凍装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記二元冷凍装置を起動する際に、前記高元側圧縮機、前記低元側圧縮機および前記循環ポンプを起動させ、前記低元側第1減圧機構および前記低元側第2減圧機構の開度を所定の開度に維持して、前記第1循環路および前記第2循環路に前記低元側冷媒を循環させる立ち上がり運転を行うことを特徴とする請求項2に記載の二元冷凍装置。
【請求項6】
前記制御部は、所定時間経過後、前記立ち上がり運転から前記カスケード熱交換器および低元側熱交換器の出口冷媒が所定の過冷却度になるよう前記低元側第1減圧機構および前記低元側第2減圧機構を制御する通常運転に切り換えて、前記第1循環路および前記第2循環路に前記低元側冷媒を循環させることを特徴とする請求項5に記載の二元冷凍装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記高元側熱交換器を通過した後の前記熱媒体の温度の目標値が所定温度以下の場合は、前記高元側圧縮機を停止することを特徴とする請求項6に記載の二元冷凍装置。
【請求項8】
前記低元側冷媒回路において、前記低元側圧縮機の吐出側に接続され、前記低元側圧縮機から吐出する前記低元側冷媒を前記カスケード熱交換器側および前記低元側熱交換器側に流すか、または、前記熱源側熱交換器側に流すかを切り換える低元側四方弁が設けられ、
前記高元側冷媒回路において、前記高元側圧縮機の吐出側に接続され、前記高元側圧縮機から吐出する前記高元側冷媒を前記高元側熱交換器側に流すか、または、前記カスケード熱交換器側に流すかを切り換える高元側四方弁が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の二元冷凍装置。
【請求項9】
前記低元側熱交換器は蓄熱材を有していることを特徴とする請求項8に記載の二元冷凍装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記蓄熱材の温度が所定温度以上になった場合、前記低元側四方弁を前記熱源側熱交換器側に切り換える除霜運転を行うことを特徴とする請求項9に記載の二元冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元冷凍装置に関し、特に、暖房能力の低下を抑制することができる二元冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二元冷凍装置は、高元側冷媒回路と低元側冷媒回路を備え、高元側冷媒回路と低元側冷媒回路が、共用するカスケード熱交換器(中間熱交換器)を備え、高元側冷媒回路を循環する冷媒と低元側冷媒回路を循環する冷媒とを、カスケード熱交換器で熱交換させ、高元側冷媒回路を循環する高元側冷媒により水を加熱し、温水を生成している。
【0003】
このような二元冷凍装置は、高元側冷媒回路と低元側冷媒回路で、冷媒特性の違いや起動時の温度条件などに起因して起動から定常状態になるまでの時間にアンバランスが生じて低元側冷媒回路の圧縮機が保護停止に至る恐れがある。そのため、特許文献1に開示された二元冷凍装置では、二元冷凍装置の起動から定常運転に移行するまでの間(以下、「立ち上がり運転」とする)における低元側冷凍回路での高圧過昇による保護停止を防止するため、立ち上がり運転における高元側冷媒回路の圧縮機の回転数の低元側冷凍回路の圧縮機の回転数に対する比を、定常運転における比よりも大きく設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された二元冷凍装置では、立ち上がり運転における高元側冷凍回路の圧縮機の回転数の低元側冷凍回路の圧縮機の回転数に対する比を、定常運転における比よりも大きく設定しているので、低元側冷凍回路の圧縮機の立ち上がり運転における回転数が制限されるため、立ち上がり運転において、十分な暖房能力を発揮するまでに時間がかかるという課題がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、二元冷凍装置において、立ち上がり運転を速やかに行うことによる暖房能力の低下を抑制することができる二元冷凍装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、高元側圧縮機と、高元側熱交換器と、高元側減圧機構と、カスケード熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路と、低元側圧縮機と、カスケード熱交換器と、低元側第1減圧機構と、熱源側熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、低元側冷媒が循環する第1循環路を備える低元側冷媒回路と、高元側冷媒回路、低元側冷媒回路を制御する制御部と、を備え、カスケード熱交換器で高元側冷媒と低元側冷媒とが熱交換し、低元側冷媒回路は、低元側圧縮機とカスケード熱交換器との間と、低元側第1減圧機構と熱源側熱交換器との間とを、低元側熱交換器および低元側第2減圧機構が設けられた冷媒配管で接続し、低元側圧縮機と、低元側熱交換器と、低元側第2減圧機構と、熱源側熱交換器とが冷媒配管で順次接続され、低元側冷媒が循環する第2循環路を備えている二元冷凍装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二元冷凍装置において、立ち上がり運転を速やかに行うことにより、立ち上がり運転の悪化による暖房能力の低下を抑制することができる二元冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る二元冷凍装置の冷媒回路図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る二元冷凍装置の制御ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る二元冷凍装置の制御フロー図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る二元冷凍装置の冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る二元冷凍増値の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の二元冷凍装置1の冷媒回路図である。
図2は、本実施形態の二元冷凍装置1における制御ブロック図である。
【実施例0012】
図1を参照して、本実施形態である二元冷凍装置1について説明する。
図1は、本実施形態の二元冷凍装置1の冷媒回路図である。二元冷凍装置1は、利用側熱交換器31を蒸発器として利用する場合には冷房運転に用いられ、利用側熱交換器31を凝縮器として利用する場合には、温水を作る運転、あるいは、暖房運転に用いられることができる冷凍装置である。以下、温水を作る運転と暖房運転をまとめて暖房運転と呼ぶことがある。本実施形態では、暖房運転に用いられる二元冷凍装置について説明する。二元冷凍装置1は、高元側冷媒回路2、低元側冷媒回路3、熱媒体回路4、制御部5を備え、制御部5は二元冷凍装置1を制御する。
【0013】
高元側冷媒回路2は、高元側圧縮機10と、高元側熱交換器11と、高元側減圧機構としての高元側膨張弁12と、カスケード熱交換器13とが冷媒配管6で順次接続され、高元側冷媒が循環する。本実施形態では、高元側熱交換器11は、高元側冷媒と熱媒体回路4を流れる熱媒体とが熱交換する熱交換器である。カスケード熱交換器13は、高元側冷媒と低元側冷媒回路3を流れる低元側冷媒とが熱交換する熱交換器である。尚、本実施形態では、高元側熱交換器11は、高元側冷媒と熱媒体回路4を流れる熱媒体とが熱交換する熱交換器であるが、例えば、図示しない送風機を介して熱媒体としての空気と熱交換する熱交換器であっても構わない。高元側冷媒回路2における矢印は暖房運転時の高元側冷媒の流れを示す。
【0014】
高元側冷媒回路2において、高元側圧縮機10の吐出側には、高元側圧縮機10から吐出された高元側冷媒を高元側熱交換器11の側に流すか、または、カスケード熱交換器13の側に流すかを切り換える高元側四方弁14が接続されている。本実施形態では、高元側四方弁14によって、高元側圧縮機10から吐出された高元側冷媒が高元側熱交換器11の側へ流れる場合(暖房運転)について説明する。従って、高元側冷媒回路2においては、高元側圧縮機10から吐出された高元側冷媒は、高元側熱交換器11、高元側膨張弁12、カスケード熱交換器13を流れて、高元側圧縮機10に吸入される。
【0015】
低元側冷媒回路3は、第1循環路23と第2循環路26を有している。第1循環路23は、低元側圧縮機20と、高元側冷媒回路2に接続されたカスケード熱交換器13と、低元側第1減圧機構としての低元側第1膨張弁21と、熱源側熱交換器22とが冷媒配管6で順次接続され、低元側冷媒が循環する。熱源側熱交換器22は、低元側冷媒と外気とが熱交換する熱交換器である。カスケード熱交換器13は、低元側冷媒と高元側冷媒回路2を流れる高元側冷媒とが熱交換する熱交換器である。低元側冷媒回路3における矢印は低元側冷媒の流れを示す。
【0016】
低元側冷媒回路3は、低元側圧縮機20とカスケード熱交換器13との間と、低元側第1膨張弁21と熱源側熱交換器22との間とを、低元側熱交換器24および低元側第2減圧機構としての低元側第2膨張弁25が設けられた冷媒配管で接続し、低元側圧縮機20と、低元側熱交換器24と、低元側第2膨張弁25と、熱源側熱交換器22とが冷媒配管で順次接続され、低元側冷媒が循環する第2循環路26を備えている。
【0017】
低元側冷媒回路3において、低元側圧縮機20の吐出側には、低元側圧縮機20から吐出される低元側冷媒を、カスケード熱交換器13の側および低元側熱交換器24の側に流すか、または、熱源側熱交換器22の側に流すかを切り換える低元側四方弁27が接続されている。本実施形態では、低元側四方弁27によって、低元側圧縮機20から吐出される低元側冷媒がカスケード熱交換器13の側および低元側熱交換器24の側へ流れる場合(暖房運転)について説明する。この場合、低元側冷媒回路3においては、低元側圧縮機20から吐出された低元側冷媒は、カスケード熱交換器13、低元側第1膨張弁21、熱源側熱交換器22を流れて、低元側圧縮機20に吸入され、また、低元側圧縮機20から吐出された低元側冷媒は、低元側熱交換器24、低元側第2膨張弁25、熱源側熱交換器22を流れて、低元側圧縮機20に吸入される。
【0018】
低元側冷媒回路3において、低元側圧縮機20、熱源側熱交換器22、低元側四方弁27は、第1循環路23および第2循環路26において共通に用いられる。
【0019】
熱媒体回路4は、循環ポンプ30と、利用側熱交換器31と、低元側熱交換器24と、高元側熱交換器11とが配管32で順次接続され、熱媒体としての水が循環する。なお、熱媒体として水の代わりに不凍液を利用しても良い。利用側熱交換器31で、熱媒体としての水と室内の空気とが熱交換し、熱媒体としての水と熱交換した空気は暖房に用いられる。高元側熱交換器11は、熱媒体としての水と高元側冷媒回路2を流れる高元側冷媒とが熱交換する熱交換器である。低元側熱交換器24は、熱媒体としての水と低元側冷媒回路3を流れる低元側冷媒とが熱交換する熱交換器である。熱媒体回路4における矢印は熱媒体としての水の流れを示す。
【0020】
二元冷凍装置1は、高元側冷媒回路2における高元側冷媒の潜熱を利用し、低元側冷媒回路3における低元側冷媒の潜熱を利用し、熱媒体回路4における熱媒体(水)の顕熱を利用する冷凍装置である。尚、本実施形態では、高元側冷媒回路2における高元側冷媒と低元側冷媒回路3における低元側冷媒は同一の冷媒であるが、必ずしも同一である必要はなく、例えば、高元側冷媒よりも低沸点である低元側冷媒としても構わない。また、熱媒体回路に潜熱変化を利用できる冷媒を利用しても良い。その場合、熱媒体回路の循環ポンプ30は圧縮機に置き換えられ、利用側熱交換器31と低元側熱交換器24の間の経路に減圧機構として膨張弁等が設けられる。
【0021】
二元冷凍装置1では、低元側冷媒回路3の熱源側熱交換器22で外気から吸熱して低温低圧の気相冷媒となった低元側冷媒は低元側圧縮機20で圧縮されて高温高圧の気相冷媒にされ、カスケード熱交換器13を介して高元側冷媒回路2を循環する高元側冷媒に放熱することで高温高圧の液相冷媒になる。カスケード熱交換器13で低元側冷媒から吸熱した低圧の高元側冷媒は高元側圧縮機10で圧縮されて高温高圧の気相冷媒にされ、高元側熱交換器11を介して熱媒体回路4を循環する熱媒体である水に放熱して温水を作り出す。また、二元冷凍装置1では、低元側冷媒回路3の熱源側熱交換器22で外気から吸熱して低温低圧の気相冷媒となった低元側冷媒は低元側圧縮機20で圧縮されて高温高圧の気相冷媒にされ、低元側熱交換器24を介して熱媒体回路4を循環する熱媒体である水に放熱する。そのため、低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒を、熱媒体回路4を循環する熱媒体である水によって凝縮させることができる。
【0022】
従来技術の二元冷凍装置では、立ち上がり運転における高元側冷凍回路の圧縮機の回転数(R1)の低元側冷凍回路の圧縮機の回転数(R2)に対する比(R1/R2)を、定常運転における比よりも高く設定することで、低元側冷凍回路において凝縮されず高圧過昇が生じて低元側冷媒回路の圧縮機が保護停止するのを抑制している。しかし、従来技術では低元側冷凍回路の圧縮機の立ち上がり運転における回転数が制限されるため、立ち上がり運転において、十分な暖房能力を発揮するまでに時間がかかっていた。一方、本実施形態における二元冷凍装置1は、高元側冷媒回路2と第1循環路23および第2循環路26を有する低元側冷媒回路3を備えて、高元側冷媒回路2の高元側熱交換器11、および、低元側冷媒回路3の第2循環路26における低元側熱交換器24で、熱媒体回路4を循環する熱媒体と熱交換する。そのため、低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒と、熱媒体回路4を循環する熱媒体とを、直接、熱交換して凝縮させることができるため、低元側冷媒回路の圧縮機の保護停止を抑制しながら立ち上がり運転を速やかに行うことができる。
【0023】
次に、
図2を参照して、本実施形態の二元冷凍装置1における制御ブロックについて説明する。制御部5は、第1過冷却度算出手段45と第2過冷却度算出手段46を備えている。第1過冷却度算出手段45は、カスケード熱交換器13の過冷却度(低元側冷媒に過冷却度)を算出する。第2過冷却度算出手段46は、低元側熱交換器24の過冷却度(低元側冷媒に過冷却度)を算出する。第1過冷却度算出手段45には、カスケード熱交換器13を流れる低元側冷媒の凝縮温度とカスケード熱交換器13を流れる低元側冷媒の出口温度とが入力される。第2過冷却度算出手段46には、低元側熱交換器24を流れる低元側冷媒の凝縮温度と低元側熱交換器24を流れる低元側冷媒の出口温度とが入力される。また、制御部5には目標熱媒体温度が入力される。目標熱媒体温度は熱媒体回路4において、循環ポンプ30から流出する熱媒体としての水の目標温度である。目標熱媒体温度は、例えば、利用側熱交換器31を用いた暖房運転を行っているときの空調負荷(空調空間の室温と、使用者により定められた設定温度との差)に応じて変更され、空調負荷が大きいほど目標熱媒体温度は大きい値が設定される。
【0024】
制御部5は、目標熱媒体温度に基づき、高元側圧縮機10と低元側圧縮機20の回転数を決定する。また、カスケード熱交換器13を流れる低元側冷媒の凝縮温度およびカスケード熱交換器13を流れる低元側冷媒の出口温度に基づき、第1過冷却度算出手段45を介して低元側第1膨張弁21の制御を行う。また、低元側熱交換器24を流れる低元側冷媒の凝縮温度および低元側熱交換器24を流れる低元側冷媒の出口温度に基づき、第2過冷却度算出手段46を介して低元側第2膨張弁25の制御を行う。
【0025】
次に、
図3に示す制御フロー図を参照して、本実施形態に係る二元冷凍装置1の制御について説明する。
【0026】
制御部5は、二元冷凍装置1を起動する際に、まず、立ち上がり運転を行う(ST1)。立ち上がり運転は、高元側圧縮機10、低元側圧縮機20および循環ポンプ30を起動させ、高元側膨張弁12、低元側第1膨張弁21および低元側第2膨張弁25の開度を所定の初期開度(予め設定された固定値であって、機種別にそれぞれ定められる)に維持して、高元側冷媒回路2に高元側冷媒を循環させ、低元側冷媒回路3の第1循環路23および第2循環路26に低元側冷媒を循環させる。
【0027】
次に、所定時間を経過したら、立ち上がり運転を終了する(ST2)。所定時間は例えば、10分である。所定時間は、二元冷凍装置1が負荷に応じて収束した安定な運転状態になるまで最低限必要な時間であり実験等により予め決定される。立ち上がり運転終了後、カスケード熱交換器13の出口における低元側冷媒および低元側熱交換器24の出口における低元側冷媒がそれぞれ所定の過冷却度(予め設定された固定値であって、各膨張弁に二相状態の低元側冷媒が流入しないように少なくとも1deg以上の値)になるよう低元側第1膨張弁21および低元側第2膨張弁25を制御する通常運転に切り換える(ST3)。次に、目標熱媒体温度が第1所定温度より高いかどうかを判断する(ST4)。第1所定温度(例えば、55℃)は、高元側冷媒回路2を動作させなくても循環ポンプ30を通過した後の熱媒体の温度を目標熱媒体温度に到達させることができる温度が設定される。目標熱媒体温度が第1所定温度より高い場合(ST4のYes)は、低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度より高いかどうかを判断する(ST5)。低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度(熱媒体戻り温度)より高い場合(ST5のYes)には、ST4の直前に戻る。低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度(熱媒体戻り温度)より高くない場合(ST5のNo)は、低元側熱交換器24を通過する高温高圧の気相状態の低元側冷媒は放熱することができず、凝縮されない。この状態で低元側熱交換器24を通過した後の低元側冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように目標過冷却制御を行うと、低元側第2膨張弁25は過冷却が取れるように閉じる方向に開度が制御され、最終的には閉じられる、もしくは、微開となる(ST6)。次に、低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度より高いかどうかを判断する(ST7)。低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度(熱媒体戻り温度)より高くない場合(ST7のNo)は、この処理(ST7)を継続する。低元側冷媒回路3を循環する低元側冷媒の凝縮温度が、利用側熱交換器31において室内の空気と熱交換した後の熱媒体である水の温度(熱媒体戻り温度)より高い場合(ST7のYes)は、低元側熱交換器24を通過する高温高圧の気相状態の低元側冷媒は放熱することができ、凝縮できるので、低元側熱交換器24を通過した後の低元側冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように目標過冷却度制御を行い、低元側第2膨張弁25を開く方向に開度が制御されて(ST8)、ST4の直前に戻る。
【0028】
ST4において、目標熱媒体温度が第1所定温度より高くない場合(ST4のNo)は、高元側圧縮機10を停止する(ST9)。その結果、カスケード熱交換器13を通過する高温高圧の気相状態の低元側冷媒は放熱することができず、凝縮しない。この状態で、カスケード熱交換器13を通過した後の低元側冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように目標過冷却制御を行うと、低元側第1膨張弁21は過冷却が取れるように閉じる方向に開度が制御され、最終的には閉じられる、もしくは、微開となる(ST10)。次に、目標熱媒体温度が第1所定温度+αより高いかどうかを判断する(ST11)。第1所定温度+α(例えば、60℃)は、高元側冷媒回路2を動作させなくても循環ポンプ30を通過した後の熱媒体の温度を目標熱媒体温度に到達させることができる温度の最大値が設定される。目標熱媒体温度が第1所定温度+αより高い場合(ST11のYes)は、高元側圧縮機10を起動する(ST12)。目標熱媒体温度が第1所定温度+αより高くない場合(ST11のNo)は、この処理(ST11)を継続する。高元側圧縮機10を起動した(ST12)後、カスケード熱交換器13を通過した後の低元側冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように目標過冷却度制御を行い、低元側第1膨張弁21を開く方向に開度が制御されて(ST10)、ST5の直前に戻る。
【0029】
次に、
図4を参照して、他の実施形態である二元冷凍装置50について説明する。
図4は、他の実施形態の二元冷凍装置50の冷媒回路図である。最初の実施形態の二元冷凍装置1と他の実施形態の二元冷凍装置50の相違は、低元側熱交換器24に蓄熱材29を備えた蓄熱部28が配置されている点であり、他の構成は同一である、そのため、最初の実施形態の二元冷凍装置1の構成と同一の構成についての詳細な説明は省略する。また、同一の構成については同一の符号を用いる。
【0030】
二元冷凍装置50は、利用側熱交換器31を蒸発器として利用する場合には冷房運転に用いられ、利用側熱交換器31を凝縮器として利用する場合には、高温度の温水を作り出す、あるいは、暖房運転に用いられることができる冷凍装置である。本実施形態では、暖房運転に用いられる二元冷凍装置について説明する。二元冷凍装置50は、高元側冷媒回路2、低元側冷媒回路3、熱媒体回路4、制御部5を備え、制御部5は二元冷凍装置1を制御する。
【0031】
低元側冷媒回路3は、低元側圧縮機20とカスケード熱交換器13との間と、低元側第1膨張弁21と熱源側熱交換器22との間とを、低元側熱交換器24および低元側第2減圧機構としての低元側第2膨張弁25が設けられた冷媒配管で接続し、低元側圧縮機20と、低元側熱交換器24と、低元側第2膨張弁25と、熱源側熱交換器22とが冷媒配管で順次接続され、低元側冷媒が循環する第2循環路26を備えている。低元側熱交換器24には蓄熱材29を備えた蓄熱部28が配置されている。蓄熱部28の蓄熱材29は、低元側冷媒回路3の熱源側熱交換器22で外気から吸熱し低元側圧縮機20で高温にされた低元側冷媒の熱を蓄熱する。
【0032】
本実施形態の二元冷凍装置50では、蓄熱材29に蓄熱された熱を、熱源側熱交換器22に着霜した霜を除霜するための除霜運転に用いる。除霜運転は次のように行われる。まず制御部5は、低元側熱交換器24に設けられる蓄熱材29の温度が所定温度以上になったか否かを判定する。そして、蓄熱材29の温度が所定温度以上になった場合には、次に低元側冷媒回路3においては、低元側四方弁27を、いわゆる冷房サイクル側に切換える。すなわち、低元側圧縮機20から吐出される低元側冷媒を、熱源側熱交換器22の側に流れるように切り換え、熱源側熱交換器22を凝縮器として機能させ、カスケード熱交換器13の側および低元側熱交換器24を蒸発器として機能させる。低元側第1膨張弁21および低元側第2膨張弁25は全開に近い開度にする。低元側圧縮機20から吐出された低元側冷媒は熱源側熱交換器22に流入し霜を融かす。熱源側熱交換器22から流出した一部の低元側冷媒は低元側熱交換器24に流入し低元側熱交換器24に設けられた蓄熱部28の蓄熱材29から吸熱する。熱源側熱交換器22から流出した他の低元側冷媒はカスケード熱交換器13に流入し、高元側冷媒回路2に残った熱を吸熱する。吸熱した低元側冷媒は低元側圧縮機20を経由して、再度、熱源側熱交換器22に流入し霜を融かす。
【0033】
上記した実施形態では、熱媒体回路4を設け、熱媒体回路4を循環する熱媒体である水と高元側冷媒回路2を流れる高元側冷媒とを、高元側熱交換器11を介して熱交換したが、必ずしも熱媒体回路4を設けなくても構わない。熱媒体回路4を設けない場合は、高元側冷媒と熱媒体としての空気とを、高元側冷媒回路2の高元側熱交換器11に図示しない送風機を設けて熱交換しても構わない。また、低元側冷媒と熱媒体としての空気とを、第2循環路26の低元側熱交換器24に図示しない送風機を設けて熱交換しても構わない。
【0034】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
1…二元冷凍装置、2…高元側冷媒回路、3…低元側冷媒回路、4…熱媒体回路、5…制御部、6…冷媒配管、10…高元側圧縮機、11…高元側熱交換器、12…高元側膨張弁、13…カスケード熱交換器、14…高元側四方弁、20…低元側圧縮機、21…低元側第1膨張弁、22…熱源側熱交換器、23…第1循環路、24…低元側熱交換器、25…低元側第2膨張弁、26…第2循環路、27…低元側四方弁、28…蓄熱部、29…蓄熱材、30…循環ポンプ、31…利用側熱交換器、32…配管、45…第1過冷却度算出手段、46…第2過冷却度算出手段、50…二元冷凍装置