(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020850
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20240207BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20240207BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20240207BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240207BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240207BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C09D11/38
C08F290/12
C08F20/00 510
C08F2/50
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123345
(22)【出願日】2022-08-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】川本 健司
(72)【発明者】
【氏名】新田 良一
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J011
4J039
4J127
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FC01
2C056HA44
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2H186FB57
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4J127BA051
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4J127FA11
4J127FA13
(57)【要約】
【課題】インクジェット用インク組成物として適切な粘度にすることができ、かつ十分に高い反応性を実現し、硬化した光硬化型インクジェット用インク組成物の塗膜から発生するマイグレーション物質を削減できる、光硬化型インクジェット用インク組成物を得ること。
【解決手段】下記A~Eを含有し、粘度が100cps以下であり、かつ表面張力が32.0mN/m以下である光硬化型インクジェット用インク組成物。
A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤
B.光増感作用を有するチオキサントン系化合物
C.(メタ)アクリレート系化合物
D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物及び/又はアミノベンゾエート化合物
E.表面調整剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~Eを含有し、粘度が100cps以下であり、かつ表面張力が32.0mN/m以下である光硬化型インクジェット用インク組成物。
A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤
B.光増感作用を有するチオキサントン系化合物
C.(メタ)アクリレート系化合物
D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物及び/又はアミノベンゾエート化合物
E.表面調整剤
【請求項2】
前記A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤が、(メタ)アクリルアミド基を1つ以上と、ベンゾフェノン基を1つ以上含有し、且つ(メタ)アクリルアミド基とベンゾフェノン基がポリエーテル骨格とウレタン結合を有する二価の有機基で連結されている光重合開始剤である請求項1記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
平均粒子径が500nm以下の顔料を含有する請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
波長が360~420nmの光線により硬化される請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
光増感作用を有する分子量500以上のチオキサントン系化合物を含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化型インクジェット用インク組成物には、溶剤を含む溶剤型と溶剤を含まない無溶剤型がある。無溶剤型のインクジェット用インク組成物は通常、光硬化型のインクジェット用インク組成物である。
溶剤型インクジェット用インク組成物を用いて印刷を行う場合には、印刷後においてこのインク組成物を乾燥や固化させる必要があり、そのような工程を経ないと、印刷後の印刷物をその後の工程での加工が困難になる。
このような後加工を念頭においた印刷工程においては、光硬化型インクジェット用インク組成物のなかでも無溶剤のものを使用することが好ましい。従来、印刷後速やかに加工を行うためには、光硬化型インクジェット用インク組成物を速やかに硬化させる必要があり、光重合開始剤のなかでも特に反応性が高い、低分子量の光重合開始剤を選択していた。
しかしながら、このような反応性が高い低分子量の光重合開始剤を使用すると、光硬化後のインク塗膜から、未反応の開始剤や開始剤断片等、光重合開始剤に由来する成分のマイグレーションが発生する可能性があった。
【0003】
上記課題に対し、特許文献1に示すようにマイグレーション量を低減させるために、光重合開始剤として、特定のアシルホスフィンオキシド化合物を含有させたインクジェット用組成物は知られている。
又、特許文献2に示すように、アミド結合を4つ有する特定の化合物を有し、かつ分子量が400~2,000の光重合開始剤を有するインクジェットインク組成物が知られている。
そして、特許文献3に示すように、アシルホスフィン構造を有する高分子開始剤、重合性化合物、着色剤を含有する、マイグレーションが少ないインクジェット用インク組成物は知られている。
又、増感剤としてOMNIPOL TXを含有できること、重合性化合物としてトリプロピレングリコールジアクリレートやEO変性トリメチロールプロパントリアクリレートを使用できることも知られている。
しかしながら、これらの特許文献に記載された発明のような、他の物品へのマイグレーション防止の観点から光重合開始剤を高分子量化させた組成物であると、光硬化型のインクジェット用インク組成物が高粘度化する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2018/047484号
【特許文献2】特開2014-240464号公報
【特許文献3】特開2014-185319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、特定の組成の光硬化型インクジェット用インク組成物に特定の光重合開始剤を含有させることにより、インクジェット用インク組成物として適切な粘度にすることができ、かつ十分に高い反応性を実現し、硬化した光硬化型インクジェット用インク組成物の塗膜から発生するマイグレーション物質を削減できる、光硬化型インクジェット用インク組成物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記の光硬化型インクジェット用インク組成物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.下記A~Eを含有し、粘度が100cps以下であり、かつ表面張力が32.0mN/m以下である光硬化型インクジェット用インク組成物。
A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤
B.光増感作用を有するチオキサントン系化合物
C.(メタ)アクリレート系化合物
D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物及び/又はアミノベンゾエート化合物
E.表面調整剤
2.前記A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤が、(メタ)アクリルアミド基を1つ以上と、ベンゾフェノン基を1つ以上含有し、且つ(メタ)アクリルアミド基とベンゾフェノン基がポリエーテル骨格とウレタン結合を有する二価の有機基で連結されている光重合開始剤である1記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
3.平均粒子径が500nm以下の顔料を含有する1又は2に記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
4.波長が360~420nmの光線により硬化される1~3のいずれかに記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
5.光増感作用を有する分子量500以上のチオキサントン系化合物を含有する、1~4のいずれかに記載の光硬化型インクジェット用インク組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分に高い反応性と、食品包装用途にも十分に使用可能な優れたマイグレーション防止性を有し、かつ樹脂フィルムへの優れた密着性とLED硬化性を備えた光硬化型インクジェット用インク組成物を得ることができる。特に、高分子開始剤を含有しても、適切な粘度に調整できる。
なお本発明では、光硬化型インクジェット用インク組成物を印刷し硬化して形成した印刷物において、未反応の開始剤や開始剤断片を含め、基材を通り抜けて擬似食品(エタノール水溶液)へ移行した開始剤由来の成分を全てマイグレーション成分という。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物(以下場合により単に「インク組成物」というときがある。)は、従来の光硬化型インクジェット用インク組成物と同じ用途に使用される。又、本明細書において、本発明中の全重合性成分は、インク組成物が含有する各モノマー及びオリゴマーであり、硬化時において互いに反応して重合する全ての成分である。そして、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
更に、本発明における光硬化型インクジェット用インク組成物は印刷用であり、三次元造形物を得るためのものではない。
【0009】
[A.エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤]
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物はエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤を含有する。そして、本発明においては、1種又は2種以上のエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤を、光硬化型インクジェット用インク組成物に含有させることができる。
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤が有するエチレン性不飽和結合は、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリレート基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種又は2種以上の結合である。又、エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤がエチレン性不飽和結合を二つ以上有する場合、それらは同一であっても、異なってもよい。更に、エチレン性不飽和結合として(メタ)アクリルアミド基を少なくとも一つ有することが好ましい。エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤がラジカル系光重合開始剤である場合においては、(メタ)アクリルアミド基の含有により光の吸収波長が長波長側にシフトし、高エネルギーで危険性の高い短波長光線を使用しなくてもよいため光硬化反応の安全性が高くなり、又、(メタ)アクリルアミド基の重合性が高いため、それを含有する光硬化型インクジェット用インク組成物の光硬化性が高くなる。エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤がカチオン系光重合開始剤であるときのもの、又はエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤がアニオン系光重合開始剤であるときのものと併用する場合においては、(メタ)アクリルアミド基が酸性条件下でも、塩基性条件下でも、優れる耐加水分解性を有するため、硬化前の組成物の安定性も硬化後の硬化物の耐久性も良好となる。
【0010】
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤に用いられる光ラジカル重合開始性官能基は、光照射により活性ラジカルを発生させるものであって、又、光重合反応後、硬化物中に共有結合を介して構造単位として存在できる水素引抜き型光ラジカル重合開始性官能基を有することが好ましい。これらの光重合開始性官能基は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤に用いられる光ラジカル重合開始性官能基は、水素引抜き型の光重合開始性官能基として、ベンゾフェノン、アルキルジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のジアリールケトン骨格を有するベンゾフェノン誘導体に由来する基が挙げられる。又、高い光重合開始性と良好な耐着色性が両立できる観点から、ベンゾフェノンに由来する基が好ましい。これらの光重合開始性官能基は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤が水素引抜き型の光ラジカル重合開始性官能基を有する場合、水素供与基となりうる官能基を分子内に有することが好ましい。水素供与基となりうる官能基としては特に限定されないが、例えば、アミド基、ウレタン基、ウレア基、水酸基、チオール基、カルボン酸等が挙げられる。中でも、耐着色性に優れるウレタン基を有することがより好ましい。又、水素供与基となりうる官能基は光重合開始性官能基に直接結合していても良く、その他の官能基を介して結合することは、水素引抜きは分子間でも分子内でもでき、波長360nmからの高安全性の長波長光に対しても十分な重合開始性を示すため、特に好ましい。
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤は、ポリエーテル骨格とウレタン結合を有する二価の有機基と該有機基に結合したベンゾフェノン骨格を繰り返し単位として1つ以上、及び、該繰り返し単位に結合した1つ以上の(メタ)アクリルアミド単位、を有する。ポリエーテル骨格の柔軟性とウレタン結合の強靭性の相互作用により、インク組成物及びその硬化後塗膜の樹脂フィルムへの密着性が優れ、又、高分子光重合開始剤の分子量を容易に調整することが可能であり、インク組成物の粘度を適宜に調整することができる。
【0013】
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤の分子量は、数平均分子量で1,000~100,000が好ましい。更に数平均分子量が1,000以上であれば、未反応の開始剤が残存しても、マイグレーションをしない。又、数平均分子量が100,000以下であれば、得られる光重合開始剤の極性(親水性と疎水性のバランス)を調整しやすく、光硬化型インクジェット用インク組成物に用いる各成分に対する溶解性が高く、エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤を溶解した組成物の粘度を塗布、噴射、押出等の各種作業に適した範囲内に制御することが可能となり、光硬化型インクジェット用インク組成物の透明性も確保できる。
【0014】
このエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤の、インク組成物中の含有量は1.0~40.0質量%である。更に1.5質量%以上含有することが好ましく、5.0質量%以上含有することがより好ましい。又37.0質量%以下含有することが好ましく、30.0質量%以下含有することがより好ましい。
【0015】
又、本発明中のエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤は、分子内に一つ以上のエチレン性不飽和結合と一つ以上の光重合開始性官能基を有する。又、長波長光線に対する光重合開始性と光硬化性を向上する観点、及び光重合開始後に確実に共有結合を介して硬化物中に入り込める観点から、分子内のエチレン性不飽和結合を二つ以上有することが好ましい。更に、分子内のエチレン性不飽和結合(基)の個数と光重合開始性官能基の個数の比(エチレン性不飽和基の個数と光重合開始性官能基の個数の比)は1/10~10/1であることが好ましく、1/8~8/1がより好ましく、1/5~5/1が特に好ましい。この個数の比が0.1(1/10)未満である場合、光硬化型インクジェット用インク組成物中の光重合開始剤の含有量にもよるが、光硬化型インクジェット用インク組成物の光重合速度が著しく速くなる可能性がある。一方、この個数の比が10.0(10/1)を超える場合、光重合開始剤が光重合反応(硬化)終了しても、共有結合を介して硬化物中に構造単位として固定されず、その結果、光重合開始剤の分子量にもよるが、低分子量の光重合開始剤がフリーの低分子として硬化物中に存在し、硬化物の臭気問題や経時的着色しやすい問題が十分に解決できない恐れがある。
本発明中のエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤は、高分子量であって、かつエチレン性不飽和性を有する基と、光重合開始性を有する基をそれぞれ1つ以上有する化合物であり、これらの基以外の高分子の構造を問わず、1つの高分子に、それぞれの基を有することが必要である。このような構造を備えることにより、本発明の効果を発揮できる。
【0016】
本発明中のエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤に用いられる光ラジカル重合開始性官能基は、光照射により活性ラジカルを発生させる官能基であれば、特に限定されない。例えば、光吸収後水素や電子のやり取りによりラジカルを発生する水素引抜き型と電子供与型の光ラジカル重合開始性官能基が挙げられる。又、光重合反応後、硬化物中に共有結合を介して構造単位として存在できる観点及び工業的に入手、製造しやすい観点から、光重合開始剤は水素引抜き型光ラジカル重合開始性官能基を有することが好ましい。これらの光重合開始性官能基は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
エチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤に対して、併用しなくても良く、又は併用しても良い光重合開始剤としては、本発明による効果を毀損しない範囲において、活性エネルギー線を受けて重合を開始させるものであれば特に制限されず、光硬化型インクジェット用インク組成物に従来から使用される光重合開始剤を用いることができる。
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、発光ダイオード(LED)光に対する硬化性が良好である観点から、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。前記光重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0018】
又、本発明中のエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤以外の高分子光重合開始剤を併用しても良く、しなくても良い。このような高分子光重合開始剤は、数平均分子量が450以上のものであり、ベンゾイル基、ホスフォノイル基、アシルオキシミルケトン基等を有する高分子化合物、ポリエーテル構造又はポリエステル構造の骨格に低分子光重合開始剤が結合したもの、低分子光重合開始剤の多量体(KeycurePOL-8150(UV Chem-keys社))、低分子の光重合開始剤を結合した光重合性高分子化合物(LoMicure450(BCH Bruhl Chemikalien Handel社))、等が挙げられる。
更に、この高分子開始剤の具体例としては、例えば、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)α-(1-オキソ-2-プロペニル)-ω-(4-ベンゾイル-フェノキシ)-、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]等が挙げられる。
【0019】
[B.光増感作用を有するチオキサントン系化合物]
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物は、硬化性を向上させる観点から、光増感作用を有するチオキサントン系化合物を含有する。光増感作用を有するチオキサントン系化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
光増感作用を有するチオキサントン系化合物としては、2,4-ジエチルチオキサントン(商品名「DETX」;分子量268;IGM RESINS B.V.社製)、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン(分子量254)、4-イソプロピルチオキサントン(分子量254)、カルボキシメトキシチオキサントンとポリテトラメチレングリコール250のジエステル(商品名「Omnipol TX」;分子量660;IGM RESINS B.V.社製)等が挙げられる。
光増感作用を有するチオキサントン系化合物の分子量は、マイグレーション量を低減させる観点から、500以上であることが好ましい。
又、過剰添加を防止する観点から、インク組成物中の光増感作用を有するチオキサントン系化合物の含有量は0.3~10.0質量%が好ましく、1.0~9.0質量%がより好ましい。
本発明においては、インク組成物中の光重合開始剤及び光増感作用を有する化合物の含有量は合計で4.0~33.0質量%が好ましい。
そしてインク組成物中の高分子光重合開始剤の含有量1.00質量%に対し、光増感作用を有するチオキサントン系化合物の含有量としては、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましい。又、0.70質量%以下が好ましく、0.35質量%以下がより好ましく、0.25質量%以下が更に好ましい。
【0020】
(その他の増感剤)
本発明は、その効果を阻害しない範囲においてその他の増感剤を含有できるが、含有させなくてもよい。
その他の増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤等として、商品名「DBA」、「DEA」(以上、川崎化成工業社)が挙げられる。更にその他に、Omnirad EDB ジエチルアミノ安息香酸エチル(IGM RESINS B.V.社)も使用できる。
なお、下記のアミノベンゾエート化合物は増感剤であって、D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物と同等の効果、つまり、下記の実施例及び比較例からみて明らかなように、アミノベンゾエート化合物は、D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物と同様に、含有しない場合には、LED硬化性に劣り、かつ開始剤由来マイグレーションが発生するものである
【0021】
[C.(メタ)アクリレート系重合性化合物]
本発明におけるC.(メタ)アクリレート系重合性化合物は、光重合性化合物の1種であり、以下の化合物から1種以上を採用できる。なお、C.(メタ)アクリレート系重合性化合物には前記A.エチレン性不飽和結合を有する高分子光重合開始剤を包含しない。
C.(メタ)アクリレート系重合性化合物としては、モノマーとして、単官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物及び多官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物、更にオリゴマーが挙げられる。
本発明におけるC.(メタ)アクリレート系重合性化合物の、インク組成物中の含有量は、30.0質量%以上が好ましく、33.0質量%以上がより好ましく、35.0質量%以上が更に好ましい。又99.0質量%以下が好ましく、95.0質量%以下がより好ましく、90.0質量%以下が更に好ましい。
【0022】
(単官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物)
単官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート系化合物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物、エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、その他の(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
本発明において、単官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物の、インク組成物中の含有量は、10.0質量%以上が好ましく、12.0質量%以上がより好ましく、15.0質量%以上が更に好ましい。又85.0質量%以下が好ましく、80.0質量%以下がより好ましく、75.0質量%以下が更に好ましい。
更にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、インク組成物中の含有量は、10.0質量%以上が好ましく、15.0質量%以上がより好ましい。又80.0質量%以下が好ましく、75.0質量%以下がより好ましい。
【0023】
-アルキル(メタ)アクリレート系化合物-
アルキル(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物が含有できる単官能のアルキル(メタ)アクリレート系化合物の、インク組成物中の含有量は、10.0質量%以上が好ましく、12.0質量%以上がより好ましく、15.0質量%以上が更に好ましい。又85.0質量%以下が好ましく、80.0質量%以下がより好ましく、75.0質量%以下が更に好ましい。
【0024】
-ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物の中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
-ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物-
ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO(エチレンオキサイド)付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
-エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(EO繰返し単位数400、700等)、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(エトキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート(エトキシ化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート等)、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート等のアルコキシ系及び又はフェノキシ系(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0027】
-カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0028】
-その他の(メタ)アクリレート系化合物-
その他の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートベンジルクロライド4級塩、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、マレイミド等が挙げられる。
【0029】
(多官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物)
多官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物としては、例えば下記の多官能(メタ)アクリレート系化合物やビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物等を用いることができる。
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物が含有できる多官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物の含有量は、インク組成物に対して13.0質量%以上が好ましく、15.0質量%以上がより好ましく、18.0質量%以上が更に好ましく、21.0質量%以上が最も好ましい。又38.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下が更に好ましく、28.0質量%以下が最も好ましい。
【0030】
-多官能(メタ)アクリレート系化合物-
多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー等を使用できる。これらの多官能(メタ)アクリレート系化合物の中でもポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0031】
又、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;及びこれらの3EO(エチレンオキサイド)変性物、6EO変性物、9EO変性物(EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート等) トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DITMPTA;4官能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;6官能)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)等を使用できる。
【0032】
-ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0033】
これらの多官能の(メタ)アクリレート系重合性化合物の中でも、エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物や(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物の中でもEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート及び3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートから選ばれた1種以上が好ましい。
中でもPO変性されていても良いネオペンチルグリコールジアクリレート及び/又はEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又は3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、ジプロピレングリコールジアリレートを含有することが更に好ましく、中でもPO変性されていても良いネオペンチルグリコールジアクリレートと、ジプロピレングリコールジアリレートを含有することが最も好ましい。
なお、EO変性とはエチレンオキサイド変性であり,PO変性とはプロピレンオキサイド変性である。
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物が、ジプロピレングリコールジアリレートと、PO変性されていても良いネオペンチルグリコールジアクリレートを含有するときに、ジプロピレングリコールジアリレートと、PO変性されていても良いネオペンチルグリコールジアクリレートの質量比は、1/10~10/1が好ましく、3/7~7/3がより好ましく、4/6~6/4が更に好ましい。
【0034】
[D.(メタ)アクリル酸アミド系化合物及び/又はアミノベンゾエート化合物]
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物は、(メタ)アクリル酸アミド系化合物及び/又はアミノベンゾエート化合物を含有する。これらはどちらか一方を含有すればよいが、両方を含有することもできる。
(メタ)アクリル酸アミド系化合物としては、例えば、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でもアクリロイルモルフォリンが好ましい。
なお、増感剤ではない(メタ)アクリル酸アミド系化合物は、増感剤であるアミノベンゾエート化合物と同等の効果、つまり、下記の実施例及び比較例からみて明らかなように、LED硬化性に優れ、かつ開始剤由来マイグレーションが発生しない効果を生じる。そして、(メタ)アクリル酸アミド系化合物及びアミノベンゾエート化合物の2種を含有しても同様の効果を発揮できる。
インク組成物中に(メタ)アクリル酸アミド系化合物を含有するとき、その含有量は、インク組成物に対して1.0質量%以上が好ましく、3.5質量%以上がより好ましく、6.0質量%以上が更に好ましい。又70.0質量%以下が好ましく、65.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以下が更に好ましい。
又、アミノベンゾエート化合物としては、増感剤等として使用できるものであり、A198(Esacure A 198(下記式1))やOmnipol AP(いずれもIGM RESINS B.V.社製)、Genopol AP-1やAP-2(RAHN AG社製)や2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-ジエチルアミノベンゾエート等を採用できる。
(式1)
インク組成物中にアミノベンゾエート化合物を含有するとき、その含有量インク組成物に対して、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上が更に好ましい。又12.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下が更に好ましい。
【0035】
[E.表面調整剤](界面活性剤、レベリング剤)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物には、使用するインクジェットヘッドや被印刷物に応じて、表面調整剤として、光硬化型インクジェット用インク組成物に使用される公知の界面活性剤が特に制限なく使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等が挙げられる。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記シリコーン系界面活性剤としては、BYK-307、BYK-315N、BYK-331、BYK-333、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-3455、BYK-3500(ビックケミー社)等が挙げられる。
【0037】
前記フッ素系界面活性剤としては、F-410、F-444、F-553(DIC社)、FS-65、FS-34、FS-35、FS-31、FS-30(デュポン社)等が挙げられる。
【0038】
前記アセチレン系界面活性剤としては、ダイノール607、ダイノール609、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(日信化学社)、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(EVONIK社)等が挙げられる。
【0039】
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物中、前記表面調整剤の含有量は、インク組成物の表面張力を低下させ、インクジェットヘッドからの吐出安定性を高める観点から、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、そして、配合中に発生するインク組成物中の泡を抑制し、吐出安定性を高める観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
光硬化型インクジェット用インク組成物の表面張力は、32.0mN/m以下であることが好ましい。表面張力が32.0mN/mを超える場合、基材に対する濡れ性不足のため、画質不良を起こす。
【0040】
[その他の重合性化合物]
-不飽和カルボン酸系化合物-
不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの塩及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0041】
(ビニル化合物)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物には、上記の光重合性成分の他に、ビニル化合物を配合できる。このようなビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸に由来する構造を有していないビニル化合物であり、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニルカルバゾール、ビニルメチルオキサゾリジノン等が挙げられる。
光重合性成分全体に対する、ビニル化合物の含有量は、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上が更に好ましい。又10.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下が更に好ましい。
【0042】
-スチレン系化合物-
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0043】
-アリレート系化合物-
アリレート系化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート等が挙げられる。
【0044】
-その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物-
エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物として、前記化合物以外の「その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物」を用いることができる。
そのような化合物としては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、三員環化合物類(例えば、ビニルシクロプロパン類、1-フェニル-2-ビニルシクロプロパン類、2-フェニル-3-ビニルオキシラン類、2,3-ジビニルオキシラン類等)、環状ケテンアセタール類(例えば、2-メチレン-1,3-ジオキセパン、ポジオキソラン類、2-メチレン-4-フェニル-1,3-ジオキセパン、4,7-ジメチル-2-メチレン-1,3-ジオキセパン、5,6-ベンゾ-2-メチレン-1,3-ジオセパン等)等が挙げられる。
【0045】
(その他オリゴマー)
又環境面を考慮して植物由来のジカルボン酸成分やジオール成分を使用して得たポリエステルポリオールを原料としたポリウレタンオリゴマー及び/又はポリウレタンポリウレアオリゴマーを採用することもできる。
植物油変性多官能ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、アクリレート基を分子内に2~6つ有する植物油変性ポリエステルアクリレートオリゴマーであれば制限なく用いることができる。
このうち、例えば、EBECRYL 450、452、820、1622や、トール油脂肪酸変性6官能ポリエステルアクリレート(例えば、AgiSyn 716等)からなる群より選ばれる1種以上を用いると、光硬化型インクジェット用インク組成物のバイオマス度を高くでき好ましい。
これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(ポリマー)
エチレン性不飽和結合を備えた硬化性樹脂としてのポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、紫外線等の活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、インク組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。 このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、ポリジアリルフタレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ポリジアリルフタレートは、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性が特に優れているので好ましく用いることができる。
又、エチレン性不飽和結合を備えたポリマーを含有しなくてもよいが、含有する場合には、光硬化型インクジェット用インク組成物に対するエチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、0~50.0質量%が好ましく、0~30.0質量%がより好ましく、0~20.0質量%が更に好ましい。
【0047】
[顔料]
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物は顔料を含有する。顔料は、インク組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、例えば着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような顔料としては、従来からインク組成物に使用されている例えば下記の有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
【0048】
顔料としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料及び各種無機顔料等が挙げられる。
これらの顔料の中でもジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド、キナクリドン等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
【0049】
顔料の含有量としては、目的とする着色の程度に応じて、インク組成物の全体に対して1~20質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、着色されたインク組成物を調製する場合、補色として他の色の顔料や染料を併用したり、他の色のインク組成物を添加したりすることも可能である。
光硬化型インクジェット用インク組成物に含有される顔料の平均粒子径(D50)は、着色力の観点から50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。又、分散安定性の観点から500nm以下が好ましく、350nm以下がより好ましい。
【0050】
(顔料分散剤・顔料分散用樹脂)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物が着色剤として顔料を採用するとき、顔料分散剤及び/又は顔料分散用樹脂を配合してもよい。
顔料分散剤としては、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性シリコンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等)、フッ素系界面活性剤、オキシアルキレンエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、リン系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
又、顔料分散用樹脂として、高分子分散剤(例えば、カルボジイミド系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエステルアミン系、ポリウレタン系、脂肪酸アミン系分散剤、ポリアクリレート系、ポリカプロラクトン系、ポリシロキサン系、多鎖型高分子非イオン系、高分子イオン系の分散剤等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物が顔料分散剤や顔料分散用樹脂を含む場合には、使用する顔料の合計量を100質量%としたときに、顔料分散剤や顔料分散用樹脂を1~200質量%含有することが好ましい。
【0051】
(その他の成分)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物は、その他の成分として、重合禁止剤、保存性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。又、硬化性ではない樹脂を配合しても良く、配合しなくても良い。又、溶剤を含有させても良いが、含有しなくても良い。
【0052】
(溶剤)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物には、必要に応じ、溶剤を配合することができる。前記溶剤としては、エステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤等が挙げられる。又、前記溶剤としては、1気圧下における沸点が150~220℃であるものが挙げられる。前記溶剤は、インク組成物の硬化性、環境問題等の観点から、極力使用されないことが好ましく、前記溶剤の割合は、インク組成物中、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
光硬化型インクジェット用インク組成物の保存時の重合を防止する目的で、公知の重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。このような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してインク組成物が増粘するのを抑制できる。インク組成物中の重合禁止剤の含有量としては、インク組成物に対して0.1~1.0質量%程度を例示することができる。
【0054】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等である。
【0055】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等である。
【0056】
(消泡剤)
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック(登録商標)系消泡剤等である。
【0057】
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物の、25℃における粘度は、好ましくは6.0cps以上、より好ましくは8.0cps以上、更に好ましくは10.0cps以上であり、好ましくは90.0cps以下、より好ましくは80.0cps以下、更に好ましくは75.0cps以下である。インク組成物には、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本願明細書に記載の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、10rpmの条件で測定した粘度である。
【0058】
<光硬化型インクジェット用インク組成物の調製方法>
次に、これらの材料を用いて本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して各成分を分散混合し、必要により光硬化型インクジェット用インク組成物の粘度を調整して得ることができる。なお、光硬化型インクジェット用インク組成物は、顔料と上記顔料分散剤及び上記光重合性化合物を混合することにより、予めベースインク組成物を得て、そこに所望の組成となるよう上記の成分の残余の分を添加して調製してもよい。
【0059】
<印刷方法>
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物による印刷方法を説明する。
使用するインクジェット印刷装置は特に限定されず、光硬化型インクジェット用インク組成物を、インクジェット記録方式用プリンター装置のプリンターヘッドに供給し、このプリンターヘッドからインク組成物を印刷対象の基材に吐出した後、基材に着弾したインク組成物を活性エネルギー線で露光し硬化させる方法等が挙げられる。活性エネルギー線としては、発光ダイオード(LED)や各種ランプや電極から照射される紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。特に発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性に優れる。
又基材も特に限定されず、従来公知の光硬化型インクジェット用インク組成物が適用可能な基材であれば特に限定されず、前記基材としては、例えば、樹脂、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等が挙げられる。又、前記樹脂としては、その基材として、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0060】
本発明のインク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明のインク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明のインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンターヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンターヘッドから吐出することにより行うことができる。又、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明のインク組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
【0061】
本発明のインク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式用プリンター装置を用いる場合は、本発明のインク組成物に更に導電性付与剤を加え電導度の調節をする。
上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UVランプ)、紫外線(メタルハライドランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができる。発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が360~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
【実施例0062】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。又、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。
実施例及び比較例においてエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤として下記表1に記載のA-1~12を使用した。それらの合成方法は特許第7016199号に参考できる。
下記表2-表4に記載の各実施例及び各比較例の光硬化型インクジェット用インク組成物を調製し、それぞれの光硬化型インクジェット用インク組成物に関する試験結果を表2-表4に記載した。
【0063】
(光硬化型インクジェット用インク組成物)
下記表2-表4にて使用した成分は以下のとおり
P.Y.150 :ピグメントイエロー150
P.R.122 :ピグメントレッド122
P.R.254 :ピグメントレッド254
P.B.15:4 :ピグメントブルー15:4
P.Bk.7 :カーボンブラック
S56000 :高分子分散剤(Solsperse56000、日本ルーブリゾール社製)
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
(PO)NPGDA:ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
TR-20400:1-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Tronly社製)
A-1~12:下記表1に示すエチレン性不飽和基、ベンゾフェノン基及び数平均分子量を有するエチレン性不飽和結合含有高分子光重合開始剤
A198:アミノベンゾエート化合物(Esacure A 198、IGM RESINS B.V.社製)
DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(IGM RESINS B.V.社製)
TX:カルボキシメトキシチオキサントンとポリテトラメチレングリコール250のジエステル(分子量660、IGM RESINS B.V.社製)
UV22:キノン系重合禁止剤(BASF社製)
BYK-3500:ポリエーテル変性アクリロイル基含有ポリジメチルシロキサン(固形分100%)(ビックケミー社製)
【0064】
(光硬化型インクジェット用インク組成物の調整)
表2-表4の記載の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、撹拌混合して、実施例及び比較例の光硬化型インクジェット用インク組成物を得た。
【0065】
<評価方法>
(粘度)
実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット用インク組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度10rpmの条件で、粘度(cps)を測定した。
【0066】
(表面張力)
各光硬化型インクジェット用インク組成物について、動的濡れ性試験機(商品名:WET-6000、レスカ社製)を使用して、温度25℃で表面張力(mN/m)を測定した。
【0067】
(平均粒子径)
実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット用インク組成物をベンジルアクリレートにて500倍に希釈し、マイクロトラック超微粒子粒度分析計(日機装社製)を使用して、23℃にて測定した。
【0068】
(LED硬化性)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製E5100)の表面に、実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット用インク組成物を、バーコーターNo.6を用いて塗布し、各塗工物を得た。次いで、フォセオンテクノロジー社製LEDランプを用いて積算光量80mJ/cm2の照射条件にて波長395nmのLEDを照射し、下記評価基準に従って評価した。
〇:綿棒で擦ってもインク塗膜の取られなし
×:綿棒で擦るとインク塗膜の取られあり
【0069】
(マイグレーション試験)
実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット用インク組成物を、シングルパスプリンターにて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製P2161)の表面に、印刷速度48m/minで印刷し、次いで照射エネルギー500mJにてLED照射して硬化して、各塗工物を得た。これらの塗工物を13mm×13mmにカットし、試験片を得た。
マイグレーション評価用セルに疑似食品として50%エタノール水溶液を200mL入れ、印刷面の裏側に疑似食品が接する状態で、40℃、10日間静置した。10日後にエタノール水溶液を回収し、回収した200mLのエタノール水溶液中に内部標準液(テルフェニル)を0.2mg添加した。内部標準液添加後のエタノール水溶液を固相抽出カートリッジに通した後、保持された成分をメタノール1mLで抽出した。これにより、試験片からエタノール水溶液中に溶出した成分が200倍に濃縮されたメタノール溶液を得た。
各メタノール溶液に対し、ガスクロマトグラフィー質量(GC/MS)分析にて、内部標準液(1000ppb)のピーク面積と、マイグレーション成分のピーク面積を比較した。GC/MSの結果から、ろ液中の開始剤由来成分のマイグレーション成分の濃度を算出し、下記評価基準に従って評価した。
〇:10ppb以下
△:10ppbより多く1ppm以下
×:1ppmより多い
なお、比較例3及び4は硬化性不良のため、比較例5は画質不良のため、何れも光硬化型インクジェット用インク組成物としては好ましくなかった。そのためマイグレーション試験を実施する必要がなかった。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
本発明に沿ったインク組成物による各実施例によれば、本発明のインク組成物が適切な粘度及び表面張力を備えた上で、優れたLED硬化性を有し、マイグレーションを発生しなかった。
これに対して、開始剤A-1~A-12を含有しない比較例1及び2によれば、マイグレーションが発生した。光増感作用を有するチオキサントン系化合物を含有しない比較例3によれば、LED硬化性に劣っていた。更に(メタ)アクリル酸アミド系化合物又はアミノベンゾエート化合物を含有しない比較例4によってもLED硬化性に劣っていた。又、表面調整剤を含有しない比較例5によれば、表面張力の高さに起因してドットの濡れ広がりが低位となった。