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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020852
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】半導体光素子アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20240207BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123352
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 智
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA11
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CB11
5F241CB25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な光学特性を有する半導体光素子アレイを提供する。
【解決手段】半導体基板1と、上記半導体基板の主面に配置され、開口部を有するマスク層2と、上記半導体基板から上記開口部を介して厚さ方向に延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶であるナノコラム3と、上記ナノコラムの先端に配置された発光層4と、上記発光層を被覆し、半導体を含む被覆半導体層5と、を有する半導体光素子アレイ10であって、上記半導体光素子アレイは、複数の上記ナノコラムを含む画素を有し、上記画素において、中心から外周に向かって、上記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の主面に配置され、開口部を有するマスク層と、
前記半導体基板から前記開口部を介して厚さ方向に延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶であるナノコラムと、
前記ナノコラムの先端に配置された発光層と、
前記発光層を被覆し、半導体を含む被覆半導体層と、
を有する半導体光素子アレイであって、
前記半導体光素子アレイは、複数の前記ナノコラムを含む画素を有し、
前記画素において、中心から外周に向かって、前記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少する、半導体光素子アレイ。
【請求項2】
前記画素の前記中心における前記ナノコラムのサイズが、10nm以上、1000nm以下である、請求項1に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項3】
前記画素において、中心から外周に向かって、前記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加する、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項4】
前記画素の前記中心における前記ナノコラムのサイズをS[nm]とし、前記画素の前記外周における前記ナノコラムのサイズをS[nm]とした場合に、前記Sに対する前記Sの割合(S/S)が、1.5以上、6.0以下である、請求項3に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項5】
前記画素において、中心から外周に向かって、前記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に減少する、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項6】
前記画素の前記中心における前記ナノコラムのサイズをS[nm]とし、前記画素の前記外周における前記ナノコラムのサイズをS[nm]とした場合に、前記Sに対する前記Sの割合(S/S)が、0.4以上、0.8以下である、請求項5に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項7】
前記中心から前記外周に向かう方向において、隣り合う前記ナノコラムのサイズの差が、5nm以下である、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項8】
前記ナノコラムが、GaNの柱状結晶である、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項9】
前記発光層が、InGaNを含む、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【請求項10】
前記画素の一部が発光領域であり、前記発光領域は前記中心を含む、請求項1または請求項2に記載の半導体光素子アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体光素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体は、発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子に有用な半導体材料として注目されている。発光素子は、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシ(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等の結晶成長技術を用いて、基板上にIII族窒化物半導体の積層構造を形成することで作製される。
【0003】
例えば特許文献1には、マスクパターンに配置された開口部を介して、半導体基板から成長したIII族窒化物半導体を含む微細柱状結晶を備える半導体光素子アレイが開示されている。この技術の一つの目的は、基板上に形成された微細柱状結晶の位置および形状を高精度に制御することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/023921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体光素子アレイは、例えば、発光素子に用いられる。発光素子の高性能化を図る観点から、半導体光素子アレイの光学特性の向上が望まれている。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な光学特性を有する半導体光素子アレイを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、半導体基板と、上記半導体基板の主面に配置され、開口部を有するマスク層と、上記半導体基板から上記開口部を介して厚さ方向に延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶であるナノコラムと、上記ナノコラムの先端に配置された発光層と、上記発光層を被覆し、半導体を含む被覆半導体層と、を有する半導体光素子アレイであって、上記半導体光素子アレイは、複数の上記ナノコラムを含む画素を有し、上記画素において、中心から外周に向かって、上記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少する、半導体光素子アレイを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示における半導体光素子アレイは、良好な光学特性を有するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示における半導体光素子アレイを例示する概略断面図である。
図2】本開示におけるマスク層およびナノコラムを例示する概略平面図である。
図3】本開示における画素を例示する概略平面図である。
図4】本開示における画素を例示する概略平面図である。
図5】本開示における画素を説明する説明図である。
図6】本開示における画素を説明する説明図である。
図7】本開示におけるナノコラムを例示する概略断面図である。
図8】本開示における画素を例示する概略平面図である。
図9】本開示における半導体光素子アレイを例示する概略斜視図である。
図10】本開示における半導体光素子アレイの製造方法を例示する概略斜視図である。
図11】比較例1および実施例1、2で用いた画素を説明する説明図である。
図12】比較例1および実施例1、2で得られた画素の発光スペクトルである。
図13】比較例2および実施例3、4で用いた画素を説明する説明図である。
図14】比較例2および実施例3、4で得られた画素の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における半導体光素子アレイについて詳細に説明する。以下に示す各図は、理解を容易にするため、各部の大きさ、形状を適宜誇張している。さらに、各図において、便宜上、ハッチングまたは符号を省略する場合がある。また、本開示において、「一の部材の面(主面)に他の部材が配置される」とは、一の部材の面(主面)に接するように他の部材が配置される場合と、一の部材の面(主面)の上方に別の部材を介して他の部材が配置される場合と、の両方を含む。
【0010】
図1は、本開示における半導体光素子アレイを例示する概略断面図である。図1に示す半導体光素子アレイ10は、半導体基板1、マスク層2、ナノコラム3、発光層4および被覆半導体層5を有する。半導体基板1は、下地基板1aおよび半導体層1bを有する。マスク層2は、半導体基板1(半導体層1b)の主面mに配置され、開口部2xを有する。ナノコラム3は、半導体基板1(半導体層1b)からマスク層2の開口部2xを介して厚さ方向Dに延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶である。発光層4は、ナノコラム3の先端に配置される。被覆半導体層5は、発光層4の少なくとも一部を被覆し、半導体を含む。
【0011】
図2は、本開示におけるマスク層およびナノコラムを例示する概略平面図である。図2(a)に示すように、マスク層2は、パターン状の開口部2xを有する。その開口部2xを介して、III族窒化物半導体の結晶をエピタキシャル成長させる。これにより、図1および図2(b)に示すようなナノコラム3が得られる。
【0012】
本開示における半導体光素子アレイは、複数のナノコラムを含む画素を有する。具体的に、複数のナノコラムがパターン状に配置されることで、一つの画素が構成される。各々のナノコラムには、通常、上述した発光層および被覆半導体層が配置されている。図3および図4は、それぞれ、本開示における画素を例示する概略平面図である。図3および図4に示すように、画素Pは、複数のナノコラム3を含む。図3に示す画素Pにおいては、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、連続的に増加している。一方、図4に示す画素Pにおいては、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、連続的に減少している。
【0013】
本開示によれば、複数のナノコラムを含む画素において、中心から外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少することにより、良好な光学特性を有する半導体光素子アレイとなる。ここで、特許文献1に記載されているように、発光層から放出される光の発光特性は、ナノコラムのサイズにより変化する。具体的に、発光層から放出される光のピーク波長は、ナノコラムのサイズが大きいほど長波長側にシフトし、ナノコラムのサイズが小さいほど短波長側にシフトする。
【0014】
そのため、サイズが不均一な複数のナノコラムを含む画素は、サイズが均一な複数のナノコラムを含む画素に比べて、単色性が劣ることが想定される。ところが、画素の中心から画素の外周に向かってナノコラムのサイズを変化させたところ、画素の少なくとも中心付近では、単色性の低下が確認されなかった。さらに驚くことに、画素の中心から画素の外周に向かってナノコラムのサイズを変化させたところ、画素の少なくとも中心付近では、発光強度の向上が確認された。その理由は完全には明らかではないが、画素の外周付近に配置されたナノコラムが、レンズまたは反射板のような機能を発揮することで、画素の中心付近において、光の取り出し効率が向上したためであると推測される。
【0015】
1.画素
本開示における画素は、複数のナノコラムを含む。ナノコラムの詳細については、後述する「2.ナノコラム」で説明する。また、本開示においては、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少する。
【0016】
本開示において、画素の中心とは、画素を厚さ方向に沿って平面視した平面視形状の重心点をいう。一方、画素の外周とは、画素を厚さ方向に沿って平面視した平面視形状の外周をいう。また、「ナノコラムのサイズ」とは、ナノコラムの柱状部(後述する図7で例示する柱状部3a)のサイズをいう。柱状部のサイズとは、柱状部を厚さ方向に沿って平面視した平面視形状の重心点(中心)を通り、かつ、柱状部と2点で交差する直線のうち、交点間の距離が最も長い直線の長さをいう。
【0017】
画素の中心におけるナノコラムのサイズは、例えば、10nm以上、1000nm以下である。「画素の中心におけるナノコラム」とは、画素を厚さ方向に沿って平面視した場合に、画素の中心にナノコラムが存在する場合は、そのナノコラムをいい、画素の中心にナノコラムが存在しない場合は、画素の中心から最も近いナノコラムをいう。ナノコラムのサイズは、例えば、700nm以下であってもよく、650nm以下であってもよく、600nm以下であってもよい。ナノコラムのサイズを700nm以下にすることで、貫通転位の発生を抑制しやすくなる。
【0018】
本開示においては、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加していてもよい。この場合を、図5を用いて説明する。図5(a)に示す画素Pでは、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、連続的に増加している。また、図5(a)に示す画素Pでは、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、同心円状に変化している。図5(b)に示すように、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラムのサイズは、直線的に増加していてもよい。一方、特に、図示しないが、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラムのサイズは、曲線的(例えばn次関数的)に増加していてもよい。
【0019】
図5(c)は、画素の中心付近におけるナノコラム3を示しており、図5(d)は、画素の外周付近におけるナノコラム3を示している。画素の中心におけるナノコラムのサイズをSとし、画素の外周におけるナノコラムのサイズをSとする。「画素の中心におけるナノコラム」については、上述した通りである。一方、「画素の外周におけるナノコラム」とは、画素を厚さ方向に沿って平面視した場合に、画素の外周を構成するナノコラムをいう。
【0020】
は、例えば10nm以上であり、20nm以上であってもよく、30nm以上であってもよい。一方、Sは、例えば300nm以下であり、200nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。また、Sは、Sより大きければ特に限定されないが、例えば20nm以上であり、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。一方、Sは、例えば1000nm以下であり、500nm以下であってもよく、300nm以下であってもよい。また、Sに対する上記Sの割合(S/S)は、例えば1.5以上、6.0以下であり、2.0以上、4.0以下であってもよい。
【0021】
また、本開示においては、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的に増加していてもよい。この場合、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、2段階以上で増加してもよく、5段階以上で増加してもよく、10段階以上で増加してもよい。
【0022】
一方、本開示においては、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に減少していてもよい。この場合を、図6を用いて説明する。図6(a)に示す画素Pでは、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、連続的に減少している。また、図6(a)に示す画素Pでは、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラム3のサイズが、同心円状に変化している。図6(b)に示すように、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラムのサイズは、直線的に減少していてもよい。一方、特に、図示しないが、中心Cから外周Xに向かって、ナノコラムのサイズは、曲線的(例えばn次関数的)に減少していてもよい。
【0023】
図6(c)は、画素の中心付近におけるナノコラム3を示しており、図6(d)は、画素の外周付近におけるナノコラム3を示している。画素の中心におけるナノコラムのサイズをSとし、画素の外周におけるナノコラムのサイズをSとする。「画素の中心におけるナノコラム」および「画素の外周におけるナノコラム」については、上述した通りである。
【0024】
は、例えば100nm以上であり、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。一方、Sは、例えば1000nm以下であり、500nm以下であってもよく、400nm以下であってもよい。また、Sは、Sより小さければ特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよい。一方、Sは、例えば300nm以下であり、250nm以下であってもよい。また、Sに対する上記Sの割合(S/S)は、例えば0.4以上、0.8以下であり、0.45以上、0.6以下であってもよい。
【0025】
また、本開示においては、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、段階的に減少していてもよい。この場合、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、2段階以上で減少してもよく、5段階以上で減少してもよく、10段階以上で減少してもよい。
【0026】
画素の中心から画素の外周に向かう方向において、隣り合うナノコラムのサイズの差は、例えば5nm以下であり、3nm以下であってもよく、1nm以下であってもよい。画素の中心から画素の外周までの距離をLとした場合、画素の中心から1/2Lまでの領域において、隣り合うナノコラムのサイズの差が、いずれも上記範囲内にあってもよい。同様に、画素の中心から3/4Lまでの領域において、隣り合うナノコラムのサイズの差が、いずれも上記範囲内にあってもよい。なお、画素の中心から画素の外周に向かって、ナノコラムのサイズが、連続的に変化する場合、隣り合うナノコラムのサイズの差は、通常、0より大きい。
【0027】
ナノコラムの配列は、特に限定されないが、例えば、三角格子状に配置されていてもよく、正方格子状に配列されていてもよい。上述した図2においては、マスク層2の開口部2xが、三角格子状に配置されており、開口部2xから成長するナノコラム3も、三角格子状に配置される。また、図5(c)に示すように、隣り合うナノコラムの中心間の距離をピッチと称する。上記ピッチは、例えば200nm以上であり、300nm以上であってもよい。一方、上記ピッチは、例えば600nm以下であり、500nm以下であってもよい。また、隣り合うナノコラムは、通常、互いに接触しないように配置されている。隣り合うナノコラムの隙間は、例えば1nm以上であることが好ましい。画素におけるナノコラムのピッチは、同一であってもよく、異なっていてもよい。ピッチが同一であるとは、画素におけるナノコラムのピッチの最大値と最小値との差が、5nm以下であることをいう。一方、ピッチが異なるとは、画素におけるナノコラムのピッチの最大値と最小値との差が、5nmより大きいことをいう。
【0028】
本開示における画素の平面視形状は、特に限定されないが、三角形状、四角形状(例えば、正方形状、長方形状、菱形形状)、六角形状等の多角形が挙げられる。画素のサイズは、例えば10μm以上であり、50μm以上であってもよい。一方、画素のサイズは、例えば500μm以下であり、100μm以下であってもよい。本開示において、「画素のサイズ」とは、画素を厚さ方向に沿って平面視した平面視形状の重心点(中心)を通り、かつ、画素と2点で交差する直線のうち、交点間の距離が最も長い直線の長さをいう。
【0029】
2.ナノコラム
本開示におけるナノコラムは、半導体基板からマスク層の開口部を介して厚さ方向に延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶である。ナノコラムは、III族窒化物半導体の単結晶から構成されていてもよい。ナノコラムにおける結晶欠陥は少ないことが好ましい。
【0030】
III族窒化物半導体は、III族元素およびN元素を含有する。III族窒化物半導体の典型例としては、窒化ガリウム(GaN)が挙げられる。また、III族窒化物半導体の他の例としては、一般式:AlGaIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される材料が挙げられる。xは0より大きくてもよい。xは1より小さくてもよい。yは0より大きくてもよい。yは1より小さくてもよい。x+yは0より大きく、1より小さくてもよい。上記一般式で表されるIII族窒化物半導体は、室温におけるバンドギャップが、0.63eV以上、6.2eV以下であることが好ましい。また、III族窒化物半導体の他の例としては、ボロン窒化物が挙げられる。また、製造安定性の観点から、III族窒化物半導体は、結晶構造が六方晶である材料であることが好ましい。
【0031】
ナノコラムは、柱状部と、柱状部の先端側(半導体基板とは反対側)に位置するファセット構造部とを有していてもよい。ファセット構造部とは、厚さ方向に垂直な方向に対して、斜めに位置するファセット面を側面とする多面体構造をいう。柱状部の形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、四角柱形状、六角柱形状が挙げられる。
【0032】
例えば、ウルツ鉱型結晶構造のIII族窒化物半導体を、c面(=(0001)面、極性面)の方向に成長させてナノコラムを形成した場合、ナノコラムの平面視形状は、図2(b)に示されるように六角形状となる。図7(a)、(b)は、ナノコラムを中心軸に沿って切断した場合の断面を示す概略断面図である。図7(a)、(b)に示すナノコラム3は、いずれも、柱状部3aと、柱状部3aの先端側(半導体基板とは反対側)に位置するファセット構造部3bとを有している。
【0033】
図7(a)に示すファセット構造部3bは、ファセット面31(ウルツ鉱型結晶構造の半極性面)を有しており、その形状は六角錐形状である。半極性面としては、例えば(10-1-1)面、(10-1-3)面、(11-22)面、(11-24)面、(10-12)面が挙げられる。一方、図7(b)に示すファセット構造部3bは、ファセット面31(ウルツ鉱型結晶構造の半極性面)を有し、さらに、厚さ方向に垂直な方向に平行な平坦面32(ウルツ鉱型結晶構造の極性面)を有している。結晶の成長条件に応じて、例えば、図7(a)または図7(b)に示すファセット構造部が形成される。
【0034】
ナノコラムのサイズが小さい場合、図7(a)に示す六角錐形状を有するファセット構造部が形成されやすく、ナノコラムのサイズが大きい場合、図7(b)に示すようなファセット構造部が形成されやすい。結晶の成長条件にもよるが、ナノコラムのサイズを約300nm以上にすると、図7(b)に示すような平坦面(極性面)が出現しやすくなる。また、ナノコラムのサイズが約300nmを超えて大きくなるほど、平坦面(極性面)の面積は増加する傾向にある。
【0035】
ナノコラムの高さは、特に限定されないが、例えば200nm以上であり、500nm以上であってもよい。一方、ナノコラムの高さは、例えば5μm以下である。ナノコラムの高さは、マスク層2の半導体基板とは反対側の表面から、ナノコラムの先端までの距離(厚さ方向における距離)をいう。
【0036】
3.発光層
本開示における発光層は、ナノコラムの先端に配置される。すなわち、発光層は、半導体基板とは反対側の面に配置される。発光層は、ナノコラムのファセット構造部を覆うように設けられていることが好ましい。
【0037】
発光層は、多重量子井戸(MQW)構造または単一量子井戸(SQW)構造を有することが好ましい。量子井戸構造とは、量子井戸層と、この量子井戸層を挟み込む障壁層とを含む構造をいう。障壁層のバンドギャップは、通常、量子井戸層のバンドギャップより大きい。発光層としては、例えば、InGaN、GaN、AlGaN、AlInGaN、InGaAsN、InNが挙げられる。より具体的に、発光層は、例えば、InGaN/GaN(障壁層:InGaN、井戸層:GaN)、InGa1-xN/InGa1-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)、GaN/AlGaN(障壁層:AlGaN、井戸層:GaN)、および、AlGa1-xN/AlGa1-yN(0≦x≦1,0≦y≦1)が挙げられる。
【0038】
発光層から放出される光のピーク波長は、発光層が形成される直前のナノコラムのサイズに依存する。具体的に、発光層から放出される光のピーク波長は、ナノコラムのサイズが大きいほど長波長側にシフトし、ナノコラムのサイズが小さいほど短波長側にシフトする。すなわち、発光層から放出される光のピーク波長は、ナノコラムのサイズに基づいて制御可能である。ナノコラムのサイズは、マスク層における開口部のサイズに基づいて制御可能である。
【0039】
発光層から放出される光のピーク波長は、ナノコラムのファセット構造部の表面積に依存する。具体的に、発光層から放出される光のピーク波長は、ファセット構造部の表面積が大きいほど長波長側にシフトし、ファセット構造部の表面積が小さいほど短波長側にシフトする。すなわち、発光層から放出される光のピーク波長は、ナノコラムのファセット構造部の表面積に基づいて制御可能である。
【0040】
4.被覆半導体層
本開示における被覆半導体層は、発光層を被覆し、半導体を含む層である。被覆半導体層は、半導体の結晶を含むことが好ましく、III族窒化物半導体の結晶を含むことがより好ましい。被覆半導体層は、III族窒化物半導体の単結晶から構成されていてもよい。被覆半導体層における結晶欠陥は少ないことが好ましい。III族窒化物半導体については、上記「2.ナノコラム」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0041】
被覆半導体層5は、発光層4の少なくとも一部を被覆していればよい。中でも、被覆半導体層5は、厚さ方向に沿った平面視において、発光層4の全周を包含するように、発光層4を被覆していることが好ましい。より良好な光学特性が得られるからである。また、図1に示すように、被覆半導体層5は、発光層4を完全に被覆していてもよい。すなわち、発光層4が外部空間への露出部を有しないように、被覆半導体層5は発光層4を被覆していてもよい。露出部に起因する非発光再結合準位の形成が抑制されることで、高い内部量子効率が実現される。
【0042】
また、ナノコラムの導電型と、被覆半導体層の導電型とは、通常、逆の関係にある。ナノコラムの導電型がn型である場合、被覆半導体層の導電型は、通常、p型である。この場合、ナノコラムから供給される電子と、被覆半導体層から供給される正孔と、が結合することで、発光層が発光する。一方、ナノコラムの導電型がp型である場合、被覆半導体層の導電型は、通常、n型である。
【0043】
5.半導体基板
本開示における半導体基板は、ナノコラムを支持する。また、半導体基板は、例えば、下地基板および半導体層を有する。下地基板としては、例えば、サファイア基板、シリコン基板、SiC基板が挙げられる。
【0044】
半導体層は、半導体として、III族窒化物半導体を含むことが好ましい。半導体層は、III族窒化物半導体の単結晶から構成されていてもよい。半導体層における結晶欠陥は少ないことが好ましい。III族窒化物半導体については、上記「2.ナノコラム」に記載した内容と同様である。半導体層におけるIII族窒化物半導体と、ナノコラムにおけるIII族窒化物半導体とは、組成が同一であってもよい。
【0045】
図1に示すように、半導体層1bは、厚さ方向Dに沿った平面視において、マスク層2の開口部2xと少なくとも重複する位置に、凹部1xを有していてもよい。凹部1xの深さは、特に限定されないが、例えば、1nm以上250nm以下である。
【0046】
下地基板および半導体層の間には、バッファ層が配置されていてもよい。バッファ層を設けることで、半導体層の結晶品質(例えば層表面の平坦性)が向上する。バッファ層としては、例えば、窒化ガリウムおよび窒化アルミニウム等のIII族窒化物半導体が挙げられる。また、半導体基板は、下地基板を有しなくてもよい。すなわち、半導体基板は、自立可能な半導体層(例えばGaN基板)であってもよい。
【0047】
6.マスク層
本開示におけるマスク層は、開口部を有する。開口部の平面視形状としては、例えば、正方形状、円形状、多角形状が挙げられる。開口部の平面視形状は、軸対称であることが好ましい。開口部のパターンを調整することにより、ナノコラムの疎密を制御できる。同様に、開口部のサイズを調整することにより、ナノコラムのサイズを制御できる。開口部のパターンおよびサイズは、上述したナノコラムが得られるように調整する。
【0048】
マスク層は、金属を含む金属マスク層であることが好ましい。金属マスク層に含まれる金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、コバルト(Co)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)が挙げられる。金属マスク層は、金属元素を1種のみ含有していてもよく、金属元素を2種以上含有していてもよい。金属マスク層は、Tiを少なくとも含有することが好ましい。金属マスク層は、表面に酸化物を有する層であってもよく、金属酸化物層であってもよい。マスク層の厚さは、特に限定されないが、例えば、2nm以上100nm以下である。
【0049】
7.半導体光素子アレイ
本開示における半導体光素子アレイは、画素の全部が発光領域であってもよく、画素の一部が発光領域であってもよい。例えば図8に示す画素Pは、一部が発光領域αである。発光領域αは、画素Pの中心Cを含むことが好ましい。また、発光領域の平面視形状としては、例えば、正方形状、円形状、多角形状が挙げられる。発光領域の平面視形状は、軸対称であってもよい。また、発光領域の平面視形状は、画素の相似形であってもよく、相似形でなくてもよい。
【0050】
発光領域のサイズは、例えば5μm以上であり、50μm以上であってもよい。一方、発光領域のサイズは、例えば300μm以下であり、100μm以下であってもよい。本開示において、「発光領域のサイズ」とは、発光領域を厚さ方向に沿って平面視した平面視形状の重心点(中心)を通り、かつ、発光領域と2点で交差する直線のうち、交点間の距離が最も長い直線の長さをいう。
【0051】
画素の一部が発光領域である場合、画素に占める発光領域の面積割合は、例えば5%以上であり、10%以上であってもよい。一方、上記面積割合は、例えば80%以下であり、60%以下であってもよい。また、発光領域の形成方法としては、例えば、被覆半導体層と電気的に接続される電極の形状を調整する方法が挙げられる。
【0052】
発光領域における発光スペクトルは、例えば、430nm以上500nm未満の位置にピーク波長を有していてもよい。この場合、青系の発光が得られる。なお、ピーク波長とは、発光スペクトルにおいて最も高い発光強度が得られる波長をいう。また、発光領域における発光スペクトルは、例えば、500nm以上580nm未満の位置にピーク波長を有していてもよい。この場合、緑系の発光が得られる。また、発光領域における発光スペクトルは、例えば、580nm以上780nm未満の位置にピーク波長を有していてもよい。この場合、赤系の発光が得られる。
【0053】
発光領域における発光スペクトルは、380nm以上780nm以下の可視光領域で観察されるピークの数が、2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、380nm以上780nm以下の可視光領域で観察されるピークの数が2以上である場合、最も高い発光強度は、2番目に高い発光強度の2倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
【0054】
また、発光領域における全てのナノコラムのサイズを、画素の中心におけるナノコラムのサイズに変更した発光領域を、比較用発光領域と定義する。この場合、発光領域におけるピーク波長の発光強度は、比較用発光領域におけるピーク波長の発光強度より大きいことが好ましい。
【0055】
本開示における半導体光素子アレイは、複数の画素を有することが好ましい。例えば図9に示すように、半導体光素子アレイは、複数の画素(P、P、P)を有することが好ましい。本開示におけるナノコラムの発光特性は、そのサイズにより変化する。そのため、例えばナノコラムのサイズを調整することにより、画素P、P、Pを、それぞれ、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3原色の波長の光をそれぞれ放出する画素にすることができる。
【0056】
本開示における半導体光素子アレイの用途は、特に限定されない。半導体光素子アレイの用途としては、例えば、発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子が挙げられる。
【0057】
本開示における半導体光素子アレイの製造方法は、特に限定されない。図10は、本開示における半導体光素子アレイの製造方法を例示する概略斜視図である。図10に示す半導体光素子アレイの製造方法においては、まず、下地基板1aを準備する(図10(a))。次に、MOCVD法またはMBE法により、低温条件で、下地基板1a上にIII族窒化物半導体を含むバッファ層(図示せず)を形成し、高温状態で、バッファ層上にIII族窒化物半導体の結晶を成長させ、半導体層1bを形成する(図10(b))。これにより、下地基板1aおよび半導体層1bを有する半導体基板1が得られる。
【0058】
その後、真空蒸着法により、半導体層1bの主面上に、チタン(Ti)を含むマスク層2を形成する(図10(c))。次に、マスク層2上に、レジスト層6を形成し、電子線描画および現像を行い、開口部6xを形成する(図10(d))。この際、開口部6xの描画パターンを、上述した画素が得られるように設定する。次に、開口部6xから露出するマスク層2をエッチングにより除去し、開口部2xを形成する(図10(e))。この際、マスク層2のみならず、半導体層1bもエッチングされると、図1に示すような凹部1xが形成される。
【0059】
その後、MOCVD法またはMBE法により、半導体層1bから、開口部2xを介して、III族窒化物半導体の結晶を成長させる。これにより、ナノコラム3が形成される(図10(f))。この際、発光層4および被覆半導体層5を連続的に形成してもよい。例えばMBE法を用いてナノコラムを形成する場合、高周波プラズマ励起により生成された活性窒素と、III族金属とを含む原料ガスを、半導体層上に導入して、III族窒化物半導体の結晶を成長させる。結晶成長温度は、例えば、350℃以上、1200℃以下である。例えばGaN結晶を成長させる場合、結晶成長温度は、400℃以上1000℃以下であることが好ましい。また、III族窒化物半導体の結晶が成長する際、厚さ方向に成長すると同時に、厚さ方向に直交する方向(面内方向)にも成長する場合がある。その場合、図1に示すように、ナノコラム3のサイズは、通常、開口部2xのサイズおよび凹部1xのサイズよりも大きくなる。このようにして、図10(f)に示すように、半導体光素子アレイ10が得られる。その後、図10(g)に示すように、被覆半導体層5およびマスク層2に、それぞれ、電極11を配置してもよい。
【0060】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0061】
[比較例1]
サファイア基板(下地基板)の(0001)面上に、GaNをMOCVD法で成長させ、GaN層(半導体層、厚さ:約3.5μm)を形成した。次に、GaN層上に、真空蒸着法により、チタン薄膜(マスク層、厚さ:約5nm)を成膜した。次に、チタン薄膜上に、レジスト層を形成し、電子線描画を行い、現像を行うことで、開口部を有するレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンの開口部から露出するマスク層をエッチングで除去し、マスク層にパターン状の開口部を形成した。次に、レジストパターンを剥離した。
【0062】
その後、RF MBE法により、900℃の温度条件下で、半導体基板からマスク層の開口部を介して、GaN柱状結晶を成長させ、ナノコラム(高さ:2.5μm)を形成した。これにより、図11(a)および下記に示す画素を得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ:150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:350nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:60nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:60nm
【0063】
続けて、ナノコラムの先端に、InGaN膜(厚さ:1nm)を含む多重量子井戸構造を有する発光層を形成した。続けて、発光層上にGaN結晶を成長させ、被覆半導体層(厚さ:10nm)を形成した。これにより、半導体光素子アレイを得た。
【0064】
また、上記と同様の操作を行い、ナノコラムを形成した段階で、ナノコラムを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を、図11(b)および図11(c)に示す。図11(b)および図11(c)に示すように、画素の中心におけるナノコラムのサイズと、画素の外周におけるナノコラムのサイズとは、同一であった。
【0065】
[実施例1]
図11(d)および下記に示す画素を形成した変更したこと以外は、比較例1と同様にして半導体光素子アレイを得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ(対向する角の間の最大長さ):150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:350nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:60nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:100nm
【0066】
ナノコラムをSEM観察した結果を、図11(e)および図11(f)に示す。図11(e)および図11(f)に示すように、画素において、中心から外周に向かって、ナノコラムのサイズが、連続的に増加していた。
【0067】
[実施例2]
図11(g)および下記に示す画素を形成したこと以外は、比較例1と同様にして半導体光素子アレイを得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ(対向する角の間の最大長さ):150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:350nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:60nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:350nm
【0068】
ナノコラムをSEM観察した結果を、図11(h)および図11(i)に示す。図11(h)および図11(i)に示すように、画素において、中心から外周に向かって、ナノコラムのサイズが、連続的に増加していた。
【0069】
[評価]
比較例1および実施例1、2と同様の操作を行い、発光層を形成した段階で、発光層に対してレーザー照射を行い、発光強度を測定した。測定領域は、図11(a)、(d)、(g)における黒丸で示すように、画素の中心を含む直径30μmの領域とした。その結果を図12に示す。図12に示すように、実施例1、2では、比較例1に比べて高い発光強度が得られた。より具体的に、測定領域の周辺のナノコラムのサイズを大きくすることで、測定領域のナノコラムのサイズを大きくすることなく、高い発光強度が得られることが確認された。
【0070】
また、実施例1では、測定領域の中心におけるナノコラムのサイズが50nmであり、測定領域の外周におけるナノコラムのサイズが60nmであった。測定領域に占めるナノコラムの面積を比較すると、実施例1は、比較例1に比べて1.21倍になった。実施例2では、測定領域の中心におけるナノコラムのサイズが50nmであり、測定領域の外周におけるナノコラムのサイズが100nmであった。測定領域に占めるナノコラムの面積を比較すると、実施例2は、比較例1に比べて2.25倍になった。これらの増加率は、図12に示す発光強度の増加量よりも少ないことから、実施例1、2では、面積の増加以外の要因で、発光強度が向上していることが確認された。
【0071】
また、図12に示すピークの半値幅を測定したところ、比較例1は82nmであり、実施例1は47.6nmであり、実施例2は55.4nmであった。実施例1、2では、測定領域の領域内でもナノコラムのサイズを変化させているため、半値幅の増加(単色性の低下)が予想されたが、意外にも、半値幅が低下(単色性が向上)することが確認された。
【0072】
[比較例2]
図13(a)および下記に示す画素を形成したこと以外は、比較例1と同様にして半導体光素子アレイを得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ(対向する角の間の最大長さ):150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:450nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:200nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:200nm
【0073】
ナノコラムをSEM観察した結果を、図13(b)および図13(c)に示す。図13(b)および図13(c)に示すように、画素の中心におけるナノコラムのサイズと、画素の外周におけるナノコラムのサイズとは、同一であった。
【0074】
[実施例3]
図13(d)および下記に示す画素を形成したこと以外は、比較例1と同様にして半導体光素子アレイを得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ(対向する角の間の最大長さ):150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:450nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:200nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:150nm
【0075】
ナノコラムをSEM観察した結果を、図13(e)および図13(f)に示す。図13(e)および図13(f)に示すように、画素において、中心から外周に向かって、ナノコラムのサイズが、連続的に減少していた。
【0076】
[実施例4]
図13(g)および下記に示す画素を形成したこと以外は、比較例1と同様にして半導体光素子アレイを得た。
・画素の平面視形状:六角形状
・画素サイズ(対向する角の間の最大長さ):150μm
・隣り合うナノコラムの中心間のピッチ:450nm
・画素の中心におけるナノコラムのサイズ:200nm
・画素の外周におけるナノコラムのサイズ:100nm
【0077】
ナノコラムをSEM観察した結果を、図13(h)および図13(i)に示す。図13(h)および図13(i)に示すように、画素において、中心から外周に向かって、ナノコラムのサイズが、連続的に減少していた。
【0078】
[評価]
比較例2および実施例3、4と同様の操作を行い、発光層を形成した段階で、発光層に対してレーザー照射を行い、上記と同様にして発光強度を測定した。その結果を図14に示す。図14に示すように、実施例3、4では、比較例2に比べて高い発光強度が得られた。また、図14に示すピークの半値幅を測定したところ、比較例2は61.2nmであり、実施例3は57.5nmであり、実施例4は53.9nmであった。
【0079】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0080】
[1]
半導体基板と、
上記半導体基板の主面に配置され、開口部を有するマスク層と、
上記半導体基板から上記開口部を介して厚さ方向に延在し、III族窒化物半導体の柱状結晶であるナノコラムと、
上記ナノコラムの先端に配置された発光層と、
上記発光層を被覆し、半導体を含む被覆半導体層と、
を有する半導体光素子アレイであって、
上記半導体光素子アレイは、複数の上記ナノコラムを含む画素を有し、
上記画素において、中心から外周に向かって、上記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加するか、段階的または連続的に減少する、半導体光素子アレイ。
【0081】
[2]
上記画素の上記中心における上記ナノコラムのサイズが、10nm以上、1000nm以下である、[1]に記載の半導体光素子アレイ。
【0082】
[3]
上記画素において、中心から外周に向かって、上記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に増加する、[1]または[2]に記載の半導体光素子アレイ。
【0083】
[4]
上記画素の上記中心における上記ナノコラムのサイズをS[nm]とし、上記画素の上記外周における上記ナノコラムのサイズをS[nm]とした場合に、上記Sに対する上記Sの割合(S/S)が、1.5以上、6.0以下である、[3]に記載の半導体光素子アレイ。
【0084】
[5]
上記画素において、中心から外周に向かって、上記ナノコラムのサイズが、段階的または連続的に減少する、[1]または[2]に記載の半導体光素子アレイ。
【0085】
[6]
上記画素の上記中心における上記ナノコラムのサイズをS[nm]とし、上記画素の上記外周における上記ナノコラムのサイズをS[nm]とした場合に、上記Sに対する上記Sの割合(S/S)が、0.4以上、0.8以下である、[5]に記載の半導体光素子アレイ。
【0086】
[7]
上記中心から上記外周に向かう方向において、隣り合う上記ナノコラムのサイズの差が、5nm以下である、[1]から[6]までのいずれかに記載の半導体光素子アレイ。
【0087】
[8]
上記ナノコラムが、GaNの柱状結晶である、[1]から[7]までのいずれかに記載の半導体光素子アレイ。
【0088】
[9]
上記発光層が、InGaNを含む、[1]から[8]までのいずれかに記載の半導体光素子アレイ。
【0089】
[10]
上記画素の一部が発光領域であり、上記発光領域は上記中心を含む、[1]から[9]までのいずれかに記載の半導体光素子アレイ。
【符号の説明】
【0090】
1 … 半導体基板
1a … 下地基板
1b … 半導体層
2 … マスク層
3 … ナノコラム
4 … 発光層
5 … 被覆半導体層
10 … 半導体光素子アレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14