(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020860
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート工法用タイル、プレキャストコンクリート部材、及びプレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/14 20060101AFI20240207BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240207BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E04F13/14 103E
E04F13/14 103F
E04F13/08 101V
E04C2/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123375
(22)【出願日】2022-08-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】313007781
【氏名又は名称】有限会社南共プロセス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜徳
【テーマコード(参考)】
2E110
2E162
【Fターム(参考)】
2E110AA47
2E110AA50
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BA13
2E110BB07
2E110BC15
2E110CA04
2E110CC03
2E110CC14
2E110CC25
2E110DA12
2E110DA16
2E110DC24
2E110DC25
2E110DC36
2E110EA09
2E110GA29Z
2E110GA33X
2E110GA34W
2E110GA44Z
2E110GB03Z
2E110GB23X
2E110GB26W
2E110GB28W
2E110GB54Z
2E162AA01
2E162AA03
2E162BB06
2E162CA08
2E162CA10
2E162CA11
2E162DA10
(57)【要約】
【課題】タイルとシアコネクタとの接続強度を向上させることができるプレキャストコンクリート工法用タイルを提供する。
【解決手段】シアコネクタ(20)の2つの丸棒状の係止部(23)がそれぞれ挿入される2つの係止穴(32)が裏面(31a)に形成されたプレキャストコンクリート工法用タイル(30)であって、2つの係止穴は、裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して係止穴の底側ほど互いに近付くように延びており、2つの係止穴の内部には、係止穴の内面を覆うように、係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層(40)がそれぞれ形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴が裏面に形成されたプレキャストコンクリート工法用タイルであって、
前記2つの係止穴は、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように延びており、
前記2つの係止穴の内部には、前記係止穴の内面を覆うように、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層がそれぞれ形成されている、プレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項2】
前記2つの係止穴は、前記プレキャストコンクリート工法用タイルの厚みの2/3を超えた位置まで到達している、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項3】
前記係止穴の内径は6.0[mm]であり、
前記有底円筒状のエポキシ樹脂層の内径は4.8[mm]である、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項4】
前記所定角度は40[°]である、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項5】
前記裏面には、貫通孔が形成された2つの金属製の板材が、それぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように接着されており、
前記貫通孔は、前記板材の中央から他方の前記板材と反対側に偏っている、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項6】
前記板材は、前記有底円筒状のエポキシ樹脂層と一体のエポキシ樹脂層により前記裏面に接着されている、請求項5に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項7】
前記板材には、前記貫通孔と異なる位置に前記貫通孔よりも小さい孔が形成されている、請求項6に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート工法用タイルと、
2つの丸棒状の係止部を備え、前記2つの係止穴に前記2つの係止部がそれぞれ挿入されたシアコネクタと、
前記プレキャストコンクリート工法用タイルと接続され、前記シアコネクタが埋め込まれているコンクリート部と、
を備えるプレキャストコンクリート部材。
【請求項9】
プレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法であって、
タイルの裏面に、シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴を、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように形成する工程と、
前記2つの係止穴の内部にエポキシ樹脂を注入する工程と、
注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記エポキシ樹脂を、前記係止穴の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削して、前記2つの係止穴の内部に、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層をそれぞれ形成する工程と、
を備えるプレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法。
【請求項10】
注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程の前に、
前記裏面において前記係止穴の周辺にエポキシ樹脂を塗布する工程と、
貫通孔が形成された2つの金属製の板材がそれぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように、塗布された前記エポキシ樹脂に前記板材を密着させる工程と、
を備える、請求項9に記載のプレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート工法(PC工法)に用いられるタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC工法に用いられるシアコネクタは、ステンレス等の線材により形成され、中央に湾曲部を有し、2つの腕部が略90°をなすように湾曲部の各端部に接続され、2つの腕部の端部が略90°に折り曲げられて係止部が形成されている。石材の裏面には、シアコネクタの2つの係止部の間隔だけ離れた位置に、2つの係止穴が形成されている。2つの係止穴は、石材の裏面に対して略45°の角度で互いに対向して係止穴の底側ほど互いに近付くように延びている。シアコネクタの2つの係止部が、2つの係止穴にそれぞれ根元まで挿入される。そして、石材の裏面が上を向くように、プレキャストコンクリート部材(PC部材)の型枠に石材が配置され、型枠内にコンクリートが打設されて石先付けPC部材が製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、大判のタイル(例えば1200[mm]×600[mm])を製造することが可能となり、タイルのデザイン性も向上していることから、石材の代わりにタイルを用いたPC部材の実用化が望まれている。タイルは石材よりも薄くしやすく、軽量化及び低コスト化に有利である。しかし、石材(例えば厚み30[mm])よりも薄いタイル(例えば厚み10[mm])を用いる場合、シアコネクタの係止部を挿入する係止穴の深さを十分に確保することができず、タイルとシアコネクタとの接続強度が低下するおそれがある。このため、地震時に、タイルの係止穴からシアコネクタの係止部が抜けたり、タイルの係止穴周辺部が破損したりして、コンクリートからタイルが脱落するおそれがあり、タイルを用いたPC部材の実用化は困難となっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、タイルとシアコネクタとの接続強度を向上させることができるプレキャストコンクリート工法用タイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴が裏面に形成されたプレキャストコンクリート工法用タイルであって、
前記2つの係止穴は、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように延びており、
前記2つの係止穴の内部には、前記係止穴の内面を覆うように、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層がそれぞれ形成されている。
【0007】
上記構成によれば、プレキャストコンクリート工法(PC工法)用タイルの裏面には、シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴が形成されている。
【0008】
一般に、PC工法用石材では、2つの係止穴は、石材の裏面に対して略45°の角度で互いに対向して係止穴の底側ほど互いに近付くように延びている。これに対して、上記PC工法用タイルでは、前記2つの係止穴は、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように延びている。すなわち、タイルの裏面に対する係止穴の角度が、石材の裏面に対する係止穴の一般の角度よりも小さくなっている。このため、タイルの係止穴にシアコネクタの係止部を挿入した状態で、タイルの裏面に垂直な方向にシアコネクタを引く力が作用した場合に、係止穴から係止部が抜けにくくすることができる。さらに、タイルが石材よりも薄い場合であっても、係止穴の深さ(係止穴の中心軸方向の長さ)を深く(長く)しやすくなる。このため、シアコネクタの係止部において係止穴に挿入される部分の長さを長くしやすくなり、係止穴の内面と係止部の外面との対向面積を大きくしやすくなる。
【0009】
ここで、前記2つの係止穴の内部には、前記係止穴の内面を覆うように、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層がそれぞれ形成されている。このため、タイルの係止穴にシアコネクタの係止部を挿入した場合に、係止穴の内面と係止部の外面との間にエポキシ樹脂層を介在させることができる。したがって、タイルの裏面に垂直な方向にシアコネクタを引く力が作用した場合に、エポキシ樹脂層が係止部の外面から係止穴の内面に作用する力を分散させる緩衝層として機能するようになる。これにより、係止穴の内面と係止部の外面との対向面積を大きくしやすくなる上記効果と併せて、係止穴の内面の一部に力が集中することを抑制することができ、タイルの係止穴周辺部が破損することを抑制することができる。
【0010】
よって、上記PC工法用タイルにシアコネクタを接続した場合に、タイルとシアコネクタとの接続強度を向上させることができ、ひいてはプレキャストコンクリート部材(PC部材)においてコンクリート部とタイルとの接続強度を向上させることができる。さらに、係止穴の加工誤差等により、係止穴の深さがシアコネクタの係止部において係止穴に挿入される部分の長さよりも深くなった場合であっても、有底円筒状のエポキシ樹脂層の底部により係止穴の底部を埋めて補強することができる。このため、タイルの厚みに対する係止穴の深さの割合が意図したよりも高くなった場合であっても、タイル自体の強度が低下することを抑制することができる。
【0011】
なお、石材の係止穴にシアコネクタの係止部を挿入した後に、係止穴に液状のエポキシ樹脂を注入して硬化させた場合は、係止穴の内面と係止部の外面とが直接接触する部分が生じる。このため、係止穴の内面を覆うように有底円筒状のエポキシ樹脂層を形成することができず、係止部の外面から係止穴の内面に作用する力を分散させる緩衝層をエポキシ樹脂層により形成することはできない。したがって、係止穴の内面と係止部の外面とが直接接触する部分に力が集中することとなり、タイルの係止穴周辺部が破損することを抑制することができない。さらに、石材の係止穴にシアコネクタの係止部を挿入した後に、係止穴に液状のエポキシ樹脂を注入する場合は、係止穴の底部までエポキシ樹脂を注入することが困難である。このため、有底円筒状のエポキシ樹脂層を形成することは困難であり、エポキシ樹脂層の底部により係止穴の底部を埋めて補強することができない。また、上記PC工法用タイルによれば、エポキシ樹脂層の形成はタイルを加工(製造)する業者が行うことができるため、PC部材を製造する業者がエポキシ樹脂を注入及び硬化させる手間を減らすことができる。
【0012】
第2の手段では、前記2つの係止穴は、前記プレキャストコンクリート工法用タイルの厚みの2/3を超えた位置まで到達している。こうした構成によれば、タイルが石材よりも薄い場合であっても、係止穴の深さ(係止穴の中心軸方向の長さ)を確保しやすくなる。このため、シアコネクタの係止部において係止穴に挿入される部分の長さを長くしやすくなり、係止穴から係止部が抜けにくくすることができるとともに、係止穴の内面と係止部の外面との対向面積を大きくしやすくなる。さらに、タイルの厚みに対する係止穴の深さの割合を高くした場合であっても、有底円筒状のエポキシ樹脂層の底部により係止穴の底部を埋めて補強することができるため、タイル自体の強度が低下することを抑制することができる。
【0013】
第3の手段では、前記係止穴の内径は6.0[mm]であり、前記有底円筒状のエポキシ樹脂層の内径は4.8[mm]である。こうした構成によれば、有底円筒状のエポキシ樹脂層の内部に、石先付けPC部材で一般に用いられる外径4.0[mm]のシアコネクタの係止部を挿入することができる。そして、有底円筒状のエポキシ樹脂層の内径とシアコネクタの係止部の外径とが近いため、有底円筒状のエポキシ樹脂層の内面とシアコネクタの係止部の外面との接触面積を大きくすることができる。このため、タイルの裏面に垂直な方向にシアコネクタを引く力が作用した場合に、係止部の外面から係止穴の内面に作用する力をエポキシ樹脂層が分散させる効果を向上させることができる。
【0014】
さらに、係止穴の内径6.0[mm]と有底円筒状のエポキシ樹脂層の内径4.8[mm]との差を1.2[mm]にしているため、緩衝層としてのエポキシ樹脂層の厚みを十分に確保することができる。このため、係止穴の中心軸と有底円筒状のエポキシ樹脂層の中心軸とが加工誤差等によりずれた場合であっても、係止穴の内面と係止部の外面とが直接接触する部分が生じることを抑制することができる。したがって、係止穴の内面の一部に力が集中することをさらに抑制することができ、タイルとシアコネクタとの接続強度をさらに向上させることができる。
【0015】
タイルの裏面に対する係止穴の角度(所定角度)を小さくするほど、係止穴からシアコネクタの係止部が抜けにくくなる。一方、タイルの裏面に対する係止穴の角度を小さくし過ぎると、タイルの係止穴周辺部に過剰に薄い部分が生じて係止穴周辺部の強度が低下するとともに、係止穴を形成する加工が難しくなる。
【0016】
この点、第4の手段では、前記所定角度は40[°]である。こうした構成によれば、係止穴の深さ(係止穴の中心軸方向の長さ)を深く(長く)しやすくしつつ、タイルの裏面に対する係止穴の角度(所定角度)が小さくなり過ぎることを抑制することができる。したがって、係止穴からシアコネクタの係止部が抜けにくくする一方、タイルの係止穴周辺部の強度が低下することを抑制するとともに、係止穴を形成する加工が難しくなることを抑制することができる。
【0017】
第5の手段では、前記裏面には、貫通孔が形成された2つの金属製の板材が、それぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように接着されており、前記貫通孔は、前記板材の中央から他方の前記板材と反対側に偏っている。
【0018】
上記構成によれば、PC工法用タイルの裏面には、貫通孔が形成された2つの金属製の板材が、それぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように接着されている。このため、金属製の板材に形成された貫通孔を通じてタイルの係止穴にシアコネクタの係止部を挿入することができるとともに、金属製の板材によりタイルの係止穴周辺部を補強することができる。さらに、前記貫通孔は、前記板材の中央から他方の前記板材と反対側に偏っている。このため、板材において他方の板材側の部分、すなわちタイルの裏面に垂直な方向にシアコネクタを引く力が作用した場合に力が作用しやすい部分に、板材の肉部を多く確保しやすくなる。したがって、タイルの係止穴周辺部において力が作用しやすい部分を、金属製の板材により効率的に補強することができる。
【0019】
第6の手段では、前記板材は、前記有底円筒状のエポキシ樹脂層と一体のエポキシ樹脂層により前記裏面に接着されている。こうした構成によれば、係止穴の内部に形成された有底円筒状のエポキシ樹脂層と、タイルの裏面に金属製の板材を接着するエポキシ樹脂層とが一体であるため、これらのエポキシ樹脂層の強度を向上させることができる。したがって、タイルにおける係止穴周辺部をさらに補強することができるとともに、係止部の外面から係止穴の内面に作用する力をさらに分散させやすくなる。さらに、有底円筒状のエポキシ樹脂層を形成するために係止穴に注入するエポキシ樹脂を、タイルの裏面に金属製の板材を接着する接着剤としても利用することができる。
【0020】
第7の手段では、前記板材には、前記貫通孔と異なる位置に前記貫通孔よりも小さい孔が形成されている。こうした構成によれば、係止穴に注入するエポキシ樹脂をタイルの裏面に金属製の板材を接着する接着剤としても利用する際に、前記貫通孔と異なる位置に形成した孔からエポキシ樹脂を漏れ出させることができる。このため、金属製の板材におけるタイルと反対側の面をエポキシ樹脂層で覆いやすくなり、タイルに金属製の板材を強固に接着することができる。ひいては、タイルの係止穴周辺部をさらに補強することができる。しかも、前記貫通孔と異なる位置に形成した孔は前記貫通孔よりも小さいため、この孔により金属製の板材の強度が低下することを抑制することができる。
【0021】
第8の手段は、プレキャストコンクリート部材であって、
第1~第7のいずれか1つの手段のプレキャストコンクリート工法用タイルと、
2つの丸棒状の係止部を備え、前記2つの係止穴に前記2つの係止部がそれぞれ挿入されたシアコネクタと、
前記プレキャストコンクリート工法用タイルと接続され、前記シアコネクタが埋め込まれているコンクリート部と、
を備える。
【0022】
上記構成によれば、第1~第7のいずれか1つの手段のPC工法用タイルを備え、シアコネクタは、2つの丸棒状の係止部を備え、前記2つの係止穴に前記2つの係止部がそれぞれ挿入されている。そして、コンクリート部は、前記PC工法用タイルと接続され、前記シアコネクタが埋め込まれている。このため、PC部材において、第1~第7のいずれか1つの手段と同様の作用効果を奏することができ、ひいてはコンクリート部とタイルとの接続強度を向上させることができる。
【0023】
第9の手段は、プレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法であって、
タイルの裏面に、シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴を、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように形成する工程と、
前記2つの係止穴の内部にエポキシ樹脂を注入する工程と、
注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記エポキシ樹脂を、前記係止穴の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削して、前記2つの係止穴の内部に、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層をそれぞれ形成する工程と、
を備える。
【0024】
上記工程によれば、タイルの裏面に、シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴が、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように形成される。前記2つの係止穴の内部にエポキシ樹脂が注入され、注入された前記エポキシ樹脂が硬化させられる。このため、2つの係止穴の内部を、硬化したエポキシ樹脂で埋めることができる。続いて、硬化した前記エポキシ樹脂が、前記係止穴の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削されて、前記2つの係止穴の内部に、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層がそれぞれ形成される。したがって、前記2つの係止穴の内部に、前記係止穴の内面、すなわち係止穴の内周面及び底面を覆う有底円筒状のエポキシ樹脂層を容易に形成することができる。これにより、第1の手段のPC工法用タイルを製造することができ、製造されたPC工法用タイルにより第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【0025】
第10の手段では、注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程の前に、前記裏面において前記係止穴の周辺にエポキシ樹脂を塗布する工程と、貫通孔が形成された2つの金属製の板材がそれぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように、塗布された前記エポキシ樹脂に前記板材を密着させる工程と、備える。
【0026】
上記工程によれば、2つの係止穴の内部に注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程の前に、前記裏面において前記係止穴の周辺にエポキシ樹脂が塗布される。さらに、貫通孔が形成された2つの金属製の板材がそれぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように、塗布された前記エポキシ樹脂に前記板材が密着させられる。その後、係止穴に注入された前記エポキシ樹脂を硬化させれば、前記裏面において前記係止穴の周辺に塗布されたエポキシ樹脂も一緒に硬化させることができる。したがって、PC工法用タイルの裏面に、貫通孔が形成された2つの金属製の板材を、それぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように接着することができる。製造されたPC工法用タイルによれば、金属製の板材に形成された貫通孔を通じてタイルの係止穴にシアコネクタの係止部を挿入することができるとともに、金属製の板材によりタイルの係止穴周辺部を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】PC工法用タイル及びシアコネクタの部分断面図。
【
図2】
図1のPC工法用タイル及びシアコネクタの平面図。
【
図5】エポキシ樹脂を注入した係止穴周辺の拡大断面図。
【
図6】エポキシ樹脂にワッシャを密着させた状態の拡大断面図。
【
図7】有底円筒状のエポキシ樹脂層を形成した状態の拡大断面図。
【
図8】PC工法用タイル及びシアコネクタの斜視図。
【
図11】PC工法用タイルの変更例の引張試験結果を示す図。
【
図12】PC工法用タイルの他の変更例の引張試験結果を示す図。
【
図13】PC工法用タイルの他の変更例及びシアコネクタの平面図。
【
図15】PC工法用タイル及びシアコネクタの変更例の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、PC部材に用いられるPC工法用タイルに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、PC工法用タイル30の一部とシアコネクタ20とを示す部分断面図である。
図2は、
図1のPC工法用タイル30及びシアコネクタ20の平面図である。PC工法用タイル30は、タイル31、エポキシ樹脂層40、ワッシャ50等を備えている。
【0030】
タイル31は、例えば磁器質のセラミックタイルであり、矩形板状に形成されている。タイル31は、例えば1200[mm]×600[mm]あるいは600[mm]×600[mm]等の大判のタイルである。タイル31の組織(内部構造)のばらつきは、天然石材(石材)の組織のばらつきよりも小さい。このため、同じ厚みで比較すると、タイル31の強度は石材の強度よりも高い。なお、タイル31として、せっ器質のセラミックタイルを用いることもできる。
【0031】
シアコネクタ20は、石先付けPC部材に一般に用いられる周知のシアコネクタと同一である。シアコネクタ20は、断面が円形のステンレス(金属)等の線材を折り曲げて形成されている。線材の外径、すなわちシアコネクタ20の各部の外径は、例えば4.0[mm]である。シアコネクタ20は、中央に湾曲部21を有し、2つの腕部22が略90°をなすように湾曲部21の各端部21aに接続されている。2つの腕部22における湾曲部21と反対側の端部が略90°(90°よりも若干余分)に折り曲げられて、丸棒状の係止部23が形成されている。なお、2つの腕部22における湾曲部21と反対側の端部が90°よりも若干余分に折り曲げられている理由は、2つの係止部23同士の間隔を広げるようにシアコネクタ20を変形させた際に、タイル31の裏面31aに対して係止部23が45[°]をなすようにするためである。このため、シアコネクタ20が自然状態(力が作用していない状態)である場合に、腕部22と係止部23との角度は、90[°]よりも若干小さくなっている。
【0032】
タイル31の裏面31aには、シアコネクタ20の2つの係止部23の間隔だけ離れた位置に、断面が円形の2つの係止穴32が形成されている。2つの係止穴32は、互いに対向して係止穴32の底側ほど互いに近付くように延びている。2つの係止穴32の内径は、例えば6.0[mm]である。タイル31の裏面31aにおける2つの係止穴32の中心同士の間隔は、2つの係止部23の略中央(中間)同士の間隔と等しい。すなわち、シアコネクタ20の2つの係止部23は、2つの係止穴32にそれぞれ略中央(中間)まで挿入されており、根元まで挿入されていない。
【0033】
2つの係止穴32の内部には、係止穴32の内面を覆うように、係止部23を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層40がそれぞれ形成されている。2つの有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内部には、円柱状の空間が形成されている。2つの有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径は、例えば4.8[mm]である。すなわち、2つの有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径は、石先付けPC部材で一般に用いられる外径4.0[mm]のシアコネクタ20の係止部23を挿入可能であり、且つ係止部23の外径4.0[mm]に近い内径である。シアコネクタ20の2つの係止部23は、2つの有底円筒状のエポキシ樹脂層40にそれぞれ略中央(中間)まで挿入されている。
【0034】
タイル31の裏面31aにおいて2つの係止穴32の周辺部には、貫通孔51が形成された2つのワッシャ50(座金)がそれぞれ接着されている(
図2参照)。ワッシャ50(金属製の板材)は、例えば内径10.0[mm]、外径30.0[mm]、厚み0.4[mm]の円環状の平ワッシャ(平座金)である。貫通孔51の内径は、タイル31の裏面31aにおけるシアコネクタ20の係止部23の楕円形の断面の長径よりも大きい。ワッシャ50は、有底円筒状のエポキシ樹脂層40と一体のエポキシ樹脂層により、タイル31の裏面31aに接着されている。ワッシャ50は、係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51から係止穴32及び有底円筒状のエポキシ樹脂層40の上端(底部と反対側の端)を露出させる位置に接着されている。そして、シアコネクタ20の係止部23は、ワッシャ50の貫通孔51を通じて有底円筒状のエポキシ樹脂層40及び係止穴32の内部に挿入されている。係止穴32の内面とシアコネクタ20の係止部23の外面との間には、有底円筒状のエポキシ樹脂層40が介在している。すなわち、係止穴32の内面とシアコネクタ20の係止部23の外面とは、直接接触していない。
【0035】
次に、PC工法用タイル30の製造方法について説明する。以下の工程は、作業者が機械を操作したり道具を用いたりして行ってもよいし、自動化された機械により行ってもよい。
【0036】
まず、
図3に示すように、ドリルによりタイル31の裏面31aを切削して、シアコネクタ20の2つの丸棒状の係止部23がそれぞれ挿入される2つの係止穴32を形成する。ドリルの歯の外径は、例えば6.0[mm]である。このとき、2つの係止穴32が互いに対向して係止穴32の底側ほど互いに近付くように形成する。2つの係止穴32の間隔は、シアコネクタ20の2つの係止部23の間隔に応じて設定する。
【0037】
図4は、タイル31における
図3の右側の係止穴32の周辺を示す拡大断面図である。なお、タイル31における
図3の左側の係止穴32も右側の係止穴32と左右対称の形状であるため、
図3の右側の係止穴32を例にして以降説明する。
【0038】
具体的には、
図4に示すように、係止穴32の中心軸C(係止穴32)は、タイル31の裏面31aに対して所定角度θをなしている。所定角度θは、38[°]以上42[°]以下であり、望ましくは39[°]以上41[°]以下であり、さらに望ましくは40[°]である。タイル31の裏面31aに対する係止穴32の角度(所定角度θ)を小さくするほど、係止穴32からシアコネクタ20の係止部23が抜けにくくなる。一方、タイル31の裏面31aに対する係止穴32の角度を小さくし過ぎると、タイル31の係止穴32周辺部に過剰に薄い部分が生じて係止穴32周辺部の強度が低下するとともに、係止穴32を形成する加工が難しくなる。これらを考慮して、本実施形態では、所定角度θを40[°]に設定している。所定角度θが40[°]である場合、係止穴32にシアコネクタ20の係止部23を挿入すると、腕部22と係止部23との角度はシアコネクタ20が自然状態である場合のそれらの角度に近い角度になる。
【0039】
ドリルの歯がタイル31の裏面31aに最初に接触してから、切削長さDpだけ歯を前進させることにより係止穴32を形成する。切削長さDpは、タイル31の厚みt1、所定角度θ、及び係止穴32形成後のタイル31の残り厚みt2に基づいて、予め設定しておくことができる。タイル31の厚みt1に対する残り厚みt2の割合は、1/2よりも小さく、望ましくは1/3よりも小さく、さらに望ましくは1/5である。すなわち、2つの係止穴32は、タイル31(PC工法用タイル30)の厚みt1の2/3を超えた位置まで到達しており、望ましくは厚みt1の4/5の位置まで到達している。例えば、厚みt1は、8.0[mm]以上11.0[mm]であり、望ましくは9.0[mm]以上10.0[mm]以下である。残り厚みt2は、1.0[mm]以上3.0[mm]であり、望ましくは2.0[mm]である。
【0040】
続いて、
図5に示すように、係止穴32の内部にエポキシ樹脂49を注入する。エポキシ樹脂49は、例えば液状の本剤と液状の硬化剤とを混合した2液性のエポキシ樹脂である。ここでは、本剤と硬化剤との比率を調整してエポキシ樹脂49の粘度を低めに設定し、係止穴32の底部32aまでエポキシ樹脂49を注入して係止穴32の内部全体をエポキシ樹脂49で満たす。さらに、係止穴32からエポキシ樹脂49を溢れ出させ、タイル31の裏面31aにおいて係止穴32の周辺にエポキシ樹脂49を塗布する。
【0041】
続いて、
図6に示すように、ワッシャ50がタイル31における係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51から係止穴32が露出するように、塗布されたエポキシ樹脂49にワッシャ50を密着させる。このとき、ワッシャ50の貫通孔51からエポキシ樹脂49の一部を溢れ出させ、ワッシャ50の上面の一部を溢れ出たエポキシ樹脂49により覆わせる。なお、ワッシャ50とエポキシ樹脂49との接着強度を向上させるために、ワッシャ50の表面を粗くする加工を行ってもよい。また、エポキシ樹脂49をワッシャ50の上面に追加塗布して、ワッシャ50の上面全体をエポキシ樹脂49により覆ってもよい。
【0042】
続いて、エポキシ樹脂49をタイル31及びワッシャ50と共に加熱し、エポキシ樹脂49を硬化させる。なお、エポキシ樹脂49は2液性のエポキシ樹脂であるため、加熱しなくても時間の経過に伴って硬化するが、ここでは硬化時間の短縮のために加熱して硬化させている。エポキシ樹脂49が硬化する際に収縮した場合は、液状のエポキシ樹脂49を係止穴32の内部に再注入したり、追加塗布したりした後に、再加熱して硬化させてもよい。
【0043】
続いて、
図7に示すように、硬化したエポキシ樹脂49を、係止穴32の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削して、係止穴32の内部に、シアコネクタ20の係止部23を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層40を形成する。ドリルの歯の外径は、例えば4.8[mm]である。
【0044】
有底円筒状のエポキシ樹脂層40の中心軸は、係止穴32の中心軸C(
図4参照)と一致しており、タイル31の裏面31aに対して上記所定角度θをなしている。ドリルにより切削する長さは、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内部にシアコネクタ20の係止部23を挿入する長さに基づいて設定する。係止穴32の内周面は、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の側部41により覆われている。係止穴32の底部32aは、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の底部42により覆われている。有底円筒状のエポキシ樹脂層40は、ワッシャ50とタイル31の裏面31aとの間のエポキシ樹脂層43、及びワッシャ50の上面の一部を覆うエポキシ樹脂層44と一体化している。すなわち、ワッシャ50は、有底円筒状のエポキシ樹脂層40と一体のエポキシ樹脂層43,44により、タイル31の裏面31aに接着されている。なお、エポキシ樹脂を追加塗布して、エポキシ樹脂層44がワッシャ50の上面全体を覆うようにしてもよい。以上により、PC工法用タイル30が製造される。
【0045】
以上のように製造されたPC工法用タイル30を用いて、PC部材10を製造する方法について説明する。以下の工程は、作業者が機械を操作したり道具を用いたりして行ってもよいし、自動化された機械により行ってもよい。
【0046】
図1に示すように、一対の有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)に、シアコネクタ20の両端の係止部23をそれぞれ挿入する。このとき、シアコネクタ20を弾性変形させて両端の係止部23同士の間隔を広げて、係止穴32(ワッシャ50の貫通孔51)同士の間隔に等しくする。そして、シアコネクタ20の係止部23の先端を係止穴32の上端に近付けた状態で、シアコネクタ20を広げる力を弱めることにより、シアコネクタ20が弾性変形して元の形状に戻ろうとする。これにより、両端の係止部23同士の間隔が狭くなり、一対の有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)に両端の係止部23がそれぞれ挿入される。このとき、係止部23は係止穴32よりも有底円筒状のエポキシ樹脂層40と滑りやすいため、有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)に係止部23を容易に挿入することができる。シアコネクタ20の2つの係止部23は、2つの有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)にそれぞれ略中央(中間)まで挿入される。シアコネクタ20の2つの係止部23の先端が、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の底部に当接することにより、有底円筒状のエポキシ樹脂層40への係止部23の挿入が終了する。
【0047】
同様にして、
図8に示すように、1枚のPC工法用タイル30の裏面31aに、4つのシアコネクタ20を取り付ける。例えば、PC工法用タイル30の300[mm]×300[mm]の領域に対してシアコネクタ20を1つ取り付ける。一対の係止穴32、一対の有底円筒状のエポキシ樹脂層40、及び一対のワッシャ50は、タイル31の縦を向いているものが2つ、横を向いているものが2つである。このため、4つのシアコネクタ20のうち、2つのシアコネクタ20の長手方向はタイル31(PC工法用タイル30)の縦方向に沿っており、2つのシアコネクタ20の長手方向はタイル31(PC工法用タイル30)の横方向に沿っている。
【0048】
続いて、
図9に示すように、PC工法用タイル30の裏面31aが上を向くように、PC部材10の型枠(図示略)に複数(所定数)のPC工法用タイル30を配置する。PC工法用タイル30の裏面31aに、PC工法用タイル30とPC部材10のコンクリート部11との緩衝層(図示略)を形成するために、弾性接着剤を塗布する。弾性接着剤は、例えば弾性エポキシ樹脂系接着剤である。そして、型枠内にコンクリートを打設して、コンクリートを固める。これにより、PC部材10のコンクリート部11が形成される。コンクリート部11は、PC工法用タイル30と接続され、シアコネクタ20が埋め込まれている。その後、型枠を取り外すことにより、PC工法用タイル30を備えるPC部材10を製造される。なお、PC工法用タイル30の裏面31aに緩衝層を形成した後に、PC工法用タイル30を型枠内に配置することもできる。
【0049】
図10は、本実施形態のPC工法用タイル30とシアコネクタ20の引張試験結果を示す図である。この引張試験では、
図1に示すように、PC工法用タイル30にシアコネクタ20が取り付けられた状態において、シアコネクタ20をタイル31から外すように裏面31aに垂直な方向(
図1の上方向)へ引っ張っている。タイル31は磁器質のセラミックタイルであり、寸法は198×198×9.0[mm]である。
図4において、厚みt1=9.0[mm]であり、残り厚みt2=2.0[mm]である。係止穴32の内径は6.0[mm]であり、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径は4.8[mm]である。シアコネクタ20は、外径4.0[mm]のステンレス製の線材により形成されている。ワッシャ50は、内径10.0[mm]、外径30.0[mm]、厚み0.4[mm]の円環状の平ワッシャである。引張荷重は毎秒10[N]ずつ増加させている。
【0050】
図10に示すように、試料A1~A3において、いずれも1500[N]以上の引張強度が得られている。なお、一般の石材の厚みが30[mm]程度であるのに対して、タイル31の厚みは8~11[mm]程度にすることができる。このため、厚み以外の寸法を石材とタイル31とで同じにした場合、タイル31の質量を石材の質量の半分以下にすることができる。例えば、300×300×20[mm]の石材は5.2[kg]であるのに対して、300×300×10[mm]のタイル31は1.8[kg]である。したがって、1500[N]以上の引張強度は、PC工法用タイル30の落下を防止するために十分な引張強度であると考えられる。
【0051】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0052】
・PC工法用タイル30では、2つの係止穴32は、裏面31aに対して38[°]以上42[°]以下の所定角度θで互いに対向して係止穴32の底側ほど互いに近付くように延びている。すなわち、タイル31の裏面31aに対する係止穴32の角度が、石材の裏面に対する係止穴の一般の角度よりも小さくなっている。このため、タイル31の係止穴32にシアコネクタ20の係止部23を挿入した状態で、タイル31の裏面31aに垂直な方向にシアコネクタ20を引く力が作用した場合に、係止穴32から係止部23が抜けにくくすることができる。さらに、タイル31が石材よりも薄い場合であっても、係止穴32の深さ(係止穴32の中心軸C方向の長さ)を深く(長く)しやすくなる。このため、シアコネクタ20の係止部23において係止穴32に挿入される部分の長さを長くしやすくなり、係止穴32の内面と係止部23の外面との対向面積を大きくしやすくなる。
【0053】
・2つの係止穴32の内部には、係止穴32の内面を覆うように、係止部23を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層40がそれぞれ形成されている。このため、タイル31の係止穴32にシアコネクタ20の係止部23を挿入した場合に、係止穴32の内面と係止部23の外面との間にエポキシ樹脂層40を介在させることができる。したがって、PC工法用タイル30の裏面31aに垂直な方向にシアコネクタ20を引く力が作用した場合に、エポキシ樹脂層40が係止部23の外面から係止穴32の内面に作用する力を分散させる緩衝層として機能するようになる。これにより、係止穴32の内面と係止部23の外面との対向面積を大きくしやすくなる上記効果と併せて、係止穴32の内面の一部に力が集中することを抑制することができ、PC工法用タイル30の係止穴32周辺部が破損することを抑制することができる。
【0054】
・PC工法用タイル30にシアコネクタ20を接続した場合に、PC工法用タイル30とシアコネクタ20との接続強度を向上させることができ、ひいてはPC部材10においてコンクリート部11とPC工法用タイル30との接続強度を向上させることができる。さらに、係止穴32の加工誤差等により、係止穴32の深さがシアコネクタ20の係止部23において係止穴32に挿入される部分の長さよりも深くなった場合であっても、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の底部42により係止穴32の底部32aを埋めて補強することができる。このため、タイル31の厚みに対する係止穴32の深さの割合が意図したよりも高くなった場合であっても、タイル31自体の強度が低下することを抑制することができる。
【0055】
・PC工法用タイル30によれば、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の形成はタイル31を加工(製造)する業者が行うことができるため、PC部材10を製造する業者がエポキシ樹脂を注入及び硬化させる手間を減らすことができる。
【0056】
・2つの係止穴32は、PC工法用タイル30の厚みの2/3を超えた位置まで到達している。こうした構成によれば、タイル31が石材よりも薄い場合であっても、係止穴32の深さ(係止穴32の中心軸C方向の長さ)を確保しやすくなる。このため、シアコネクタ20の係止部23において係止穴32に挿入される部分の長さを長くしやすくなり、係止穴32から係止部23が抜けにくくすることができるとともに、係止穴32の内面と係止部23の外面との対向面積を大きくしやすくなる。さらに、タイル31の厚みに対する係止穴32の深さの割合を高くした場合であっても、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の底部42により係止穴32の底部32aを埋めて補強することができるため、タイル31自体の強度が低下することを抑制することができる。
【0057】
・係止穴32の内径は6.0[mm]であり、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径は4.8[mm]である。こうした構成によれば、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内部に、石先付けPC部材で一般に用いられる外径4.0[mm]のシアコネクタ20の係止部23を挿入することができる。そして、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径とシアコネクタ20の係止部23の外径とが近いため、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内面とシアコネクタ20の係止部23の外面との接触面積を大きくすることができる。このため、PC工法用タイル30の裏面31aに垂直な方向にシアコネクタ20を引く力が作用した場合に、係止部23の外面から係止穴32の内面に作用する力をエポキシ樹脂層40が分散させる効果を向上させることができる。
【0058】
・係止穴32の内径6.0[mm]と有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径4.8[mm]との差を1.2[mm]にしているため、緩衝層としてのエポキシ樹脂層40の厚みを十分に確保することができる。このため、係止穴32の中心軸Cと有底円筒状のエポキシ樹脂層40の中心軸とが加工誤差等によりずれた場合であっても、係止穴32の内面と係止部23の外面とが直接接触する部分が生じることを抑制することができる。したがって、係止穴32の内面の一部に力が集中することをさらに抑制することができ、PC工法用タイル30とシアコネクタ20との接続強度をさらに向上させることができる。
【0059】
・所定角度θは40[°]である。こうした構成によれば、係止穴32の深さ(係止穴32の中心軸C方向の長さ)を深く(長く)しやすくしつつ、タイルの裏面31aに対する係止穴32の角度(所定角度θ)が小さくなり過ぎることを抑制することができる。したがって、係止穴32からシアコネクタ20の係止部23が抜けにくくする一方、タイル31の係止穴32周辺部の強度が低下することを抑制するとともに、係止穴32を形成する加工が難しくなることを抑制することができる。
【0060】
・PC工法用タイル30の裏面31aには、貫通孔51が形成された2つのワッシャ50が、それぞれ係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51から係止穴32が露出するように接着されている。このため、ワッシャ50に形成された貫通孔51を通じてPC工法用タイル30の係止穴32にシアコネクタ20の係止部23を挿入することができるとともに、ワッシャ50によりPC工法用タイル30の係止穴32周辺部を補強することができる。これにより、PC工法用タイル30とシアコネクタ20の引張強度を向上させることができる。
【0061】
・ワッシャ50は、有底円筒状のエポキシ樹脂層40と一体のエポキシ樹脂層43により裏面31aに接着されている。こうした構成によれば、係止穴32の内部に形成された有底円筒状のエポキシ樹脂層40と、タイルの裏面31aにワッシャ50を接着するエポキシ樹脂層43とが一体であるため、これらのエポキシ樹脂層40,43の強度を向上させることができる。したがって、タイルにおける係止穴32周辺部をさらに補強することができるとともに、係止部23の外面から係止穴32の内面に作用する力をさらに分散させやすくなる。さらに、有底円筒状のエポキシ樹脂層40を形成するために係止穴32に注入するエポキシ樹脂を、タイルの裏面31aにワッシャ50を接着する接着剤としても利用することができる。
【0062】
・PC部材10は、PC工法用タイル30を備え、シアコネクタ20は、2つの丸棒状の係止部23を備え、2つの係止穴32に2つの係止部23がそれぞれ挿入されている。そして、コンクリート部11は、PC工法用タイル30と接続され、シアコネクタ20が埋め込まれている。このため、PC部材10において、上記の作用効果を奏することができ、ひいてはコンクリート部11とPC工法用タイル30との接続強度を向上させることができる。特に、タイル31が大判化した場合は、地震時等におけるPC工法用タイル30の落下防止が重要である。このため、PC部材10は、大型ビルや大型公共施設への使用に適している。
【0063】
・PC工法用タイル30の製造方法において、タイル31の裏面31aに、シアコネクタ20の2つの丸棒状の係止部23がそれぞれ挿入される2つの係止穴32が、裏面31aに対して38[°]以上42[°]以下の所定角度θで互いに対向して係止穴32の底側ほど互いに近付くように形成される。2つの係止穴32の内部にエポキシ樹脂が注入され、注入されたエポキシ樹脂が硬化させられる。このため、2つの係止穴32の内部を、硬化したエポキシ樹脂で埋めることができる。続いて、硬化したエポキシ樹脂が、係止穴32の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削されて、2つの係止穴32の内部に、係止部23を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層40がそれぞれ形成される。したがって、2つの係止穴32の内部に、係止穴32の内面、すなわち係止穴32の内周面及び底面を覆う有底円筒状のエポキシ樹脂層40を容易に形成することができる。これにより、PC工法用タイル30を製造することができ、製造されたPC工法用タイル30により上記の作用効果を奏することができる。
【0064】
・PC工法用タイル30の製造方法において、2つの係止穴32の内部に注入されたエポキシ樹脂を硬化させる工程の前に、裏面31aにおいて係止穴32の周辺にエポキシ樹脂が塗布される。さらに、貫通孔51が形成された2つのワッシャ50がそれぞれ係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51から係止穴32が露出するように、塗布されたエポキシ樹脂にワッシャ50が密着させられる。その後、係止穴に注入されたエポキシ樹脂を硬化させれば、裏面31aにおいて係止穴32の周辺に塗布されたエポキシ樹脂も一緒に硬化させることができる。したがって、PC工法用タイル30の裏面31aに、貫通孔51が形成された2つのワッシャ50を、それぞれ係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51から係止穴32が露出するように接着することができる。製造されたPC工法用タイル30によれば、ワッシャ50に形成された貫通孔51を通じてタイルの係止穴32にシアコネクタ20の係止部23を挿入することができるとともに、ワッシャ50によりタイル31の係止穴32周辺部を補強することができる。
【0065】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0066】
・PC工法用タイル30においてワッシャ50を省略することもできる。
図11は、ワッシャ50を省略したPC工法用タイル30の引張試験結果を示す図である。引張試験の条件は、ワッシャ50を省略したことを除いて、
図10と同様である。ワッシャ50を省略した場合であっても、試料B1~B3において、いずれも1400[N]以上の引張強度が得られている。上述したように、厚み以外の寸法を石材とタイル31とで同じにした場合、タイル31の質量を石材の質量の半分以下にすることができる。したがって、1400[N]以上の引張強度は、PC工法用タイル30の落下を防止するために十分な引張強度であると考えられる。
【0067】
・
図12は、タイル31の係止穴32の内径を5.0[mm]に変更したPC工法用タイルの引張試験結果を示す図である。引張試験の条件は、タイル31の寸法が200×200×10.0[mm]、厚みt1=10.0[mm]、残り厚みt2=2.0[mm]、及び係止穴の内径を5.0[mm]に変更したことを除いて、
図10と同様である。試料C1~C3において、いずれも1750[N]以上の引張強度が得られている。なお、タイル31の厚みt1=10.0[mm]であることも、引張強度の上昇に寄与していると考えられる。また、係止穴32の内径を5.0[mm]にした場合に、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径を例えば4.6[mm]にすることもできる。
【0068】
・ワッシャ50を、
図13に示すワッシャ150に変更することもできる。ワッシャ150(金属製の板材)では、貫通孔151は、ワッシャ150の中央から他方のワッシャ150と反対側に偏っている。こうした構成によれば、ワッシャ150において他方のワッシャ150側の部分、すなわちタイル31の裏面31aに垂直な方向にシアコネクタ20を引く力が作用した場合に力が作用しやすい部分に、ワッシャ150の肉部を多く確保しやすくなる。したがって、タイル31の係止穴32周辺部において力が作用しやすい部分を、ワッシャ150により効率的に補強することができる。
【0069】
さらに、ワッシャ150には、貫通孔151と異なる位置に貫通孔151よりも小さい孔152が3つ(複数)形成されている。こうした構成によれば、係止穴32に注入するエポキシ樹脂をタイル31の裏面31aにワッシャ150を接着する接着剤としても利用する際に、貫通孔151と異なる位置に形成した孔152からエポキシ樹脂を漏れ出させることができる。このため、ワッシャ150におけるタイル31と反対側の面をエポキシ樹脂層で覆いやすくなり、タイル31にワッシャ150を強固に接着することができる。ひいては、タイル31の係止穴32周辺部をさらに補強することができる。しかも、貫通孔151と異なる位置に形成した孔152は貫通孔151よりも小さいため、この孔152によりワッシャ150の強度が低下することを抑制することができる。なお、孔152の数は、1つでもよいし、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0070】
図14は、ワッシャ50をワッシャ150に変更したPC工法用タイルの引張試験結果を示す図である。引張試験の条件は、タイル31の寸法が200×200×10.0[mm]、厚みt1=10.0[mm]、残り厚みt2=2.0[mm]、及びワッシャ50をワッシャ150に変更したことを除いて、
図10と同様である。試料C1~C3において、いずれも2000[N]以上の引張強度が得られている。また、シアコネクタ20の片方の係止部23が外れた場合は、もう片方の係止部23は外れていない。このため、外れていない方の係止部23によりPC工法用タイル30を支持して、PC工法用タイル30が落下することを抑制可能である。なお、タイル31の厚みt1=10.0[mm]であることも、引張強度の上昇に寄与していると考えられる。
【0071】
・有底円筒状のエポキシ樹脂層40を形成するエポキシ樹脂と異なる接着剤により、ワッシャ50,150をタイル31の裏面31aに接着することもできる。
【0072】
・
図15に示すように、中央にばね部121を有するシアコネクタ120を採用することもできる。シアコネクタ120は、断面が円形のステンレス(金属)等の線材を巻回し及び折り曲げて形成されている。線材の外径、すなわちシアコネクタ120の各部の外径は、例えば4.0[mm]である。シアコネクタ120は、中央に線材を巻回して形成されたばね部121を有し、2つの腕部122がばね部121の各端部に接続されている。2つの腕部122におけるばね部121と反対側の端部が略120°折り曲げられて、丸棒状の係止部23が形成されている(腕部122と係止部23とのなす角が略60[°])。
【0073】
PC工法用タイル30にシアコネクタ120を取り付ける際には、一対の有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)に、シアコネクタ20の両端の係止部23をそれぞれ挿入する。このとき、シアコネクタ20のばね部121を弾性変形させて両端の係止部23同士の間隔を広げて、係止穴32(ワッシャ50の貫通孔51)同士の間隔に等しくする。そして、シアコネクタ120の係止部23の先端を係止穴32の上端に近付けた状態で、シアコネクタを広げる力を弱めることにより、シアコネクタ120のばね部121が弾性変形して元の形状に戻ろうとする。これにより、両端の係止部23同士の間隔が狭くなり、一対の有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)に両端の係止部23がそれぞれ挿入される。
【0074】
引張強度試験では、PC工法用タイル30にシアコネクタ120が取り付けられた状態において、シアコネクタ120をタイル31から外すように裏面31aに垂直な方向(
図1の上方向)へのばね部121を引っ張る。このとき、両端の係止部23同士の間隔を狭くする方向の力が生じるため、有底円筒状のエポキシ樹脂層40(係止穴32)から係止部23が抜けにくくなる。したがって、PC工法用タイル30の引張強度をさらに向上させることができる。
【0075】
・シアコネクタ20,120を形成する線材の外径、すなわちシアコネクタ20,120の各部の外径が例えば3.2[mm]である小型のシアコネクタ20,120を用いることもできる。その場合、例えばタイル31の厚みを7.5[mm]以上9.5[mm]以下(例えば8.5[mm])、係止穴32の内径を5.0[mm]、有底円筒状のエポキシ樹脂層40の内径を3.8[mm]にすることができる。こうした構成によれば、タイル31の厚み(重量)に応じて、小型のシアコネクタ20,120を用いることができる。
【0076】
・ワッシャ50(金属製の板材)は、例えば内径6.4[mm]、外径12.5[mm]、厚み1.6[mm]等の一般規格(汎用)の円環状の平ワッシャ(平座金)であってもよい。
【0077】
・ワッシャ50,150(座金)以外の金属製の板材をタイル31の裏面31aに接着して、タイル31の係止穴32の周囲を覆い且つ貫通孔51,151から係止穴32(有底円筒状のエポキシ樹脂層40)が露出するようにしてもよい。金属製の板材は、円環状に限らず、多角形環状、「C」字状、「U」字状等であってもよい。
【0078】
・PC工法用タイル30とPC部材10のコンクリート部11とを、弾性接着剤ではなく、硬化性の接着剤により接着することもできる。
【0079】
・1枚のタイル31に対するシアコネクタ20の数を適宜変更してもよい。また、タイル31に対するシアコネクタ20の向きを適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0080】
10…PC部材、20…シアコネクタ、23…係止部、30…PC工法用タイル、31…タイル、31a…裏面、32…係止穴、40…有底円筒状のエポキシ樹脂層、120…シアコネクタ。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴が裏面に形成されたプレキャストコンクリート工法用タイルであって、
前記2つの係止穴は、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように延びており、
前記2つの係止穴の内部には、前記係止穴の内面を覆うように、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層がそれぞれ形成されており、
前記裏面には、貫通孔が形成された2つの金属製の板材が、それぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように接着されており、
前記貫通孔は、前記板材の中央から他方の前記板材と反対側に偏っている、プレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項2】
前記2つの係止穴は、前記プレキャストコンクリート工法用タイルの厚みの2/3を超えた位置まで到達している、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項3】
前記係止穴の内径は6.0[mm]であり、
前記有底円筒状のエポキシ樹脂層の内径は4.8[mm]である、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項4】
前記所定角度は40[°]である、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項5】
前記板材は、前記有底円筒状のエポキシ樹脂層と一体のエポキシ樹脂層により前記裏面に接着されている、請求項1に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項6】
前記板材には、前記貫通孔と異なる位置に前記貫通孔よりも小さい孔が形成されている、請求項5に記載のプレキャストコンクリート工法用タイル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート工法用タイルと、
2つの丸棒状の係止部を備え、前記2つの係止穴に前記2つの係止部がそれぞれ挿入されたシアコネクタと、
前記プレキャストコンクリート工法用タイルと接続され、前記シアコネクタが埋め込まれているコンクリート部と、
を備えるプレキャストコンクリート部材。
【請求項8】
プレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法であって、
タイルの裏面に、シアコネクタの2つの丸棒状の係止部がそれぞれ挿入される2つの係止穴を、前記裏面に対して38[°]以上42[°]以下の所定角度で互いに対向して前記係止穴の底側ほど互いに近付くように形成する工程と、
前記2つの係止穴の内部にエポキシ樹脂を注入する工程と、
注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記エポキシ樹脂を、前記係止穴の内面を覆う部分を残すようにドリルで切削して、前記2つの係止穴の内部に、前記係止部を挿入可能な有底円筒状のエポキシ樹脂層をそれぞれ形成する工程と、
を備えるプレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法。
【請求項9】
注入された前記エポキシ樹脂を硬化させる工程の前に、
前記裏面において前記係止穴の周辺にエポキシ樹脂を塗布する工程と、
貫通孔が形成された2つの金属製の板材がそれぞれ前記係止穴の周囲を覆い且つ前記貫通孔から前記係止穴が露出するように、塗布された前記エポキシ樹脂に前記板材を密着させる工程と、
を備える、請求項8に記載のプレキャストコンクリート工法用タイルの製造方法。