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特開2024-20862色彩可変装飾品部材、色彩可変装飾品、及び色彩可変装飾品部材の色彩変更方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020862
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】色彩可変装飾品部材、色彩可変装飾品、及び色彩可変装飾品部材の色彩変更方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240207BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 1/00 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 9/00 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20240207BHJP
   A45D 8/00 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20240207BHJP
   A44C 7/00 20060101ALI20240207BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20
A44C1/00
A44C9/00
A44C25/00 A
A44C25/00 Z
A44C27/00
A45D8/00 A
A45D8/00 501C
A45D8/00 502B
A45D8/00 504B
A44C5/00 502C
A44C7/00 Z
C09K9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123377
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 英孝
【テーマコード(参考)】
2H148
3B114
【Fターム(参考)】
2H148AA03
2H148AA11
2H148AA18
2H148AA24
2H148CA04
2H148CA13
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA21
2H148CA23
3B114AA01
3B114AA11
3B114BA05
3B114BC01
3B114BE01
3B114JA01
3B114JA09
(57)【要約】
【課題】異なる照明環境下において、色彩が変化する色彩可変装飾品部材を提供する。
【解決手段】紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材。
【請求項2】
CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、380nm以上500nm以下の範囲に透過率10%~70%の極大吸収波長aを含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項3】
CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
500nm超550nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長bと、
550nm超650nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長cと、を含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項4】
太陽光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値、及び、LED光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値の内、いずれか大きい方の値が、1.5以上である請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物及びトリアジン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項6】
前記可視光吸収色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体、ポルフィリン系化合物及びメロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項7】
前記樹脂は、ポリ(チオ)ウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項8】
前記可視光吸収色素は、合計含有量が、前記樹脂の全質量に対して、0.001質量%~0.100質量%である請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項9】
表面又は内部に、ラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項10】
立体形状であり、かつ、表面に多面体形状を含む請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項11】
指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット又はシャンデリアに用いられる請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項12】
全光線透過率が、70%以下である請求項1に記載の色彩可変装飾品部材。
【請求項13】
請求項1に記載の色彩可変装飾品部材を含む色彩可変装飾品。
【請求項14】
紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材に対して、光を照射することで前記色彩可変装飾品部材の色彩を変更する工程を含む色彩可変装飾品部材の色彩変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色彩可変装飾品部材、色彩可変装飾品、及び色彩可変装飾品部材の色彩変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イヤリング、ブローチなどの装飾品は、その多くが貴金属など光沢を生じさせやすい素材から形成されているが、多様な色彩、形状等に容易に加工できることから樹脂製の装飾品も採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂(A成分)100質量部に対して、紫外線発光蛍光体(B成分)を0.001~1質量部含有してなり、該組成物を用いて成形された厚さ3mmの成形板について、JIS-K7136に従って測定したヘイズが2%以下であることを特徴とする蛍光発光性透明ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、化学式(A、R1-x)BOで0≦x≦1と示され、上記Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの中から選ばれた少なくとも1種類の希土類元素からなり、上記AがNd,Ho,Tmの中から選ばれた1種類の元素からなり、上記Bが3価の元素からなる単結晶を加工してなる粉末、あるいは粉末原料を配したことを特徴とする装飾材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-159356号公報
【特許文献2】特開2005-325221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、装飾品に対しては、優れた美観が求められる。上記美観は、装飾品の色彩、光沢性、形状等によって形成されることが多い。
例えば、審美性の観点から、装飾品に用いられる装飾品部材として、天然物であるアレキサンドライトが挙げられる。アレキサンドライトは、照射される光によって色彩が異なるという性質を有する。例えば、アレキサンドライトは、太陽光の下で発する色彩と人工照明の下で発する色彩とが異なる。
本発明者は、天然物でなく人工物として、上記と同様の性質を有する物質を作製することについて鋭意検討した。
【0007】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、異なる照明環境下において、色彩が変化する色彩可変装飾品部材、色彩可変装飾品、及び上記色彩可変装飾品部材の色彩変更方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材。
<2> CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、380nm以上500nm以下の範囲に透過率10%~70%の極大吸収波長aを含む<1>に記載の色彩可変装飾品部材。
<3> CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、
500nm超550nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長bと、
550nm超650nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長cと、を含む<1>又は<2>に記載の色彩可変装飾品部材。
<4> 太陽光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値、及び、LED光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値の内、いずれか大きい方の値が、1.5以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<5> 前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物及びトリアジン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<4>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<6> 前記可視光吸収色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体、ポルフィリン系化合物及びメロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<7> 前記樹脂は、ポリ(チオ)ウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィ、ポリアミド及びポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<8> 前記可視光吸収色素は、合計含有量が、前記樹脂の全質量に対して、0.001質量%~0.100質量%である<1>~<7>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<9> 表面又は内部に、ラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<10> 立体形状であり、かつ、表面に多面体形状を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<11> 指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット又はシャンデリアに用いられる<1>~<10>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<12> 全光線透過率が、70%以下である<1>~<11>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の色彩可変装飾品部材を含む色彩可変装飾品。
<14> 紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材に対して、光を照射することで前記色彩可変装飾品部材の色彩を変更する工程を含む色彩可変装飾品部材の色彩変更方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、異なる照明環境下において、色彩が変化する色彩可変装飾品部材、色彩可変装飾品、及び上記色彩可変装飾品部材の色彩変更方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
本開示において、組成物の各成分の量は、各成分に該当する物質が層中に複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、(チオ)ウレタンはウレタン及びチオウレタンを指し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを指す。
【0013】
≪色彩可変装飾品部材≫
本開示の色彩可変装飾品部材は、紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む。
本開示の色彩可変装飾品部材は、上記構成を含むことで、異なる照明環境下において、色彩が変化する。
【0014】
<紫外線吸収剤>
本開示の色彩可変装飾品部材は、紫外線吸収剤を含む。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、フェノール系化合物、マロン酸エステル系化合物、オキサニリド系化合物等が挙げられる。
【0015】
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物及びトリアジン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
ベンゾフェノン系化合物としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0017】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2,4-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0018】
マロン酸エステル系化合物の具体例としては、p-フェニレンビス(メチレンマロン酸)テトラエチルエステル、ジメチルp-メトキシベンジリデンマロネート等を挙げることができる。
【0019】
マロン酸エステル系化合物の市販品として、ホスタビンPR-25、ホスタビンB-CAP(以上、クラリアントケミカルズ株式会社製)等を挙げることができる。
【0020】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
【0021】
紫外線吸収剤は、市販品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、Tinuvin326(BASFジャパン株式会社製)、ホスタビンPR-25(クラリアントケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
紫外線吸収剤の含有量は、色彩を良好に変化させる観点から、樹脂の全質量に対して、0.001質量%~5.0質量%であることが好ましく、0.001質量%~2.0質量%であることがより好ましく、0.01質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
<2種類以上の可視光吸収色素>
本開示の色彩可変装飾品部材は、2種類以上の可視光吸収色素を含む。
可視光吸収色素としては、テトラアザポルフィリン金属錯体、ポルフィリン系化合物、メロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0024】
可視光吸収色素は、テトラアザポルフィリン系金属錯体、ポルフィリン系化合物及びメロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0025】
(テトラアザポルフィリン系金属錯体)
テトラアザポルフィリン系金属錯体としては、テトラアザポルフィリン骨格及び金属原子を有する金属錯体であれば特に限定されない。テトラアザポルフィリン系金属錯体としては、例えば、以下の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
【化1】


【0027】
一般式(1)中、A~Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基又は炭素数6~20のアリールチオ基を表す。A及びA、A及びA、A及びA、並びにA及びAはそれぞれ独立に、芳香族環を除く環を形成してもよい。Mは、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、又は酸化金属原子を表す。
【0028】
~Aにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、フッ素原子又は臭素原子がより好ましい。
【0029】
~Aにおける炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基などが挙げられる。
【0030】
~Aにおける直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基としては、ビニル基、1-メチルビニル基、プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基等が挙げられる。
【0031】
~Aにおける直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、1、3-ブタジイニル基、2-ペンチニル基、2,4-ペンタジイニル基、2-ヘキシニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、3-ヘプチニル基、4-オクチニル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)中、Mは2価の金属原子であることが好ましく、2価の銅であることがより好ましい。テトラアザポルフィリン系金属錯体の具体例としては、以下の式(1a)で表されるテトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられる。
【0033】
(ポルフィリン系化合物)
ポルフィリン系化合物としては特に限定されない。
ポルフィリン系化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
【化2】


【0035】
一般式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基又は炭素数6~20のアリールチオ基を表す。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、又は酸化金属原子を表す。
~Xの少なくとも1つは、水素原子以外であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、又は、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基であることが好ましい。
【0036】
~Xにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、フッ素原子又は臭素原子がより好ましい。
【0037】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
Mは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Mn、Mg、Mn(OH)、Mn(OH)、VO、又はTiOが好ましく、Ni,Pd又はVOがより好ましい。
【0039】
~Xにおける炭素数1~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルケニル基、及び炭素数2~20の直鎖、分岐若しくは環状のアルキニル基の好ましい構成は、上述の一般式(1)におけるA~Aと同様である。
【0040】
~Rにおける炭素数1~8の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基などが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、又は2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、又はn-オクチル基がより好ましい。
【0042】
実施形態Bの光学要素に用いられ得るポルフィリン系化合物は、それ自体公知の方法を参考にして製造することができる。例えば、OctabromotetraphenylporphyrinandItsMetalDerivatives(Inorg.Chem.1991,30,239-245)記載の方法で製造することができる。
また、一般式(2)で表される化合物は、例えば、ピロール化合物及びアルデヒド化合物を用い、酸触媒による脱水縮合反応及び酸化剤による酸化反応を経るローゼムント(Rothemund)反応により合成した化合物を得た後、当該化合物を金属又は金属塩(例えば、アセチルアセトン錯体、金属の酢酸塩)と溶媒中で反応させることにより製造することができる。ピロール化合物としては、一般式(B-1)~一般式(B-4)で表される化合物が挙げられ、アルデヒド化合物としては、一般式(C-1)~一般式(C-4)で表される化合物が挙げられる。酸触媒としては、プロピオン酸、ボロントリフルオリド・エチルエーテル錯体、トリフルオロ酢酸等が挙げられ、酸化剤としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン等が挙げられる。
【0043】
【化3】


【0044】
一般式(B-1)~一般式(B-4)及び一般式(C-1)~一般式(C-4)におけるX~X及びR~Rは、一般式(2)におけるX~X及びR~Rと同様である。
【0045】
一般式(2)で表される化合物は、1種であってもよく、2種以上の異性体からなる混合物であってもよい。
【0046】
(メロシアニン系化合物)
メロシアニン系化合物としては、特に制限はない。例えば、従来公知のメロシアニン系化合物を適宜選択して用いることができる。
【0047】
可視光吸収色素は、色彩を良好に変化させる観点から、合計含有量が、樹脂の全質量に対して、0.001質量%~0.100質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.050質量%であることがより好ましく、0.008質量%~0.030質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
<樹脂>
本開示の色彩可変装飾品部材は、樹脂を含む。
樹脂としては、ポリ(チオ)ウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
樹脂は1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0049】
前記樹脂は、ポリ(チオ)ウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0050】
(ポリ(チオ)ウレタン)
ポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位を含む。ポリチオウレタンは、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位及びポリチオール化合物由来の構成単位を含む。
【0051】
ポリイソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0052】
ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族又は脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させたアルコール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0053】
直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオ-ル、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)等が挙げられる。
【0054】
脂環族アルコールとしては、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、4,4’-ビシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0055】
これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させた化合物でもよい。例えば、グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができ、これらから選択した少なくとも1種を用いることができる。
【0057】
(ポリスルフィド)
ポリスルフィドは、モノマーである、ポリエピチオ化合物、ポリチエタン化合物等の開環重合による方法により得ることができる。光学要素用組成物には、これらの高分子を構成するモノマーを含むことができる。
【0058】
ポリエピチオ化合物としては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
ポリチエタン化合物としては、金属含有チエタン化合物又は非金属チエタン化合物を用いることができる。具体的には、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0059】
(ポリカーボネート)
ポリカーボネートは、アルコールとホスゲンの反応、又はアルコールとクロロホーメートを反応させる方法、又は炭酸ジエステル化合物のエステル交換反応をすることにより得ることができるが、一般的に入手可能な市販品ポリカーボネート樹脂を用いることも可能である。市販品としては帝人化成株式会社製のパンライトシリーズなどを用いることができる。
【0060】
(ポリ(メタ)アクリレート)
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載のものを用いることができる。
【0061】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンとしては、特に制限はなく用いることができ、例えば、特許第6216383号公報に記載の具体例、環状ポリオレフィン、オレフィンの重合反応及びポリオレフィンの製造方法を用いることができる。
ポリオレフィンとしては環状ポリオレフィンであってもよい。
【0062】
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、特に制限はなく用いることができ、例えばナイロンを用いることができる。
【0063】
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、特に制限はなく用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレートを用いることができる。
【0064】
本開示の色彩可変装飾品部材は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、380nm以上500nm以下の範囲に透過率10%~70%の極大吸収波長aを含むことが好ましい。
上記透過率が10%以上であることで、変化する色彩の種類を増やすことができる。上記色彩の種類としては青~青緑が挙げられる。
上記の観点から、上記透過率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
上記透過率が70%以下であることで、より明確に色彩を変化させることができる。
上記の観点から、上記透過率は65%以下であることがより好ましい。
【0065】
本開示の色彩可変装飾品部材は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、500nm超550nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長bを含むことが好ましい。
上記透過率が10%以上であることで、変化する色彩の種類を増やすことができる。上記色彩の種類としては緑が挙げられる。
上記の観点から、上記透過率は40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
上記透過率が90%以下であることで、より明確に色彩を変化させることができる。
上記の観点から、上記透過率は88%以下であることがより好ましい。
【0066】
本開示の色彩可変装飾品部材は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、550nm超650nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長cを含むことが好ましい。
上記透過率が10%以上であることで、変化する色彩の種類を増やすことができる。上記色彩の種類としては黄色~赤が挙げられる。
上記の観点から、上記透過率は40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
上記透過率が85%以下であることで、より明確に色彩を変化させることができる。
上記の観点から、上記透過率は84%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
本開示の色彩可変装飾品部材は、CIE1976に準拠して測定したスペクトルにおいて、500nm超550nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長bと、550nm超650nm以下の範囲に透過率10%~85%の極大吸収波長cと、を含むことが好ましい。
【0068】
本開示の色彩可変装飾品部材は、太陽光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値、及び、LED光下での彩度Cと白熱灯下での彩度Cとの差の絶対値の内、いずれか大きい方の値(本開示において、彩度Cの差の絶対値ともいう。)が、1.5以上であることが好ましい。
彩度Cの差の絶対値が、1.5以上であることで、より明確に色彩を変化させることができる。
彩度Cの差の絶対値が、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましく、8.0以上であることが特に好ましい。
本開示の色彩可変装飾品部材は、彩度Cの差の絶対値が、60.0以下であることが好ましい。
彩度Cの差の絶対値が、60.0以下であることで、色彩可変装飾品部材の外観に優れる。
彩度Cの差の絶対値が、40.0以下であることがより好ましく、30.0以下であることがさらに好ましい。
彩度Cの差の絶対値は、例えば、1.5~60.0であってもよい。
なお、LED(Light Emitting Diode)とは、発光ダイオードを意味する。
【0069】
彩度Cの測定方法は以下の通りである。
厚さ2mmの光学材料を用いて、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)で、C光源、視野角2°の条件でL色空間(CIE 1976)におけるa、bを測定する。下記式を用いて、彩度Cを算出する。
【0070】
【数1】

【0071】
本開示の色彩可変装飾品部材は、異なる照明環境下において、色彩が変化する。
色彩を良好に変化させる観点から、光の透過率が高くなりすぎないことが好ましい。
例えば、メガネレンズなどでは、製品の品質として、視感透過率が75%以上であることが求められる。本開示の色彩可変装飾品部材は、メガネレンズのように高い光の透過率を有さないことが好ましい。
【0072】
例えば、本開示の色彩可変装飾品部材は、色彩を変化させる観点から、全光線透過率が70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
全光線透過率は、ダイヤ型樹脂片を濁度計(例えば日本電子工業株式会社製)を用いて測定する。
【0073】
本開示の色彩可変装飾品部材は、部材内部の形状によって、部材に入射した光の一部が必ず別の方向へ反射する現象を起こすことが好ましく、上記反射における反射率を上げることが好ましい。これによって、上記光の透過率を下げて、色彩を良好に変化させることができる。
【0074】
本開示の色彩可変装飾品部材は、反射率を向上させて色彩の変化を促進する観点から、表面又は内部に、ラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
金属片に含まれる金属としては、例えば、アルミ、銅、シリカ、酸化鉄等が挙げられる。
【0075】
本開示の色彩可変装飾品部材は、部材内部の形状によって、部材に入射した光の一部が必ず別の方向へ反射する構造を有することが好ましい。
本開示の色彩可変装飾品部材は、反射率を向上させて色彩の変化を促進する観点から、立体形状であり、かつ、表面に多面体形状を含むことが好ましい。
多面体形状としては特に制限はなく、例えばダイヤモンド形状が挙げられる。
多面体形状は、ファセット面を有することも好ましい。
【0076】
本開示の色彩可変装飾品部材は、例えば、指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット又はシャンデリアに用いることができる。
また、本開示の色彩可変装飾品部材は、衣類用生地等の織布又は不織布に用いることもできる。これらの織布又は不織布は、本開示の色彩可変装飾品部材を含んでもよい。
【0077】
≪色彩可変装飾品≫
本開示の色彩可変装飾品は、本開示の色彩可変装飾品部材を含む。
そのため、本開示の色彩可変装飾品は、異なる照明環境下において、色彩が変化する。
これによって、本開示の色彩可変装飾品は、人工物でありながら天然物であるアレキサンドライトに類似の審美性を示す。
【0078】
≪色彩可変装飾品部材の色彩変更方法≫
本開示の色彩可変装飾品部材の色彩変更方法は、上述の本開示の色彩可変装飾品部材の色彩を変更する方法である。
本開示の色彩可変装飾品部材の色彩変更方法は、紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材に対して、光を照射することで前記色彩可変装飾品部材の色彩を変更する工程を含む。
【0079】
本開示の色彩可変装飾品部材は、照射される光の種類によって、色彩が変更される。
光は単独で用いてもよく複数種類用いてもよい。
光の種類としては特に制限はない。例えば、LED、蛍光灯、白熱灯等が挙げられる。
【実施例0080】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0081】
(実施例1~2及び実施例4~9、比較例1~比較例4)
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンを含む組成物を50.6質量部に、表1に記載のUV吸収剤、有機色素を全質量部に対して記載量を加え、重合触媒としてジブチル錫ジクロリドを0.020質量部、内部離型剤としてMR用内部離型剤(三井化学株式会社製)を0.1質量部、25℃で撹拌して各成分を完全に溶解させた。
その後、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを含む組成物を25.5質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含む組成物を23.9質量部添加して、25℃にて30分撹拌し、均一溶液を作製した。
この溶液に対して400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタにて濾過を行った後、厚さ2mmであるガラスモールド型に注入した。さらに、装飾品形状がダイヤ型のものはダイヤモンド形状(6面体で各面がダイヤ形状をしており、ダイヤ一辺あたりの長さが1.5cm)のシリコン型に注入した。これらの型をオーブンで25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。
その後、室温まで冷却させて、部材を各型から離型し、さらに120℃で2時間アニールを行った。これにより、色彩可変装飾品部材を得た。
【0082】
(実施例3)
屈折率1.50アクリルレンズモノマー(名称:50HPM、三井化学株式会社)216部中に表1に記載のUV吸収剤、有機色素を全質量部に対して記載量を加え、重合触媒としてルぺロックス10M70(アルケマ吉富株式会社製)を1.32質量部およびルぺクス826(アルケマ吉富株式会社製)0.36質量部を25℃で撹拌して各成分を完全に溶解させた。
この溶液に対して400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタにて濾過を行った後、厚さ2mmであるガラスモールド型と、ダイヤモンド形状(6面体のダイヤ型であり、ダイヤ一辺あたりの長さが1.5cm)のシリコン型の2種類の型にそれぞれ注入した。この注入済みの型を25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。
その後、室温まで冷却させて、型から離型した。さらに120℃で2時間アニールを行い、色彩可変装飾品部材を得た。
【0083】
(各波長領域での透過率)
各波長領域での透過率は、厚さ2mmの平板を用いて、紫外可視分光光度計UV―1800(株式会社島津製作所製)で分光スペクトルを測定した。得られた分光スペクトルから、380~500nm、501~550nm、551~600nmの各スペクトル範囲での極大吸収波長における透過率を得た。
【0084】
(色相)
厚さ2mmの平板を用いて、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)を使用し色度座標L,a*,b*、色度座標x、y、zを測定した。
【0085】
(全光線透過率)
厚さ2mmの平板とダイヤ型の色彩可変装飾品部材を濁度計(日本電子工業株式会社製)により全光線透過率を測定した。
【0086】
本実施例で行った評価の詳細は、以下の通りである。
[視認性]
実施例又は比較例で得られた色彩可変装飾品部材を介して、白地の用紙に記載された文字を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。
(評価基準)
1.文字が全く見えなかった。
2.文字があることは確認できた。
3.一部の文字を読むことができた。
4.大部分の文字を読むことができた。
5.すべての文字を読むことができた。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
本開示において、ppmは質量基準である。
表1及び表2に記載の各成分についての詳細は以下の通りである。
・紫外線吸収剤
チヌビン326 (ベンゾトリアゾール系化合物、BASF社製)
ホスタビンPR-25 (マロン酸エステル系化合物、オー・ジー株式会社製)
・可視光吸収色素
下記の可視光吸収色素は、テトラアザポルフィリン金属錯体、ポルフィリン系化合物又はメロシアニン系化合物である。
FDB-006(山田化学株式会社製)
PD311s(山本化成株式会社製)
ABS-462(Exciton社製)
FDB-003(山田化学株式会社製)
ABS-473(Exction社製)
FDG-006(山田化学株式会社製)
ABS-594(Exciton社製)
ABS-584(Exciton社製)
【0090】
表1及び表2に示すように、紫外線吸収剤と、2種類以上の可視光吸収色素と、樹脂と、を含む色彩可変装飾品部材を用いた実施例は、異なる照明環境下(太陽光、LED及び白熱灯)において、色彩が変化していた。
一方、紫外線吸収剤が含まれず、可視光吸収色素が1種類しか含まれない色彩可変装飾品部材を用いた比較例1及び2は、異なる照明環境下(太陽光、LED及び白熱灯)において、色彩が変化しなかった。
また、可視光吸収色素が1種類しか含まれない色彩可変装飾品部材を用いた比較例3及び4も、異なる照明環境下(太陽光、LED及び白熱灯)において、色彩が変化しなかった。