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特開2024-20868診断支援システム及び診断支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020868
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】診断支援システム及び診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20240207BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20240207BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61B1/005 523
A61B1/045 618
A61B1/00 552
A61B1/00 735
A61B1/045 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123385
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北原 洋子
(72)【発明者】
【氏名】槇 光輝
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】中谷 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西ヶ谷 瑛里香
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA04
4C161AA24
4C161FF40
4C161HH47
4C161HH55
4C161WW02
4C161WW03
(57)【要約】
【課題】効率的に病変部位を発見する。
【解決手段】診断支援システムを、内視鏡の撮影部により撮影した対象者の体腔内の画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング部43と、内視鏡の撮影部の撮影範囲における病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位の位置に基づいて、内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御部52と、撮影部方向制御部52が内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位を拡大する画像拡大部(レンズ焦点制御部)53と、を備えるものとする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の撮影部により撮影した対象者の体腔内の画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング部と、
前記内視鏡の撮影部の撮影範囲における前記病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位の位置に基づいて、前記内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御部と、
前記撮影部方向制御部が前記内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、前記病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位を拡大する画像拡大部と、を備える診断支援システム。
【請求項2】
前記画像拡大部が、前記撮影部のレンズを制御して、前記病変の可能性がある部位を拡大するものである、請求項1記載の診断支援システム。
【請求項3】
前記画像拡大部が、前記病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位を拡大した後に、前記内視鏡の撮影部により撮影した画像に基づいて病変の可能性がある部位を判定する病変部位判定部を備える請求項1記載の診断支援システム。
【請求項4】
コンピュータに、画像情報記憶部に記録した画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング手順と、内視鏡の撮影部の撮影範囲における病変部位スクリーニング手順により判定した病変の可能性がある部位の位置に基づいて、内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御手順と、撮影部方向制御手順により内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、病変部位スクリーニング手順が判定した病変の可能性がある部位を拡大するレンズ画像拡大手順と、を実行させる診断支援プログラム。
【請求項5】
体腔の三次元モデルデータを記憶する三次元モデルデータ記憶部と、
内視鏡の撮影部の撮影方向を測定する撮影方向測定部と、
内視鏡の撮影部の三次元的な位置を測定する撮影部三次元位置測定部と、
前記撮影方向測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の撮影方向と、前記撮影部三次元位置測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の三次元的な位置に基づいて、前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出部と、を備える診断支援システム。
【請求項6】
前記撮影範囲算出部が算出した前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づいて、前記体腔の三次元モデルデータのうち前記撮影部により撮影された時間が所定の時間以下の領域とそれ以外の領域を区別して表示画面に表示する請求項5記載の診断支援システム。
【請求項7】
前記撮影範囲算出部が算出した前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づき、前記体腔の三次元モデルデータにおいてまだ撮影されていない領域があるか否かを判定し、まだ撮影していない領域がある場合、その旨を通知する請求項5に記載の診断支援システム。
【請求項8】
コンピュータに、撮影方向測定部が測定した内視鏡の撮影部の撮影方向及び撮影部三次元位置測定部が測定した内視鏡の三次元的な位置に基づいて、内視鏡の撮影部の体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出手順を実行させる診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援システム及び診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
先端に撮影部(カメラ)を備える内視鏡を対象者の胃、大腸や腹腔等の体腔に挿入し、体腔内を撮影し、取得した映像、画像を確認することで体腔内に癌等の病変部がないか調べる検査が行われている。
【0003】
特許文献1には、内視鏡画像を複数の局所領域に分割して、各局所領域のカテゴリを算出する技術が開示されている。各局所領域のカテゴリは、病変を含むことを示すカテゴリ(関心カテゴリ)、観察に不適切な泡や残渣などを含むことを示すカテゴリ(観察不適カテゴリ)、関心領域および観察不適領域のいずれでもない領域であることを示すカテゴリ(正常カテゴリ)のいずれかに設定される。
【0004】
特許文献2には、病変位置に対するオートフォーカスを行う内視鏡システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-89498号公報
【特許文献2】特開2011-193983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の技術では、病変の可能性がある部位を効率的に見落としなく特定することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、病変の可能性がある部位を効率的に特定でき、また見落としが少ない診断支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明の一つの手段によれば、診断支援システムを、内視鏡の撮影部により撮影した対象者の体腔内の画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング部と、前記内視鏡の撮影部の撮影範囲における前記病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位の位置に基づいて、前記内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御部と、前記撮影部方向制御部が前記内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、前記病変部位判定部が判定した病変の可能性がある部位を拡大する画像拡大部と、を備えるものとした。
【0009】
(2)(1)において、前記画像拡大部が、前記撮影部のレンズを制御して前記病変の可能性がある部位を拡大するものであるものとすると好ましい。
【0010】
(3)(1)または(2)において、病変部位判定部が、前記画像拡大部が前記病変部位スクリーニング部が判定した病変の可能性がある部位を拡大した後に前記内視鏡の撮影部により撮影した画像に基づいて病変の可能性がある部位を判定するものとすると好ましい。
【0011】
(4)また、本発明の別の手段によれば、診断支援プログラムを、コンピュータに、画像情報記憶部に記録した画像に基づいて病変の可能性がある部位を判定する病変部位判定手順と、内視鏡の撮影部の撮影範囲における病変部位判定手順により判定した病変の可能性がある部位の位置に基づいて、内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御手順と、撮影部方向制御手順により内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、撮影部のレンズを制御して、病変部位判定手順が判定した病変の可能性がある部位を拡大するレンズ焦点制御手順と、を実行させるものとした。
【0012】
(5)また、本発明の別の手段によれば、診断支援システムを、体腔の三次元モデルデータを記憶する三次元モデルデータ記憶部と、内視鏡の撮影部の撮影方向を測定する撮影方向測定部と、内視鏡の撮影部の三次元的な位置を測定する撮影部三次元位置測定部と、前記撮影方向測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の撮影方向と、前記撮影部三次元位置測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の三次元的な位置に基づいて、前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出部と、を備えるものとした。
【0013】
(6)(5)において、前記撮影範囲算出部が算出した前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づいて、前記体腔の三次元モデルデータのうち前記撮影部により撮影された時間が所定の時間以下の領域とそれ以外の領域を区別して表示画面に表示すると好ましい。
【0014】
(7)(5)または(6)において、前記撮影範囲算出部が算出した前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づき、前記体腔の三次元モデルデータにおいてまだ撮影されていない領域があるか否かを判定し、まだ撮影していない領域がある場合、その旨を通知するものとすると好ましい。
【0015】
(8)本発明の別の手段によれば、診断支援システムを、コンピュータに、撮影方向測定部が測定した内視鏡の撮影部の撮影方向及び撮影部三次元位置測定部が測定した内視鏡の三次元的な位置に基づいて、内視鏡の撮影部の体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出手順を実行させるものとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、病変の可能性がある部位を効率的に特定できる。また、本発明によれば、病変の可能性がある部位の見落としを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1の内視鏡の先端側を示す図である。
図2】実施形態1の内視鏡の先端部を示す図である。
図3】実施形態1の画像処理部の構成を示す図である。
図4】実施形態1の撮影部制御部の構成を示す図である。
図5】実施形態1の表示画面を示す図である。
図6図5の画面の中心部を拡大した場合の表示画面を示す図である。
図7図5の状態から内視鏡の撮影部の方向を転換した場合の表示画面を示す図である。
図8図7の画面の中心部を拡大した場合の表示画面を示す図である。
図9】実施形態1の処理手順を示す図である。
図10】実施形態2の処理手順を示す図である。
図11】体腔内三次元モデルデータ処理部の構成を示す図である。
図12】実施形態2の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を説明するが、本発明の実施形態は以下に説明する実施形態例に限定されず、以下に説明する実施形態例を特許請求の範囲に記載の範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【0019】
また、図面は本発明の内容を説明するためのものであり、実際の形状や寸法と異なる場合がある。
【0020】
1.実施形態1
(内視鏡)
図1図2は、本実施形態の内視鏡の先端側の構造を示す図である。内視鏡は、人体内部の体腔内を観察することを目的とした医療機器であり、観察する部位に応じて例えば腹腔鏡、胸腔鏡、大腸内視鏡等と呼ばれている。図1において、撮影部(カメラ)2は内視鏡1の先端側11の先端部に取り付けられ、撮影部2の前方の撮影範囲の静止画像または動画を取得する。照明部(ライト)4は、照明部4の先端方向に光を照射することにより、暗い体腔内を照らし、撮影部2により体腔内の画像情報を取得可能とする。撮影方向測定部3は、撮影部2の撮影方向を検出、測定する。加速度測定部5は、撮像部2の三次元的な加速度を検出、測定するものであり、測定した加速度の情報から撮像部2の三次元的な位置を算出することができる。したがって、加速度測定部5は、三次元位置測定部5としての機能も有している。撮影部2のレンズ21の焦点を、撮影対象までの距離に応じて調整することで、撮影対象の高精度な画像情報を取得することができる。
【0021】
内視鏡1は、内視鏡1の基端側12の軸方向と、撮影部2の撮影方向とのなす角度θをモーター等の動力により変更、制御することができる。角度θを変更する機構としては、例えば以下のような機構とすることができる。撮影部2の撮影方向は初期状態で予めθ1となるようにばね等の弾性体により形状付けされている。内視鏡1の先端部にワイヤ等の線状部材(図示せず)が接続され、その線状部材が内視鏡1の基端部のモーター、リニアモーター等の動力部(図示せず)に接続されている。角度θを変更する旨の制御信号が制御部から動力部に送信され、動力部が受信すると、受信した制御信号に応じてモーター等が線状部材を引っ張り、これによって内視鏡1の先端部に真っすぐになるような力がかかり、角度θを小さくすることができる。
【0022】
また、内視鏡1の先端側11は、内視鏡1の基端側12に対して接続部13において相対的に回転可能に接続されており、内視鏡1の基端側12に対する内視鏡1の先端側11の相対的な回転角度αを変更、制御することができる。回転角度αを変更する機構としては、例えば以下のような機構とすることができる。内視鏡1の先端側11は、先端側11の内部のシャフト(図示せず)に接続されており、シャフトは内視鏡1の基端側12の内部を通過し、内視鏡1の基端部まで延び、モーター等の回転機構(図示せず)に接続されている。回転角度αを変更する旨の制御信号が制御部から回転機構に送信され、モーター等が受信する。モーター等は、受信信号に応じて回転し、モーター等に接続されているシャフトを回転させ、回転角度αが変更される。
【0023】
また、他の回転角度αを変更する機構としては、回転コネクタ(歯車等)を挿入し、撮影部の回転角度αを変更する機構としても良い。内部の配線が絡まらないようにスリップリングを用いた機構としても良い。
また、他の撮影部の撮影方向を変更する機構として、内視鏡の先端部の円周寄りの部分に3本以上のワイヤーを取り付け、各ワイヤーのテンションを調整することで、任意の角度α、角度θに先端を湾曲させる機構としても良い。この機構は、内視鏡1の先端側11を、内視鏡1の基端側12に対して回転させるのではなく、任意の角度α、角度θに撮影部の撮影方向を傾けるものである。
【0024】
内視鏡1は、角度θと回転角度αを変更、制御することができるため、撮影部2の撮影方向を任意の方向に変更、制御することができる。
【0025】
(画像処理部)
図3は、画像処理部40の構成を示す図である。撮影部41により取得された静止画または動画の画像情報が、画像情報記憶部42に記憶される。病変部位判定・スクリーニングルール記憶部44は、画像情報から病変部位の可能性がある部分を抽出する病変部位判定・スクリーニングルールを記憶している。病変部位判定・スクリーニングルールは、画像情報から、病変部位特有の色、画素の輝度、形状等を有する部位を病変部位の可能性の有る部位として判定・スクリーニングするルールである。他の病変部位判定・スクリーニングルールの作成方法としては、多数の病変部位に関する画像情報を機械学習して、画像情報の中から病変の可能性がある部位を判定・スクリーニングするルールを算出してもよい。病変部位判定・スクリーニング部43は、画像情報記憶部42に記憶された画像情報に、病変部位判定・スクリーニング部43が記憶した病変部位判定・スクリーニングルールを適用して、病変の可能性がある部位を判定、抽出し、病変部位記憶部45に記憶する。病変部位判定部と病変部位スクリーニング部は別に設けても良いし、同一部が病変部位判定部と病変部位スクリーニング部の両方の機能を兼ねていても良い。
【0026】
(撮影部制御部)
図4は撮影部制御部50の構成を示す図である。病変部位方向判定部51は、撮影部2の撮影範囲の中心に対して、病変部位記憶部45が判定した病変の可能性がある部位がどの方向にあるかを判定する。撮影方向制御部52は、病変部位方向判定部51が判定した撮影部2の撮影範囲の中心に対する病変の可能性がある部位の方向に基づいて、撮影部2の撮影範囲の略中心に病変の可能性がある部位が位置するように、撮影部2の撮影方向を自動的に制御する。換言すれば、病変の可能性がある部位が画面の略中央に位置するように撮影部2の撮影方向を自動的に方向転換する。そして、病変の可能性がある部位を拡大する画像拡大部であるレンズ焦点制御部53は、病変の可能性がある部位の位置に撮影部2のレンズ21の焦点を自動的に合わせ、病変の可能性がある部位を物理的に拡大し、この部位の高精度な画像情報を取得できるようにする。なお、画像拡大部が病変の可能性がある部位を物理的に拡大する方法としては、撮影部自体を病変の可能性がある部位に自動的に接近させる方法でも良い。
【0027】
(本実施形態による処理手順の例)
以下、内視鏡の一種である腹腔鏡により、検査対象者の腹膜内に腹膜播種がないか検査する手順の例を説明する。腹膜播種は、癌が腹膜に転移したものであり、初期の腹膜播種はサイズも小さく、色も薄いことから発見が困難である。図9は、本実施形態による処理方法の手順を説明する図である。
【0028】
患者の腹部に空けた穴から、腹腔鏡を挿入し、腹腔鏡の先端部に配置した撮影部2により腹腔内を撮影し、腹腔内の画像を取得する(ST11)。そして、取得した画像を表示装置(ディスプレイ)の表示画面に表示する。図5は、撮影した腹腔内の画像30である。33の点線で囲まれた領域は、画像情報に基づいて、病変部位スクリーニング部43が抽出した病変、具体的には腹膜播種の可能性がある部位である(ST12)。腹膜播種は、初期の段階ではサイズが小さく、色も薄いため、この段階では腹膜播種であるという確定的な判断はできない場合がある。31の×印は、撮影部2の撮影範囲の中心部である。32の点線は、レンズの焦点を調整し拡大した場合の撮影範囲である。仮に図5の状態で、腹膜播種の可能性がある部位33をより正確に判定するために、レンズの焦点を調整して画像を拡大したとすると、図6のような画面となり、腹膜播種の可能性がある部位33は撮影範囲から外れてしまい、33の腹膜播種の可能性を判定することができない。そこで本実施形態では、病変部位方向判定部51により、撮影範囲の中心位置31に対する腹膜播種の可能性がある部位33の方向を特定する。そして、特定した腹膜播種の可能性がある部位33の方向に基づいて、撮影部方向制御部52が、腹膜播種の可能性がある部位33が、撮影範囲の中心部に位置するように撮影部52の撮影方向を自動的に制御して、方向転換する(ST13)。図7は、腹膜播種の可能性がある部位33が撮影範囲の中心31に位置するように撮影部2の撮影方向を制御した際の画面を示している。図7の状態で、レンズ焦点制御部53が、レンズの焦点が腹膜播種の可能性がある部位33に自動的に焦点を合わせ、この部位33を拡大すると、図8に示すような画面になり、腹膜播種の可能性がある部位33が拡大される(ST14)。図8では、図7よりも、腹膜播種の可能性がある部位33が拡大され、部位33に関する画像情報が増加しているため、医療従事者によって、より高精度に腹膜播種の可能性を判断することができる。また、図8のより部位33の画像情報が増加した状態で、再度画像処理部により自動的に腹膜播種の可能性を判定すれば、より正確に部位33に腹膜播種があるかどうか判定することができる(ST15)。
【0029】
(診断支援プログラム)
本実施形態は、診断支援プログラムとして実施することも可能である。本実施形態の診断支援プログラムの例としては、コンピュータに、画像情報記憶部に記録した画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング手順と、内視鏡の撮影部の撮影範囲における病変部位スクリーニング手順により判定した病変の可能性がある部位の位置に基づいて、内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御手順と、撮影部方向制御手順により内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、撮影部のレンズを制御して、病変部位判定手順が判定した病変の可能性がある部位を拡大するレンズ焦点制御手順と、を実行させる診断支援プログラムである。
【0030】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、診断支援システムを、 内視鏡の撮影部により撮影した対象者の体腔内の画像に基づいて病変の可能性がある部位をスクリーニングする病変部位スクリーニング部と、内視鏡の撮影部の撮影範囲における病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位の位置に基づいて、内視鏡の撮影部の撮影方向を制御する撮影部方向制御部と、撮影部方向制御部が内視鏡の撮影部の撮影方向を制御した後に、病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位を拡大する画像拡大部と、を備えるものとしたことにより、初期の腹膜播種のように判定しにくい病変部位であっても、病変部位をより正確に、かつ効率的に発見することができる。
【0031】
また、画像拡大部を、撮影部のレンズを制御して、病変の可能性がある部位を拡大するものとしたことにより、初期の腹膜播種のように判定しにくい病変部位であっても、病変部位をより正確に判定することができる。
また、画像拡大部が、前記病変部位スクリーニング部がスクリーニングした病変の可能性がある部位を拡大した後に、内視鏡の撮影部により撮影した画像に基づいて病変の可能性がある部位を判定する病変部位判定部を備えるものとしたことにより、初期の腹膜播種のように判定しにくい病変部位であっても、病変部位をより正確に判定することができる。
【0032】
2.実施形態2
(本実施形態の構成及び処理手順)
図10は、実施形態2による処理手順を示す図である。また、図11は、本実施形態の体腔内三次元モデルデータ処理部60の構成を示す図である。
【0033】
まずは、CTまたはMRI等により、検査対象者の体腔内を撮影し、体腔の画像情報を取得し、体腔内画像情報記憶部61に記憶する(ST21)。体腔内三次元モデル作成部62は、体腔内画像情報記憶部61に記憶した検査対象者の体腔内の画像情報に基づいて、検査対象者の体腔の三次元モデルデータを作成して、三次元モデルデータ記憶部63に記憶する(ST22)。その後、内視鏡1を、検査対象者の体腔内に挿入する(ST23)。操作者は、内視鏡1の撮影部2を検査対象者の体腔内に挿入した時点において、内視鏡1の撮影部2の三次元モデルにおける位置と撮影方向について初期設定を行う。具体的には、内視鏡1の撮影部2が、検査対象者の体腔の三次元モデルにおいて、体腔の挿入部に位置することが操作者によって初期設定される(ST24)。また、内視鏡1の撮影部2の撮影方向が、内視鏡1の挿入方向に向いていることが操作者によって初期設定される(ST24)。その後の検査において、撮影位置測定部5は、内視鏡1の撮影部2の位置が、初期状態からどう変位したかを測定し、撮影部位置算出部64は、撮影位置測定部5が測定した撮影部2の位置情報に基づいて、撮影部2が体腔の三次元モデル内のどこに位置するかを算出・特定する。撮影部撮影方向測定部3は、撮影部2の撮影方向が初期状態からどう変位したか測定し、撮影部撮影方向算出部65は、撮影部撮影方向測定部2が測定した方向情報に基づいて、撮影部2の撮影方向が体腔の三次元モデルにおいてどの方向を向いているかを算出・特定する。撮影範囲算出部66は、撮影部位置算出部64が算出した位置情報と撮影部撮影方向算出部65が算出した方向情報に基づき、撮影部2が体腔の三次元モデル内のどの範囲を撮影しているのかを算出する(ST25)。そして、体腔の三次元モデル内の特定の地点を撮影したことがあるか、撮影したことがある場合何秒間撮影したのかを算出し、これらの情報を撮影範囲記憶部67に記憶する。
【0034】
図12は本実施例により撮影した体腔内の画像である。34の一点鎖線の範囲内は、5秒間以上撮影した範囲である。34の範囲内はすでに観察するのに十分な時間表示画面に表示されているため、観察する必要性が少ない。これらの領域は、グレー等の目立たない色とすることができる。一方で、34の外側の画面領域は、撮影時間が5秒未満の領域であり、この領域はまだ十分な時間観察されていないため、重点的に観察する必要がある。これらの領域は、画面を明るくする等、目立つように表示することが好ましい。このように、撮影時間が所定時間以内の領域と、それ以外の領域を区別して表示すると、観察すべき領域が直感的に理解できるため、病変部位の見落としを少なくすることができる。
内視鏡の操作者が撮影を終了する操作をした場合、体腔の三次元モデル内でまだ撮影していない領域がある場合(ST27)、操作者に対しその旨を通知し、再度撮影していない領域の場所を表示画面に表示して、その部分を撮影するように促す(ST28)。一方で、体腔の三次元モデル内がすべて撮影されている場合、撮影は終了する(ST29)。
【0035】
(診断支援プログラム)
本実施形態は、診断プログラムとして実施することもできる。本実施形態の診断プログラムの例としては、コンピュータに、撮影方向測定部が測定した内視鏡の撮影部の撮影方向と、撮影部三次元位置測定部が測定した内視鏡の三次元的な位置に基づいて、内視鏡の撮影部の体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出手順を実行させる診断支援プログラムである。
【0036】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、診断支援システムを、体腔の三次元モデルデータを記憶する三次元モデルデータ記憶部と、内視鏡の撮影部の撮影方向を測定する撮影方向測定部と、内視鏡の撮影部の三次元的な位置を測定する撮影部三次元位置測定部と、撮影方向測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の撮影方向と、撮影部三次元位置測定部が測定した前記内視鏡の撮影部の三次元的な位置に基づいて、前記内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲を算出する撮影範囲算出部と、を備えるものとすることにより、病変部位を見落とすリスクを軽減することができる。
【0037】
また、撮影範囲算出部が算出した内視鏡の撮影部の前記体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づき、表示画面において、撮影時間が所定の時間より短い領域をそれ以外の領域と区別して表示することにより、病変部位を見落とすリスクをより軽減することができる。
【0038】
また、撮影範囲算出部が算出した内視鏡の撮影部の体腔の三次元モデルデータにおける撮影範囲に関する情報に基づき、前記体腔の三次元モデルデータにおいてまだ撮影されていない領域があるか否かを判定し、まだ撮影していない領域がある場合、その旨を通知することにより、病変部位を見落とすリスクをより軽減することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明の範囲は、上記実施形態に限定されない。例えば、病変の可能性がある部位を物理的に拡大する実施形態1と、体腔内の三次元モデルデータを使用して撮影部の撮影範囲を把握する実施形態2を組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 内視鏡
11 内視鏡の先端側
12 内視鏡の基端側
13 接続部
2 撮影部
4 照明部
5 加速度測定部
21 レンズ
40 画像処理部
41 撮影部
42 画像情報記憶部
43 病変部位判定・スクリーニング部
44 病変部位判定ルール記憶部
45 病変部位記憶部
50 撮影部制御部
51 病変部位方向判定部51
52 撮影方向制御部
53 画像拡大部(レンズ焦点制御部)
30 腹腔内の画像
31 撮影範囲の中心
32 拡大される範囲
33 腹膜播種の可能性がある部位
60 データ処理部
61 体腔内画像情報記憶部
62 体腔内三次元モデル作成部
63 三次元モデルデータ記憶部
64 撮影部位置算出部
65 撮影部撮影方向算出部
66 撮影範囲算出部
67 撮影範囲記憶部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12