(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020896
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】接合鋼板、接合鋼板の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
B23K11/11 543
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123437
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】百武 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AA01
4E165AB02
4E165AB22
4E165BB02
4E165BB12
4E165BB23
(57)【要約】
【課題】鋼板相互の接合強度の向上を図りつつ、簡単に製造可能な接合鋼板を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る接合鋼板(16)は、スポット溶接と接着剤(14)とにより鋼板相互が接合された接合鋼板であって、接着剤(14)は、鋼板相互の間で連続し、スポット溶接によるスポット溶接点(P21、P22)は、接着剤(14)が延在する方向に沿って間隔を開けて配置され、接着剤(14)における隣接するスポット溶接点(P21、P22)の間の中間部分での接着剤(14)が延在する方向に対して直交し、且つ接合鋼板(16)の平面方向の幅寸法(W3)は、接着剤(14)におけるスポット溶接点(P21、P22)での接着剤(14)が延在する方向に対して直交し、且つ接合鋼板(16)の平面方向の幅寸法(W4、W5)に対して広い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互が接合された接合鋼板であって、
前記接着剤は、前記鋼板相互の間で連続し、
前記スポット溶接によるスポット溶接点は、前記接着剤が延在する方向に沿って間隔を開けて配置され、
前記接着剤における隣接する前記スポット溶接点の間の中間部分での当該接着剤が延在する方向に対して直交し、且つ前記接合鋼板の平面方向の幅寸法は、前記接着剤における前記スポット溶接点での当該接着剤が延在する方向に対して直交し、且つ前記接合鋼板の平面方向の幅寸法に対して広い、接合鋼板。
【請求項2】
スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合して接合鋼板を製造する方法であって、
第1の鋼板に接着剤を連続的に塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記第1の鋼板に第2の鋼板を重ねる工程と、
前記接着剤が延在する方向に沿って前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接し、前記接着剤が延在する方向で間隔を開けてスポット溶接点を形成する工程と、
を備え、
前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接する際に、前記第1の鋼板又は前記第2の鋼板における予め設定された隣接するスポット溶接される部分の間の中間部分を押圧する、接合鋼板の製造方法。
【請求項3】
第1の鋼板と第2の鋼板との間に連続的に接着剤が塗布された状態で前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接して接合鋼板を製造する装置であって、
前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接する溶接チップ部と、
前記第1の鋼板又は前記第2の鋼板における予め設定された隣接するスポット溶接される部分の間の中間部分を押圧する押圧部と、
を備える、接合鋼板の製造装置。
【請求項4】
前記押圧部は、前記スポット溶接される部分と前記接着剤が延在する方向での一方の側又は他方の側で隣接する前記中間部分を押圧する、請求項3に記載の接合鋼板の製造装置。
【請求項5】
前記溶接チップ部は、前記第1の鋼板の側に配置される第1の溶接チップと、前記第2の鋼板の側に配置される第2の溶接チップと、を備え、
前記押圧部は、前記中間部分を前記第1の鋼板の側から押圧する第1の押圧部材と、前記中間部分を前記第2の鋼板の側から押圧する第2の押圧部材と、を備え、
前記第1の押圧部材は、前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の厚さ方向に弾性変形可能な弾性部材を介して前記第1の溶接チップに支持され、
前記第2の押圧部材は、前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の厚さ方向に弾性変形可能な弾性部材を介して前記第2の溶接チップに支持されている、請求項3又は4に記載の接合鋼板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合鋼板、接合鋼板の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合して接合鋼板を製造する方法が開示されている。このとき、特許文献1の接合鋼板の製造方法は、重ね合わせた鋼板の側端部を円弧状の流出防止部材で押さえつつ鋼板相互をスポット溶接することにより、鋼板に対して外側への接着剤のはみ出しを抑制しつつ鋼板相互の間での接着剤の充填性を向上させて鋼板相互の接合強度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の接合鋼板の製造方法は、流出防止部材に接着剤が付着するため、流出防止部材の定期的な掃除が必要となり、接合鋼板の製造が煩雑になる課題を有する。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、鋼板相互の接合強度の向上を図りつつ、簡単に製造可能な接合鋼板、接合鋼板の製造方法及び製造装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る接合鋼板は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互が接合された接合鋼板であって、
前記接着剤は、前記鋼板相互の間で連続し、
前記スポット溶接によるスポット溶接点は、前記接着剤が延在する方向に沿って間隔を開けて配置され、
前記接着剤における隣接する前記スポット溶接点の間の中間部分での当該接着剤が延在する方向に対して直交し、且つ前記接合鋼板の平面方向の幅寸法は、前記接着剤における前記スポット溶接点での当該接着剤が延在する方向に対して直交し、且つ前記接合鋼板の平面方向の幅寸法に対して広い。
【0007】
本開示の一態様に係る接合鋼板の製造方法は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合して接合鋼板を製造する方法であって、
第1の鋼板に接着剤を連続的に塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記第1の鋼板に第2の鋼板を重ねる工程と、
前記接着剤が延在する方向に沿って前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接し、前記接着剤が延在する方向で間隔を開けてスポット溶接点を形成する工程と、
を備え、
前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接する際に、前記第1の鋼板又は前記第2の鋼板における予め設定された隣接するスポット溶接される部分の間の中間部分を押圧する。
【0008】
本開示の一態様に係る接合鋼板の製造装置は、第1の鋼板と第2の鋼板との間に連続的に接着剤が塗布された状態で前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接して接合鋼板を製造する装置であって、
前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とをスポット溶接する溶接チップ部と、
前記第1の鋼板又は前記第2の鋼板における予め設定された隣接するスポット溶接される部分の間の中間部分を押圧する押圧部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鋼板相互の接合強度の向上を図りつつ、簡単に製造可能な接合鋼板、接合鋼板の製造方法及び製造装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をZ軸+側から見た図であり、(b)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をX軸+側から見た図であり、(c)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をY軸+側から見た図である。
【
図2】(a)は、実施の形態1の接合鋼板の製造装置を用いて接合鋼板を製造する様子をX軸+側から見た図であり、(b)は、実施の形態1の接合鋼板の製造装置でスポット溶接される部分と押圧される部分とを示す図である。
【
図3】(a)は、実施の形態1の接合鋼板をZ軸+側から見た図であり、(b)は、実施の形態1の接合鋼板をX軸+側から見た図であり、(c)は、実施の形態1の接合鋼板をY軸+側から見た図である。
【
図4】(a)は、実施の形態2の接合鋼板の製造装置を示す図であり、(b)は、実施の形態2の接合鋼板の異なる製造装置を示す図である。
【
図5】(a)は、他の実施の形態の接合鋼板の製造装置を示す図であり、(b)は、他の実施の形態の接合鋼板の異なる製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0012】
<本開示に至る経緯>
先ず、一般的なスポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合して接合鋼板を製造する流れを説明する。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。
図1(a)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をZ軸+側から見た図であり、
図1(b)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をX軸+側から見た図であり、
図1(c)は、スポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合した一般的な接合鋼板をY軸+側から見た図である。なお、各部材は、
図1(a)乃至
図1(c)で示す参照符号を用いて説明する。
【0013】
一般的にスポット溶接と接着剤とにより鋼板相互を接合して接合鋼板を製造する場合、先ず、例えば、第1の鋼板1のZ軸+側の面に接着剤2を略等しい太さの柱状で連続するように塗布する。このとき、接着剤2は、例えば、Y軸方向に延在するように塗布する。そして、第1の鋼板1に対してZ軸+側に第2の鋼板3を配置し、接着剤2を介して第1の鋼板1と第2の鋼板3とを重ねる。次に、溶接チップで接着剤2を介して第1の鋼板1と第2の鋼板3とを挟み込み、第1の鋼板1と第2の鋼板3とをスポット溶接する工程を、接着剤2が延在する方向(例えば、Y軸+側)に繰り返すと、
図1(a)乃至
図1(c)に示すように、スポット溶接と接着剤2とにより接合された接合鋼板4を製造することができる。このとき、
図1(a)に示すように、接着剤2が延在する方向に沿ってスポット溶接点P1が配置される。
【0014】
このように第1の鋼板1と第2の鋼板3とがY軸方向に間隔を開けてスポット溶接される場合、
図1(b)に示すように、Y軸方向において、溶接チップで第1の鋼板1と第2の鋼板3とが挟み込まれる部分(つまり、予め設定されたスポット溶接される部分)の間の中間部分では、接着剤2がZ軸方向に弾性変形して第1の鋼板1と第2の鋼板3とのZ軸方向の間隔が広くなる。そのため、
図1(a)に示すように、Y軸方向において、隣接するスポット溶接点P1の間の中間部分での接着剤2のX軸方向の幅寸法W1が、スポット溶接点P1近傍での接着剤2のX軸方向の幅寸法W2に対して狭くなり、スポット溶接点P1の間の中間部分の鋼板相互の接合強度が低い課題を有する。そこで、本開示は、隣接するスポット溶接点P1の間の中間部分の鋼板相互の接合強度の高い接合鋼板を簡単に製造可能な、接合鋼板、及び接合鋼板の製造方法及び製造装置を実現する。
【0015】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の接合鋼板の製造装置(以下、単に製造装置と省略する場合がある。)の構成を説明する。
図2(a)は、本実施の形態の製造装置を用いて接合鋼板を製造する様子をX軸+側から見た図であり、
図2(b)は、本実施の形態の製造装置でスポット溶接される部分と押圧される部分とを示す図である。
図2(a)及び
図2(b)は、Y軸方向に連続する第1の鋼板及び第2の鋼板の一部を模式的に示している。本実施の形態の製造装置10は、
図2(a)に示すように、溶接チップ部11及び押圧部12を備えている。溶接チップ部11は、第1の溶接チップ11a、及び第1の溶接チップ11aに対してZ軸-側に配置された第2の溶接チップ11bを備えている。第1の溶接チップ11a及び第2の溶接チップ11bは、導電性材料で形成されている。
【0016】
第1の溶接チップ11aは、例えば、
図2(a)に示すように、Z軸方向に延在する柱形状であり、第1の溶接チップ11aのZ軸-側の端部がZ軸-側に凸状の湾曲面である。第1の溶接チップ11aは、電源(図示を省略)の正極又は陰極の一方に電気的に接続されている。第2の溶接チップ11bは、第1の溶接チップ11aとZ軸方向で対向する。第2の溶接チップ11bは、例えば、Z軸方向に延在する柱形状であり、第2の溶接チップ11bのZ軸+側の端部がZ軸+側に凸状の湾曲面である。第2の溶接チップ11bは、電源の正極又は負極の他方に電気的に接続されている。これらの第1の溶接チップ11aと第2の溶接チップ11bとは、例えば、図示を省略したアクチュエータによってZ軸方向で接近及び離間可能であって、且つX軸方向及びY軸方向に移動可能であるとよい。
【0017】
押圧部12は、例えば、
図2(a)に示すように、溶接チップ部11に対してY軸+側に配置されている。押圧部12は、第1の押圧部材12a、及び第1の押圧部材12aに対してZ軸-側に配置された第2の押圧部材12bを備えている。第1の押圧部材12a及び第2の押圧部材12bは、非導電性材料で形成されており、例えば、樹脂又はセラミックなどで形成されている。第1の押圧部材12aは、例えば、Z軸方向に延在する柱形状であり、第1の押圧部材12aのZ軸-側の端部がZ軸-側に凸状の湾曲面である。第2の押圧部材12bは、第1の押圧部材12aとZ軸方向で対向する。第2の押圧部材12bは、例えば、Z軸方向に延在する柱形状であり、第2の押圧部材12bのZ軸+側の端部がZ軸+側に凸状の湾曲面である。これらの第1の押圧部材12aと第2の押圧部材12bとは、図示を省略したアクチュエータによってZ軸方向で接近及び離間可能であって、且つX軸方向及びY軸方向に移動可能であるとよい。
【0018】
次に、本実施の形態の製造装置10を用いて接合鋼板を製造する流れを説明する。先ず、第1の鋼板13のZ軸+側の面に接着剤14を塗布する。このとき、接着剤14は、例えば、略等しい太さの柱状でY軸方向に連続するように塗布する。次に、第1の鋼板13に対してZ軸+側に第2の鋼板15を配置し、接着剤14を介して第1の鋼板13と第2の鋼板15とを重ねる。このとき、接着剤14は、
図2(b)に示すように設定された、スポット溶接される第1の部分P11、当該第1の部分P11とY軸方向で隣接し、スポット溶接される第2の部分P12、及び第1の部分P11と第2の部分P12との間の略中間部分であって、且つスポット溶接する際に押圧される第3の部分P13とZ軸方向で重なるように配置される。
【0019】
次に、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11をZ軸方向で挟み込むように第1の溶接チップ11a及び第2の溶接チップ11bを配置すると共に、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第3の部分P13をZ軸方向で挟み込むように第1の押圧部材12a及び第2の押圧部材12bを配置する。そして、第1の溶接チップ11aと第2の溶接チップ11b、及び第1の押圧部材12aと第2の押圧部材12bとで、接着剤14を介して第1の鋼板13と第2の鋼板15とをZ軸方向で挟み込み、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11をスポット溶接すると共に、第1の鋼板13及び第2の鋼板15を介して第1の部分P11と第2の部分P12との間の略中間部分(即ち、第3の部分P13)の接着剤14を押圧する。
【0020】
このとき、第3の部分P13での第1の鋼板13と第2の鋼板15との接触電気抵抗が第1の部分P11での第1の鋼板13と第2の鋼板15との接触電気抵抗に対して大きくなるように、第1の押圧部材12aと第2の押圧部材12bとで第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込む力は、第1の溶接チップ11aと第2の溶接チップ11bとで第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込む力に対して小さいとよい。これにより、第3の部分P13での意図しないスポット溶接を抑制することができる。
【0021】
そして、溶接チップ部11及び押圧部12を、順次、第1の部分P11と第2の部分P12とのY軸方向の間隔分、例えば、接着剤14の塗布の進行方向であるY軸+側に移動させてスポット溶接及び押圧する工程を繰り返すと、接合鋼板を製造することができる。このように本実施の形態の製造装置10及び製造方法は、スポット溶接する際に、第1の部分P11と第2の部分P12との間の略中間部分の接着剤14を押圧部12によって第1の鋼板13及び第2の鋼板15を介して押圧する。これにより、第1の鋼板13と第2の鋼板15とをスポット溶接する際の第1の部分P11と第2の部分P12との間の略中間部分での接着剤14のZ軸方向への弾性変形を抑制しつつ、接着剤14をX軸方向に押し広げることができる。
【0022】
そのため、本実施の形態の製造装置10及び製造方法は、第1の鋼板13と第2の鋼板15とをスポット溶接する際に、第1の部分P11と第2の部分P12との間の略中間部分を押圧部12によって押圧する簡単な工程で、スポット溶接点の間の略中間部分での接合強度を向上させることができ、結果として、第1の鋼板13と第2の鋼板15との接合強度の略均一化を図ると共に、第1の鋼板13と第2の鋼板15との接合強度の高い接合鋼板を製造することができる。
【0023】
ここで、接合鋼板は、以下の構成であることが好ましい。
図3(a)は、本実施の形態の接合鋼板をZ軸+側から見た図であり、
図3(b)は、本実施の形態の接合鋼板をX軸+側から見た図であり、
図3(c)は、本実施の形態の接合鋼板をY軸+側から見た図である。なお、
図3(a)及び
図3(b)は、Y軸方向で連続する接合鋼板の一部を模式的に示している。接合鋼板16は、例えば、
図3(a)乃至
図3(c)に示すように、接着剤14を介してスポット溶接点P21、P22でのスポット溶接により第1の鋼板13と第2の鋼板15とが接合されている。このとき、隣接するスポット溶接点P21とP22との間の略中間部分での接着剤14のX軸方向の幅寸法W3が、スポット溶接点P21、P22近傍での接着剤14のX軸方向の幅寸法W4、W5に対して広いとよい。これにより、隣接するスポット溶接点P21とP22との間の中間部分での接合強度を確実に向上させることができる。
【0024】
<実施の形態2>
図4(a)は、本実施の形態の製造装置を示す図であり、
図4(b)は、本実施の形態の異なる製造装置を示す図である。なお、
図4(a)及び
図4(b)では、接着剤14を省略して図を簡略化している。本実施の形態の製造装置20は、実施の形態1の製造装置10と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略し、等しい部材には等しい符号を用いて説明する。製造装置20は、
図4(a)に示すように、溶接チップ部21、第1の押圧部22、第2の押圧部23、第1の支持部24及び第2の支持部25を備えている。溶接チップ部21は、第1の溶接チップ21a、及び第1の溶接チップ21aに対してZ軸-側に配置される第2の溶接チップ21bを備えている。
【0025】
第1の押圧部22は、
図4(a)に示すように、溶接チップ部21に対してY軸+側に配置されている。第1の押圧部22は、第1の押圧部材22a、及び第1の押圧部材22aに対してZ軸-側に配置される第2の押圧部材22bを備えている。第1の押圧部材22aは、非導電性材料で形成されており、例えば、本体部22c、第1のフランジ部22d及び第2のフランジ部22eを備えている。本体部22cは、例えば、Z軸方向に延在する柱形状であり、本体部22cのZ軸-側の端部がZ軸-側に凸状の湾曲面である。第1のフランジ部22dは、本体部22cのZ軸+側の端部から当該本体部22cの外側に向かって突出しており、例えば、環形状である。第2のフランジ部22eは、第1のフランジ部22dに対してZ軸-側に配置されている。第2のフランジ部22eは、本体部22cから外側に向かって突出しており、例えば、環形状である。
【0026】
第2の押圧部材22bも、非導電性材料で形成されており、例えば、
図4(a)に示すように、本体部22f、第1のフランジ部22g及び第2のフランジ部22hを備えている。このような第2の押圧部材22bは、第1の押圧部材22aに対してY軸と略平行な軸を対称軸とする線対称の形状である。
【0027】
第2の押圧部23は、
図4(a)に示すように、溶接チップ部21に対してY軸-側に配置されている。第2の押圧部23は、第1の押圧部22と略等しい構成とされており、第1の押圧部材23a及び第2の押圧部材23bを備えている。詳細には、第1の押圧部材23aは、例えば、本体部23c、本体部23cのZ軸+側の端部に形成された第1のフランジ部23d、及びに第1のフランジ部23dに対してZ軸-側に配置された第2のフランジ部23eを備えている。第2の押圧部材23bは、例えば、本体部23f、本体部23fのZ軸-側の端部に形成された第1のフランジ部23g、及び第1のフランジ部23gに対してZ軸+側に配置された第2のフランジ部23hを備えている。
【0028】
第1の支持部24は、
図4(a)に示すように、第1の押圧部22の第1の押圧部材22a及び第2の押圧部23の第1の押圧部材23aを第1の溶接チップ21aに支持する。第1の支持部24は、例えば、アーム部24a、第1の弾性部材24b及び第2の弾性部材24cを備えている。アーム部24aは、例えば、板形状であり、第1の溶接チップ21aに固定されている。そして、アーム部24aにおける第1の溶接チップ21aからY軸+側に突出する部分に第1の貫通孔24dが形成され、アーム部24aにおける第1の溶接チップ21aからY軸-側に突出する部分に第2の貫通孔24eが形成されている。
【0029】
アーム部24aの第1の貫通孔24dには、
図4(a)に示すように、第1の押圧部22の第1の押圧部材22aの本体部22cが通されている。このとき、第1の押圧部22の第1のフランジ部22dと第2のフランジ部22eとは、Z軸方向でアーム部24aを挟むように配置されている。アーム部24aの第2の貫通孔24eには、第2の押圧部23の第1の押圧部材23aの本体部23cが通されている。このとき、第2の押圧部23の第1のフランジ部23dと第2のフランジ部23eとは、Z軸方向でアーム部24aを挟むように配置されている。
【0030】
第1の弾性部材24bは、例えば、
図4(a)に示すように、Z軸方向に弾性変形可能なコイルバネなどであり、第1の押圧部22の第1の押圧部材22aの本体部22cに通された状態で、アーム部24aと第1の押圧部材22aの第2のフランジ部22eとの間に配置されている。第2の弾性部材24cは、例えば、Z軸方向に弾性変形可能なコイルバネなどであり、第2の押圧部23の第1の押圧部材23aの本体部23cに通された状態で、アーム部24aと第1の押圧部材23aの第2のフランジ部23eとの間に配置されている。
【0031】
第2の支持部25は、
図4(a)に示すように、第1の押圧部22の第2の押圧部材22b及び第2の押圧部23の第2の押圧部材23bを第2の溶接チップ21bに支持する。第2の支持部25は、第1の支持部24と略等しい構成とされている。そのため、重複する説明は省略するが、第2の支持部25は、第2の溶接チップ21bに固定され、第1の押圧部22の第2の押圧部材22bの本体部22fが通される第1の貫通孔25d及び第2の押圧部23の第2の押圧部材23bの本体部23fが通される第2の貫通孔25eが形成されたアーム部25aを備えている。また、第2の支持部25は、第1の押圧部22の第2の押圧部材22bの本体部22fが通され、アーム部25aと第1の押圧部22の第2の押圧部材22bの第2のフランジ部22hとの間に配置される第1の弾性部材25b、及び第2の押圧部23の第2の押圧部材23bの本体部23fが通され、アーム部25aと第2の押圧部23の第2の押圧部材23bの第2のフランジ部23hとの間に配置される第2の弾性部材25cを備えている。
【0032】
このように第1の支持部24によって第1の押圧部22の第1の押圧部材22a及び第2の押圧部23の第1の押圧部材23aが第1の溶接チップ21aに支持されている。また、第2の支持部25によって第1の押圧部22の第2の押圧部材22b及び第2の押圧部23の第2の押圧部材23bが第2の溶接チップ21bに支持されている。そして、第1の溶接チップ21a、第1の押圧部22の第1の押圧部材22a及び第2の押圧部23の第1の押圧部材23aと、第2の溶接チップ21b、第1の押圧部22の第2の押圧部材22b及び第2の押圧部23の第2の押圧部材23bと、は図示を省略したアクチュエータによって近接及び離間可能であって、且つX軸方向及びY軸方向に一体的に移動可能であるとよい。
【0033】
このとき、後述するように、第1の溶接チップ21aを第2の鋼板15に接触させた際に、第1の押圧部22の第1の押圧部材22aが第1の弾性部材24bから所定の付勢力を付与された状態で第2の鋼板15に接触すると共に、第2の押圧部23の第1の押圧部材23aが第2の弾性部材24cから所定の付勢力を付与された状態で第2の鋼板15に接触する。また、第2の溶接チップ21bを第1の鋼板13に接触させた際に、第1の押圧部22の第2の押圧部材22bが第1の弾性部材25bから所定の付勢力を付与された状態で第1の鋼板13に接触すると共に、第2の押圧部23の第2の押圧部材23bが第2の弾性部材25cから所定の付勢力を付与された状態で第1の鋼板13に接触する。
【0034】
次に、本実施の形態の製造装置20を用いて接合鋼板を製造する流れを説明する。なお、第1の鋼板13と第2の鋼板15とを重ねる工程までは、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。接着剤14を介して第1の鋼板13と第2の鋼板15とが重ねられた状態で、第1の部分P11で第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込むように第1の溶接チップ21a及び第2の溶接チップ21bを配置する。
【0035】
このとき、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分をZ軸方向で挟み込むように第1の押圧部22の第1の押圧部材22a及び第2の押圧部材22bが配置される。それと共に、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接する既にスポット溶接された部分(即ち、予め設定されたスポット溶接される部分)との間の略中間部分をZ軸方向で挟み込むように第2の押圧部23の第1の押圧部材23a及び第2の押圧部材23bが配置される。
【0036】
つまり、第1の押圧部22は、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分を押圧できるように溶接チップ部21に固定されている。また、第2の押圧部23は、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分を押圧できるように溶接チップ部21に固定されている。
【0037】
次に、第1の溶接チップ21aと第2の溶接チップ21b、第1の押圧部22の第1の押圧部材22aと第2の押圧部材22b、及び第2の押圧部23の第1の押圧部材23aと第2の押圧部材23bとで、接着剤14を介して第1の鋼板13と第2の鋼板15とを挟み込み、第1の鋼板13及び第2の鋼板15における第1の部分P11をスポット溶接する。このとき、第1の押圧部22によって第1の鋼板13及び第2の鋼板15を介して第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分の接着剤14が押圧される。それと共に、第2の押圧部23によって第1の鋼板13及び第2の鋼板15を介して第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分の接着剤14が押圧される。
【0038】
これにより、スポット溶接する際に、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分の接着剤14だけではなく、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分の接着剤14のZ軸方向への弾性変形も抑制しつつ、当該接着剤14をX軸方向に押し広げることができる。
【0039】
このとき、第1の押圧部22の第1の押圧部材22aと第2の押圧部材22bとで第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込む力、及び第2の押圧部23の第1の押圧部材23aと第2の押圧部材23bとで第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込む力が、第1の溶接チップ21aと第2の溶接チップ21bとで第1の鋼板13及び第2の鋼板15を挟み込む力に対して小さくなるように、第1の支持部24の第1の弾性部材24b並びに第2の弾性部材24c、及び第2の支持部25の第1の弾性部材25b並びに第2の弾性部材25cの付勢力が設定されているとよい。
【0040】
これにより、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分での第1の鋼板13と第2の鋼板15との接触電気抵抗、及び第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分での第1の鋼板13と第2の鋼板15との接触電気抵抗を、スポット溶接される部分P11での第1の鋼板13と第2の鋼板15との接触電気抵抗に対して大きくすることができる。その結果、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分、又は第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分での意図しないスポット溶接を抑制することができる。
【0041】
そして、溶接チップ部21、第1の押圧部22及び第2の押圧部23を、順次、第1の部分P11と第2の部分P12とのY軸方向の間隔分、Y軸+側に移動させてスポット溶接及び押圧する工程を繰り返すと、接合鋼板を製造することができる。このように本実施の形態の製造装置20及び製造方法は、スポット溶接する際に、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸+側で隣接する第2の部分P12との間の略中間部分の接着剤14だけではなく、第1の部分P11と当該第1の部分P11とY軸-側で隣接するスポット溶接される部分との間の略中間部分の接着剤14のZ軸方向への弾性変形も抑制しつつ、当該接着剤14をX軸方向に押し広げることができる。
【0042】
そのため、本実施の形態の製造装置20及び製造方法は、実施の形態1の製造装置10及び製造方法に比べて、より確実に、第1の鋼板13と第2の鋼板15との接合強度の均一化を図ると共に、第1の鋼板13と第2の鋼板15との接合強度の高い接合鋼板を製造することができる。また、本実施の形態の製造装置20は、溶接チップ部と押圧部とを一体的に構成しているため、溶接チップ部と押圧部とを別構成とした場合に比べて、設備費を低減することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態の製造装置20は、溶接チップ部21を挟んで第1の押圧部22及び第2の押圧部23を備えているが、例えば、
図4(b)に示すように、スポット溶接点を順次、形成する方向(即ち、Y軸+側)に対して逆側に配置された第2の押圧部23を省略してもよい。
【0044】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態の製造装置において、押圧部材の先端部を凸状の湾曲面としたが、押圧部材の先端部の形状は限定されず、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、平坦面であってもよい。また、第1の押圧部材と第2の押圧部材とが異なる形状であってもよい。
例えば、上記実施の形態の製造方法などによって、
図3(a)乃至
図3(c)に示す接合鋼板16を製造したが、製造された成果物が
図3(a)乃至
図3(c)に示す接合鋼板16の構成であればよく、当該接合鋼板16の製造方法などは限定されない。
例えば、上記実施の形態では、第1の部分P11でスポット溶接する際に、第1の部分P11と、当該第1の部分P11とY軸方向で隣接するスポット溶接される部分と、の間の略中間部分を押圧したが、押圧する部分は、任意の隣接するスポット溶接される部分の間の略中間部分であればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 製造装置、11 溶接チップ部、11a 第1の溶接チップ、11b 第2の溶接チップ、12 押圧部、12a 第1の押圧部材、12b 第2の押圧部材、13 第1の鋼板、14 接着剤 15 第2の鋼板、16 接合鋼板、20 製造装置、21 溶接チップ部、21a 第1の溶接チップ、21b 第2の溶接チップ、22 第1の押圧部、22a 第1の押圧部材、22b 第2の押圧部材、23 第2の押圧部、23a 第1の押圧部材、23b 第2の押圧部材、24 第1の支持部、24b 第1の弾性部材、24c 第2の弾性部材、25 第2の支持部、25b 第1の弾性部材、25c 第2の弾性部材、P1、P21、P22 スポット溶接点、P11 第1の部分、P12 第2の部分、P13 第3の部分、W1 スポット溶接点の間の中間部分での接着剤のX軸方向の幅寸法、W2 スポット溶接点近傍での接着剤のX軸方向の幅寸法、W3 スポット溶接点の間の略中間部分での接着剤のX軸方向の幅寸法、W4、W5 スポット溶接点近傍での接着剤のX軸方向の幅寸法