(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020908
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】測定システム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240207BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240207BHJP
G06T 3/06 20240101ALI20240207BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01C15/00 102C
G06T3/00 720
G01B11/24 K
G01C15/00 103A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123460
(22)【出願日】2022-08-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】521224642
【氏名又は名称】株式会社マプリィ
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】山口 圭司
【テーマコード(参考)】
2F065
5B057
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065FF67
2F065GG04
2F065PP22
2F065SS13
5B057BA02
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA13
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CD14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元レーザースキャナーの点群の点群座標系を地理座標系に高精度に変換する。
【解決手段】算出制御部106は、撮影画像内の点群のうち、公共基準対応点が指定されると、地理座標系における公共基準点の三次元座標から、点群座標系における公共基準対応点の三次元座標と、地理座標系における位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを減算することで、地理座標系における位置通信装置のアンテナ位置から三次元レーザースキャナーの点群基準位置までの三次元距離を補正情報として算出する。変換制御部107は、三次元レーザースキャナーによって点群座標系における点群の三次元座標と、位置通信装置によって地理座標系におけるアンテナ位置の三次元座標とが取得されると、点群座標系における点群の三次元座標に、補正情報と、地理座標系におけるアンテナ位置の三次元座標とを加算することで、点群の三次元座標の点群座標系を地理座標系に変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元レーザースキャナーとカメラとが同等の方向を向いて付属された携帯端末装置と位置通信装置とを備えた測定システムであって、
前記三次元レーザースキャナーを所定の方向から、地理座標系における三次元座標が既知の公共基準点を有する公共基準部に向けた所定の状態で、前記位置通信装置を用いて、地理座標系における当該位置通信装置のアンテナのアンテナ位置の三次元座標を取得する位置取得制御部と、
前記状態で、前記三次元レーザースキャナーで前記公共基準部をスキャンすることで、当該三次元レーザースキャナーの所定の位置を点群基準位置とした点群座標系における前記公共基準部を含む周辺対象領域の点群の三次元座標を取得する点群取得制御部と、
前記状態で、前記カメラで、前記周辺対象領域が写された撮影画像を取得する画像取得制御部と、
前記点群の点群座標系を前記撮影画像のカメラ座標系に対応付けることで、当該撮影画像内の周辺対象領域に点群を指定可能に重ねて表示させる表示制御部と、
前記撮影画像内の点群のうち、前記公共基準点に対応する公共基準対応点が指定されると、地理座標系における前記公共基準点の三次元座標から、点群座標系における前記公共基準対応点の三次元座標と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを減算することで、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置から前記三次元レーザースキャナーの点群基準位置までの三次元距離を補正情報として算出する算出制御部と、
前記補正情報が算出された後に、前記三次元レーザースキャナーによって点群座標系における点群の三次元座標と、前記位置通信装置によって地理座標系における当該位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とが取得されると、点群座標系における前記点群の三次元座標に、前記補正情報と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを加算することで、前記点群の三次元座標の点群座標系を地理座標系に変換する変換制御部と、
を備える測定システム。
【請求項2】
二つ以上の異なる方向から一つの公共基準部に対して、前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標の取得と、前記周辺対象領域の点群の三次元座標の取得と、前記周辺対象領域が写された撮影画像の取得と、前記撮影画像内の周辺対象領域への点群の表示と、前記補正情報の算出とを行い、それぞれの方向から得られた複数の補正情報の平均値を補正情報として取り扱う、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記位置通信装置は、移動局であり、
前記移動局に対して基準局を備え、
前記位置取得制御部は、前記移動局と前記基準局との通信に基づいて、地理座標系における当該基準局のアンテナ位置の三次元座標から、地理座標系における前記移動局のアンテナ位置の三次元座標を取得する、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
三次元レーザースキャナーとカメラとが同等の方向を向いて付属された携帯端末装置と位置通信装置とを備えた測定システムの測定方法であって、
前記三次元レーザースキャナーを所定の方向から、地理座標系における三次元座標が既知の公共基準点を有する公共基準部に向けた所定の状態で、前記位置通信装置を用いて、地理座標系における当該位置通信装置のアンテナのアンテナ位置の三次元座標を取得する位置取得制御工程と、
前記状態で、前記三次元レーザースキャナーで前記公共基準部をスキャンすることで、当該三次元レーザースキャナーの所定の位置を点群基準位置とした点群座標系における前記公共基準部を含む周辺対象領域の点群の三次元座標を取得する点群取得制御工程と、
前記状態で、前記カメラで、前記周辺対象領域が写された撮影画像を取得する画像取得制御工程と、
前記点群の点群座標系を前記撮影画像のカメラ座標系に対応付けることで、当該撮影画像内の周辺対象領域に点群を指定可能に重ねて表示させる表示制御工程と、
前記撮影画像内の点群のうち、前記公共基準点に対応する公共基準対応点が指定されると、地理座標系における前記公共基準点の三次元座標から、点群座標系における前記公共基準対応点の三次元座標と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを減算することで、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置から前記三次元レーザースキャナーの点群基準位置までの三次元距離を補正情報として算出する算出制御工程と、
前記補正情報が算出された後に、前記三次元レーザースキャナーによって点群座標系における点群の三次元座標と、前記位置通信装置によって地理座標系における当該位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とが取得されると、点群座標系における前記点群の三次元座標に、前記補正情報と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを加算することで、前記点群の三次元座標の点群座標系を地理座標系に変換する変換制御工程と、
を備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元測量機(トータルステーション)を用いた測量技術の他に、写真測量技術やレーザー測量技術が存在しているが、近年、点群を取得する三次元レーザースキャナーの発達に伴い、この三次元レーザースキャナーとカメラとを用いた測量技術が登場している。
【0003】
例えば、特開2022-027111号公報(特許文献1)には、カメラ部と、拡張現実表示部と、位置座標取得部と、座標変換部と、を備える測定処理装置及び測定処理方法が開示されている。カメラ部は、現実空間を撮影し、拡張現実表示部は、撮影されている現実空間と、当該撮影されている現実空間を3次元データで示した仮想空間と重ね合わせて表示する。位置座標取得部は、緯度・経度・高度を計測する位置特定機器から測定点を取得し、座標変換部は、位置特定機器を撮影し、撮影された位置特定機器の仮想空間内の位置座標を、取得した現実空間の測定点の位置座標と対応付けて、所定の変換式で、3次元データの座標を現実空間の位置座標に変換する。これにより、特別な測量技術を必要とすることなく、測量対象となる3次元データを容易に生成するために、容易な操作で、3次元データで構成する仮想空間の位置座標を、現実空間の緯度・経度・高度情報に正確に置換することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設分野、土木分野、森林分野、測量分野、防災分野等の様々な分野において、三次元レーザースキャナーにより得られる点群の三次元座標を収集して活用するニーズが高まってきている。
【0006】
ここで、上述の分野での三次元座標系は、現実空間における地理座標系であり、地理座標系は、通常、GNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)を用いて表現される。
【0007】
一方、三次元レーザースキャナーの点群の三次元座標系は、三次元レーザースキャナーの所定の位置を基準とした点群座標系であるため、点群の点群座標系は、地理座標系に変換する必要がある。
【0008】
ここで、三次元レーザースキャナーを備えた携帯端末装置とGNSS等の位置通信装置とを組み合わせることで、点群の三次元座標を収集する場合、単純に、点群における点群座標系の基準座標を位置通信装置における地理座標系の位置座標に変更することで、点群の点群座標系を地理座標系に変換することが出来る。
【0009】
しかしながら、上述の変更方法では、位置通信装置のアンテナ位置と三次元レーザースキャナーの基準位置とが一致していることを前提としている。一方、実際は、位置通信装置のアンテナ位置と三次元レーザースキャナーの基準位置との間に所定の距離があるため、変換後の点群の三次元座標は、実際の座標と比較して、この距離だけズレることになる。この距離は、装置の嵩高さ等の機械的な原因によって、数cmと大きく、この距離だけ、点群の三次元座標に誤差が生じることになる。一方、上述の分野では、高精度が求められることから、機械的な原因によって、測定精度に限界があり、このような方法を上述の分野で適用することが出来ないという課題がある。
【0010】
ここで、特許文献1に記載の技術では、撮影された位置特定機器(位置通信装置)の仮想空間内の位置座標を、現実空間の測定点の位置座標に対応付けることで、仮想空間の位置座標を、現実空間の緯度・経度・高度情報に正確に置換することが出来るものの、位置特定機器の位置座標は、一般的に、実際の座標と比較して、数cm程度の誤差が生じるため、上述と同様に、測定精度に限界があるという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、三次元レーザースキャナーの点群の点群座標系を地理座標系に高精度に変換することが可能な測定システム及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る測定システムは、三次元レーザースキャナーとカメラとが同等の方向を向いて付属された携帯端末装置と位置通信装置とを備えた測定システムであって、位置取得制御部と、点群取得制御部と、画像取得制御部と、表示制御部と、算出制御部と、変換制御部と、を備える。位置取得制御部は、前記三次元レーザースキャナーを所定の方向から、地理座標系における三次元座標が既知の公共基準点を有する公共基準部に向けた所定の状態で、前記位置通信装置を用いて、地理座標系における当該位置通信装置のアンテナのアンテナ位置の三次元座標を取得する。点群取得制御部は、前記状態で、前記三次元レーザースキャナーで前記公共基準部をスキャンすることで、当該三次元レーザースキャナーの所定の位置を点群基準位置とした点群座標系における前記公共基準部を含む周辺対象領域の点群の三次元座標を取得する。画像取得制御部は、前記状態で、前記カメラで、前記周辺対象領域が写された撮影画像を取得する。表示制御部は、前記点群の点群座標系を前記撮影画像のカメラ座標系に対応付けることで、当該撮影画像内の周辺対象領域に点群を指定可能に重ねて表示させる。算出制御部は、前記撮影画像内の点群のうち、前記公共基準点に対応する公共基準対応点が指定されると、地理座標系における前記公共基準点の三次元座標から、点群座標系における前記公共基準対応点の三次元座標と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを減算することで、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置から前記三次元レーザースキャナーの点群基準位置までの三次元距離を補正情報として算出する。変換制御部は、前記補正情報が算出された後に、前記三次元レーザースキャナーによって点群座標系における点群の三次元座標と、前記位置通信装置によって地理座標系における当該位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とが取得されると、点群座標系における前記点群の三次元座標に、前記補正情報と、地理座標系における前記位置通信装置のアンテナ位置の三次元座標とを加算することで、前記点群の三次元座標の点群座標系を地理座標系に変換する。
【0013】
本発明に係る測定方法は、三次元レーザースキャナーとカメラとが同等の方向を向いて付属された携帯端末装置と位置通信装置とを備えた測定システムの測定方法であって、位置取得制御工程と、点群取得制御工程と、画像取得制御工程と、表示制御工程と、算出制御工程と、変換制御工程と、を備える。測定方法の各制御工程は、測定システムの各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、三次元レーザースキャナーの点群の点群座標系を地理座標系に高精度に変換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る測定システムの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る測定方法の実行手順を示すためのフローチャートである。
【
図3】測定者が基準局を設置して、携帯端末装置と移動局との通信接続を開始した場合の一例を示す図(
図3A)と、移動局のアンテナのアンテナ位置の三次元座標を取得する場合の一例を示す図(
図3B)と、である。
【
図4】三次元レーザースキャナーで周辺対象領域の点群の三次元座標を取得する場合の一例を示す図(
図4A)と、カメラで周辺対象領域の撮影画像を取得する場合の一例を示す図(
図4B)と、である。
【
図5】携帯端末装置と、撮影画像と、公共基準部との関係を示す場合の一例を示す図である。
【
図6】地理座標系における移動局のアンテナ位置から三次元レーザースキャナーの点群基準位置までの三次元距離を算出する場合の一例を示す図である。
【
図7】四つの方向のそれぞれから補正情報を算出する場合の一例を示す図(
図7A)と、補正情報の算出後における点群Q2の三次元座標の点群座標系を地理座標系に変換する場合の一例を示す図(
図7B)と、である。
【
図8】実施例における測定システムと撮影画像と測定対象領域の点群の一例を示す図(
図8A)と、補正情報の使用前と使用後の既知の部材の長さの測定結果と、既知の部材の正しい長さとの一例を示す図(
図8B)と、である。
【
図9】実施例における所定の屋内での点群と測定値と実測値との一例を示す図(
図9A)と、実施例における所定の屋外での点群と測定値と実測値との一例を示す図(
図9B)と、である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明に係る測定システム1は、
図1に示すように、携帯端末装置10と、三次元レーザースキャナー11と、カメラ12と、位置通信装置13とから基本的に構成される。
図1では、三次元レーザースキャナー11とカメラ12のそれぞれは、携帯端末装置10に付属の形態であるが、携帯端末装置10に接続された形態であっても構わない。
【0018】
ここで、携帯端末装置10は、画面を表示する表示部と、ユーザの操作により所定の指示キーの入力を受け付ける受付部(入力部)と、データを記憶させる記憶部と、各部を制御する制御部と、データを出力する出力部と、通信部と、を備えている。携帯端末装置10は、例えば、タブレット型端末装置、携帯用のノートパソコン、タッチパネル付きの携帯端末装置(スマートフォン)等を挙げることが出来る。
【0019】
又、三次元レーザースキャナー11は、レーザー照射部と、散乱光検出部と、点群算出部と、を備える。ここで、レーザー照射部は、対象物にパルス状のレーザーを発光する。散乱光検出部は、対象物に照射したレーザーに対する散乱光を検出する。点群算出部は、検出された散乱光に基づいて、三次元レーザースキャナー10から対象物までの距離や対象物の表面における散乱光が散乱した位置の点群の三次元データを算出する。三次元レーザースキャナー10は、例えば、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)センサーを挙げることが出来る。三次元レーザースキャナー11で取得される三次元点群データは、複数の三次元位置情報の集合体である。
【0020】
又、カメラ12は、可視光カメラを基本とし、デジタル写真を撮影することが出来れば、どのような種類のカメラでも良い。ここで、三次元レーザースキャナー11とカメラ12とは同等の方向を向いて携帯端末装置10に付属されている。そのため、三次元レーザースキャナー11とカメラ12とを所定の計測対象領域に向けると、三次元レーザースキャナー11とカメラ12とが同一の計測対象領域に対する三次元点群データと二次元画像の撮影画像とを得ることが出来る。
【0021】
又、位置通信装置13は、アンテナ13aを備えた移動局である。位置通信装置13は、携帯端末装置10に装着可能な装着装置13bによって携帯端末装置10に装着されている。移動局13は、例えば、GPS受信装置(1周波GNSS受信機)や2周波マルチGNSS受信機を挙げることが出来る。又、位置通信装置13は、携帯端末装置10に無線通信可能に接続される。
【0022】
又、移動局13に対応した基準局14(基地局)が更に設けられてもよい。基準局14は、GNSSの衛星15からの電波に基づいて、自身の位置座標を地理座標系で算出する。又、移動局13は、基準局14と電波で通信して、地理座標系における基準局14の位置座標を用いて、自身の位置座標を地理座標系で算出することが出来る。ここで、地理座標系とは、所定の位置を基準とした三次元座標系であり、建設分野、土木分野、森林分野、測量分野、防災分野等の様々な分野で利用されている。
【0023】
さて、携帯端末装置10は、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD、SSD等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD、SSD等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで当該各制御部を実現する。
【0024】
次に、
図1-
図7を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、測定者が、三次元レーザースキャナー11とカメラ12が付属の携帯端末装置10に位置通信装置13(移動局)を装着装置13bで装着して、基準局14を携帯し、測定を希望する所定の測定対象領域(例えば、平坦な土地)に訪れる。そして、測定者は、
図3Aに示すように、基準局14を見晴らしの良い平地に設置して、基準局14の電源を投入する。
【0025】
次に、測定者は、携帯端末装置10を起動して、測定専用のアプリケーションを立ち上げ、移動局13の電源を投入する。すると、携帯端末装置10の初期制御部101は、
図3Aに示すように、携帯端末装置10の通信部を起動して、移動局13と通信接続を開始する(
図2:S101)。
【0026】
ここで、初期制御部101の通信接続の方法に特に限定は無いが、例えば、Bluetooth(登録商標)等の無線通信接続の方法を挙げることが出来る。この場合は、携帯端末装置10と移動局13とのそれぞれに無線通信部が設けられ、それぞれの無線通信部を介して、初期制御部101は移動局13と通信接続を行う。
【0027】
さて、初期制御部101が移動局13と通信接続を開始すると、次に、初期制御部101は、携帯端末装置10に内蔵のコンパス(例えば、電子コンパス)のキャリブレーションを行う(
図2:S102)。
【0028】
ここで、初期制御部101のキャリブレーションの方法に特に限定は無いが、例えば、初期制御部101が、コンパスを再起動させる方法や携帯端末装置10を所定の動作に従って動かすように案内する案内画面を表示して、測定者に携帯端末装置10を動かして、コンパスが正しい方向を示すように案内する方法を挙げることが出来る。コンパスは、正しい方向を向かなかったり、狂ったりする可能性が高いことから、このようなキャリブレーションを行うことで、方向的な誤差を無くして、正しい方向を向いたコンパスを用いて、点群の収集を行うことが可能となる。
【0029】
さて、初期制御部101がキャリブレーションを完了すると、測定者は、測定対象領域のうち、地理座標系における三次元座標(xp1、yp1、zp1)が既知の公共基準点P1を有する公共基準部16を探し、公共基準部16の近傍に来ると、三次元レーザースキャナー11を所定の方向(例えば、左方向)から公共基準部16に向けて、開始キーを携帯端末装置10に入力する。すると、携帯端末装置10の位置取得制御部102が、三次元レーザースキャナー11を所定の方向(左方向)から公共基準部16に向けた所定の状態で、移動局13を用いて、地理座標系における当該移動局13のアンテナ13aのアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)を取得する(
図2:S103)。
【0030】
ここで、位置取得制御部102の取得方法に特に限定は無いが、例えば、位置取得制御部102は、
図3Bに示すように、通信接続された移動局13を介して、基準局14と電波で通信する。基準局14は、衛星15と電波で通信することで、地理座標系における基準局14のアンテナ14aのアンテナ位置P3の三次元座標(xp3、yp3、zp3)を取得している。一方、移動局13は、基準局14と電波で通信して、基準局14のアンテナ位置P3の三次元座標(xp3、yp3、zp3)から、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)を取得することが出来る。そこで、位置取得制御部102は、移動局13と基準局14との通信に基づいて、地理座標系における基準局14のアンテナ位置P3の三次元座標(xp3、yp3、zp3)から、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)を取得する。
【0031】
さて、位置取得制御部102がアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)の取得を完了すると、次に、携帯端末装置10の点群取得制御部103は、前記状態で、三次元レーザースキャナー11で公共基準部16をスキャンすることで、当該三次元レーザースキャナー11の所定の位置Q0を点群基準位置(xq0、yq0、zq0)とした点群座標系における公共基準部16を含む周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)を取得する(
図2:S104)。
【0032】
ここで、点群取得制御部103の取得方法に特に限定は無いが、例えば、
図4Aに示すように、測定者が、携帯端末装置10に付属の三次元レーザースキャナー11のレーザー照射部を、所定の方向(例えば、左方向)から公共基準部16に向けて、スキャンキーを入力すると、点群取得制御部103は、スキャンキーの入力を受けて、三次元レーザースキャナー11のレーザーの照射を開始する。
【0033】
照射されたレーザーは、三次元レーザースキャナー11に対向する公共基準部16の一部で反射して散乱光として散乱する。そして、三次元レーザースキャナー11の散乱光検出部は、散乱光を検出し、三次元レーザースキャナー11の点群算出部は、散乱光が散乱した位置の点群の三次元座標(三次元点群データ)を取得する。
【0034】
ここで、点群の三次元座標は、散乱光が三次元レーザースキャナー11に戻ってきた位置の点を含み、散乱光が三次元レーザースキャナー11に戻ってこなかった位置の点は含まれない。又、点群の三次元座標に含まれる所定の点Qの三次元座標(xq、yq、zq)は、三次元レーザースキャナー11の点群基準位置Q0(例えば、三次元レーザースキャナー11のレーザー照射部)の三次元座標(xq0、yq0、zq0)を基準(原点)とした三次元座標系(点群座標系)で構成される。
【0035】
さて、点群取得制御部103が、周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)の取得を完了すると、次に、携帯端末装置10の画像取得制御部104は、前記状態で、カメラ12で、周辺対象領域が写された撮影画像Iを取得する(
図2:S105)。
【0036】
ここで、画像取得制御部104の取得方法に特に限定は無いが、例えば、
図4Aに示すように、測定者は、三次元レーザースキャナー11とともに、カメラ12を周辺対象領域に向けているため、画像取得制御部104は、周辺対象領域を撮影して、周辺対象領域を示した撮影画像I(二次元画像)を取得する。
【0037】
ここで、三次元レーザースキャナー11とカメラ12とは同等の方向を向いているため、三次元レーザースキャナー11により取得された点群Qには、カメラ12により取得された撮影画像Iに含まれる周辺対象領域の公共基準点P0が含まれることになる。
【0038】
尚、上述では、先ず、移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)を取得し(
図2:S103)、周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)を取得し(
図2:S104)、最後に、周辺対象領域が写された撮影画像Iを取得している(
図2:S105)が、これらの取得の順番に特に限定は無く、相互に入れ替わっても構わない。例えば、周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)を取得し(
図2:S104)、周辺対象領域が写された撮影画像Iを取得し(
図2:S105)、移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)を取得しても良い(
図2:S103)。
【0039】
さて、画像取得制御部104が撮影画像Iの取得を完了すると、次に、携帯端末装置10の表示制御部105は、点群Qの点群座標系を撮影画像Iのカメラ座標系に対応付けることで、当該撮影画像I内の周辺対象領域に点群Qを指定可能に重ねて表示させる(
図2:S106)。
【0040】
ここで、表示制御部105の表示方法に特に限定は無いが、例えば、
図5に示すように、点群座標系における点群のうち、任意の点Qの三次元座標(xq、yq、zq)と、カメラ座標系における撮影画像I内の点群のうち、対応点Qの二次元座標(vq、uq)とは、三次元レーザースキャナー11とカメラ12の撮影位置や姿勢情報、カメラ12の焦点距離、キャリブレーションマトリックスなどの変換情報に基づいて対応付けることが出来る。
【0041】
点群座標系は、三次元レーザースキャナー11の点群基準位置Q0を原点として、例えば、横軸をx軸とし、縦軸をyとし、奥行軸(視野軸)をz軸とする。z軸は、三次元レーザースキャナー11から周辺対象領域に向かった方向の軸を意味する。又、カメラ座標系は、撮影画像Iにおける所定の点Oを原点として、横軸をv軸とし、縦軸をu軸とする。撮影画像Iは、カメラ12の中心から周辺対象領域に向かってz軸方向に焦点距離fだけ離れた位置に、z軸に対して垂直に位置する。ここで、x軸方向は、例えば、点群座標系の横方向(左右方向)であり、z軸方向は、点群座標系の奥行方向(前後方向)であり、y軸方向は、点群座標系の上下方向(垂直方向)である。
【0042】
ここで、表示制御部105は、変換情報を用いて、点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)の点群座標系を撮影画像Iのカメラ座標系に対応付けることで、点群座標系の点群の任意の点Qの三次元座標(xq、yq、zq)を、カメラ座標系の撮影画像I内の点群の対応点Qの二次元座標(vq、uq)に変換する。そして、表示制御部105は、変換後の点群の対応点Qの二次元座標(vq、uq)を撮影画像I内に表示させることで、撮影画像I内の周辺対象領域に点群Qを重ね合わせる。
【0043】
例えば、表示制御部105は、撮影画像I内の周辺対象領域(ここでは、公共基準部16)に点群Qを表示受付部(例えば、タッチパネル)上に指定可能に表示させる。これにより、撮影画像I内に点群Qを周辺対象領域の表面データとして指定可能に表示させることが可能となる。
【0044】
さて、表示制御部105が点群Qの表示を完了すると、次に、携帯端末装置10の算出制御部106は、撮影画像I内の点群Qのうち、公共基準点P1に対応する公共基準対応点Q1が指定されると、地理座標系における公共基準点P1の三次元座標(xp1、yp1、zp1)から、点群座標系における公共基準対応点Q1の三次元座標(xq1、yq1、zq1)と、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)とを減算することで、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2から三次元レーザースキャナー11の点群基準位置Q0までの三次元距離D(dx、dy、dz)を補正情報として算出する(
図2:S107)。
【0045】
ここで、算出制御部106の算出方法に特に限定は無いが、例えば、
図6に示すように、測定者が、撮影画像Iの公共基準部16を見ながら、公共基準点P1に対応する点Q1を公共基準対応点Q1として指定すると、算出制御部106は、公共基準対応点Q1の指定を受け付け、上述した変換情報を用いて、カメラ座標系の撮影画像I内の公共基準対応点Q1の二次元座標(vq1、uq1)を、点群座標系の公共基準点Q1の三次元座標(xq1、yq1、zq1)に変換する。これにより、測定者は、撮影画像Iを見ながら、点群Qのうち、既知の公共基準点Q1を指定することが出来る。
【0046】
次に、算出制御部106は、
図6に示すように、既知である地理座標系における公共基準点P1の三次元座標(xp1、yp1、zp1)から、指定された点群座標系における公共基準対応点Q1の三次元座標(xq1、yq1、zq1)と、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)とを減算して、その減算値(xp1-xq1-xp2、yp1-yq1-yp2、zp1-zq1-zp2)を、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2から点群基準位置Q0までの三次元距離D(dx、dy、dz)として算出し、その三次元距離D(dx=xp1-xq1-xp2、dy=yp1-yq1-yp2、dz=zp1-zq1-zp2)を補正情報とする。これにより、移動局13のアンテナ位置P2と三次元レーザースキャナー11の点群基準位置Q0との間の所定の距離を補正情報として正確に求めることが可能となり、この補正情報を用いることで、点群座標系における点群の三次元座標を地理座標系における点群の三次元座標に正確に変換することが可能となるのである。
【0047】
ここで、算出制御部106は、補正情報D(dx、dy、dz)を算出した後に、例えば、撮影画像Iにおいて、指定された公共基準対応点Q1に、目印を示す目印画像Sを表示させても良い。目印画像Sは、例えば、
図6に示すように、逆円錐の画像であったり、棒の上方先端に球を有するポール画像であったり、矢印画像であったり、旗印画像であったりしても良い。又、目印画像Sの形態に特に限定は無い。これにより、測定者は、目印画像Sを介して、指定した公共基準対応点Q1を確認することが可能となる。
【0048】
ここで、上述では、S103において、三次元レーザースキャナー11を所定の方向(左方向)から公共基準部16に向けた状態で、移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)の取得(
図2:S103)から、周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)の取得(
図2:S104)、周辺対象領域が写された撮影画像Iの取得(
図2:S105)、撮影画像I内の周辺対象領域への点群Qの表示(
図2:S106)、補正情報D(dx、dy、dz)の算出(
図2:S107)までを行っており、一方向から一つの公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行っているが、この補正情報の精度を向上させるために、例えば、二つ以上の異なる方向から一つの公共基準部16に対して、移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)の取得(
図2:S103)から、周辺対象領域の点群Qの三次元座標(xq、yq、zq)の取得(
図2:S104)、周辺対象領域が写された撮影画像Iの取得(
図2:S105)、撮影画像I内の周辺対象領域への点群Qの表示(
図2:S106)、補正情報D(dx、dy、dz)の算出(
図2:S107)までを行い、それぞれの方向から得られた複数の補正情報の平均値を補正情報として取り扱っても構わない。
【0049】
例えば、
図7Aに示すように、携帯端末装置10は、先ず、第一の方向(例えば、左方向)から一つの公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行い、次に、第一の方向に対向する第二の方向(右方向)から同一の公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行う。二つの方向だけであれば、携帯端末装置10は、二つの方向から得られた二つの補正情報の平均値を算出することで、この平均値を補正情報として取り扱う。更に、四つの方向であれば、携帯端末装置10は、先ず、第一の方向(例えば、左方向)から一つの公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行い、次に、第一の方向に対向する第二の方向(右方向)から同一の公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行う。そして、携帯端末装置10は、第一の方向と直角の第三の方向(例えば、前方向)から同一の公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行い、更に、第三の方向に対向する第四の方向(後方向)から同一の公共基準部16に対する点群Qの取得や撮影画像Iの取得により補正情報の算出を行う。そして、携帯端末装置10は、四つの方向から得られた四つの補正情報の平均値を算出することで、この平均値を補正情報として取り扱う。このように、一つの公共基準部16に対して相互に異なる複数の方向からそれぞれ補正情報を算出して、これらの平均値を補正情報として取り扱うことで、補正情報の精度を向上させることが出来る。
【0050】
さて、算出制御部106が補正情報D(dx、dy、dz)の算出を完了すると、次に、携帯端末装置10の変換制御部107は、補正情報D(dx、dy、dz)が算出された後に、三次元レーザースキャナー11によって点群座標系における点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)と、移動局13によって地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)とが取得されると、点群座標系における点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)に、補正情報D(dx、dy、dz)と、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)とを加算することで、点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)の点群座標系を地理座標系に変換する(
図2:S108)。
【0051】
ここで、変換制御部107の変換方法に特に限定は無いが、例えば、測定者は、補正情報の取得後に、
図7Bに示すように、携帯端末装置10を携帯して、公共基準部16から離れた測定対象領域へ移動し、測定キーを入力すると、変換制御部107は、三次元レーザースキャナー11で測定対象領域をスキャンすることで、点群座標系における点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)を取得する。そして、変換制御部107は、移動局13を用いて、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)を取得する。ここでは、基準局14が、地理座標系における基準局14のアンテナ位置P3の三次元座標(xp3、yp3、zp3)を取得していることから、変換制御部107は、基準局14と移動局13との通信を介して、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)を取得する。尚、移動局13が既に移動していることから、ここでの地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)は、先ほどの地理座標系における移動局13のアンテナ位置P2の三次元座標(xp2、yp2、zp2)と異なる。そして、変換制御部107は、点群座標系における点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)に、補正情報D(dx、dy、dz)と、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)とを加算し、その加算値(xq2+dx+xp4、yq2+dy+yp4、zq2+dz+zp4)を、地理座標系における点群P5の三次元座標(xp5、yp5、zp5)とする。つまり、点群座標系における点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)を地理座標系における点群P5の三次元座標(xp5、yp5、zp5)に変換する。これにより、測定者は、補正情報を取得した後は、携帯端末装置10を持って、所望する測定対象領域で点群の三次元座標を取得すれば、移動局13のアンテナ位置P2と三次元レーザースキャナー11の点群基準位置Q0との間の所定の距離Dを考慮した高精度の点群の三次元座標を取得することが出来るため、短時間で効率よく測定対象領域の点群の三次元座標の取得を行うことが出来るとともに、そのまま、建設分野、土木分野、森林分野、測量分野、防災分野等の様々な分野で利用することが可能となる。
【0052】
又、上述のように、基準局14と移動局13との通信を介して、地理座標系における移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)を取得することで、例えば、測定対象領域が、屋根やトンネルの内部等の衛星15と直接通信することが出来ない場合であっても、見晴らしの良い場所に設置した基準局14を介して、見晴らしの悪い場所でも、移動局13のアンテナ位置P4の三次元座標(xp4、yp4、zp4)を取得することが出来るため、点群Q2の三次元座標(xq2、yq2、zq2)の取得範囲を拡大することが出来る。
【0053】
さて、変換制御部107が変換を完了し、測定者が、測定対象領域の点群の三次元座標の取得を完了した後に、出力キーを携帯端末装置10に入力すると、携帯端末装置10の出力制御部108が、変換後の地理座標系における点群Pの三次元座標(xp、yp、zp)を出力する(
図2:S109)。
【0054】
ここで、出力制御部108の出力方法に特に限定は無いが、例えば、出力制御部108は、地理座標系における点群Pの三次元座標(xp、yp、zp)を所定の書式に従った形式で出力する。所定の書式は、例えば、建設分野や測量分野に使用される三次元形状の精度管理表等を挙げることが出来る。所定の書式は、例えば、それぞれの分野に使用される書式を設定することで、測定者が、出力キーを入力すれば、地理座標系における点群Pの三次元座標(xp、yp、zp)をそのまま各分野で使用することが可能となる。このように、点群の三次元座標の点群座標系を地理座標系に高精度に変換することが出来れば、様々な分野にそのまま利用することが出来るようになるため、省人化や効率化に極めて有効となる。
【0055】
さて、本発明に係る実施例について説明する。先ず、
図1-
図2に示す測定システム1及び測定方法を携帯端末装置10に具現化し、地理座標系における三次元座標が既知の部材(畳縁)の長さについて、測定を行った。
図8Aに示すように、実施例における測定システム1では、三次元レーザースキャナー11とカメラ12とは同等の方向を向いて携帯端末装置10を用意し、この携帯端末装置10に装着装置13bを介して移動局13を装着して、携帯端末装置10と移動局13とを一体的に構成した。又、移動局13に対応する基準局14も用意した。次に、測定者は、基準局14を設置した後に、携帯端末装置10と移動局13との通信接続を開始し、携帯端末装置10を使って、三次元レーザースキャナー11を所定の方向から公共基準部16に向けた状態で、移動局13を用いて、地理座標系における当該移動局13のアンテナ13aのアンテナ位置の三次元座標を取得するとともに、三次元レーザースキャナー11で点群座標系における公共基準部16を含む周辺対象領域の点群の三次元座標を取得した。そして、測定者は、携帯端末装置10を使って、
図8Aに示すように、周辺対象領域が写された撮影画像Iを取得するとともに、撮影画像I内の周辺対象領域に点群Qを指定可能に重ねて表示させた。測定者は、撮影画像Iを見ながら、公共基準点に対応する公共基準対応点Q1を指定すると、地理座標系における公共基準点の三次元座標と、点群座標系における公共基準対応点Q1の三次元座標と、地理座標系における移動局13のアンテナ位置の三次元座標とから、補正情報を算出した。又、指定された公共基準対応点Q1に、目印を示す目印画像Sが表示された。そして、測定者は、補正情報の算出後に、携帯端末装置10と移動局13とを携帯して、家屋の内部に入り、既知の部材を含む測定対象領域を歩き回って、既知の点を含む測定対象領域の点群の三次元座標を取得した。その結果、
図8Bに示すように、補正情報を使用する前の既知の部材の長さを確認すると、6.64cmであったのに対し、補正情報を使用した後の既知の部材の長さを確認すると、3.24cmであり、3.40cmの差異があることが分かった。一方、既知の部材の正しい長さは、3.35cmであり、正しい長さに比較して測定値の長さは、0.11cmの差異であり、補正情報を使用した測定値の方が、精度が高いことが分かった。
【0056】
次に、実施例の測定システム1を用いて、
図9Aに示すように、所定の屋内の地理座標系における点群の三次元座標を取得した。そして、点群の三次元座標を用いて、各屋内での所定の場所(1から7まで)における斜距離(m)を測定値として測定するとともに、同じ斜距離を巻尺で複数回測定して、正確な実測値を求めた。その結果、
図9Aに示すように、測定値と実測値との差異は、0.0数m以内であり、補正情報によって測定値が実測値とほぼ同等であることが分かった。尚、この際の測定対象領域における閉合比は1/776であった。
【0057】
更に、実施例の測定システム1を用いて、
図9Bに示すように、測定対象領域を広くした所定の屋外での地理座標系における点群の三次元座標を取得した。そして、点群の三次元座標を用いて、各屋外での所定の場所(1から7まで)における斜距離(m)を測定値として測定するとともに、同じ斜距離を巻尺で複数回測定して、正確な実測値を求めた。その結果、
図9Bに示すように、測定値と実測値との差異は、0.0数m以内であり、上述と同様に、補正情報によって測定値が実測値とほぼ同等であることが分かった。尚、この際の測定対象領域における閉合比は1/427であった。
【0058】
尚、本発明の実施形態では、携帯端末装置10が各制御部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを装置に読み出させ、当該装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各制御部が実行する工程をハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る測定システム及び測定方法は、建設分野、土木分野、森林分野、測量分野、防災分野等、地理座標系における点群の三次元座標を活用するあらゆる分野に有用であり、三次元レーザースキャナーの点群の点群座標系を地理座標系に高精度に変換することが可能な測定システム及び測定方法として有効である。
【符号の説明】
【0060】
1 測定システム
10 携帯端末装置
11 三次元レーザースキャナー
12 カメラ
13 位置通信装置(移動局)
14 基準局
101 初期制御部
102 位置取得制御部
103 点群取得制御部
104 画像取得制御部
105 表示制御部
106 算出制御部
107 変換制御部
108 出力制御部