(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002091
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置、車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
B60Q1/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101077
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】神原 健
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA04
3K339KA07
3K339KA29
3K339LA06
3K339LA07
3K339LA33
3K339LA34
3K339MA01
3K339MC02
3K339MC04
3K339MC05
3K339MC12
3K339MC88
3K339MC90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】先行車両等が二輪車両であっても適切な減光範囲を設定すること。
【解決手段】車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための装置であって、物標の位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度θL及び右端角度θRを検出するセンサと、左端角度θL及び右端角度θRに基づいて光照射範囲及び減光範囲を設定して当該光照射範囲及び減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を一対の車両用灯具へ供給するコントローラと、を含み、コントローラは、左端角度θLと右端角度θRとの差分θOPが、左端角度θL又は右端角度θRを自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に物標が二輪車両であることを検出し、当該二輪車両を前提とした位置関係に基づいて光照射範囲及び減光範囲を設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための装置であって、
自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度を検出するセンサと、
前記センサによって検出される前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給するコントローラと、
を含み、
前記コントローラは、
前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定する、
車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記左端角度と前記右端角度の和に1/2を乗算した値である中心角度θcの大きさが前記自車両の正面方向を含む第1範囲内にある場合に、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の一方の境界を前記中心角度θcによって決定するとともに、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の他方の境界を前記中心角度θcに対して所定の係数を加算又は減算することによって決定する、
請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記中心角度θcの大きさが前記第1範囲内にない場合に、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の一方の境界を前記中心角度θcによって決定するとともに、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の他方の境界を、前記一対の車両用灯具の相互間距離の推定値Bと前記自車両と前記二輪車両との左右方向距離の推定値Cに基づいて得られる係数(1-B/C)及び係数(1+B/C)を前記中心角度θcに乗算することによって決定する、
請求項2に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項4】
前記推定値Bは、0.8m~1.6mの範囲内で設定され、
前記推定値Cは、2.0m~4.0mの範囲内で設定される、
請求項3に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項5】
前記第1範囲は、-9.9°~+9.9°の範囲である、
請求項2に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項6】
車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための方法であって、
(a)自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度をセンサによって検出すること、
(b)前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給すること、
を含み、
前記(b)は、前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定することを含む、
車両用灯具の制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置と、
前記制御装置と接続される一対の車両用灯具と、
を含む、車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具の制御装置、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、先行車両や対向車両が検出されたときに、先行車両等が存在する位置に応じた範囲のハイビームを減光させるようにする技術が知られている(例えば、特開2015-58802号公報参照)。しかし、従来では先行車両等が四輪車両であることを前提にしたロジックによりハイビームの減光範囲を設定しているので、先行車両等が二輪車両の場合には必ずしも適切な減光範囲を設定できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、先行車両等が二輪車両の場合にも適切な減光範囲を設定することが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本開示に係る一態様の車両用灯具の制御装置は、車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための装置であって、(a)自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度を検出するセンサと、(b)前記センサによって検出される前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給するコントローラと、を含み、(c)前記コントローラは、前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定する、車両用灯具の制御装置である。
[2]本開示に係る一態様の車両用灯具の制御方法は、車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための方法であって、a)自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度をセンサによって検出すること、(b)前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給すること、を含み、前記(b)は、前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定することを含む、車両用灯具の制御方法である。
[3]本開示に係る一態様の車両用灯具システムは、前記[1]の制御装置と、前記制御装置と接続される一対の車両用灯具と、を含む、車両用灯具システムである。
【0006】
上記構成によれば、先行車両等が二輪車両の場合にも適切な減光範囲を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、コンピュータシステムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3(A)は、四輪車両である前方車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。
図3(B)は、二輪車両である前方車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。
図3(C)は、一般化した形状の対向車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、前方車両が二輪車両である場合の自車両と二輪車両の幾何学的配置を示す平面図である。
【
図5】
図5(A)は、二輪車両が対向車両である場合の二輪車両の模式的な平面図である。
図5(B)は、二輪車両が先行車両である場合の二輪車両の模式的な平面図である。
【
図6】
図6(A)は、対向車両である二輪車両が自車両から見て相対的に右側に存在する場合における遮光角度の求め方を説明するための図である。
図6(B)は、対向車両である二輪車両が自車両から見て相対的に左側に存在する場合における遮光角度の求め方を説明するための図である。
【
図7】
図7(A)~
図7(C)は、二輪車両である前方車両との相互間距離が不明(不確定)である場合における遮光角度の求め方を説明するための図である。
【
図8】
図8は、車両用灯具システムの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の路面描画システム1は、カメラ11、コントローラ13、一対のランプユニット20L、20Rを含んで構成されている。この車両用灯具システムは、車両前部に搭載されて車両前方へ光照射を行うものであり、特に、車両前方に先行車両や対向車両(以下、総称して「前方車両」という。」)の位置に応じてハイビームの照射範囲内に減光範囲を設定して光照射を行うものである。本実施形態の車両用灯具システムは、前方車両の車両種別が四輪車両であるか二輪車両であるかを区別し、それぞれに対して適切に減光範囲を設定することができる。
【0009】
カメラ11は、自車両前方の空間を撮影して画像データを生成する。本実施形態のカメラ11は、画像データに基づいて画像認識処理を行うことにより前方車両の位置などを検出する画像処理部12を有する。カメラ11の画像処理部12から出力される物標情報のデータには、前方車両の位置、距離、対向車両/先行車両などの情報が含まれる。ただし、二輪車両、四輪車両といった区別はなく、基本的に四輪車両であることが前提となっている。対向車両と先行車両の識別はランプ色に基づいて判定することができる。例えば前者のランプ色は白色、後者のランプ色は赤色となる。なお、画像処理部12による機能の一部ないし全部はコントローラ13側に設けられていてもよい。
【0010】
コントローラ13は、各前照灯ユニット20L、20Rによる光照射を制御するものである。このコントローラ13は、例えばプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶デバイス、入出力インターフェースなどを備えたコンピュータシステムを用いて構成することができる。本実施形態のコントローラ13は、予め記憶デバイス(あるいはROM)に記憶されたプログラムがプロセッサによって読み出されて実行されることにより、所定の機能を発揮できる状態となる。
【0011】
一対のランプユニット20L、20Rは、自車両前部の左右の所定位置に搭載されており、コントローラ13から与えられる制御信号に応じて動作して自車両前方へ光照射を行う。各ランプユニット20L、20Rは、例えば、二方向に配列されており各々個別に点消灯を制御可能な複数のLED(Light Emitting Diode)を有するLEDアレイと、LEDアレイから放出される光を投影するレンズを含んで構成されている。
【0012】
なお、ランプユニット20L等の構成はこれに限定されず公知の種々の構成を採用することができる。例えば、光源バルブと反射鏡や遮蔽板を組み合わせた構成のランプユニットを用いてもよい。また、光源と液晶素子などを備え、液晶素子の各画素の光透過状態を個別に制御可能なランプユニットを用いてもよい。また、レーザダイオードなどの発光素子と、この発光素子から出射する光を走査するミラーデバイス等の走査素子などを備え、発光素子の点消灯のタイミングと走査素子による走査タイミングを制御可能なランプユニットを用いてもよい。
【0013】
上記したコントローラ13は、プログラム実行によって実現される機能ブロックとしての車種検出部14、配光パターン設定部15、制御信号生成部16を含んで構成されている。
【0014】
車種検出部14は、カメラ11の画像処理部12から出力される物標情報のデータを用いて、前方車両の車両種別(車種)を検出する。ここでいう車両種別とは、少なくとも四輪車両、二輪車両の2種類を含む。
【0015】
配光パターン設定部15は、カメラ11から出力される物標情報のデータと車種検出部14によって検出される前方車両の車種(四輪車両/二輪車両)に基づいて、ハイビームの照射範囲内において前方車両の位置を減光範囲(ないし非照射範囲)としてそれ以外を光照射範囲とした配光パターンを設定する。
【0016】
制御信号生成部16は、配光パターン設定部15によって設定される配光パターンに基づいて制御信号を生成し、当該制御信号を各ランプユニット20L、20Rへ出力する。
【0017】
図2は、コンピュータシステムの構成例を示す図である。上記したコントローラ13は、例えば図示のようなコンピュータシステムを用いて構成することが可能である。CPU(中央演算ユニット)201は、記憶デバイス204に格納されたプログラム207を読み出してこれを実行することにより情報処理を行う。ROM(読み出し専用メモリ)202は、CPU201の動作に必要な基本制御プログラムなどを格納する。RAM(一時記憶メモリ)203は、CPU201の情報処理に必要なデータを一時記憶する。記憶デバイス204は、データを記憶するための大容量記憶装置であり、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどで構成される。通信デバイス205は、外部の他装置との間でのデータ通信に係る処理を行う。入出力部206は、外部装置との接続を図るインターフェースであり、本実施形態ではカメラ11や各ランプユニット20L、20Rとの間の接続に用いられる。CPU201等の相互間はバスにより相互に通信可能に接続されている。
【0018】
図3(A)は、四輪車両である前方車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。
図3(B)は、二輪車両である前方車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。
図3(C)は、一般化した形状の対向車両と自車両との位置関係を模式的に示す平面図である。これらの図を参照しながら、車種検出部14において前方車両の車両種別を検出する方法について説明する。なお、ここでは前方車両が対向車両である場合を例示しているが前方車両が先行車両である場合においても同様にして前方車両の車両種別を検出することができる。
【0019】
前方車両が四輪車両である場合には、
図3(A)に示すように、前方車両101の左端及び右端の各位置として用いられる左右ヘッドランプ(あるいはテールランプ、以下同様)の各位置の相互間距離であるランプ間距離Wが相対的に大きくなる。ランプ間距離wは、例えば1.2m程度である。
【0020】
本実施形態では、前方車両の左端及び右端の各位置としてのヘッドランプの位置は、自車両100の所定位置(一例としてカメラ11の設置位置)を基準にした角度で検出される。本実施形態では、左端位置をθL、右端位置をθRと表す。なお、本実施形態では、前方車両101の左端及び右端は自車両100側から見た左右に対応しており、前方車両101自体の左右とは必ずしも一致していない。
【0021】
前方車両が二輪車両である場合には、
図3(B)に示すように、前方車両102の左端及び右端の各位置として用いられる左右ヘッドランプ(あるいはテールランプ、以下同様)の各位置の相互間距離であるランプ間距離(ランプ幅)wが相対的に小さくなる。ランプ間距離wは、例えば0.5m程度である。前方車両102の左端位置はθ
L、右端位置はθ
Rと表される。なお、前方車両102のヘッドランプが一灯の場合にはθ
L=θ
Rとなる。
【0022】
図3(C)に示すように、二輪車両及び四輪車両を一般化して前方車両103と表すことにする。ここで、図示のように前方車両103の左端位置θ
Lと右端位置θ
Rの差分(θ
L-θ
R)を開き角θ
OPと定義する。
【0023】
例えば、片側二車線を前提としてその車線幅を3.5mとすると、自車両100と前方車両103との左右方向の距離Cは1.75mとなる。また、四輪車両のランプ間距離wを1.2m、二輪車両のランプ間距離wを0.5mと仮定する。
図3(C)に示すように、幾何学的な位置関係から、θ
OP:|θ
L|=w:(|C|-w/2)という関係が得られる。
【0024】
上記した各数値を用いると、四輪車両の場合にはθOP>|θL|、二輪車両の場合にはθOP<|θL|の関係が成立する。この関係に基づき、さらに二輪車両と識別される範囲をより狭めるために左端角度θLを1/2にして、|θL|/2>θOPの関係を用いる。本実施形態では、|θL|/2>θOPが成立する場合には前方車両が二輪車両であり、成立しない場合には前方車両が四輪車両であると識別する。
【0025】
なお、|θL|/2>θOPの関係をより一般化すると、|θL|/N>θOPと表せる。Nは自然数である。前方車両である二輪車両が車線の中央から外側へ離れているような場合にはNを大きくしたほうが車両種別の識別精度が向上する。他方で、Nを大きくし過ぎると前方車両が遠方に存在する場合の車両種別の識別精度が低下する。これらの事情を勘案して本願発明者が実験などに基づいて検討した結果、Nの値は2以上の自然数に設定することが好ましく、また4以下の自然数に設定することが好ましいことが分かった。
【0026】
図4は、前方車両が二輪車両である場合の自車両と二輪車両の幾何学的配置を示す平面図である。カメラ11により二輪車両102の左端角度θ
L、右端角度θ
R、左端までの距離D
L、右端までの距離D
Rが検出できているとする。自車両100の前後方向と平行方向にX軸、左右方向と平行方向にY軸を設定する。図中の上へ向かう方向をX軸のプラス方向、図中の左へ向かう方向をY軸のプラス方向と定義する。また、自車両100のランプ間距離をB[m]、カメラ11の設置位置に設定さる原点とランプ位置の間の距離をL[m]とし、BとLはそれぞれ既知の値であるとする。
【0027】
このとき、中心角度θCをθC=(θL+θR)/2と定義する。また、自車両100のカメラ11の設置位置(原点)と二輪車両102の位置との間のX方向距離をX=(DL+DR)/2と定義する。自車両100のカメラ11の設置位置(原点)と二輪車両102の位置との間のY方向距離をY=X・tanθCと定義する。
【0028】
図5(A)は、二輪車両が対向車両である場合の二輪車両の模式的な平面図である。
図5(B)は、二輪車両が先行車両である場合の二輪車両の模式的な平面図である。二輪車両102の外形情報を以下のようにして定める。
図5(A)に示すように、二輪車両102が対向車両である場合に、ヘッドランプ位置を原点(X,Y)とし、この原点と搭乗者の頭部後端までの距離をD
_ONCとする。このD
_ONCは、一般的な条件下での既知の値として例えば1.0mに設定される。また、二輪車両102の幅Wについても、一般的な条件下での既知の値として例えば1.0mに設定される。同様に、
図5(B)に示すように、二輪車両102が先行車両である場合に、テールランプ位置を原点(X,Y)とし、この原点と搭乗者の両手までの距離をD
_PRECとする。このD
_PRECは、一般的な条件下での車両長の最も長い車両を想定した既知の値として例えば2.0mに設定される。また、二輪車両102の幅Wについても、一般的な条件下での既知の値として例えば1.0mに設定される。
【0029】
図6(A)は、対向車両である二輪車両が自車両から見て相対的に右側に存在する場合における遮光角度の求め方を説明するための図である。自車両100のカメラ11の位置を原点としてXY座標を定義する。二輪車両102の位置を(X,Y)とする。自車両100の左側のランプユニット20Lの位置を(L,B/2)とする。B/2≧Y+W/2の条件を満たす場合には、二輪車両102の左端が自車両100の左側のランプユニット20Lよりも相対的に右側にあると判断できる。また、-B/2≧Y+W/2の条件を満たす場合には、二輪車両102の左端が自車両100の右側のランプユニット20Rよりも相対的に右側にあると判断できる。
【0030】
自車両100の左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLL及び内側遮光角度θLRは、それぞれ以下のように求めることができる。
θLL=arctan((Y+W/2-B/2)/(X+D-L))
θLR=arctan((Y-W/2-B/2)/(X-L))
【0031】
自車両100の右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRR及び内側遮光角度θRLは、それぞれ以下のように求めることができる。
θRR=arctan((Y-W/2+B/2)/(X-L))
θRL=arctan((Y+W/2+B/2)/(X+D-L))
【0032】
図6(B)は、対向車両である二輪車両が自車両から見て相対的に左側に存在する場合における遮光角度の求め方を説明するための図である。上記と同様に、自車両100のカメラ11の位置を原点としてXY座標を定義する。二輪車両102の位置を(X,Y)とする。自車両100の左側のランプユニット20Lの位置を(L,B/2)とする。B/2<Y+W/2の条件を満たす場合には、二輪車両102の左端が自車両100の左側のランプユニット20Lよりも相対的に左側にあると判断できる。また、-B/2<Y+W/2の条件を満たす場合には、二輪車両102の左端が自車両100の右側のランプユニット20Rよりも相対的に左側にあると判断できる。
【0033】
自車両100の左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLL及び内側遮光角度θLRは、それぞれ以下のように求めることができる。
θLL=arctan((Y+W/2-B/2)/(X-L))
θLR=arctan((Y-W/2-B/2)/(X+D-L))
【0034】
自車両100の右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRR及び内側遮光角度θRLは、それぞれ以下のように求めることができる。
θRR=arctan((Y-W/2+B/2)/(X+D-L))
θRL=arctan((Y+W/2+B/2)/(X-L))
【0035】
次に、二輪車両である前方車両との相互間距離が不明(不確定)である場合に、前方車両の位置と検出幅に基づいて遮光角度を求める方法について説明する。まず、カメラ11により二輪車両102の左端角度θ
L、右端角度θ
Rが検出できているとする(上記の
図4参照)。なお、二輪車両102のヘッドランプ等が一灯である場合にはθ
L=θ
Rとなる。そして、上記のように中心角度θ
Cをθ
C=(θ
L+θ
R)/2と定義する。
【0036】
まず、遮光対象である二輪車両102が自車両100に対してほぼ正面に存在する場合について考える。最も短い車間距離(二輪車両102と自車両100の相互間距離)として、例えば正面前方に10mを想定する。左右方向においては同一車線内の端として左右いずれかの1.75m以内に二輪車両102が存在すると想定する。この場合、例えば中心角度θCが-9.9°≦θC≦+9.9°の範囲(第1範囲)に含まれていれば、遮光対象である二輪車両102が正面に存在すると判断できる。このときの絶対値9.9を係数K1とする。なお、係数K1の値は実験やシミュレーションに基づいて設定し得るものであり上記の9.9に限定されない。
【0037】
自車両100の左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLL及び右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRRについては、中心角度θCを用いることで、二輪車両102の左右方向の中心からW/2だけ外側を狙った遮光角度とできる。すなわち、以下のようになる。
θLL=θC
θRR=θC
【0038】
自車両100の左側のランプユニット20Lによる内側遮光角度θLR及び右側のランプユニット20Rによる内側遮光角度θRLは、正面前方10mに遮光対象が存在するときの遮光角度が安全な遮光角度となる。例えば、遮光対象とすべき領域の幅を1.0mとしたとき、内側遮光角度θLR及び内側遮光角度θRLは以下のように表せる。このときの絶対値5.7を係数K2とする。なお、係数K2の値は実験やシミュレーションに基づいて設定し得るものであり上記の5.7に限定されない。
θLR=θC-arctan(1.0/10)=θC-5.7°
θRL=θC+arctan(1.0/10)=θC+5.7°
【0039】
以上をまとめると、遮光対象である二輪車両102がほぼ正面に存在する場合における各遮光角度は以下のように求めることができる。これらの遮光角度に基づいて、ハイビームの照射範囲内における減光範囲を設定することができる。
θLL=θC
θRR=θC
θLR=θC-K2
θRL=θC+K2
【0040】
次に、遮光対象である二輪車両102が側方に存在する場合について考える。上記した係数K1と中心角度θ
Cを用いると、θ
C≦-K1、又はθ
C≧+K1である場合には二輪車両102が側方に存在すると判断することができる。次に、
図7(A)~
図7(C)を参照しながら遮光角度の求め方を説明する。
【0041】
まず、
図7(A)に示すように、カメラ11により検出される二輪車両102の左端角度θ
L、右端角度θ
Rを用いて中心角度θ
C=(θ
L+θ
R)/2を求める。次に、
図7(B)に示すように、自車両100のランプ間距離Bを用いて、遮光すべき範囲の右端座標をB/2だけ外側の位置とすると、右側のランプユニット20Rによる内側遮光角度θ
RRとして中心角度θ
Cを用いることができる。すなわち以下のように表せる。
θ
RR=θ
C
【0042】
ランプ間距離Bは一般に0.8m~1.6m程度であるので、二輪車両102の中心から外側へ約0.4m~0.8mずらした位置に対応して内側遮光角度θRRが設定されることになる。
【0043】
また、右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRLは、遮光角度θRRの設定に用いた位置からランプ間距離Bだけ左側へ移動した位置に対応して以下のように設定することができる。
θRL=θC(1-B/C)
【0044】
Cは上記の通り、自車両100と前方車両である二輪車両102との左右方向の距離である。この距離Cは、二輪車両102の位置が隣車線であると想定すると3.5m程度となり、二輪車両102の位置がセンターライン付近であると想定すると1.75m程度となる。左右方向の距離Cの値は、小さく設定するほど二輪車両102に対するグレアを防ぎやすくなるが他方で減光範囲が必要以上に大きくなる。このため、例えば2.0m≦C≦4.0mの範囲で設定することが好ましい。なお、カメラ11において車線位置が検出できる場合には、車線位置によってCの値を可変に設定してもよい。
【0045】
また、上記と同様にして左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLLと左側のランプユニット20Rによる内側遮光角度θLRはそれぞれ以下のようにして設定することができる。
θLL=θC
θLR=θC(1+B/C)
【0046】
図8は、車両用灯具システムの動作手順を示すフローチャートである。なお、各処理の順番については制御結果に不整合を生じない限りにおいて入れ替えることも可能であり、また説明しない他の処理が追加されてもよく、それらの態様も排除されない。
【0047】
カメラ11の検出結果に基づき、前方車両が存在する場合に(ステップS11;YES)、車種検出部14は、前方車両の車種を検出する(ステップS12)。上記したように車種としては、二輪車両、四輪車両の何れかが検出される。なお、前方車両が存在しない間は(ステップS11;NO)、ステップS12以降の処理が実行されない。
【0048】
車種検出部14によって検出された車種が「二輪車両」であり(ステップS13;YES)、かつ、カメラ11の検出結果に当該二輪車両と自車両との距離(二輪車両の左端までの距離DL及び右端までの距離DR)の情報が存在する場合に(ステップS14;YES)、配光パターン設定部15は、これら距離DL及び距離DRを用いて配光パターンを設定する(ステップS15)。具体的には、距離DL及び距離DRが得られている場合に対応した上記した方法により自車両100の左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLL及び内側遮光角度θLR、右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRR及び内側遮光角度θRLがそれぞれ求められる。
【0049】
他方で、車種検出部14によって検出された車種が「二輪車両」であり(ステップS13;YES)、かつ、カメラ11の検出結果に当該二輪車両と自車両との距離の情報が存在しない場合に(ステップS14;NO)、配光パターン設定部15は、これら距離DL及び距離DRを用いずに配光パターンを設定する(ステップS16)。具体的には、距離DL及び距離DRが得られていない場合に対応した上記した方法により自車両100の左側のランプユニット20Lによる外側遮光角度θLL及び内側遮光角度θLR、右側のランプユニット20Rによる外側遮光角度θRR及び内側遮光角度θRLがそれぞれ求められる。
【0050】
ステップS15又はステップS16を経て配光パターン設定部15により配光パターンが設定されると、この配光パターンを実現するための制御信号が制御信号生成部16によって生成され、各ランプユニット20L、20Rへ出力される。その結果、ハイビームの照射範囲内において、二輪車両に対応して設定された減光範囲を有する配光パターンの光が自車両前方へ照射される。
【0051】
また、上記したステップS13において、車種検出部14によって検出された車種が「二輪車両」ではなく「四輪車両」であった場合には(ステップS13;NO)、四輪車両を前提とした配光パターンが配光パターン設定部15により設定される(ステップS17)。四輪車両を前提とした配光パターンの設定方法については公知技術を適用可能であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0052】
ステップS17を経て配光パターン設定部15により配光パターンが設定されると、この配光パターンを実現するための制御信号が制御信号生成部16によって生成され、各ランプユニット20L、20Rへ出力される。その結果、ハイビームの照射範囲内において、四輪車両に対応して設定された減光範囲を有する配光パターンの光が自車両前方へ照射される。
【0053】
ステップS15~S17の何れかが実行された後はステップS11へ戻る
【0054】
以上のような実施形態によれば、前方車両の位置に応じて自車両からのハイビームの照射範囲内において減光範囲を設定して光照射を行う際に、先行車両等が二輪車両であっても適切な減光範囲を設定することが可能となる。
【0055】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態において示した各数値はそれぞれ一例であり、実験やシミュレーションなどの結果に基づいて適宜最適化することができる。また、上記した実施形態では画像認識機能を有するカメラをセンサとして用いて前方車両(物標)の位置等を検出していたが、LiDARなどの各種センサを用いて前方車両の位置等を検出してもよいし、公知の車両間通信技術や路車間通信技術を用いて前方車両の位置等を検出してもよい。
【0056】
本開示は、以下に付記する特徴を有する。
【0057】
(付記1)
車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための装置であって、
自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度を検出するセンサと、
前記センサによって検出される前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給するコントローラと、
を含み、
前記コントローラは、
前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定する、
車両用灯具の制御装置。
(付記2)
前記コントローラは、前記左端角度と前記右端角度の和に1/2を乗算した値である中心角度θcの大きさが前記自車両の正面方向を含む第1範囲内にある場合に、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の一方の境界を前記中心角度θcによって決定するとともに、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の他方の境界を前記中心角度θcに対して所定の係数を加算又は減算することによって決定する、
付記1に記載の車両用灯具の制御装置。
(付記3)
前記コントローラは、前記中心角度θcの大きさが前記第1範囲内にない場合に、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の一方の境界を前記中心角度θcによって決定するとともに、前記一対の車両用灯具の各々による前記減光範囲の他方の境界を、前記一対の車両用灯具の相互間距離の推定値Bと前記自車両と前記二輪車両との左右方向距離の推定値Cに基づいて得られる係数(1-B/C)及び係数(1+B/C)を前記中心角度θcに乗算することによって決定する、
付記2に記載の車両用灯具の制御装置。
(付記4)
前記推定値Bは、0.8m~1.6mの範囲内で設定され、
前記推定値Cは、2.0m~4.0mの範囲内で設定される、
付記3に記載の車両用灯具の制御装置。
(付記5)
前記第1範囲は、-9.9°~+9.9°の範囲である、
付記2~4の何れかに記載の車両用灯具の制御装置。
(付記6)
車両前方に設置される一対の車両用灯具による光照射範囲及び減光範囲を制御するための方法であって、
(a)自車両の前方に存在する物標の左端及び右端の各位置について所定位置を基準とした相対的な角度である左端角度及び右端角度をセンサによって検出すること、
(b)前記左端角度及び前記右端角度に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定して当該光照射範囲及び前記減光範囲に応じた光照射を実行するための制御信号を前記一対の車両用灯具へ供給すること、
を含み、
前記(b)は、前記左端角度と前記右端角度との差分が、前記左端角度又は前記右端角度を自然数N(ただし、N≧2)で除算して得られる閾値より小さい場合に前記物標が二輪車両であることを前提とした位置関係に基づいて前記光照射範囲及び前記減光範囲を設定することを含む、
車両用灯具の制御方法。
(付記7)
付記1~5の何れかに記載の制御装置と、
前記制御装置と接続される一対の車両用灯具と、
を含む、車両用灯具システム。
【符号の説明】
【0058】
11:カメラ、12:画像処理部、13:コントローラ、14:車種検出部、15:配光パターン設定部、16:制御信号生成部、20L、20R:ランプユニット、100:自車両、101:前方車両(四輪車両)、102:前方車両(二輪車両)