(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020917
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】集水桝本体
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
E03F5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123475
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】502045884
【氏名又は名称】株式会社赤羽コンクリート
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悟
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DA02
2D063DA14
2D063DA30
(57)【要約】
【課題】周壁部に対して水路用開口を形成する際の作業性を向上しつつ、特に周壁部(側壁部)の下部の破損を防止することができるプレキャストコンクリート製の集水桝本体を提供する。
【解決手段】集水桝本体10は、多角筒状の周壁部20と、周壁部20の上部に形成された上部開口部21と、上部開口部21の内側に形成され、蓋を載置可能な蓋受用突出部22と、周壁部20の内側角部に形成された補強用肉厚部23と、周壁部20の少なくとも2面に形成され、補強用肉厚部23よりも薄肉であり、切削具により水路用開口を形成可能な側壁部24,25と、周壁部20の底面部26内かつ底面部26の全周に亘って配設された金属製の補強部材40とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角筒状の周壁部を備えるプレキャストコンクリート製の集水桝本体であって、
前記集水桝本体は、前記周壁部と、前記周壁部の上部に形成された上部開口部と、前記上部開口部の内側に形成され、蓋を載置可能な蓋受用突出部と、前記周壁部の内側角部に形成された補強用肉厚部と、前記周壁部の少なくとも2面に形成され、前記補強用肉厚部よりも薄肉であり、切削具により水路用開口を形成可能な側壁部と、前記周壁部の底面部内かつ底面部の全周に亘って配設された金属製の補強部材とを備えることを特徴とする集水桝本体。
【請求項2】
前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを備え、前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面において露出している請求項1に記載の集水桝本体。
【請求項3】
前記周壁部の角部に、前記補強部材以外の部材が配設されていない請求項1または2に記載の集水桝本体。
【請求項4】
前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを備え、前記補強部材の前記縦板部は、前記周壁部の縦断面において前記周壁部の縦方向に延びており、前記環状底板部は、前記周壁部の縦断面において前記周壁部の横方向に延びている請求項1に記載の集水桝本体。
【請求項5】
前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを有する環状アングル部材と、前記環状アングル部材の前記縦板部の上部に固定された棒状の鉄筋部材とを備える請求項1に記載の集水桝本体。
【請求項6】
前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面と略面一となっている請求項4または5に記載の集水桝本体。
【請求項7】
前記周壁部は四角筒状であり、前記集水桝本体は、前記周壁部の横断面において対向する第1の組の側壁部と、前記周壁部の横断面において対向し、前記第1の組の側壁部と直交する第2の組の側壁部とを備え、
前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延び、かつ向かい合う第1の組の縦板部と、前記第1の組の縦板部と直交し、かつ向かい合う第2の組の縦板部とを有する環状アングル部材と、前記環状アングル部材の前記第1の組の縦板部または前記第2の組の縦板部の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の下部鉄筋部材と、前記2本の下部鉄筋部材の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の上部鉄筋部材とを備え、かつ、
前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面において露出している請求項1に記載の集水桝本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート製の集水桝本体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雨水や用水、排水等の水路においては、複数の水路の合流地点や、水路の進路や排水勾配を変更する箇所に、また、水路を流通する水に混入した泥やゴミ等の異物を分離除去する目的で水路途中に、集水桝が設置されている。かかる集水桝としては、一般に、多角筒状の周壁部を備えたコンクリート製の桝本体に対して、その周壁部(側壁部)に水路接続用の開口が形成されているとともに、当該桝本体の上部開口部を取り外し可能な蓋で覆蓋可能なものが採用されている。
近年、職人不足等に起因する現場での作業負荷軽減(作業性向上)の要請があり、集水桝においても、場所打ち工法または現場打ち工法(建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設して造る工法)から、プレキャスト工法(専用工場においてあらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬して設置を行う工法)への移行が強く求められている。そこで、本願出願人は、特許文献1(特開2007-230197)のプレキャストコンクリート桝を提案している。
プレキャストコンクリート製の集水桝では、集水桝の桝本体に水路を接続するための水路用開口を当該桝本体に予め形成しておくこともできるが、接続される水路の形状や大きさ、位置等に応じて、適宜に後加工(切削具(ダイヤモンドカッター等)による切削加工)によって形成することも有効である。例えば、特許文献2(特開平10-237937号公報)では、そのような水路用開口の形成作業を簡単にするために、集水枡(桝本体)の内側面に凹部を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-230197号公報
【特許文献2】特開平10-237937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、発明者らは、集水桝本体の周壁部に水路用開口を後加工にて形成する場合、強度の問題、特に周壁部の下部(水路用開口の形成部から周壁部の底面部にかけて)が破損してしまう問題があることを知見した。すなわち、水路用開口形成時の切削部(切り込み)に起因する亀裂が周壁部の下端(底面部)にまで到達してしまったり、水路用開口形成前後の運搬時や集水桝本体を設置箇所に配置するまでの間に、周壁部が破損するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、プレキャストコンクリート製の集水桝本体であって、周壁部に対して水路用開口を形成する際の作業性を向上しつつ、特に周壁部(側壁部)の下部の破損を防止することができる集水桝本体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 多角筒状の周壁部を備えるプレキャストコンクリート製の集水桝本体であって、
前記集水桝本体は、前記周壁部と、前記周壁部の上部に形成された上部開口部と、前記上部開口部の内側に形成され、蓋を載置可能な蓋受用突出部と、前記周壁部の内側角部に形成された補強用肉厚部と、前記周壁部の少なくとも2面に形成され、前記補強用肉厚部よりも薄肉であり、切削具により水路用開口を形成可能な側壁部と、前記周壁部の底面部内かつ底面部の全周に亘って配設された金属製の補強部材とを備える集水桝本体。
【0006】
(2) 前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを備え、前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面において露出している上記(1)に記載の集水桝本体。
(3) 前記周壁部の角部に、前記補強部材以外の部材が配設されていない上記(1)または(2)に記載の集水桝本体。
(4) 前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを備え、前記補強部材の前記縦板部は、前記周壁部の縦断面において前記周壁部の縦方向に延びており、前記環状底板部は、前記周壁部の縦断面において前記周壁部の横方向に延びている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の集水桝本体。
(5) 前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延びる縦板部とを有する環状アングル部材と、前記環状アングル部材の前記縦板部の上部に固定された棒状の鉄筋部材とを備える上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の集水桝本体。
(6) 前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面と略面一となっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の集水桝本体。
(7) 前記周壁部は四角筒状であり、前記集水桝本体は、前記周壁部の横断面において対向する第1の組の側壁部と、前記周壁部の横断面において対向し、前記第1の組の側壁部と直交する第2の組の側壁部とを備え、
前記補強部材は、環状底板部と、前記環状底板部から上方に延び、かつ向かい合う第1の組の縦板部と、前記第1の組の縦板部と直交し、かつ向かい合う第2の組の縦板部とを有する環状アングル部材と、前記環状アングル部材の前記第1の組の縦板部または前記第2の組の縦板部の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の下部鉄筋部材と、前記2本の下部鉄筋部材の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の上部鉄筋部材とを備え、かつ、
前記環状底板部の底面は、前記周壁部の底面において露出している上記(1)に記載の集水桝本体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の集水桝本体は、側壁部が補強用肉厚部よりも薄肉とされているため、周壁部(側壁部)に対して水路用開口を形成する際の作業性が向上されている。また、集水桝本体においては、周壁部の底面部において、蓋受用突出部や補強用肉厚部のような肉厚部(補強部)が形成されていないものの、底面部内に全周に亘って配設された補強部材によって周壁部の底面部が補強されているため、周壁部(側壁部)の下部の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施例の集水桝本体を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例の集水桝本体を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例の集水桝本体を示す底面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した集水桝本体の底部の部分拡大説明図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す集水桝本体に配設されている補強部材を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のC-C断面における部分拡大説明図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す集水桝本体に水路用開口を形成した状態を示す正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施例の集水桝本体の底部縦断面の部分拡大説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施例の集水桝本体の底部縦断面の部分拡大説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の他の実施例の集水桝本体の底部縦断面の部分拡大説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施例の集水桝本体の底部縦断面の部分拡大説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の他の実施例の集水桝本体の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の集水桝本体を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、本実施形態においては、
図1における上下方向を集水桝本体(周壁部)の上下方向、縦方向または軸方向として説明し、
図1における左右方向を集水桝本体(周壁部)の左右方向、横方向または幅方向として説明するが、これは必ずしも集水桝本体の製造ないし使用時の態様を規定するものではない。
【0010】
本発明の集水桝本体10は、多角筒状の周壁部20を備えるプレキャストコンクリート製の集水桝本体10であって、周壁部20と、周壁部20の上部に形成された上部開口部21と、上部開口部21の内側に形成され、蓋を載置可能な蓋受用突出部22と、周壁部20の内側角部に形成された補強用肉厚部23と、周壁部20の少なくとも2面に形成され、補強用肉厚部23より薄肉であり、切削具により水路用開口を形成可能な側壁部24,25と、周壁部20の底面部26内かつ底面部26の全周に亘って配設された金属製の補強部材40とを備える。
【0011】
本実施例の集水桝本体10は、周壁部20は四角筒状であり、集水桝本体10は、周壁部20の横断面において対向する第1の組の側壁部24,24と、周壁部20の横断面において対向し、第1の組の側壁部24,24と直交する第2の組の側壁部25,25とを備える。補強部材40は、環状底板部41と、環状底板部41から上方に延び、かつ向かい合う第1の組の縦板部42,42と、第1の組の縦板部42,42と直交し、かつ向かい合う第2の組の縦板部43,43とを有する環状アングル部材44と、環状アングル部材44の第1の組の縦板部42,42または第2の組の縦板部43,43(ここでは、第1の組の縦板部42,42)の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の下部鉄筋部材45と、2本の下部鉄筋部材45の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の上部鉄筋部材46とを備える。環状底板部41の底面47は、周壁部20の底面27において露出している。
【0012】
本実施例では、
図1ないし
図5に示すように、集水桝本体10の周壁部20は四角筒状である。周壁部20は、上部に上部開口部21を備え、下部に下部開口部28を備える。言い換えれば、周壁部20は、上部および下部が開口している。
【0013】
周壁部20の上部開口部21の内側には、蓋を載置可能な蓋受用突出部22が形成されている。具体的には、
図2および
図5に示すように、蓋受用突出部22は、周壁部20の全周に亘って、上部開口部21の内面から内方(中央方向)に向かって突出している。蓋受用突出部22の上面は略水平な面(環状水平面29)となっている。蓋受用突出部22の下面は周壁部20(後述する側壁部24,25)に向かって傾斜する傾斜面(環状傾斜面30)となっており、蓋受用突出部22は、周壁部20と接触する基端部が肉厚であり、先端(内方)に向かって肉薄となり、先端部においてほぼ同一肉厚にて延びるものとなっている。このため、蓋受用突出部22は、載置される蓋の重量に耐えることができる。
【0014】
上述の蓋受用突出部22を有する多角筒状の周壁部20は、プレキャストコンクリート製である。プレキャストコンクリート製とは、現場で型枠を設けてコンクリートを打設する現場打ち工法(在来工法)製ではなく、上述のような蓋受用突出部を有する多角筒状の周壁部を有するコンクリート部材を工場で作成したものをいう。プレキャストコンクリート製のものは、現場打ち工法(在来工法)製のものに比べて、製品が安定し、かつ、現場での作業時間が短いというメリットがある。
【0015】
蓋受用突出部22に載置される蓋としては、図示しないが、グレーチングと呼ばれる網目状の鋼製蓋を使用することができる。なお、そのような蓋は、網目の荒さや取り外し用の取っ手の構造や有無を選択可能となっている(蓋受用突出部22や後述する蓋受用突出部22を種々の蓋に対応可能に構成する)ことが好ましい。
【0016】
本実施例では、集水桝本体10の蓋受用突出部22に、金属製の蓋受用部材31が取り付けられている。具体的には、
図2および
図5に示すように、蓋受用部材31は、周壁部20の全周に亘って、蓋受用突出部22の上面(環状水平面29)および上部開口部21の内面に沿うように形成された環状のアングル部材である。蓋受用部材31は、ボルト等によって蓋受用突出部22の上面(環状水平面29)に固定されている。本実施例の集水桝本体10では、蓋受用突出部22に金属製の蓋受用部材31が取り付けられていることにより、周壁部20の上部(後述する側壁部24,25の上部)が補強される。また、蓋受用部材31によって、集水桝本体10に対する蓋の取り付けおよび取り外し作業がし易くなる。
【0017】
図3および
図4に示すように、集水桝本体10の周壁部20の内側角部には、補強用肉厚部23が形成されている。具体的には、補強用肉厚部23は、
図3および
図4に示すように、周壁部20の横断面において、略直角に形成される四角筒状の周壁部20の角部32の内側を埋めるように形成され、周壁部20の内面を斜めに繋ぐように形成される。これにより、補強用肉厚部23を有する周壁部20は、横断面において、外形が略正方形形状であり、内形が各角部(4つの角部)が面取りされた略正方形形状となっている。補強用肉厚部23は、周壁部20の角部32(内側角部)において、蓋受用突出部22の下面(環状傾斜面30)から周壁部20の下端(底面27)に亘って形成されている。補強用肉厚部23は、後述する側壁部24,25よりも肉厚となっている。補強用肉厚部23によって、周壁部20の角部32(側壁部24,25の側部)が補強されている。また、周壁部20の角部32(特に、内側角部)における応力の集中を防ぐことができ、周壁部20(集水桝本体10)の破損を防ぐことができる。
【0018】
なお、本実施例では、
図5に示すように、集水桝本体10(周壁部20)の上下方向全長に亘って、周壁部20の角部32(ここでは、補強用肉厚部23を含む)には、後述する補強部材40以外の部材は配設されていない。集水桝本体10では、補強用肉厚部23によって、周壁部20の角部32(側壁部24,25の側部)が補強されているため、補強部材40以外の部材を配設しなくても、角部32の強度が確保される。
【0019】
集水桝本体10の周壁部20の少なくとも2面には、補強用肉厚部23よりも薄肉であり、ダイヤモンドカッター等の切削具により水路用開口を形成可能な側壁部24,25が形成されている。本実施例では、四角筒状の周壁部20の全ての面(4面)が、切削具により水路用開口を形成可能な側壁部24,25となっている。
【0020】
より具体的には、
図4に示すように、集水桝本体10は、周壁部20の横断面において対向する(
図4において左右方向に延びる)第1の組の側壁部24,24と、周壁部20の横断面において対向し、第1の組の側壁部24,24と直交する(
図4において上下方向に延びる)第2の組の側壁部25,25とを備える。なお、本実施例では、全ての側壁部(第1の組の側壁部24,24および第2の組の側壁部25,25)が、全体に略均一、かつ、それぞれが略同一の肉厚となっている。なお、側壁部24,25の肉厚(t1)は、50~70mmであることが好ましく、特に、55~65mm程度であることが好ましい。
【0021】
また、本実施例では、
図1および
図4に示すように、側壁部24,25の外面には、境界凹部33が形成されている。境界凹部33は、側壁部24,25と、補強用肉厚部23および蓋受用突出部22との境界部分に形成されている。これにより、作業者は、集水桝本体10に対して、切削具により水路用開口を形成すべき側壁部24,25の位置(範囲)を、外部から容易に確認することができる。また、側壁部24,25において、境界凹部33の形成部分は薄肉になっており破壊され易いため、水路用開口の形成に起因する破損(亀裂)が、周壁部20の上部(蓋受用突出部22)や角部(補強用肉厚部23)に到達することを防止できる。
【0022】
本実施例では、全ての側壁部24,25(周壁部20の全面)に境界凹部33が形成されている。なお、上述のような境界凹部は、集水桝本体の周壁部の全面に設けられている必要はないが、周壁部において水路用開口を形成可能な側壁部の全てに設けられていることが好ましい。
【0023】
集水桝本体10の周壁部20の底面部26内には、底面部26の全周に亘って、金属製の補強部材40が配設されている。ここで、本実施例の補強部材40について、
図7および
図8を用いて、具体的に説明する。
【0024】
図7および
図8に示すように、補強部材40は、環状底板部41と、環状底板部41から上方に延びる縦板部42,43とを有する環状アングル部材44と、環状アングル部材44の縦板部42,43の上部に固定された棒状の鉄筋部材45,46とを備える。
【0025】
本実施例では、
図7に示すように、補強部材40の環状アングル部材44は、平面視で略正方形環形状となっており、環状底板部41と、環状底板部41から上方に延び、かつ向かい合う(
図7において左右方向に延びる)第1の組の縦板部42,42と、第1の組の縦板部42,42と直交し、かつ向かい合う(
図7において上下方向に延びる)第2の組の縦板部43,43とを有する。
【0026】
また、本実施例の環状アングル部材44は、
図7および
図8に示すように、環状底板部41の外縁から略垂直に上方に向かって縦板部42,43が延びており、縦断面(
図8に示す断面)において、全周に亘って、略L字状の断面を有している。本実施例では、縦断面における環状底板部41の幅寸法(W)と縦板部42,43の上下寸法(H)は略同一となっており、かつ環状底板部41の厚さ(t2)と縦板部42,43の厚さ(t3)は略同一となっている。
【0027】
なお、環状底板部41の幅寸法(W)と縦板部42,43の上下寸法(H)は、20~40mmであることが好ましく、特に、25~35mm程度であることが好ましい。なお、環状底板部41の幅寸法(W)と縦板部42,43の上下寸法(H)は、上述した側壁部24,25の肉厚(t1)との関係において規定することもでき、好ましくはt1の1/2以上である。
また、環状底板部41の厚さ(t2)と縦板部42,43の厚さ(t3)は、2~4mmであることが好ましく、特に、3mm程度であることが好ましい。
【0028】
上述のような環状アングル部材44は、例えば、断面がL型に一体形成されたL型鋼材(アングル鋼材)、等辺L型鋼材(等辺アングル鋼材)、底板部と当該底板部の端縁部に固定(溶接)された縦板部とを備える形成L字アングル鋼材を適宜切り出して、それらを連接(溶接)することにより形成することができる。なお、環状アングル部材44は、金属製であり、特に、鉄製または鋼製(鉄を主な材料とするもの)であることが好ましい。また、環状アングル部材44の表面に錆止め等のための塗装を施してもよい。
【0029】
本実施例では、
図7および
図8に示すように、補強部材40は、鉄筋部材として、環状アングル部材44の第1の組の縦板部42,42または第2の組の縦板部43,43(本実施例では、第1の組の縦板部42,42)の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の下部鉄筋部材45,45と、2本の下部鉄筋部材45,45の両側部上に懸架されかつ固定された2本の棒状の上部鉄筋部材46,46とを備える。
【0030】
ここで、
図7に示すように、下部鉄筋部材45は、その軸方向(延出方向であり
図7における上下方向)において、環状アングル部材44の第1の組の縦板部42よりも外方に突出していることが好ましい。また、
図7に示すように、上部鉄筋部材46は、その軸方向(延出方向であり
図7における左右方向)において、環状アングル部材44の第2の組の縦板部43よりも外方に突出していることが好ましい。
【0031】
鉄筋部材45,46は、金属製であり、特に、鉄製または鋼製(鉄を主な材料とするもの)であることが好ましい。また、図示はしないが、鉄筋部材45,46は、全長に亘って複数の横節(竹節、リブ)が形成された異形鉄筋であることが好ましい。また、鉄筋部材45,46の端部を屈曲させたり、鉄筋部材45,46を全長に亘って波形に形成してもよい。なお、鉄筋部材45,46の径は、10~20mmであることが好ましく、特に、10mm程度であることが好ましい。
【0032】
ここで、
図8に模式的に示すように、第1の組の縦板部42と下部鉄筋部材45の固定、および下部鉄筋部材45と上部鉄筋部材46との固定は、溶接により行われることが好ましい(
図8において、模式的に溶接部48として示す)。これにより、環状アングル部材44と鉄筋部材(下部鉄筋部材45および上部鉄筋部材46)とを備える補強部材40による、周壁部20の底面部26の補強効果がより有効に発揮されることとなる。
【0033】
集水桝本体10においては、上述のような補強部材40が、周壁部20の底面部26内かつ底面部26の全周に亘って、配設されている。
【0034】
図1ないし
図5に示すように、補強部材40は、環状底板部41と、環状底板部41から上方に延びる縦板部42,43とを備え、周壁部20の底面部内に配設された状態において、環状底板部41の底面47は、周壁部20の底面47において露出している。また、環状底板部41の底面47は、周壁部20の底面27と略面一となっている。この実施例では、集水桝本体10の環状底面は、コンクリート面(底面27)と、露出する環状底板部41の底面47とにより形成されている。これにより、補強部材40の配設(集水桝本体10の製造)が容易になり、また、集水桝本体10の底面(環状底面)の形状が安定し、強度も高いものとなる。
【0035】
図1ないし
図5に示すように、補強部材40(環状アングル部材44)の縦板部42,43は、周壁部20の縦断面において、周壁部20の縦方向(上下方向)に延びており、環状底板部41は、周壁部20の縦断面において、周壁部20の横方向(幅方向)に延びている。より具体的には、本実施例では、
図6に示すように、周壁部20の底面部26内に配設された状態において、環状アングル部材44の縦板部42,43は、周壁部20の厚さ方向(
図6における左右方向)の略中央部に位置しており、環状底板部41は縦板部42,43の下端から周壁部20の内方に向かって延びている。これにより、補強部材40による縦方向および横方向の補強効果を得ることができる。
【0036】
このような集水桝本体10を設置する際の工程について、簡単に説明する。
【0037】
集水桝本体の設置に先立ち、工場において、上述のような集水桝本体10を製造する。なお、集水桝本体10は、蓋受用突出部22や補強用肉厚部23を含む周壁部20を形成するための型を用いて製造することができる。その際、型内に補強部材40を配置し、いわゆるインサート成形を行うことによって、補強部材40を備える集水桝本体10を製造することができる。
【0038】
そして、予め製造された(プレキャストコンクリート製の)集水桝本体10を現場に搬入し、
図9に示すように、集水桝本体10の側壁部24,25の適切な位置に、切削具(ダイヤモンドカッター等)を用いて水路用開口34を形成する。本実施例では、集水桝本体10の周壁部20の第1の組の側壁部24,24に、それぞれ、水路用開口34が形成されている。集水桝本体10では、側壁部24,25は補強用肉厚部23よりも薄肉とされているため、水路用開口34を形成し易くなっている。
【0039】
本実施例の集水桝本体10においては、補強部材40により、水路用開口34の下部(周壁部20の底面部26)における集水桝本体10(周壁部20)の破損が防止される。また、集水桝本体10においては、蓋受用突出部22(および蓋受用部材31)や補強用肉厚部23、境界凹部33により、水路用開口34の上部や側部における集水桝本体10(周壁部20)の破損も防止される。
【0040】
次いで、
図10に示すように、集水桝本体10の設置場所に基礎板35を設置する。基礎板35は、現場打ちにて形成してもよいし、予め製造された(プレキャストコンクリート製の)基礎板35を用いてもよい。本実施例では、
図10に示すように、基礎板35の中央部分が若干肉厚となっており、さらに、基礎板35の中央には、基礎板35を厚さ方向に貫通する透水孔36が形成されている。また、透水孔36の上部には透水フィルター37が配設されている。透水フィルター37は水等を透過しつつ、ある程度の大きさの石等の通過を阻止するものである。
【0041】
次いで、基礎板35の上に水路用開口34を形成した集水桝本体10を載置する。そして、
図10に示すように、集水桝本体10と基礎板35との間(具体的には、集水桝本体10の内面と上述した基礎板35の中央部分に形成された肉厚部との間)に調整モルタル38を施工する。これにより、集水桝本体10と基礎板35とをより強固に固定するとともに、基礎板35上における集水桝本体10の移動(ズレ)を阻止することができる。このようにして、集水桝本体10の設置が完了する。
【0042】
集水桝本体10では、側壁部24,25が補強用肉厚部23よりも薄肉とされているため、周壁部20(側壁部24,25)に対して水路用開口34を形成する際の作業性が向上されている。また、集水桝本体10においては、周壁部20の底面部26において、蓋受用突出部22や補強用肉厚部23のような肉厚部(補強部)が形成されていないものの、底面部26内に全周に亘って配設された補強部材40によって周壁部20の底面部26が補強されているため、周壁部20(側壁部24,25)の下部の破損を防止することができる。
【0043】
また、集水桝本体10では、補強部材40が、縦断面において、縦方向(上下方向)および横方向に寸法を有する環状アングル部材44とその上部において環状アングル部材44と一体的に固定された鉄筋部材(下部鉄筋部材45および上部鉄筋部材46)とを備える。そのため、
図6に示すように、鉄筋部材45,46が、環状底板部41と上下方向に所定の間隔を空けて配置され、かつ縦板部42,43と横方向に所定の間隔を空けて配置されている。これにより、環状アングル部材44と鉄筋部材45,46との間に周壁部20の底面部26を構成するコンクリート材料が流れ込むこととなり、より強力な補強効果が得られるものと考えられる。
【0044】
なお、
図11に示す集水桝本体10aのように、補強部材40aは、鉄筋部材を備えていなくてもよい。このような場合であっても、補強部材40a(環状アングル部材44a)による、周壁部20の底面部の補強効果を得ることができる。
【0045】
また、
図12に示す集水桝本体10bのように、補強部材40bの環状アングル部材44bは、周壁部の底面部26内に配設された状態において、環状アングル部材44bの縦板部42b,43bが周壁部20の厚さ方向(
図12における左右方向)の略中央部に位置しており、環状底板部41bが縦板部42b,43bの下端から周壁部の外方に向かって延びるものであってもよい。
【0046】
また、
図13に示す集水桝本体10cのように、補強部材40cの環状アングル部材44cは、周壁部の底面部26内に配設された状態において、環状アングル部材44cの縦板部42c,43cが周壁部の厚さ方向(
図13における左右方向)の略中央部に位置しており、環状底板部41cが縦板部42c,43cの下端から周壁部の内方および外方に向かって延びるもの(言い換えれば、縦断面において略逆T字状のもの)であってもよい。
【0047】
また、
図14に示す集水桝本体10dのように、補強部材40dは、周壁部の底面部26内に埋設されていてもよい。言い換えれば、集水桝本体10dにおいては、環状底板部41dの底面47dは、周壁部の底面27において露出していないものであってもよい。
【0048】
また、
図15及び
図16に示す実施例の集水桝本体10eのように、集水桝本体10(周壁部20)の上下方向に延びる補強部材49(縦筋)を備えるものであってもよい。上下方向に延びる補強部材49(縦筋)は、
図15及び
図16に示すように、周壁部20の角部に配置することが好ましく、特に、周壁部20のすべての角部に配置することが好ましい。さらに、上下方向に延びる補強部材49(縦筋)の下端は、
図15及び
図16に示すように、環状底板部41の上面に当接もしくは近接していることが好ましい。また、この実施例では、
図15及び
図16に示すように、上下方向に延びる補強部材49(縦筋)の下端部50は、環状アングル部材44の角部に配置され、縦板部42,縦板部43、下部鉄筋部材45および上部鉄筋部材46により挟まれた状態となっている。また、この実施例では、
図15及び
図16に示すように、上下方向に延びる補強部材49(縦筋)の上端部は、周壁部20の上端付近まで延びるものとなっている。なお、上下方向に延びる補強部材49(縦筋)は、上述の実施例よりも短いもの、例えば、上端が周壁部20の上下方向の中央部付近にて終端するものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10,10a,10b,10c,10d,10e 集水桝本体
20 周壁部
21 上部開口部
22 蓋受用突出部
23 補強用肉厚部
24 側壁部(第1の組の側壁部)
25 側壁部(第2の組の側壁部)
26 底面部
27 底面
31 蓋受用部材
32 角部
33 境界凹部
34 水路用開口
40,40a,40b,40c,40d 補強部材
41 環状底板部
42 縦板部(第1の組の縦板部)
43 縦板部(第2の組の縦板部)
44 環状アングル部材
45 鉄筋部材(下部鉄筋部材)
46 鉄筋部材(上部鉄筋部材)
47 底面