(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020919
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】RFIDタグ、RFIDタグの製造方法及びRFIDタグロール
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240207BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 136
G06K19/077 280
G06K19/077 212
G09F3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123477
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴山 史明
(72)【発明者】
【氏名】高山 久弥
(57)【要約】
【課題】 安価で且つ生産性に優れたRFIDタグを提供する。
【解決手段】 本発明のRFIDタグ1は、紙基材2と、紙基材2上に帯状の間隙部3bを除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナ3a,3aを構成する蒸着層3とを備えた蒸着紙4と、2つのアンテナ3a,3aに間隙部3bを越えて跨るように実装されたICチップ5と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材上にスリット状の間隙部を除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナを構成する蒸着層とを備えた蒸着紙と、
2つの前記アンテナに前記間隙部を越えて跨るように実装されたICチップと、を備えたRFIDタグ。
【請求項2】
さらに、前記蒸着紙および前記ICチップ上に、前記ICチップ側から覆うように貼着された印字用紙を備えた、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
さらに、前記蒸着紙と前記印字用紙との間に、前記ICチップを囲うスペーサ層を備えた、請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記スペーサ層の前記印字用紙側の面に設けられた糊によって、前記印字用紙が前記スペーサ層に貼着される、請求項3記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記蒸着紙の厚みと前記スペーサ層から前記印字用紙までを含む厚みとが同一または近似である、請求項3記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記印字用紙の前記ICチップ側が、クッション材で構成され、前記ICチップが前記印字用紙に埋没している、請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記蒸着紙の前記印字用紙側の面に設けられた糊によって、前記印字用紙が前記ICチップを間に挟んで前記蒸着紙に貼着される、請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項8】
前記蒸着紙の前記紙基材が、硬質材料である、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項9】
さらに、前記蒸着紙および前記ICチップ上に、前記ICチップ側から覆うように貼着された保護紙を備え、
前記蒸着紙の前記紙基材が、前記蒸着層とは反対側を平滑な印字面とする印字用紙を兼ねている、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項10】
前記印字用紙が前記蒸着層上に抜き穴部または半透過部を有し、前記蒸着層が前記抜き穴部または前記半透過部を介して金属光沢柄を呈する、請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項11】
RFIDタグを使用する際の使用周波数に対応した前記アンテナの形状となるように切断するための目安が、複数の使用周波数毎に前記印字用紙に表示されている、請求項2又は請求項9のいずれかの記載のRFIDタグ。
【請求項12】
紙基材と、前記紙基材上に全面的に形成された蒸着層とを備えた蒸着紙を用い、前記間隙部の前記蒸着層を物理的表面加工によってスリット状の間隙部を除去することにより、並列する2つのアンテナを前記蒸着層の一部又は全部にて構成させる工程と、
前記アンテナに前記間隙部を越えて跨るようにICチップを実装する工程と、を備えたRFIDタグの製造方法
【請求項13】
前記物理的表面加工が、レーザーエッチング又はルーター加工である、請求項12記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項14】
紙基材と、前記紙基材上にスリット状の間隙部を除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナを構成する蒸着層とを備えた蒸着紙と、
2つの前記アンテナに前記間隙部を越えて跨るように実装されたICチップと、を備えたRFIDタグが多数連続されてなる長尺物であって、ロール状に巻き取られているRFIDタグロール。
【請求項15】
前記RFIDタグの連続体が幅方向に複数列存在する、請求項14のRFIDタグロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量多品種に対応した生産性に優れたRFIDタグ、RFIDタグの製造方法及びRFIDタグロールに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)とは、メモリを内蔵したタグと、読み取り装置の間で電波を交信させ、情報を読み取ったり情報を書き換えたりする非接触型の自動認識技術である。複数のRFIDタグを離れた位置から一括で読み取り、瞬時に個体を識別することが可能である。例えば、ダンボールに梱包された商品でも箱の外から一括で読み取ることで、検品や在庫チェックなどの作業効率がアップする。小売、製造、流通、文教、サービス、医療などのさまざまな分野において、今後さらに期待される。使用されるRFIDタグは、ICタグ、RFタグ、RFIDラベル、無線タグなどとも呼ばれる。
【0003】
従来のRFIDタグ101の基本構成は、所定の形状を有する台紙104と、台紙104上の一部領域に既存の樹脂フィルムタイプのインレイ106から転写されたアンテナ103a及びICチップ105と、これらをICチップ105側から覆い台紙104と同形状を有する印字用紙7とを備えたものであった。印字用紙7には、RFIDタグ101が取り付けられる個別の商品等に関連する品名、型番、値段、バーコード等の情報が、通常、RFIDタグ101を商品等に取り付ける前に上記した各種現場にて印字される。
【0004】
また、このようなRFIDタグ101の製造方法は、以下の通りである(
図3及び
図4参照)。
まず、既存のインレイ106を用意する。具体的には、樹脂フィルム基材102に金属箔を貼合してなる長尺の金属箔貼合フィルムを用い(
図3中のステップS101)、金属箔をケミカルエッチングにてパターニングすることでフィルムの長尺方向に連続して並ぶ多数のアンテナ103aを得た後(
図3中のステップS102)、各々のアンテナ103aに対して樹脂フィルム基材102の貫通穴を介してICチップ105(本明細書中では、ICチップ単体のみならず、ICチップと、ICチップのキャリアとして機能するストラップ基板と、ストラップ基板に形成された導電パッドを備えるストラップも含む)をそれぞれ実装してインレイ106とし、当該インレイ106が多数連続されてなる長尺物が巻き取られたインレイロール106Rを得る(
図3中のステップS103)。なお、次のステップに移る前に、
図4(a)に示すように、インレイロール106Rから巻き出したインレイ106の連続体(図示しない糊及びハーフカット付き)を、短冊状のインレイ106単位に分割する。
次に、
図4(b)に示すように、短冊状のインレイ106を、長尺の台紙104上に所定のピッチで貼り付ける(
図3中のステップS104)。このとき、ICチップ105側が外側となるように、糊にて貼り付ける。
次に、
図4(c)に示すように、ハーフカットを境界とするICチップ105周辺以外の樹脂フィルム基材102を剥離する(
図3中のステップS105)。すなわち短冊状のインレイ106の電気的構造が台紙104上に転写される。
次に、
図4(d)に示すように、アンテナ103a及びICチップ105を有する台紙104と、背面に糊の設けられた長尺の印字用紙7とをラミネートローラ20間に通し、アンテナ103a及びICチップ105を間に挟むように両者を貼り合わせ、貼合体109を得る(
図3中のステップS106)。
最後に、
図4(e)に示すように、長尺の貼合体109を打抜き型26にて連続的に打抜いて、所望の形状のRFIDタグ101を連ならせ(
図3中のステップS107)、これをRFIDタグロール101Rとして巻き取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、比較的高価な樹脂フィルム基材102と金属箔を用いる既存のインレイ106は、それらが連続してなるインレイロール106Rの状態においては隣り合うICチップ105どうしの実装ピッチを極めて小さくし(
図4(a)参照)、インレイロール106Rから短冊状に分割されて台紙104上に貼り付けられること(
図4(c)参照)によりコストを抑制している。
そのため、インレイロール106Rからバラバラに分割した短冊状のインレイ106を、台紙104に貼り付けるときに(
図4(b)参照)、RFIDタグ101のサイズに合わせたピッチで1つずつ配置しなければいけない。また、RFIDタグ101のサイズが異なる品種に変わる毎にインレイ106の貼合わせピッチの調整作業を必要とする。これらの結果、生産性向上の阻害要因となっている。
【0006】
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、安価で且つ生産性に優れたRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係るRFIDタグは、紙基材と、紙基材上に帯状の間隙部を除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナを構成する蒸着層とを備えた蒸着紙と、2つのアンテナに間隙部を越えて跨るように実装されたICチップと、を備えている。
このように構成されたRFIDタグでは、比較的安価な蒸着紙を使用し、その蒸着層への単純なスリット加工だけでアンテナパターンを有する構造(蒸着紙タイプのインレイ)を得られているので、このインレイ自体のコストを容易に抑制できる。
また、インレイが安価なため、インレイロールの状態において隣り合うICチップどうしの実装ピッチを、既存のインレイのように小さくする必要がなく、RFIDタグの外形サイズと同程度とすることができる。つまり、態々インレイロールからインレイを分割し、台紙上にRFIDタグのサイズに合わせたピッチで貼り付けなくてもよくなる。したがって、生産性に優れたRFIDタグとなる。
【0009】
上述のRFIDタグは、さらに、蒸着紙及びICチップ上に、ICチップ側から覆うように貼着された印字用紙を備えていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、RFIDタグの製造時又は出荷後に、RFIDタグが取り付けられる個別の商品等に関連する品名、型番、値段、バーコード等の情報を印字することができる。
【0010】
上述の印字用紙がICチップ側から貼着されたRFIDタグは、さらに、蒸着紙と印字用紙との間に、ICチップを囲うスペーサ層を備えていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、ICチップをスペーサ層で囲うことにより印字用紙の印字面が平滑となるので、インクリボンを印字面の印字したい箇所全体に均等接触させてインク層を抜け落ちなく転写させることができる。
【0011】
上述のスペーサ層を備えたRFIDタグは、スペーサ層の印字用紙側の面に設けられた糊によって、印字用紙がスペーサ層に貼着されていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、印字用紙とICチップとの間に糊が存在しないので、印字用紙とICチップとが接着することはない。その結果、ICチップとアンテナとの接着力は強く保たれ、ICチップとアンテナとの間の断線リスクが減少する。
【0012】
上述のスペーサ層を備えたRFIDタグは、蒸着紙の厚みとスペーサ層から印字用紙までを含む厚みとが同一又は近似であってもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、アンテナを構成する蒸着層を挟む両側の基材について、検査後の収縮や取り扱いによる変形などの応力への反応が均一化されるため、蒸着層への機械的負荷が低減される。その結果、アンテナのダメージが軽減してアンテナ内の断線リスクが減少する。
【0013】
上述の印字用紙がICチップ側から貼着されたRFIDタグは、印字用紙のICチップ側がクッション材で構成され、ICチップが印字用紙に埋没していてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、印字用紙のICチップ側にICチップを埋没させることにより印字用紙の印字面が平滑となるので、インクリボンを印字面の印字したい箇所全体に均等接触させてインク層を抜け落ちなく転写させることができる。
【0014】
上述の印字用紙がICチップ側から貼着されたRFIDタグは、蒸着紙の印字用紙側の面に設けられた糊によって、印字用紙がICチップを間に挟んで蒸着紙に貼着されていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、印字用紙とICチップとの間に糊が存在しないので、印字用紙とICチップとが接着することはない。その結果、ICチップとアンテナとの接着力は強く保たれ、ICチップとアンテナとの間の断線リスクが減少する。
【0015】
上述のRFIDタグは、蒸着紙の紙基材が硬質材料であってもよい。
このように構成されたRFIDタグは、蒸着紙の紙基材に硬いものを採用することで、検査後の収縮や取り扱いによる変形を抑制し、蒸着層への機械的負荷が低減される。また、ICチップを実装する際に加わる外部からの圧力によるICチップの蒸着紙へのめり込む負荷を軽減する。その結果、アンテナのダメージが軽減してアンテナ内の断線リスクが減少する。
【0016】
上述のRFIDタグは、さらに、蒸着紙及びICチップ上に、ICチップ側から覆うように貼着された保護紙を備え、蒸着紙の紙基材が、蒸着層とは反対側を平滑な印字面とする印字用紙を兼ねていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、蒸着紙の紙基材が蒸着層とは反対側を平滑な印字面とする印字用紙を兼ねていているので、保護紙側の段差をプリンタ定盤の凹部で吸収するように配置することにより、インクリボンを印字面の印字したい箇所全体に均等接触させてインク層を抜けなく転写させることができる。
【0017】
上述のICチップ側から貼着されたRFIDタグは、印字用紙が蒸着層上に抜き穴部又は半透過部を有し、蒸着層が抜き穴部又は半透過部を介して金属光沢柄を呈していてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、蒸着層が抜き穴部又は半透過部を介して金属光沢柄を呈しているので、アンテナの通信障害を気にすることなく、金属調、鏡の効果を活用し、反射により変化の見られるような意匠も採用できるようになる。したがって、RFIDタグのデザインについて、デザイナーの要望への対応可能性を広げることができる。
【0018】
上述の印字面を有するRFIDタグは、RFIDタグを使用する際の使用周波数に対応したアンテナの形状となるように切断するための目安が、複数の使用周波数毎に印字用紙に表示されていてもよい。
このように構成されたRFIDタグでは、それを運用する際の利用目的、店舗等施設の環境で最適な感度、通信距離に応じて、容易にRFIDタグの感度を鈍くしたり、通信距離を短くしたりする方向の調整ができるようになる。
【0019】
本発明の一見地に係るRFIDタグの製造方法は、紙基材と、紙基材上にスリット状の間隙部を除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナを構成する蒸着層とを備えた蒸着紙と、2つのアンテナに間隙部を越えて跨るように実装されたICチップと、を備えた上述のRFIDタグを製造する方法であって、紙基材上に間隙部も含めて全面的に形成された蒸着層から、間隙部の蒸着層を物理的表面加工によって除去する工程と、アンテナにICチップと実装する工程と、を備えている。
【0020】
上述のRFIDタグの製造方法は、物理的表面加工がレーザーエッチング又はルーター加工であってもよい。
【0021】
本発明の一見地に係るRFIDタグロールは、紙基材と、紙基材上にスリット状の間隙部を除いて全面的に形成され、その一部又は全部が並列する2つのアンテナを構成する蒸着層とを備えた蒸着紙と、2つのアンテナに間隙部を越えて跨るように実装されたICチップと、を備えた上述のRFIDタグが多数連続されてなる長尺物であって、ロール状に巻き取られているものである。
【0022】
上述のRFIDタグロールは、RFIDタグの連続体が幅方向に複数列存在していてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のRFIDタグ、RFIDタグの製造方法及びRFIDタグロールによれば、蒸着紙の蒸着層を用いてRFIDタグ用アンテナが構成されているので、安価で且つ生産性に優れたRFIDタグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図2】印字用紙を備えたRFIDタグへの印字方法の一例を示す模式図である。
【
図3】従来技術におけるRFIDタグの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図4】従来技術におけるRFIDタグの製造工程の一例を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るRFIDタグの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係るRFIDタグの製造工程の一例を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係るRFIDタグの製造工程と従来技術の工程の比較図である。
【
図8】同一のインレイで異なる形状のRFIDタグ1を得る例を示す説明図である。
【
図9】蒸着紙を用いたアンテナ形成とICチップ実装の工程の一例を示す斜視図である。
【
図10】インレイにおけるアンテナパターンの変化例を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図12】表面平滑性のないRFIDタグへの印字を説明する図である。
【
図13】第2実施形態に係るRFIDタグへの印字を説明する図である。
【
図14】印刷用紙背面の糊に起因するICチップとアンテナとの断線の一例を説明する図である。
【
図15】第3実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図16】第4実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図17】第4実施形態に係るRFIDタグについて、印字用紙によるICチップの厚みの吸収を説明する図である。
【
図18】第5実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図19】印刷用紙背面の糊に起因するICチップとアンテナとの断線の別の例を説明する図である。
【
図20】第5実施形態に係るRFIDタグの製造工程を説明する図である。
【
図21】第6実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図22】第6実施形態に係るRFIDタグについて、印字用紙によるICチップの厚みの吸収を説明する図である。
【
図23】アンテナ内の断線の例を説明する図である。
【
図24】第8実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
【
図25】第8実施形態に係るRFIDタグについて、その製造及び印字を説明する図である。
【
図26】第9実施形態に係るRFIDタグの一例を示す分解図である。
【
図27】第9実施形態に係るRFIDタグの別の例を示す分解図である。
【
図28】第10実施形態に係るRFIDタグの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るRFIDタグ1、RFIDタグ1の製造方法及びRFIDタグロール1Rについて、図を用いて説明する。
(1)RFIDタグの概要
(1-1)RFIDタグ
図1は、第1実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第1実施形態に係るRFIDタグ1は、アンテナ3aを構成する蒸着層3を備えた蒸着紙4と、蒸着紙4に実装されたICチップ5と、これらをICチップ5側から覆う印字用紙7とを備えたものである(
図1参照)。
【0026】
(1-2)蒸着紙
以下、RFIDタグ1を構成する蒸着紙4についてさらに詳細に説明する。
本実施形態でRFIDタグ1を構成する蒸着紙4は、
図1に示すように、紙基材2と、紙基材2上に帯状の間隙部3bを除いて全面的に形成され、並列する2つのアンテナ3aを構成する蒸着層3とを備える。蒸着紙4は、基材が紙であるのでRFIDタグ1の廃棄の際にプラスチックを減らすことができ、環境に与える負荷が少ない。
紙基材2としては、コート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などを用いることができる。紙基材の厚さは、50μm~350μmとするのが好ましい。350μmを超えると蒸着紙をロール状に巻き取れないという問題があり、50μmに満たないと皺が発生したり破断したりしやすいという問題ある。
【0027】
なお、紙基材2上に蒸着層3を均一な薄膜として形成するには、紙基材2に下地として平滑化層を設けておくことが好ましい。平滑化層は、樹脂系コーティング材をコーティングして形成する。コーティング方法としては、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ダイコーターなどを用いる。樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ビニル系、塩化ゴム系、硝化綿系、オレフィン系などの樹脂バインダーを用いることができる。
【0028】
蒸着層3の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、インジウム、カドミウムなどが挙げられる。これらの中では安価かつ明るく鮮明な層を作ることができることからアルミニウムが好ましい。蒸着層は、真空蒸着法、スパッタリング法などで形成できる。蒸着層3の厚さは、100nm~1,000nmとするのが好ましい。1,000nmを超えるとアンテナとして加工性が低下する傾向があり、100nmに満たないとアンテナとして放射効率が低下する傾向がある。
【0029】
蒸着層3で構成されるアンテナ3aは、並列する2つのパターンである。例えば、
図9(c)に示すように、紙基材2上に帯状の間隙部3bを除いて全面的に形成され、間隙部3bによって2分割された蒸着層3の全てでアンテナ3aが構成される。間隙部3bを形成するには、物理的表面加工にて蒸着層3だけを除去する(
図9(a)~(b)参照)。蒸着層3の形成された基材が紙であるため、ウェットな加工法は不適なためである。
【0030】
物理的表面加工としては、例えば、
図9(b)に示すように、レーザーエッチングを用いることができる。本明細書におけるレーザーエッチングは、レーザー光27の照射によって表面温度を沸点まで上昇させ、蒸着層3の蒸発が起きる状態にし、これを利用して不要な蒸着層3を除去する加工法である。レーザー光27を照射する際は、光路上の蒸着紙4の厚みのうち蒸着層3の厚み分の深さまでだけを蒸発させ、蒸着層3の下の紙基材2を貫通したり焦がしたりしないように出力が制御される。使用するレーザー光27の種類としては、例えば、CO
2レーザー光などが挙げられる。
【0031】
また、物理的表面加工としてルーター加工を用いてもよい。本明細書におけるルーター加工は、外周部に切れ刃を有する回転切削工具で蒸着紙4の蒸着層3表面をなぞるように移動させることによって、不要な蒸着層3を除去する加工法である。工具を当てる際には、蒸着紙4が回転方向に変形しないように、主軸回転速度、主軸回転方向や送り速度が制御される。
【0032】
(1―3)ICチップ
蒸着紙4に実装されたICチップ5は、
図1に示すように、2つのアンテナ3a,3aに間隙部3bを越えて跨るように、糊8にて蒸着紙4に貼着されている。また、ICチップ5と2つのアンテナ3a,3aとは、例えば、糊8に設けられた図示しない開口部等を介して互いに導通している。なお、本明細書中におけるICチップ5には、ICチップ単体のみならず、ICチップと、ICチップのキャリアとして機能するストラップ基板と、ストラップ基板に形成された導電パッドを備えるストラップも含む。
【0033】
RFIDタグ1に用いられるICチップ5は、一般的にRESERVEDメモリ、EPCメモリ、TIDメモリ、USERメモリなどのメモリ領域を有している。RESERVEDメモリは、RFIDタグ1への意図しない書き込みから保護するロック機能やRFIDタグ1の情報が不必要に読み取られることを防ぐ無効化機能で使用されるパスワードを保存するための領域である。EPCメモリは、RFIDタグ1を識別するために使用するコード情報の領域である。TIDメモリはRFIDタグ1の製造時にメーカーによって書き込まれる製造業者の情報の領域である。USERメモリは、RFIDタグ1のユーザーが自由にデータを読み書きできるように用意された領域であり、この領域が存在しないRFIDタグ1もある。
【0034】
ICチップ5を固定する糊8としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなど比較的軟化温度の低い熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤や、それをテープ状としたホットメルト手テープ、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤、フッ素系接着剤などが用いられる。この場合、ICチップ5と2つのアンテナ3a,3aとの導通は、その間の糊8が誘電体となって容量結合によって実現する。
【0035】
また、ICチップ5の貼着に用いる糊8自体が、導電性を有していてもよい。この場合、ICチップ5と2つのアンテナ3a,3aとを導通させるための開口部等は不要である。導電性糊としては、ICチップ5をアンテナ3aに接着しながらICチップ5裏面の端子とアンテナ3aとの間で導電し、隣接した端子同士がショートを起こさないよう絶縁できる必要があり、公知の異方導電性接着剤や異方導電性接着テープが用いられる。
【0036】
なお、本明細書においては、上記のようなアンテナ3aを構成する蒸着層3を備えた蒸着紙4にICチップ5が実装されたものを、総称してインレイ(Inlay)と呼ぶ。既存のインレイでは、他にRFIDインレイやRFIDインレット(RFID Inlet )などとも呼ばれている。
【0037】
(1-3)印字用紙
本実施形態における印字用紙7は、
図1に示すように、蒸着紙4及びICチップ5(すなわちインレイ)上に、ICチップ5側から覆うように、糊8にて貼着されている。
印字用紙7は、アンテナ3a及びICチップ5を保護するとともに、外面に品名、型番、値段、バーコード、JANコード、成分、材料、サイズ、原産地、製品種、ブランドマークなどの情報が、印字によって書き込みされる。
印字用紙7の材料としては、蒸着紙4の紙基材2と同様に、コート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などを用いることができる。そのため、蒸着紙4同様に、RFIDタグ1の廃棄の際にプラスチックを減らすことができ、環境に与える負荷が少ない。
【0038】
印字用紙7への印字方法としては、例えば、熱転写プリンタ(サーマルプリンが)、レーザー式プリンタ、インクジェットプリンタ、ホットスタンプ式印字方式プリンタ(ドライプリンタ)などを用いることができる。なお、本明細書における印字の定義には、印刷も含まれる。
図2は、印字用紙を備えたRFIDタグ1への印字方法の一例を示す模式図である。
図2に示す例は、上記した印字方法の中でもよく使用される、熱転写プリンタによる印字である。具体的には、インレイに印字用紙7を貼着してなるRFIDタグ1が多数連続されてなる長尺物、すなわちRFIDタグロール1Rを用い、RFIDタグロール1RからRFIDタグ1の連続体を巻き出して、リボン基材23に熱溶性顔料インクからなるインク層24が形成されたインクリボン22とともに定盤21とサーマルヘッド25の間に送り込み、インクリボン22のリボン基材23側からサーマルヘッド25をRFIDタグ1に押し当て、インクリボン22のインク層24を熱で溶融させて印字用紙7上に転写している。なお、熱転写プリンタにおいては、熱溶性顔料インクの代わりに昇華性染料インクを塗布してなるインクリボンを用い、インクリボン22、インクを熱で昇華させて印字用紙7表層内に転写してもよい。
【0039】
本実施形態において、印字用紙7の貼着に用いる糊8は、印字用紙7の背面に設けられている(
図1参照)。
図1に示す例では、ICチップ5の側面には印字用紙7の糊面が沿っておらず、僅かに空間が生じている。
印字用紙7の貼着に用いる糊8としては、特に限定されず、例えば熱硬化型接着剤や感圧性接着剤が使用可能である。具体的には、エポキシ系、メラミン系、メラミンアルキド系、フェノール系、ポリウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの各種接着剤が使用可能である。
【0040】
(2)RFIDタグの製造方法
本実施形態に係るRFIDタグ1は、上記のような構成からなるので、従来のRFIDタグ101とは製造方法も異なってくる。以下、両者の違いについて説明する。
【0041】
(2―1)従来技術におけるRFIDタグの製造方法
「背景技術」欄にて
図3、
図4を用いて既に説明した通りである。
【0042】
(2―2)第1実施形態におけるRFIDタグの製造方法
図5は、第1実施形態に係るRFIDタグ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図6は、第1実施形態に係るRFIDタグ1の製造工程の一例を示す斜視図である。
第1実施形態に係るRFIDタグ1の製造では、既存の樹脂フィルムを基材とするインレイ106は用いない。
まず、蒸着紙4を用いたインレイ6を用意する。具体的には、
図6(a)に示すように、紙基材2に蒸着層3を設けてなる長尺の蒸着紙4を用い(
図5中のステップS1)、蒸着層3を物理的表面加工にてパターニングすることで蒸着紙の長尺方向に沿って延びる帯状の間隙部3bで隔てられたアンテナ3a,3aを得た後(
図5中のステップS2)、アンテナ3a,3a跨ぐように蒸着紙4の長尺方向に所定のピッチで並ぶ多数のICチップ5をそれぞれ実装してインレイロール6Rとする(
図5中のステップS3)。
【0043】
次に、
図6(b)に示すように、インレイロール6Rから巻き出したアンテナ3a,3a及びICチップ5を有す蒸着紙4と、背面に糊の設けられた長尺の印字用紙7とをラミネートローラ20間に通し、アンテナ3a,3a及びICチップ5を間に挟むように両者を貼り合わせ、貼合体9を得る(
図5中のステップS4)。
最後に、
図6(c)に示すように、長尺の貼合体9を打抜き型26にて連続的に打抜いて、所望の形状のRFIDタグ1を連ならせ、これをRFIDタグロール1Rとして巻き取る(
図5中のステップS5)。
以上の工程で得られたRFIDタグロール1Rは、出荷前又は使用現場において個々のRFIDタグ1に分離される。
【0044】
(2―3)従来技術との比較
図7は、第1実施形態に係るRFIDタグの製造工程と従来技術の工程の比較図である。なお、最終工程として、ユーザーによる印字及びデータ書込(順序入れ替え可能)も加えている。
両者を比べると、最初のアンテナ用の金属薄膜を用意する工程で、従来技術が金属箔を用いるのに対して、第1実施形態に係るRFIDタグ1では比較的安価な蒸着紙を使用している。
また、インレイロール6Rを得る工程で、従来技術では金属箔を一旦フィルムに貼合するのに対して、第1実施形態に係るRFIDタグ1ではフィルムへ貼合する手間を要しない。さらに、インレイロール6Rを得る工程で、従来技術では金属箔をケミカルエッチングでパターニングするのに対して、第1実施形態に係るRFIDタグ1では蒸着層3にレーザーエッチングやルーター加工などの単純な物理的表面加工でスリットを入れてパターニングする。
さらに、インレイロール6Rを用いてタグを得る工程で、従来技術では樹脂フィルムタイプのインレイの電気的構造が台紙上にタグのサイズに合わせたピッチで転写されるのに対して、第1実施形態に係るRFIDタグでは台紙上に転写する手間を要しない。
【0045】
(3)変化例
(3-1)変形例1
上記第1実施形態では、打ち抜きで外形形状をトリミングし、同一形状、同一寸法のRFIDタグ1が隣接して連続しているRFIDタグロール1Rの場合(
図6(c)参照)を図示して説明したが、これに限定されない。例えば、RFIDタグロール1Rについて、トリミングではなく、打ち抜きでRFIDタグ1の形状にミシン目を設けるようにしてもよい(図示せず)。また、RFIDタグロール1Rが、
図8に示すように、RFIDタグ1(図中の破線部で示す打ち抜き予定部31内)が直接隣接せずに間隔を開けて連続していてもよい。
また、RFIDタグロール1Rの状態において、
図6ではRFIDタグ1の連続体が幅方向に1列存在するだけであるが、
図8に示すようにRFIDタグ1の連続体が幅方向に2列存在してもよい。また、3列以上の複数列であってもよい。
【0046】
さらに、同一インレイを用いた1つのRFIDタグロール1Rにおいて、
図8に示すように、異なる形状や異なる寸法のRFIDタグ1(図中の破線部内)を有していてもよい。この場合、1)異なる形状や異なる寸法のRFIDタグ1どうしが混在していてもよいし、2)ロールの長さ方向において同一形状、同一寸法毎にエリア分けされて存在してもよい。ところで、RFIDタグ1のデザインは、規格化されておらず使用者が自由に選択できることから、多様である。上記2)の場合、RFIDタグ1は、使用者が要望するデザインに応じて、少量多品種で生産が可能である。
【0047】
また、RFIDタグロール1Rとせずに、打ち抜き時に個々のRFIDタグ1単位に分離してもよい。
【0048】
(3-2)変形例2
上記第1実施形態では、アンテナ3a,3aのパターンについて、紙基材2上に帯状の間隙部3bを除いて全面的に形成された蒸着層3の全てで構成される場合(
図9(c)参照)を図示して説明したが、これに限定されない。例えば、アンテナ3a,3aは、紙基材2上に帯状の間隙部3bを除いて全面的に形成された蒸着層3の一部のみで構成されてもよい。つまり、必要とするアンテナ3a,3aのサイズに応じて、帯状の間隙部3bのパターンが設けられる。
【0049】
例えば、
図10は、インレイ6におけるアンテナパターンの変化例を示す斜視図である。
図10に示す変化例では、長方形の紙基材2上に全面的に形成された蒸着層3が、帯状の間隙部3bによって6つのパターンに分割されている。具体的には、蒸着層3は、短辺に平行な3本の間隙部3bによって、4つのパターンに分割されている。また、この4つのパターンのうち内側の2つのパターンは、長辺に平行な1本の間隙部3bによってそれぞれ2つに分割されている。そして、6つのパターンのうち、ICチップ5が実装された矩形状の2つのパターンによってアンテナ3a,3aが構成されている。
【0050】
図10に示す変化例に限らず、このように帯状の間隙部3を組み合わせることによって、蒸着層3で構成されるアンテナ3a,3aの長さを調整し、多種多様なアンテナパターンを形成することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第2実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4と印字用紙7との間に、ICチップ5を囲うスペーサ層11を備えている(
図11参照)。すなわち、第2実施形態は、スペーサ層11を必須構成として追加した点で第1実施形態と異なる。
【0052】
スペーサ層11を設けない場合、熱転写プリンタによる印字では、印字用紙7に対してインク層24を全面的には転写させることが容易でない。何故ならば、蒸着紙4及びICチップ5上に、スペーサ層11を設けることなく、ICチップ5側から印字用紙7を直接貼着するので、大抵の場合はRFIDタグ1の印字面がICチップ5の厚みで突出するからである。
その場合、印字面の平滑性がないRFIDタグ1に対し、インクリボン22のリボン基材23側からサーマルヘッド25を押し当てると(
図12(a)参照)、サーマルヘッド25の熱圧が加わるのはRFIDタグ1の印字面のうちICチップ5上の突出部分だけである。そのため、インクリボン22のインク層24を熱で溶融させて印字用紙7上に転写しても、RFIDタグ1の印字面のうちICチップ5上の突出部分にしかインク層24が転写されない(
図12(b)参照)。
したがって、スペーサ層11を設けない場合、ICチップ5上の突出部分にのみに印字するか、あるいはICチップ5を避けて印字することになる。
【0053】
これに対して、第2実施形態のように蒸着紙4と印字用紙7との間にICチップ5を囲うスペーサ層11を備えている場合、ICチップ5をスペーサ層11で囲うことにより印字用紙7の印字面が平滑となるので(
図11参照)、インクリボン22のリボン基材23側からサーマルヘッド25を押し当てると(
図13(a)参照)、インクリボン22を印字面の印字したい箇所全体に均等接触させ、熱圧を加えることができる。そのため、インクリボン22のインク層24を熱で溶融させて抜け落ちなく転写できる(
図13(b)参照)。
【0054】
スペーサ層11の材料としては、蒸着紙4の紙基材2や印字用紙と同様に、コート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などを用いることができる。そのため、蒸着紙4や印字用紙7と同様に、RFIDタグ1の廃棄の際にプラスチックを減らすことができ、環境に与える負荷が少ない。
【0055】
スペーサ層11と蒸着紙4との接着、スペーサ層11と印刷用紙7との接着には、第1実施形態で印字用紙7の貼着に用いる糊8と同様の材料を用いることができる。
【0056】
なお、第2実施形態においては、
図13に示すように、スペーサ層11と印字用紙7の間にのみ形成された糊8によって、印字用紙7がスペーサ層11に貼着されるようにするのが好ましい。とくに、糊8のパターニングが不要な点から、スペーサ層11の印字用紙7側の面に糊8を設けるのがより好ましい。
なぜならば、このように構成されたRFIDタグ1では、印字用紙7とICチップ5との間に糊が存在しないので、印字用紙7とICチップ5とが接着することはないからである。印字用紙7とICチップ5とが接着しないので、ICチップ5とアンテナ3aとの接着力は強く保たれ、ICチップ5とアンテナ3aとの間の断線リスクが減少する。
仮に印字用紙7の背面に設けた糊8によって印字用紙7がスペーサ層11に貼着されている場合(
図14(a)参照)、印字用紙7とICチップ5とが糊8で接着することがある。印字用紙7とICチップ5との接着力によってアンテナ3aとICチップ5との接着力弱まると、ICチップ5とアンテナ3aとの間の断線リスクが増す(
図14(b)参照)。
【0057】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第2実施形態に適用できる。
【0058】
《第3実施形態》
図15は、第3実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第3実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4の厚み(B)とスペーサ層11から印字用紙7までを含む厚み(A)が同一又は近似である(
図15参照)。すなわち、第3実施形態は、ICチップ5を挟む両側の部材の厚みの関係を特定した点で第2実施形態と異なる。
【0059】
このよう厚みの関係で構成されたRFIDタグ1では、検査後の収縮や取り扱いによる変形などの応力への反応が均一化されるため、蒸着層3への機械的負荷が低減される。その結果、アンテナ3aのダメージが軽減してアンテナ3a内の断線リスクが減少する。なお、本明細書において厚みが近似とは、厚み(B)と厚み(A)の差異が、20%以内のことをいう。
【0060】
その他の点については、第3実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
【0061】
《第4実施形態》
図16は、第4実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第4実施形態に係るRFIDタグ1は、印字用紙7のICチップ5側がクッション材で構成され、ICチップ5が印字用紙7に埋没している(
図16参照)。すなわち、第4実施形態は、ICチップ5が印字用紙7に埋没している点で第1実施形態と異なる。
【0062】
先に第2実施形態で説明したように、蒸着紙4と印字用紙7との間にICチップ5を囲うスペーサ層11スペーサ層11を設けない場合、熱転写プリンタによる印字では、印字用紙7に対してインク層24を全面的には転写させることが容易でない。そのため、ICチップ5上の突出部分にのみに印字するか、あるいはICチップ5を避けて印字することになる。
【0063】
これに対して、第4実施形態のように印字用紙7のICチップ5側が、クッション材で構成されている場合、ICチップ5が印字用紙7に埋没することによって印字用紙7の印字面が平滑となる(
図17(a)及び
図17(b)参照)。ただし、クッション材のクッション性があり過ぎると印字しにくくなるので、印字しやすい範囲のクッション性を限度とする。
このような状態でインクリボン22のリボン基材23側からサーマルヘッド25を押し当てると(
図3参照)、第2実施形態と同様にインクリボン22を印字面の印字したい箇所全体に均等接触させ、熱圧を加えることができる。そのため、インクリボン22のインク層24を熱で溶融させて印字用紙7に抜けなく転写できる(
図17(c)参照)。
【0064】
第4実施形態の印字用紙7は、印字用紙7全体が上記のようなクッション材で構成されていてもよいし、印字用紙7が複数層からなりICチップ5側の層が上記のようなクッション材で構成されていてもよい。
第1実施形態の印字用紙7では、材料としてコート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などの例を挙げたが、第4実施形態の印字用紙7で使用できる材料は少し異なる。具体的には、上記した例のうちグラシン紙やアラミド紙は、第4実施形態の印字用紙7には不適である。
【0065】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第4実施形態に適用できる。
【0066】
《第5実施形態》
図18は、第5実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第5実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4の印字用紙7側の面に設けられた糊8によって、印字用紙7がICチップ5を間に挟んで蒸着紙4に貼着されている(
図18参照)。すなわち、第5実施形態は、印字用紙7を貼着するための糊8の形成位置が第1実施形態と異なる。
【0067】
印字用紙7の背面に設けた糊8(
図19(a)参照)によって印字用紙7が蒸着紙4及びICチップ5上に貼着されている場合、印字用紙7とICチップ5とが糊8で接着することがある。印字用紙7とICチップ5との接着力によってアンテナ3aとICチップ5との接着力弱まると、ICチップ5とアンテナ3aとの間の断線リスクが増す(
図19(b)参照)。
【0068】
これに対して、第5実施形態に係るRFIDタグ1では、印字用紙7とICチップ5との間に糊が存在しないので、印字用紙7とICチップ5とが接着することはない(
図20参照)。その結果、ICチップ5とアンテナ3aとの接着力は強く保たれ、ICチップ5とアンテナ3aとの間の断線リスクが減少する。
【0069】
なお、
図18,
図20に示すように、ICチップ5の固定と印字用紙7の貼着が共通する糊8で行われる場合、第1実施形態に示した印字用紙7の貼着に用いる糊8と同様のものを用いることができる。すなわち、例えば熱硬化型接着剤や感圧性接着剤が使用可能である。具体的には、エポキシ系、メラミン系、メラミンアルキド系、フェノール系、ポリウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの各種接着剤が使用可能である。
【0070】
また、ICチップ5の固定と印字用紙7の貼着とは、別々に異なる材料の糊8を使用して行われてもよい。その場合、ICチップ5の固定に用いる糊8及びICチップ5を固定する糊8は、第1実施形態にそれぞれ示したのと同様の材料を使用可能である。
【0071】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第5実施形態に適用できる。
【0072】
《第6実施形態》
図21は、第6実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
図22は、第6実施形態に係るRFIDタグについて、印字用紙によるICチップの厚みの吸収を説明する図である。
第6実施形態に係るRFIDタグ1は、
図21に示す通り、印字用紙7のICチップ5側がクッション材で構成され、ICチップ5が印字用紙7に埋没している。また、第6実施形態に係るRFIDタグ1は、
図21に示す通り、蒸着紙4の印字用紙7側の面に設けられた糊8によって、印字用紙7がICチップ5を間に挟んで蒸着紙4に貼着されている。すなわち、第6実施形態は、第4実施形態と第5実施形態の構成の組み合わせである。
【0073】
その他の点については、第1実施形態、第4実施形態及び第5実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第6実施形態に適用できる。
【0074】
《第7実施形態》
第7実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4の紙基材2が硬質材料である。すなわち、第7実施形態は、印字用紙7を貼着するための蒸着紙4の紙基材2の性質を特定している点で第1実施形態と異なる。
【0075】
蒸着紙4の紙基材2によっては、RFIDタグ1の取り扱い中に受ける伸縮や、ICチップを実装する際に加わる外部からの圧力によるCチップ5が蒸着紙4へのめり込みによって、アンテナ3a内で断線リスクが生じてしまう(
図23参照)。
【0076】
これに対して第7実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4の紙基材2に硬質材料を採用することで、RFIDタグ1の検査後の収縮や取り扱いによる変形を抑制し、蒸着層4への機械的負荷が低減される。また、ICチップ5を実装する際に加わる外部からの圧力によるICチップ5の蒸着紙4へのめり込む負荷を軽減する。その結果、アンテナ3aのダメージが軽減してアンテナ3a内の断線リスクが減少する。
【0077】
第1実施形態の蒸着紙4では、紙基材2の材料としてコート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などの例を挙げたが、第7実施形態の蒸着紙4で使用できる紙基材2の材料は少し異なる。具体的には、上記した例のうちライナー紙は、第7実施形態の蒸着紙4に使用する紙基材2には不適である。
【0078】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第7実施形態に適用できる。
【0079】
《第8実施形態》
図24は、第8実施形態に係るRFIDタグの一例を示す断面図である。
第8実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4及びICチップ5上に、ICチップ5側から覆うように貼着された保護紙12を備え、蒸着紙4の紙基材2が、蒸着層3とは反対側を平滑な印字面とする印字用紙7を兼ねている(
図24、
図25(a)~(b)参照)。すなわち、第8実施形態は、印字面の場所が第1実施形態と異なる。
【0080】
第8実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着紙4の紙基材2が蒸着層3とは反対側を平滑な印字面とする印字用紙7を兼ねていているので、保護紙12側の段差をプリンタ定盤21の凹部で吸収するように配置することにより(
図25(c)参照)、インクリボン22を印字面の印字したい箇所全体に均等接触させ、インク層24を抜けなく転写させることができる。
【0081】
保護紙12の材料としては、第1実施形態の印字用紙7と同様に、コート紙、上質紙、中質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶未晒クラフト紙、ライナー紙、グラシン紙、アラミド紙などを用いることができる。そのため、蒸着紙4同様に、RFIDタグ1の廃棄の際にプラスチックを減らすことができ、環境に与える負荷が少ない。
保護紙12の貼着に使用する糊8は、第1実施形態の印字用紙7の貼着に使用する糊8と同様のものを使用可能である。
【0082】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第8実施形態に適用できる。
【0083】
《第9実施形態》
図26は、第9実施形態に係るRFIDタグの一例を示す分解図である。
図27は、第9実施形態に係るRFIDタグの別の例を示す分解図である。
第9実施形態に係るRFIDタグ1は、印字用紙7が蒸着層3上に抜き穴部7a(
図26参照)又は半透過部7b(
図27参照)を有し、蒸着層3が抜き穴部7a又は半透過部7bを介して金属光沢柄を呈していている。すなわち、第9実施形態は、蒸着層3が印字用紙7側より部分的に視認できることを特定した点で、第1実施形態と異なる。
【0084】
RFIDタグ1は、一般的に電波の通信の障害となる金属との相性が悪いことが認知されているため、従来、RFIDタグ1に金属調のデザインは見られない。そのため、従来のRFIDタグ1は、デザイン性に乏しい。
【0085】
これに対して、第9実施形態に係るRFIDタグ1は、蒸着層3が抜き穴部7a又は半透過部7bを介して金属光沢柄を呈しているので、アンテナ3aの通信障害を気にすることなく、金属調、鏡の効果を活用し、反射により変化の見られるような意匠も採用できるようになる。したがって、RFIDタグのデザインについて、デザイナーの要望への対応可能性を広げることができる。
【0086】
半透過部7bを有する印字用紙7は、例えば、元々半透明な紙に部分的に印刷等によって不透明層を形成し、半透過部7b以外の不透明部7cとしたものがある。半透明な紙としては、第1実施形態に挙げた材料のうち、グラシン紙などが相当するが、これに限定されない。
紙を半透明化するためには、いくつかの技術がある。例えば、パルプ繊維を高度に叩いて(叩解)パルプ繊維を柔軟にし、圧力をかけて高密度な紙にすることで、パルプ繊維間の空隙を減らして、光の反射を少なくし、半透明にする方法。また、紙を硫酸処理することによってセルロースをアミロイド化し、パルプ繊維を半透明にする方法。他にも、紙のパルプ繊維の隙間に油を染み込ませて、油とパルプ繊維との屈折率の差を小さくすることで光の反射を少なくし、半透明にする方法。
不透明層の材質は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、硝化綿系
樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂などの樹脂バインダーに通常の顔料、染料などの
着色剤を少量含ませたものを挙げることができるが、特に限定されない。なお、
図27に示すように、半透過部7b以外の不透明部7cは、蒸着層3の存在しない間隙部3b及びICチップ5を覆って隠蔽している。
【0087】
また、上記した油を含侵させる方法などのように部分的に紙を半透明化することができる場合、不透明層を形成する必要はない。さらに、着色透明層で半透過部7bを覆ってもよい。
【0088】
抜き穴部7aを有する印字用紙7は、打ち抜きにより不要な部分の印字用紙7を除去することで背後の蒸着層3が露出させる。なお、本明細書における抜き穴部7aは、機能を認識しやすいので「抜き穴」という表現を用いているが、印字用紙7の内部のみに存在する穴形状、スリット形状に限定されず、印字用紙7の外縁と繋がる切り欠き、印字用紙7の外縁よりも外側にあって蒸着紙4の露出する領域なども含む広義のものである。
【0089】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例やその他の実施形態も、第9実施形態に適用できる。
【0090】
《第10実施形態》
図28は、第10実施形態に係るRFIDタグの一例を示す平面図である。
第10実施形態に係るRFIDタグ1は、品名、型番、値段、バーコード30、JANコード、成分、材料、サイズ、原産地、製品種、ブランドマークなどの情報という通常のタグとしての表示のみならず、RFIDタグ1を使用する際の使用周波数に対応したアンテナ3aの形状となるようにミシン目33などで切断するための目安32が、複数の使用周波数毎に印字用紙7に表示されていている(
図28参照)。すなわち、第10実施形態は、切り取り目安を表示した点で、第1実施形態と異なる。
【0091】
第10実施形態に係るRFIDタグ1は、切断するための目安32が表示されているので、それを運用する際の利用目的、店舗等施設の環境で最適な感度、通信距離に応じて、容易にRFIDタグ1の感度を鈍くしたり、通信距離を短くしたりする方向の調整(
図28(a)~(c)参照)が容易にできるようになる。切断するための目安32としては、
図28に示す例では、ミシン目33の横にそれぞれ地域別に必要な調整位置を標記した目安32が文字「地域A」 、「地域B」、「地域C」、「地域D」 により矢印とともに標記されている。ここで地域とは、国名、地方名、県名、拠点名、店舗名などである。地域名以外にも商品名や用途名など、RFIDタグ1の感度や通信距離の調整が適用されるものであれば特に限定されない。また、対応する周波数をそのまま記載してもよい。
なお、
図28に示す例では、ミシン目33とともに切断するための目安32が表示されているが、ミシン目33を設けずに切断するための目安32のみが表示されていてもよい。
【0092】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例やその他の実施形態も、第9実施形態に適用できる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0094】
1,101 RFIDタグ
1R,101R RFIDタグロール
2 紙基材
3 蒸着層
3a,103a アンテナ
3b 隙間部
4 蒸着紙
5,105 ICチップ
6,106 インレイ
6R,106R インレイロール
7 印字用紙
7a 抜き柄
7b 半透明部
7c 不透明部
8 糊
9,109 貼合体
11 スペーサ層
11a 貫通穴
12 保護紙
20 ラミネートローラ
21 プリンタ定盤
22 インクリボン
23 リボン基材
24 インク層
25 サーマルヘッド
26 打抜き型
27 レーザー光
30 印字柄
31 打ち抜き予定部
32 目安
33 ミシン目
102 樹脂フィルム基材
103 導電層
104 台紙