(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020928
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】地中連続壁の芯材の付着物除去具
(51)【国際特許分類】
E02D 5/16 20060101AFI20240207BHJP
E02D 5/08 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E02D5/16
E02D5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123488
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 実稚久
(72)【発明者】
【氏名】岩永 祐治
(72)【発明者】
【氏名】小川 伸也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 北人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 昌志
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049FA05
2D049FB03
2D049FB13
2D049FC02
(57)【要約】
【課題】雄継手に付着している付着物を除去するとともに雌継手内部に異物が侵入するのを防ぎ、施工が容易で特殊な施工用機器を必要としない連続壁の芯材の付着物除去具を提供すること。
【解決手段】既に建て込まれた地中連続壁の芯材2が有する雄継手20に芯材3が有する雌継手30を連結させて建て込まれる際に用いられる地中連続壁の芯材2に付着した付着物を除去する付着物除去具5で、雌継手30の内空部301の下端開口部30aに当接する上面50aを有する本体部50と、本体部50に埋め込まれる補強材7と、雄継手20の延出片200と抜け止め片201を取り囲み、且つ、雄継手20の長手方向に沿って摺動可能に係合させる切欠き部51と、を備え、上面50aの外形は、切欠き部51以外において下端開口部30aの内形より大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に建て込まれた一の芯材が有する雄継手に他の芯材が有する雌継手を連結させて建て込まれる地中連続壁の前記一の芯材に付着した付着物を除去する付着物除去具であって、
前記雌継手の内空部の下端の開口を形成する下端開口部に当接する下端開口部当接部を有する本体部と、
前記本体部に埋め込まれる補強材と、
前記本体部に形成され、前記雌継手の前記内空部に配置される前記雄継手の部分を取り囲み、且つ、前記雄継手の長手方向に沿って摺動可能に係合させる切欠き部と、を備え、
前記下端開口部当接部の外形は、前記切欠き部以外において前記下端開口部の内形より大きい
ことを特徴とする芯材の付着物除去具。
【請求項2】
前記本体部は、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、
前記下端開口部当接部の外形は、前記切欠き部以外において前記下端開口部の外形より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項3】
前記本体部は、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、下面は平面である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項4】
前記切欠き部は、前記雄継手との間にクリアランスができるように形成されており、
前記切欠き部の前記雄継手の板状部を両側から挟み込む面には、前記板状部に接する突起が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項5】
前記下端開口部当接部に前記下端開口部に取付けられるための取付け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項6】
前記取付け部は、前記下端開口部に係合する凸部を備えることを特徴とする請求項5に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項7】
前記本体部は、モルタルで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項8】
前記補強材は、金網であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具。
【請求項9】
前記本体部は、円筒状に形成された側面を備えている請求項1又は2に記載の芯材の付着物除去具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁の芯材の特に継手部における土砂を除去する土砂除去具に関する。
【背景技術】
【0002】
地中連続壁には主に鋼製である芯材が用いられるものがあり、芯材が用いられる地中連続壁は、掘削された地盤の掘削部にフランジの両端部に雄継手又は雌継手を備えたH形形状の芯材を継手の部分で相互に連結して複数建て込むとともに、その周囲を充填材で充填して構築される。
【0003】
具体的な構築方法としては、安定液で満たしつつ掘削を行った地盤の掘削部に、芯材を建込んだ後、安定液をコンクリートと置換する工法や、掘削部を掘削しつつ原位置土撹拌工によりソイルモルタルを造成し、その中に芯材を建込む工法などがある。
【0004】
安定液やソイルモルタルの中でこのような芯材を建て込んでいく際、特に既に建て込まれた芯材の雄継手に雌継手を連結して芯材を建て込んで行く場合には、土砂などが雄継手に付着していると、その付着物が建て込む芯材の雌継手の内部に侵入し、芯材の進行を阻害し、芯材を建て込むことが困難となることがある。
【0005】
芯材の建て込みが困難になると、以下のような問題が発生する。
・芯材を建て込み直す場合、芯材を引き上げるために時間と手間を要し、現場の生産性が大きく低下する。
・建て込めない芯材を無理に引き抜いた場合には、先行して建て込んだ芯材の継手が変形したり損傷したりする場合がある。
・芯材を正規の位置まで建て込めない場合、地中連続壁の所定の仕様が確保できない、あるいは、躯体構築時に鉄筋接合用のカプラーを付けなおす必要がある等の施工上の不都合や躯体の品質低下のような悪影響がある。
【0006】
また、従来、特許文献1に記載されているように、地盤を掘削した掘削部に、雌継手の内部に雄継手を挿入して鋼製連壁部材を連結しつつ建て込み、その周囲をソイルモルタルで充填し、地盤の未掘削部側の雌継手の内側でソイルモルタルを削孔してガイド孔を形成し、掘削機のガイド材をガイド孔に通しつつ、掘削機を下降させて未掘削部を掘り下げ、この掘削した部分に鋼製連壁部材を連結しつつ建て込み、その周囲をソイルモルタルで充填する連壁構築方法が提案されている。
【0007】
この連壁構築方法によれば、連壁部材を建て込む際に継手内部に異物が入り込みにくく、すべての連壁部材を安定した高さに建て込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載のような連壁構築方法は、既に配置された雄継手に雌継手を連結して建て込むものではなく、継手内部に侵入したソイルモルタルを削ってガイド孔を形成する等の面倒な作業が必要であり、施工に時間と手間がかかるだけでなく、ガイド材を備えた特殊な掘削機を必要とする。
本発明が解決しようとする課題は、雄継手に付着している付着物を除去するとともに雌継手の内部に雄継手に付着している土砂などの付着物が侵入するのを防ぎ、しかも、施工が容易で特殊な施工用の機器を必要としない地中連続壁の芯材の付着物除去具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に係る発明は、既に建て込まれた一の芯材が有する雄継手に他の芯材が有する雌継手を連結させて建て込まれる地中連続壁の前記一の芯材に付着した付着物を除去する付着物除去具であって、前記雌継手の内空部の下端の開口を形成する下端開口部に当接する下端開口部当接部を有する本体部と、前記本体部に埋め込まれる補強材と、前記本体部に形成され、前記雌継手の前記内空部に配置される前記雄継手の部分を取り囲み、且つ、前記雄継手の長手方向に沿って摺動可能に係合させる切欠き部と、を備え、前記下端開口部当接部の外形は、前記切欠き部以外において前記下端開口部の内形より大きいことを特徴とする芯材の付着物除去具である。
【0011】
本願請求項2に係る発明は、前記本体部は、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、前記下端開口部当接部の外形は、前記切欠き部以外において前記下端開口部の外形より大きいことを特徴とする請求項1に記載の芯材の付着物除去具である。
【0012】
本願請求項3に係る発明は、前記本体部は、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、下面は平面であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具である。
【0013】
本願請求項4に係る発明は、前記切欠き部は、前記雄継手との間にクリアランスができるように形成されており、前記切欠き部の前記雄継手の板状部を両側から挟み込む面には、前記板状部に接する突起が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具である。
【0014】
本願請求項5に係る発明は、前記下端開口部当接部に前記下端開口部に取付けられるための取付け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具である。
【0015】
本願請求項6に係る発明は、前記取付け部は、前記下端開口部に係合する凸部を備えることを特徴とする請求項5に記載の芯材の付着物除去具である。
【0016】
本願請求項7に係る発明は、本体部が、モルタルで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具である。
【0017】
本願請求項8に係る発明は、前記補強材が、金網であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯材の付着物除去具である。
【0018】
本願請求項9に係る発明は、前記本体部が、円筒状に形成された側面を備えている請求項1又は2に記載の芯材の付着物除去具である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の芯材の付着物除去具は、切欠き部が、雄継手の雌継手の内空部に配置される部分を取り囲み、且つ、雄継手の長手方向に沿って摺動可能に係合し、下端開口部当接部の外形は、切欠き部以外において雌継手の下端開口部の内形より大きいので、芯材を建て込む際に、芯材に容易に取り付けることができ、雄継手に付着した土砂などの付着物を除去し、雌継手の下端開口部から内空部に付着物が侵入するのを防ぐことができる。
【0020】
加えて、本体部が、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、下端開口部当接部の外形が、切欠き部以外において下端開口部の外形より大きいので、建て込み時の抵抗を下げることができ、付着物の除去効果が高まるとともに付着物除去具に続いて下降する芯材の雌継手に加わる摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0021】
加えて、本体部は、側面に下に向かって窄まるテーパー側面を備えており、下面は平面であるので、建て込み時の抵抗を下げることができ、付着物の除去効果が高まるとともに、芯材建て込みの際に付着物除去具の先端が損傷しづらくなる。
【0022】
加えて、切欠き部は、雄継手との間にクリアランスができるように形成されており、切欠き部の雄継手の板状部を両側から挟み込む内面には、板状部に接する突起が形成されているので、建て込む際にスムーズに摺動するとともに、側面が受ける圧力によって付着物除去具が切欠き部の内側に向けて変形しようとするのを突起が板状部に当接し規制して損傷することを防ぐ。
【0023】
加えて、下端開口部当接部に下端開口部に取付けられるための取付け部が形成されているので、芯材を建て込む際に雌継手から付着物除去具がずれないとともに、芯材の建て込む際の振動や打ち直しの際の引き抜き方向への移動にも付着物除去具が芯材から分離せず、除去した付着物が下端開口部から雌継手の内空部に侵入することを防止する。
【0024】
加えて、本体部は、モルタルで構成されるため、付着物除去具の強度を高めることができる。
【0025】
加えて、本体部は、補強材が埋め込まれるため、付着物除去具のひび割れを防止することができる。
【0026】
加えて、補強材は、金網で構成されるため、補強材を安価、かつ容易に製作することができる。
【0027】
加えて、本体部が、円筒状に形成された側面を備えているため、本体部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明の第1の実施形態が芯材に用いられる際の要部分解斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施形態が芯材に用いられる際の要部斜視図。
【
図5】本発明の第1の実施形態が芯材に用いられる際の要部平面図。
【
図7】本発明の第2の実施形態と雌継手との要部縦断面図。
【
図9】本発明の第3の実施形態の付着物除去具を製造するための型枠の一例を示す分解斜視図。
【
図10A】本発明の第3の実施形態の付着物除去具の型枠の斜視図。
【
図10B】本発明の第3の実施形態の付着物除去具の型枠の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0030】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を
図1乃至
図4と共に説明する。
図1は、第1の実施形態が用いられる地中連続壁の平面図であり、
図2、
図3及び
図4は、それぞれ第1の実施形態の付着物除去具が芯材に用いられる際の要部分解斜視図、要部斜視図及び付着物除去具の斜視図である。
【0031】
図1に示すように、地中連続壁1は、地盤を掘削して形成した掘削溝(掘削部10)に、鋼製で、雄継手20を有する芯材2、及び、雌継手30を有する芯材3を、雄継手20と雌継手30とを係合することにより交互に連結して、ソイルモルタル4中に建て込まれて構築される。
【0032】
芯材2は、地中連続壁1の厚み方向に沿うウェブ21の両端に、それぞれ地中連続壁1の延長方向に沿うフランジ22を設けた断面H形であり、フランジ22の両端にそれぞれ雄継手20が設けられる。
雄継手20は、フランジ22を地中連続壁1の延長方向外側へ延ばした板状の延出片200の先端から、地中連続壁1の厚み方向両側へ伸ばした板状の抜け止め片201を張り出したT字形の水平断面を有する。
【0033】
芯材3は、地中連続壁1の厚み方向に沿うウェブ31の両端に、それぞれ地中連続壁1の延長方向に沿うフランジ32を設けた断面H形であり、フランジ32の両端にそれぞれ雌継手30が設けられる。
【0034】
雌継手30は、地中連続壁1の延長方向外側に向けてスリット300が形成され、スリットの内側に内空部301が形成されるC形の水平断面を有する。スリット300は、雄継手20の延出片200を挿入可能で、抜け止め片201は通過できない。内空部301は、抜け止め片201が収納される寸法となっている。
雌継手30の内空部301の下端は開口しており、C形の断面の下端開口部30aが形成されている。
【0035】
図2及び
図3に示すように、既に建て込まれた地中連続壁1の芯材2(一の芯材)の雄継手20に芯材3(他の芯材)の雌継手30を連結させて建て込む際に、付着物除去具5が用いられる。
【0036】
図4に示すように、付着物除去具5は、本体部50が平面の上面50aと平面の下面50bとを備え、下面50bの外径が上面50aの外径より小さい円錐台形となっている。
本体部50の外周の側面50cがテーパー状となっている。すなわち、本体部50は側面50cに下に向かって窄まるテーパー側面を備えている。
【0037】
本体部50には、側面50cに開口する切欠き部51が上面50aから下面50bに亘って形成されている。
切欠き部51は、雄継手20の断面と相似形のT字形の水平断面を有し、内空部301に配置される雄継手20の延出片200と抜け止め片201を取り囲み、雄継手20と雄継手20の長手方向に沿って摺動可能に係合させることができる。
【0038】
図5に示すように、本体部50の上面50aは、雌継手30のC形の断面の下端開口部30aが当接し、下端開口部当接部を形成する。上面50aの外径は、雌継手30の内空部301の外径より大きい。すなわち、下端開口部当接部の外形は、切欠き部51以外において下端開口部30aの内形を超えて大きくなるように形成されている。
【0039】
また、本体部50の上面50aの外径は、雌継手30の下端開口部30aの外径よりやや大きい。すなわち、下端開口部当接部の外形は、切欠き部51以外において下端開口部30aの外形を超えて大きくなるように形成されている。
【0040】
切欠き部51の水平断面は、付着物除去具5の雄継手20の長手方向に沿う摺動をスムーズに移動させるために、雄継手20の水平断面よりもやや大きくして雄継手20との間にクリアランスができるように形成されている。なお、クリアランスを大きく形成させすぎると付着物が多く侵入することになるので適宜調整する。
【0041】
切欠き部51の内部において、雄継手20の延出片200を挟んで対向する両側の側壁500(板状部を両側から挟み込む面)には、上下方向全長に亘って突起501が形成されている。突起501の先端は延出片200に当接している。
抜け止め片201に対向する側壁500には突起は設けられていないので、雄継手20と付着物除去具5とが延出片200の延長方向においてクリアランスの分だけ位置調整ができ建て込みの際の自由度が増える。
【0042】
なお、突起501を雄継手20の抜け止め片201を挟んで対向する両側の側壁500に形成して、先端を抜け止め片201に当接させるようにしても良い。
この場合、延出片200に対向する側壁500に突起を設けないようにすれば、雄継手20と付着物除去具5とが抜け止め片201の延長方向においてクリアランスの分だけ位置調整ができ建て込みの際の自由度が増える。
【0043】
なお、付着物除去具5は、芯材2、3と同様に鋼製とするのが望ましいが、作成コストを低減するために、複数の同心円状の外殻と、外殻間を区画する複数のリブとから成る中空状のケースを硬質プラスチックで成形し、その内部にモルタルを充填して形成してもよい。また、リブを平面視においてハニカム形状にすると、強度が増す。さらに硬質プラスチックの成形には3Dプリンタを用いて製造するようにしても良い。
【0044】
地中連続壁1は、掘削された地盤の掘削部10に造成されたソイルモルタル4中に芯材2,3を順次連結して建て込まれて構築される。
図2及び
図3に示すように、付着物除去具5は、既に建て込まれた地中連続壁1の雄継手20を有する芯材2(一の芯材)に雌継手30を有する芯材3(他の芯材)を連結させて建て込む際に用いられる。
【0045】
既に建て込まれた芯材2の雄継手20の上端に付着物除去具5の切欠き部51を嵌め込んで取付ける。切欠き部51の断面は雄継手20の断面よりクリアランスがあるが、突起501が延出片200を挟んで当接するので、上端に取付けられた状態で下降しない。
【0046】
次に、既に建て込まれた雄継手20に建て込む芯材3の雌継手30を連結させるように芯材3を建て込む。具体的には、雄継手20の延出片200が雌継手30のスリット300に、延出片200が内空部301に挿入されて配置されるように芯材3を建て込む。
【0047】
この際に、雄継手20に取付けられた付着物除去具5の上面50aは、雌継手30の下端開口部30aに当接される。このときに、付着物除去具5の上面50aに接着剤や両面テープを設けておいて下端開口部30aに固定されるようにしておいても良い。この接着剤や両面テープは、上面50aに形成された下端開口部30aに取付けられるための取付け部に相当する。
取付け部を設けることで、芯材3を建て込む際に雌継手30から付着物除去具5がずれないとともに、建て込む際に用いるバイブロハンマーなどの振動や打ち直しの際の芯材3の引き抜き方向への移動にも付着物除去具5が芯材3から分離せず、除去した付着物が下端開口部30aから雌継手30の内空部301に侵入することを防止する。
【0048】
なお、付着物除去具5を、先に雌継手30の下端開口部30aに取付けておいてから、切欠き部51の断面を芯材2の雄継手20の断面に合わせて摺動させて芯材3を建て込むようにしても良い。
【0049】
芯材3が建て込まれていくとともに、付着物除去具5も雄継手20の長手方向に沿って摺動して下降する(
図3)。これにより、芯材2の雄継手20に付着した土砂などが除去される。付着物除去具5は側面50cにテーパー側面を備えているので、建て込む際の抵抗も少なく付着物の除去効果も高い。
また、付着物除去具5の下面50bは平面であるので、建て込みの際に先端が損傷しづらくなる。
【0050】
付着物除去具5の下端開口部当接部である上面50aの外形は、切欠き部51以外において雌継手30の下端開口部30aの内形より大きいので、芯材3を建て込む際に、雌継手30の下端開口部30aから内空部301に除去された付着物が侵入するのを防ぐことができる。
付着物除去具5の下端開口部当接部である上面50aの外形は、切欠き部51以外において雌継手30の下端開口部30aの外形より大きいので、付着物除去具5に続いて下降する芯材3の雌継手30に加わる摩擦抵抗を小さくすることができ、建て込みをスムーズに行うことができる。
【0051】
付着物除去具5の切欠き部51は雄継手20との間にクリアランスができるように形成されているので、建て込みの際に側面50cが受ける圧力により側面50cに開口する部分が縮まるように変形したり、損傷する場合がある。特に側面50cが下に向かって窄まるテーパー側面を備えるような場合にはその傾向は高くなる。切欠き部51の雄継手20の延出片200を両側から挟み込む側壁500には、延出片200に接する突起501が形成されているので、建て込む際にスムーズに摺動するとともに、側面50cが受ける圧力によって付着物除去具5が切欠き部51の内側に向けて変形しようとするのを突起501が延出片200に当接し規制して損傷するのを防ぐ。
【0052】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について
図6及び
図7と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0053】
図6及び
図7に示すように、付着物除去具5の本体部50の下端開口部当接部である上面50aには、平面視C形の凸部52が一体に形成されている。凸部52の外径は雌継手30の内空部301の内径よりわずかに大きく、凸部52の外周囲上端には、上方に向かうに従って内側へ傾斜したガイド面520が形成されている。
図7に示すように、付着物除去具5は、凸部52を雌継手30の下端開口部30aの内周に無理嵌めして係合させることにより、雌継手30に固定される。この凸部52は、上面50aに形成された下端開口部30aに取付けられるための取付け部に相当する。
【0054】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態について
図8乃至
図10と共に説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0055】
本実施形態の付着物除去具は、モルタルで構成される。付着物除去具は、型枠にモルタルを充填して形成される。また、付着物除去具の内部には、補強材が埋め込まれる。
【0056】
図8は、付着物除去具5の斜視図である。付着物除去具5は、本体部50、切欠き部51を有する。本実施形態では、第2の実施形態のように凸部を備えていないが、備えていても良い。
【0057】
本体部50は、上面50aと、下面50bとを備えている。また、側面50cには、テーパー側面50c1に加えて、円筒面50c2が形成されている。円筒面50c2は、上面50aから下方に向かって円筒状に形成された側面であって、上面50aとテーパー側面50c1との間に形成されている。
【0058】
上面50aと下面50bとに亘って形成される切欠き部51は、テーパー側面50c1と円筒面50c2に開口している。
【0059】
切欠き部51の内部において、雄継手20の延出片200を挟んで対向する両側の側壁500には、上下方向全長に亘って突起501が形成されている。突起501の機能は、第1の実施形態および第2の実施形態の突起の機能と同じである。
【0060】
付着物除去具5が側面50cに円筒面50c2を備えている形状となっている。これにより、付着物除去具5の側面がすべてテーパー面で形成されている第1及び第2の実施形態の構成に比べて、上下方向の円筒面50c2の高さの分の厚みを確保することができ、付着物除去具5が芯材の建て込み時に受ける上方からの力によって割れるのを防ぐことができる。
また、側面50cと切欠き部51との厚みについて均一に確保することができるので、付着物除去具5が芯材の建て込み時に雄継手20から受ける側方からの力によって割れるのを防ぐことができる。
【0061】
図9は、付着物除去具5を製造するための型枠の一例を示す分解斜視図である。
型枠6は、第1の外枠61と、第2の外枠62と、内枠63とを含む。第1の外枠61、第2の外枠62及び内枠63はそれぞれ、合成樹脂によって形成される。第1の外枠61、第2の外枠62及び内枠63はそれぞれ、例えば、3Dプリンタによって形成される。
【0062】
第1の外枠61と、第2の外枠62とは、二分割され左右対称に形成されたものであるので、第1の外枠61について説明し、第2の外枠62については説明を省略する。
【0063】
第1の外枠61は、第2の外枠62との合わせ面に沿って外方向に向けて突出する2つのフランジ611を有する。各フランジ611にはそれぞれ、2つの孔612が形成される。
【0064】
第1の外枠61の付着物除去具5の外形を形成する面は、円筒面613と、テーパー面614と、下面615とを含む。円筒面613は、本体部50の円筒面50c2を形成する面であり、テーパー面614は本体部50のテーパー側面50c1を形成する面であり、下面615は本体部50の下面50bを形成するための面である。
【0065】
第1の外枠61の一方のフランジ611の第2の外枠62との合わせ面には、2つの位置決め凹部616が形成される。第1の外枠61の位置決め凹部616と第2の外枠62の位置決め凹部によって構成される凹部にはそれぞれ、内枠63のピン631が挿入される。
【0066】
第1の外枠61の下面615には、第2の外枠62の下面側に開口する長凹部617が形成されている。長凹部617は、第1の外枠61と第2の外枠62とが組み立てられた際に、第2の外枠62の下面625に設けられた長凹部と連なる。そして、連なった長凹部に内枠63の下面に設けられた長凸部(不図示)が嵌め合わせられて、位置合わせが行われる。
【0067】
内枠63は本体部50の切欠き部51を形成するための部材である。内枠63は、雄継手20の断面と相似形のT字形の水平断面を有している。また、内枠63には、本体部の突起を形成するための凹部632が形成されている。
【0068】
内枠63は、第1の外枠61と第2の外枠62との一方のフランジ611、621の合わせ面側であって円筒面613、623及びテーパー面614、624の一部に亘って、かつ、第1の外枠61と第2の外枠62の下面615、625の一部に亘って接するように設けられる。
【0069】
内枠63の円筒面613、623及びテーパー面614、624に接する側面には、ピン631が各々設けられている。
内枠63の下面には、図示しない長凸部が設けられている。
【0070】
図10Aは、組み立て後の型枠6の斜視図である。
図9Bは、組み立て後の型枠6の平面図である。
第1の外枠61と第2の外枠62は内枠63を挟むように組み立てられる。
【0071】
内枠63の2つのピン631は、それぞれ、第1の外枠61の位置決め凹部616と第2の外枠62の位置決め凹部によって形成される凹部に挿入される。これにより、第1の外枠61と第2の外枠62に対して内枠63が位置決め固定される。
【0072】
また、内枠63に形成された長凸部(不図示)は、第1の外枠61の長凹部617と第2の長凹部(不図示)とで形成される長凹部に嵌め合わせされる。これによっても、第1の外枠61と第2の外枠62に対して内枠63が位置決め固定される。
【0073】
第1の外枠61と第2の外枠62が互いに組み合わされると、第1の外枠61の各孔612と第2の外枠62の各孔622は、それぞれ連続する1つの孔を形成する。これらの孔に、例えば、ボルトが挿入され、挿入されたボルトがナットで固定されることによって、第1の外枠61、第2の外枠62及び内枠63が互いに固定される。
【0074】
図10に示すように、組み立て後の型枠6には、モルタルを打設する空間が形成される。この空間には、予め補強材7が配置される。補強材7は、例えば、金網である。
補強材7が配置された後、モルタルが打設される。打設するモルタルは無収縮モルタルが望ましいがこれに限られない。
【0075】
適当な養生の後、型枠6が外されて、付着物除去具5が完成する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の付着物除去具5は、モルタルで構成される。これにより、付着物除去具5の強度を高めることができる。
【0077】
また、付着物除去具5には、補強材7が埋め込まれる。これにより、さらに強度が高まる。また、付着物除去具5のひび割れを防止することができる。
【0078】
また、補強材7は、金網である。これにより、補強材7を安価、かつ容易に製作することができる。
【0079】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0080】
本実施形態では、壁部材の断面をH字形としてあるが、他の断面形状とすることもできる。また、雄型継手がT形断面で雌型継手がC形断面であったがこれに限られない。さらに、雄型継手と雌型継手とが連結中心軸を中心に対称の断面を有するようなものであっても一方の芯材が内空部及びスリットを備えるようなものであれば雌継手に相当し、他方の芯材が延出片及び抜け止め片を備えるようなものであれば雄継手に相当する。
【0081】
本実施形態では、ソイルモルタル中に芯材を建て込んだもので説明したが、安定液や地中に建て込むようなものでも良い。
【0082】
本実施形態では、付着物除去具は円錐台形で下面は平面であったが、これに限られず、本体部を先端をとがらせたものであっても良い。また、本実施形態では、付着物除去具は側面にテーパー面を備えるものであったが、これに限られず円柱状のものであっても良い。さらに、本実施形態では、付着物除去具は雌継手にあわせて平面視で円形であったがこれに限られない。雌継手の内空部の下端の開口を形成する下端開口部の内形より大きいものであれば、どのような外形であっても良い。
【0083】
本実施形態では、切欠き部に雄継手との間にクリアランスができるように形成されたが、これに限られない。付着物除去具が雄継手の長手方向に沿って摺動可能に係合させるようなものであれば、クリアランスを形成しなくても良い。その場合には突起を設けなくても良い。
【0084】
本実施形態では、付着物除去具を雌継手に取付ける取付け部を形成したが、取付けないものであっても良い。また取付け部は、接着或いは凹凸嵌合によって固定するものであったが、溶接等の他の手段によって固定しても良い。
【0085】
第2の実施形態では、付着物除去具の上面にC字形に連続する凸部を設けて雌継手の内周に嵌合してあるが、上面に複数の凸部を断続的に設けて雌継手に嵌合するようにしても良い。また、凸部を切欠き部以外において雌継手の内空部に対向する部分全てに設けるようにしても良い。
【0086】
第3の実施形態では、第2の実施形態の凸部52を備えていないが、備えていても良い。第3の実施形態において凸部を設ける場合、例えば、モルタルを成形することで凸部を設けるようにしても良い。
また、本体部と同じ材質すなわちモルタルで凸部を設けるのではなく、別の部材、例えば、合成樹脂で成形した凸部を固まる前のモルタルに埋め込んで一部を突出させて形成するようにしても良い。モルタルを仕上げるより簡単に設けることができる。
さらに、本体部の内部に埋設する補強材7(例えば金網)をそのまま上面から突出させるようにして、凸部を形成するようにしても良い。凸部の部材を別途設けることなく、補強材を兼用させることができる。
【0087】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 地中連続壁
10 掘削部
2 芯材
20 雄継手
200 延出片
201 抜け止め片
21 ウェブ
22 フランジ
3 芯材
30 雌継手
300 スリット
31 ウェブ
32 フランジ
4 ソイルモルタル
5 付着物除去具
50 本体部
51 切欠き部
500 側壁
501 突起
52 凸部
520 ガイド面
6 型枠
61 第1の外枠
62 第2の外枠
63 内枠
7 補強材