(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020951
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】可搬キャビン
(51)【国際特許分類】
B60P 3/325 20060101AFI20240207BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20240207BHJP
B60P 3/335 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60P3/325
E04B1/343 Q
B60P3/335
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123528
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】田島 翔太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広い開口を形成可能な軽量の可搬キャビンを提供する。
【解決手段】一対の矩形枠が連結杆により連結されたフレーム2と、フレーム2の少なくとも一面に取り付けられた面材3,4とを備え、車両に載置されて可搬可能とされており、矩形枠は、柱13と梁14とがH型鋼で連結され、柱と梁はH型鋼よりも比重が小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の矩形枠が連結杆により連結されたフレームと、前記フレームの少なくとも一面に取り付けられた面材とを備え、車両に載置されて可搬可能とされており、
前記矩形枠は、柱と梁とがH型鋼で連結され、前記柱と前記梁は前記H型鋼よりも比重が小さいことを特徴とする可搬キャビン。
【請求項2】
前記柱と前記梁は、木材製であることを特徴とする請求項1に記載の可搬キャビン。
【請求項3】
前記柱と前記梁は、端部が段形状となっており、当該段形状の幅狭部は前記H型鋼に挿入され、かつ幅広部は前記H型鋼の端面に当接していることを特徴とする請求項1に記載の可搬キャビン。
【請求項4】
各前記柱と各前記梁部材は、前記H型鋼のフランジと外面が面一に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬キャビン。
【請求項5】
各前記柱と各前記梁は、一対の杆材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬キャビン。
【請求項6】
前記H型鋼は、四半円弧状部分の両端から直線部分が延びる形状であることを特徴とする請求項1に記載の可搬キャビン。
【請求項7】
上方の前記連結杆は木材製であり、下方の前記連結杆は鋼材製であって前記車両への取り付けに用いられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の可搬キャビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬キャビンに関する。
【背景技術】
【0002】
レジャー、移動販売、災害救援等において、移動先で使用するキャビンを施工や組立等を省いて短期間で設置するべく、運搬可能に構成されている可搬キャビンが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される可搬キャビンは、フレームと、4つの面材としての壁部材から主に構成されており、車両としてのトレーラに載置されている。フレームは、矩形状の床材と、床材の四隅に立設される4本の柱と、4本の柱それぞれに連結される矩形状の屋根材を備え、床材、柱、及び屋根材は、FRP(繊維強化樹脂)製の面材の間に断熱材を配置して構成されており軽量である。
【0004】
また、床材、柱、及び屋根材によって構成される矩形状の枠部には、その開口側に取付フランジが設けられており、取付フランジに壁部材が固定される。これにより、構造壁が構成されるため、筋交いや間柱のような開口を遮る部材を省略しつつ、構造強度を高めることができる。これらにより、特許文献1に示される可搬キャビンは、トレーラを四輪自動車等で牽引するときに要するエネルギを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-203051号公報(第7,8頁、第10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような可搬キャビンにおいては、枠部の開口を遮る部材を省略することができるため、壁部材に窓、出入口等を設けるにあたり、配置の自由度が高められている。ところで、隣り合う柱間の寸法を長くすることで広い開口を有する枠部を構成できる。しかしながら、一定以上の構造強度を保つためには壁部材を一定以上残す必要があるため、広い開口を構成できたとしても、形成可能な窓、出入口等の開口面積には制限があった。また、各部材を鋼材等で構成することにより、壁部材を省略しても広い開口を保持するに足る構造強度が得られるようになるものの、重量が増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、広い開口を形成可能な軽量の可搬キャビンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の可搬キャビンは、
一対の矩形枠が連結杆により連結されたフレームと、前記フレームの少なくとも一面に取り付けられた面材とを備え、車両に載置されて可搬可能とされており、
前記矩形枠は、柱と梁とがH型鋼で連結され、前記柱と前記梁は前記H型鋼よりも比重が小さいことを特徴としている。
この特徴によれば、矩形枠によって構成される広い開口をすべて開放可能な構造強度が得られるばかりでなく、軽量なフレームを構成することができる。
【0009】
前記柱と前記梁は、木材製であることを特徴としている。
この特徴によれば、矩形枠の加工・組み立てが簡単である。
【0010】
前記柱と前記梁は、端部が段形状となっており、当該段形状の幅狭部は前記H型鋼に挿入され、かつ幅広部は前記H型鋼の端面に当接していることを特徴としている。
この特徴によれば、柱とH型鋼、梁とH型鋼をそれぞれ強固に固定できるとともに、柱と梁はこれら端部のH型鋼への挿入時に当接されるため、位置決めが容易である。
【0011】
各前記柱と各前記梁部材は、前記H型鋼のフランジと外面が面一に連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、広い開口を確保しつつ、面材等の組付け作業を簡便に行うことができる。
【0012】
各前記柱と各前記梁は、一対の杆材により形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、矩形枠の加工・組み立てをより簡単にすることができる。
【0013】
前記H型鋼は、四半円弧状部分の両端から直線部分が延びる形状であることを特徴としている。
この特徴によれば、構造強度を高くできるともに外観全体が丸みを帯び柔らかい印象を与える。
【0014】
上方の前記連結杆は木材製であり、下方の前記連結杆は鋼材製であって前記車両への取り付けに用いられていることを特徴としている。
この特徴によれば、フレームの強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施例における可搬キャビンの斜視図である。
【
図2】可搬キャビンの一方の開口について説明するための図である。
【
図3】可搬キャビンの他方の開口について説明するための図である。
【
図4】可搬キャビンを構成するフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る可搬キャビンを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例に係る可搬キャビンにつき、
図1から
図10を参照して説明する。以下、各図にて矢印で示す方向を可搬キャビンの方向として説明する。
【0018】
図1に示されるように、可搬キャビン1は、四輪自動車Kに牽引される車両としてのトレーラTに載置されて運搬可能に構成されている。なお、可搬キャビン1はトレーラTに載置されることに限らず、車両としての軽トラックの荷台に載置される構成であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0019】
可搬キャビン1は、前後の角に丸みを有する直方体状であって、スケルトン状のフレーム2(
図4参照)に、前壁、天井、後壁を形成する面材3(
図1参照)、床面材4(
図1参照)、戸板6a,6b(
図2参照)、窓板7a,7b,7c(
図3参照)が取り付けられている。また、面材3の外面にはフィルム状の太陽電池5(
図1参照)が取り付けられている。
【0020】
面材3は、合板と、アスファルトルーフィングと、鋼板が重ねられて構成されている。また、面材3は、面材3越しにフレーム2における連結杆11,11,…(
図4参照)等にタッカ、ビス等の留め具を打ち込むことで固定されている。なお、面材3の構成については、適宜変更されてもよい。
【0021】
床面材4は、合板と、アスファルトルーフィングと、鋼板が重ねられて構成されている。また、床面材4は、床面材4越しに梁14,14(
図4参照)に固定されている図示しない根太等にタッカ、ビス等の留め具を打ち込むことで固定されている。
【0022】
太陽電池5は、図示しない配線を通じてフレーム2内に設置されているコントロールユニットU(
図1参照)に接続されている。コントロールユニットUは、蓄電池、インバータ等を備え、直流電流のまま供給することも、交流電流に変換して供給することも可能としている。
【0023】
戸板6a,6bは、D字状に形成されている戸枠に、ポリカーボネート製のパネル材が固定されて形成されているため軽量であり、高い視認性を有する。これにより、戸板6a,6bにより開口2Rを閉じて可搬キャビン1内に滞在している状態であっても、空間連続性を演出することができるため、閉塞感を感じにくくなっている。
【0024】
戸板6a,6bは、フレーム2における右側の前後に配置されている柱13,13に蝶番を介して固定されており、鉛直軸回りに回動可能となっている。これにより、戸板6a,6bを観音開きする(
図2の二点鎖線を参照)ことで開口2R全体を開放することができる。
【0025】
図3に示されるように、窓板7a,7cは、D字状に形成されている窓枠に、ポリカーボネート製のパネル材が固定されて形成されている。同様に、窓板7bは、矩形状に形成されている窓枠に、ポリカーボネート製のパネル材が固定されて形成されている。そのため、窓板7a,7b,7cは軽量であり、高い視認性を有する。これにより、窓板7a,7b,7cにより開口2Lを閉じて可搬キャビン1内に滞在している状態であっても、空間連続性を演出することができるため、閉塞感を感じにくくなっている。
【0026】
窓板7aは、フレーム2における左側かつ上側の梁14に蝶番を介して固定されており、水平軸回りに回動可能となっている。矩形状の窓板7bは、窓板7aの下端にトルクヒンジを介して固定されており、水平軸回りに回動可能となっている。また、窓板7bは、その下端部がフレーム2における左側の前後に配置されている柱13,13に沿って回動しながら移動可能に連結されている。
【0027】
これにより、窓板7bは、その下端を柱13,13に設けられているレールに沿って上方向に移動させるほど、トルクヒンジを屈曲させながら、上端が前方側に突出するように傾動する。これに伴って、窓板7aは、その下端がトルクヒンジと共に前方側に突出するように傾動する。また、トルクヒンジにより、窓板7a,7bの位置を保持することができるため、開口2Lにおける中央から上部にかけての開口面積を調整・保持することができる。
【0028】
窓板7aは、フレーム2における左側かつ下側の梁14に蝶番を介して固定されており、水平軸回りに回動可能となっており、開口2Lにおける下部を開閉可能である。
【0029】
次に、フレーム2について説明する。
図4に示されるように、フレーム2は、四半円弧状の角を有する矩形枠状に形成されている一対の矩形枠10L,10Rと、矩形枠10L,10Rを連結する連結杆11,12,…と、から主に構成されている。矩形枠10L,10Rは、略同一構成であるため、特に断らない限り右側の矩形枠10Rを例に説明する。
【0030】
矩形枠10Rは、2本の柱13と、2本の梁14と、四半円弧状の角を有するL字状に形成されている鋼材製の4本のH型鋼15を備え、開口2Rを画成している。
【0031】
図5に示されるように、H型鋼15は、
図5(a)にて一点鎖線で区画して示すように、四半円弧状に湾曲している湾曲部15aと、湾曲部15aの一端または他端に連続して直線状に延びる直線部15b,15bを備え、
図5(b)を参照し板状に形成され略平行に対向配置されている一対のフランジ16,17の厚み方向中心が板状に形成されるウェブ18で溶接固定されている。
【0032】
本実施例では、フランジ16,17およびウェブ18の長手方向をH型鋼15の長手方向(
図5(a)参照)とし、フランジ16,17の短手方向をH型鋼15の厚み方向(
図5(b)参照)とし、ウェブ18の短手方向をH型鋼15の幅方向(
図5(b)参照)とする。なお、特に断らない限り、単に「長手方向」、「厚み方向」、「幅方向」と記載する。
【0033】
フランジ16は、開口2R側の外面16a、外面16aに略直交して幅方向に延びている側面16b,16bを有している。同様に、フランジ17は、開口2Rとは反対側の外面17aと、側面17b,17bを有している。
【0034】
図4に示されるように、柱13は、直線状に延びる木材製の一対の杆材19,19がH型鋼15に固定されている。なお、
図6~
図10では、矩形枠10Rにおける後方側の柱13を例に図示しており、同柱13を構成している杆材19,19を杆材19F,19Rと表記している。
【0035】
図6に示されるように、杆材19は、長手方向に延びる断面視矩形状の幅広部19aと、長手方向における幅広部19aの一端または他端よりさらに長手方向に延びる幅広部19aよりも小さい断面視矩形状の幅狭部19bを有している。杆材19は、ウェブ18とは反対側に配置される外面19cを有し、外面19cは幅広部19a,幅狭部19b,19bに亘って面一に連続している。
【0036】
図10に示されるように、幅狭部19bは、断面矩形状の木材の長手方向端部が長手方向から見て断面コ字状に切欠かれて形成されている。これにより、幅広部19aの長手方向端には、幅広部19aにおける側面19d,19dおよび内面19eそれぞれの端に略直交して内方に延びる長手方向視コ字状の端面19gが形成されている。なお、側面19d,19dは、外面19cに略直交しており、内面19eは、側面19d,19dそれぞれの端に略直交して外面19cとは反対側に位置している。
【0037】
図6に示されるように、幅広部19aの幅寸法L1は、H型鋼の直線部15bの幅方向におけるフランジ16,17の外寸L2と略同一となっている(L1=L2)。
図7に示されるように、幅広部19aの厚み寸法L3は、H型鋼15の直線部15bの厚み方向における側面17bからウェブ18の中心までの厚み寸法L4と略同一となっている(L3=L4)。すなわち、厚み寸法L4は、フランジ16,17の厚み寸法L14(
図8参照)の半分である(L4=L14÷2)。
【0038】
図6に示されるように、幅狭部19bの幅寸法L5は、H型鋼の直線部15bの幅方向におけるフランジ16,17の内寸L6と略同一となっている(L5=L6<L1=L2)。
図7に示されるように、幅狭部19bの厚み寸法L7は、H型鋼15の直線部15bの厚み方向における側面17bからウェブ18までの寸法L8と略同一となっている(L7=L8<L3=L4)。
【0039】
次に、柱13の組み立てについて説明する。なお、本説明では、杆材19,19のうち、可搬キャビン1の室内側に配置されるものを杆材19R、可搬キャビン1の室外側に配置されるものを杆材19Fとする。
【0040】
まず、下側に配置されるH型鋼15における上方側の直線部15bのフランジ16,17間に(
図6参照)、杆材19Rの内面19eをウェブ18側に向けた状態(
図7,8参照)で、その幅狭部19bを挿入する。杆材19Rは、幅広部19aの端面19gが幅狭部19bより外側に張り出す段形状になっているため、H型鋼15の長手方向側の端面15cに端面19gを当接させることで、H型鋼15に対する位置決めがなされる。
【0041】
同様に、ウェブ18を挟んで杆材19Rの内面19eに杆材19Fの内面19eを対向させ、杆材19Fの幅狭部19bをH型鋼15の直線部15bにおけるフランジ16,17間に挿入する。なお、杆材19F,19Rを直線部15bに挿入する順番は適宜変更されてもよい。
【0042】
次いで、杆材19R側から杆材19F側に向かってビスBを螺入してこれらをH型鋼15に固定する。これにより、ビスBの頭部が室外に露出することが防止されているため、美観がよく、風雨にさらされにくいことから錆等による劣化を抑止することができる。
【0043】
また、
図7,
図8に示されるように、ビスBは、H型鋼15の厚み寸法L14よりも短寸かつ厚み寸法L4よりも長寸となっている。これにより、ビスBの先端が露出することが防止されつつ、杆材19F,19Rを連結することができるため、美観がよく、人や物に接触することを防止することができる。
【0044】
また、H型鋼15に杆材19F,19Rが片持ち支持された状態で耐荷重試験を行った結果、耐荷重は最大約180kgであった。上述したように、H型鋼15に対する杆材19F,19Rの位置決めがなされ、適切な位置でビスB,Bによる連結が可能となるため、高い構造強度が安定して得られるようになっている。
【0045】
杆材19F,19Rの上方側の端部についても、下方側の端部と同様に、上方側のH型鋼15の直線部15bに連結される。これにより、上下のH型鋼15,15を杆材19F,19Rで連結しつつ、柱13を構成することができる。
【0046】
柱13は、杆材19F,19Rそれぞれの内面19e,19eが面当接しているため、その剛性が高められている。なお、内面19e,19eを接着剤等で直接連結することで、剛性をさらに高めてもよい。
【0047】
図9に示されるように、柱13は、杆材19F,19Rそれぞれの外面19c,19cがフランジ16,17の側面16b,17bと略同一平面状に配置され、面一に連続している。これにより、杆材19F,19RとH型鋼15との連結部分における構造強度を十分に確保しつつ、連続性を演出することができるため、美観がよい。
【0048】
図6,
図9,
図10を参照して、柱13は、杆材19F,19Rそれぞれの側面19d,19d,…がフランジ16,17の外面16a,17aと略同一平面状に配置され、面一に連続している。
【0049】
これにより、H型鋼15から柱13が突出しない、具体的にはフランジ16よりも開口側に幅広部19aが突出しないことから広い開口2Rを形成できる。加えて、柱13の幅広部19a、幅狭部19bは、H型鋼15の形状に対応して広く確保されていることから、柱13の構造強度を高めることができる。
【0050】
さらに、柱13はフランジ16,17と略同一平面状に配置され、面一に連続していることから、柱13とH型鋼15との接合箇所に段差が無く、戸板6a,6bや窓板7a,7b,7cのような開口2L,2Rに配置される部材の設計および組付け作業を簡便に行うことができる。同様に、面材3の設計および組付け作業を簡便に行うことができる。
【0051】
図4に示されるように、梁14は、一対の杆材20,20がH型鋼15に固定されている。杆材20は、上述した柱13の杆材19よりも幅広部19aの寸法が長寸である以外の構成については、杆材19と略同じ構成であり、杆材20,20をH型鋼15に固定する方法についても杆材19,19と同様である。そのため、梁14についての詳しい説明については省略する。
【0052】
次に、連結杆11,12について説明する。連結杆11は断面視矩形状に形成されている木材製の長尺部材であり、左右に対向配置された矩形枠10L,10Rの柱13,13,…、梁14,14,…に図示しないビスで固定されて矩形枠10L,10Rを連結している。
【0053】
連結杆11のうち可搬キャビン1の室外側に配置される外面11aは、フランジ17側の杆材19,20の外面19cまたはフランジ17の外面17aと略同一平面状に配置され、面一に連続していることから、連結杆11と杆材19,20の接合箇所、連結杆11とフランジ17の接合箇所に段差が無く、面材3の設計および組付け作業を簡便に行うことができる。また、面材3を固定するにあたってタッカ、ビス等の留め具を打ち込むための基材とすることができるため、連結杆11とは別に基材を使用する構成と比較して軽量である。なお、連結杆11の数、配置については適宜変更されてもよく、例えば根太として使用されてもよい。
【0054】
連結杆12は断面視矩形筒状に形成されている鋼材製の長尺部材であり、左右に対向配置された矩形枠10L,10Rそれぞれの下方側のH型鋼15,15に溶接固定されて矩形枠10L,10Rを連結している。特に荷重が集中しやすい下側の連結杆の剛性を高めることができるため、フレーム2の構造強度を高めることができる。
【0055】
また、連結杆12には、断面視矩形筒状に形成されている鋼材製の短尺部材である脚材12a,12aが左右方向に離間して溶接固定されている。
図2に示されるように、脚材12a,12aは、前端部後端部それぞれに形成されている貫通孔と、トレーラTの梁T1に設けられている貫通孔に挿通したボルトをナットで締結することにより、可搬キャビン1とトレーラTを連結することができる。
【0056】
このように、連結杆12,12は、フレーム2の構造強度を高めるばかりでなく、高い剛性により可搬キャビン1とトレーラTの連結に十分に耐えられるため、別途トレーラTと連結するための部材を使用する構成と比較して軽量である。
【0057】
以上説明したように、本実施例の可搬キャビン1は、矩形枠10L,10Rがそれぞれ4つのH型鋼15,15,…と、H型鋼15よりも比重の小さい2本の柱13,13と2本の梁14,14により形成されることで、矩形枠10L,10Rによって構成される広い開口2L,2Rをすべて開放可能な構造強度が得られる。
【0058】
また、可搬キャビン1をトレーラTに載置した状態において、軽自動車に定められている全長3400mm、全幅1480mm、最大高さ2000mm以内であれば、350kg以下の軽量な可搬キャビン1を構成することができる。これにより、最大積載量が350kgと定められているいわゆる軽トレーラ等の軽自動車であっても、可搬キャビン1を載置し、運搬することができる。また、四輪自動車における軽自動車であっても可搬キャビン1を載置・運搬することができる。
【0059】
また、4本の柱13,13,…と4本の梁14,14,…は、いずれも木材製であり加工が容易であることから、矩形枠10L,10Rの加工・組み立てが簡単である。
【0060】
また、4本の柱13,13,…は、一対の杆材19,19によって構成されているため、一本の柱材をH型鋼15の直線部に挿入可能に加工する構成と比較して、簡便に構成することができる。これは、4本の梁14,14,…についても同様である。そのため、矩形枠10L,10Rの加工・組み立てが簡単である。
【0061】
また、H型鋼15は湾曲部15aを有している一体の部材であることから、2本の鋼材を直交配置して連結した構造と比較して構造強度が高められているとともに、丸みを帯びた外観になっているため、柔らかい印象を与えることができる。
【0062】
これらにより、可搬キャビン1は、オフグリッド、広い開口2L,2Rを通じた空間連続性演出、親しみを持ちやすいデザイン、被運搬性能の高さ、地域資源活用を実現することができるため、軽快な運用が可能となり、人々の交流・コミュニケーションを円滑にし、地域資源の活用を促進することができる。すなわち、可搬キャビン1は、地域コミュニティの活性化に貢献することができる。
【0063】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0064】
例えば、前記実施例では、H型鋼15は、一対のフランジ16,17とウェブ18を溶接することで構成されているとして説明したが、これに限られず、圧延により一体に形成されていてもよく、その製造方法は適宜変更されてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、H型鋼15は鋼材製であるとして説明したが、これに限られず、十分な剛性、耐久性等を有しているのであれば、ステンレス製であってもよく、スチール製であってもよく、強化プラスチック製であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、H型鋼15は四半円弧状の角(湾曲部15a)を有するL字状であるとして説明したが、これに限られず、直角状の角を有するL字状であってもよく、複数の角を有するL字状であってもよく、直線状のH型鋼が連結されてL字状を成す構成であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0067】
また、前記実施例では、柱13や梁14は、一対の杆材から構成されているとして説明したが、これに限られず、一本の木材で構成されていてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、柱13や梁14は、木材製である構成として説明したが、これに限られず、H型鋼15よりも比重が軽いものであれば、強化プラスチック製であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0069】
また、前記実施例では、一対の杆材19,19は、ビスBで連結される構成として説明したが、これに限られず、ボルトナットで連結されてもよく、接着剤で連結されてもよく、ほぞ継によって連結されていてもよく、適宜変更されてもよい。
【0070】
さらに、一対の杆材19,19は、ビスBによりH型鋼15に固定される構成として説明したが、これに限られず、ボルトナットで固定されてもよく、カシメによって固定されてもよく、適宜変更されてもよい。すなわち、一対の杆材19,19同士の連結手段と、H型鋼15との固定手段は、個別に設けられていてもよい。