(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020952
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】不正検知装置、および不正検知方法
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A63F7/02 334
A63F7/02 326Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123529
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】蓁原 史隆
(72)【発明者】
【氏名】河合 肇
(72)【発明者】
【氏名】一色 信賢
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 寿康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅博
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088BC35
2C088CA17
2C088EA10
(57)【要約】
【課題】違法な磁界発生源を用いた不正行為による損害を抑制することができる不正検知装置、不正検知方法を提案する。
【解決手段】遊技機に設置された不正検知装置は、遊技機(1)からの磁界が所定の閾値であっても、磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構(10)によるものと判断すると不正非検知と判定する演算部(32)と、不正非検知を判定された以降において、遊技機からの磁界が所定の閾値以上を継続する時間を計測するタイマ(33)と、を備え、演算部は計測時間が所定の時間以上となった場合に判定結果を不正検知に変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機に設置され、遊技機からの磁界を基に所定の閾値以上の磁界が検出された場合に不正検知とする不正検知装置であって、
遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上であっても、前記磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構部によるものと判断すると不正非検知と判定する判定部と、
前記判定部にて不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上を継続する時間を計測する時間計測部と、を備え、
前記判定部は、前記時間計測部による計測時間が所定の時間以上となった場合に判定結果を不正検知に変更する不正検知装置。
【請求項2】
磁界を検出して前記判定部に出力する磁気検出部を備える請求項1に記載の不正検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、遊技機からの磁界を所定の周期で取得し、
前記時間計測部は、前記判定部にて取得された磁界が前記所定の閾値未満である場合に、計測値をリセットする、請求項1又は2に記載の不正検知装置。
【請求項4】
前記判定部による判定結果を外部に出力する報知部を備える請求項1又は2に記載の不正検知装置。
【請求項5】
遊技機に設置され、遊技機からの磁界を基に所定の閾値以上の磁界が検出された場合に不正検知とする不正検知方法であって、
遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上であっても、前記磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構部によるものと判断すると不正非検知と判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上を継続する時間を計測する時間計測ステップと、
前記時間計測ステップによる計測時間が所定の時間以上となった場合に判定結果を不正検知に変更する結果変更ステップと、を含む不正検知方法。
【請求項6】
請求項1に記載の不正検知装置としてコンピュータを機能させるための不正検知プログラムであって、上記判定部、および上記時間計測部としてコンピュータを機能させるための不正検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に違法な磁界発生源が接近し、または設置されているかを識別する不正検知装置、および不正検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機は、鉄製の遊技球を打ち出し、当該遊技球を所定の入賞穴に入れることによって、ユーザは入賞することができる。そのため、遊技機に磁石等の違法な磁界発生源を近づけて鉄製の遊技球の移動を制御して、遊技球を入賞穴に導く不正行為が行われることがある。
【0003】
遊技機では、所定の条件を満たすと、ソレノイド等の内部磁気機構部を稼働させて、閉まっていた入賞穴を開放する。そのため、上記不正行為を取り締まるには、内部磁気機構部による磁界か、違法な磁界発生源による磁界かを判断する必要がある。
【0004】
上記不正行為の対策として、特許文献1には、磁気検知部を設置し、磁気検知部からの検知出力が立ち上がる変化を示したときに、その検知出力の時間に対する変化量を分析することで違法な磁界発生源による磁界であるか、内部磁気機構部の稼働による磁界であるかどうか、を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、内部磁気機構部の稼働による磁気増加の波形と違法な磁界発生源の接近による磁気増加の波形とが似た形状を示した場合、違法な磁界発生源によるものであるにも関わらず内部磁気機構部の稼働によるものと誤判定することがある。特許文献1の技術では、誤判定した場合、判定を見直す機会がないため、不正行為が継続して行われ、大きな損害をもたらす恐れがある。
【0007】
本発明の一態様は、違法な磁界発生源を用いた不正行為による損害を抑制することができる不正検知装置、不正検知方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る不正検知装置は、遊技機に設置され、遊技機からの磁界を基に所定の閾値以上の磁界が検出された場合に不正検知とする不正検知装置であって、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上であっても、前記磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構部によるものと判断すると不正非検知と判定する判定部と、前記判定部にて不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上を継続する時間を計測する時間計測部と、を備え、前記判定部は、前記時間計測部による計測時間が所定の時間以上となった場合に判定結果を不正検知に変更する。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る不正検知方法は、遊技機に設置され、遊技機からの磁界を基に所定の閾値以上の磁界が検出された場合に不正検知とする不正検知方法であって、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上であっても、前記磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構部によるものと判断すると不正非検知と判定する判定ステップと、前記判定ステップにて不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が前記所定の閾値以上を継続する時間を計測する時間計測ステップと、前記時間計測ステップによる計測時間が所定の時間以上となった場合に判定結果を不正検知に変更する結果変更ステップと、を含む。
【0010】
上記の構成によれば、時間計測部又は時間計測ステップでは、内部の磁気機構部によるものと判定された以降の、遊技機から所定の閾値以上の磁界が検出され続ける時間を計測する。そして、判定部又は結果変更ステップでは、計測された時間が所定の時間以上となった場合、判定結果を不正検知に改める。これにより、判定部または判定ステップにて、違法な磁界を内部磁気機構部によるものと誤判定したとしても、誤判定を改め、不正行為が継続して行われることを阻止できる。
【0011】
磁界を検出して前記判定部に出力する磁気検出部を備えていてもよい。また、前記判定部は、遊技機からの磁界を所定の周期で取得し、前記時間計測部は、前記判定部にて取得された磁界が前記所定の閾値未満である場合に、計測値をリセットするようにしてもよい。さらに、前記判定部による判定結果を外部に出力する報知部を備えていてもよい。
【0012】
また、本発明の各態様に係る不正検知装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記不正検知装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記不正検知装置をコンピュータにて実現させる不正検知装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、違法な磁界発生源を用いた不正行為による損害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施形態1に係る不正検知装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態1に係る不正検知装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】磁界の変化と不正検知装置の動作の一例を示す図である。
【
図7】実施形態2に係る不正検知システムの要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
§1.適用例
(遊技機1の構成)
図1は、遊技機1の一例を示す図である。遊技機1は、遊技者がハンドル2を操作することによって、射出機構3から遊技球(図示せず)を射出する。射出機構3から射出された遊技球は、遊技盤5と当該遊技盤5の前方に設けられた透明板6との間の移動空間7を移動する。遊技盤5には、釘などの案内部材8が設けられており、遊技球は案内部材8によって案内される。また、遊技盤5には、大小の入賞穴4,9が設けられており、遊技者は、入賞穴4,9を開かせる穴(図示せず)に遊技球が入るように、ハンドル2の回転量を調整して射出機構3から射出される遊技球の到達位置を調整する。
【0017】
入賞穴4,9は所定の条件を満たすまでは閉じていて、所定の条件を満たすことによって、ソレノイドなどを用いた磁気機構(磁気機構部)10が動作して開くようになっている入賞穴4,9が開く時間、つまり、磁気機構10が稼働する時間は、所定の限られた時間B未満の時間である。
【0018】
また、このような遊技機1においては、違法者が、磁石等の違法な磁界発生源20を透明板6上に設置、または近づけることによって、遊技球の移動を制御して入賞穴4,9に導く場合がある。
【0019】
本実施の形態に係る不正検知装置30は、このような違法な不正行為を検出するために遊技機1に備えられている。不正検知装置30では、遊技機からの磁界を基に所定の閾値A以上の磁界が検出された場合に不正検知とするが、所定の閾値A以上の磁界が検出された場合でも、磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構部によるものと判断すると不正非検知と判定する。
【0020】
そして、不正検知装置30では、不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が所定の閾値A以上を継続する時間を計測し、計測時間が所定の時間B以上となった場合には(計測時間が所定の時間B以上となると)、判定結果を不正検知に変更する。
【0021】
これにより、不正行為を誤って内部の磁気機構部によるものと誤判定した場合も、比較的短い時間で誤判定を改めて不正を検知することができる。これにより、不正行為が継続して行われることを阻止できる。
【0022】
§2.構成例
(入賞穴の開閉機構)
磁気機構10は、ソレノイドなどによって塞がっている大小の入賞穴4,9を開く機構であり、大小の入賞穴4,9のそれぞれに設けられている。磁気機構10は、遊技機1が所定の条件を満たすことによって稼働して入賞穴4(9)が開く。磁気機構10は、所定の稼働時間の間稼働し続け、稼働時間が経過すると稼働を停止する。これにより、開いていた入賞穴4(9)が閉じる。所定の稼働時間は後述する所定の時間B未満である。なお、動作の終了条件は時間だけに制限されず、所定の数の遊技球が入賞穴4(9)に入った場合などであってもよい。磁気機構10が動作することによって、入賞することが可能になるため、磁気機構10が動作する時間(期間)は極限られている。
【0023】
不正検知装置30は、遊技機1に設けられた遊技機内外の磁界を検出し、不正行為を検知する装置である。不正検知装置30の詳細は後述する。
【0024】
(不正行為)
違法者は、磁石などの磁界発生源20を透明板6の上に設置、または近づけることによって、遊技球の動作を制御することがある。これら行為は、遊技機1での遊技において違法な不正行為である。不正検知装置30はこのような不正行為を検出する。
【0025】
(不正検知装置30)
図2は、実施形態1に係る不正検知装置30の要部の構成を示すブロック図である。不正検知装置30は、磁界検知部31と、演算部32と、タイマ33と、報知部34と、を備える。
【0026】
磁界検知部31は、磁界を検出するセンサである。磁界検知部31は、検出した磁界を演算部32に出力する。
【0027】
図3は、不正検知装置30の外観を示す図である。
図4は、不正検知装置30の検出範囲35を示す一例である。
【0028】
図3に示すように、磁界検知部31は、3軸(X軸,Y軸,Z軸)で磁界を検出することができる。実際には、3軸をベクトル合成した値が本来の磁界である。
【0029】
図4に示すように、不正検知装置30を正面視(
図4の左側)すると、略円形に検出範囲35が広がっており、不正検知装置30を側面視(
図4の右側)すると、略長円に検出範囲35が広がっている。
【0030】
図2に戻り、演算部32は、A/D変換部、CPU、クロック回路、メモリなどから構成されている。演算部32は、遊技機において検出された磁界に基づいて演算を行い、不正行為を検知する。演算部32は、遊技機からの磁界を基に所定の閾値A以上の磁界が検出された場合に不正検知とする。また、演算部32は、遊技機からの磁界が前記所定の閾値A以上であっても、磁界の変化より遊技機の内部の磁気機構10によるものと判断すると不正非検知と判定する。つまり、演算部32が判定部としての機能を有している。
【0031】
検出した磁界に基づく磁気機構10によるものか否かの判定は、例えば、磁気変化量に基づいて行うことができる。磁気機構10の稼働開始による磁気変化量に対して、違法者が磁界発生源20を設置あるいは近接させることによる磁気変化量は小さい。したがって、磁気変化量を基に、検出した磁界の発生源が磁気機構10である磁界発生源20であるかを判断することができる。
【0032】
本実施形態では、演算部32は、遊技機からの磁界を所定の周期で取得する。つまり、演算部32は、磁界検知部31から入力された情報に基づいて、定周期毎に、不正の有無を判定し、不正を検知すると不正検知の判定出力を報知部34に対して出力する。演算部32の動作の詳細は後述する。なお、演算部32の処理にはタイマ33の情報を用いる。
【0033】
タイマ33は、演算部32によって制御されるタイマである。タイマ33は、計測した時間を、演算部32に出力する。
【0034】
演算部32は、タイマ33を制御して、不正非検知と判定された以降において、遊技機からの磁界が所定の閾値A以上を継続する時間を計測する。つまり、演算部32とタイマ33とで、時間計測部が構成されている。演算部32は、計測時間が所定の時間B以上となった場合に、判定結果を不正検知に変更する。なお、本実施形態では、演算部32は、演算部にて取得された磁界が所定の閾値A未満である場合に、計測値をリセットする。
【0035】
報知部34は、判定結果を外部に出力する。本実施形態では、報知部34は、演算部32から不正検知の判定出力が入力されると、外部に対して不正を検知したことを報知する。
【0036】
このような不正検知装置30は、遊技盤5の裏面側で、かつ、違法者が入賞穴4又は入賞穴9へと遊技球を導くために設置あるいは近接させる磁界発生源20が、検出範囲35に入る位置に設置される。検出範囲35に磁気機構10が入る場合もある。
【0037】
§3.動作例
図5は、実施形態1に係る不正検知装置30の動作例を示すフローチャートである。本実施形態では、演算部32は、所定の閾値A以上の磁界を検知した場合に、磁気変化量を演算し、遊技機1に設けられた磁気機構10の稼働を開始したことによる磁気変化量であると想定される所定の範囲C内である場合には、前回の判定出力を継続するキャンセル処理を実行する。キャンセル処理は、キャンセルフラグがオンされることで開始され、キャンセルフラグがオフされることで終了する。
【0038】
キャンセル処理とは、検知出力が立ち上がる変化を示したときに、検知出力の時間に対する変化量を分析して、磁気機構10の稼働開始による磁界の変化を示す検知出力であると識別された場合は、判定出力の更新を行わず現在の判定を継続する処理である。磁気機構10の稼働開始とは、磁気機構10が停止状態から動作状態に切り替わったことである。
【0039】
演算部32は、磁気機構10の稼働の開始によるものであると判定された以降において、検出磁界が所定の閾値A以上を継続する時間を計測する。換言すると、キャンセル処理の継続時間を計測する。演算部32は、計測時間が所定の時間B以上になると、判定出力を不正検知に変更する。所定の時間Bは、例えば、磁気機構10の1回あたりの最長稼働時間よりも若干(数秒程度)長い時間に設定される。
【0040】
図5に示すように、演算部32は、磁界検知部31で検出した磁界の検出値が、所定の閾値A以上か否かを判断する(S10)。所定の閾値Aは、演算部32が、違法な磁界発生源20が設置あるいは近接されたと判断し得る磁気量である。所定の閾値Aは、例えば、磁束密度0.3mT(3000mG)に設定できる。
【0041】
演算部32は、所定の閾値A未満の場合(S10においてNo)、すなわち、検出した磁界が小さい場合、S20に処理を進め、S21を経て、不正非検知と判定する(S22)。その後、処理をS10に戻す。S20では、演算部32は、キャンセルフラグをオフにし、S21ではタイマ33をリセットする(S21)。キャンセル処理を実行している場合、S20にてキャンセル処理を終了し、S21にてタイマ33をリセットする。
【0042】
一方、演算部32は、所定の閾値A以上の場合(S10においてYes)、すなわち、磁界発生源20が近づけられたと予想し得る大きい磁界を検出した場合、磁界変化量を算出する(S11)。磁界変化量は、前回の磁界の検出値との差分である。
【0043】
演算部32は、磁界変化量が所定の範囲C内か否かを判断する(S12)。所定の範囲Cは、この範囲内であれば、違法な磁界発生源20による磁界変化であると想定し得る範囲である。所定の範囲Cは、例えば0.05mT(500mG)より大きく0.2mT(2000mG)より小さい範囲に設定できる。所定の範囲C内の場合(S12においてYes)、すなわち、低速な変化での磁界変化を磁界検知部31が検出した場合、S19に処理を進める。
【0044】
S19では、演算部32はキャンセルフラグをオフにし、S18に進んで不正検知と判定する。これにより、演算部32は、キャンセル処理を実行している場合、キャンセル処理を終了して、処理をS10に戻す。
【0045】
磁界変化量が所定の範囲C外の場合(S12においてNo)、演算部32はキャンセルフラグをオンにする(S13:判定ステップ)。磁気機構10による磁界変化であるとあるいは想定得る高速な変化での磁界の変化、あるいは前回の磁界の検出値から殆ど変化していない場合が所定の範囲C外となる。キャンセルフラグがオンになることで、キャンセル処理が実行され、演算部32は、タイマ33が起動済みかどうかを判断する(S14)。
【0046】
タイマ33が起動済みである場合(S14においてYes)、演算部32はS16に処理を進める。タイマ33が起動済みでない場合(S14においてNo)、演算部32は、タイマ33を起動し、カウントアップを開始した後、S16に処理を進める(時間計測ステップ)。既にキャンセル処理を実行している場合、タイマ33は起動済みであり、新たにキャンセル処理に入った場合、タイマ33は起動されていない。つまり、キャンセルフラグがオフからオンに切り換わり、キャンセル処理を開始したタイミングでタイマ33は起動される。
【0047】
S16では、演算部32は、タイマ33の経過時間(カウント時間)が所定の時間B以上か否かを判断する。所定の時間Bは、磁気機構10の1回あたりの最長稼働時間に基づいて、誤検知であると判定し得る時間に設定される。所定の時間Bは、例えば30秒に設定される。演算部32は、タイマ33の経過時間が所定の時間B以上の場合(S16においてYes)、S18に処理を進める(結果変更ステップ)。
【0048】
タイマ33の経過時間が所定の時間B未満の場合(S16においてNo)、演算部32は、前回の判定結果が不正検知か否かを判断する(S17)。前回が非検知である場合(S17においてNo)、演算部32はS22に処理を進め、前回が不正検知である場合(S17においてYes)、演算部32はS18に処理を進める。つまり、磁界変化量は磁気機構10によるとみなされる範囲であるが、磁気機構10によると見做している時間が所定の時間Bを超えているため、強制的に不正検知とする。
【0049】
図5のフローでは、キャンセルフラグがオフの場合は今回の判定結果がそのまま出力され、キャンセルフラグがオンの間で、タイマ33が所定の時間B未満の場合は前回の判定結果が出力され、タイマ33が所定の時間B以上の場合は今回の判定結果が強制的に不正となる。すなわち、磁界変化量が所定の範囲C外であったために十分に急峻な磁界変化をしていた場合であっても、長時間その状態が維持された場合は、遊技者による不正行為が行われていると、演算部32は判断する。
【0050】
S10における所定の閾値A、S12における所定の範囲C、S16における所定の時間Bは、遊技機の機種に応じて決定される任意の値であり、特に制限されない。例えば、所定の閾値Aは、磁気機構10に用いられるソレノイドによる磁界の大きさで定まる。所定の範囲Cは、磁気機構10に用いられるソレノイドの応答性に応じて定まる。所定の時間Bは、磁気機構10が稼働している時間の最大値よりも大きな値である。
【0051】
(磁界の変化)
図6は、磁界の変化と不正検知装置30の動作の一例を示す図である。符号201は、磁界の検出値の時間変化を表すグラフである。符号202は、磁界変化量のサンプリング周期毎の変化を表すグラフである。符号203は、判定結果の時間変化を表すタイミングチャートである。なお、符号201~203において、実線は磁気機構10によるものと誤判定される不正行為による磁気量、磁気変化量、判定出力を示している。なお、破線は従前からの技術で検知可能な不正行為による磁気量、磁気変化量、判定出力を示している。
【0052】
符号201および202に示すように、検出値が急峻な立ち上がりを示し、磁界変化量が所定の範囲C外となると、演算部32は磁気機構10によるものと判断し、判定結果は非検知(正常)となる。
【0053】
しかしながら、その後、所定の時間Bが経過することによって、長い時間大きな磁界を検出していたことから、不正行為が行われていると、演算部32は判断を改め、判定結果を不正検知に変更する。
【0054】
§4.作用・効果
上記構成によれば、違法者が不正行為を行っていた場合であっても、タイマ33が所定の時間B以上になることによって、演算部32は強制的に不正行為が行われていると判断することができる。そのため、遊技場の不利益を防止することができる。
【0055】
また、磁界検知部31の出力値でもって直接報知せずに、演算部32の処理を挟むことによって、報知部34は、適切な不正行為のみを検出することができるようになる。そのため、磁気機構10による磁気変化を不正と誤検出してしまい、遊技者に不当な心象を与えることを防ぐことができる。
【0056】
さらに、不正検知装置30を備えた遊技機1を設けることによって、遊技者が不正行為を行う心理的ハードルを高めることができる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0058】
図7は、実施形態2に係る不正検知システム30aの要部の構成を示すブロック図である。不正検知システム30aは、不正検知装置30bと、磁界センサ30cとによって構成される。磁界センサ30cは、磁界検知部31と、検知出力部36とを備える。不正検知装置30bは、演算部32と、タイマ33と、報知部34とを備える。
【0059】
検知出力部36は、磁界検知部31が検出した磁界の検出値を不正検知装置30bの演算部32に出力する。
【0060】
すなわち、実施形態1では、不正検知装置30が1台で完結していた不正検知に関する処理を、磁界センサ30cと不正検知装置30bとに分割して処理している。
【0061】
〔ソフトウェアによる実現例〕
不正検知装置30、30b(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に演算部32)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0062】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0063】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0064】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0065】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0066】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 遊技機
10 磁気機構(磁気機構部)
20 磁界発生源
30、30b 不正検知装置
31 磁界検知部
32 演算部(判定部、時間計測部)
33 タイマ(時間計測部)
34 報知部