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<図1>
  • 特開-チャンバ、分析装置および分析方法 図1
  • 特開-チャンバ、分析装置および分析方法 図2
  • 特開-チャンバ、分析装置および分析方法 図3
  • 特開-チャンバ、分析装置および分析方法 図4
  • 特開-チャンバ、分析装置および分析方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020957
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】チャンバ、分析装置および分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123534
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】湯峯 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】上条 卓史
【テーマコード(参考)】
2G057
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AA02
2G057AB01
2G057AB02
2G057AB03
2G057AB04
2G057AB06
2G057AB08
2G057AB10
2G057AC05
2G057BA01
2G057BB06
2G057BB09
2G057BB10
2G057BC05
(57)【要約】
【課題】温度および湿度が制御された環境下において、分析対象を精度良く分析すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるチャンバは、内部を調温調湿されたガスが流れるチャンバであって、互いに対向する前面および後面を有し、前記前面および前記後面には、それぞれ、前記前面に照射される照射線を後方に透過させる透過部が形成され、前記前面の前記透過部および前記後面の前記透過部は、それぞれ、前記ガスが流れる空間に接する内窓を有し、前記前面の前記内窓の内面と前記後面の前記内窓の内面の少なくとも一方の温度は、調整可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を調温調湿されたガスが流れるチャンバであって、
互いに対向する前面および後面を有し、
前記前面および前記後面には、それぞれ、前記前面に照射される照射線を後方に透過させる透過部が形成され、
前記前面の前記透過部および前記後面の前記透過部は、それぞれ、前記ガスが流れる空間に接する内窓を有し、
前記前面の前記内窓の内面と前記後面の前記内窓の内面の少なくとも一方の温度は、調整可能である、
チャンバ。
【請求項2】
前記前面の前記透過部と前記後面の前記透過部の少なくとも一方は、前記内窓の外側に離間して配置される外窓を有し、前記内窓と前記外窓との間の空間に調温された気体が送り込まれる、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項3】
前記前面の前記内窓と前記後面の前記内窓との間に、分析対象となる試料が配置される、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項4】
前記前面の前記内窓と、前記後面の前記内窓との距離は調整可能である、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項5】
前記前面の前記内窓と前記後面の前記内窓との間の空間を囲む媒体流通部を有する、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項6】
前記内窓の厚さは30nm~2mmである、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項7】
照射線源と、
請求項1から6のいずれか一項に記載のチャンバと、
前記チャンバに収容される分析試料から出射される二次線を検出する検出部と、
前記チャンバに温度および湿度が制御された調温調湿ガスを供給する調温調湿部と、
を備える、分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の分析装置を用いる、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ、分析装置および分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス表示装置に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、一般的に、偏光板等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。画像表示装置の急速な普及に伴い、光学部材についてより実際の使用環境における性能の評価が求められる場合がある。具体的には、温度および湿度が制御された(調温調湿された)環境下における分析対象の分析が望まれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、温度および湿度が制御された環境下において、分析対象を精度良く分析することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態によるチャンバは、内部を調温調湿されたガスが流れるチャンバであって、互いに対向する前面および後面を有し、前記前面および前記後面には、それぞれ、前記前面に照射される照射線を後方に透過させる透過部が形成され、前記前面の前記透過部および前記後面の前記透過部は、それぞれ、前記ガスが流れる空間に接する内窓を有し、前記前面の前記内窓の内面と前記後面の前記内窓の内面の少なくとも一方の温度は、調整可能である。
2.上記1に記載のチャンバにおいて、上記前面の上記透過部と上記後面の上記透過部の少なくとも一方は、上記内窓の外側に離間して配置される外窓を有してもよく、上記内窓と前記外窓との間の空間に調温された気体が送り込まれてもよい。
3.上記1または2に記載のチャンバにおいて、上記前面の上記内窓と上記後面の上記内窓との間に、分析対象となる試料が配置されてもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載のチャンバにおいて、上記前面の上記内窓と、上記後面の上記内窓との距離は調整可能であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載のチャンバは、上記前面の上記内窓と上記後面の上記内窓との間の空間を囲む媒体流通部を有してもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載のチャンバにおいて、上記内窓の厚さは30nm~2mmであってもよい。
7.本発明の別の実施形態による分析装置は、照射線源と、上記1から6のいずれかに記載のチャンバと、前記チャンバに収容される分析試料から出射される二次線を検出する検出部と、上記チャンバに温度および湿度が制御された調温調湿ガスを供給する調温調湿部と、を備える。
8.本発明のさらに別の実施形態による分析方法は、上記7に記載の分析装置を用いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によるチャンバによれば、温度および湿度が制御された環境下において、分析対象を精度良く分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態に係る分析装置の概略の構成を示す模式図である。
図2図1に示す分析装置のチャンバの一例を示す分解斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿って切り取った図である。
図4図2に示すチャンバの蓋の分解斜視図である。
図5図3に示す蓋の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0009】
図1は本発明の1つの実施形態に係る分析装置の概略の構成を示す模式図である。図1では、分析装置10の一部の構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。分析装置10は、照射線源12と、分析対象となる試料(分析試料)Sを収容するチャンバ100と、照射線を照射された分析試料Sから出射される二次線を検出する検出部14と、調温調湿部16と、を備える。チャンバ100内には、調温調湿部16から温度および湿度が制御された調温調湿ガスが供給される。調温調湿部16から調温調湿ガスがチャンバ100内に供給されることにより、所望の環境下における分析対象の分析が可能となる。
【0010】
照射線源12から照射される照射線としては、例えば、X線、紫外線、可視光線、赤外線、レーザ光線、ミュオン線、中性子線、重粒子線が挙げられる。分析装置10の分析法としては、例えば、X線吸収微細構造解析(XAFS)、小角X線散乱測定(SAXS)、広角X線散乱測定(WAXS)等のX線分析、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光分析、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光分析等の紫外~赤外線分析、ラマン分析が挙げられる。
【0011】
調温調湿部16は、チャンバ100に所望の温度および湿度に制御されたガス(代表的には、空気)を供給し得る限り、任意の適切な調温機構および調湿機構を有し得る。調温調湿部16は、例えば、分流法、二温度法、二圧力法、飽和塩法、またはこれらを組み合わせた調湿機構を有する。好ましくは、分流法と二温度法とを組み合わせる。分流法と二温度法とを組み合わせることにより、分析装置の小型化に寄与し得る。また、温度および湿度の制御精度と制御スピードに優れ得る。
【0012】
調温調湿部16からチャンバ100に供給される調温調湿ガスの温度および湿度は、例えば、分析対象に応じて、適宜設定され得る。調温調湿ガスの温度は、例えば-10℃~95℃であり、5℃~90℃であってもよく、25℃~90℃であってもよい。調温調湿ガスの湿度は、例えば0%Rh~95%Rhであり、30%Rh~95%Rhであってもよく、50%Rh~95%Rhであってもよい。例えば、チャンバ100内に分析試料Sを収容した状態で、調温調湿部16から供給される調温調湿ガスの条件を変化させることにより、環境変化による分析対象の変化を容易に分析し得る。
【0013】
図2図1に示す分析装置のチャンバの一例を示す分解斜視図であり、図3図2のIII-III線に沿って切り取った図であり、図4図2に示すチャンバの蓋の分解斜視図である。
【0014】
チャンバ100は、内部に空洞を設けるように、前後方向に対向し離間して配置された前板110および後板120と、前板110と後板120との間に配置された枠体130と、を備えている。チャンバ100を構成する部材の形成材料としては、例えば、温度安定性、腐食防止の観点から、ステンレス鋼が用いられ得る。
【0015】
枠体130は、内部に分析試料が配置される内枠131と、内枠131を囲む外枠132とで構成されている。外枠132の対向する左右の側面には、調温調湿部16から供給されるガスのガス入口133およびガス出口134が形成されている。分析試料が配置される内枠131に選択的に調温調湿部16から供給されるガスを流通させるため、外枠132に形成されたガス入口133およびガス出口134と内枠131内を繋ぐ流通管138、139が設けられている。図示しないが、ガス入口133には調温調湿部16との接続管が接続され得、ガス出口134には排管が接続され得る。
【0016】
外枠132の上側面には、媒体入口135および媒体出口136が形成されている。そして、媒体入口135と媒体出口136との間には、外枠132と内枠131を連結する隔壁137が設けられており、媒体入口135から供給される媒体を媒体出口136に排出させ得る。内枠131を囲む空間は媒体流通部として機能し得る。例えば、外枠132の媒体入口135から温水等の加熱媒体を供給することにより、内枠131と外枠132との間の空間に加熱媒体が流通し得、分析試料が配置される内枠131内の温度を所望の温度に調整または保持することができる。媒体入口135には図示しない媒体供給部との接続管が接続され得、媒体出口136には排管が接続され得る。
【0017】
隔壁137において、外枠132の上側面から内枠131内に繋がる貫通孔142、142が形成されている。貫通孔142には、例えば、温度計、熱電対、温度センサ、温湿度センサ等が挿入され、分析試料が配置される内枠131内の環境を測定し、モニタし得る。
【0018】
チャンバ100の前面および後面は、それぞれ、透過部150、150が形成されている。前面の透過部150と後面の透過部150は対向して配置されており、照射線源12から照射される照射線は、前面の透過部150からチャンバ100内に入射し、後面の透過部150から出射する。透過部150は、それぞれ、少なくとも内窓151を含み、内窓151は調温調湿ガスが流れる空間に接する。図示例では、透過部150は外窓152も含んでいる。
【0019】
内窓151および外窓152は、照射線を透過させ得る任意の適切な材料で形成され得る。用いる照射線の種類にもよるが、内窓151および外窓152は、それぞれ、例えば、窒化ケイ素、フッ化ホウ素、シリコン、ゲルマニウム等の無機材料、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の有機材料で形成される。このような材料によれば、調温調湿ガスに含まれ得る水分による内窓の劣化は抑制され得る。外窓152は、塩化ナトリウム等の水溶性材料で形成されてもよい。内窓151の厚さは、例えば20nm~10mmであり、好ましくは30nm~2mmである。外窓152の厚さは、例えば20nm~10mmである。図示例では、内窓151の形状は矩形で外窓152の形状は円形であるが、照射線がチャンバ100を透過し得る限り、内窓および外窓の形状は特に限定されない。
【0020】
調温調湿部16からチャンバ100に供給される調温調湿ガスの流速は、例えば0.2ml/min~100ml/minに調整されてもよく、0.2ml/min~50ml/minに調整されてもよい。このような流量によれば、チャンバ100内(分析試料が配置される空間)に調温調湿ガスをムラなく供給し得る。また、このような流量によれば、厚さの薄い(例えば、厚さ100nm以下)の内窓を用いる場合においても、調温調湿ガスの流れによる内窓の破損を防止し得る。
【0021】
前板110は開口111を有し、この開口111に蓋112が配置されている。蓋112には段差を形成する凹部113が形成され、凹部113には透過部150を形成する開口部114が形成されている。蓋112の凹部113には、内窓151を保持する内窓保持枠115が嵌め込まれている。蓋112には、外窓152を保持する外窓保持枠116が設けられ、外窓152は内窓151に離間して配置されている。外窓保持枠116は縦断面L字形状を有している。外窓保持枠116の縁部117には、温度が制御(調温)された気体(代表的には、空気)を送り込む気体入口118が形成されており、内窓151と外窓152との間の空間に調温された気体が管153から送り込まれ得る。送り込まれた気体は、外窓保持枠116と蓋112とで形成された気体出口119から排気され得る。外窓152を用いて内窓151と外窓152との間の空間を形成し、この空間に調温された気体(例えば、温風)を送り込むことにより、効率的に内窓に151に調温された気体を当てることができ、内窓151の温度を良好に調整することができる。なお、後板120(後面)は前板110(前面)と同様の構成を有し得ることから説明を省略する。内窓151の温度の調整は、前面においてのみ行ってもよいし、後面においてのみ行ってもよい。
【0022】
内窓151の内面は、チャンバ100内に供給される調温調湿ガスに接する。調温調湿ガスの条件によっては(例えば、高温高湿である場合には)、内窓151の内面に水滴が付着し得る。具体的には、内窓151の内面に結露が生じ得る。内窓151の内面に発生する結露は、照射線源12から照射される照射線の進行に影響を及ぼし、分析を適切に行うことが困難となる場合がある。少なくとも内窓151の内面の温度を調整することにより結露を抑制し、精度良く分析することが可能となる。図示例においては、内窓151に調温された気体を当てることにより、内窓151の内面と外面との温度差を小さくして内面の温度を調整している。内窓151に当てる気体は、例えば30℃~180℃に調温され得る。
【0023】
図示例では、内窓151に調温された気体(例えば、温風)を当てているが、内窓151の内面と外面の少なくとも一方に、通電により発熱可能な発熱部を形成し、内窓151の内面の温度を調整してもよい。
【0024】
前面の内窓151と後面の内窓151との間に、分析試料が配置される。図示例では、分析試料は、蓋112の後面に設けられる試料固定具140を用いて、前面の内窓151と後面の内窓151との間に配置され得る。
【0025】
図5は、図3に示す蓋の変形例を示す図である。本変形例では、内窓保持枠のかわりに、筒状の調整部材141が設けられている。そして、内窓151は、調整部材141の端部に保持されている。調整部材141の他方の端部は蓋112の開口部114に嵌め込まれており、外窓保持枠116に形成された気体入口118にパイプ154を通し、パイプ154から調整部材141内に調温された気体を送り込むことができる。調整部材141の長さは、適宜、調整され得る。また、図示しないが、外窓保持枠116に外窓152を取り付けてもよい。
【0026】
調整部材を用いて内窓151の位置をかえることにより、調温調湿ガスの雰囲気下における照射線の進行距離(例えば、光路)を変化させることができる。例えば、加湿空間では、照射線は散乱したり、減衰したりする場合がある。この場合、チャンバ100内の加湿空間における照射線の進行距離を短くすることにより、照射線の減衰を抑制することができる。また、内窓151の位置をかえることにより、様々なサイズの分析試料の分析にも対応することができる。
【0027】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の実施形態に係るチャンバは、例えば、耐候性試験、恒温・恒湿試験、耐熱試験に好適に用いられ得る。また、光学部材をはじめ、触媒、燃料電池、生体、バイオマテリアル等の機能評価に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0029】
10 分析装置、12 照射線源、14 検出部、16 調温調湿部、100 チャンバ、110 前板、111 開口、112 蓋、113 凹部、114 開口部、115 内窓保持枠、116 外窓保持枠、117 縁部、118 気体入口、119 気体出口、120 後板、130 枠体、131 内枠、132 外枠、133 ガス入口、134 ガス出口、135 媒体入口、136 媒体出口、137 隔壁、138 流通管、139 流通管、140 試料固定具、141 調整部材、142 貫通孔、150 透過部、151 内窓、152 外窓。
図1
図2
図3
図4
図5