(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020965
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】止水用バンド装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/172 20060101AFI20240207BHJP
F22B 37/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16L55/172
F22B37/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123543
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000230526
【氏名又は名称】日本ヴィクトリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森川 幸典
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB07
3H025EC05
3H025ED01
(57)【要約】
【課題】蒸気用配管からの蒸気の漏洩を防止する。
【解決手段】止水用バンド装置10は、蒸気用配管1に形成されたピンホール2を覆うゴムパッチ11と、ゴムパッチ11を外側から押さえるバンド20とを備える。バンド20は締結具30により締め付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気用配管に形成されたピンホールから漏洩する蒸気を止める止水用バンド装置において、
前記蒸気用配管の外側から前記ピンホールを外側から覆うゴムパッチと、
前記ゴムパッチを外方から押さえるとともに、前記蒸気用配管に巻き付けられたバンドと、
前記バンドを締め付ける締結具とを備え、
前記ゴムパッチの内面に止水用領域を形成する止水用突起が形成されている、止水用バンド装置。
【請求項2】
前記止水用突起は前記ゴムパッチの内面に格子状に形成され、前記止水用領域は前記格子状の前記止水用突起によって矩形状に形成される、請求項1記載の止水用バンド装置。
【請求項3】
前記ゴムパッチの外面のうち前記バンドの幅方向両端に、前記バンドの脱落を防止するガイド突起を設けた、請求項1または2記載の止水用バンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は蒸気用配管に形成されたピンホールから漏洩する蒸気を止める止水用バンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気用配管に形成されたピンホールから漏洩する流体を止めるため、補修用装置が用いられる。
【0003】
このような補修用装置はピンホールのみではなく、配管全体からの漏水を止水する構造となっており、止水部分が配管全周に渡って延びている。このため補修用装置全体の構造が大がかりとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、蒸気用配管に形成されたピンホールおよびその近傍に限定して蒸気の流出を防ぐことができ、全体としてコンパクトな構造をもつ止水用バンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、蒸気用配管に形成されたピンホールから漏洩する蒸気を止める止水用バンド装置において、前記蒸気用配管の外側から前記ピンホールを外側から覆うゴムパッチと、前記ゴムパッチを外方から押さえるとともに、前記蒸気用配管に巻き付けられたバンドと、前記バンドを締め付ける締結具とを備え、前記ゴムパッチの内面に止水用領域を形成する止水用突起が形成されている、止水用バンド装置である。
【0006】
本開示は、前記止水用突起は前記ゴムパッチの内面に格子状に形成され、前記止水用領域は前記格子状の前記止水用突起によって矩形状に形成される、止水用バンド装置である。
【0007】
本開示は、前記ゴムパッチの外面のうち前記バンドの幅方向両端に、前記バンドの脱落を防止するガイド突起を設けた、止水用バンド装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本開示によれば、蒸気用配管に形成されたピンホールおよびその近傍に限定して止水することができ、全体構造をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本開示の一実施の形態による止水用バンド装置を示す断面図。
【
図2】
図2は本開示の一実施の形態による止水用バンド装置を示す一部破断した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示による止水用バンド装置の一実施の形態について説明する。
【0011】
まず
図1および
図2により、止水用バンド装置10の概略について述べる。
【0012】
止水用バンド装置10は蒸気用配管1に形成されたピンホール2から漏洩する蒸気等の流体を止めるものである。
【0013】
このような止水用バンド装置10は、蒸気用配管1のピンホール2を蒸気用配管1の外側から覆うゴムパッチ11と、ゴムパッチ11を外方から押さえるとともに、蒸気用配管1に巻き付けられたバンド20と、バンド20を締め付ける締結具30とを備えている。
【0014】
このうちゴムパッチ11はピンホール2を蒸気用配管1の外側から覆うものであり、四フッ化プロピレンを主材料として含むゴム製のパッチからなり平面視で矩形状をもつ。
【0015】
具体的には
図3乃至
図5に示すようにゴムパッチ11は平面視で正方形状をもち、かつ内面11Aと外面11Bとを有する。ゴムパッチ11の内面11Aには線状に延びる止水用突起12が形成され、この止水用突起12は格子状に形成されている。そして格子状に形成された止水用突起12の内側に、止水用突起12から降下する凹部状の止水用領域13が形成されている(
図3参照)。
【0016】
すなわち、蒸気用配管1からピンホール2を介して漏洩する流体はゴムパッチ11の止水用突起12に囲まれた止水用領域13内に止まり、ゴムパッチ11から外方へ漏れないようになっている。
【0017】
本実施の形態において、ゴムパッチ11は正方形状をもち、その一辺はL1の長さを有する。
【0018】
またゴムパッチ11の内面には、止水用突起12によって囲まれた合計9個の止水用領域13が形成され、この9個の止水用領域13は流体を止めて、流体が外方へ漏れないようにする機能をもつ。
【0019】
本実施の形態において9個の止水用領域13により流体を止める正方形状の止水範囲13Aが構成される。なおゴムパッチ11の内面11Aには、9個の止水用領域13により構成される正方形状の止水範囲13Aの外方に非止水範囲13Bが形成される。
【0020】
このため、ピンホール2が上記止水範囲13Aに対応する位置にくると、ゴムパッチ11によりピンホール2から漏洩する流体を確実に止水することができるが、ピンホール2が非止水範囲13Bに対応する位置にくると、ゴムパッチ11によりピンホール2から漏洩する流体を止水することはむずかしくなる。
【0021】
本実施の形態において、9個の止水用領域13は各々正方形状をもち、9個の止水用領域13からなる止水範囲13Aも正方形状をもつ。
【0022】
そして止水範囲13Aの一辺はL2の長さをもつ。
【0023】
本実施の形態において、正方形状のゴムパッチ11の一辺L1は、例えば20mm、正方形状の止水範囲13Aの一辺L2は、例えば14mmとなっている。
【0024】
またゴムパッチ11の外面11Bには、
図4および
図5に示すように、その幅方向(バンドの幅方向に一致する)両端に、一対の線状に延びるガイド突起17が設けられている。ゴムパッチ11の外面11Bに設けられた一対のガイド突起17は、ゴムパッチ11の外面11B上に配置されるバンド20がゴムパッチ11から脱落することを防ぐものである。本実施の形態において、バンド20は16mmの幅をもち、一対のガイド突起17によりバンド20の両端が押さえられてバンド20の脱落が防止される。
【0025】
また上述のようにゴムパッチ11は、バンド20によって外側から蒸気用配管1に対して押さえ付けられる。本実施の形態において、バンド20はステンレス製となっており、バンド20は締結具30により締め付けられる。
【0026】
本実施の形態において、
図1および
図2に示すように、ステンレス製バンド20は互いに分離する一端部20aと他端部20bとを有する。そしてバンド20の一端部20aに締結具30が固着されている(
図6A参照)。
【0027】
締結具30はバンド20の一端部20aに固着された取付具32と、この取付具32に取り付けられた締結具本体31とを有し、締結具本体31内にウォームギア33が回転自在に配置されている。
【0028】
また締結具本体31内に配置されたウォームギア33の一端には六角ボルト34が取り付けられており、六角ボルト34を、図示しない工具を用いて回転させることにより締結具本体31内のウォームギア33が回転する。
【0029】
他方、バンド20の他端部20bには、バンド20の幅方向に延びる細長状開口21が、バンド20の長手方向に複数連続して設けられている(
図6B参照)。
【0030】
バンド20の他端部20bを締結具本体31内に挿入し、他端部20bを締結具本体31内のウォームギア33に当接させる。その後ウォームギア33に取り付けられた六角ボルト34を工具を用いて回転させる。このことによりウォームギア33が回転し、ウォームギア33が他端部20bの開口21と係合する。このように、ウォームギア33を回転させることにより、バンド20の他端部20bを
図6Aにおいて右方へ(
図6Aの矢印方向へ)前進させることができ、バンド20の内径を縮めることができる。
【0031】
この結果として、締結具30によりバンド20を蒸気用配管1に対して押し付けることができる。
【0032】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について
図7A乃至
図8Cにより説明する。
【0033】
まず、
図7Aおよび
図7Bに示すように、蒸気用配管1からの流体の漏洩箇所をみつけ、流体の漏洩箇所からピンホール2を特定する。
【0034】
次に蒸気用配管1のうちピンホール2近傍を外側からゴムパッチで覆い、ゴムパッチ11を蒸気用配管1の外側に仮に固定する。
【0035】
次に
図8A乃至
図8Cに示すように、ゴムパッチ11をバンド20を用いて外方から押さえるとともに、このバンド20を蒸気用配管1の外側に巻き付ける。このとき、バンド20を、ゴムパッチ11の外面11Bに設けられた幅方向(バンドの幅方向)両端のガイド突起17内に配置する。
【0036】
その後、バンド20の一端部20aに設けられた締結具30内にバンド20の他端部20bを挿入し、工具を用いて六角ボルト34を回転させる。
【0037】
このとき、締結具30のウォームギア33がバンド20の他端部20bに設けられた開口21と係合する。このようにウォームギア33を回転させることによりバンド20の他端部20bを
図6Aにおいて右方へ(
図6Aの矢印方向へ)前進させ、このことによりバンド20の内径を縮めて、締結具30によりバンド20を締め付ける。
【0038】
この間、バンド20がゴムパッチ11の外面11Bに設けられたガイド突起17から外れていないことを確認しながら、ピンホール2からの流体が外方へ漏洩しなくなるまで締結具30を締め付ける。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、蒸気用配管1に形成されたピンホール2を特定し、このピンホール2をゴムパッチ11で覆い、ゴムパッチ11をバンド20で押さえるだけで容易かつ簡単な構成により蒸気用配管1からの流体の漏洩を防止することができる。またゴムパッチ11の内面11Aに、格子状に形成された線状に延びる止水用突起12が設けられ、止水用突起12によって9個の正方形状止水用領域13が形成される。このためピンホール2がこの9個の止水用領域13からなる止水範囲13Aに対応するようゴムパッチ11を蒸気用配管1外面に配置するだけで、ピンホール2はいずれかの止水用領域13により覆われることになる。このことにより、ピンホール2からの流体を止水用領域13の狭い範囲に閉じ込めてゴムパッチ11の外方へ漏洩することを確実に防ぐことができる。
【0040】
更にピンホール2に対応する止水用領域13から流体が漏れても、ピンホール2に対応する止水用領域13から漏れた流体は、当該止水用領域13に隣接する止水用領域13内に閉じ込められるため、ゴムパッチ11の外方へ流体が漏洩することはない。
【0041】
さらにまた、ゴムパッチ11の外面11Bには一対のガイド突起17が設けられているため、バンド20を締結具30により締結する際にバンド20がゴムパッチ11から外れたり、バンド20がゴムパッチ11に片当たりすることはなく、ゴムパッチ11をバンド20により確実に押さえることができる。
【0042】
なお、上記実施の形態においてバンド20の一端部20aに締結具30を固定し、バンド20の他端部20bを締結具30に挿入し、締結具30によりバンド20を締め付ける例を示したが、これに限らずバンド20を2以上の複数箇所で分割し、各々の分割部分に締結具を設けて各々の締結具によりバンド20を締め付けてもよい。
【0043】
またゴムパッチ11の内面11Aに格子状の止水用突起12を設け、この止水用突起12により9個の止水用領域13を形成した例を示したが、止水用領域13の数はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気用配管
2 ピンホール
10 止水用バンド装置
11 ゴムパッチ
12 止水用突起
13 止水用領域
13A 止水範囲
13B 非止水範囲
17 ガイド突起
20 バンド
20a 一端部
20b 他端部
21 開口
30 締結具
31 締結具本体
32 取付具
33 ウォームギア
34 六角ボルト