(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020994
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123601
(22)【出願日】2022-08-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:令和 4年 5月16日 販売場所:株式会社安川電機
(71)【出願人】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 望
(72)【発明者】
【氏名】半田 純
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA18
3J027GB03
3J027GC07
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
(57)【要約】
【課題】部品の組付け状態を維持可能な小型でコンパクトな機構を備え、設置スペースも少なくて済む波動歯車装置を提供すること。
【解決手段】波動歯車装置1は、内歯歯車2、カップ形状の外歯歯車3、波動発生器4の三部品と、仮固定用治具9とを備えている。仮固定用治具9は、仮固定ボルト10によって、外歯歯車3に固定した出力軸6に締結固定され、仮固定センターボルト11によって、波動発生器4のカム板41に固定した入力軸5に締結固定される。仮固定用治具9は、出力軸6および入力軸5に係合して、三部品2、3、4の組付け状態を保持する。波動歯車装置1は、モータへの取付け作業において三部品の位置調整作業が不要である。モータに波動歯車装置1を取り付けた後は、仮固定用治具9が波動歯車装置1から取り外されるので、波動歯車装置1の設置スペースも少なくて済む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車の内側に同軸に配置されたカップ形状をした可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車の内側に同軸に配置された波動発生器と、
前記外歯歯車を前記内歯歯車に対して相対回転可能な状態に支持する主軸受と
を備え、
前記外歯歯車は、前記内歯歯車の内歯にかみ合い可能な外歯が形成されている半径方向に撓み可能な筒状胴部、当該筒状胴部の一端から半径方向の内方に延びるダイヤフラム、および当該ダイヤフラムの内周縁に形成した剛性のボスを備え、
前記波動発生器は、入力軸を備えた剛性のカム板、および前記カム板の非円形外周面に装着した波動発生器軸受を備え、
前記波動発生器は、前記外歯歯車の前記筒状胴部の内側に嵌め込まれ、当該筒状胴部を半径方向に撓めて前記外歯を前記内歯に対して部分的にかみ合わせており、
前記主軸受は、前記内歯歯車に同軸に固定された外輪と、前記外歯歯車の前記ボスに同軸に固定された出力軸を備えた内輪とを備え、
前記外歯歯車の前記ボスを挟み、軸方向の一方の側である入力側には前記波動発生器が配置され、他方の側である出力側には前記出力軸が配置されている波動歯車装置において、
前記内歯歯車、前記外歯歯車および前記波動発生器の三部材を所定の組み付け状態に保持する仮固定用治具と、
第1仮固定ボルトおよび第2仮固定ボルトと
を備えており、
前記入力軸は、
取付け対象のモータ軸に締結固定される入力側軸端部と、
前記仮固定用治具に締結固定される出力側軸端部と
を備えており、
前記仮固定用治具は、
前記出力軸に対して前記出力側に位置する円盤状フランジと、
前記円盤状フランジから前記出力軸の中心穴および前記ボスの中心穴を通って前記入力側に突出している円筒部と、
前記円盤状フランジおよび前記円筒部を貫通して延びる中空部と
を備え、
前記円筒部は、前記入力軸の前記出力側軸端部に係合して、前記外歯歯車に対する前記波動発生器の軸方向位置を規定する軸方向位置決め面および回転方向位置を規定する回転方向位置決め面を備えており、
前記仮固定用治具は、
前記出力側から前記円盤状フランジに取り付けた前記第1仮固定ボルトによって、前記出力軸に同軸に締結固定され、
前記出力側から前記中空部に装着した前記第2仮固定ボルトによって、前記入力軸の前記出力側軸端部に同軸に締結固定されていることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸方向位置決め面は、前記仮固定用治具の前記中空部の内周面に形成した前記入力側を向く円環状段面であり、
前記円環状段面には、前記中空部に挿入された前記入力軸の前記入力側軸端部の先端面が前記入力側から当接しており、
前記回転方向位置決め面は、前記仮固定用治具の前記中空部の前記入力側の内周面に形成され、円形内周面の一部が半径方向の内側に迫り出した形状をしており、
前記中空部に挿入される前記入力軸の前記入力側軸端部の外周面は、前記回転方向位置決め面と相補的な形状をしている波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1において、更に、
前記第2仮固定ボルトが取り外された後の前記中空部に装着して、前記入力軸の前記入力側軸端部を取付け対象のモータ軸に締結固定する軸締結用ボルトを備えている波動歯車装置。
【請求項4】
請求項1において、更に、
前記内歯歯車に対して前記入力側から固定したエンドプレートと、
入力側オイルシールと、
出力側オイルシールと
を備えており、
前記入力軸の前記入力側軸端部は、前記エンドプレートの中心穴を通って前記入力側に突出し、前記エンドプレートの前記中心穴の内周面と前記入力側軸端部の外周面との間の隙間が、前記入力側オイルシールによってシールされており、
前記主軸受の前記外輪と前記内輪との間に形成される前記出力側に開口する隙間が、出力側オイルシールによってシールされている波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯歯車、外歯歯車および波動発生器の三部品が組付けられたユニットの状態でユーザーに提供される波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置は、基本的に、剛性の内歯歯車、可撓性の外歯歯車および波動発生器の三部品から構成される。波動歯車装置の組付け作業には、波動発生器をモータ軸に取り付ける作業、モータ軸に取り付けた波動発生器を、内歯歯車に組み付けた外歯歯車の内側に組み込む作業が含まれる。また、組み込まれた波動発生器の芯出し、軸方向の位置決め等の位置調整作業が必要である。ユーザーの側で波動歯車装置の組付け作業を簡単に行うことができるように、予め、三部品が組付けられて位置調整が行われたユニットの状態で、波動歯車装置がユーザーに提供される場合がある。
【0003】
このようなユニット製品は、例えば、特許文献1、2において提案されている。特許文献1に記載の波動歯車装置ユニットは、モータ等への組付け作業が簡単に行えるように、軸受機構によって支持された入力軸を備えた密閉構造をしている。軸受機構によって、三部品の組付け状態が維持され、製品輸送中等において波動発生器の位置ずれ、それに伴ってオイルシール等の他の部品が損傷するなどの弊害が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-74450号公報
【特許文献2】実用新案登録第3187367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予め三部品が組付けられてユニット化された波動歯車装置は、三部品の組付け状態、特に、外歯歯車に対する波動発生器の組付け状態を維持するために、軸受機構等の支持機構が組み込まれている。また、モータ軸等への取付けを簡単に行えるように継手機構等が組み込まれている。支持機構、継手機構等が組み込まれているので、その分、ユニット化された波動歯車装置の寸法、重量が大きくなり設置スペースを多く必要とする、回転ロスが大きくなる、製造コストが高くなる等の解決すべき課題がある。
【0006】
本発明の主な目的は、このような点に鑑みて、部品の組付け状態を維持可能な小型でコンパクトな機構を備え、設置スペースも少なくて済むように構成された波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車装置は、モータなどの取付け対象の装置へ取付けられるまでの間、仮固定用治具を用いて構成部品の組付け状態を維持し、取付け対象の装置への取付け後に仮固定用治具を取り外すことができるように構成されている。
【0008】
また、本発明の波動歯車装置では、波動歯車装置の軸方向において、波動歯車装置の取付け対象のモータに取り付けられる側を入力側とし、他方の側を出力側とすると、仮固定用治具の取付け、取り外し作業、および、入力軸をモータ軸に取り付ける作業を、全て、出力側から行うことができるように構成されている。
【0009】
さらに、本発明の波動歯車装置では、仮固定用治具を波動歯車装置の入力軸に締結固定する仮固定ボルトの装着部を利用して、仮固定ボルトに代えて軸締結固定ボルトを装着して、波動歯車装置の入力軸を、取り付け対象の装置の回転軸(モータ軸)に締結固定できるように構成されている。
【0010】
本発明の波動歯車装置においては、仮固定用治具によって、波動歯車装置の構成部品、特に、内歯歯車、外歯歯車および波動発生器の三部品の組付け状態が維持される。波動歯車装置の輸送等において、三部品に位置ずれが生じることがなく、位置ずれに起因してオイルシール等の他の構成部品に不要な負荷が掛かるなどの弊害も回避される。
【0011】
また、波動歯車装置を取付け対象の装置に取り付ける作業においては基本的に三部品の位置調整作業が不要となり、取付作業が簡単になる。取付け対象の装置に取り付けられた波動歯車装置からは、三部品の組付け状態を維持するための仮固定用治具が取り外される。設置スペースが少なくて済み、装置全体の小型化、コンパクト化に有利である。また、波動歯車装置の取り付け作業、仮固定用治具の取り外し作業を一方向から行うことができるので便利である。
【0012】
さらに、仮固定用治具を波動歯車装置の入力軸に締結固定している仮固定ボルトに代えて、入力軸を取付け対象のモータ軸に締結固定するために用いる軸締結ボルトを装着できる。入力軸をモータ軸に取り付けるための継手機構を小型でコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は本発明を適用した波動歯車装置を示す概略縦断面図、(B)は内歯歯車と外歯歯車のかみ合い状態を示す説明図である。
【
図2】(A)は仮固定用治具を取り外した状態の波動歯車装置を示す概略縦断面図、(B)は入力軸を示す斜視図である。
【
図3】(A)~(D)は、仮固定用治具の取り外し手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2を参照して、本発明を適用した波動歯車装置の実施の形態を説明する。波動歯車装置1は、剛性の内歯歯車2と、内歯歯車2の内側に同軸に配置されたカップ形状をした可撓性の外歯歯車3と、外歯歯車3の内側に同軸に配置された波動発生器4と、波動発生器4に同軸に固定した入力軸5と、外歯歯車3に同軸に固定した出力軸6と、出力軸6(外歯歯車3)を内歯歯車2に対して相対回転可能な状態で支持する主軸受7と、エンドプレート8とを備えている。また、波動歯車装置1は、組み付けられて相互に位置決めされた状態の内歯歯車2、外歯歯車3および波動発生器4を、位置決め状態に保持するための仮固定用治具9を備えている。仮固定用治具9は、複数本の仮固定ボルト10によって出力軸6に締結固定されていると共に、1本の仮固定センターボルト11によって入力軸5に締結固定されている。なお、以下の説明において、波動歯車装置1の中心軸線1aに沿った方向である軸方向において、エンドプレート8が位置している側を軸方向の入力側と呼び、仮固定用治具9が位置している側を軸方向の出力側と呼ぶ。
【0015】
内歯歯車2は矩形断面の円環状部材であり、その円形内周面に内歯21が形成されている。外歯歯車3は、内歯歯車2の内歯21にかみ合い可能な外歯31が形成されている半径方向に撓み可能な筒状胴部32、当該筒状胴部32の後端から半径方向の内方に延びるダイヤフラム33、および当該ダイヤフラム33の内周縁に形成した円環形状をした剛性のボス34を備えている。波動発生器4は、円環形状をした剛性のカム板41および、このカム板41の楕円状外周面(非円形外周面)に装着した波動発生器軸受43を備えている。波動発生器4は、外歯歯車3の筒状胴部32の内側に嵌め込まれ、当該筒状胴部32を楕円形状に撓めて、外歯31を内歯21に対して部分的にかみ合わせている。
【0016】
入力軸5は、波動発生器4のカム板41の中心穴を貫通して延びている。入力軸5は、中空軸であり、その外周面には円盤状フランジ51が一体形成されている。円盤状フランジ51の外周縁部に、波動発生器4のカム板41が同軸に締結固定されている。なお、本例では、入力軸5は、カム板41とは別部材であるが、カム板41と入力軸5とが一体化された単一部品を用いることもできる。
【0017】
出力軸6は、外歯歯車3の円環状のボス34に対して出力側から同軸に締結固定されている。出力軸6は、ボス34の中心穴35と同一径の中心穴61を備えた円盤形状をした部材である。主軸受7は、出力軸6の外周側に配置されている。主軸受7はクロスローラベアリングからなり、その内輪71は出力軸6に一体形成されている。内輪71を出力軸6とは別個の部品として制作し、出力軸6の外周部に同軸に締結固定することもできる。主軸受7の外輪72は、内歯歯車2の出力側に位置し、内歯歯車2に同軸に締結固定されている。内輪71(出力軸6)と外輪72の間に形成される軌道溝にはローラが転動可能な状態で挿入されている。出力側に開口している内輪71(出力軸6)と外輪72の間の隙間は、出力側オイルシール12によってシールされている。エンドプレート8は、内歯歯車2の入力側に位置し、内歯歯車2に締結固定されている。エンドプレート8の中心穴81を貫通して、入力軸5の入力側軸端部52が入力側に突出している。入力軸5の外周面とエンドプレート8の中心穴内周面との間の隙間は、入力側オイルシール13によってシールされている。
【0018】
仮固定用治具9は、出力軸6に対して出力側に配置されている。仮固定用治具9は、出力軸6の中心穴61に差し込み可能な大きさの円筒部91と、この円筒部91における出力側の端部から半径方向の外方に広がる円盤状のフランジ92とを備えている。フランジ92の外径は出力軸6の外径とほぼ同一である。フランジ92における出力軸6に面する端面は、内周側の部分が出力軸6の側に突出した段差端面93となっている。この段差端面93は、出力軸6の出力側の段差端面62と相補的な形状をしている。
【0019】
仮固定用治具9のフランジ外周縁部分には、仮固定ボルト10を取り付けるためのボルト穴94が形成されている。ボルト穴94は、円周方向に一定の角度間隔で配置され、フランジ外周縁部分を軸方向に貫通している。本例では、2か所にボルト穴94が形成されている。出力軸6の段差端面62の外周縁部には、ボルト穴94に対応する部位に、軸方向に延びるボルトねじ込み穴63が開口している。仮固定用治具9は、その出力側からボルト穴94を介してボルトねじ込み穴63にねじ込み固定した仮固定ボルト10によって、出力軸6に同軸に締結固定されている。
【0020】
仮固定用治具9の円筒部91の円形中心穴95は、出力側から、仮固定センターボルト11を挿入可能なボルト穴である。この円形中心穴95は、その軸方向の途中が小径の円形内周面部分とされて、出力側を向く円環状段差面96および入力側を向く円環状段差面97が形成されている。円環状段差面96には仮固定センターボルト11の頭部が係合可能である。また、円形中心穴95には、その入力側から、入力軸5の出力側軸端部53が同軸に挿入されている。この出力側軸端部53の中心穴部分は、仮固定センターボルト11をねじ込み固定可能なボルトねじ込み穴55となっている。仮固定用治具9は、その出力側から円形中心穴95を介してボルトねじ込み穴55にねじ込み固定した仮固定センターボルト11によって、入力軸5に同軸に締結される。
【0021】
ここで、入力軸5の出力側軸端部53の先端面54が仮固定用治具9の円形中心穴95の円環状段差面97(軸方向位置決め面)に当接することで、入力軸5の軸方向の位置が固定されている。また、入力軸5の出力側軸端部53の外周面56は、
図2(B)に示すように、円形外周面の直径方向の両側の部分が平面となるようにカットされたDカット形状をしている。仮固定用治具9の円形中心穴95の入力側の内周面98(回転方向位置決め面)は、入力軸5の外周面56と相補的なDカット形状の内周面であり、円形内周面の直径方向の両側の部分が内側に迫り出して平面となっている。これらによって構成される回り止め機構によって、入力軸5の回転方向の位置が固定されている。
【0022】
このように、仮固定用治具9を入力軸5および出力軸6に締結固定することで、出力軸6に取り付けた外歯歯車3に対する入力軸5に取り付けた波動発生器4の組み込み状態が保持され、波動発生器4による外歯歯車3と内歯歯車2とのかみ合い状態も保持される。よって、波動歯車装置1の輸送時などにおいて、これらの三部品の組付け状態が維持され、軸方向の位置ずれ、芯ずれ、倒れ等によって、入力側オイルシール13等の部品に過剰な負荷が掛かる等の弊害を回避できる。また、組付け状態が維持されるので、モータ等の取付け対象の装置への取付け作業において、部品の位置調整作業が不要なので、簡単に行うことができる。
【0023】
(治具取り外し手順)
図3(A)~(D)は、仮固定用治具9が取り付けられた状態で設置場所に搬入された波動歯車装置1を、取り付け対象の装置、例えば、モータに取り付ける際の仮固定用治具9の取り外し手順を示す説明図である。
【0024】
まず、
図3(A)に示すように、仮固定用治具9が取り付けられた状態の波動歯車装置1を、取付け対象のモータ100のモータハウジング101に取り付ける。波動歯車装置1の入力側端面を規定しているエンドプレート8を、モータハウジング101(モータ側取付けフランジ)に位置決めする。波動歯車装置1の装置ハウジングを構成している内歯歯車2、主軸受7の外輪72およびエンドプレート8を貫通して延びるボルト穴15に不図示の締結用ボルトを通して、モータハウジング101に波動歯車装置1を取り付ける。波動歯車装置1の入力軸5の入力側軸端部52の中心穴に、モータ軸102の軸先端部が同軸に挿入された状態になる。モータ軸102の軸先端部の先端面には、モータ軸102を波動歯車装置1の入力軸5に締結固定するための軸締結用センターボルト104をねじ込み可能なボルトねじ込み穴105が開口している。
【0025】
波動歯車装置1の出力側において、仮固定センターボルト11の頭部は、波動歯車装置1に出力側に取り付けた仮固定用治具9の円形中心穴95内において、出力側に露出している。
図3(B)に示すように、仮固定センターボルト11を外して、仮固定用治具9と入力軸5との締結固定を解除する。
【0026】
次に、仮固定センターボルト11に代えて、軸締結用センターボルト104を用いて、波動歯車装置1の入力軸5をモータ軸102に締結固定する。
図3(C)に示すように、波動歯車装置1の出力側において、軸締結用センターボルト104を、波動歯車装置1の出力側から、仮固定用治具9の円形中心穴95を介して、モータ軸102の軸先端部に形成されているボルトねじ込み穴105にねじ込む。波動歯車装置1の入力軸5がモータ軸102に同軸に締結固定される。この結果、波動歯車装置1は、仮固定用治具9によって三部品の組付け状態が維持されたまま、モータ100に取り付けられる。取付け作業において、外歯歯車3、波動発生器4の位置調整作業が不要である。
【0027】
この後は、
図3(D)に示すように、波動歯車装置1の出力側において、仮固定用治具9を出力軸6に締結固定している仮固定ボルト10を緩め、仮固定用治具9を出力軸6から出力側に取り外す。なお、波動歯車装置1の出力軸6の出力側の段差端面62には、Oリング溝66が形成されており、ここに、Oリング67が組み込まれる。Oリング67を挟み、出力軸6の出力側端面65には、不図示の負荷側部材が取り付けられる。
【0028】
以上説明したように、本例の波動歯車装置1は、モータ100に取り付けられるまで、仮固定用治具9によって、内歯歯車2、外歯歯車3および波動発生器4の三部品を含む構成部品の組み付け状態が保持される。よって、モータ100に波動歯車装置1を取り付ける際の三部品の位置調整が不要となり、取付け作業が簡単になる。
【0029】
波動歯車装置1には、外歯歯車3に対する波動発生器4の組付け位置を保持するための軸受機構等を組み込む必要がないので、入力軸5の低慣性化が容易なユニット構造が得られる。組み付け状態を保持するための仮固定用治具9は、波動歯車装置1をモータ100に取り付けた後には取り外される。よって、波動歯車装置1の設置スペースが少なくて済み、当該波動歯車装置1が取り付けられた装置全体の小型化、コンパクト化、軽量化に有利である。
【0030】
例えば、
図2(B)に示す波動発生器4のカム板41(ウエーブプラグ)が取り付けられている入力軸5において、その出力側に突出している出力側軸端部53を無くすことで入力軸5を一層、扁平、軽量(低慣性)にできる。この場合には、入力軸5の出力側端面に、所定深さのDカット形状の内周面を備えた凹部を形成する。仮固定用治具9の円筒部91を、この凹部に嵌め込み可能なDカット形状の外周面を備えた部分とすればよい。
【0031】
また、本例の波動歯車装置1において、入力軸5とモータ軸102とは、仮固定センターボルト11に代えて配置した軸締結用センターボルト104によって締結固定される。軸カップリング、スプライン軸等の軸継手機構が組み込まれている場合に比べて、波動歯車装置1の小型化、コンパクト化に有利である。
【0032】
さらに、波動歯車装置1をモータ100に取り付ける作業および仮固定用治具9を取り外す作業を、波動歯車装置1に対して同一の側(出力側)から行うことができる。よって、波動歯車装置1をモータ100に取り付ける作業が容易であり、また、ユーザーの側における波動歯車装置1の自動組み立てを容易に実現できる。
【0033】
これに加えて、本例の波動歯車装置1は、入力側オイルシール13および出力側オイルシール12を備えた密閉ユニットとして構成されている。取付け対象のモータ100の側に密閉用の部品(オイルシール等)を配置する必要がない。また、モータ軸102の側の軸締結構造に合わせて、波動歯車装置1の波動発生器4の入力軸5の側の構造を設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 波動歯車装置
1a 中心軸線
2 内歯歯車
3 外歯歯車
4 波動発生器
5 入力軸
6 出力軸
7 主軸受
8 エンドプレート
9 仮固定用治具
10 仮固定ボルト
11 仮固定センターボルト
12 出力側オイルシール
13 入力側オイルシール
15 ボルト穴
21 内歯
31 外歯
32 筒状胴部
33 ダイヤフラム
34 ボス
35 中心穴
41 カム板
43 波動発生器軸受
51 円盤状フランジ
52 入力側軸端部
53 出力側軸端部
54 先端面
55 ボルトねじ込み穴
56 外周面
61 中心穴
62 段差端面
63 ボルトねじ込み穴
65 出力側端面
66 リング溝
67 リング
71 内輪
72 外輪
81 中心穴
91 円筒部
92 フランジ
93 段差端面
94 ボルト穴
95 円形中心穴
96 円環状段差面
97 円環状段差面
98 内周面
100 モータ
101 モータハウジング
102 モータ軸
104 軸締結用センターボルト
105 ボルトねじ込み穴