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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002100
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20231228BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101091
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】辺見 森象
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AA02
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA07
2D003CA02
2D003DB04
2D015GA03
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】本開示は、複数の作業機械の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制可能な作業機械の制御システムを提供する。
【解決手段】作業機械の制御システムは、動作計画部121と、占有領域判定部220(図1)と、動作制御部125と、干渉予測部122と、目標位置再設定部123と、備える。動作計画部121は、作業機械の目標動作TMを計画する。占有領域判定部220は、共同作業領域に設定した複数の分割領域において作業機械の作業装置が位置している占有領域の有無を判定する。動作制御部125は、作業機械の作業装置が目標動作に追従するように各々の作業機械を動作させる。干渉予測部122は、目標動作TMで動作する作業機械の作業装置と占有領域との干渉の有無を予測する。目標位置再設定部123は、干渉が予測された場合に、目標位置を、占有領域を除外した再設定可能範囲に含まれる修正目標位置に再設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と姿勢検出装置と位置検出装置と制御装置とを備えた複数の作業機械の各々を制御して各々の前記作業機械の前記作業装置の可動範囲が重複する共同作業領域において複数の前記作業機械に共同作業をさせる作業機械の制御システムであって、
前記制御装置は、
各々の前記作業機械の前記作業装置の目標位置を含む各々の前記作業機械の目標動作を計画する動作計画部と、
各々の前記作業機械の前記作業装置が前記目標動作に追従するように各々の前記作業機械を動作させる動作制御部と、
前記目標動作で動作する各々の前記作業機械の前記作業装置と各々の前記作業機械の前記作業装置の位置情報に基いて判定された前記共同作業領域に設定した分割領域において少なくとも1台の前記作業機械の前記作業装置が位置している占有領域との干渉の有無を予測する干渉予測部と、
前記干渉予測部によって干渉が予測された場合に、前記作業装置と前記占有領域とが干渉する前記目標位置を、複数の前記分割領域から前記占有領域を除外した再設定可能範囲に含まれる修正目標位置に再設定する目標位置再設定部と、
を備えることを特徴とする作業機械の制御システム。
【請求項2】
前記動作計画部は、前記干渉予測部によって前記作業装置と前記占有領域との干渉が予測された前記作業機械に対し、前記作業装置が前記占有領域に干渉することなく前記修正目標位置に到達する前記目標動作を再設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項3】
前記目標位置再設定部は、前記占有領域の手前に前記目標動作の前記目標位置が存在する場合に、前記占有領域の手前の前記目標位置を前記修正目標位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項4】
前記目標位置再設定部は、前記共同作業領域において前記占有領域の手前に前記目標動作の前記目標位置が存在しない場合に、前記共同作業領域の外の前記再設定可能範囲に前記修正目標位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項5】
前記干渉予測部によって干渉が予測された前記作業装置の前記修正目標位置を前記目標位置再設定部が設定できなかった場合に、前記動作制御部は、前記干渉予測部によって干渉が予測された前記作業装置を備える前記作業機械の動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項6】
前記干渉予測部は、各々の前記作業機械の前記作業装置と前記占有領域との干渉の有無の予測結果を随時更新し、
前記目標位置再設定部は、前記干渉予測部の最新の予測結果に基いて前記修正目標位置を随時更新し、
前記動作制御部は、前記干渉予測部の最新の予測結果と最新の前記修正目標位置とに基いて各々の前記作業機械を動作させることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項7】
前記再設定可能範囲は、各々の前記作業機械が単独で前記作業装置による作業を行う単独作業領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から教示データにしたがって作業する複数のロボットが互いに干渉しないように各ロボットの教示データを作成する作業教示方法が知られている。下記特許文献1に記載された複数ロボットの作業教示方法は、次のような手順を含む(要約、請求項1等)。まず、他のロボットの存在を無視して作成したロボット単体の単体教示データを全てのロボットに関して入力する。
【0003】
次に、Kを1以上の整数とし、全ロボットの前記単体教示データの集合を単体教示データセットとする。このとき、その単体教示データセット内の作業点における動作命令と、作業点間の移動に関する動作命令のどちらか一方、あるいは両方の動作命令の実行開始順序を指定した動作命令開始スケジュールをK通り決定する。そして、K通りの前記動作命令開始スケジュールにしたがって前記単体教示データセットを修正し、修正教示データセットをK通り作成する。
【0004】
また、下記特許文献2は、ロボットと、そのロボットの動作を制御するコントローラと、を有するロボットシステムを開示している(第0026段落等)。コントローラは、動作モード記憶部と、動作モード切替部と、を有している。動作モード記憶部は、予め設定された第1条件を満たしたときにロボットの動作態様を通常から特別な動作態様に切り替わるようにロボットを制御する動作モードを複数記憶する。動作モード切替部は、動作モード記憶部に記憶された特定の動作モードが実行されているとき、その特定の動作モードの実行条件を満たした状態で、さらに、予め設定された第2条件を満たすと、動作モードを別の動作モードに切り替える。
【0005】
この従来のロボットシステムは、前記ロボット以外の移動体の位置を検知する移動体検知手段を有している(特許文献2、第0035段落等)。動作モード切替部は、複数の動作モードのうちの少なくとも1つが、ロボット周囲の所定エリア内に移動体を検知したことを第1条件としてロボットの動作態様を通常から通常よりも低出力で動作する特別な動作態様に切り替える第4動作モードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-200368号公報
【特許文献2】特開2014-176934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の作業教示方法によれば、ロボット間衝突回避が確実に保証される中間解およびスケジュール解を求めることができる(特許文献1、第0058段落等)。しかし、作業機械においては、作業負荷によって動作速度が変化するだけでなく、その作業負荷を正確に予測することが困難である。そのため、作業機械は、事前に計画したとおりの動作ができない場合が多く、複数の作業機械の作業時に衝突回避が困難になるおそれがある。
【0008】
上記従来のロボットシステムによれば、ロボットが低出力にて動作を再開することで、移動体に対する危険性が低減する(特許文献2、第0040段落等)。しかし、ロボットと比較して大型で大重量の作業機械においては、動作態様を通常から通常よりも低出力で動作する特別な動作態様に切り替えたとしても、安全性の面で改善の余地があり、作業効率が低下するおそれがある。
【0009】
本開示は、複数の作業機械の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制可能な作業機械の制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、作業装置と姿勢検出装置と位置検出装置と制御装置とを備えた複数の作業機械の各々を制御して各々の前記作業機械の前記作業装置の可動範囲が重複する共同作業領域において複数の前記作業機械に共同作業をさせる作業機械の制御システムであって、前記制御装置は、各々の前記作業機械の前記作業装置の目標位置を含む各々の前記作業機械の目標動作を計画する動作計画部と、各々の前記作業機械の前記作業装置が前記目標動作に追従するように各々の前記作業機械を動作させる動作制御部と、前記目標動作で動作する各々の前記作業機械の前記作業装置と各々の前記作業機械の前記作業装置の位置情報に基いて判定された前記共同作業領域に設定した分割領域において少なくとも1台の前記作業機械の前記作業装置が位置している占有領域との干渉の有無を予測する干渉予測部と、前記干渉予測部によって干渉が予測された場合に、前記作業装置と前記占有領域とが干渉する前記目標位置を、複数の前記分割領域から前記占有領域を除外した再設定可能範囲に含まれる修正目標位置に再設定する目標位置再設定部と、を備えることを特徴とする作業機械の制御システムである。
【0011】
本開示の別の一態様は、作業装置を備えた複数の作業機械の各々を制御して各々の前記作業機械の前記作業装置の可動範囲が重複する共同作業領域において複数の前記作業機械に共同作業をさせる作業機械の制御システムであって、各々の前記作業機械の前記作業装置の目標位置を含む各々の前記作業機械の目標動作を計画する動作計画部と、前記共同作業領域に設定した分割領域において少なくとも1台の前記作業機械の前記作業装置が位置している占有領域の有無を各々の前記作業機械の前記作業装置の位置情報に基いて判定する占有領域判定部と、各々の前記作業機械の前記作業装置が前記目標動作に追従するように各々の前記作業機械を動作させる動作制御部と、前記目標動作で動作する各々の前記作業機械の前記作業装置と前記占有領域との干渉の有無を予測する干渉予測部と、前記干渉予測部によって干渉が予測された場合に、前記作業装置と前記占有領域とが干渉する前記目標位置を、複数の前記分割領域から前記占有領域を除外した再設定可能範囲に含まれる修正目標位置に再設定する目標位置再設定部と、を備えることを特徴とする作業機械の制御システムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上記態様によれば、複数の作業機械の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制可能な作業機械の制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態1を概略的に示す構成図。
図2図1の制御システムの制御対象である作業機械の一例を示す斜視図。
図3図1の制御システムを構成する作業機械の制御装置の機能ブロック図。
図4図1の作業機械の制御システムの処理の一例を示すフロー図。
図5図1の制御システムの制御による複数の作業機械の共同作業を示す平面図。
図6】本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態2の処理を示すフロー図。
図7図6の制御システムの制御による複数の作業機械の共同作業を示す平面図。
図8図6の制御システムの制御による複数の作業機械の共同作業を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態を説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態1を概略的に示す構成図である。図2は、図1の作業機械の制御システムWMCSの制御対象である作業機械100の一例を、部分的に透視して示す斜視図である。なお、図1および図2では、同一の構成を有する複数の作業機械100を代表して、1台の作業機械100のみを示している。
【0016】
本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、作業装置110を備えた複数の作業機械100の各々を制御するシステムである。以下で詳述するが、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、各々の作業機械100の作業装置110の可動範囲が重複する共同作業領域CA(図5参照)において、複数の作業機械100に共同作業をさせるように構成されている。
【0017】
図1に示すように、作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、複数の作業機械100に搭載された制御装置120と、作業機械100の外部に設置されて制御装置120と情報通信可能に接続されるサーバ200と、によって構成されている。なお、作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、サーバ200を使用することなく、複数の作業機械100に搭載された制御装置120のみによって構成することも可能である。
【0018】
作業機械100は、図1に示すように、たとえば、無線通信装置101と、姿勢検出装置102と、位置検出装置103と、電磁比例弁104と、制御装置120と、を備えている。また、作業機械100は、図2に示すように、たとえば、作業装置110と、下部走行体130と、上部旋回体140と、を備えている。
【0019】
作業機械100は、たとえば、多関節型のフロント作業装置である作業装置110によって、掘削および放下(放土)作業、積込作業、破砕作業、選別作業、整地作業、または、法面整備作業などの作業を行う油圧ショベルである。なお、作業機械の制御システムWMCSの制御対象としての作業機械100は、油圧ショベルに限定されず、たとえば、ホイールローダ、双腕仕様機、道路機械、ブルドーザ、クレーンなど、任意の作業を行うための作業装置を備えた他の作業機械であってもよい。
【0020】
作業装置110は、たとえば、ブーム111と、アーム112と、バケット113とを備えている。ブーム111の基端部は、上部旋回体140の前部中央部に、上部旋回体140の幅方向に平行なブームピンを介して回動可能に支持されている。アーム112の基端部は、ブーム111の先端部に、上部旋回体140の幅方向に平行なアームピンを介して回動可能に支持されている。バケット113の一端は、アーム112の先端部に、上部旋回体140の幅方向に平行なバケットピンを介して回動可能に支持されている。
【0021】
また、作業装置110は、たとえば、ブームシリンダ114と、アームシリンダ115と、バケットシリンダ116と、を含む、複数の油圧シリンダを備えている。ブームシリンダ114のシリンダチューブの基端部とピストンロッドの先端部は、それぞれ、上部旋回体140の前部中央部とブーム111の長手方向の中間部に回動可能に取り付けられている。
【0022】
アームシリンダ115のシリンダチューブの基端部とピストンロッドの先端部は、それぞれ、ブーム111の長手方向の中間部とアーム112の基端部に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ116のシリンダチューブの基端部は、アーム112の基端部に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ116のピストンロッドの先端部は、リンク機構を介してバケット113の一端に取り付けられている。
【0023】
このような構成により、ブームシリンダ114のピストンロッドが伸縮すると、ブーム111がブームピンを中心に上下に回動する。また、アームシリンダ115のピストンロッドが伸縮すると、アーム112がアームピンを中心に上下に回動する。また、バケットシリンダ116のピストンロッドが伸縮すると、バケット113がバケットピンを中心に上下に回動する。
【0024】
下部走行体130は、たとえば、左右一対の履帯131と、左右一対の油圧モータ132とを備えている。下部走行体130は、各々の油圧モータ132の回転により各々の履帯131を回転させることで、作業機械100を走行させる。
【0025】
上部旋回体140は、下部走行体130の上に旋回可能に取り付けられ、たとえば、図2に示す旋回モータ141、原動機142、および油圧ポンプ143などの他、図1に示す無線通信装置101、位置検出装置103、および制御装置120などを収容している。旋回モータ141は、たとえば、油圧モータであり、下部走行体130の上部および上部旋回体140の下部に取り付けられ、上部旋回体140を、作業機械100の高さ方向に平行な回転軸を中心に、下部走行体130に対して旋回させる。
【0026】
原動機142は、たとえば、内燃エンジンであり、出力軸が油圧ポンプ143の入力軸に連結されている。油圧ポンプ143は、原動機142によって入力軸が回転されて駆動され、作動油を電磁比例弁104へ圧送する。電磁比例弁104は、たとえば、制御装置120から入力される制御信号CSに従って、油圧ポンプ143から圧送された作動油を、ブームシリンダ114、アームシリンダ115、バケットシリンダ116、油圧モータ132、および旋回モータ141へ分配する。
【0027】
これにより、制御装置120は、ブームシリンダ114、アームシリンダ115、およびバケットシリンダ116を伸縮させて作業装置110を作動させ、前述の掘削および放下作業などの作業を自動的に行うことができる。また、制御装置120は、下部走行体130の油圧モータ132を回転または停止させ、作業機械100を自動的に走行または停止させることができ、旋回モータ141を回転または停止させ、上部旋回体140を自動的に旋回または停止させることができる。
【0028】
図2では図示を省略するが、図1に示す無線通信装置101は、たとえば、コントロールエリアネットワーク(CAN)やローカルエリアネットワーク(LAN)などの車載ネットワークを介して、制御装置120と情報通信可能に接続されている。また、無線通信装置101は、たとえば、無線通信回線を介して、ネットワーク上のサーバ200や、携帯情報端末(PDA)310および外部サーバ320などの外部システム300と情報通信可能に接続される。
【0029】
また、図2では図示を省略するが、図1に示す姿勢検出装置102は、たとえば、ブーム111、アーム112、およびバケット113のそれぞれの回転角度または姿勢を検出する角度センサまたは姿勢センサを含んでいる。また、姿勢検出装置102は、たとえば、水平面などの基準面に対する上部旋回体140の傾斜角を検出する傾斜角センサを含んでいる。姿勢検出装置102は、検出した情報を、たとえば、姿勢情報AIとして制御装置120へ出力する。
【0030】
また、図2では図示を省略するが、図1に示す位置検出装置103は、たとえば、全球衛星測位システム(GNSS)のアンテナと受信機によって構成され、上部旋回体140に搭載されている。位置検出装置103は、たとえば、緯度、経度、および高度、ならびに方位などを含む作業機械100の位置情報LIを検出して制御装置120へ出力する。
【0031】
図1に示すように、作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、外部システム300と情報通信可能に接続されている。より詳細には、作業機械の制御システムWMCSを構成する作業機械100の制御装置120は、たとえば、無線通信装置101、無線通信回線およびネットワークを介して、外部システム300を構成するPDA310および外部サーバ320に接続されている。
【0032】
同様に、作業機械の制御システムWMCSを構成するサーバ200は、たとえば、無線通信回線やネットワークを介して、外部システム300を構成するPDA310および外部サーバ320に接続されている。なお、外部システム300は、PDA310と外部サーバ320のうち、いずれか一方によって構成されていてもよい。また、作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、外部システム300を構成の一部として含んでいてもよい。
【0033】
サーバ200は、たとえば、ネットワークに接続されたコンピュータである。サーバ200は、たとえば、中央処理装置(CPU)と、RAMおよびROMなどのメモリと、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置と、その記憶装置に記憶されたプログラムおよびデータと、入出力部などを備えている。また、サーバ200は、たとえば、後述する領域設定部210と、占有領域判定部220とを有している。これらのサーバ200の各部は、たとえば、メモリや記憶装置に記憶されたプログラムをCPUによって実行することによって実現されるサーバ200の各機能を表している。
【0034】
図3は、図1の作業機械の制御システムWMCSを構成する作業機械100の制御装置120の構成を示す機能ブロック図である。制御装置120は、たとえば、CPU、メモリ、タイマ、および入出力部を備えた一つ以上のマイクロコントローラによって構成することができる。制御装置120は、たとえば、動作計画部121と、干渉予測部122と、目標位置再設定部123と、動作制御部125と、を有している。
【0035】
また、制御装置120は、たとえば、位置姿勢演算部124と、アクチュエータ制御部126と、電磁比例弁制御部127と、を有している。図3に示す制御装置120の各部は、たとえば、制御装置120のCPUにより、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって実現される制御装置120の各機能を表している。なお、作業機械の制御システムWMCSを複数の作業機械100の制御装置120のみで構成する場合には、各々の作業機械100制御装置120は、図3に示す各部に加えて、図1に示すサーバ200の領域設定部210と、占有領域判定部220とを有してもよい。
【0036】
以下、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSの動作を説明する。図4は、図1の作業機械の制御システムWMCSの処理の一例を示すフロー図である。図5は、図1の作業機械の制御システムWMCSの制御による複数の作業機械100の共同作業を示す平面図である。
【0037】
作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、サーバ200が外部システム300からタスク情報TIを受信すると、図4に示す処理フローP100を開始する。より具体的には、たとえば、複数の作業機械100を管理するユーザが、PDA310にタスク情報TIを入力して送信すると、各々の作業機械100の制御装置120およびサーバ200が、PDA310から送信されたタスク情報TIを受信する。
【0038】
または、たとえば、上記ユーザが所有する外部サーバ320にインストールされた施工管理アプリケーションからタスク情報TIが送信され、各々の作業機械100の制御装置120およびサーバ200が外部サーバ320から送信されたタスク情報TIを受信する。タスク情報TIは、たとえば、複数の作業機械100に実行させる共同作業の種類と、各々の作業機械100の作業装置110の目標位置TPに関連する再設定可能範囲RAとを含む。
【0039】
より詳細には、タスク情報TIに含まれる共同作業の種類は、たとえば、作業機械100が実施可能な掘削および放下作業、整地作業、積込作業、法面整備作業などの作業を含む。図5に示す例において、二台の作業機械100による共同作業の種類は、掘削および放下作業である。より具体的には、図5に示す共同作業は、たとえば、一台の作業機械100Aが掘削範囲EAで掘削した土砂などの対象物を放下範囲DAに放下し、もう一台の作業機械100Bが放下範囲DAに積み上げられた対象物を掘削して図示を省略する別の放下範囲DAに放下する、対象物の受け渡し作業である。
【0040】
また、タスク情報TIに含まれる作業装置110の目標位置TPの再設定可能範囲RAは、各々の作業機械100の作業装置110の目標位置TPを修正した修正目標位置CTPを再設定することが可能な範囲である。図5に示す例において、一方の作業機械100Aの再設定可能範囲RAは、一方の作業機械100Aが単独で作業装置110による作業を行う単独作業領域としての掘削範囲EAと、各々の作業機械100A,100Bが作業を行う放下範囲DAとを含む。
【0041】
次に、作業機械の制御システムWMCSは、図4に示す共同作業領域CAおよび分割領域SAを設定する処理P101を実行する。より具体的には、図1に示すサーバ200が外部システム300からタスク情報TIを受信すると、領域設定部210は、タスク情報TIに基いて、複数の作業機械100が接触する可能性のある範囲の全体を含むように、共同作業領域CAを設定する。さらに、領域設定部210は、共同作業領域CAを分割した複数の分割領域SAを設定する。
【0042】
図5に示す例において、二台の作業機械100が接触する可能性のある範囲は、二台の作業機械100がそれぞれ作業を行う放下範囲DAである。領域設定部210は、たとえば、二台の作業機械100の幅方向を長手方向とする長方形の放下範囲DAの外側に外縁を有する長方形の共同作業領域CAを設定する。さらに、図5に示す例において、領域設定部210は、長方形の共同作業領域CAを長手方向に5等分するとともに短手方向に2等分して、合計10個の分割領域SAを設定している。
【0043】
分割領域SAの数、すなわち共同作業領域CAの分割数は、たとえば、タスク情報TIに含まれている。この場合、領域設定部210は、共同作業領域CAの分割数に応じて分割領域SAを設定する。また、領域設定部210は、たとえば、作業機械100のバケット113の寸法に応じて分割領域SAの縦横の寸法を決定し、分割領域SAの縦横の寸法に基いて共同作業領域CAの分割数を決定してもよい。たとえば、分割領域SAの縦横の寸法は、バケット113の姿勢を変化させたときに最大となるバケット113の縦横の寸法に等しくしてもよい。
【0044】
また、分割領域SAの縦横の寸法は、バケット113の姿勢を変化させたときに最小となるバケット113の縦横の寸法と等しいか、その縦横の寸法より小さくてもよい。分割領域SAの縦横の寸法の下限値、または、共同作業領域CAの分割数の上限値は、たとえば、領域設定部210による処理負荷が過大にならない範囲で決定することができる。また、図5に示す例において、領域設定部210は、共同作業領域CAを高さ方向において複数の分割領域SAに分割していないが、共同作業領域CAを高さ方向において複数の分割領域SAに分割してもよい。
【0045】
次に、作業機械の制御システムWMCSは、各々の作業機械100の位置姿勢情報PIを取得する処理P102を実行する。この処理P102において、サーバ200の占有領域判定部220は、領域設定部210から複数の分割領域SAの情報を取得するとともに、各々の作業機械100から位置姿勢情報PIを取得する。
【0046】
より詳細には、図3に示すように、各々の作業機械100の制御装置120において、位置姿勢演算部124は、姿勢検出装置102と位置検出装置103から、それぞれ、作業機械100および作業装置110の姿勢情報AIと、作業機械100の位置情報LIとを取得する。位置姿勢演算部124は、取得した姿勢情報AIと位置情報LIに基いて位置姿勢情報PIを生成し、生成した位置姿勢情報PIを動作制御部125へ出力するとともに、無線通信装置101を介してサーバ200へ送信する。位置姿勢情報PIは、たとえば、作業機械100の位置座標、作業装置110の姿勢、およびバケット113の爪先の位置を含む。
【0047】
サーバ200の占有領域判定部220は、各々の作業機械100の制御装置120から送信されてサーバ200によって受信された位置姿勢情報PIを取得する。占有領域判定部220は、領域設定部210が共同作業領域CAに設定した分割領域SAにおいて、少なくとも1台の作業機械100の作業装置110が位置している占有領域OAの有無を、各々の作業機械100の作業装置110の位置情報を含む位置姿勢情報PIに基いて判定する。
【0048】
この占有領域判定部220による占有領域OAの有無の判定は、各々の作業機械100から随時送信される位置姿勢情報PIに基いて、たとえば、100msec程度の周期で、随時更新される。なお、占有領域判定部220は、たとえば、作業機械100の作業装置110の一部、下部走行体130の一部、または上部旋回体140の一部が含まれる分割領域SAを占有領域OAと判定してもよい。占有領域判定部220は、たとえば、共同作業領域CA、分割領域SA、および占有領域OAの判定結果を含む領域情報RIを、各々の作業機械100へ送信する。
【0049】
図1に示すように、各々の作業機械100の制御装置120は、サーバ200の占有領域判定部220から送信された領域情報RIを、無線通信装置101を介して受信する。図3に示すように、制御装置120の干渉予測部122は、無線通信装置101を介して受信した領域情報RIを取得する。この領域情報RIは、前述のように、たとえば、図5に示す共同作業領域CA、分割領域SA、および占有領域OAの情報を含んでいる。
【0050】
なお、作業機械の制御システムWMCSがサーバ200を有しない場合、各々の制御装置120の占有領域判定部が、各々の作業機械100の周囲の物体の位置情報を検出可能な外界センサの検出結果に基いて、占有領域OAの有無を判定することも可能である。
【0051】
次に、作業機械の制御システムWMCSは、作業機械100の目標動作を取得する処理P103を実行する。この処理P103において、制御装置120の干渉予測部122は、動作計画部121によって計画された作業機械100の目標動作TMを取得する。
【0052】
より具体的には、図3に示すように、動作計画部121は、無線通信装置101を介して共同作業の種類および再設定可能範囲RAを含むタスク情報TIを取得する。動作計画部121は、取得したタスク情報TIに基いて、各々の作業機械100の目標動作TMを計画して、干渉予測部122および目標位置再設定部123へ出力する。
【0053】
目標動作TMは、たとえば、各々の作業機械100の作業装置110の目標位置を含む。より詳細には、目標動作TMは、たとえば、作業の開始から終了までの各時刻における作業機械100の目標動作TMと、作業装置110の目標姿勢と、バケット113の爪先の目標軌道を含む。干渉予測部122は、動作計画部121から目標動作TMを取得する。
【0054】
次に、作業機械の制御システムWMCSは、作業機械100と占有領域OAとの干渉の有無を判定する処理P104を実行する。この処理P104において、図3に示すように、制御装置120の干渉予測部122は、作業機械100の目標動作TMと、占有領域OAを含む領域情報RIとに基いて、目標動作TMで動作する各々の作業機械100の作業装置110と占有領域OAとの干渉の有無を予測する。
【0055】
図5に示す例において、一方の作業機械100Aが掘削範囲EAで行う掘削作業の目標動作TMは、放下範囲DAにおいて他の作業機械100Bの作業装置110が位置している占有領域OAに干渉しない。そのため、作業機械100Aに搭載された制御装置120の干渉予測部122は、作業機械100Aが掘削範囲EAで掘削作業を行う場合、処理P104において、作業機械100Aの作業装置110と占有領域OAとが干渉しないこと(NO)を判定し、判定結果DRを目標位置再設定部123へ出力する。この場合、作業機械100Bに搭載された制御装置120の干渉予測部122も同様に、処理P104において、作業機械100Bの作業装置110と作業機械100Aの占有領域(掘削範囲EA)とが干渉しないこと(NO)を判定し、判定結果DRを目標位置再設定部123へ出力する。
【0056】
この場合、作業機械の制御システムWMCSは、図4に示すように、次の処理P105で作業機械100の自動制御を実行する。この処理P105において、制御装置120の目標位置再設定部123は、干渉予測部122から入力された判定結果DRに基いて、動作計画部121によって計画された目標動作TMをそのまま動作制御部125へ出力する。作業機械100Aの動作制御部125は、たとえば、目標動作TMに応じた動作信号MSを出力して、作業機械100Aの作業装置110が掘削範囲EAにおける掘削作業の目標動作TMに追従するように作業機械100Aを動作させる。作業機械100Bの動作制御部125も同様に、目標動作TMに応じた動作信号MSを出力して、作業機械100Bの作業装置110が放下範囲DAに積み上げられた対象物を掘削して別の放下範囲に放下する作業の目標動作TMに追従するように作業機械100Bを動作させる。
【0057】
より具体的には、動作制御部125から出力された動作信号MSは、たとえば、ブームシリンダ114、アームシリンダ115、バケットシリンダ116、油圧モータ132、および旋回モータ141の速度指令を含み、アクチュエータ制御部126へ入力される。アクチュエータ制御部126は、入力された動作信号MSに基く目標パイロット圧PPを演算して電磁比例弁制御部127へ出力する。電磁比例弁制御部127は、アクチュエータ制御部126から入力された目標パイロット圧PPに基く制御信号CSを演算して電磁比例弁104へ出力する。
【0058】
これにより、制御装置120によって作業機械100Aのブームシリンダ114、アームシリンダ115、バケットシリンダ116、油圧モータ132、および旋回モータ141が制御され、掘削範囲EAにおいて作業機械100Aが目標動作TMに従って自動掘削作業を実行する。その後、作業機械の制御システムWMCSは、図4に示す処理フローP100を終了し、所定の周期で処理フローP100を繰り返す。
【0059】
その後、作業機械100Aによる掘削範囲EAでの掘削作業と、作業機械100Bによる掘削および放下作業が終了すると、図3に示す作業機械100Aの動作計画部121は、作業機械100Aによる放下範囲DAでの放下作業の目標動作TMを計画して、干渉予測部122および目標位置再設定部123へ出力する。同様に、作業機械100Bの動作計画部121は、作業機械100Bによる放下範囲DAでの掘削作業と別の放下範囲での放下作業の目標動作TMを計画して、干渉予測部122および目標位置再設定部123へ出力する。図5に示す例において、作業機械100Aの放下作業の目標動作TMは、上部旋回体140の旋回動作を含み、作業装置110の目標位置TPが占有領域OAに含まれている。
【0060】
この場合、図4に示す処理P104において、干渉予測部122は、動作計画部121から取得した目標動作TMと、無線通信装置101を介して占有領域判定部220から取得した領域情報RIとに基いて、作業機械100Aと占有領域OAとの干渉があること(YES)を判定する。すると、作業機械の制御システムWMCSは、修正目標位置を再設定する処理P106を実行する。
【0061】
この処理P106において、目標位置再設定部123は、図5に示すように、作業機械100Aの作業装置110と占有領域OAとが干渉する目標位置TPを、複数の分割領域SAから占有領域OAを除外した再設定可能範囲RAに含まれる修正目標位置CTPに再設定する。より詳細には、目標位置再設定部123は、図5に示すように、たとえば、占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在する場合に、占有領域OAの手前の目標位置TPを修正目標位置CTPとして設定する。この場合、目標位置再設定部123は、たとえば、占有領域OAの直前の目標位置TPを修正目標位置CTPとして設定する。
【0062】
なお、占有領域OAの奥に目標動作TMの目標位置TPが存在し、占有領域OAの奥の目標位置TPが修正目標位置CTPに設定された場合、図3に示す作業機械100Aの動作計画部121は、修正目標動作CTMを再設定してもよい。この場合、作業機械100Aの動作計画部121は、たとえば、干渉予測部122によって作業装置110と占有領域OAとの干渉が予測された作業機械100Aに対し、作業装置110が占有領域OAに干渉することなく修正目標位置CTPに到達する修正目標動作CTMを再設定する。より具体的には、動作計画部121は、たとえば、図5に示す作業機械100Aの上部旋回体140の旋回を、左回転ではなく、右回転とする目標動作TMを再設定する。
【0063】
その後、作業機械の制御システムWMCSは、処理P105において、作業機械100の自動制御を実行する。この処理P105において、目標位置再設定部123は、動作計画部121から入力された目標動作TMと、干渉予測部122から入力された判定結果DRに基いて、修正目標位置CTPを含む修正目標動作CTMを演算して動作制御部125へ出力する。
【0064】
その結果、動作制御部125は、修正目標動作CTMに応じた動作信号MSをアクチュエータ制御部126へ出力する。アクチュエータ制御部126は、動作制御部125から入力された動作信号MSに基く目標パイロット圧PPを電磁比例弁制御部127へ出力する。電磁比例弁制御部127は、アクチュエータ制御部126から入力された目標パイロット圧PPに基く制御信号CSを電磁比例弁104へ出力する。
【0065】
これにより、制御装置120によって作業機械100Aのブームシリンダ114、アームシリンダ115、バケットシリンダ116、油圧モータ132、および旋回モータ141が制御される。その結果、作業機械100Aの上部旋回体140および作業装置110が修正目標動作CTMに従って旋回し、作業装置110が占有領域OAの手前の修正目標位置CTPで放下作業を行う。したがって、作業装置110と占有領域OAとの干渉が回避される。
【0066】
以上のように、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、作業装置110と姿勢検出装置102と位置検出装置103と制御装置120とを備えた複数の作業機械100の各々を制御して各々の作業機械100の作業装置110の可動範囲が重複する共同作業領域CAにおいて複数の作業機械100に共同作業をさせる作業機械の制御システムWMCSである。制御装置120は、動作計画部121と、動作制御部125と、干渉予測部122と、目標位置再設定部123と、を備えている。動作計画部121は、各々の作業機械100の作業装置110の目標位置TPを含む各々の作業機械100の目標動作TMを計画する。動作制御部125は、各々の作業機械100の作業装置110が目標動作TMに追従するように各々の作業機械100を動作させる。干渉予測部122は、目標動作TMで動作する各々の作業機械100の作業装置110と各々の作業機械100の作業装置110の位置情報PIに基いて判定された共同作業領域CAに設定した分割領域SAにおいて少なくとも1台の作業機械100の作業装置110が位置している占有領域OAとの干渉の有無を予測する。目標位置再設定部123は、干渉予測部122によって干渉が予測された場合に、作業装置110と占有領域OAとが干渉する目標位置TPを、複数の分割領域SAから占有領域OAを除外した再設定可能範囲RAに含まれる修正目標位置CTPに再設定する。
【0067】
換言すると、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、作業装置110を備えた複数の作業機械100の各々を制御して、各々の作業機械100の作業装置110の可動範囲が重複する共同作業領域CAにおいて複数の作業機械100に共同作業をさせるシステムである。作業機械の制御システムWMCSは、動作計画部121と、占有領域判定部220と、動作制御部125と、干渉予測部122と、目標位置再設定部123とを備える。動作計画部121は、各々の作業機械100の作業装置110の目標位置TPを含む各々の作業機械100の目標動作TMを計画する。占有領域判定部220は、共同作業領域CAに設定した分割領域SAにおいて、少なくとも1台の作業機械100の作業装置110が位置している占有領域OAの有無を、各々の作業機械100の作業装置110の位置情報を含む位置姿勢情報PIに基いて判定する。動作制御部125は、各々の作業機械100の作業装置110が目標動作TMに追従するように各々の作業機械100を動作させる。干渉予測部122は、目標動作TMで動作する各々の作業機械100の作業装置110と占有領域OAとの干渉の有無を予測する。目標位置再設定部123は、干渉予測部122によって干渉が予測された場合に、作業装置110と占有領域OAとが干渉する目標位置TPを、複数の分割領域SAから占有領域OAを除外した再設定可能範囲RAに含まれる修正目標位置CTPに再設定する。
【0068】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、各々の作業機械100の作業装置110と占有領域OAとの干渉の有無を予測し、干渉が予測された作業機械100の目標位置TPを、占有領域OAを除外した再設定可能範囲RA内の修正目標位置CTPに再設定することができる。したがって、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、作業機械100同士が接触する可能性のある共同作業領域CAにおいて、作業負荷によって動作速度が変化し、かつ、作業負荷の正確な予測が困難な作業機械100間の接触を回避しつつ、複数の作業機械100に共同作業を行わせることができる。また、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、占有領域OAとの干渉が予測された目標位置TPが占有領域OAを除く再設定可能範囲RAの修正目標位置CTPに再設定するだけで、作業機械100を低出力で動作させたり停止させたりすることがない。したがって、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、作業機械100の作業効率の低下を抑制することができる。
【0069】
また、前述のように、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、動作計画部121は、次のような動作することが可能である。すなわち、動作計画部121は、干渉予測部122によって作業装置110と占有領域OAとの干渉が予測された作業機械100に対し、作業装置110が占有領域OAに干渉することなく、修正目標位置CTPに到達する目標動作TMを再設定する。
【0070】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSの動作計画部121は、次のように動作することができる。すなわち、動作計画部121は、図5に示す作業機械100Aの修正目標位置CTPに対して二つの占有領域OAを挟んで反対側の分割領域SAに修正目標位置CTPが再設定された場合に、占有領域OAに干渉しない右回りの修正目標動作CTMを生成することができる。これにより、作業機械100間の接触をより確実に回避することが可能になる。
【0071】
また、前述のように、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、目標位置再設定部123は、占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在する場合に、占有領域OAの手前の目標位置TPを修正目標位置CTPとして設定する。
【0072】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、作業機械100の目標動作TMの変更を最小限に留めた修正目標動作CTMに従って作業機械100Aを動作させることができ、作業機械100Aの作業効率の低下を抑制することができる。また、目標位置再設定部123が占有領域OAの直前の目標位置TPを修正目標位置CTPとして設定する場合には、作業機械100Aの作業効率の低下をより確実に抑制することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の作業機械100の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制可能な作業機械の制御システムWMCSを提供することができる。
【0074】
[実施形態2]
以下、前述の実施形態1の図1から図3および図5を援用し、図6から図8を参照して、本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態2を説明する。なお、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、前述の実施形態1と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
図6は、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSの処理の一例を示すフロー図である。図7および図8は、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSの制御による複数の作業機械100の共同作業を示す平面図である。図7および図8に示す共同作業は、たとえば、一台の作業機械100Aと他の二台の作業機械100B,100Cとの間の対象物の受け渡し作業である。
【0076】
より具体的には、図7および図8に示す例では、一台の作業機械100Aが掘削範囲EAで掘削した土砂などの対象物を放下範囲DAに放下し、他の二台の作業機械100B,100Cが放下範囲DAに積み上げられた対象物を掘削して、図示を省略する別の放下範囲DAに放下する。また、図8では、図7に示す左下の作業機械100Bの上部旋回体140が旋回して作業装置110の位置が変化している。
【0077】
本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、たとえば、前述の実施形態1の作業機械の制御システムWMCSと同様に、サーバ200が外部システム300からタスク情報TIを受信すると、図6に示す処理フローP200を開始する。本実施形態の作業機械の制御システムWMCSの処理P201から処理P203までは、前述の実施形態1の作業機械の制御システムWMCSの処理P101から処理P103までと同様である。
【0078】
処理P204において、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSは、前述の実施形態1の作業機械の制御システムWMCSと同様に、作業機械100と占有領域OAとの干渉の有無を判定する。図8に示す例において、作業機械100Aの目標動作TMの目標位置TPは、共同作業領域CAの複数の分割領域SAのうち、作業機械100Cの作業装置110が位置している占有領域OAに干渉しない。
【0079】
そのため、作業機械100Aが目標動作TMで掘削した対象物の放下作業を行う場合、作業機械100Aに搭載された制御装置120の干渉予測部122は、処理P204において、作業機械100Aの作業装置110と占有領域OAとが干渉しない(NO)ことを判定し、判定結果DRを目標位置再設定部123へ出力する。この場合、作業機械の制御システムWMCSは、図6に示すように、次の処理P205で作業機械100の自動制御を実行する。
【0080】
この処理P205において、制御装置120の目標位置再設定部123は、干渉予測部122から入力された判定結果DRに基いて、動作計画部121によって計画された目標動作TMをそのまま動作制御部125へ出力する。動作制御部125は、たとえば、目標動作TMに応じた動作信号MSを出力して作業機械100Aを動作させ、上部旋回体140を旋回させて作業装置110を共同作業領域CAである放下範囲DAの目標位置TPに移動させる目標動作TMに追従するように移動させる。
【0081】
その後、作業機械の制御システムWMCSは、図6に示す処理フローP200を終了させて所定の周期で繰り返す。そのため、占有領域判定部220は、処理P202および処理P203において、各々の作業機械100の位置に基いて占有領域OAを随時更新する。また、干渉予測部122は、処理P204において、各々の作業機械100の前記作業装置と占有領域OAとの干渉の有無の予測結果を随時更新する。
【0082】
そのため、図7に示すように、作業機械100Bの作業装置110が共同作業領域CAに位置する場合、作業機械100Aの制御装置120の干渉予測部122は、処理P204において、作業装置110と占有領域OAとの干渉あり(YES)と判定する。この場合、作業機械の制御システムWMCSは、共同作業領域CAにおいて占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在するか否かを判定する処理P206を実行する。
【0083】
この処理P206において、たとえば、図5に示す例のように、目標位置再設定部123が、共同作業領域CAにおいて占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在すること(YES)を判定したとする。この場合、目標位置再設定部123は、図5に示す例と同様に、共同作業領域CAにおいて占有領域OAの手前の目標位置TPに修正目標位置CTPを再設定する処理P207を実行する。
【0084】
その後、作業機械の制御システムWMCSは、次の処理P205で作業機械100の自動制御を実行する。この場合、図5に示す例と同様に、作業機械100Aの作業装置110は、共同作業領域CAにおいて占有領域OAの手前の目標位置TPまで移動する。その結果、共同作業領域CAにおける作業機械100間の接触を回避しつつ、作業効率の低下を抑制することができる。
【0085】
一方、図7に示す例では、共同作業領域CAにおいて、作業機械100Aの目標動作TMの最後の目標位置TPの手前に占有領域OAが存在し、その占有領域OAの手前に作業機械100Bが占有していない分割領域SAが存在しない。この場合、作業機械100Aに搭載された制御装置120の目標位置再設定部123は、前述の処理P206において、占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在しないこと(NO)を判定する。
【0086】
この場合、作業機械の制御システムWMCSは、再設定可能範囲RAに目標動作TMの修正目標位置CTPを設定することが可能か否かを判定する処理P208を実行する。図7に示すように、作業機械100Aの目標動作TMは、再設定可能範囲RAである掘削範囲EAに含まれる目標位置TPを有している。この場合、目標位置再設定部123は、処理P208において、再設定可能範囲RAに修正目標位置CTPを設定可能であること(YES)を判定する。
【0087】
その後、作業機械の制御システムWMCSは、再設定可能範囲RAに修正目標位置CTPを設定する処理P209を実行する。この処理P209において、目標位置再設定部123は、掘削範囲EAに含まれる作業機械100Aの目標動作TMの目標位置TPのうち、目標動作TMの最後の目標位置TPに最も近い目標位置TPを、修正目標位置CTPに設定する。
【0088】
その後、作業機械の制御システムWMCSは、次の処理P205で作業機械100の自動制御を実行する。この場合、図7に示すように、作業機械100Aの作業装置110は、掘削範囲EAにおいて、目標動作TMの最後の目標位置TPに最も近い修正目標位置CTPまで移動する。その結果、共同作業領域CAにおける作業機械100間の接触を回避しつつ、作業効率の低下を抑制することができる。
【0089】
一方、作業機械100Aの作業装置110が、図7に示す掘削範囲EAの修正目標位置CTPに移動した後は、目標位置再設定部123は、処理P208において、再設定可能範囲RAに新たな修正目標位置CTPを設定不能であること(NO)を判定する。この場合、作業機械の制御システムWMCSは、対象の作業機械100Aの動作を停止する処理P210を実行する。
【0090】
この処理P210において、動作制御部125は、干渉予測部122によって干渉が予測された作業装置110を備える作業機械100Aの動作を停止させる。その後、作業機械の制御システムWMCSは、図6に示す処理P202以降の処理を繰り返す。その結果、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、干渉予測部122は、処理P204において、各々の作業機械100の作業装置110と占有領域OAとの干渉の有無の予測結果を随時更新する。
【0091】
また、目標位置再設定部123は、処理P207および処理P209において、干渉予測部122の最新の予測結果に基いて修正目標位置CTPを随時更新する。そして、動作制御部125は、処理P205において、干渉予測部122の最新の予測結果と最新の修正目標位置CTPとに基いて各々の作業機械100を動作させる。
【0092】
以上のように、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、目標位置再設定部123は、共同作業領域CAにおいて占有領域OAの手前に目標動作TMの目標位置TPが存在しない場合に、共同作業領域CAの外の再設定可能範囲RAである掘削範囲EAに修正目標位置CTPを設定する。
【0093】
このような構成により、図7に示す状態から図8に示す状態に変化した場合に、作業機械100Aの作業装置110を、掘削範囲EAにおいて目標動作TMの最後の目標位置TPに最も近い修正目標位置CTPから、目標動作TMの最後の目標位置TPへ移動させることができる。したがって、共同作業領域CAにおける作業機械100間の接触を回避しつつ、作業効率の低下を抑制することができる。なお、目標位置再設定部123は、再設定可能範囲RAにおいて、目標動作TMに含まれる目標位置TP以外の位置に修正目標位置CTPを設定してもよい。
【0094】
また、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、干渉予測部122によって干渉が予測された作業機械100の修正目標位置CTPを目標位置再設定部123が設定できなかった場合に、動作制御部125は、干渉予測部122によって干渉が予測された作業装置110を備える作業機械100Aの動作を停止させる。これにより、作業機械100間の接触をより確実に防止して、複数の作業機械100による共同作業の安全性を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、干渉予測部122は、各々の作業機械100の作業装置110と占有領域OAとの干渉の有無の予測結果を随時更新する。また、目標位置再設定部123は、干渉予測部122の最新の予測結果に基いて修正目標位置CTPを随時更新する。また、動作制御部125は、干渉予測部122の最新の予測結果と最新の修正目標位置CTPとに基いて各々の作業機械100を動作させる。
【0096】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、複数の作業機械100による共同作業が、たとえば、図7に示す状態から図8に示す状態に変化したときに、その変化に対応して作業機械100Aを目標動作TMに沿って動作させることが可能になる。したがって、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、複数の作業機械100の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSにおいて、再設定可能範囲RAは、各々の作業機械100が単独で作業装置110による作業を行う単独作業領域としての掘削範囲EAを含む。
【0098】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、共同作業領域CAに修正目標位置CTPが設定できない場合に掘削範囲EAに修正目標位置CTPを設定することが可能になる。したがって、本実施形態の作業機械の制御システムWMCSによれば、複数の作業機械100の作業時における衝突を回避しつつ作業効率の低下を抑制することができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、前述の実施形態1と同様に複数の作業機械100の作業時における衝突を回避しつつ、作業効率の低下を抑制可能な作業機械の制御システムWMCSを提供することができる。
【0100】
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械の制御システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
100 作業機械
100A 作業機械
100B 作業機械
100C 作業機械
102 姿勢検出装置
103 位置検出装置
110 作業装置
120 制御装置
121 動作計画部
122 干渉予測部
123 目標位置再設定部
125 動作制御部
220 占有領域判定部
CA 共同作業領域
CTP 修正目標位置
EA 掘削範囲(単独作業領域)
OA 占有領域
PI 位置情報(位置姿勢情報)
RA 再設定可能範囲
SA 分割領域
TM 目標動作
TP 目標位置
WMCS 作業機械の制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8