(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021010
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20240207BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/222 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/229 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20240207BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/209
H01M50/342 101
H01M50/204 101
H01M50/271 B
H01M50/271 S
H01M50/227
H01M50/222
H01M50/229
H01M50/35 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123631
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本(杉) 千花
(72)【発明者】
【氏名】ホーマン ジェローム
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H012BB08
5H012CC10
5H012FF01
5H012GG01
5H040AA32
5H040AA33
5H040AS07
5H040AT02
5H040CC01
5H040CC20
5H040JJ03
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】バッテリセルを収容するケースの防水性能を確保しつつ、ケースの内部圧力の急上昇に備えて、ガス抜き機能を速やかに作動可能なバッテリパックを提供する。
【解決手段】複数のバッテリセルと複数のバッテリセルを収容するケースとを有するバッテリパックは、ケースの内部の温度変化によるケースの内部の空気の膨張及び圧縮によるケースの内部圧力の変動を抑制する通気孔と、通気孔の流路断面積よりも大きい流路断面積を有する少なくとも一つの排煙口と、少なくとも一つの排煙口を閉じる蓋部材と、を備え、排煙口の開口の縁部と蓋部材とは、接着部材により気密に接合され、接着部材により縁部と蓋部材とを接合する接合部に、バッテリセルの内部圧力の上昇により圧力放出弁を介してガスが放出されたことによるケースの内部圧力の上昇時に縁部と蓋部材とを剥離させる脆弱部を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセル(30)と、前記複数のバッテリセル(30)を収容するケース(5)と、を有するバッテリパック(1)であって、
前記複数のバッテリセル(30)は、
それぞれ前記バッテリセル(30)の内部圧力の上昇時にガスを放出する圧力放出弁(35)を備え、
前記ケース(5)は、
前記ケース(5)の内部の温度変化による前記ケース(5)の内部の空気の膨張及び収縮による前記ケース(5)の内部圧力の変動を抑制する通気孔(19)と、
前記通気孔(19)の流路断面積よりも大きい流路断面積を有する少なくとも一つの排煙口(17)と、
前記少なくとも一つの排煙口(17)を閉じる蓋部材(40)と、を備え、
前記少なくとも一つの排煙口(17)の開口の縁部(18)と前記蓋部材(40)とは、接着部材(45)により気密に接合され、
前記接着部材(45)により前記縁部(18)と前記蓋部材(40)とを接合する接合部(60)に、前記バッテリセル(30)の内部圧力の上昇により前記圧力放出弁(35)を介して前記ガスが放出されたことによる前記ケース(5)の内部圧力の上昇時に前記縁部(18)と前記蓋部材(40)とを剥離させる脆弱部(47)を設けた、
バッテリパック。
【請求項2】
前記蓋部材(40)は、前記接合部(60)よりも外周側において複数個所に設けられたリベット挿入孔(43)を有し、
前記ケース(5)に設けられた複数のリベット(15)が前記リベット挿入孔(43)に挿入されて、前記蓋部材(40)が前記ケース(5)に固定され、
前記脆弱部(47)は、前記蓋部材(40)の外周部のうち前記リベット挿入孔(43)の配置間隔が他の箇所に比べて大きい箇所に設けられる、
請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記脆弱部(47)における前記接合部(60)が延びる方向に交差する方向の前記接合部(60)の幅(w1)が、前記脆弱部(47)以外の箇所における前記接合部(60)が延びる方向に交差する方向の前記接合部(60)の幅(w2)よりも小さい、
請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記脆弱部(47)における前記接着部材(45)に、一つ又は複数の非接着部(45a)を有する、
請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記脆弱部(47)は、前記接着部材(46)として、樹脂材料にガラスビーズが混合された接着剤が用いられることで構成される、
請求項1に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリセルがケース内に収容されたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車等に搭載されるバッテリパックのバッテリセルには、一般的にガス抜き機能が設けられている。これは、万が一バッテリセル内にガスが発生しても、バッテリセルが破裂しないようにするためのものである。また、バッテリセルが収容されるケースは、防水機能を有する一方で、バッテリセル内のガスをバッテリセルの外部に放出した際に、バッテリセルが収容されるケースの内部圧力が上昇してケースが破損することのないように、ガスをケースの外部に放出する機能も設けられる。
【0003】
例えば特許文献1には、バッテリパックの防爆弁に通気孔としての機能を持たせ、通気膜を備えた通気口を別に設ける必要のないように構成したバッテリパックの防爆弁が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子(バッテリセル)を有し、それぞれの蓄電素子は、蓄電素子の内部で発生したガスを蓄電素子の外部に排出させる弁を有し、それぞれの蓄電素子の電極端子は電子部品が実装された基板を貫通し、基板には、弁から排出されたガスを通過させる開口部が形成され、基板の開口部を通過したガスが進入するダクトを有する蓄電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-168293号公報
【特許文献2】特開2015-41595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バッテリセルからガスが大量に放出されてケースの内部圧力が急激に上昇すると、ケースは短時間で大きく変形し、ガス抜き機能が作動する前にケースが破裂するおそれがある。
【0007】
本発明は、バッテリセルを収容するケースの防水性能を確保しつつ、ケースの内部圧力の急上昇に備えて、ガス抜き機能を速やかに作動可能なバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数のバッテリセルと、前記複数のバッテリセルを収容するケースと、を有するバッテリパックであって、
前記複数のバッテリセルは、
それぞれ前記バッテリセルの内部圧力の上昇時にガスを放出する圧力放出弁を備え、
前記ケースは、
前記ケースの内部の温度変化による前記ケースの内部の空気の膨張及び圧縮による前記ケースの内部圧力の変動を抑制する通気孔と、
前記通気孔の流路断面積よりも大きい流路断面積を有する少なくとも一つの排煙口と、
前記少なくとも一つの排煙口を閉じる蓋部材と、を備え、
前記少なくとも一つの排煙口の開口の縁部と前記蓋部材とは、接着部材により気密に接合され、
前記接着部材により前記縁部と前記蓋部材とを接合する接合部に、前記バッテリセルの内部圧力の上昇により前記圧力放出弁を介して前記ガスが放出されたことによる前記ケースの内部圧力の上昇時に前記縁部と前記蓋部材とを剥離させる脆弱部を設けた、
バッテリパックが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、バッテリセルを収容するケースの防水性能を確保しつつ、ケースの内部圧力の急上昇に備えて、ガス抜き機能を速やかに作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリパックの全体構成例を示す外観図である。
【
図2】同実施形態に係るケース内部に収容されたバッテリセルを示す説明図である。
【
図4】比較例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す説明図である。
【
図5】比較例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す断面図である。
【
図6】本実施形態の第1の実施例の蓋部材を裏面側から見た図である。
【
図7】第1の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す説明図である。
【
図8】第1の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す断面図である。
【
図9】本実施形態の第2の実施例の蓋部材を裏面側から見た図である。
【
図10】第2の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す説明図である。
【
図11】第2の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す断面図である。
【
図12】本実施形態の第3の実施例の蓋部材を裏面側から見た図である。
【
図13】第3の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す説明図である。
【
図14】第3の実施例の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリパックに関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0012】
<1.バッテリパックの全体構成>
はじめに、本実施形態に係るバッテリパックの全体構成の一例を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るバッテリパック1の外観を示す斜視図である。
図2は、ケース5内に収容された複数のバッテリセル30を示す説明図である。
【0014】
本実施形態に係るバッテリパック1は、ハイブリッド電気自動車あるいは純電気自動車に搭載されるバッテリパック1である。バッテリパック1は、ケース5と、ケース5内に収容された複数のバッテリセル30とを備えている。ケース5は、ケース上部10及びケース下部20により構成されている。ケース上部10とケース下部20とは、接着剤又は弾性材料等からなるシール部材又はガスケットを挟んで、図示しない固定ボルト又は固定ネジにより強固に連結されている。これにより、ケース上部10とケース下部20との接合部の気密性が確保されている。
【0015】
ケース上部10及びケース下部20は、それぞれ樹脂を用いて成形された成形体として構成される。本実施形態に係るバッテリパック1は、車両に搭載されるバッテリパックであることから、ケース5を樹脂を用いて比較的薄肉に構成することにより軽量化が図られている。これにより、燃費性能あるいは電力消費性能が高められる。一方、樹脂を用いて構成される比較的薄肉のケース5であっても、車両の振動等に対する強度を確保する目的で、ケース上部10及びケース下部20には、それぞれ補強リブ11、13、21が設けられている。
【0016】
ケース5は、通気孔19を有する。通気孔19は、ケース5の内部の温度変化によるケース5の内部の空気の膨張及び収縮によるケース5の内部圧力の変動を抑制するためにケース5の内部と外部との空気の出入りを可能とする。一方で、通気孔19を介してケース5の内部へ埃や水が侵入することを防ぐために、通気孔19の流路断面積は小さくされている。流路断面積は、例えば1mm2とされていてよい。通気孔19は、ケース上部10及びケース下部20の少なくとも一方に設けられた溝又は孔により形成されていてもよく、さらにガスケット又はシール部材に設けられた溝又は孔により形成されていてもよい。通気孔19の構成は、ケース5の内部と外部との空気の出入りを可能とし、ケース5の内部の温度変化によるケース5の内部圧力の変動を抑制する機能を果たすことができる構成であれば特に限定されるものではない。
【0017】
ケース5のケース下部20の内部には、複数のバッテリセル30が収容されている。それぞれのバッテリセル30は、直方体の立体形状を有し、複数のバッテリセル30は、厚さ方向に積層されて収容されている。複数のバッテリセル30には、図示しない楔等を用いて積層方向に対して荷重がかけられている(
図2の白矢印を参照)。これにより、複数のバッテリセル30が、ケース5の内部で移動したり膨張したりすることが抑制されている。
【0018】
それぞれのバッテリセル30は、上面の長手方向の両側に正極端子31a及び負極端子31bを有し、片側に正極端子31aと負極端子31bとが交互に配列するようにして積層されている。また、隣接するバッテリセル30の正極と負極とがバスバー32を用いて電気的に接続され、複数のバッテリセル30は、全体として直列接続されている。直列接続された複数のバッテリセル30の両端は、それぞれケース上部10の上部に突出するバッテリ正極37a及びバッテリ負極37bに電気的に接続されている。
【0019】
また、それぞれのバッテリセル30は、上面の長手方向の中央にガス放出孔33と、ガス放出孔33を塞ぐ圧力放出弁35とを有する。圧力放出弁35は、ガス放出孔33を気密に閉じる一方、バッテリセル30の内部圧力が上昇したときにガス放出孔33を開放する。バッテリセル30の内部圧力の上昇は、例えばバッテリセル30内での正極と負極との短絡により生じ得る。
【0020】
ケース上部10は、少なくとも一つの排煙口17を有する。少なくとも一つの排煙口17は、ケース5の内部側と外部側とに開口し、圧力放出弁35を介してバッテリセル30からケース5内へ放出されたガスを、さらにケース5の外部へ排出する機能を有する。少なくとも一つの排煙口17は、蓋部材40により閉じられている。
図1に示したバッテリパック1では、ケース上部10のうち、それぞれのバッテリセル30の上面の長手方向の両側に相当する位置に、それぞれ複数の排煙口17が設けられている。なお、
図1では、手前側に設けられた7つの排煙口17が図示されている一方、奥側にも排煙口が設けられているが、蓋部材50により覆われて図示されていない。
【0021】
手前側に設けられた7つの排煙口17について説明する。7つの排煙口17は、バッテリセル30の積層方向に沿って設けられている。本実施形態では、隣接する排煙口17の間に窪み16が設けられているが、当該窪み16は設けられていなくてもよい。7つの排煙口17は、蓋部材40により閉じられている。蓋部材40は、バッテリセル30の積層方向に沿う長手方向を有する長尺の板状の部材からなる。蓋部材40は、樹脂を用いて成形された成形品であり、例えば0.5~1.0mm程度の薄板状に成形され、変形しやすい構造となっている。
【0022】
7つの排煙口17の開口の縁部18と蓋部材40とは、接着部材(
図1では図示を省略)により気密に接合されている。これにより、通常の使用中に、排煙口17を介してケース5内部に埃や水が侵入することを防いでいる。排煙口17の開口の縁部18と蓋部材40との接合部には、バッテリセル30の内部圧力の上昇により圧力放出弁35を介してガスが放出されたことによるケース5の内部圧力の上昇時に縁部18と蓋部材40とを剥離させる脆弱部が設けられている。脆弱部を含む蓋部材40と排煙口17の開口の縁部18との接合方法は、後で詳しく説明する。
【0023】
蓋部材40の外周部には複数のタブ41a~41gが設けられている。それぞれのタブ41a~41gには、リベット挿入孔43a~43gが設けられている。複数のタブ41a~41g及びリベット挿入孔43a~43gは、排煙口17の開口の縁部18と蓋部材40との接合部よりも外周側に位置し、排煙口17の開口の縁部18と蓋部材40との気密性には影響していない。
図1に示した例では、蓋部材40の長手方向に沿った二つの辺42a、42bのうち、ケース上部10の外周側に位置する辺42bに沿って5つのタブ41c~41g及びリベット挿入孔43c~43gが設けられている。また、長手方向に沿った二つの辺42a、42bのうちの他方の辺42aの両端に、2つのタブ41a、41b及びリベット挿入孔43a、43bが設けられている。
【0024】
それぞれのリベット挿入孔43a~43gには、ケース上部10に設けられたリベット15a~15gが挿入され、リベット15a~15gを加圧あるいは加熱することにより、蓋部材40がケース上部10に簡易固定される。なお、圧力放出弁35を介してバッテリセル30からケース5内にガスが放出されたときに、ケース5の内部圧力の上昇により蓋部材40を変形させて、蓋部材40を排煙口17の開口の縁部18から剥離させて、ケース5の内部圧力を速やかに放出させることができるように、リベット15a~15gによる蓋部材40の固定は強固なものとはされずに簡易的に固定されてよい。簡易的な固定とは、リベット15a~15gの直径に対してリベット挿入孔43a~43gの直径が大きくされた状態であってもよく、リベット15a~15gにより蓋部材40のリベット挿入孔43a~43gの縁が圧力のかかった状態で挟まれていない状態であってもよい。つまり、蓋部材40の変形を許容できる固定方法であればよい。
【0025】
なお、他方の排煙口の開口の縁部と、排煙口を閉じる蓋部材50は、蓋部材40と同様の方法で一部に脆弱部が設けられて排煙口の開口の縁部と接合されるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0026】
<2.蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部の構成>
続いて、本実施形態の蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部の構成について、上記の蓋部材40を例にとって詳しく説明する。以下、本実施形態の比較例の構成を説明した後で、本実施形態に係る接合部の構成例を説明する。
【0027】
(2-1.比較例)
まず、蓋部材と排煙口の開口の縁部との接合部に脆弱部を備えていない比較例を説明する。
図3~
図5は、比較例の構成を説明するために示す図である。
図3は、比較例の蓋部材40を、排煙口17に対向する面(以下「裏面」という)側から見た平面図を示す。
図4は、比較例の蓋部材40をケース上部10に接合したときの排煙口17及び窪み16の位置を示した平面図である。
図5は、排煙口17の開口の縁部18と蓋部材40との接合部60の断面図であって、蓋部材40の長手方向に直交する方向に延びる断面を示した図である。
【0028】
蓋部材40の裏面には、接着部材として両面テープ45が貼付されている。比較例では、両面テープ45のうち、蓋部材40の長手方向に沿った二つの辺42a、42bそれぞれの側の縁部18に接着される接着領域の、上記長手方向に交差する方向の幅wが均等になっている。したがって、比較例では、二つの辺42a、42bそれぞれの側の縁部18のほぼ全面を利用して蓋部材40が接合され、二つの辺42a、42bそれぞれの側の接着強度が大きくなっている。このため、接合部60の防水性能を確保することができるものの、ケース5の内部圧力が急上昇した場合に蓋部材40と縁部18との接合部60の全領域において蓋部材40が剥離しづらくなり、ケース5の内部圧力を速やかにケース5の外部へ放出させることができないおそれがある。
【0029】
(2-2.第1の実施例)
第1の実施例では、両面テープによる接着面積に差を付けることで、接合部の一部の接着強度を低下させて脆弱部が形成される。
【0030】
図6~
図8は、本実施形態に係るバッテリパック1の第1の例を説明するために示す図である。
図6~
図8は、それぞれ
図3~
図5に対応する図を示す。第1の実施例で示す蓋部材40の平面形状の外形は、比較例で示した蓋部材40と同一である。
【0031】
第1の実施例では、蓋部材40の裏面に貼付された両面テープ45の外周端部のうち、二つのタブ41a、41bが設けられた辺42aに沿った端部の位置が、比較例の場合の端部の位置に比べて蓋部材40の辺42aから後退している。つまり、当該辺42aに沿った両面テープ45の端部と蓋部材40の端部との距離が、比較例の場合に比べて拡大されている。このため、当該辺42a側において蓋部材40の長手方向に交差する方向の接着領域の幅(接合部60の幅)w1が、五つのタブ41c~41gが設けられた辺42b側の接着領域の幅(接合部60の幅)w2よりも小さくなっている。
【0032】
これにより、二つのタブ41a、41bが設けられた辺42a側における縁部18と蓋部材40との接着面積が、五つのタブ41c~41gが設けられた辺42b側における縁部18と蓋部材40との接着面積よりも小さくなり、上記辺42a側の接着強度が相対的に小さくされた脆弱部47が構成される。このため、接合部60の防水性能を確保でき、かつ、ケース5の内部圧力が急上昇したときに、薄板状の蓋部材40の変形によって当該辺42a側で蓋部材40が縁部18から剥離し、排煙口17が外部に開放されやすくなっている。その結果、ケース5の内部圧力によりケース5が破損することを防ぐことができる。
【0033】
特に、リベット15によりケース上部10に簡易固定される箇所が相対的に少なく、リベット挿入孔43の配置間隔が辺42bに比べて大きい辺42a側の接着強度を低下させることで、薄板状の蓋部材40の変形によって当該辺42a側で蓋部材40が縁部18から剥離しやすくなっている。また、第1の実施例の構成によれば、両面テープ45の幅を変えるだけで、接合部60のうちの一部の接着強度を容易に低下させることができる。
【0034】
なお、上記の第1の実施例では、排煙口17及び窪み16に対向する領域にも両面テープ45が配置されるが、両面テープ45のうち、当該領域の一部又は全部を含む領域に開口が設けられていてもよい。ただし、そのような開口を有しない両面テープ45を用いることにより、蓋部材40に両面テープ45を貼付する際の作業効率を向上させることができるとともに、両面テープ45を貼付する際の位置ずれの許容範囲を大きくすることができる。また、上記の第1の実施例では接着部材として両面テープ45が用いられていたが、両面テープの代わりに樹脂材料からなる接着剤が用いられてもよい、ただし、接着剤では接合部60の幅を管理することが難しい場合があることから、両面テープ45を用いることが好ましい。
【0035】
(2-3.第2の実施例)
第2の実施例では、第1の実施例と同様に両面テープによる接着面積に差を付けることで、接合部の一部の接着強度を低下させて脆弱部が形成されるが、両面テープの端部の位置を後退させる代わりに、両面テープに非接着部を設けることで接合部の一部の接着強度を低下させる。
【0036】
図9~
図11は、本実施形態に係るバッテリパック1の第2の例を説明するために示す図である。
図9~
図11は、それぞれ
図3~
図5に対応する図を示す。第2の実施例で示す蓋部材40の平面形状の外形は、比較例で示した蓋部材40と同一である。
【0037】
第2の実施例では、蓋部材40の裏面に貼付された両面テープ45のうち、二つのタブ41a、41bが設けられた辺42aに沿った領域に非接着部45aが設けられている。非接着部45aは、両面テープ45に形成された一つ又は複数の孔又は長孔であり、両面テープ45は、非接着部45aの領域において排煙口17の開口の縁部18に接しないように構成される。これにより、二つのタブ41a、41bが設けられた辺42a側における縁部18と蓋部材40との接着面積が、五つのタブ41c~41gが設けられた辺42b側における縁部18と蓋部材40との接着面積よりも小さくなり、上記辺42a側の接着強度が相対的に小さくなっている。
【0038】
このため、接合部60の防水性能を確保でき、かつ、ケース5の内部圧力が急上昇したときに、薄板状の蓋部材40の変形によって当該辺42a側で蓋部材40が縁部18から剥離し、排煙口17が外部に開放されやすくなっている。その結果、ケース5の内部圧力によりケース5が破損することを防ぐことができる。特に、リベット15によりケース上部10に簡易固定される箇所が相対的に少ない辺42a側の接着強度を低下させることで、薄板状の蓋部材40の変形によって当該辺42a側で蓋部材40が縁部18から剥離しやすくなっている。
【0039】
なお、第2の実施例では、蓋部材40の二つの辺42a、42bにおいて蓋部材40の長手方向に交差する方向の接着領域の幅(接合部60の全体の幅)は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、上記の第2の実施例においても、両面テープ45のうち、排煙口17及び窪み16に対向する領域の一部又は全部を含む領域に開口が設けられていてもよい。ただし、そのような開口を有しない両面テープ45を用いることにより、蓋部材40に両面テープ45を貼付する際の作業効率を向上させることができるとともに、両面テープ45を貼付する際の位置ずれの許容範囲を大きくすることができる。また、上記の第2の実施例においても、両面テープの代わりに樹脂材料からなる接着剤が用いられてもよい、ただし、接着剤では非接着部45aの大きさを管理することが難しい場合があることから、両面テープ45を用いることが好ましい。
【0040】
(2-4.第3の実施例)
第3の実施例では、接着部材として、樹脂材料にガラスビーズが混合された接着剤が用いられることで、脆弱部が構成される。
【0041】
図12~
図14は、本実施形態に係るバッテリパック1の第3の例を説明するために示す図である。
図12~
図14は、それぞれ
図3~
図5に対応する図を示す。第3の実施例で示す蓋部材40の平面形状の外形は、比較例で示した蓋部材40と同一である。
【0042】
第3の実施例では、蓋部材40の裏面のうち、複数の排煙口17の開口の縁部18と接合される接合部60に対応する領域に、接着部材としての接着剤46が塗布される。接着剤46は、例えばディスペンサを用いることにより所望の領域に塗布される。接着剤46としては、有機性の樹脂材料に無機材料であるガラスビーズが混合された接着剤が用いられる。
【0043】
このため、接合部60の防水性能を確保でき、かつ、ケース5の内部圧力が急上昇したときに、薄板状の蓋部材40の変形によって接着剤46に応力がかかると、樹脂材料とガラスビーズとの界面を起点として接着剤46にクラックが生じやすくなる。つまり、第3の実施例では、樹脂材料とガラスビーズの界面が脆弱部47としての機能を有する。これにより、蓋部材40が排煙口17の開口の縁部18から剥離し、排煙口17が外部に開放されやすくなっている。その結果、ケース5の内部圧力によりケース5が破損することを防ぐことができる。
【0044】
なお、第3の実施例では、蓋部材40の二つの辺42a、42bにおいて蓋部材40の長手方向に交差する方向の接着領域の幅(接合部60の全体の幅)は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、上記の第3の実施例において、蓋部材40の裏面のうち、排煙口17及び窪み16に対向する領域を含む領域に対しても接着剤46が塗布されていてもよい。ただし、当該領域へ接着剤を塗布しない構成とすることにより、接着剤の使用量を減らして製造コストを抑制することができる。
【0045】
以上説明したように、本開示の各実施形態に係るバッテリパック1は、少なくとも一つの排煙口17の開口の縁部18に接合される薄板状の蓋部材40と当該縁部18との接合部60に脆弱部47を有している。このため、接合部60の防水性能を確保でき、かつ、バッテリセル30の内部圧力の上昇により圧力放出弁35を介してガスが放出され、ケース5の内部圧力が上昇したときに、脆弱部47をきっかけとして蓋部材40の一部をケース上部10から剥離させることができる。したがって、ケース5の内部圧力の急上昇時に速やかに圧力をケース5の外部に開放して、ケース5の破損を防ぐことができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが本発明はこのような例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0047】
1:バッテリパック、5:ケース、10:ケース上部、11:補強リブ、13:補強リブ、15:リベット、16:窪み、17:排煙口、18:縁部、19:通気孔、20:ケース下部、21:補強リブ、30:バッテリセル、33:ガス放出孔、35:圧力放出弁、40:蓋部材、41a-41g::タブ、42a・42b:辺、43a-43g:リベット挿入孔、45:両面テープ、45a:非接着部、46:接着剤、47:脆弱部、50:蓋部材、60:接合部