(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021015
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ネット受け機構、ネット受け方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A41G3/00 N
A41G3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123640
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】519044483
【氏名又は名称】クリアストリーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100171826
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 啓介
(72)【発明者】
【氏名】張谷 浩史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造の簡略化、移動距離の短縮化、作動時間の短縮化を実現するネット受け機構、ネット受け方法を提供する。
【解決手段】ネット部材5が第1ネット掛け部材2の先端部2aと第2ネット掛け部材3の先端部3aとが鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並んで配置され、先端部2a及び先端部3aの一方が固定され、先端部2a及び先端部3aの他方が鈎針4の直進方向に交差する矢印Yで示す方向に移動する前進運動及び後退運動を行うようになっている。例えば、ネット部材5が鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並んで配置された先端部2a及び先端部3aに跨って掛けられた状態において、先端部3aが直進する前進運動を行うのに伴い、先端部2aの鈎針4の直進方向に交差する方向への位置と先端部3aの鈎針4の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じ、逃げ空間部が先端部2aと先端部3aとネット部材5とで囲まれて形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置された第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの一方が固定され、これら第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの他方が前記並列配置の方向に交差する方向に移動する前進運動及び後退運動を行うことを特徴とするネット受け機構。
【請求項2】
請求項1に記載のネット受け機構を備え、ネット部材に毛髪糸を植毛する植毛機構を備えたことを特徴とする、植毛装置。
【請求項3】
請求項2に記載の植毛装置で製造された植毛製品。
【請求項4】
鈎針の直進方向に並列配置された第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの一方が固定され、ネット部材が前記第1ネット掛け部材の先端部及び前記第2ネット掛け部材の先端部に跨って掛けられた状態において、前記第1ネット掛け部材の先端部及び前記第2ネット掛け部材の先端部のうちの他方が前記鈎針の直進方向に交差する方向に移動する前進運動を行うことに伴い、前記一方における前記鈎針の直進方向に交差する方向への位置と前記他方における前記鈎針の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じて、前記一方の先端部と前記他方の先端部と前記ネット部材とで囲まれた逃げ空間部を形成することを特徴とするネット受け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのネット掛け部材のうちの一方が他方より鈎針の直進方向と交差する方向に移動する前進運動及び後退運動を行うネット受け機構、ネット受け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1ではネット受け機構としてエキセンが用いられている。エキセンは、左右に延びる中心線を有する円柱状のネット掛部と、当該ネット掛部の外面から内部に窪むように当該ネット掛部に設けられた逃げ部と、前記ネット掛部の両端部に設けられた軸部とを有し、これら軸部の左右方向に延びる中心線が前記ネット掛部の左右方向に延びる中心線から半径方向の外側に偏位しかつ前記逃げ部における前記ネット掛部の外面の側の開口の周方向の中心部に位置された構造であり、偏芯回転するため、その分の移動距離が発生し、鈎針をネット部材に侵入させる距離が多くなる。また、回転動作により時間が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、移動距離の短縮化、構造の簡略化、作動時間の短縮化を実現するネット受け機構、ネット受け方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るネット受け機構は、並列配置された第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの一方が固定され、これら第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの他方が前記並列配置の方向に交差する方向に移動する前進運動及び後退運動を行うことを特徴とする。本発明に係るネット受け方法は、鈎針の直進方向に並列配置された第1ネット掛け部材の先端部及び第2ネット掛け部材の先端部のうちの一方が固定され、ネット部材が前記第1ネット掛け部材の先端部及び前記第2ネット掛け部材の先端部に跨って掛けられた状態において、前記第1ネット掛け部材の先端部及び前記第2ネット掛け部材の先端部のうちの他方が前記鈎針の直進方向に交差する方向に移動する前進運動を行うことに伴い、前記一方における前記鈎針の直進方向に交差する方向への位置と前記他方における前記鈎針の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じて、前記一方の先端部と前記他方の先端部と前記ネット部材とで囲まれた逃げ空間部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るネット受け機構は、並列配置された第1ネット掛け部材の先端部と第2ネット掛け部材の先端部のうちの一方が固定され、これら2つの先端部のうちの他方が前記並列配置の方向に交差する方向に移動する前進運動及び後退運動を行うことにより、ネット受け機構の構造の簡略化の効果がある。また、ネット受け機構での移動距離の短縮化、作動時間の短縮化にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構の構造を示した模式図。
【
図2】A図からD図は発明を実施するための形態1に係るネット受け機構の第1動作から第4動作を示した模式図。
【
図3】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の構造を模式図として示し、A図はB図に示した矢印A方向から見た側面図、B図はA図に示した矢印B方向から見た正面図。
【
図4】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第1動作から第4動作を示し、A図はB図に示した矢印A方向から見た側面図、B図はA図に示した矢印B方向から見た正面図。
【
図5】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第5動作及び第6動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図6】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第7動作及び第8動作を示した
図4のA図に相当する側面図。B図はA-A断面図。
【
図7】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第9動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図8】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第10動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図9】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第11動作及び第12動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図10】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第13動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図11】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第14動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図12】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置の第15動作及び第16動作を示した
図4のA図に相当する側面図。
【
図13】発明を実施するための形態1に係るネット受け機構を備えた植毛装置により、植毛糸が3回撚り合わせられてネット部材に結び付けられた状態を示し、A図は
図4の第2鉤針の側から見た正面図、B図は
図4の第1鉤針の側から見た背面図。
【
図14】A図は、発明を実施するための形態2に係るネット受け機構の構造を示した模式図。B図は、発明を実施するための形態2に係るネット受け機構の第1動作を示した模式図。
【
図15】A図は、発明を実施するための形態3に係るネット受け機構の構造を示した模式図。B図は、発明を実施するための形態3に係るネット受け機構の第1動作を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[発明を実施するための形態1]
図1を用いて、発明を実施するための形態に係るネット受け機構1の構造について説明する。ネット受け機構1は、第1ネット掛け部材2の先端部2aと第2ネット掛け部材3の先端部3aとが鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並列配置され、これら2つの先端部2a及び先端部3aのうちの一方が固定され、これら2つの先端部2a及び先端部3aのうちの他方が鈎針4の直進方向に交差する矢印Yで示す方向に直進(移動)する前進運動及び直進する後退運動を行う構成になっているので、ネット受け機構1の構造の簡略化、ネット受け機構1での移動距離の短縮化、作動時間の短縮化に効果がある。尚、鈎針4の先端にはフック4aが形成さている。ネット部材5が第1ネット掛け部材2の先端部2a及び第2ネット掛け部材3の先端部3aに跨って掛けられる。先端部2a及び先端部3aの形状は、図示した5角形に限定されるものではなく、曲面形状等のネット部材5を傷つけ損傷させない形状や構造れば適用可能である。
【0009】
図1及び
図2を用いて、発明を実施するための形態に係るネット受け機構1の動作について説明する。
図1及び
図2において、第1ネット掛け部材2の先端部2a及び第2ネット掛け部材3の先端部3aのうちの一方としての第1ネット掛け部材2の先端部2aが図示のされていない装置本体に固定され、第1ネット掛け部材2の先端部2a及び第2ネット掛け部材3の先端部3aのうちの他方としての第2ネット掛け部材3の先端部3aが前記装置本体と第2ネット掛け部材3との双方に連結された駆動機構としてのエアシリンダーのピストンロッドの伸縮により鈎針4の直進方向に交差する矢印Yで示す方向に直進する前進運動及び直進する後退運動を行う場合を一例としてネット受け機構1の動作を説明する。
【0010】
図1に示すように、ネット部材5が並列配置された第1ネット掛け部材2の先端部2a及び第2ネット掛け部材3の先端部3aに跨って掛けられた状態において、
図2のA図に示すように、第2ネット掛け部材3の先端部3aが直進する前進運動を行うのに伴い、第1ネット掛け部材2の先端部2aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置と第2ネット掛け部材3の先端部3aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じ、逃げ空間部6が第1ネット掛け部材2の先端部2aと第2ネット掛け部材3の先端部3aとネット部材5とで囲まれて形成される。この逃げ空間部6におけるネット部材5の糸部材としての横糸5aが第1ネット掛け部材2の先端部2aの上に配置されている。
【0011】
次に、
図2のB図に示すように、逃げ空間6が形成された状態において、鈎針4が直進する前進運動を行うのに伴い、鈎針4のフック4aが逃げ空間部6におけるネット部材5の外側から横糸5aの下を通ってネット部材5を左側から右側に超えて逃げ空間部6に収容される。その後、
図2のC図に示すように、第2ネット掛け部材3の先端部3aが直進する後退運動を行うのに伴い、第1ネット掛け部材2の先端部2aと第2ネット掛け部材3の先端部3aとが鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並んで配置される一方、鈎針4が直進する後退運動を行うのに伴い、鈎針4のフック4aが逃げ空間部6におけるネット部材5の糸部材としての横糸5aを捕捉する。
【0012】
更に、
図2のD図に示すように、鈎針4が直進する前進運動を行うのに伴い、鈎針4のフック4aがネット部材5の表面から裏を通り表面に出てくることにより、横糸5aが鈎針4の上側に配置された状態となる。
本発明のネット受け機構1は、植毛装置のみならず別の装置にも転用可能であり、ネット受け機構1での移動距離の短縮化、構造の簡略化、作動時間の短縮化に効果があるうえ、前記ネット受け機構1での移動距離の短縮化は、鈎針4のネット部材5を通過するストレスを軽減し、鈎針4の針折れ頻度の軽減が期待できる。
【0013】
図3を用いて、発明を実施するための形態に係るネット受け機構1を用いた植毛装置の構造について説明する。植毛装置は、ネット受け機構1、第1鉤針20、第2鉤針30、ストッカー40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、反転ローラー80、
図8に図示した磁石90、図示のされていない駆動機構、制御装置95を備え、当該制御装置95による前記駆動機構の制御に伴いネット受け機構1と第1鉤針20と第2鉤針30と糸落としバー60並びに糸引込バー70のそれぞれが
図4から
図12までに示した第1動作から第16動作までを行い、毛髪糸100をストッカー40から1本ずつ捕捉してネット部材5の横糸5aに結び付けて植毛するようになっている。第1鉤針20は、
図1の鈎針4に相当する。ネット部材5は、複数本の原糸を撚りあわせて一本の糸にしたものを使用して作成された場合と、複数本の原糸を撚りあわせることなく一本の原糸の糸を使用して作成された場合との両方を含む。
【0014】
ネット受け機構1は、少なくとも、第1ネット掛け部材2と第2ネット掛け部材3と図示のされていない駆動機構(第1ネット掛け部材2と第2ネット掛け部材3のための駆動機構)、制御装置95(第1ネット掛け部材2と第2ネット掛け部材3のための制御装置)とが該当する。
また、植毛機構は、少なくとも、ネット受け機構1、第1鉤針20、第2鉤針30、ストッカー40、図示のされていない駆動機構(第1鉤針20、第2鉤針30のための駆動機構)、制御装置95(第1鉤針20、第2鉤針30のための制御装置)が該当する。
【0015】
植毛装置が動作を行う際の初期位置の状態について説明すると、
図3のA図に示したように、予め切り揃えられた短尺な複数本の毛髪糸100がネット受け機構1よりも上方に配置されたストッカー40の上にネット受け機構1の中心線の延びる方向に交差する方向に長い列状に寝かされて収容され、又、複数本の縦糸5bと複数本の横糸5aとからなる網目状に形成されたネット部材5が反転ローラー80及びネット受け機構1に展開され、又、第1鉤針20がネット受け機構1よりも左側に停止し、第2鉤針30がネット受け機構1よりも右側の下方に停止し、糸位置出しバー50がストッカー40の底部41の左右方向の中央部に設けられた糸取孔42よりも下方で左側に配置され、糸落としバー60及び糸引込バー70が糸位置出しバー50とネット受け機構1との間で糸位置出しバー50よりも左側に停止している。
【0016】
短尺な毛髪糸100の長さは、完成するウィッグの毛の長さの約2倍の長さに切り揃えられており、ストッカー40の底部41の左右方向よりも長くても短くても適用可能であるが、長い場合に毛髪糸100におけるストッカー40の底部41よりも外側に突出する部分がストッカー40の底部41より下方に垂直に垂下がない範囲であれば、第2鉤針30がストッカー40から毛髪糸100を捕捉して下方に引き出す際に、毛髪糸100におけるストッカー40の底部41よりも外側に突出する部分がストッカー40の底部41の左右方向の端部で擦れて傷むことを防止することができ、好適である。
【0017】
ストッカー40は、
図3のB図に示したように、平板状の底部41の左右方向の両端部から上方に突出した左右の側壁43を備え、左右の側壁43の上部が開放された樋状になっている。ストッカー40は単数でも適用可能であるが、複数個のストッカー40が左右方向に並べられ、異なる色の毛髪糸100、色が同じであって太さの異なる毛髪糸100、同じ色や同じ太さであっても硬さや弾力の異なる毛髪糸100等、種類の異なる毛髪糸100が混合された後にストッカー40ごとに個別に供給され、完成するウィッグにおける毛髪糸100の色や太さ或いは髪質を予め調整できるようになった場合を例示した。
【0018】
尚、ストッカー40は位置を移動する必要がないでの図示のされていない装置本体に固定した状態に設けられている。図示のされていない板状の錘がストッカー40に供給された毛髪糸100の上に乗せられて毛髪糸100を押え付け、毛髪糸100が第2鉤針30で引き抜けるようになっている。前記錘は前記装置本体と錘との双方に連結された駆動機構としてのエアシリンダーのピストンロッドの伸縮により毛髪糸100を上から押え付けても良い。エアシリンダーのピストンロッドの伸縮は前記制御装置95で制御されても良い。
【0019】
そして、第2鉤針30が毛髪糸100を何本か引き抜くと、第2鉤針30の先端のフック31が毛髪糸100を引っ掛けなくなるので、上記何本か毛髪糸100が引き抜かれた時点ごとに前記錘から毛髪糸100に供給される圧を緩め、ストッカー40を叩き、毛髪糸100を整列し直せば良い。圧を緩めて整列するまでの時間間隔は毛髪糸100の種類により変わる。上記ストッカー40を叩く場合、人為的に行うことも考えられるが、前記制御装置95で制御される駆動機構で行うようにしても良い。
【0020】
ネット受け機構1は、第1ネット掛け部材2の先端部2aと第2ネット掛け部材3の先端部3aとが鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並列配置され、これら2つの先端部2a及び先端部3aのうちの一方が固定され、これら2つの先端部2a及び先端部3aのうちの他方が鈎針4の直進方向に交差する矢印Yで示す方向に直進する前進運動及び直進する後退運動を行うようになっている。
【0021】
第1鉤針20は、ネット部材5に毛髪糸100を植毛する部材であり、先端のフック21と、フック21の針口を開閉するラッチ22とを備える。ラッチ22の一端部が第1鉤針20に図示のされていない軸で回転可能に連結され、ラッチ22の他端部の側が上記軸を中心として回転することで上記針口を開閉するようになっている。初期状態では、
図3のA図に示したように、第1鉤針20がネット受け機構1から左側に離れかつ鈎針4の矢印Xで示す直進方向に並んで配置された第1ネット掛け部材2の先端部2a及び第2ネット掛け部材3の先端部3aに跨って掛けられネット部材5のうちの一本の横糸5aと対向する位置に停止し、ラッチ22が上記針口を閉じている。
【0022】
第1鉤針20は前記制御装置95で制御される駆動機構で動作して毛髪糸100をネット部材5に植毛するようになっている。又、第1鉤針20は、
図3のB図に示した複数本の第2鉤針30と同じに、左右に並んだ複数本になっている。複数本の第1鉤針20の一群は、前記制御装置で制御される駆動機構で一緒に動作して毛髪糸100をネット部材5に植毛するようになっている。第1鉤針20と第2鉤針30とが1対1に対応付けられている。第1鉤針20及び第2鉤針30は複数本に限定されるものではなく単数本でも良い。
【0023】
第2鉤針30は、ストッカー40から毛髪糸100を捕捉する部材であり、先端に1本の毛髪糸100を捕捉可能なフック31が設けられる。初期状態では、
図3のA図に示したように、第2鉤針30がネット受け機構1から右側に離れてネット受け機構1と反転ローラー80との間の位置に停止し、フック31の針口32が
図3のA図における紙面の表側に向いている。又、第2鉤針30は、
図3のB図に示したように、左右に並んだ複数本になっている。複数本の第2鉤針30の一群は、前記制御装置95で制御される駆動機構で一緒に動作して毛髪糸100を捕捉するようになっている。尚、フック31が1本の毛髪糸100を捕捉する場合を例示するが、フック31が2本又は3本以上の複数本の毛髪糸100を捕捉するようにしてもよい。
【0024】
糸位置出しバー50は、第2鉤針30でストッカー40から引き出される毛髪糸100を所定位置に誘導する部材であり、
図3のB図に示したように、左右に延びる中心線を有する円柱状の外周面から中心線の側に窪む複数の糸ガイド51が円柱状の外周面を一周するように設けられている。又、糸位置出しバー50の左右方向の両端部が前記装置本体に固定して設けられても良いが回転可能に設けられることにより、糸位置出しバー50が第2鉤針30でストッカー40から引き出される毛髪糸100で回転され、毛髪糸100における第2鉤針30で引き出される部分が糸ガイド51で擦れて傷むことを防止することができ、好適である。糸ガイド51の個数は、第2鉤針30の個数と同数になっている。
【0025】
糸落としバー60は、ネット部材5に植毛された毛髪糸100が糸引込バー70で引き込まれる工程において前記制御装置95で制御される駆動機構で上下に振動し、糸引込バー70で引き込まれる毛髪糸100の端部を払い落として下方に毛髪糸100を整髪させるようになっている。
【0026】
糸引込バー70は、前記制御装置95で制御される駆動機構で前後に移動し、ネット部材5に植毛された毛髪糸100を引き込むようになっている。磁石90は、第1鉤針20で毛髪糸100をネット部材5に植毛する前工程として、第1鉤針20が第2鉤針30とストッカー40とで2つ折りになった毛髪糸100の間に入って直進で後退するときに第1鉤針20のラッチ22が毛髪糸100に触れて閉じられることから、この閉じられたラッチ22を磁力で吸引して開くように、前記装置本体に取り付けられており、永久磁石又は電磁石のどちらでも適用可能であるが、電磁石であれば、電磁石を前記制御装置95で制御し閉じられたラッチ22を開くときだけ磁力を発生することができる。反転ローラー80は、前記装置本体に取り付けられている。
【0027】
図4乃至12を用いて、発明を実施するための形態に係るネット受け機構1を用いた植毛装置の動作について説明する。
図4に示したよう、第1動作としての糸引込バー前進動作により、糸引込バー70の前部が前進しストッカー40の糸取孔42及び第2鉤針30を右側に超えた位置に停止する。次に、第2動作としての第2鉤針上昇動作により、第2鉤針30が上昇し、フック31が糸取孔42を経由してストッカー40の内部における複数本の毛髪糸100の列の中に入った後に下降して初期位置に停止する。この第2鉤針上昇動作でフック31が1本の毛髪糸100の左右方向の中央部を引っ掛けながら下降して停止することで、上記1本の毛髪糸100がストッカー40と第2鉤針30との間で2つ折りされた状態となる。また、複数本の第2鉤針30で2つ折りされた毛髪糸100が1本ずつ糸位置出しバー50の複数の糸ガイド51のそれぞれに収容されるので、第2鉤針30とストッカー40とに展開された各毛髪糸100の位置が所定位置に確保され、第2鉤針30が各毛髪糸100を適切に捕捉することができる。
【0028】
又、第3動作としての
図2のA図及びB図に示す動作に相当する第1鉤針前進動作により、第1鉤針20のフック21が横糸5aの下を通るのに伴い、ラッチ22が横糸5aに干渉して開き、フック21の針口が横糸5aを左側から右側に超えて逃げ部12に収容されて仮想線で示す位置に到達する。その後、第4動作としての
図2のC図に示す動作に相当する第1鉤針後退動作により、第1鉤針20が
図4に示した位置から左側に後退し、フック21が横糸5aを捕捉する。
【0029】
図5に示したように、第5動作としての
図2のD図に示す動作に相当する更なる第1鉤針前進動作により、第1鉤針20が前進するのに伴い横糸5aがフック21から抜けて開いたラッチ22で持ち上げられ第1鉤針20のラッチ22よりも後部の上に落下し、フック21がストッカー40と第2鉤針30との間で2つ折りになった毛髪糸100の側に近づく。そして、第6動作としての第1鉤針横向き動作により、フック21の針口が上を向いた状態から横向きになるように第1鉤針20が回転する。この第1鉤針20の回転に伴い、フック21の針口が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する側につまり
図5の紙面の裏側に向けられた状態になる。
【0030】
図6のA図に示したように、第7動作としての更なる第1鉤針前進動作により、第1鉤針20がフック21の針口を横向きのまま更に前進するのに伴い、フック21が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分と第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分との間に入り、フック21の針口が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分に向き合うまで第1鉤針20が前進して止まる。その後、第8動作としての第2鉤針横移動動作により、第2鉤針30が
図6の紙面の裏側から表面の側に横移動するのに伴い、
図6のB図に示したように、毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分が第1鉤針20の針口に導入される。これにより、第1鉤針20が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分を捕捉する。フック21の針口が
図7のB図の上側に向けられた状態であり、フック31の針口32が
図6のB図の下側に向いている状態であることから、毛髪糸100の導入の際に第2鉤針30から毛髪糸100が外れることがない。
【0031】
図7に示したように、第9動作としての第1鉤針後退動作により、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように第1鉤針20が回転し、横糸5aにラッチ22が接触して針口が閉じられる。第1鉤針20が初期位置の側に後退し実線で示したようにネット部材5から離れるに伴い毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の左側に接触する部分をストッカー40から引き出す。この毛髪糸100の引き出された部分は、糸取孔42の左側から糸位置出しバー50を経由し横糸5aとその隣の横糸との間を通りフック21で折り返され、そして、フック21から横糸5aとその隣の横糸との間を通り、更に、横糸5aとその反対隣の横糸との間を通り第2鉤針30に至るように展開される。第1鉤針20が実線で示した位置から仮想線で示した位置へと後退するのに伴い、ラッチ22が磁石90の磁力で吸引され第1鉤針20の針口を開く。
【0032】
図8に示したように、第10動作としての第1鉤針上昇動作により、第1鉤針20が
図7の仮想線で示した位置から前進しかつ上昇するのに伴い毛髪糸100のフック21と横糸5aとの間の部分が横糸5aを中心としたV字形を呈する。尚、第1鉤針上昇動作は無くてもよいが、第1鉤針上昇動作を行うことにより、後述する第11動作の際に、フック21が毛髪糸100の糸位置出しバー50と横糸5aとの間の部分を確実に通るようになる。その後、第1鉤針20が毛髪糸100を横糸5aに結ぶために回転する。第1鉤針20の回転数は、1回転、2回転又は3回転以上でも良い。第1鉤針20が回転することにより、毛髪糸100のフック21と横糸5aとの間の2本の部分が互いに絡むように撚り合わせられてループ部45が設けられ、フック21の針口が上を向いた状態で停止する。
【0033】
図9に示したように、第11動作としての第1鉤針前進及び横向き動作により、第1鉤針20が上向きのまま紙面の表側に移動した後に前進し、フック21が毛髪糸100の糸位置出しバー50と横糸5aとの間の部分を通り、フック21の針口が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する部分まで第1鉤針20が前進して止まる。この際、ループ部45は、第1鉤針20のラッチ22よりも後部の上に落下した状態となる。その後、フック21の針口が上を向いた状態から横向きになるように第1鉤針20が回転する。この第1鉤針20の回転に伴い、フック21の針口が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する側につまり
図9の紙面の裏側に向けられた状態になる。第12動作として第2鉤針30が
図9の紙面の裏側から表面の側に横移動しフック21の針口に毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する部分を導入する。又は、第1鉤針20が
図9の紙面の表側から裏面の側に横移動しフック21の針口に毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する部分を導入するようにしてもよい。これにより、第1鉤針20が毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する部分を捕捉し、毛髪糸100が第1鉤針20に導入される。尚、第2鉤針30と第1鉤針20の両方が、互いに近づくように動いてもよい。フック21の針口が
図10の紙面の裏側に向けられた状態であり、第2鉤針30のフック31の針口32が
図10の紙面の表側に向いていることから、毛髪糸100の導入の際に第2鉤針30から毛髪糸100が外れることがない。
【0034】
図10に示したように、第13動作としての第1鉤針後退及び回転動作により、毛髪糸100の第2鉤針30から糸取孔42の右側に接触する部分を捕捉した第1鉤針20が上向きになるように回転し、初期位置の側に後退するのに伴い、ループ部45にラッチ22が接触し、フック21の針口が閉じられ、横糸5aに対する毛髪糸100の結びつまり植毛が完了する。この第1鉤針20のフック21が後退してループ部45を通過する際に第2鉤針30が上下に小刻みに動いてフック31から毛髪糸100を外しの毛髪糸100のピーリングを防止する。ピーリングとは、毛髪糸100が摩擦によって、縮れてしまう現象をいう。
【0035】
図11に示したように、第14動作としての糸引込バー後退動作により、糸引込バー70が初期位置の側に後退するのに伴い毛髪糸100の糸位置出しバー50の側の部分をネット受け機構1の側に引き込む。そして、糸引込バー70が初期位置に停止する。
【0036】
図12に示したように、第15動作及び第16動作を行う。第15動作として第1鉤針20が初期位置に戻って停止する間にラッチ22がフック21の針口を閉じる。第16動作として糸落としバー60が下方に移動するに伴い横糸5aに対する植毛の完了した毛髪糸100を下方に整髪させる。そして、糸落としバー60が上方に移動し初期位置に停止する。これにより、植毛装置における横糸5aに対する毛髪糸100を植毛する動作の1サイクルが終了し、
図13に示す、結び目が作成される。尚、
図13は、
図8での第10動作において、第1鉤針20が3回転し、植毛糸100が3回撚り合わせられてネット部材5に結び付けられた状態を図示している。尚、第16動作及び第17動作のいずれから先に行っても良く、第15動作及び第16動作を同時に行っても良い。
【0037】
なお、発明を実施するための形態1では、植毛糸100のネット部材5へ結びつける方法を例示したが、
図13以外の結び方でも適用可能であり、植毛糸100がネット部材5に接着剤で固定されたり、溶着で固定されたりしてもよい。
【0038】
図3において、ストッカー40の底部41に糸取孔42が設けられていなくても適用可能であるが、図示のように底部41に糸取孔42が設けられたことで、第2鉤針30が直線的に昇降して出し入れを可能となるので、第2鉤針30によるストッカー40からの毛髪糸100の捕捉する動作が簡便になる。
【0039】
図3において、ストッカー40は毛髪糸100をネット受け機構1の中心線の延びる方向に並べられて収容されるように平板状の底部の左右方向の両端部から上方に突出した左右の側壁を備えて上部が開放された樋状に構成された以外の態様でも適用可能であるが、図示のようにストッカー40は毛髪糸100をネット受け機構1の中心線の延びる方向に並べられて収容されるように平板状の底部の左右方向の両端部から上方に突出した左右の側壁を備えて上部が開放された樋状に構成されたことで、ストッカー40に毛髪糸100を簡単に収容できる。
【0040】
図3において、ストッカー40より下方に第2鉤針30とストッカー40とに展開された毛髪糸100を収容する糸ガイド51を有する糸位置出しバー50が設けられていなくても適用可能であるが、図示のようにストッカー40より下方に第2鉤針30とストッカー40とに展開された毛髪糸100を収容する糸ガイド51を有する糸位置出しバー50が設けられれば、第2鉤針30とストッカー40とに展開された毛髪糸100の位置が所定位置に確保される。
【0041】
図3において、ネット受け機構1とストッカー40との間にネット部材5に植毛された毛髪糸100を引き込むように前後に移動する糸引込バー70が設けられていなくても適用可能であるが、図示のようにネット受け機構1とストッカー40との間にネット部材5に植毛された毛髪糸100を引き込むように前後に移動する糸引込バー70が設けられれば、ネット部材5に植毛された毛髪糸100が第1鉤針20の側に確実に引き込むことができる。
【0042】
図3において、ネット受け機構1とストッカー40との間に糸引込バー70で引き込まれる毛髪糸100を払い落として下方に整髪させる糸落としバー60が設けられていなくても適用可能であるが、図示のようにネット受け機構1とストッカー40との間に糸引込バー70で引き込まれる毛髪糸100を払い落として下方に整髪させる糸落としバー60が設けられれば、第1鉤針20の側に毛髪糸100を整列させることができ、ネット部材5に植毛された毛髪糸100が固く結び付けられる効果がある。
【0043】
[発明を実施するための形態2]
図14を参照し、発明を実施するための形態2のネット受け機構201について説明する。本実施の態様では、ネット受け機構201は、並列配置された第1ネット掛け部材202の先端部202aと第2ネット掛け部材203の先端部203aとが重力方向と交差するように斜めに配置される。
図14のB図に示すように、第2ネット掛け部材203の先端部203aは、矢印Yに示すように重力方向に交差する方向に直進する前進運動及び後退運動を行う。
第2ネット掛け部材203の先端部203aが、直進する前進運動により第1ネット掛け部材202の先端部202aの上の位置に移動することで、逃げ空間6が形成される。
つまり、第2ネット掛け部材203の先端部203aが直進する前進運動を行うに伴い、第1ネット掛け部材202の先端部202aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置と第2ネット掛け部材203の先端部203aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じ、逃げ空間部6が第1ネット掛け部材202の先端部202aと第2ネット掛け部材203の先端部203aとネット部材5とで囲まれて形成される。
【0044】
この構造とすることで、第1ネット掛け部材202側のネット部材5の自重により下方に力がかかりやすくなることから、ネット部材5に鈎針4を侵入しやすくできる効果がある。
【0045】
[発明を実施するための形態3]
図15を参照し、発明を実施するための形態3のネット受け機構301について説明する。本実施の態様では、ネット受け機構301は、並列配置された第1ネット掛け部材302の先端部302aと第2ネット掛け部材303の先端部303aを備える点は同じである。
図15のB図に示すように、第2ネット掛け部材203の先端部203aは、矢印Yに示すように回転するように前進運動及び後退運動を行う。
第2ネット掛け部材203の先端部203aが、矢印Yに示すように回転する前進運動により第1ネット掛け部材302の先端部302aの上の位置に移動することで、逃げ空間6が形成される。
つまり、第2ネット掛け部材303の先端部303aが回転する前進運動を行うに伴い、第1ネット掛け部材302の先端部302aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置と第2ネット掛け部材303の先端部303aにおける鈎針4の直進方向に交差する方向への位置とにずれを生じ、逃げ空間部6が第1ネット掛け部材302の先端部302aと第2ネット掛け部材303の先端部303aとネット部材5とで囲まれて形成される。
【0046】
この構造とすることで、第1ネット掛け部材302側のネット部材5が、自重により下方に力がかかりやすくなることから、ネット部材5に鈎針4が侵入しやすくできる効果がある。
【0047】
本発明の毛髪糸100は、人毛であってもよく、合成繊維からなる人工毛でも良い。又、人毛と人工毛が混合されたものであっても良い。
【0048】
尚、完成予定のウィッグによっては、ネット部材5の横糸5aの全てに植毛糸100を結び付けることなく、ネット部材5の一部分について毛髪糸100を結び付けない場合もある。その際、制御装置95が第2動作としての第2鉤針上昇動作を行わない制御を行うことにより、毛髪糸100をストッカー40から捕捉しないことで毛髪糸100をネット部材5に結びつけないようにすることも可能である。
【0049】
本発明に係るネット受け機構1を備えた植毛装置により製造されるものとしてウィッグを挙げたが、本発明に係るネット受け機構1を備えた植毛装置により製造される植毛製品としては、上記ウィッグに限定されるものではない。上記植毛製品としては、人の頭部に装着するための機構を有するかつらやウィッグの他に髭にも適用可能であり、かつら、ウィッグや髭の製造の際に使用される、ネット部材に毛髪糸が植毛された後の植毛済み部材も含む。
【符号の説明】
【0050】
1 ネット受け機構
2 第1ネット掛け部材
2a 第1ネット掛け部材2の先端部
3 第2ネット掛け部材
3a 第2ネット掛け部材3の先端部
4 鈎針
5 ネット部材
5a 横糸
20 第1鉤針(鈎針4に相当)
21 第1鉤針20のフック(鈎針4のフック4aに相当)
22 ラッチ
30 第2鉤針
31 第2鉤針30のフック
40 ストッカー
41 底部
42 糸取孔
43 側壁
45 ループ部
50 糸位置出しバー
51 糸ガイド
60 糸落としバー
70 糸引込バー
80 反転ローラー
90 磁石
95 制御装置
100毛髪糸
201 ネット受け機構
301 ネット受け機構