(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021020
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】成形品金型のガス抜き装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/34 20060101AFI20240207BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20240207BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B29C45/34
B22D17/22 T
B22D17/22 G
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022131362
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】500283169
【氏名又は名称】有限会社 サンエイ・モールド
(72)【発明者】
【氏名】桜井 久次郎
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CL50
4F202CP01
4F202CP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金型を使用した成形品の製造において、金型キャビティー内部やランナー内部の減圧不足により生じる問題を解消する、金型内部排気装置を提供する。
【解決手段】それぞれ互いに連通する切り欠き溝K、排気溝H、ネジ用凹陥N、外部排気通路接続溝Aを備えた排気コマ1を、金型のランナーに連続する形で金型に搾設した埋設孔に埋設し、排気コマ1の切り欠き溝Kをランナー端部に合致させ、排気コマ1の外部排気通路接続溝Aを外部排気通路に合致させる事により、成形品金型のガス抜き装置を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティーとコアの間に形成される金型の空隙にゲートから溶融材料を注入して製品を得る射出成型もしくは鋳造において、
キャビティー側もしくはコア側に設置した前記空隙と連続するランナーと金型外部の間に排気コマを埋設してなる、成形品金型のガス抜き装置。
【請求項2】
排気コマがランナーに連続する切り欠き溝と排気溝を備え、更に排気溝を金型外部と導通させる導通路を有すると共に、排気コマを金型に固定するためのネジ受け凹陥が穿設されている事を特徴とする、請求項1記載の成形品金型のガス抜き装置。
【請求項3】
排気コマが円筒形である事を特徴とする、請求項1および2記載の成形品金型のガス抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂、金属等の成形品金型に適用することによって、ランナー内に残留する廃棄分の成形材料量の削減のため、成形時に金型内のガスを迅速に排出する事を目的とする射出成形における成形品金型のガス抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は今世紀初頭より20有余年にわたって射出成形特に合成樹脂等の射出成形における射出成形品の歩止まりの悪さを改良すべく研究を行ってきた。それらは特許或いは特許出願として公にされ、これまで曖昧な計算や技術者の勘にたよっていた設計、すなわちランナーの形状、ランナーの配置形式、排気の為の望ましい金型構造、等々を実験を繰り返すことによって確認し、その結果発明者が到達したガス抜きの基本思想は業界に広く知られるようになり、今日に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4085182号
【特許文献2】特許第4096327号
【特許文献3】特許第5413780号
【特許文献4】特開2022-083946
【特許文献5】特願2022-047551
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品金型内部における空気及び流体材料の状況は、航空機機体外部の流体の動きなどとは異なり、設計における計算値の適用は極めて大まかな目安にしかならず、ほとんどの金型加工は試作や失敗の繰り返しによる経験値の積み重ねで出来上がっていると言える。そのため、例えば成形品金型作成の際に設置されるランナー部分の断面形状も、流体材料を迅速に供給出来かつ型抜きの際に抵抗のないこの程度の寸法等というかなり漠然とした常識に左右されている場合が多い。
【0005】
このように従来からの固定観念により設計されてきたランナー部分の断面積(つまり製品製造後の廃棄材料体積)について繰り返し試験を行った結果、ランナー部分の断面積はランナー部分の排気が有効に行われるならば、従来常識による設計の50%前後でも十分に目的が達成できることが確認できた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これまでの先行技術をこの課題に適用するなら、
図8及び
図9に示す如き金型Bのランナー部分に先行技術に明らかにされている切り欠き溝Kと排気溝H(排気溝は他の部分に比較して寸法が極めて小さいのでこの図面には表示されておらず、排気溝の存在する部位が記号Hにより示されている)を連接し、排気溝Hを外部排気通路Oに開口させることにより、
図9のゲートGからランナーRに送給された流体原料の充填圧がランナー及びキャビティーC内の空気を瞬時に外部排気通路Oから排出させ、ほぼ真空に近いランナーRとキャビティーC内に流体原料が迅速確実に充填されることによって、瑕疵の無い成形品が得られることになる。
図7には以上の操作によってランナーR内部に生み出された廃棄材料部分R’が、切り欠き溝Kに対応する突起K’と共に示されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ランナーRの端部から迅速確実にランナーR内空気の排出を行うことが出来るので、送給される流体原料の迅速な充填が可能となり、その充填に対する抵抗が取り除かれるため、ランナーRの縦断面積をより小さくすることが可能で、歩留まりの良い成形作業ができると共に、廃棄材料の大幅削減も可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明実施例排気コマの第一の斜面図である。
【
図2】本発明実施例排気コマの第二の斜面図である。
【
図5】本発明実施例の金型と排気コマの分解斜面図である。
【
図6】本発明実施例の金型と排気コマの組み立て斜面図である。
【
図7】本発明実施例により生み出される廃棄材料部分の斜面図である。
【
図8】本発明実施例の金型の原理的な斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための原理は
図8及び
図9に示す通りであるが、ランナーR・切り欠き部K・排気溝Hおよび外部排気通路Oの工作を金型製造現場で大量に行うことは、工作上の技術的要領も存在するため極めて困難であると言わざるをい得ない。その困難を排除するため、本発明の技術的要点を集約した排気コマ1を金型に埋設する事によって具体的な実施を容易に可能とした。
【実施例0010】
図1から
図4に示す如き排気コマ1は、それぞれ互いに連通する切り欠き溝K、排気溝H、ネジ用凹陥N、外部排気通路接続溝Aを備えている。排気コマ1は円筒形であり、これは金型Bの製造上もっとも確実簡単にこの排気コマ1を
図5および
図6のごとく埋設する埋設孔2を穿設することが出来る為に与えられた形状で有り、製造上問題が無ければ円筒形に限らず多角筒など自由に採用できる。
【0011】
排気コマ1の金型Bへの設置は、
図5の如く金型BのランナーRに連続する形で、金型Bに埋設孔2を搾設し、埋設孔2に排気コマ1を埋設し、排気コマ1の切り欠き溝KをランナーR端部に合致させ、排気コマ1の外部排気通路接続溝Aを外部排気通路Oに合致させる事により、
図6の如く完成する。尚、排気コマ1を埋設孔2に固定すべくネジ用凹陥Nに螺入されるネジは図面煩雑さを避けるために省略されている。
本発明は、金型内部空気の排出を迅速確実に行える排気コマ1を提供することによって、材料を問わず全ての金型成形品の歩留まりを大幅に高めることが出来ると共に、金型成形品製造により発生する廃棄材料を減少させることが出来るので、合成樹脂、金属、等々全ての金型成形品製造に利用できる。