(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021024
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールフィルム、光学フィルム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240207BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C08J5/18 CEX
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160480
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】111128893
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202210920210.7
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】巫 誠恩
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
【Fターム(参考)】
2H149AB02
2H149AB11
2H149CA02
2H149CB06
2H149FA03W
2H149FB05
2H149FD17
2H149FD21
2H149FD22
2H149FD23
4F071AA29
4F071AA81
4F071AF29Y
4F071AF53
4F071AG28
4F071AG34
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアルコールフィルム、それにより形成された光学フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリビニルアルコールフィルム、それにより形成された光学フィルム及びその製造方法に関する。当該ポリビニルアルコールフィルムは、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が(A
UV280nm+A
UV320nm)/A
UV215nmで0.500~1.300の間である。本発明のポリビニルアルコールフィルムは、良好な染色均一性とシワが生じにくい特性を同時に具備することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmで0.500~1.300の間である、ポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
さらに紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値が(AUV215nm*1+AUV280nm*2+AUV320nm*3)/(AUV215nm+AUV280nm+AUV320nm)で1.480~1.820の間である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
38.0~48.0の間の重量膨潤度をさらに有する、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルムにより形成されたものである、光学フィルム。
【請求項5】
偏光フィルムである、請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
(a)重合が完了したポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内に注入し、且つ乾燥時に噴水して降温する、樹脂乾燥工程と、
(b)前記乾燥を経たポリビニルアルコール系樹脂を昇温して溶解し、且つ濃度を調整して、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する、溶解工程と、
(c)前記ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、前記鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得る、鋳造工程と、
(d)前記ポリビニルアルコール予備フィルムを複数の加熱ローラ及び少なくとも2つのセクションの温度制御されたオーブン内で乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムを得る、乾燥工程と、を含み、
そのうち、前記複数の加熱ローラ中、開始加熱ローラは前記複数の加熱ローラのうちで最高温度を有し、最終加熱ローラは前記複数の加熱ローラのうちで最低温度を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のアルカリ化度は、99.80mole%より大きい、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は2,300~3000の間である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の分子量は100,000~110,000Mnの間である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記鋳造ドラムの回転速度は5.0~6.4m/minの間である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
前記複数の加熱ローラのうち、開始加熱ローラと最終加熱ローラの温度差は、20~45℃の間である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項12】
前記オーブンの最高温度は、60~120℃の間である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項13】
前記オーブンの最低温度は、40~70℃の間である、請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)フィルム及びその製造方法に関するものであり、当該PVAフィルムは光学フィルムとして、特に偏光フィルムとして用い得る。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)フィルムは一種の親水性ポリマーであり、透明性、機械的強度、水溶性、良好な加工性などの性能を有するため、包装材料又は電子製品の光学フィルムにおいて広く使用されている。ポリビニルアルコールフィルムは偏光板内の重要な構成要素であり、染色・延伸を経ると偏光特性を呈することができ、光線に偏光性を持たせて明暗をコントロールすることができるため、現在では各種の液晶スクリーンに広く使用されている。
【0003】
近年では、スクリーン技術が薄型化に進むなかで、偏光フィルム製造工程に対する品質要求も徐々に高まっており、偏光フィルムが薄型化する過程で、ポリビニルアルコールフィルムのシワ問題や染色均一性を重視する度合いも次第に高まってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、ポリビニルアルコールフィルムを用いて大きいサイズの偏光フィルムを製造する際に、フィルム染色が不均一になったり、フィルムの染色・延伸時にシワが発生したりする状況が頻繁に生じていた。
【0005】
本願発明者は、熱処理がポリビニルアルコール末端カルボニル基(Carbonyl group)の共役二重結合の形成を誘導し、ポリビニルアルコール内部を脱水させて-(C=C)n-結合を生じさせることができ、-(C=C)n-中のn値の違いによって異なる紫外線-可視光スペクトル(UV-VIS)の特徴ピークを観察し得ることを発見した。例えば、n=1の場合には215nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができ、n=2の場合には280nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができ、n=3の場合には320nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができる。従って、UV-VISで測定されるポリビニルアルコールフィルムの215nm、280nm及び320nmにおける吸収度をコントロールするなら、ポリビニルアルコールフィルム中に含まれるC=C疎水性二重結合比をコントロールして、良好な染色均一性とシワが生じにくい特性を同時に具備するポリビニルアルコールフィルムの形成を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmで0.500~1.300の間である、ポリビニルアルコールフィルムを提供することを目的としている。
【0007】
1つ以上の実施例において、ポリビニルアルコールフィルムはさらに、紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値が(AUV215nm*1+AUV280nm*2+AUV320nm*3)/(AUV215nm+AUV280nm+AUV320nm)で1.480~1.820の間である。
【0008】
1つ以上の実施例において、ポリビニルアルコールフィルムはさらに、38.0~48.0の間の重量膨潤度を有する。
【0009】
本発明の別の目的は、光学フィルムを提供することであり、それは上述のポリビニルアルコールフィルムで形成されたものである。
【0010】
1つ以上の実施例において、光学フィルムは偏光フィルムである。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、上述のポリビニルアルコールフィルムの製造方法を提供することであり、それは、(a)重合が完了したポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内に注入し、且つ乾燥時に噴水して降温する、樹脂乾燥工程と、(b)乾燥を経たポリビニルアルコール系樹脂を昇温して溶解し、且つ濃度を調整して、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する、溶解工程と、(c)ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得る、鋳造工程と、(d)ポリビニルアルコール予備フィルムを複数の加熱ローラ及び少なくとも2つのセクションの温度制御されたオーブン内で乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムを得る、乾燥工程と、を含み、そのうち、複数の加熱ローラ中、開始加熱ローラは複数の加熱ローラのうちで最高温度を有し、最終加熱ローラは複数の加熱ローラのうちで最低温度を有する。
【0012】
1つ以上の実施例において、ポリビニルアルコール系樹脂のアルカリ化度は99.80mole%より大きい。
【0013】
1つ以上の実施例において、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は2,300~3,000の間である。
【0014】
1つ以上の実施例において、ポリビニルアルコール系樹脂の分子量は100,000~110,000Mnの間である。
【0015】
1つ以上の実施例において、鋳造ドラムの回転速度は、5.0~6.4m/minの間である。
【0016】
1つ以上の実施例において、複数の加熱ローラのうち、開始加熱ローラと最終加熱ローラの温度差は、20~45℃の間である。
【0017】
1つ以上の実施例において、オーブンの最高速度は、60~120℃の間である。
【0018】
1つ以上の実施例において、オーブンの最低速度は、40~70℃の間である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、本発明が提供するポリビニルアルコールフィルムは、良好な染色均一性とシワが生じにくい特性を同時に具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のポリビニルアルコールフィルムを製造する調製システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施形態は、本発明を過度に限定するものではない。本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱せずに本明細書中で検討する実施例に対して修正や変更を行うことができ、いずれも本発明の範囲に属する。
【0022】
本明細書中の「1」及び「一種」という用語は、本明細書において文法の対象が1つ以上(即ち少なくとも1つ)存在することを指す。
【0023】
本発明は、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmで0.500~1.300の間である、ポリビニルアルコールフィルムを提供することを目的としている。
【0024】
ポリビニルアルコールは、熱処理時にポリビニルアルコール末端カルボニル基(Carbonyl group)の共役二重結合の形成を誘導し、ポリビニルアルコール内部に脱水による-(C=C)n-結合を生じることができる。-(C=C)n-中のn値の違いによって異なるUV-VIS特徴ピークを観察することができ、例えば、n=1の場合には、215nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができ、n=2の場合には、280nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができ、n=3の場合には320nmにおいて特徴ピークの発生を観察することができる。従って、異なるUV-VIS特徴ピークの発生は、UV-VISにおいて隣接する量の異なる二重結合が生成されていることを表す。
【0025】
本明細書に記載の「紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値」とは、ポリビニルアルコールフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置した後、特定のスペクトル下におけるフィルムの吸収度を測定し、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値を(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmによって得たものである。UV特徴ピークの値が異なることは、UVにおいて隣接する量の異なる二重結合が発生していることを表すため、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値は、ポリビニルアルコールフィルム中のC=Cが明らかな疎水性状態を招く割合を表す。紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が過度に高い場合には、フィルム内の隣接C=C含有量が比較的多く、フィルムブロックの疎水レベルが比較的高いことを表す。そのため、延伸槽でフィルムの延伸を行う際にヨード液がフィルムの特定のブロック内にスムーズに入っていかず、フィルム染色が不均一になる現象が生じやすくなる。逆に、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が過度に低い場合には、フィルム内の隣接C=C含有量が比較的少なく、フィルムの吸水速度が速すぎることを表す。そのため、染色槽でフィルムの延伸を行う際に、膨潤を経たポリビニルアルコールフィルムにシワが入る現象が生じやすくなる。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコールフィルムの紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値は0.500~1.300の間であり、例えば、0.500、0.525、0.550、0.575、0.600、0.625、0.650、0.675、0.700、0.725、0.750、0.775、0.800、0.825、0.850、0.875、0.900、0.925、0.950、0.975、1.000、1.025、1.050、1.075、1.100、1.125、1.150、1.175、1.200、1.225、1.250、1.275又は1.300のうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0026】
本明細書に記載の「紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値」とは、ポリビニルアルコールフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置した後、特定のスペクトル下におけるフィルムの吸収度を測定し、紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値を(AUV215nm*1+AUV280nm*2+AUV320nm*3)/(AUV215nm+AUV280nm+AUV320nm)によって得たものである。紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値は、ポリビニルアルコールフィルム内に出現するC=C量の平均を表している。紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値が高すぎる場合には、フィルム内のC=C含有量が比較的多く、フィルムの疎水レベルが比較的高いことを表す。そのため、延伸槽でフィルムの延伸を行う際にヨード液がフィルムの特定のブロックにスムーズに浸入できず、フィルム染色が不均一になる現象が生じやすくなる。逆に、紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値が低すぎる場合には、フィルム内のC=C含有量が比較的少なく、フィルムの膨潤時における吸水速度が速すぎることを表す。そのため、染色槽でフィルムの延伸を行う際に、シワが入る現象が生じやすくなる。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコールフィルムの紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値は1.480~1.820の間であり、例えば、1.480、1.500、1.520、1.540、1.560、1.580、1.600、1.620、1.640、1.660、1.680、1.700、1.720、1.740、1.760、1.780、1.800又は1.820のうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0027】
本明細書に記載の「重量膨潤度」とは、ポリビニルアルコールフィルムのフィルム内に水を浸入させ得る度合いをいう。ポリビニルアルコールフィルムの重量膨潤度を測定するとき、それに含まれる可塑剤と添加剤は析出され、水分だけがフィルム内に残る。そのため、ポリビニルアルコールフィルムの重量膨潤度が比較的低い場合、そのフィルムはフィルム内に水を浸入させる度合いがやや悪いことを表す。即ち、そのフィルムはやや疎水性であり、ポリビニルアルコールフィルムの染色が不均一になる現象が生じやすくなる。一方、フィルムの重量膨潤度が比較的高い場合、そのフィルムはフィルム内に水を浸入させる度合いが比較的高いことを表す。即ち、そのフィルムはやや親水性であり、ポリビニルアルコールフィルムにシワが入る現象が生じやすくなる。重量膨潤度は、ポリビニルアルコールフィルムを23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置した後、フィルムを水中に入れて膨潤させてから取り出し、表面の水分を拭き取って秤量したフィルムの重さをM1とし、さらにそのフィルムをオーブンに入れて乾燥し、秤量したフィルムの重さをM2とし、(M1-M2)/M1*100%によって得たものである。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコールフィルムの重量膨潤度は38.0~48.0の間であり、例えば、38.0、38.5、39.0、39.5、40.0、40.5、41.0、41.5、42.0、42.5、43.0、43.5、44.0、44.5、45.0、45.5、46.0、46.5、47.0、47.5又は48.0のうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0028】
別の態様において、本発明は上述のポリビニルアルコールフィルムの製造方法も提供するが、それは、(a)重合が完了したポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内に注入し、且つ乾燥時に噴水して降温する、樹脂乾燥工程と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を昇温して溶解し、且つポリビニルアルコール系樹脂の濃度を調整して、ポリビニルアルコール鋳造溶液を形成する、溶解工程と、(c)ポリビニルアルコール鋳造溶液を鋳造ドラムに鋳込み、鋳造ドラムから剥離して、ポリビニルアルコール予備フィルムを得る、鋳造工程と、(d)ポリビニルアルコール予備フィルムを複数の加熱ローラ及び少なくとも2つのセクションの温度制御されたオーブン内で乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムを得る、乾燥工程と、を含み、そのうち、複数の加熱ローラ中、開始加熱ローラは複数の加熱ローラのうちで最高温度を有し、最終加熱ローラは複数の加熱ローラのうちで最低温度を有し、且つ最高温度と最低温度の加熱ローラの差は特定の範囲内にコントロールされ、同時にオーブンの最高温度と最低温度がコントロールされる。
【0029】
以下は
図1と併せて参照されたい。
図1は、加熱ローラの個数や乾燥器のセクション数を限定するものではなく、明細書を明解に例示するための助けに過ぎず、実際に使用できる加熱ローラの個数と乾燥器のセクション数を示すものではない。少なくとも1つの実施例によれば、上述の樹脂乾燥工程は、重合が完了したポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内に注入し、且つ高温乾燥時に適時噴水して降温するというものである。少なくとも1つの実施例によれば、乾燥器の温度は80℃~130℃であるのが好ましく、具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃及び130℃である。
【0030】
少なくとも1つの実施例によれば、上述の溶解工程は、1,800kgの乾燥を経たポリビニルアルコール系樹脂、4,000kgの水及び200kgの可塑剤のグリセリンを溶解槽110中で攪拌しながら140℃まで昇温させ、少なくとも140℃の状態を維持しながら少なくとも180分間溶解し、さらに混合器を使用してポリビニルアルコール系樹脂水溶液を均一に混合してから、水を加えてポリビニルアルコール系樹脂水溶液の濃度を30.0%~50.0%に調整し、ポリビニルアルコール鋳造溶液を得るというものである。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に溶解する温度は少なくとも120℃であるのが好ましく、具体的には、例えば少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃又は少なくとも160℃などである。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂の溶解時間は少なくとも180分間であるのが好ましく、具体的には、例えば少なくとも180分間、少なくとも190分間、少なくとも200分間、少なくとも210分間、少なくとも220分間、少なくとも230分間又は少なくとも240分間などである。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の濃度は30.0%~50.0%であるのが好ましく、具体的には、例えば30.0%、35.0%、40.0%、45.0%又は50.0%である。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル系樹脂単量体の重合によりポリビニルエステル系樹脂を形成した後、鹸化反応を行って得たものである。そのうち、ビニルエステル系樹脂単量体は、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ペンタン酸ビニル又はオクタン酸ビニルなどのビニルエステル類を含むが、本発明はこれらに限定されない。また、オレフィン類化合物又はアクリレート誘導体と上述のビニルエステル系樹脂単量体との共重合により形成された共重合体も使用可能である。そのうち、オレフィン類化合物は、エチレン、プロピレン又はブチレンなどを含むが、本発明はこれらに限定されない。アクリレート誘導体はアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル又はアクリル酸n-ブチルなどを含むが、本発明はこれらに限定されない。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂のアルカリ化度は、好適には99.80mole%より大きく、これにより良好な光学特性が得られ、例えば99.80mole%超、99.90mole%超又は99.99mole%超である。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は2,300~3,000の間であり、具体的には、例えば2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900又は3,000などのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。少なくとも1つの実施例によれば、ポリビニルアルコール系樹脂の分子量は100,000~110,000Mnの間であり、具体的には、例えば100,000Mn、102,000Mn、104,000Mn、106,000Mn、108,000Mn又は110,000Mnなどのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0031】
発明者は、特定の理論に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内で乾燥する際の噴水降温の有無、加熱ローラ間の温度高低差、オーブンの最高温度の高低、オーブンの最低温度の高低又は鋳造ドラムの回転速度の速さは、いずれもフィルムの乾燥度合いに影響を与えるものであり、これによってフィルムの染色やシワの発生状態に影響が生じることを発見した。仮に、乾燥器でポリビニルアルコール系樹脂の乾燥を行う際に、噴水によって降温しない、加熱ローラ間の温度差が過度に小さい、オーブンの最高温度が過度に高い、オーブンの最低温度が過度に高い、又は鋳造ドラムの回転速度が遅すぎる場合には、いずれもフィルムが過度に乾燥し、隣接C=C疎水性二重結合の生成が過度に多くなり、これによってフィルムに染色が不均一になる問題を生じさせてしまう。また仮に、加熱ローラ間の温度差が過度に大きい、オーブンの最高温度が低すぎる、オーブンの最低温度が低すぎる、又は鋳造ドラムの回転速度が速すぎる場合には、フィルムが完全に乾燥されず、隣接C=C疎水性二重結合の生成量が過度に少なくなり、これによってフィルムにシワを発生させてしまう。
【0032】
少なくとも1つの実施例によれば、上述の鋳造工程は、ポリビニルアルコール鋳造溶液を二軸スクリュー押出機で消泡した後、T型スリットダイリップ120から吐出し、回転する高温の鋳造ドラム130にカーテンコーティングして乾燥を行い、ポリビニルアルコール予備フィルムを得るというものである。鋳造工程を行う際に、鋳造ドラム130の回転速度が遅すぎる場合、フィルムが過度に乾燥し、隣接C=C疎水性二重結合の生成が過剰になり、これによってフィルムに染色が不均一になる問題を生じさせてしまう。逆に、鋳造ドラム130の回転速度が速すぎる場合、フィルムが完全に乾燥されず、隣接C=C疎水性二重結合の生成量が過度に少なくなり、これによってフィルムにシワを発生させてしまう。少なくとも1つの実施例によれば、鋳造ドラム130の回転速度は5.0~6.4m/minの間であり、具体的には、例えば5.0m/min、5.05m/min、5.1m/min、5.15m/min、5.2m/min、5.25m/min、5.3m/min、5.35m/min、5.4m/min、5.45m/min、5.5m/min、5.55m/min、5.6m/min、5.65m/min、5.7m/min、5.75m/min、5.8m/min、5.85m/min、5.9m/min、5.95m/min、6.0m/min、6.05m/min、6.1m/min、6.15m/min、6.2m/min、6.25m/min、6.3m/min、6.35m/min又は6.4m/minなどのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0033】
少なくとも1つの実施例によれば、上述の乾燥工程は、ポリビニルアルコール予備フィルムを鋳造ドラム130から剥離した後、複数の加熱ローラ140と接触させてその上下両面を乾燥してから、オーブン150を用いてポリビニルアルコール予備フィルムの上下両面を熱風で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムを得るというものである。少なくとも1つの実施例によれば、複数の加熱ローラ140は、2~30個でよく、限定しないが、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個又は30個である。1つの好ましい実施例では、13個である。
【0034】
少なくとも1つの実施例によれば、フィルムの乾燥を行う際に、複数の加熱ローラ140の温度は高温から低温へと徐々に下がる。仮に、加熱ローラ140間の温度差が過度に小さい場合、フィルムが過度に乾燥し、隣接C=C疎水性二重結合の生成が過剰になり、これによってフィルムに染色が不均一になる問題を生じさせてしまう。逆に、加熱ローラ140間の温度差が過度に大きい場合、フィルムが完全に乾燥されず、隣接C=C疎水性二重結合の生成量が過度に少なくなり、これによってフィルムにシワを発生させてしまう。そのため、加熱ローラの最高温と最低温の温度差を特定の範囲内にコントロールする必要がある。少なくとも1つの実施例によれば、複数の加熱ローラ140のうち、開始加熱ローラ1401はすべての加熱ローラ140のうちで最高温度を有するものであり、後に続く加熱ローラ140の温度は、最終加熱ローラ140Nの温度がすべての加熱ローラ140のうちで最低温度になるようにして徐々に下げていく。少なくとも1つの実施例によれば、複数の加熱ローラ140のうち、開始加熱ローラ1401と最終加熱ローラ140Nの温度差は20~45℃の間であり、具体的には、例えば20℃、25℃、30℃、35℃、40℃又は45℃などのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。
【0035】
フィルムの乾燥を行う際に使用するオーブン150は複数のセクションの乾燥エリアを有しており、各セクションの温度は部分的に同じにするか又はすべて異ならせることができる。そのうち、オーブン150の中央部に近いセクションは温度が最も高く、オーブン150の最高温度エリアは152であり、オーブン150の中央部から離れたセクションの温度は、最後のセクションであるオーブン150の最低温度エリア154まで徐々に下がっている。仮に、オーブンの最高温度エリア152の最高温度が過度に高いか又はオーブンの最低温度エリア154の温度が過度に高い場合、フィルムが過度に乾燥し、隣接C=C疎水性二重結合の生成が過剰になり、これによってフィルムに染色が不均一になる問題を生じさせてしまう。逆に、オーブンの最高温度エリア152の最高温度が過度に低いか又はオーブンの最低温度エリア154の最低温度が過度に低い場合、フィルムが完全に乾燥されず、隣接C=C疎水性二重結合の生成量が過度に少なくなり、フィルムにシワを発生させてしまう。そのため、オーブンの最高温度エリア152と最低温度エリア154の最高温度と最低温度をコントロールする必要がある。
【0036】
少なくとも1つの実施例によれば、オーブンのセクション数は2~10セクションでよく、具体的には、例えば2セクション、3セクション、4セクション、5セクション、6セクション、7セクション、8セクション、9セクション又は10セクションであり、1つの好ましい実施例では4セクションである。少なくとも1つの実施例によれば、オーブンの最高温度エリア152の最高温度は60~120℃の間であり、具体的には、例えば60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃又は120℃などのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。少なくとも1つの実施例によれば、オーブンの最低温度エリア154の最低温度は40~70℃の間であり、具体的には、例えば40℃、50℃、60℃又は70℃などのうちの任意の2つの数値間の範囲であり、本明細書中、「の間」という用語は両エンドポイントの数値を含む。少なくとも1つの実施例によれば、オーブン150は例えばフローティング型ドライヤーでよいが、これに限定されない。
【0037】
別の態様として、本発明のポリビニルアルコールフィルムは、光学フィルムとして製造することもできる。本明細書に記載の「光学フィルム」とは、偏光フィルム、ブルーライトカットフィルム、フィルターレンズなどを指すが、本発明はこれらに限定されない。好適には、本発明のポリビニルアルコールフィルムは偏光フィルムとされる。
【0038】
好ましい実施例中、偏光フィルム(又は偏光板と呼ぶ)製造方法は、以下の工程を含む。ポリビニルアルコールフィルムを膨潤、染色、延伸、補色、乾燥及びトリアセチルセルロースフィルム(TAC)の貼り合わせを行うことにより、偏光フィルムが得られる。
【0039】
ポリビニルアルコールフィルムをさらに光学フィルムの製造に用いる場合には、延伸と染色を行うが、偏光フィルムを例とすると、偏光フィルムの製造工程ではI3-、I5-ヨウ化物イオンが含まれたホウ酸水溶液でポリビニルアルコールフィルムの染色が行われるため、ホウ酸がポリビニルアルコールの無定形(amorphous)エリアとの架橋結合作用を生じた後、ヨウ化物イオンが固定され、ヨウ化物イオンの溶出を防ぐことができる。
【実施例0040】
以下では、実施例と合わせて本発明についてより詳しく説明する。但し、それらの実施例は本発明をより容易に理解できるよう助けるためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0041】
ポリビニルアルコールフィルムの製造:初めに、重合が完了し且つ重合度が約2400のポリビニルアルコール系PVA樹脂を乾燥器内に注入して、且つ高温乾燥時に適時噴水して降温し、次に乾燥を経たポリビニルアルコール系樹脂を溶解槽で加熱溶解してポリビニルアルコール溶液を形成してから、ポリビニルアルコール溶液をT型スリットダイリップと鋳造ドラムに通して圧出成形し、複数の加熱ロールに通してポリビニルアルコール溶液を成膜し、水分を調整してから、ポリビニルアルコール成膜試料をオーブンで乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムを得た。
【0042】
上述のポリビニルアルコールフィルムの製造工程は、具体的には、例えば初めに重合が完了し且つアルカリ化度>99.9%、重合度が約2400のポリビニルアルコール系樹脂を乾燥器内に注入し、且つ乾燥器内の温度を110℃にコントロールし、さらに乾燥過程で適時噴水して、ポリビニルアルコール系樹脂を降温させる。次に乾燥を経たポリビニルアルコール系樹脂1800kg、水4000kg、可塑剤のグリセリン200kgを溶解槽に加えて、攪拌しながら140℃まで昇温させ、140℃に維持しながら180分間溶解し、混合器を使用して均一に溶解してから、水を加えて樹脂濃度を30.0%に調整し、製膜原液を得る。製膜原液は二軸スクリュー押出機で消泡した後、T型スリットダイリップから吐出し、回転する高温の鋳造ドラムにカーテンコーティングして乾燥製膜するが、この時の鋳造ドラムの回転速度は5.4m/minとする。予備成形フィルムを鋳造ドラムから剥離した後、13個の加熱ローラと接触させてフィルムの上下両面を乾燥する。そのうち、1番目の加熱ローラは全加熱ローラの中で最も高温とし、続く加熱ローラの温度は徐々に下がるように調節する。このとき、1番目の加熱ローラと13番目の加熱ローラ(全加熱ローラの中で最も低温のもの)の温度差は45℃とする。次に、4セクションの乾燥エリアを備えたオーブンを使用し、フィルムの上下両面を熱風で乾燥する。そのうち、オーブンの最高温度エリアの温度は100℃とし、最低温度エリアの温度は50℃とする。最後にポリビニルアルコールフィルムの完成品を得る。本明細書中の各実施例及び比較例は、1つ以上のパラメータにおいて上述の工程との差異を有する。詳細は以下の表中に示す。
【0043】
偏光フィルムの製造:ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に浸漬して膨潤させ、且つ機械方向(MD)に向かって元の長さの2.0倍まで一軸延伸した後、0.03質量パーセントのヨウ素、及び3質量パーセントのヨウ化カリウムを含む30℃の水溶液中に浸漬しながら、ポリビニルアルコールフィルムを元の長さの3.3倍まで延伸し、次に3質量パーセントのヨウ化カリウム及び3質量パーセントのホウ酸を含む30℃の水溶液中に浸漬して、元の長さの3.6倍までさらに延伸する。続けて5質量パーセントのヨウ化カリウム及び4質量パーセントのホウ酸を含む60℃の水溶液中に浸漬して、元の長さの6.0倍までさらに延伸する。その後、3質量パーセントのヨウ化カリウム水溶液に15秒間浸漬してから、60℃で4分間乾燥すれば、偏光フィルムを得ることができる。
【0044】
以下、表1及び表2の実施例1~10の実験における変数のコントロール、技術的特徴、染色均一性・シワ測定結果と、表3及び表4の比較例1~10の実験における変数のコントロール、技術的特徴、フィルムの染色均一性・シワ測定結果を参照されたい。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
本実験中で使用した分析方法は以下の通りである。
【0050】
紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値の分析
【0051】
試料の調製方法:ポリビニルアルコールフィルムを幅方向に5等分にした後、各片の面積が機械方向5cm×幅方向5cmのフィルム試料になるようカットし、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿器内で24時間放置した。
【0052】
分析計器:Perkin Elmer Lambda 365(波長精度及び波長再現性はNIST 2034の基準に適合)によりフィルム試料の分析を行った。
【0053】
測定条件:23℃、相対湿度50%の環境下で、恒温恒湿完了後のフィルム試料の200~700nmにおける吸収度を測定し、且つ215nm、280nm及び320nmにおける吸収度の数値を読み取った。
【0054】
データ変換:215nm、280nm及び320nmで読み取ったフィルム試料の吸収度数値を紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値を求める公式(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmに代入し、フィルム試料の疎水性二重結合比の値を得てから、最後に幅方向に沿って測定して得た5片の疎水性二重結合比の値の平均を求めた。
【0055】
紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値の分析
【0056】
試料の調製方法:ポリビニルアルコールフィルムを幅方向に5等分にした後、各片の面積が機械方向5cm×幅方向5cmのフィルム試料になるようカットし、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿器内で24時間放置した。
【0057】
分析計器:Perkin Elmer Lambda 365(波長精度及び波長再現性はNIST 2034の基準に適合)によりフィルム試料の分析を行った。
【0058】
測定条件:23℃、相対湿度50%の環境下で、恒温恒湿完了後のフィルム試料の200~700nmにおける吸収度を測定し、且つ215nm、280nm及び320nmにおける吸収度の数値を読み取った。
【0059】
データ変換:215nm、280nm及び320nmで読み取ったフィルム試料の吸収度数値を紫外線-可視光スペクトルの二重結合比の平均値を求める公式(AUV215nm*1+AUV280nm*2+AUV320nm*3)/(AUV215nm+AUV280nm+AUV320nm)に代入し、フィルム試料の二重結合比の平均値を得てから、最後に幅方向に沿って測定して得た5片の二重結合比の平均値の平均を求めた。
【0060】
重量膨潤度の分析
【0061】
試料の調製方法:ポリビニルアルコールフィルムを幅方向に5等分にした後、各片の面積が機械方向5cm×幅方向5cmのフィルム試料になるようカットし、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿器内で24時間放置した。
【0062】
測定条件:ポリビニルアルコールフィルム試料を30℃の純水中に入れて20分間膨潤させ、フィルム試料の膨潤が終了した後にそれを取り出し、ティッシュペーパーでフィルム試料表面の水分を拭き取ってからフィルムの重さM1を秤量し、さらにそのフィルム試料を120℃の乾燥器に入れて120分間乾燥してからフィルムの重さM2を秤量した。
【0063】
データ変換:秤量したフィルム試料のフィルムの重さM1、M2を(M1-M2)/M1*100%に代入して、フィルム試料の重量膨潤度を取得し、最後に幅方向に沿って測定して得た5片の重量膨潤度の平均を求めた。
【0064】
フィルムの色均一性に関するパフォーマンス分析
【0065】
ポリビニルアルコールフィルムを偏光フィルムに調製し、光束発散度=14000lxのランプハウスを用いて照射を行い、フィルムの色均一性を観察して評価を行った。フィルムの色均一性の評価は以下の通りである。
◎:色の不均一はみられない
O:若干色が不均一
X:色の不均一が顕著
【0066】
シワに関するパフォーマンス分析
【0067】
ポリビニルアルコールフィルムを偏光フィルムに調製し、幅方向5cm、長手方向20cmの試料にカットして、治具を5cm間隔にして試料を延伸治具に固定してから、偏光フィルム工程用の延伸機により水浴中で延伸し、試料が元の長さの2倍(即ち10cm)になるまで延伸した後、すぐに水浴中から引き上げ、フィルム正面から1m離れた位置において、目視により試料のフィルム面のシワ状態を観察して評価を行った。フィルムのシワの評価は以下の通りである。
◎:シワなし
O:シワがややみられる
X:シワが顕著
【0068】
表1及び表2によれば、実施例1~10のフィルムは、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が0.500~1.300の間であるため、それらのフィルムは優れた染色均一性とシワ耐性を同時に示すことができており、特に実施例2~4と実施例7ではさらに色の不均一がなく、シワの生成もない極めて良好な状態を示していた。一方で、比較例1~10のフィルムは、フィルムの紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が0.500~1.300の間にコントロールされていないため、それらのフィルムは優れた染色均一性やシワ耐性を同時に示すことができなかった。
【0069】
要約すると、本発明のポリビニルアルコールフィルムは、紫外線-可視光スペクトルの疎水性二重結合比の値が(AUV280nm+AUV320nm)/AUV215nmで0.500~1.300の間であるゆえに、良好な染色均一性とシワが生じにくい特性を同時に具備することができる。
【0070】
本明細書において提供する全ての範囲は、割り当て範囲内における各特定の範囲及び割り当て範囲の間の二次範囲の組み合わせを含むという意味である。また、別段の説明がない限り、本明細書が提供する全ての範囲は、いずれも範囲のエンドポイントを含む。例えば、範囲1~5は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの二次範囲を含む。
【0071】
本明細書において参照される全ての刊行物及び特許出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、且つありとあらゆる目的から、各刊行物又は特許出願はいずれも各々参照により本明細書に組み込まれることを明確且つ個々に示している。本明細書と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる刊行物又は特許出願との間に不一致が存在する場合には、本明細書に準ずる。
【0072】
本明細書で使用する「含む」、「有する」及び「包含する」という用語は、開放的、非限定的な意味を有する。「1」及び「当該」という用語は、複数及び単数を含むと理解されるべきである。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を指し、従って単一の特性又は混合物/組み合わせた特性を含むことができる。
【0073】
操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。本明細書で使用する「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特性が約2%未満であることを意味する。本明細書中に明確に記載されている全ての要素又は特性は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。