(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021035
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】漏洩した冷却剤の検出及び収集構造
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20240207BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20240207BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G06F1/20 E
G06F1/20 A
G06F1/20 C
G06F1/16 312D
H05K7/20 M
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039555
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】17/816,889
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508018934
【氏名又は名称】廣達電腦股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Quanta Computer Inc.
【住所又は居所原語表記】No.188,Wenhua 2nd Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】陳 逸傑
(72)【発明者】
【氏名】呉 岳璋
(72)【発明者】
【氏名】陳 彦圭
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲イツ▼弘
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322AA11
5E322AB11
5E322DA04
5E322EA11
5E322FA01
(57)【要約】
【課題】漏洩した冷却剤の収集及び検出を容易にする収集構造を有する液体冷却システムを提供する。
【解決手段】液体冷却システムから漏れた冷却剤から電子部品を保護する構造であって、液体冷却システムは、入口管及び出口管を介して冷却剤を収集してコールドプレートに供給するマニホールドを有し、コールドプレートは、回路基板上の発熱部品上に取り付けられており、構造は、上面と、マニホールドとコールドプレートとの間の距離にほぼ等しい長さと、を有するドリップトレイであって漏れた冷却剤を収集するトラフを含み、回路基板と入口管及び出口管との間に挿入可能なドリップトレイを含む、保護構造。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体冷却システムから漏れた冷却剤から電子部品を保護する構造であって、前記液体冷却システムは、入口管及び出口管を介して冷却剤を収集してコールドプレートに供給するマニホールドを有し、前記コールドプレートは、回路基板上の発熱部品上に取り付けられており、前記構造は、
上面と、前記マニホールドと前記コールドプレートとの間の距離とほぼ等しい長さと、を有するドリップトレイであって、漏れた冷却剤を収集するトラフを含み、前記回路基板と前記入口管及び前記出口管との間に挿入可能なドリップトレイを含む、
保護構造。
【請求項2】
前記トラフの底面に冷却剤漏れセンサーをさらに含む、請求項1に記載の保護構造。
【請求項3】
前記トラフ内の前記冷却剤漏れセンサー上に配置された多孔質層をさらに含む、請求項2に記載の保護構造。
【請求項4】
前記ドリップトレイの前記上面上に塗布された疎水性コーティングをさらに含む、請求項1に記載の保護構造。
【請求項5】
前記発熱部品は、前記回路基板に取り付けられたプロセッサチップである、請求項1に記載の保護構造。
【請求項6】
前記ドリップトレイは、前記ドリップトレイと接触して漏れた冷却剤を前記トラフに向かって流れさせる複数の傾斜面を含む、請求項1に記載の保護構造。
【請求項7】
前記ドリップトレイの上面は、漏れた冷却剤が前記回路基板に流れるのを防ぐ複数のバリアを含む、請求項1に記載の保護構造。
【請求項8】
前記ドリップトレイはプラスチックベース部材を含む、請求項1に記載の保護構造。
【請求項9】
前記回路基板は、前記マニホールドに流体的に結合された別のコールドプレートを含み、前記ドリップトレイは、前記マニホールドと前記別のコールドプレートとの間に介在している、請求項1に記載の保護構造。
【請求項10】
回路基板と、
前記回路基板に取り付けられた発熱部品と、
冷却剤を供給及び収集するマニホールドと、
底面接触面を有し、前記発熱電子部品と熱的に接触するコールドプレートと、
前記コールドプレートに流体的に接続されており、前記マニホールドから冷却剤を供給する供給管と、
前記コールドプレート及び前記マニホールドに流体的に接続されており、前記コールドプレートから冷却剤を収集する収集管と、
前記コールドプレートと前記マニホールドとの間に挿入されたドリップトレイであって、漏れた冷却剤をトラフに注入する複数の傾斜面を有し、前記回路基板と前記供給管及び前記収集管との間に吊り下げられたドリップトレイと、を含む、
コンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム用の液体冷却システムに関し、特に、本開示の態様は、漏洩した冷却剤の収集及び検出を容易にする収集構造を有する液体冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバー等のコンピュータ機器は、共通の電源より給電される多数の電子部品を含む。サーバーは、コントローラー、プロセッサ及びメモリ等の内部発熱電子機器の動作により、膨大な量の熱を生成する。このような熱の非効率的な除去による過熱は、そのような機器の動作を停止又は阻害する可能性がある。従って、現在のサーバーは、サーバーの内部を通る空気の流れに頼って、発熱電子部品から発生した熱を運び去るように設計されている。サーバーは、処理ユニット等の電子部品に取り付けられた様々なヒートシンクをよく含む。ヒートシンクは電子部品から熱を吸収し、よって部品から熱を外へ伝達させる。ヒートシンクからの熱は、ファンシステムによってサーバーから排出される必要がある。
【0003】
サーバー等のコンピュータシステムに対するコンピューティングの需要が増え続けている。CPU、GPU、及び、熱設計電力(TDP)と低温仕様要件(specifications requirements)を有するその他の高性能コンピューティング(HPC)コンポーネント等の重要な部品が重要な鍵を握る。これらの部品の改善は、既知の空気冷却よりも効率的な熱ソリューションを用いることが必要である。例えば、現在使用可能な高いTDP及び低温仕様を有する高速CPUは、高い周囲温度要件に対応する液体冷却ソリューションを用いる必要がある。高性能システムの改善により、除去する必要のある熱の量は、新しい世代の電子部品が出現する度に高くなる。生産性を維持するために標準サーバーの予期される作業負荷の進化は根本的に変化し、冷却システムの継続的な評価が必要となった。より高性能な部品の出現により、ファンシステムと組み合わさった従来の空気冷却は、新世代の部品で生成される熱を十分に取り除くには不十分となった。より高い密度、比熱及び熱伝導率により、液体は、一般に、例えば空気よりも優れた冷媒である。
【0004】
水は、空気よりも3,500倍高い熱輸送性能(熱コンポーネントを流れる特定の体積の水流‐体積流量を与える)を有し、熱伝導率は24倍高い。これは、環境の部品密度が増加し始めるコンピュータシステム等の環境において、液体冷却が空気冷却よりもより効率的にさせる。従って、液体冷却は、液体による優れた熱性能により、急速な熱除去の公認のソリューションである。液体冷却は、熱源からラジエーターに熱を外へ伝達させる既知の空気冷却よりも効果的であり、騒音を出さずに重要な部品から熱を除去することができる
【0005】
ラックレベルの液体冷却システムの設計では、冷却液体システムは、ラック内のサーバー等のデバイスからの熱交換を促進するために、閉ループ冷却部品と開ループ冷却部品を含む。閉ループ液体冷却システムは、熱交換を用いて、サーバーから熱を運ぶ温水を冷却する。次いで、熱は、ファンウォールと結合したラジエーターを用いた開ループシステムを介して温水から除去される。入口管は、サーバー内のプロセッサチップ等の発熱電子部品上のコールドプレートに冷却液を運ぶ。コールドプレートは、コールドプレートの内部で冷却剤を循環させる内部導管のネットワークを有する。サーバー内の各プロセッサは、専用のコールドプレートを有するか、又は、他のプロセッサとコールドプレートを共有することもできる。プロセッサによって生成された熱は、コールドプレートに伝達され、コールドプレートを循環する冷却液に伝達される。出口管は、加熱された液体をコールドプレートから運び出す。熱交換器は、ファンウォールによって冷却されることにより、加熱された液体から熱を伝達する。現在冷却された冷却剤は、次いで入口管に再循環されてコールドプレートに戻される。しかしながら、液体冷却ソリューションを用いる場合、設計者はサーバー内の部品を潜在的な冷却剤漏れから保護することを考慮する必要がある。
【0006】
図1は、部品に取り付けられたコールドプレートを有する従来技術のサーバー10の上面図である。サーバー10は、プロセッサチップ(図示せず)の側にデュアルインラインメモリモジュール16等の部品を取り付けた回路基板14を有するシャーシ12を含む。この例では、2つのコールドプレート22及び24が、プロセッサ等の発熱電子部品上に取り付けられ、プロセッサからの熱を外へ伝達させる。
【0007】
冷却剤は、コールドプレート22及び24の両方で内部循環され、コールドプレート22及び24の下方のプロセッサから生成された熱を運び去る。シャーシ12は、ラックに取り付けられた熱交換器に流体的に接続され得る流体コネクタ26及び28を含む。流体コネクタ26は、冷却剤をマニホールド30に供給し、コネクタ28は、マニホールド30から加熱された冷却剤を収集する。コネクタ26で受け取った冷却剤は、マニホールド30によって内部で入口管32を介して、コールドプレート22に導かれる。出口管34は、加熱された冷却剤をコールドプレート22からマニホールド30へ運び去る。同様に、冷却剤は、入口管36を通ってコールドプレート24に供給される。加熱された冷却剤は、コールドプレート24から出口管38を通ってマニホールド30へと取り除かれる。管32、34、36及び38は、回路基板14上の他の電子部品を覆うドリップトレイ40上を走行する。ドリップトレイ40は、管32、34、36及び38の何れかから漏れた流体を収集する。ドリップトレイ40の表面には、ケーブルタイプ漏れセンサー50が配置されている。
【0008】
漏れセンサー50は、ケーブルタイプ漏れセンサー50の外壁に接触する液体によって電気的に接続され得る内部正極及び負極を有する。ケーブルタイプ漏れセンサー50には2つの銅メッキコイル(プラスとマイナス)があり、壁の不織布と組み合わされてケーブルタイプ漏れセンサー50になる。ケーブルタイプ漏れセンサー50の外壁の任意の部分に接触する冷却剤が少なくとも0.3mlの体積に達した場合、冷却剤は2つの極の間の伝導を引き起こし、ケーブルタイプ漏れセンサー50の抵抗を変化させ、それにより冷却剤の漏れを示す。抵抗の変化は、コントローラーからの警告をトリガーし、システム内の他の重要な部品への損傷を防ぐために、エンドユーザーに緊急の漏れ処理を実行するように通知することができる。しかしながら、ケーブルタイプ漏れセンサー50は、ドリップトレイ40の大面積をカバーするのに十分な長さがなければならない。ケーブルタイプ漏れセンサー50は、ケーブルが配置されていないドリップトレイ40の領域の漏れを検出しない可能性がある。
【0009】
従って、回路基板上の部品を冷却剤の漏れから保護することができる保護構造が必要とされる。ケーブルタイプのセンサーよりもよりコンパクトなセンサーを用いる、より効果的で低コストの液体冷却漏れソリューションが必要である。漏れた冷却剤を中心領域に注入して漏れの検出を容易にする、さらに別の保護構造も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
漏洩した冷却剤の収集及び検出を容易にする収集構造を有する液体冷却システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示された一例は、液体冷却システムから漏れた冷却剤から電子部品を保護する構造である。液体冷却システムは、入口管と出口管を介して冷却剤を収集してコールドプレートに供給するマニホールドを有する。コールドプレートは、回路基板上の発熱部品上に取り付けられている。この構造は、上面及びマニホールドとコールドプレートとの間の距離にほぼ等しい長さを有するドリップトレイを含む。ドリップトレイは、漏れた冷却剤を収集するトラフを含む。ドリップトレイは、回路基板と入口及び出口管との間に挿入可能である。
【0012】
例示的な構造の別の開示された実施形態では、構造は、トラフの底面に冷却剤漏れセンサーを含む。別の開示された実施形態では、構造は、トラフ内の冷却剤漏れセンサー上に配置された多孔質層を含む。別の開示された実施形態では、構造は、ドリップトレイの上面上に塗布された疎水性コーティングを含む。別の開示された実施形態では、発熱部品は、回路基板に取り付けられたプロセッサチップである。別の開示された実施形態では、プロセッサチップは、グラフィック処理ユニット(GPU)チップ又は中央処理ユニット(CPU)チップのうち何れかである。別の開示された実施形態では、ドリップトレイは、ドリップトレイと接触して漏れた冷却剤がトラフに向かって流れるようにする傾斜面を含む。別の開示された実施形態では、ドリップトレイの上面は、漏れた冷却剤が回路基板に流れるのを防ぐバリアを含む。別の開示された実施形態では、ドリップトレイはプラスチックベース部材を含む。別の開示された実施形態では、回路基板は、マニホールドに流体的に結合された別のコールドプレートを含み、ドリップトレイは、マニホールドと別のコールドプレートとの間に介在している。
【0013】
別の開示例は、回路基板と、回路基板に取り付けられた発熱部品と、を含むコンピュータ装置である。コンピュータ装置は、冷却剤を供給及び収集するマニホールドを含む。コールドプレートは、底面接触面を有し、発熱電子部品と熱的に接触する。供給管がコールドプレートに流体的に接続されてマニホールドから冷却剤を供給する。収集管がコールドプレート及びマニホールドに流体的に接続されてコールドプレートから冷却剤を収集する。ドリップトレイはコールドプレートとマニホールドの間に挿入される。ドリップトレイは、漏れた冷却剤をトラフに注入する傾斜面を有する。ドリップトレイは、回路基板と供給及び収集管との間に吊り下げられている。
【0014】
例示的なコンピュータ装置の別の開示された実施形態では、コンピュータ装置は、トラフの底面に冷却剤漏れセンサーを含む。別の開示された実施形態では、多孔質層は、トラフ内の冷却剤漏れセンサー上に配置される。別の開示された実施形態では、ドリップトレイは、その上に疎水性コーティングが塗布された上面を有する。別の開示された実施形態では、発熱部品は、プロセッサチップである。別の開示された実施形態では、プロセッサチップは、グラフィック処理ユニット(GPU)チップ又は中央処理ユニット(CPU)チップのうち何れかである。別の開示された実施形態では、ドリップトレイの表面のエッジは、漏れた冷却剤が回路基板に流れるのを防ぐバリアを含む。別の開示された実施形態では、ドリップトレイはプラスチックベース部材を含む。別の開示された実施形態では、コンピュータ装置は、マニホールドに流体的に結合された別のコールドプレートを含み、ドリップトレイは、マニホールドと別のコールドプレートとの間に介在している。
【0015】
上述した概要は、本開示の各実施形態又は全ての態様を表すことを意図するものではない。むしろ、上述した概要は、本明細書に記載された新規な態様及び特徴のいくつかの例を提供するに過ぎない。本開示の上述した特徴及び利点、並びに、他の特徴及び利点は、添付の図面及び添付の特許請求の範囲と関連して、本発明を実施するための代表的な実施形態及び態様についての以下の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。
【0016】
本開示は、例示的な実施形態の以下の説明および添付の図面からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】液体冷却システム及びケーブルタイプ漏れ検出センサーを有する従来技術のサーバーの上面図である。
【
図2A】、本開示の特定の態様による、例示的な漏れ収集及び検出構造を含むコンピュータシステムの上面図である。
【
図2B】本開示の特定の態様による、例示的な漏れ収集及び検出構造を含むコンピュータシステムの側面図である。
【
図3】本開示の特定の態様による、漏れ収集及び検出構造におけるトラフを有する例示的なドリップトレイの斜視図である。
【
図4A】本開示の特定の態様による、表面コーティングを適用する前の例示的なドリップトレイのクローズアップ斜視図である。
【
図4B】本開示の特定の態様による、例示的なドリップトレイの側面図である。
【
図5】本開示の特定の態様による、例示的なドリップトレイの漏れセンサーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、様々な変更及び代替形態を受け入れることができるが、具体的な実施の形態が例示的に図面に示され、本明細書で詳細に説明されることになる。しかしながら、この発明は、開示された特定の形態に限定されることを意図していないことを理解されたい。この発明は、特許請求の範囲に定義されるこの発明の趣旨及び範囲内に入る全ての修正物、均等物及び代替物を包含する。
【0019】
本発明は、多くの異なる形態で具現化することができる。代表的な実施形態が図面に示されており、本明細書において詳細に説明される。本開示は、本発明の原理を例示又は説明するものであり、本発明の広範な態様を、示された実施形態に限定することを意図していない。本発明は、多くの異なる形態で具現化することができる。本発明は、本発明の原理の例示として考慮されるべきであり、本発明の広範な態様を限定することを意図するものではなく、図面に示され、本明細書において詳細に説明される。本発明は、多くの異なる形態で具現化することができる。その範囲において、例えば、概要、要約及び詳細な説明において開示されているが、特許請求の範囲に明記されていない要素及び制限は、含意、推論若しくは他の方式によって単独又は集合的に特許請求の範囲に組み込まれるべきではない。詳細な説明の目的のために、具体的にそうではないと主張されない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。「含む」という用語は、「制限なしに含む」ことを意味する。また、例えば、「約(about)」、「ほとんど(almost)」、「実質的に(substantially)」、「おおよそ(approximately)」等の近似の用語は、ここでは、例えば「…で(at)、…近くで(near)、…に近接して(nearly at)」、「…の3~5%内で」、「製造誤差の許容範囲内で」、又は、これらの任意の論理的組み合わせの意味を含むことができる。
【0020】
本開示は、内部液体冷却システムの構造に関する。基板上の部品を遮蔽するトレイ構造は、冷却管の下方にある。トレイ構造は、任意の漏れた冷却剤を回収するトラフを含む。トラフは、漏れた冷却剤を検出することができるセンサーを有する。
【0021】
図2Aは、閉ループ液体冷却システムによる冷却を必要とするコンピュータシステム等の部品の上面図である。この例では、コンピュータシステムはサーバー200である。
図2Bは、液体冷却システムを有するサーバー200の側面図を示している。サーバー200は、プロセッサチップ212等の発熱電子部品を取り付けた回路基板210を含む。この例では、プロセッサチップ212は、中央処理装置(CPU)又はグラフィック処理装置(GPU)等の異なるタイプのプロセッサであってもよい。一連のデュアルインラインメモリモジュール(DIMM)214が、プロセッサチップ212の近くに配置されている。回路基板210上には、ソケット、メモリカード及び他の部品等の他の構造があることを理解されたい。任意の数のプロセッサチップ又は他のタイプのチップが回路基板210に取り付けられ得る。本明細書で説明された原理は、その中の発熱部品の冷却を必要とする任意のコンピュータシステム、コンピュータ装置又は他の装置に適用できることを理解されたい。
【0022】
冷却システムは、マニホールド230と、2つのコールドプレート222及び224と、を含む。コールドプレート222及び224のそれぞれは、個別のプロセッサチップ212と接触する底面を有する。コールドプレート222及び224は、金属等の熱伝導性材料で構成されている。コールドプレート222及び224のそれぞれは、冷却剤を循環させてそれぞれのプロセッサチップ212から熱を伝達する内部導管を含む。
【0023】
マニホールド230は、主冷却剤供給コネクタ232及び主冷却剤戻りコネクタ234に接続されている。コネクタ232及び234は、冷却剤を循環させるラックに取り付けられた熱交換システムの一部であり得る冷却剤循環ホースに接続されている。冷却剤供給コネクタ232は、冷却剤を冷却剤供給マニホールドブロック236に供給する。戻された冷却剤は、主冷却剤戻りコネクタ234に接続された冷却剤戻りマニホールドブロック238によって収集される。マニホールドブロック236は、冷却剤を、接続された可撓性供給管242の一端及び接続された可撓性供給管244の一端に供給するコネクタ240を有する。従って、冷却剤は、管242及び244を介してコールドプレート222及び224に供給される。冷却剤は、コールドプレート222及び224を通って循環し、熱発熱部品からの熱を伝達する。
【0024】
同様に、戻りマニホールドブロック238は、可撓性管252及び254の一端に接続された2つのコネクタ250を有する。可撓性管252及び254の他端は、コールドプレート222及び224にそれぞれ接続されており、コールドプレート222及び224を通って循環する加熱された冷却剤を戻す。この例の可撓性管242、244、252及び254は、DTI(DingTen Industrial Inc.)によって製造された可撓性真空可撓性管である。
【0025】
従って、マニホールド230は、第1の温度の冷却剤を供給する供給マニホールドブロック236と、第1の温度よりも高い第2の温度の戻り冷却剤を受け取る戻りマニホールドブロック238と、を含む。マニホールド230は、ファン壁及びラジエーター等の外部熱交換システムに流体的に接続されており、加熱された冷却器を冷却し、冷却剤を第1の温度に戻す。従って、コールドプレート222及び224のそれぞれは、可撓性管242、244、252及び254を介してマニホールドブロック236及び238に流体的に接続されており、マニホールドブロック236と238との間の流体回路を形成することができる。また、流体回路は、単一のコールドプレートのみ、又は、互いに流体的に結合された2つ以上のコールドプレートを含むこともできる。任意の数の流体回路及び対応するコールドプレートは、マニホールドブロック236及び238用のコネクタ及び管の数を増やすことによって、マニホールドブロック236及び238で支持され得る。
【0026】
この例では、管242、244、252及び254は、ドリップトレイ260である例示的な漏れ防止構造上に配置されている。ドリップトレイ260は、コールドプレート222及び224とマニホールド230との間の回路基板210の領域を覆う形状を有する。ドリップトレイ260は、管242、244、252及び254と、回路基板210と、の間に配置されており、管242、244、252及び254を支持することができる。従って、ドリップトレイ260は、任意の管242、244、252及び254から漏れる可能性のある任意の冷却剤から回路基板210上の部品を遮蔽する。ドリップトレイ260は、ドリップトレイ260に滴下する任意の漏れ冷却剤を収集するトラフ262を含む。説明されるように、ドリップトレイ260の表面は、漏れた冷却剤をトラフ262に注入するように傾斜している。トラフ262の底部は、収集された冷却剤を感知する冷却剤漏れセンサー264を含む。
【0027】
図3は、漏れ防止ドリップトレイ260の斜視図を示している。ドリップトレイ260は、上面330を有する下方のベース部材320上に表面コーティング310を含む。表面コーティング310は、ベース部材320のスプレー処理を介して上面330に適用される、フレックスシール(FXCL20)、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン、又は、フッ素樹脂等の防水材料である。表面コーティング310は、疎水性を有し、毛細管現象を生成して、上面330への液体の付着を克服する。ドリップトレイ260は、ベース部材320の上面に滴下した液体をトラフ262に向かって導く傾斜面を有する。表面コーティング310のコーティング材料は、液体の表面力が物体の付着力よりも大きくなり、液体がベース部材320の上面上で球状(bead)になるように、非湿潤性材料である。
【0028】
この例では、ドリップトレイ260のベース部材320は、プラスチック又は同様の非導電性材料から構成されている。
図4Aは、
図3の表面コーティング310を塗布する前のドリップトレイ260を示している。
図4Bは、ドリップトレイ260の側面図を示している。ドリップトレイ260は、管242、244、252及び254が配置されたコールドプレート222及び224とマニホールド230との間の領域を覆うのに十分なサイズを有する。ドリップトレイ260は、各側縁に沿って隆起バリア410を有し、上面330に漏れた冷却剤を収容する。この例では、ドリップトレイ260は、マニホールド230と近接接触するマニホールドセクション420を有する。2つの対向するコールドプレートセクション422及び424は、コールドプレート222及び224に近接している。セクション420、422及び424のそれぞれは、トラフ262に対して傾斜して配向されている。セクション422及び424は、それぞれの管242及び252並びに244及び254をガイドする隆起エッジを含む。セクション422は、傾斜側面430に接続されている。セクション424及びマニホールドセクション420は、反対側の傾斜側面432を介して接続されている。管242及び252がマニホールド230及びコールドプレート222に接続された後、管242及び252は、傾斜側面430上に置かれ、傾斜側面432に配置される。管244及び254がマニホールド230及びコールドプレート224に接続された後、管244及び254は、傾斜側面432上に置かれる。ケーブルガイド440は、傾斜側面432から延在する。
【0029】
従って、セクション420、422及び424と側面430及び432の傾斜した向きは、任意の冷却剤をトラフ262に向けて導く。トラフ262の全ての側面で上面330を構成する傾斜面は、任意の漏れた冷却剤をトラフ262のより低い位置に流すようにする。従って、管242、244、252及び254から漏れた全ての冷却剤は、トラフ262に収集される。ドリップトレイ260の上面330は、上面330から延在した一連の支持体442を含む。この例では、ドリップトレイ260は、ドリップトレイ260が回路基板210に取り付けられた延在する部品上に適合することを可能にする孔450を含む。ドリップトレイ260が回路基板210の他の部品上に適合するのを可能にする別の孔452が形成される。孔450及び452の両方は、冷却剤が孔450及び452に流入するのを防ぐとともに、管242、244、252及び254の位置をガイドするように、一連の比較的高い垂直プレート454によって囲まれている。
【0030】
トラフ262の底部は、PVCスポンジ等の多孔質材料層460でコーティングされている。多孔質材料層460は、トラフ262内のセンサー264上に配置される。多孔質材料層460は、一般に親水性であり、トラフ262内に液体を収集して保持する。多孔質材料層460は、毛細管作用‐浸透を用いて液体を収集し、液体が多孔質材料層460を通って流れ、センサー264をトリガーするようにする。この例では、多孔質材料層460は、液体の表面張力が物体の付着力よりも小さいため、冷却剤が多孔質材料層460によって吸収されるようになる。
【0031】
従って、表面コーティング310及び上面330の傾斜した向きにより、上面330に接触する管から漏れる液体冷却剤は、トラフ262に向けられる。従って、漏れた冷却剤はトラフ262に収集される。多孔質材料層460は液体冷却剤を吸収し、毛細管作用‐浸透により、収集された冷却剤がセンサー264をトリガーする。
【0032】
図5は、センサー264の近接透視図である。センサー264は、支持アーム512を有するメインボード510を含む。支持アーム512は、信号フィルタリング回路516に結合された3ピンコネクタ514を有する。コネクタ514上の信号により、センサー264からの抵抗を測定することができる。一連の露出したトレース520がメインボード510上に形成される。トレース520は、交互の接地及びセンサーのトレースである。センサーのトレースは、1MΩ等の弱いプルアップ抵抗値を有する。接地とセンサーのトレースに接触する水は、それらの間で短絡を起こし、従って抵抗値を変える。
【0033】
図2に示すように、センサー264は、トラフ262の底面に取り付けられている。何らかの冷却剤が漏れた場合、上面330の傾斜面を伝ってトラフ262に流れる。漏れた冷却液は、多孔質材料層460によって吸収され、センサー264まで流れ落ちる。冷却剤の漏れからの湿気は、接地とセンサーのトレース520との間の抵抗を変え、センサー264の出力を変える。
【0034】
センサー264の出力は、
図2の回路基板210に取り付けられ得るアナログデジタル変換器(ADC)552を介して、ベースボード管理コントローラー(BMC)550等のコントローラーに結合され得る。BMC550は、センサー264によって冷却剤の漏れが検出された場合に、警告を提供することができる。アラートは、外部LEDを点灯させる、及び/又は、リモート管理ステーションに通知を送信することができる。この例では、ADC552は、センサーワイヤー間の測定された抵抗を、BMC550が読み取れる値に変換する。
【0035】
例示的な冷却剤漏れ封じ込め(leakage containment)システムは、機械的な設計の特徴とトラフ262内の集中型センサー264との組み合わせによって冷却剤漏れを検出し、封じ込める。多孔質材料460と組み合わされたトラフ262の構造は、トラフ262内の毛細管作用を起こす。これは、漏れた冷却剤がセンサー264用にトラフ262に集中して収集するため、漏れ検出及び収集システムの故障率を低減できる物理的作用である。トラフ262内のセンサー264は、冷却剤の漏れを検出するのに必要なセンサーの数を減らし、長くて比較的高価なセンサーケーブルを必要としない。さらに、センサー264は、ケーブルタイプのセンサーよりもより信頼性が高い。例示的なドリップトレイ260は、より効率的に液体を収集することができ、冷却剤が漏れた場合にシステム内の他の部品への損傷を回避することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するものであって、本発明を限定するものではない。本明細書では、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」は、文脈によって他の明確な指示がされない限り、複数形も含む。さらに、「含む」、「有する」又はこれらの変形は、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲で使用される限りにおいて、「備える」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0038】
本発明の様々な実施形態について上述したが、それらは限定ではなく例として提示されたものであることを理解されたい。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対する多数の変更を、本明細書の開示に従って行うことができる。従って、本発明の幅及び範囲は、上記の実施形態の何れかによって限定されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に従って定義されるべきである。
【0039】
本発明を1つ以上の実施形態に関して詳細に述べてきたが、本明細書及び図面を読み理解する際に他の当業者により同等の修正及び変更が生じ得る。また、本発明の特定の特徴は、複数の実施形態のうち何れかのみに関連して述べられているが、このような特徴は、所定の又は特定の用途に必要で利点がある1つ以上の他の実施形態の他の特徴と組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…サーバー
12…シャーシ
14…回路基板
16…デュアルインラインメモリモジュール
22、24…コールドプレート
26、28…流体コネクタ
30…マニホールド
32…入口管
34…出口管
36…入口管
38…出口管
40…ドリップトレイ
50…ケーブルタイプ漏れセンサー
200…サーバー
210…回路基板
212…プロセッサチップ
214…デュアルインラインメモリモジュール(DIMM)
222、224…コールドプレート
230…マニホールド
232…主冷却剤供給コネクタ
234…主冷却剤戻りコネクタ
236…冷却剤供給マニホールドブロック
238…冷却剤戻りマニホールドブロック
240…コネクタ
242、244…可撓性供給管
250…コネクタ
252、254…可撓性管
260…ドリップトレイ
262…トラフ
264…冷却剤漏れセンサー
310…表面コーティング
320…下方にあるベース部材
330…上面
410…隆起バリア
420…マニホールドセクション
422、424…コールドプレートセクション
430、432…傾斜側面
440…ケーブルガイド
442…支持体
450、452…孔
454…垂直プレート
460…多孔質材料層
510…メインボード
512…支持アーム
514…3ピンコネクタ
516…信号フィルタリング回路
520…トレース
550…ベースボード管理コントローラー(BMC)
552…アナログデジタル変換器(ADC)