(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002104
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16D 13/52 20060101AFI20231228BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20231228BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20231228BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20231228BHJP
F16D 25/08 20060101ALI20231228BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231228BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231228BHJP
【FI】
F16D13/52 Z
B60K6/36 ZHV
B60K6/442
B60K6/40
F16D25/08 Z
B60L15/20 K
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101097
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真澄
【テーマコード(参考)】
3D202
3J056
3J057
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202EE02
3D202EE08
3D202EE16
3D202EE21
3D202EE22
3D202FF06
3D202FF12
3J056AA60
3J056AA62
3J056BE09
3J056FA12
3J056GA02
3J056GA12
3J057AA06
3J057BB04
3J057EE01
3J057EE03
3J057HH02
3J057JJ01
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
(57)【要約】
【課題】シンプルな形状の軸受を用いることができ、組立作業の作業効率を向上できる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置10は、エンジンENGからの動力によって回転する第1回転体11と、第1回転体11が挿通する貫通孔22aを有する第2回転体12と、第1回転体11と第2回転体12との間の動力伝達を断接するクラッチCLと、第1回転体11、第2回転体12、及びクラッチCLを収容するケース20と、ケース20に取り付けられ、第1回転体11をボールベアリング90を介して回転可能に支持する第1カバー21と、第1カバー21よりクラッチCL側においてケース20に取り付けられ、第2回転体12をボールベアリング91を介して回転可能に支持する第2カバー22と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力によって回転する第1回転体と、
前記第1回転体が挿通する貫通孔を有する第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間の動力伝達を断接するクラッチ機構と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記クラッチ機構を収容するケースと、
前記ケースに取り付けられ、前記第1回転体を軸受を介して回転可能に支持する第1壁部と、
前記第1壁部より前記クラッチ機構側において前記ケースに取り付けられ、前記第2回転体を軸受を介して回転可能に支持する第2壁部と、を備えた動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載された動力伝達装置であって、
前記第2回転体を回転させる駆動力を発生する回転電機をさらに備え、
前記第2回転体には、前記回転電機のロータコアが取り付けられた動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された動力伝達装置であって、
前記第2壁部には、前記クラッチ機構を制御するアクチュエータが取り付けられた動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載された動力伝達装置であって、
前記第2回転体の回転トルクを増幅可能なトルクコンバータをさらに備え、
前記第2回転体には、前記トルクコンバータのポンプインペラが接続される動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載された動力伝達装置であって、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられた軸受をさらに備えた動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、エンジンから伝達される動力を、電動機、トルクコンバータ、変速機構を介して駆動輪に伝達する動力伝達装置が開示されている。
【0003】
非特許文献1の動力伝達装置では、電動機のロータが取り付けられた回転体を回転可能に支持する軸受を保持する第1支持部材と、エンジンから動力が伝達される入力軸を回転可能に支持する軸受を保持する第2支持部材と、がカバーに一体にボルト止めされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Dr. Matthias MAISCH, 他二名、The 9GH-TRONIC plug-in hybrid transmission in the electrified powertrain from Mercedes-Benz, 16th International CTI Symposium Automotive Transmissions, HEV and EV Drives, Berlin
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の動力伝達装置では、電動機部分を組み立てる際に、ロータとステータが磁力によってくっつかないように、これらの間のエアギャップを保持しながら組み立てる必要がある。具体的には、ロータ及びステータの一方をケース内に配置した後、ロータ及びステータの他方をエアギャップを保持しながらケース内に配置する必要がある。このため、非特許文献1の動力伝達装置を組み立てる際には、ロータ及びステータをケース内に配置した後、第2支持部材とカバーをケースに取り付け、カバーの外側からボルトを締結して第1支持部材及び第2支持部材をカバーに固定することになる。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の動力伝達装置の構造では、カバーに第1支持部材及び第2支持部材を一体的に固定しているため、軸受に係る構造が複雑になっていた。また、非特許文献1の動力伝達装置の構造では、組み立ての際に、第1支持部材及び第2支持部材のボルトが挿通される孔の位置をカバーの外側から調整する必要がある。このため、動力伝達装置の組立作業に時間がかかり、作業効率の向上が求められていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、シンプルな形状の軸受を用いることができ、組立作業の作業効率を向上できる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、駆動源からの動力によって回転する第1回転体と、第1回転体が挿通する貫通孔を有する第2回転体と、第1回転体と第2回転体との間の動力伝達を断接するクラッチ機構と、第1回転体、第2回転体、及びクラッチ機構を収容するケースと、ケースに取り付けられ、第1回転体を軸受を介して回転可能に支持する第1壁部と、第1壁部よりクラッチ機構側においてケースに取り付けられ、第2回転体を軸受を介して回転可能に支持する第2壁部と、を備えた動力伝達装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
これによれば、軸受をシンプルな形状にすることができる。また、軸受を取り付ける作業を簡単にすることができるので、動力伝達装置の組立作業の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置を備えたハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図3】動力伝達装置の組み立て手順を説明するための図である。
【
図4】動力伝達装置の組み立て手順を説明するための図である。
【
図5】動力伝達装置の組み立て手順を説明するための図である。
【
図6】動力伝達装置の組み立て手順を説明するための図である。
【
図7】動力伝達装置の組み立て手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
まず、
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る動力伝達装置10を備えたハイブリッド車両100について説明する。
【0013】
図1は、ハイブリッド車両100の概略構成図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、エンジンENGと、エンジン始動用モータとしての回転電機MG1と、動力伝達装置10と、蓄電装置としてのバッテリBATと、駆動輪DWと、メカニカルオイルポンプMPと、電動オイルポンプEPと、油圧制御回路1と、制御装置としてのコントローラ2と、を備える。
【0014】
エンジンENGは、駆動輪DWを駆動する駆動源である。エンジンENGは、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関である。エンジンENGの駆動力は、動力伝達装置10を介して駆動輪DWへ伝達される。
【0015】
回転電機MG1は、エンジンENGを始動するためのモータである。回転電機MG1は、エンジンENGと駆動輪DWとの間の動力伝達経路におけるエンジンENGの下流に設けられる。具体的には、回転電機MG1は、エンジンENGと動力伝達装置10との間に設けられる。また、回転電機MG1は、エンジンENGによって駆動されている場合、又は回生制御が行われている場合には、発電機として機能する。回転電機MG1によって発電された電気エネルギーは、バッテリBATに充電される。
【0016】
図1に示すように、動力伝達装置10は、クラッチ機構としてのクラッチCLと、駆動用モータとしての回転電機MG2と、トルクコンバータTCと、変速機TMと、を備える。動力伝達装置10は、運転状況に応じて、エンジンENG及び回転電機MG2の少なくとも一つの駆動力を駆動輪DWに伝達する。
【0017】
クラッチCLは、乾式多板クラッチ機構である。クラッチCLは、エンジンENGの回転軸と回転電機MG2の回転軸とを連結し又は切り離し、動力の伝達を断接する。
図1に示すように、クラッチCLは、動力伝達経路におけるエンジンENGの下流(回転電機MG1の下流)に設けられる。具体的には、クラッチCLは、動力伝達経路において、エンジンENGの駆動力をクラッチCLに伝達する第1回転体11と、クラッチCLを締結した状態において、エンジンENGから伝達された駆動力をクラッチCLから出力する第2回転体12と、の間に設けられる。クラッチCLは、第1回転体11と第2回転体12との間で動力を伝達又は遮断する。エンジンENGの駆動力は、クラッチCLを締結した状態、すなわち、エンジンENGの回転軸と回転電機MG2の回転軸とがクラッチCLにより連結された状態において、トルクコンバータTC及び変速機TMを介して駆動輪DWへ伝達される。
【0018】
回転電機MG2は、駆動輪DWを駆動する駆動源として機能する。回転電機MG2は、回転電機MG1によって発電される電気エネルギーとバッテリBATに充電された電気エネルギーとの少なくとも一方によって駆動輪DWを駆動する駆動力を発生する。
図1に示すように、回転電機MG2は、動力伝達経路におけるクラッチCLとトルクコンバータTCとの間に設けられる。回転電機MG2の駆動力は、トルクコンバータTC及び変速機TMを介して駆動輪DWへ伝達される。また、回転電機MG2は、エンジンENGによって駆動されている場合、又は回生制御が行われている場合には、発電機として機能する。
【0019】
バッテリBATは、例えば、リチウムイオン二次電池によって構成される。バッテリBATに代えて、キャパシタ等を蓄電装置として設けてもよい。バッテリBATには、回転電機MG1がエンジンENGによって駆動されて発電した電気エネルギーと、回転電機MG1及び回転電機MG2が回生制御されて発電した電気エネルギーと、が充電される。また、バッテリBATは、回転電機MG1及び回転電機MG2を駆動するための電気エネルギーを供給する。
【0020】
トルクコンバータTCは、流体としての油を介してエンジンENG又は回転電機MG2からの駆動力(回転トルク)を増幅して変速機TMへ伝達する。トルクコンバータTCは、動力伝達経路における回転電機MG2と変速機TMとの間に設けられる。
【0021】
トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチLUを有する。ロックアップクラッチLUが締結されると、回転電機MG2と駆動輪DW(具体的には、変速機TM)とを機械的に接続する(直結させる)。ロックアップクラッチLUが締結された状態、すなわち、回転電機MG2と変速機TMとがロックアップクラッチLUにより直結された状態になることで、エンジンENG又は回転電機MG2の駆動力の駆動輪DWへの動力伝達効率を高めることができる。
【0022】
変速機TMは、トルクコンバータTCから伝達されるエンジンENG及び回転電機MG2の駆動力を変速して駆動輪DWへ伝達する。変速機TMは、動力伝達経路におけるトルクコンバータTCと駆動輪DWとの間に設けられる。変速機TMは、無段変速機であってもよいし、有段変速機であってもよい。
【0023】
メカニカルオイルポンプMPは、エンジンENGの駆動力により駆動される。メカニカルオイルポンプMPは、図示しないオイルパンから作動油を吸込み、油圧制御回路1に作動油を圧送(供給)する。
【0024】
電動オイルポンプEPは、バッテリBATを電源として、ポンプ駆動用モータPMにより駆動される。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPとともに、或いは単独で油圧制御回路1に作動油を圧送(供給)する。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPから油圧制御回路1への作動油の供給が停止又は不足した場合に、コントローラ2からの指令に基づいて、油圧制御回路1に作動油を供給する。
【0025】
油圧制御回路1は、複数の流路及び複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路1は、メカニカルオイルポンプMPや電動オイルポンプEPから供給される作動油を調圧して動力伝達装置10の各部位に供給する。具体的には、油圧制御回路1は、コントローラ2からの指令に基づき、クラッチCL及びロックアップクラッチLU等の油圧制御を行う。
【0026】
コントローラ2は、各種センサ等から出力される信号に基づき、エンジンENG、回転電機MG1、クラッチCL、回転電機MG2、ロックアップクラッチLU、及び変速機TMなどの動作を制御する。また、コントローラ2は、エンジンENGを停止するとともにクラッチCLを解放して回転電機MG2の駆動力によって走行する電動走行モードと、エンジンENGの駆動力で回転電機MG1に発電させるとともにクラッチCLを解放して回転電機MG2の駆動力によって走行するシリーズハイブリッド走行モードと、クラッチCLを締結してエンジンENG及び回転電機MG2の駆動力によって走行するパラレルハイブリッド走行モードと、のいずれかを選択してハイブリッド車両100の走行モードを制御する。
【0027】
次に、
図2を参照しながら動力伝達装置10の具体的な構造について説明する。
図2は、動力伝達装置10の要部の断面図である。
【0028】
図2に示すように、動力伝達装置10は、第1回転体11、クラッチCL、第2回転体12、回転電機MG2、及びトルクコンバータTCを収容するケース20を備える。なお、
図2には示していないが、変速機TMもケース20内に収容される。また、本実施形態では、ケース20は、第1ケース20aと第2ケース20bとによって構成されているが、ケース20は、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0029】
ケース20内には、第1壁部としての第1カバー21と、第1カバー21よりクラッチCL側に位置する第2壁部としての第2カバー22と、が設けられる。第1カバー21及び第2カバー22は、それぞれ第1ケース20a及び第2ケース20bにボルト締結で取り付けられる。
【0030】
第1カバー21は、軸受としてのボールベアリング90を介して第1回転体11を回転自在に支持する。本実施形態の第1回転体11は、エンジンENGの出力回転が伝達される入力軸である。第1カバー21は、第1ケース20aにボルト締結により取り付けられる。
【0031】
図2に示すように、第1回転体11(以下、入力軸11ともいう。)におけるトルクコンバータTC側(エンジンENGと反対側)の端部には、クラッチCLのクラッチハブ70が溶接、ボルト締結等によって固定される。クラッチハブ70は、トルクコンバータTC側(エンジンENGと反対側)に向かって延びる筒状部70aを有する。筒状部70aの外周部には、スプライン結合によって軸方向に移動可能にクラッチCLの複数のドライブプレート81が取り付けられる。
【0032】
図2に示すように、第2回転体12(以下、ロータ12ともいう。)は、入力軸11と同軸上に配置される。ロータ12は、入力軸11と同軸に回転する。ロータ12は、第1フレーム13と、第2フレーム14と、で構成される。
【0033】
第1フレーム13は、出力軸43に軸受としてのニードルベアリング94を介して回転自在に支持される第1筒状部13aと、第1筒状部13aの径方向外側に設けられた第2筒状部13bと、第1筒状部13aと第2筒状部13bとを接続する接続部13cと、第2筒状部13bにおけるトルクコンバータTC側の端部に設けられ、トルクコンバータTCのポンプインペラ40に接続される動力伝達部13dと、を有する。
【0034】
第2フレーム14は、軸受としてのボールベアリング91を介して第2カバー22に回転自在に支持される第3筒状部14aと、第3筒状部14aの径方向外側に設けられた第4筒状部14bと、第3筒状部14aと第4筒状部14bとを接続する接続部14cと、を有する。
【0035】
本実施形態では、第1フレーム13の第2筒状部13bと、第2フレーム14の第4筒状部14bと、によって回転ドラム部12aが構成される。回転ドラム部12aにおける内周側を第2筒状部13bが構成し、外周側を第4筒状部14bが構成する。回転ドラム部12aの外周部、より具体的には、第4筒状部14bの外周面には、回転電機MG2のロータコア15が固定される。
【0036】
ロータ12、具体的には、第1フレーム13の接続部13cには、クラッチCLのドリブンプレート82を保持するクラッチドラム71が取り付けられる。クラッチドラム71は、溶接、ボルト締結等で第1フレーム13の接続部13cに固定される。クラッチドラム71は、エンジンENG側に向かって延びる筒状部71aを有する。筒状部71aの内周部には、クラッチCLの複数のドリブンプレート82がスプライン結合によって軸方向に移動可能に取り付けられる。
【0037】
図2に示すように、回転電機MG2のステータ16は、ロータコア15と同軸に配置され、ケース20に固定される。具体的には、ステータ16は、ロータコア15に対して径方向外側において、その内周面がロータコア15の外周面と対向するようにしてケース20に固定される。
【0038】
図2に示すように、第2カバー22は、ケース20(第2ケース20b)に固定される本体部23と、本体部23に固定され、クラッチCLを締結するためのアクチュエータ30を支持するアクチュエータ支持部24と、を有する。第2カバー22における内周側をアクチュエータ支持部24が構成し、外周側を本体部23が構成している。本体部23とアクチュエータ支持部24とは、例えば、ボルト締結で固定される。なお、本実施形態では、本体部23とアクチュエータ支持部24とが、別部品で構成されているが、これらを1つの部品で形成してもよい。
【0039】
図2に示すように、第2カバー22(アクチュエータ支持部24)は、貫通孔22aを有し、この貫通孔22aには、第2フレーム14の第3筒状部14aが挿入される。本実施形態では、貫通孔22aの内周面と第3筒状部14aの外周面との間に軸受としてのボールベアリング91が設けられる。これにより、ロータ12は、第2カバー22によって回転自在に支持される。なお、ボールベアリング91は、エンジンENG側から貫通孔22aの内周面と第3筒状部14aの外周面の間に挿入され、貫通孔22aの内周面と第3筒状部14aの外周面のそれぞれ、あるいは、これらの内の一方に係止された止め輪によって抜け止めされる。
【0040】
図2に示すように、第3筒状部14aによって形成される貫通孔14eには、入力軸11が挿通される。本実施形態では、第3筒状部14aと入力軸11との間には、軸受としてのニードルベアリング92が設けられる。これにより、入力軸11は、ニードルベアリング92、第3筒状部14a、及びボールベアリング91を介して第2カバー22に支持されることになる。なお、ニードルベアリング92は、圧入によって固定されていてもよいし、止め輪などを用いて固定されていてもよい。
【0041】
図2に示すように、本実施形態のアクチュエータ30は、油圧アクチュエータである。アクチュエータ30は、第2カバー22のアクチュエータ支持部24に固定されるピストンケース31と、ピストンケース31内に摺動自在に挿入されたピストン32と、を備える。
【0042】
アクチュエータ30では、アクチュエータ支持部24、ピストンケース31、及びピストン32によって形成される油室に、油圧制御回路1から作動油が供給されると、ピストン32がクラッチCL側に向けて移動し、軸受としてのニードルベアリング93を介してピストンアーム33を押圧する。そして、ピストンアーム33は、ピストンアーム33と第2フレーム14との間に設けられたリターンスプリング34を圧縮しながらクラッチCL側に向けて移動する。これにより、クラッチCLのドライブプレート81及びドリブンプレート82が押圧されて接触することで、クラッチCLが締結状態になる。なお、ニードルベアリング93は、ピストン32がピストンアーム33の回転に伴って連れ回ることを防止している。
【0043】
クラッチCLが締結された状態では、エンジンENGから入力軸11に伝達された駆動力がロータ12から出力される。つまり、入力軸11とロータ12との間で動力が伝達される状態となる。
【0044】
ロータ12から出力された動力は、第1フレーム13の動力伝達部13dから、トルクコンバータTCに伝達される。トルクコンバータTCに伝達された動力は、さらに、変速機TMに伝達される。
【0045】
これに対し、アクチュエータ支持部24、ピストンケース31、及びピストン32によって形成される油室から作動油が排出されると、リターンスプリング34の付勢力によって、ピストンアーム33がドライブプレート81及びドリブンプレート82から離間する方向に移動する。これによって、ドライブプレート81及びドリブンプレート82が押圧された状態から解放される。これにより、クラッチCLが解放状態になる。
【0046】
クラッチCLが解放された状態では、エンジンENGから入力軸11に伝達された駆動力は、ロータ12には伝達されない。つまり、入力軸11とロータ12との間で動力の伝達が遮断される状態となる。
【0047】
次に、トルクコンバータTCの具体的な構成について説明する。
【0048】
図2に示すように、トルクコンバータTCは、第1フレーム13の動力伝達部13dに接続されたポンプインペラ40と、ポンプインペラ40と対向して配置されるタービンライナ41と、ポンプインペラ40とタービンライナ41との間に配置されるステータ42と、タービンライナ41と接続された出力軸43と、ロックアップクラッチLUと、を有する。
【0049】
出力軸43におけるエンジンENG側の端部は、第1フレーム13の第1筒状部13aの中まで延伸している。第1筒状部13aと出力軸43との間には、径方向の荷重を受ける軸受としてのニードルベアリング94が設けられる。
【0050】
ロックアップクラッチLUは、ロータ12の第1フレーム13に軸方向に移動可能に取り付けられた複数のドライブプレート51と、タービンライナ41に固定されたクラッチハブ50と、クラッチハブ50に軸方向に移動可能に取り付けられた複数のドリブンプレート52と、を備える。
【0051】
クラッチハブ50は、エンジンENG側に向かって延びる筒状部50aを有する。筒状部50aは、その外周面が第2筒状部13bのトルクコンバータTC側の端部における内周面と対向する。筒状部50aの外周部には、スプライン結合によって軸方向に移動可能に複数のドリブンプレート52が取り付けられる。
【0052】
ドライブプレート51は、第2筒状部13bのトルクコンバータTC側の端部における内周部に、スプライン結合によって軸方向に移動可能に取り付けられる。本実施形態のロータ12は、ロックアップクラッチLUのクラッチドラムとしての機能も有する。
【0053】
続いて、
図3から
図7を参照しながら、本実施形態の動力伝達装置10の組み立て手順の一例について説明する。
【0054】
まず、クラッチドラム71を第1フレーム13に取り付ける。さらに、クラッチハブ50にドライブプレート51とドリブンプレート52を軸方向に交互に配置した状態で第1フレーム13をトルクコンバータTCのポンプインペラ40に取り付ける。また、このとき、第1フレーム13と出力軸43との間には、ニードルベアリング94を配置する。そして、これら一体化されたクラッチドラム71、第1フレーム13及びトルクコンバータTCをケース20内に配置する(
図3参照)。
【0055】
次に、クラッチCLのドライブプレート81及びドリブンプレート82を軸方向に交互に配置し、クラッチハブ70を取り付けた入力軸11をケース20内に配置する(
図4参照)。
【0056】
そして、ロータコア15が取り付けられた第2フレーム14をケース20内に配置し、第2フレーム14を第1フレーム13に固定する(
図5参照)。
【0057】
次に、ステータ16をケース20内に配置し、ケース20に固定する(
図6参照)。このとき、ステータ16がロータコア15に接触しないように、言い換えるとエアギャップを確保しながらステータ16をケース20内に配置する。
【0058】
次に、第2カバー22の本体部23をボルトによって第2ケース20bに固定する。次いで、アクチュエータ30を組み込んだアクチュエータ支持部24をボルトによって本体部23に固定する。その後、アクチュエータ支持部24(貫通孔22a)の内周面と第2フレーム14の第3筒状部14aの外周面との間にボールベアリング91を挿入し、止め輪を係止する(
図7参照)。
【0059】
最後に、入力軸11の外周にボールベアリング90を配置し、第1カバー21が取り付けられた第1ケース20aをボルトによって第2ケース20bに固定して、完成する(
図2の状態)。
【0060】
本実施形態の動力伝達装置10は、入力軸11をボールベアリング90を介して回転可能に支持する第1カバー21と、ロータ12をボールベアリング91を介して回転可能に支持する第2カバー22と、を備えている。つまり、動力伝達装置10では、ボールベアリング90と、ボールベアリング91とが別々の個所に支持されている。このため、ボールベアリング90及びボールベアリング91を一体的に取り付ける必要がないので、ボールベアリング90及びボールベアリング91を取り付けるための複雑な形状の支持部材を用意する必要がない。つまり、本実施形態の動力伝達装置10によれば、軸受として、ボールベアリング90及びボールベアリング91のような一般的な形状の軸受を用いることができる。
【0061】
また、動力伝達装置10によれば、2つのベアリングを一体的に取り付ける場合に比べ、ボールベアリング90及びボールベアリング91を簡単に取り付けることができる。これにより、動力伝達装置10の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、駆動源がエンジンENGである場合を例に説明したが、これに限らず、駆動源が例えば、モータなどであってもよい。また、上記実施形態では、第2回転体12が、回転電機MG2のロータとして機能する場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、第2回転体12が直接トルクコンバータTCや変速機TMに接続していてもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、アクチュエータ30が油圧アクチュエータである場合を例に説明したが、これに限らず、アクチュエータ30は電動式アクチュエータなど、他の駆動形式のアクチュエータであってもよい。
【0064】
以上のように構成された動力伝達装置10の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0065】
(1)動力伝達装置10は、エンジンENG(駆動源)からの動力によって回転する第1回転体11(入力軸11)と、第1回転体11(入力軸11)が挿通する貫通孔22aを有する第2回転体12(ロータ12)と、第1回転体11(入力軸11)と第2回転体12(ロータ12)との間の動力伝達を断接するクラッチCL(クラッチ機構)と、第1回転体11(入力軸11)、第2回転体12(ロータ12)、及びクラッチCL(クラッチ機構)を収容するケース20と、ケース20に取り付けられ、第1回転体11(入力軸11)をボールベアリング90(軸受)を介して回転可能に支持する第1カバー21(第1壁部)と、第1カバー21(第1壁部)よりクラッチCL(クラッチ機構)においてケース20に取り付けられ、第2回転体12(ロータ12)をボールベアリング91(軸受)を介して回転可能に支持する第2カバー22(第2壁部)と、を備える。
【0066】
この構成によれば、ボールベアリング90(軸受)及びボールベアリング91(軸受)をまとめて取り付ける必要がないので、ボールベアリング90(軸受)及びボールベアリング91(軸受)を支持するために、複雑な形状の支持部材を用意する必要がない。つまり、ボールベアリング90(軸受)及びボールベアリング91(軸受)としてシンプルな形状の軸受を用いることができ、組立作業の作業効率を向上できる。
【0067】
また、この構成によれば、2つの軸受を一体的に取り付ける場合に比べ、ボールベアリング90(軸受)及びボールベアリング91(軸受)を簡単に取り付けることができる。これにより、動力伝達装置10の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0068】
(2)動力伝達装置10は、第2回転体12(ロータ12)を回転させる駆動力を発生する回転電機MG2をさらに備える。第2回転体12(ロータ12)には、回転電機MG2のロータコア15が取り付けられている。
【0069】
この構成によれば、第2回転体12(ロータ12)が、回転電機MG2のロータとして機能する場合に、ロータコア15とステータ16が磁力によってくっつかないように、これらの間のエアギャップを保持しながら組み立て。
できる。
【0070】
(3)動力伝達装置10では、第2カバー22(第2壁部)には、クラッチ機構(クラッチCL)を制御するアクチュエータ30が取り付けられている。
【0071】
この構成によれば、第2カバー22(第2壁部)がアクチュエータ30の支持部材としても機能する。これにより、アクチュエータ30の支持部材を別途設ける場合に比べ、部品点数の増加を抑制できる。
【0072】
(4)動力伝達装置10は、第2回転体12(ロータ12)の回転トルクを増幅可能なトルクコンバータTCをさらに備え、第2回転体12(ロータ12)には、トルクコンバータTCのポンプインペラ40が接続されている。
【0073】
この構成によれば、第2回転体12(ロータ12)をトルクコンバータTCのポンプインペラ40の固定された状態で組み立てることができる。
【0074】
(5)動力伝達装置10は、第1回転体11(入力軸11)と第2回転体12(ロータ12)との間に設けられたニードルベアリング92(軸受)をさらに備えている。
【0075】
この構成によれば、ニードルベアリング92(軸受)によって、第1回転体11(入力軸11)のがたつきをより一層抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0077】
例えば、上記実施形態では、動力伝達装置10が、クラッチCLと、回転電機MG2と、トルクコンバータTCと、変速機TMと、を備える態様について説明した。しかしながら、動力伝達装置10は、必ずしも、回転電機MG2と、トルクコンバータTCと、変速機TMと、を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 動力伝達装置
11 第1回転体(入力軸)
12 第2回転体(ロータ)
15 ロータコア
16 ステータ
20 ケース
20a 第1ケース
20b 第2ケース
21 第1カバー(第1壁部)
22 第2カバー(第2壁部)
30 アクチュエータ
43 出力軸
90 ボールベアリング(軸受)
91 ボールベアリング(軸受)
92 ニードルベアリング(軸受)
94 ニードルベアリング
100 ハイブリッド車両
ENG エンジン(駆動源)
MG1 回転電機
MG2 回転電機
CL クラッチ(クラッチ機構)
TC トルクコンバータ