(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021052
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】触媒構造体
(51)【国際特許分類】
B01J 23/83 20060101AFI20240207BHJP
B01J 35/56 20240101ALI20240207BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240207BHJP
C07C 1/22 20060101ALI20240207BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
B01J23/83 M
B01J35/04 331Z
C07C9/04
C07C1/22
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113053
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022123444
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023100508
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】和田口 暢基
(72)【発明者】
【氏名】中川 尚人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 将任
(72)【発明者】
【氏名】山際 勝也
(72)【発明者】
【氏名】小野田 大地
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BA22C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB14A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE01C
4G169BE08C
4G169CC22
4G169DA06
4G169EB11
4G169FC03
4H006AA02
4H006AC90
4H006BA21
4H039CA99
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】プロトンと電子の授受を伴う反応の反応量を増大させる。
【解決手段】プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する触媒構造体であって、プロトン伝導性セラミックスと、電子伝導性材料と、を含む多孔質部を備え、多孔質部において、プロトン伝導性セラミックスが占める割合R
Pが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導性材料が占める割合R
Eが20体積%以上54体積%以下であり、空孔が占める割合R
Vが30体積%以上55体積%以下(ただし、R
P+R
E+R
V≦100体積%)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する触媒構造体であって、
プロトン伝導性セラミックスと、電子伝導性材料と、を含む多孔質部を備え、
前記多孔質部において、前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RPが16体積%以上50体積%以下であり、前記電子伝導性材料が占める割合REが20体積%以上54体積%以下であり、空孔が占める割合RVが30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)であることを特徴とする
触媒構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RP、前記電子伝導性材料が占める割合RE、および、空孔が占める割合RVが、各々、30体積%以上40体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)であることを特徴とする
触媒構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の触媒構造体であって、
前記プロトンおよび電子の授受を伴う反応は、二酸化炭素の水素化反応、または、脱水素化反応により水素を生成する反応であることを特徴とする
触媒構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスは、金属酸化物と、金属リン酸塩のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする
触媒構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスは、CeO2系酸化物を含むことを特徴とする
触媒構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、金属であることを特徴とする
触媒構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、前記金属としてニッケルを含むことを特徴とする
触媒構造体。
【請求項8】
請求項1に記載の触媒構造体であって、
前記触媒構造体が備える触媒は、電場印加により活性化可能であることを特徴とする
触媒構造体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、前記反応を促進する触媒金属を含むことを特徴とする
触媒構造体。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、さらに、
前記多孔質部の表面に担持されて前記反応を促進する触媒金属を備えることを特徴とする
触媒構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロトンと電子の授受を伴う反応として、種々の反応が知られ、このような反応を促進する種々の触媒が提案されている。例えば、特許文献1には、イオン・電子混合伝導性セラミックからなる担体粒子に触媒金属を担持して、触媒間抵抗率を調整することによって、電場印加時における触媒活性を向上させる水蒸気改質用触媒が開示されている。また、特許文献2には、ジルコニウムを含む複合酸化物と触媒活性成分とを含み、水素と窒素の存在下で、電圧印加を伴いながらアンモニアを合成するアンモニア合成用触媒が開示されている。また、非特許文献1には、酸化セリウム上にルテニウムが担持されて、電界中で二酸化炭素をメタンに低温変換する触媒が開示されている。また、特許文献3には、プロトン伝導体上にコバルトとランタンを含む複合酸化物を担持した、炭化水素および炭素の酸化触媒が開示されている。さらに、特許文献4には、酸素吸蔵放出材を含む担体と、担体上に担持されて遷移金属からなる触媒金属と、を備え、排ガス中の二酸化炭素を水素化反応させてメタノールを生成する二酸化炭素還元触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6444289号公報
【特許文献2】特許第6285101号公報
【特許文献3】特許第5754351号公報
【特許文献4】特開2021-146258号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K. Yamada et al., Chem. Lett. 49, 303-306(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、プロトンと電子の授受を伴う反応を良好に進行させるために、担体や触媒活性成分などの触媒体を構成する各成分の種類の特定や、触媒における抵抗率の調整や、電場印加等が行われてきたが、このようなプロトンと電子の授受を伴う反応による生成物の製造の実用化を促進するために、さらに反応量を増大させる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する触媒構造体が提供される。この触媒構造体は、プロトン伝導性セラミックスと、電子伝導性材料と、を含む多孔質部を備え、前記多孔質部において、前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RPが16体積%以上50体積%以下であり、前記電子伝導性材料が占める割合REが20体積%以上54体積%以下であり、空孔が占める割合RVが30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)である。
この形態の触媒構造体によれば、触媒構造体の全体において、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われるため、触媒構造体全体で、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を増大させることができる。(2)上記形態の触媒構造体において、前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RP、前記電子伝導性材料が占める割合RE、および、空孔が占める割合RVが、各々、30体積%以上40体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)であることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒構造体全体におけるプロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を、さらに増大させることができる。
(3)上記形態の触媒構造体において、前記プロトンおよび電子の授受を伴う反応は、二酸化炭素の水素化反応、または、脱水素化反応により水素を生成する反応であることとしてもよい。このような構成とすれば、二酸化炭素の水素化反応、または、脱水素化反応により水素を生成する反応の反応量を増大させることができる。
(4)上記形態の触媒構造体において、前記プロトン伝導性セラミックスは、金属酸化物と、金属リン酸塩のうちの少なくとも一方を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、金属酸化物と、金属リン酸塩のうちの少なくとも一方によって、触媒構造体におけるプロトン伝導性を確保することができる。
(5)上記形態の触媒構造体において、前記プロトン伝導性セラミックスは、CeO2系酸化物を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、触媒構造体におけるプロトン伝導性を確保することが容易になる。
(6)上記形態の触媒構造体において、前記電子伝導性材料は、金属であることとすればよい。このような構成とすれば、電子伝導性材料によって触媒構造体における電子伝導性を確保することが容易になる。
(7)上記形態の触媒構造体において、前記電子伝導性材料は、前記金属としてニッケルを含むこととしてもよい。このような構成とすれば、電子伝導性材料に含まれるニッケルによって、触媒構造体に触媒活性を付与することが可能になる。
(8)上記形態の触媒構造体において、前記触媒構造体が備える触媒は、電場印加により活性化可能であることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒構造体における触媒活性を向上させることができると共に、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を進行する際に、比較的温和な条件(比較的低温の条件や比較的低圧の条件)で、反応を進行させることが可能になる。
(9)上記形態の触媒構造体において、前記電子伝導性材料は、前記反応を促進する触媒金属を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、触媒金属の体積比率を高めることで、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を増大させる効果をさらに高めることができる。
(10)上記形態の触媒構造体において、さらに、前記多孔質部の表面に担持されて前記反応を促進する触媒金属を備えることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒金属を担持する担体としての多孔質部において、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われるため、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を増大させることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、触媒構造体の製造方法、触媒担体、触媒担体の製造方法、二酸化炭素の水素化方法、脱水素化反応により水素を生成する方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の触媒構造体の構成を模式的に表す説明図。
【
図2】触媒構造体における、R
P、R
E、R
Vの関係を模式的に示す説明図。
【
図3】触媒構造体の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図4】触媒構造体の製造方法の他の例を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態の触媒構造体の概略構成を模式的に表す説明図。
【
図6】各サンプルにおける、R
P、R
E、R
Vの関係を模式的に示す説明図。
【
図7】各サンプルの組成および原料組成をまとめて示す説明図。
【
図8】各サンプルのメタン生成速度を測定した結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
(A-1)触媒構造体の構成:
図1は、本開示の第1実施形態としての触媒構造体10の構成を模式的に表す説明図である。本実施形態の触媒構造体10は、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する触媒構造体であり、プロトン伝導性セラミックス12と、電子伝導性材料14と、を含む。
【0009】
以下ではまず、触媒構造体10の構造の説明に先立って、触媒構造体10が促進するプロトンおよび電子の授受を伴う反応について説明する。本実施形態の触媒構造体10が促進する反応は、プロトンおよび電子の授受を伴う反応であれば特に制限はないが、例えば、二酸化炭素の水素化反応、または、脱水素化反応により水素を生成する反応を挙げることができる。
【0010】
二酸化炭素の水素化反応の例としては、例えば、二酸化炭素から、炭化水素やアルコール類のような有機物を生成する反応を挙げることができる。このような反応の例として、二酸化炭素からメタノールを生成する反応を以下の(1)式に示し、二酸化炭素からメタンを生成する反応を以下の(2)式に示し、二酸化炭素からギ酸を生成する反応を以下の(3)式に示す。また、二酸化炭素の水素化反応の他の例としては、例えば、二酸化炭素から一酸化炭素を生成する反応を挙げることができる。このような反応を、以下の(4)式に示す。
【0011】
CO2 + 6H+ + 6e- → CH3OH + H2O … (1)
CO2 + 8H+ + 8e- → CH4 + 2H2O … (2)
CO2 + 2H+ + 2e- → HCOOH … (3)
CO2 + 2H+ + 2e- → CO + H2O … (4)
【0012】
脱水素化反応により水素を生成する反応の例としては、炭化水素やアルコールの脱水素化反応を挙げることができる。具体的には、炭化水素やアルコールから、水蒸気改質反応や部分酸化反応により水素を生成する反応を挙げることができる。以下では、このような反応の例として、炭化水素の水蒸気改質反応の一般式を(5)式に示す。また、炭化水素の部分酸化反応の一般式を(6)式に示し、部分酸化反応で生じた一酸化炭素と水蒸気から二酸化炭素および水素を生成するシフト反応を(7)式に示す。また、アルコールから水素を生成する反応の例として、メタノールの水蒸気改質反応を(8)式に示し、エタノールの水蒸気改質反応を(9)式に示し、メタノールの部分酸化反応を(10)式に示す。いずれの反応も、プロトンおよび電子の授受を伴う反応である。
【0013】
CnHm + 2nH2O → (m/2+2n)H2 + nCO2 … (5)
CnHm + (n/2)O2 → nCO + (m/2)H2 … (6)
CO + H2O → CO2 +H2 … (7)
CH3OH + H2O → CO2 + 3H2 … (8)
C2H5OH + 3H2O → 2CO2 + 6H2 … (9)
CH3OH + 1/2O2 → CO2 + 2H2 … (10)
【0014】
図1に示すように、触媒構造体10は、複数の微粒子状のプロトン伝導性セラミックス12と、複数の微粒子状の電子伝導性材料14と、が混合されており、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との間には空孔16が形成されている。上記のようなプロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との混合物としての触媒構造体10は、任意の形状とすることができるが、
図1では、一例として、粒子状に形成された様子を示している。
図1に示すように、内部で3次元的に連通する空孔16を有する触媒構造体10は、「多孔質部」とも呼ぶ。
【0015】
プロトン伝導性セラミックス12は、プロトン伝導性を有する任意のセラミックスにより形成することができる。プロトン伝導性セラミックス12におけるプロトン伝導は、プロトン伝導性セラミックス12の内部で進行してもよく、プロトン伝導性セラミックス12の表面で進行してもよい。プロトン伝導性セラミックス12は、例えば、金属酸化物と、金属リン酸塩とのうちの少なくとも一方を含むことができる。プロトン伝導性セラミックス12を構成するセラミックスとしては、蛍石型構造金属酸化物、具体的には、セリウムを含有する酸化物であるCeO2系酸化物や、ジルコニウムを含有する酸化物であるZrO2系酸化物を、好適に用いることができる。中でも、酸化セリウム(CeO2)は、高いプロトン伝導性を示し、例えばZrO2系酸化物よりもプロトン伝導性が高いことが知られており(例えば、X. Sun, et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 2022, 24, 11856、およびX. Sun, et al., Applied Surface Science, 2023, 611, 155590)、望ましい。これらの金属酸化物は、本実施形態の触媒構造体10を、後述するように電場を印加して用いる場合に適している。
【0016】
プロトン伝導性セラミックス12を構成する金属酸化物として、上記以外の金属酸化物を用いてもよく、例えば、プロトン伝導性を示すペロブスカイト構造の金属酸化物(例えば、BaCeO3系酸化物)、プロトン伝導性を示すフェルグソナイト型構造またはシェーライト型構造の金属酸化物(例えば、LaNbO4系酸化物)、プロトン伝導性を示すパイロクロア構造の金属酸化物(例えば、La2Zr2O7系酸化物)、プロトン伝導性を示すマイエナイト型構造の金属酸化物(例えば、Ce12Al14O33系酸化物)、プロトン伝導性を示すブラウンミラライト型構造の金属酸化物(例えば、Ba2In2O5系酸化物)、プロトン伝導性を示す蛍石型構造を母体とする金属酸化物(例えば、La6WO6系酸化物)、プロトン伝導性を示すリン酸系化合物(例えば、LaPO4系やSnP2O7系やCsH2PO4系)、プロトン伝導性を示す硫酸系化合物(例えばCsHSO4系)等を用いることができる。
【0017】
電子伝導性材料14は、本実施形態では、既述したプロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する活性を有する触媒金属を含んでいる。触媒金属は、触媒構造体10を用いて進行すべき反応に応じて、適宜選択すればよい。例えば、二酸化炭素の還元反応を促進する触媒能を有する卑金属の触媒金属としては、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)を用いることができる。このような電子伝導性材料14は、銅(Cu)およびニッケル(Ni)のうちの少なくとも一方を含むこととしてもよい。触媒金属として銅(Cu)を用いる場合には(1)式の反応が進行してメタノールを生成することができ、触媒金属としてニッケル(Ni)を用いる場合には、(2)式の反応が進行してメタンを生成することができる。ただし、電子伝導性材料14を構成する材料は、上記以外であってもよく、例えば、水素化雰囲気下で金属の状態を保つことができる純金属または合金とすることができる。電子伝導性材料14全体を触媒金属で形成することにより、触媒構造体10における触媒活性と電子伝導性とを高めることができる。また、電子伝導性材料14は、触媒金属に加えて、さらに他の金属を含有していてもよい。なお、セリウムを含有する酸化物は、還元雰囲気で電子伝導性を示すが、電子伝導性材料14には含まれない。
【0018】
触媒構造体10では、プロトン伝導性セラミックス12が占める割合をRPとすると、割合RPは16体積%以上50体積%以下となっており、電子伝導性材料14が占める割合をREとすると、割合REは20体積%以上54体積%以下となっており、空孔16が占める割合をRVとすると、割合RVは30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)となっている。RP、RE、およびRVを上記範囲とすることで、プロトン伝導性セラミックス12、電子伝導性材料14、および空孔16の各々の、触媒構造体10における連通状態の程度を高めることができ、触媒構造体10全体で、プロトン伝導と電子伝導とガスの流通の各々の経路の連通状態を確保することが容易になる。なお、(RP+RE+RV)が100体積%よりも小さい場合とは、触媒構造体10が、触媒構造体10の原料中に不可避的に混合された不純物や、触媒構造体10の製造工程で混入した不純物を含む場合を想定している。触媒構造体10が実質的に不純物を含有しない場合には、RP+RE+RV=100体積%と考えることができる。
【0019】
上記したRP、RE、RVの各々の比率は、30体積%以上40体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)とすることが好ましく、31体積%以上38体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)とすることがより好ましく、32体積%以上36体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)とすることがさらに好ましい。特定の系において、対象となる物質が系内でクラスタを形成することでどのようにつながっているのか、その結果、対象となる物質の有する電気伝導性等の性質により、上記の系の性質がどのようになるのか、に関する理論として、パーコレーション理論が知られている。例えば、K. Shida, et al., J. Japan Inst. Metals, Vol. 73, No. 3, 171-173(2009)には、正方格子上のサイトパーコレーションの閾値Pcが、3次元の場合、Pc=0.312であることが示されている。また、例えば、山田均、「パーコレーション理論による導電性複合材の物性発現機構」、ニチアス技術時報No.333、2002年、5号には、単純立方格子のサイトパーコレーション閾値が31.17%であること、および、複合材において体積分率30%がパーコレーション閾値となる例が示されている。
【0020】
図2は、触媒構造体10における、プロトン伝導性セラミックス12が占める割合(プロトン伝導材比R
P)、電子伝導性材料14が占める割合(電子伝導材比R
E)、および、空孔16が占める割合(空孔比R
V)の関係を、模式的に示す説明図である。
図2に示した正三角形ABCでは、頂点Aに記載した空孔比R
Vについては、辺BCの位置がR
V=0体積%に対応しており、
図2ではR
V=30体積%の位置を破線で示すと共に、R
V=55体積%の位置を一点二短鎖線で示している。
図2の正三角形ABCでは、破線よりも頂点A側の領域が、R
V>30体積%に対応し、上記一点二短鎖線よりも辺BC側の領域が、R
V<55体積%に対応する。また、
図2に示した正三角形ABCでは、頂点Bに記載したプロトン伝導材比R
Pについては、辺CAの位置がR
P=0体積%に対応しており、
図2ではR
P=16体積%の位置を一点鎖線で示し、R
P=30体積%の位置を点線で示し、R
P=50体積%の位置を一点二短鎖線で示している。
図2の正三角形ABCでは、一点鎖線よりも頂点B側の領域が、R
P>16体積%に対応し、上記一点二短鎖線よりも辺CA側の領域がR
P<50体積%に対応する。また、
図2に示した正三角形ABCでは、頂点Cに記載した電子伝導材比R
Eについては、辺ABの位置がR
E=0体積%に対応しており、
図2ではR
E=20体積%の位置を二点鎖線で示し、R
E=30体積%の位置を点線で示し、R
E=54体積%の位置を一点二短鎖線で示している。
図2の正三角形ABCでは、二点鎖線よりも頂点C側の領域が、R
E>20体積%に対応し、上記一点二短鎖線よりも辺AB側の領域がR
E<54体積%に対応する。
【0021】
プロトン伝導材比R
Pが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導材比R
Eが20体積%以上54体積%以下であり、空孔比R
Vが30体積%以上55体積%以下(ただし、R
P+R
E+R
V≦100体積%)である状態は、
図2において、比較的薄いハッチングを付して示されている。このような状態になるときには、触媒構造体10におけるプロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14と空孔16の各々の連通状態が良好になって、触媒構造体10としての性能が十分に得られる程度にプロトン伝導と電子伝導とガスの流通が高められた状態にすることができる。また、プロトン伝導材比R
Pと電子伝導材比R
Eと空孔比R
Vのいずれもが30体積%以上となる状態は、
図2において比較的濃いハッチングを付して示されている。このような状態とは、プロトン伝導材比R
Pと電子伝導材比R
Eと空孔比R
Vの各々が、30体積%以上40体積%以下(ただし、R
P+R
E+R
V≦100体積%)となる状態である。このような状態となるときには、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14と空孔16の各々が、触媒構造体10の内部でより良好に連通した状態となっており、触媒構造体10の内部において、プロトン伝導と電子伝導とガスの流通とが確保された状態にすることができる。
【0022】
触媒構造体10における上記した体積比は、触媒構造体10の断面における各部の面積比を測定することにより求めることができる。具体的には、例えば、触媒構造体10を樹脂埋めした後に、クロスセクションポリッシャ(登録商標)により触媒構造体10の研磨断面を得て、電子顕微鏡観察とEPMA(電子プローブマイクロアナライザ)分析とを行って各部の面積比を求めることで、上記した各体積比を求めることができる。プロトン伝導体と電子伝導体と空孔とがランダムに配置する組成の構造体であれば、例えば、その構造体の断面図をランダムに5枚撮って上記のように各部の面積比を求めて平均値を算出することで、各部の体積比とみなすことができる。
【0023】
本実施形態では、触媒構造体10が備える触媒、すなわち、電子伝導性材料14が備える触媒金属は、電場印加により活性化可能である。そのため、触媒構造体10を用いる際には、例えば、触媒構造体10によって構成される触媒層に一対の電極を接触させて、触媒層に電場を印加すればよい。その結果、印加した電気エネルギーにより触媒活性を向上させることができる。これにより、例えば、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を進行する際に、比較的温和な条件(比較的低温の条件や比較的低圧の条件)で、反応を進行させることが可能になる。ただし、触媒構造体10は、電場印加を伴うことなく用いることとしてもよい。
【0024】
(A-2)触媒構造体の製造方法:
図1では、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との混合物としての触媒構造体10が粒子状に形成された様子を示しているが、触媒構造体10は種々の形態を採用可能である。触媒構造体10は、粉末、ペレット、所望の形状に成形された多孔質成形体、ハニカム形状など、種々の形状とすることができる。また、このような触媒構造体10は、種々の方法で製造することが可能である。
【0025】
図3は、触媒構造体10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示す製造方法は、多孔質成形体としての触媒構造体10の製造方法であり、予め材料中に造孔材を混合することにより、触媒構造体10内に空孔16を形成している。このような方法により、所望の形状に成形された多孔質成形体としての触媒構造体10や、ペレット形状の触媒構造体10を製造することができる。
【0026】
図3に示す方法により触媒構造体10を製造する際には、まず、プロトン伝導性セラミックス12を構成する原料粉末であるセラミックス原料粉末と、電子伝導性材料14を構成する原料粉末である電子伝導材原料粉末と、空孔16を形成するための造孔材粉末と、を混合する(工程T100)。例えば、プロトン伝導性セラミックス12を酸化セリウムにより構成する場合には、セラミックス原料粉末として酸化セリウム粉末を用いることができ、電子伝導性材料14をニッケルにより構成する場合には、電子伝導材原料粉末として酸化ニッケルを用いることができる。造孔材粉末の材料は、後の工程において、造孔材粉末に応じた方法により除去可能であれば、任意に選択することができる。例えば、アクリル系微粒子(例えば、積水化成品工業株式会社製、BMSA-18GN)などの樹脂粉末を用いることができる。工程T100において混合するセラミックス原料粉末と電子伝導材原料粉末と造孔材粉末との混合割合を変更することにより、最終的に得られる触媒構造体10における、プロトン伝導性セラミックスが占める割合R
P、電子伝導性材料が占める割合R
E、および、空孔が占める割合R
Vを、調節することができる。例えば、触媒構造体10におけるプロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との体積比率は、工程T100で混合するセラミックス原料粉末と電子伝導材原料粉末との混合割合により定めることができる。
【0027】
工程T100においては、さらに、バインダや、エタノール等の溶媒や、分散剤(例えば、三洋化成工業株式会社製のイオネットS-20)を加えることができる。バインダは、用いる溶媒や触媒構造体10の成形方法等により適宜選択すればよく、溶媒としてエタノールを用いてプレス成形を行う場合には、例えば、中京油脂株式会社製のセルナSE604をバインダとして用いることができる。
【0028】
工程T100で上記した原料を混合した後、加熱により溶媒を揮発させ、得られた混合粉末を、例えば一軸プレスによりプレス成形し、圧粉体を作製する(工程T110)。工程T110で用いるプレス用の金型の形状により、最終的に得られる触媒構造体10を、所望の形状の多孔質成形体とすることができる。また、ペレット形状に成形することとしてもよい。その後、圧粉体を加熱により脱脂して、造孔材粉末を揮発させて、多孔質体を作製する(工程T120)。例えば、造孔材粉末として既述したアクリル系微粒子を用いる場合には、工程T120では、大気雰囲気中にて200~500℃で加熱を行えばよい。
【0029】
その後、工程T120で得た多孔質体を焼成し、焼成体を得る(工程T130)。焼成は、例えば、大気雰囲気中において、1000~1500℃で行えばよい。そして、得られた焼成体を還元処理することにより、焼成体中の触媒金属を還元させて(工程T140)、触媒構造体10を完成する。還元処理は、焼成体中の、触媒金属を含む化合物(電子伝導性材料14をニッケルにより構成する場合には酸化ニッケルなど)を選択的に還元できる条件で行えばよく、例えば、水素や水蒸気を含有する雰囲気中にて、300~1000℃で加熱すればよい。なお、触媒構造体10における空孔16の体積比率は、工程T100において混合する造孔材粉末の混合割合の他、工程T130における焼成条件(主として焼成温度)により調節することができる。
【0030】
図4は、触媒構造体10の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
図4に示す製造方法は、粉末(粒子)状の触媒構造体10の製造方法であり、酸化物粉体の精密合成法として知られる錯体重合法を利用する製造方法である。錯体重合法による下記の製造方法を採用することにより、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との混合状態の均一性を高めることが、より容易になる。
【0031】
図4に示す方法により触媒構造体10を製造する際には、まず、プロトン伝導性セラミックス12の原料となる金属塩(以下、セラミックス原料塩とも呼ぶ)と、電子伝導性材料14の原料となる金属塩(以下、電子伝導材原料塩とも呼ぶ)とを用意して、純水等に溶解することにより、原料溶液を作製する(工程T200)。具体的には、プロトン伝導性セラミックス12を酸化セリウムにより構成する場合には、セラミックス原料塩として硝酸セリウムを用いることができ、電子伝導性材料14をニッケルにより構成する場合には、電子伝導材原料塩として硝酸ニッケルを用いることができる。工程T200において、セラミックス原料塩と電子伝導材原料塩との混合割合を変更することにより、最終的に得られる触媒構造体10における、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との体積比を調節することができる。
【0032】
工程T200の後、作製した原料溶液と、クエン酸等のオキシカルボン酸と、プロピレングリコール等のグリコールとを混合する(工程T210)。工程T210では、オキシカルボン酸を加えることにより、上記した金属塩を構成する金属が、金属オキシカルボン酸錯体を形成する。そして、工程T210で得られた混合溶液を加熱することで、オキシカルボン酸とグリコールとが重合して、ポリエステル高分子ゲルが形成される(工程T220)。工程T220における加熱の条件は、例えば、40℃で一晩とすることができる。
【0033】
その後、工程T220で得られたポリエステルを含む溶液を加熱乾燥することで前駆体が得られ、得られた前駆体を焼成することで、上記した金属の酸化物を含む酸化物粉体が得られる(工程T230)。焼成は、酸化物粉体が得られる条件であればよく、例えば、大気雰囲気中において、400℃で行うこととすればよい。この工程T230の焼成過程において、上記した前駆体中の有機成分(オキシカルボン酸とグリコールとの重合体)が揮発して、前駆体内において、空孔16となる空孔が形成される。なお、上記前駆体に含まれる有機成分の量、すなわち、工程T210で混合するオキシカルボン酸やグリコールなどの量や、工程T230における焼成温度を変更することにより、最終的に得られる触媒構造体10における空孔16の体積比を調節することができる。
【0034】
工程T230で酸化物粉体を得た後には、この酸化物粉体を還元処理することにより、焼成体中の触媒金属を還元させて(工程T240)、触媒構造体10を完成する。還元処理は、焼成体中の、触媒金属を含む化合物(例えば、電子伝導性材料14をニッケルにより構成する場合には酸化ニッケル)を選択的に還元できる条件で行えばよく、例えば、水素や水蒸気を含有する雰囲気中にて、300~1000℃で加熱すればよい。
【0035】
図4では、粉末状の触媒構造体10の製造方法を示したが、このようにして得られた粉末を、さらに、一軸プレス等によりプレス成形し、ペレット状の触媒構造体10を作製することとしてもよい。このとき、プレス成形時のプレス圧を変更することにより、最終的に得られるペレット状の触媒構造体10における空孔16の体積比を調節することができる。
【0036】
以上のように構成された本実施形態の触媒構造体10によれば、プロトン伝導性セラミックス12が占める割合RPが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導性材料14が占める割合REが20体積%以上54体積%以下であり、空孔16が占める割合RVが30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)となっている。そのため、触媒構造体10の内部を含む触媒構造体10の全体に配置される触媒金属において、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体10全体で反応量を増大させることができる。
【0037】
プロトン伝導材比RPと電子伝導材比REと空孔比RVの望ましい範囲として既述したように、プロトン伝導材比RPと電子伝導材比REと空孔比RVの中では、特に、空孔比RVがより十分に確保されていることが望ましく、具体的には空孔比RVは30体積%以上とすることが望ましい。これは、触媒構造体10を用いてプロトンおよび電子の授受を伴う反応を進行する際には、反応ガス(例えば、(1)式から(4)式に示したような二酸化炭素の水素化反応を進行する場合には二酸化炭素と水素)が触媒構造体10の表面に吸着する必要があると考えられる。空孔の連通状態が不十分であるほど、多孔質部である触媒構造体10の内部の表面において、反応ガスが吸着できない領域が増えることになる。そのため、空孔比RVとして30体積%以上を確保して、触媒構造体10内における閉気孔(空孔16の他の箇所と連通していない独立した空孔)の形成を十分に抑えることが望ましい。ただし、空孔比RVの大きさが過剰になると、プロトン伝導材比RPおよび電子伝導材比REの確保が困難となるだけでなく、触媒構造体10の強度低下が引き起こされる。そのため、空孔比RVは55体積%以下とすることが望ましい。
【0038】
このような触媒構造体10においては、プロトン伝導性セラミックスが占める割合RP、電子伝導性材料が占める割合RE、および、空孔が占める割合RVを、いずれも30体積%以上40体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)とすることで、プロトン伝導性セラミックス12、電子伝導性材料14、および空孔16の各々の連結状態を、触媒構造体10全体でバランス良く高いレベルで確保することができる。その結果、触媒構造体10全体で、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量をさらに増大させることができる。
【0039】
従来知られる触媒構造体は、一般に、触媒金属の化合物溶液を担体上に塗布、あるいは含浸させる等の方法により、担体表面に触媒金属を高分散させており、触媒構造体における触媒金属の担持量は、本実施形態の触媒構造体10に比べてはるかに少なかった。例えば、既述した特許文献1には、触媒金属であるロジウム(Rh)が、担体である酸化セリウムに対して、0.25wt%、すなわち、0.13体積%程度担持される例が示されている。また、既述した特許文献2には、触媒金属であるルテニウム(Ru)が、担体(酸化マグネシウムを含む酸化セリウム)に対して、5wt%、すなわち、0.75体積%程度担持される例が示されている。また、既述した特許文献4には、触媒金属である銅(Cu)および亜鉛(Zn)が、担体である酸化セリウムに対して、それぞれ、12wt%および6wt%担持されており、触媒金属全体としては16体積%程度担持される例が示されている。このように、従来は、一般に、触媒金属を担体上で高分散させて触媒量を抑えつつ、触媒の比表面積を確保していた。
【0040】
これに対して、本実施形態の触媒構造体10は、触媒構造体10の内部において、プロトン伝導と電子伝導とガスの流通の各々の経路の連通状態が確保された状態で、触媒構造体10全体で触媒金属を30体積%以上含むため、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を、効果的に増大させることができる。すなわち、上記したように担体上に触媒金属を担持させる場合には、触媒金属の担持量を増加させても、担持された触媒金属の粒径が大きくなって比表面積が抑えられることにより、触媒活性が高まり難いため、一般に、触媒金属の担持量を抑えつつ高分散化することにより触媒活性の向上を図っている。これに対して、本実施形態の触媒構造体10によれば、プロトン伝導性セラミックス12と、触媒金属を含む電子伝導性材料14と、空孔16との体積を既述した範囲とすることで、触媒金属量を増加させる利点を生かしつつプロトン伝導と電子伝導とガスの流通の各々の経路の連通状態を確保して、高い触媒活性を実現することができる。さらに、本実施形態の触媒構造体10は、原料粉末を混合して焼成するという、一般的なセラミック成形体と同様の簡便な製造工程により製造可能である。そのため、製造時には担体上にさらに触媒金属を担持させる動作を伴う従来知られる触媒体に比べて、簡素な製造方法により製造することができる。
【0041】
特に、本実施形態のように、触媒構造体10の内部において、プロトン伝導と電子伝導とガスの流通の各々の経路を確保する場合には、反応に必要なプロトンと電子とが、触媒構造体10全体を移動する自由度が高まる。そのため、触媒構造体10の内部に存在する触媒金属を含めて、触媒金属全体において、異なる反応場間でのプロトンや電子の授受が容易になる。すなわち、触媒金属において、プロトンや電子が生じている反応の場と、消費される反応の場とが離間していても、速やかに反応場間でプロトンや電子の授受を行うことができる。その結果、触媒構造体10の内部を含む触媒構造体10全体の反応量を増大させることができる。このとき、反応場間でプロトンや電子の移動に伴うエネルギー消費を低減することができるため、比較的温和な条件(比較的低温の条件や比較的低圧の条件)で、反応を進行させることが可能になる。このように比較的低温の条件で触媒構造体10を使用することができるため、触媒金属のシンタリングを抑え、触媒寿命を向上させて、触媒構造体10の耐久性を高めることができる。
【0042】
上記のように、本実施形態の触媒構造体10では、プロトンおよび電子の授受を伴う反応の反応量を増大させると共に、より温和な条件でも高い活性を確保できるため、触媒金属として、貴金属ではなく卑金属を用いる場合であっても、十分な触媒活性を確保することが容易になる。そのため、本実施形態の触媒構造体10では、従来よりも多くの触媒金属を用いるにもかかわらず、このような触媒構造体を利用した技術の実用化が容易になる。
【0043】
なお、プロトン伝導の経路を確保するために用いるプロトン伝導体としては、プロトン伝導性セラミックス以外に、例えば、プロトン伝導性を有する固体高分子材料が知られている。本実施形態の触媒構造体10は、プロトン伝導性物質としてセラミックス材料を用いているため、高分子材料を用いる場合とは異なり、より高温で、触媒構造体10を用いることが可能になる。
【0044】
また、プロトン伝導性セラミックス12を構成するセラミックスは、プロトン伝導性に加えて、電子伝導性を有する混合伝導性セラミックスとすることも可能である。しかしながら、本実施形態の触媒構造体10では、電子伝導の経路を確保するために電子伝導性材料14を備えるため、プロトン伝導性セラミックス12が電子伝導性を備える必要はない。そのため、プロトン伝導性セラミックス12は、十分なプロトン伝導性を有していればよく、プロトン伝導性セラミックス12を構成するセラミックスの組成をプロトン伝導性の確保のために最適化することが容易になり、プロトン伝導性セラミックス12を構成するセラミックスの選択の自由度を高めることができる。
【0045】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態の触媒構造体100の概略構成を模式的に表す説明図である。第2実施形態の触媒構造体100は、多孔質部110と、多孔質部110上に担持される触媒金属170と、を備える。
【0046】
多孔質部110は、
図5では記載を省略しているが、
図1に示した第1実施形態の触媒構造体10と同様に、プロトン伝導性セラミックス12と、電子伝導性材料14と、が混合されており、プロトン伝導性セラミックス12と電子伝導性材料14との間には空孔16が形成されている。そして、多孔質部110では、第1実施形態の触媒構造体10と同様に、プロトン伝導性セラミックス12が占める割合(プロトン伝導材比)をR
Pとして、電子伝導性材料14が占める割合(電子伝導材比)をR
Eとして、空孔16が占める割合(空孔比)をR
Vとすると、プロトン伝導材比R
Pが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導材比R
Eが20体積%以上54体積%以下であり、空孔比R
Vが30体積%以上55体積%以下(ただし、R
P+R
E+R
V≦100体積%)となっている。ただし、多孔質部110が備える電子伝導性材料14は、第1実施形態の電子伝導性材料14と同様に触媒金属を含んでいてもよいが、第1実施形態とは異なり、触媒金属を含まない、すなわち、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する活性を有していなくてもよい。多孔質部110が備える電子伝導性材料14は、電子伝導性を有していればよく、例えば、水素化雰囲気下で金属の状態を保つことができる任意の金属または合金によって構成することができる。電子伝導性材料14を金属以外の材料により構成することも可能であるが、高い電子伝導性を確保しやすい観点から、金属により構成することが望ましい。このような多孔質部110は、例えば、第1実施形態の触媒構造体10と同様に、粉末、ペレット、所望の形状に成形された多孔質成形体など、種々の形状とすることができ、触媒構造体10と同様の方法により製造することができる。
【0047】
触媒金属170は、第1実施形態の電子伝導性材料14を構成する触媒金属と同様の触媒金属とすることができ、触媒構造体100を用いて進行すべき反応に応じて、適宜選択すればよい。
【0048】
多孔質部110上に触媒金属170を担持させる方法は、特に制限は無く、担体上に触媒金属を担持させるための公知の種々の方法を採用可能である。例えば、含浸法、すなわち、触媒金属塩を含む溶液中に多孔質部110を浸漬し、その後、焼成および還元処理を行うことにより、多孔質部110上に触媒金属170を分散担持させる方法を採用することができる。このとき、多孔質部110を、触媒金属塩を含む溶液中に浸漬する際の条件を、負圧条件とするならば、多孔質部110内に形成される空孔16内にも上記溶液が容易に侵入可能となり、多孔質部110の内部に形成される多孔質部110の表面にも触媒金属170を担持させることが容易となり、望ましい。上記した含浸法の他、多孔質部110上に触媒金属170を担持させる方法としては、例えば、アーク放電、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、めっき処理等、担体上に触媒金属を担持させるための種々の方法を用いることができる。
【0049】
このような構成とすれば、プロトン伝導材比RPが16体積%以上50体積%以下、電子伝導材比REが20体積%以上54体積%以下、空孔比RVが30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)となっているため、第1実施形態の触媒構造体10と同様に、触媒構造体100が備える触媒金属170全体において、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体10全体で反応量を増大させることができる。このとき、電子伝導性材料14が触媒金属を含まず、プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する活性を有していない場合であっても、上記のように空孔比RVを確保して触媒構造体100内における閉気孔(空孔16の他の箇所と連通していない独立した空孔)の形成を十分に抑えることにより、多孔質部である触媒構造体100の内部の表面において、触媒金属が担持できる領域を十分に確保して、触媒担持量を高めることができる。その結果、電子伝導性材料14が触媒金属を含む場合と同様に、プロトン伝導と電子伝導とガスの流通の各々の経路の連通状態を触媒構造体100全体で確保できることにより触媒活性を高める効果を得ることができる。
【実施例0050】
<触媒構造体の作製>
触媒構造体として、プロトン伝導性セラミックスと電子伝導性材料と空孔の体積比率が異なるサンプルS1~S10の10種類の触媒構造体を作製した。プロトン伝導性セラミックスとしては、ガドリニウムドープセリア(GDC)を用い、電子伝導性材料としては、メタン生成反応の触媒活性を有するニッケル(Ni)を用いた。作製した各サンプルにおける、プロトン伝導性セラミックス、電子伝導性材料、および空孔の体積比率は、サンプルS1ではGDC:Ni:空孔=33:33:34であり、サンプルS2ではGDC:Ni:空孔=43:21:36であり、サンプルS3ではGDC:Ni:空孔=20:42:38であり、サンプルS4ではGDC:Ni:空孔=25:25:50であり、サンプルS5ではGDC:Ni:空孔=45:32:23であり、サンプルS6ではGDC:Ni:空孔=50:16:34であり、サンプルS7ではGDC:Ni:空孔=47:19:34であり、サンプルS8ではGDC:Ni:空孔=31:15:54であり、サンプルS9ではGDC:Ni:空孔=22:22:56であり、サンプルS10ではGDC:Ni:空孔=15:30:55である。
【0051】
図6は、各サンプルにおける、プロトン伝導性セラミックス(GDC)が占める割合(プロトン伝導材比R
P)、電子伝導性材料(Ni)が占める割合(電子伝導材比R
E)、および、空孔が占める割合(空孔比R
V)の関係を、
図2と同様にして模式的に示す説明図である。また、
図7は、各サンプルの組成であるGDC、Ni、空孔の比率(体積%)と、各サンプルの原料組成(各サンプルを作製する際に混合した原料粉末および造孔材粉末の体積比率)と、をまとめて示す説明図である。これらのサンプルのうち、サンプルS5~S10は、「プロトン伝導材比R
Pが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導材比R
Eが20体積%以上54体積%以下であり、空孔比R
Vが30体積%以上55体積%以下」を満たしておらず、比較例のサンプルである。
【0052】
各サンプルは、
図3に示す製造方法に従って製造した。以下、具体的に説明する。
図3の工程T100では、セラミックス原料粉末としてガドリニウムドープセリア(GDC20、信越化学工業株式会社製、平均粒径0.7μm)を用い、電子伝導材原料粉末として酸化ニッケル(PI-b1、住友金属鉱山株式会社製、平均粒径0.5μm)を用い、造孔材粉末としてアクリル系樹脂(BMSA-18G、積水化成品工業株式会社製、平均粒径0.8μm)を用いた。工程T100では、まず、上記セラミックス原料粉末および電子伝導材原料粉末に、溶剤としてのエタノールと、分散剤としてのイオネットS-20(三洋化成工業株式会社製)と、バインダとしてのセルナSE604(中京油脂株式会社製)と、3mm径の玉石(ジルコニアボール)とを加え、ボールミルを用いて15時間、110rpmにて混合した。その後、ボールミルポットに上記造孔材粉末を投入し、さらに10分、110rpmで混合し、スラリを作製した。
【0053】
図7に示すように、工程T100で混合したセラミックス原料粉末と電子伝導材原料粉末と造孔材粉末との質量比は、サンプルS1ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=38.0:59.2:2.8であり、サンプルS2ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=52.2:40.6:7.2であり、サンプルS3ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=24.0:75.1:0.9であり、サンプルS4ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=34.2:53.4:12.4であり、サンプルS5ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=48.0:52.0:0であり、サンプルS6ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=61.5:30.7:7.8であり、サンプルS7ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=57.0:36.0:7.0であり、サンプルS8ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=46.7:35.8:17.5であり、サンプルS9ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=32.5:50.8:16.7であり、サンプルS10ではGDC:NiO:アクリル系微粒子=20.8:65.4:13.8とした。各サンプルにおいて、分散剤の添加量は、スラリ形成に用いた上記粉末100重量部に対して1.12重量部とした。バインダの添加量は、スラリ形成に用いた上記粉末100重量部に対して3重量部とした。エタノールは、スラリ形成に用いた上記粉末100重量部に対して77重量部を加えた。玉石は、スラリ形成に用いた上記粉末100重量部に対して1500重量部を加えた。
【0054】
各サンプルについて、上記のようにしてスラリを形成した後、溶剤を飛ばし、得られた粉末を一軸プレスによりプレス成形して圧粉体を作製した(工程T110)。プレス成形の際には、縦横のサイズが6mm×40mmの長方形のダイ穴を持つ金型を用い、30MPaの一軸プレス圧力を印加した。最終的な触媒構造体の厚みが2mm程度となるように、粉末量を調整した。その後、得られた圧粉体を加熱により脱脂して、造孔材粉末を揮発させて、多孔質体を作製した(工程T120)。脱脂は、大気中にて、0.5℃/minの昇温速度で280℃まで昇温させて、6.5時間加熱することにより行った。
【0055】
その後、T120で得た多孔質体を焼成し(工程T130)、焼結体を得た。焼成は、大気中にて、10℃/minの昇温速度で1290℃まで昇温させて、5時間加熱することにより行った。その後、得られた焼結体を600℃にて5時間、H2/N2雰囲気下、NiOのみ還元する酸素分圧下(pO2=10-26atm)で還元処理して(工程T140)、焼成体中の触媒金属を還元させた。これにより、0.30~0.35cm3程度の体積を有する直方体状の触媒構造体を得た。各サンプルにおけるプロトン伝導性セラミックス、電子伝導性材料、および空孔の体積比率は、既述したように、各サンプルの研磨断面について電子顕微鏡観察とEPMA分析とを行って各部の面積比を求めることにより導出した。
【0056】
<触媒性能評価>
以下の(11)式で表されるメタネーション反応、すなわち、既述した(2)式に示される二酸化炭素からメタンを生成する反応を進行させることにより、各サンプルの触媒性能を評価した。
【0057】
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O … (11)
【0058】
各サンプルの触媒性能の評価は、固定床流通式反応装置を用いて、石英ウールを詰めた石英管に各サンプルを配置して行った。メタン生成反応に先立って、上記固定床流通式反応装置内において、還元処理を行った。還元処理は、炉内温度:350℃、炉内圧力:1気圧、水素(H2)流量:20sccm、アルゴン(Ar)流量:40sccm、処理時間:30minの条件にて行った。その後、炉内温度:250℃、炉内圧力:1気圧、水素(H2)流量:40sccm、二酸化炭素(CO2)流量:10sccmの条件にて、メタン生成反応を進行させた。メタネーション反応開始後10分後のガスを1mLの検量管に捕集し、ガスクロマトグラフ「GC-4000 Plus」(ジーエルサイエンス株式会社製)を用いて、反応後のガスに含まれる二酸化炭素(CO2)、水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)の濃度を測定した。測定した濃度値から、メタン収率[%]を算出すると共に、二酸化炭素流量[mL/h]から二酸化炭素投入速度[mmol/h]を算出した。上記メタン収率と二酸化炭素投入速度とを乗算し、メタン生成速度[mmol/h]を求めた。このようにして求めたメタン生成速度[mmol/h]は、最終的に、触媒構造体の体積で規格化して単位を[mmol/h/m3]とした。
【0059】
図8は、サンプルS1~S10の各々を用いてメタン生成反応を進行させて、触媒構造体の体積当たりのメタン生成速度を測定した結果を示す説明図である。
図8に示すように、「プロトン伝導材比R
Pが16体積%以上50体積%以下であり、電子伝導材比R
Eが20体積%以上54体積%以下であり、空孔比R
Vが30体積%以上55体積%以下を」満たすサンプルS1~S4は、他のサンプルに比べて優れたメタン生成速度を示すことが確認された。中でも、「プロトン伝導性セラミックスが占める割合R
P、電子伝導性材料が占める割合R
E、および、空孔が占める割合R
Vが、各々、30体積%以上40体積%以下」を満たすサンプルS1は、他のサンプルに比べて、特に優れたメタン生成速度を示すことが確認された。すなわち、R
P、R
E、およびR
Vが上記数値範囲を満たす触媒構造体を用いることで、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体全体でメタン生成反応の反応量を増大させることができたと考えられる。そして、ニッケル触媒を用いてメタン生成反応を進行させる際の使用温度は一般的に300~350℃程度であるが、サンプルS1~S4の触媒構造体は、250℃の使用温度において、良好な触媒活性を示した。
図8では、縦軸に示すメタン生成速度に関して、サンプルS1~S4と他のサンプルとを分ける評価基準を、破線によって示している。なお、
図8に示すサンプルS6は、触媒金属の体積比率である電子伝導材比R
Eが、既述した特許文献4に記載された例における担体に担持された触媒金属の体積比率と同等のR
E=16体積%となっているサンプルである。
【0060】
図8に示す結果において、サンプルS1では、プロトン伝導性セラミックス、電子伝導性材料、および空孔の各々が、30体積%以上の体積比率であって、触媒構造体全体で十分に高いレベルで連通していると考えられる。そのため、プロトンおよび電子の授受が良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体全体で、メタン生成反応の反応量を増大させることができたと考えられる。
【0061】
サンプルS2では、電子伝導性材料の体積比率は、サンプルS1に比べて低いものの20体積%以上である。また、プロトン伝導性セラミックスおよび空孔は、30体積%以上の体積比率であって、触媒構造体全体で十分に高いレベルで連通していると考えられる。そのため、プロトンの授受が良好に行われると共に電子の授受が比較的良好に行われ、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体全体で、メタン生成反応の反応量を増大させることができたと考えられる。
【0062】
サンプルS3では、プロトン伝導性セラミックスの体積比率は、サンプルS1に比べて低いものの16体積%以上である。また、電子伝導性材料および空孔は、30体積%以上の体積比率であって、触媒構造体全体で十分に高いレベルで連通していると考えられる。そのため、電子の授受が良好に行われると共にプロトンの授受が比較的良好に行われ、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体全体で、メタン生成反応の反応量を増大させることができたと考えられる。
【0063】
サンプルS4では、プロトン伝導性セラミックスおよび電子伝導性材料の体積比率は、サンプルS1に比べて低いものの、それぞれ16体積%以上あるいは20体積%以上である。また、空孔は、30体積%以上の体積比率であって、触媒構造体全体で十分に高いレベルで連通していると考えられる。そのため、プロトンおよび電子の授受が比較的良好に行われると共に、反応に関与するガスの供給および排出が良好に行われて、触媒構造体全体で、メタン生成反応の反応量を増大させることができたと考えられる。
【0064】
サンプルS9は、プロトン伝導材比R
Pが16体積%以上であり、さらに、電子伝導材比R
Eが20体積%以上であるが、空孔比R
Vが55体積%を超えている。このようなサンプルS9では、
図3に示す工程T130における焼成の後にサンプルが割れる現象が起こり、
図8に示すようにメタン生成速度も不十分であった。このことは、サンプルS9の空孔比R
Vが55体積%を超えることにより、サンプル全体の強度が低下すると共に、電子伝導性材料(Ni)が脱落して触媒性能が低下したためであると考えられる。
【0065】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0066】
本開示は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
プロトンおよび電子の授受を伴う反応を促進する触媒構造体であって、
プロトン伝導性セラミックスと、電子伝導性材料と、を含む多孔質部を備え、
前記多孔質部において、前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RPが16体積%以上50体積%以下であり、前記電子伝導性材料が占める割合REが20体積%以上54体積%以下であり、空孔が占める割合RVが30体積%以上55体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)であることを特徴とする
触媒構造体。
[適用例2]
適用例1に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスが占める割合RP、前記電子伝導性材料が占める割合RE、および、空孔が占める割合RVが、各々、30体積%以上40体積%以下(ただし、RP+RE+RV≦100体積%)であることを特徴とする
触媒構造体。
[適用例3]
適用例1または2に記載の触媒構造体であって、
前記プロトンおよび電子の授受を伴う反応は、二酸化炭素の水素化反応、または、脱水素化反応により水素を生成する反応であることを特徴とする
触媒構造体。
[適用例4]
適用例1から3までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスは、金属酸化物と、金属リン酸塩のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする
触媒構造体。
[適用例5]
適用例1から4までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記プロトン伝導性セラミックスは、CeO2系酸化物を含むことを特徴とする
触媒構造体。
[適用例6]
適用例1から5までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、金属であることを特徴とする
触媒構造体。
[適用例7]
適用例1から6までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、前記金属としてニッケルを含むことを特徴とする
触媒構造体。
[適用例8]
適用例1から7までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記触媒構造体が備える触媒は、電場印加により活性化可能であることを特徴とする
触媒構造体。
[適用例9]
適用例1から8までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、
前記電子伝導性材料は、前記反応を促進する触媒金属を含むことを特徴とする
触媒構造体。
[適用例10]
適用例1から9までのいずれか一項に記載の触媒構造体であって、さらに、
前記多孔質部の表面に担持されて前記反応を促進する触媒金属を備えることを特徴とする
触媒構造体。