(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002106
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アクリル系粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20231228BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20231228BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20231228BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J133/02
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101101
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF001
4J040DF031
4J040DF061
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA06
4J040MA06
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】表面が水に濡れ、或いは、水中に施工されたコンクリート又はモルタル表面に対しても、十分な粘着力で接着することが可能な粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(B)とを有するアクリル系共重合体(X)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、前記アクリル系共重合体(X)における、構造単位(A)の質量基準の含有率をWA、構造単位(B)の質量基準の含有率をWBとすると、WA/(WA+WB)が百分率で15%以上85%以下である、アクリル系粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(B)とを有するアクリル系共重合体(X)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、
前記アクリル系共重合体(X)における、前記構造単位(A)の質量基準の含有率をWA、前記構造単位(B)の質量基準の含有率をWBとすると、WA/(WA+WB)が百分率で15%以上85%以下である、アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体(X)が、極性基含有モノマーに由来する構造単位(C)をさらに有する、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体(X)の含有量が70質量%以上である、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着付与樹脂を含有せず、又は粘着付与樹脂を含有し、かつその含有量が、前記アクリル系共重合体(X)100質量部に対して、15質量部以下である、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
架橋剤をさらに含有する、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
既設のコンクリート又はモルタル用である、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアクリル粘着剤組成物からなる、粘着剤層。
【請求項8】
厚みが15μm以上2000μm以下である、請求項7に記載の粘着剤層。
【請求項9】
請求項7に記載の粘着剤層を有する、粘着テープ。
【請求項10】
基材を有し、前記基材の少なくとも一方の面に前記粘着剤層を有する、請求項9に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既設のモルタル、コンクリートなどに対して使用される、アクリル系粘着剤組成物及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートに対する粘着テープとしては、コンクリート用養生シートが知られている。コンクリート用養生シートは、コンクリート打設後に、コンクリート表面を覆うように貼り付けることで、コンクリート内部の水分を適切量に維持して、内部の水和反応を進行させ、強度及び耐久性を向上させるものである。
【0003】
コンクリート養生シートとしては、コンクリートが湿潤した状態で、コンクリート表面に貼り付けられるので、湿潤接着が可能な湿潤粘着性感圧接着剤が用いられることがある。例えば特許文献1には、湿潤粘着性感圧接着剤として、所定の(メタ)アクリレートエステルモノマー及び親水性コモノマーを含む重合性成分、並びに非反応性イオン性界面活性剤を含む混合物の反応生成物を含有する感圧接着剤が開示されている。ここで、親水性コモノマーとしては、アクリルアミド化合物などの非酸性モノマー、(メタ)アクリル酸などの酸性モノマーが使用されることが示されている。
【0004】
特許文献2には、コンクリートの養生保護用を含む各種用途に使用される粘着剤が開示されている。特許文献2では、粘着剤が、アクリル重合体、ポリオール、キレート硬化剤、及びイソシアネート硬化剤を含む粘着剤組成物からなることが開示されており、アクリル重合体を構成するモノマーが、カルボキシ基又は活性メチレン基を有するモノマーを含み、また、任意でアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを含んでもよいことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2019/005932号
【特許文献2】特開2019-172776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、既存の建築物、道路、橋梁などの老朽化が進み、既設のコンクリートの打ち直しや、補強工事が頻繁に行われるようになっている。また、既設のコンクリートは、点検から打ち直しや補強工事まで時間を要するので、一時的な補修が行われることがある。一時的な補修は、補修パテなどをひび割れ部分に塗布することが一般的に行われるが、作業性の観点から、例えばコンクリートのひび割れ部分に粘着テープを直接貼り合わせたり、補強部材を粘着テープにより貼り付けたりすることが検討されている。
【0007】
一時的な補修は、迅速に行う必要があるため、降雨時でも行われることがあり、また、コンクリートは、場合によっては水中に施工されていることもある。したがって、コンクリートの一時的な補修に粘着テープを使用しようとすると、表面が水で濡れた状態のコンクリート表面や、水中のコンクリート表面に対しても、粘着テープを貼り合わせることが求められる。
【0008】
しかし、コンクリート養生テープに代表される従来の湿潤粘着性テープは、一般的に被着体の内部に水が含まれることが想定されて組成設計がなされており、表面に水が存在する被着体に対して接着させることが想定されていない。したがって、従来の湿潤粘着性テープを用いると、表面が水に濡れ、又は、水中に施工されるコンクリートやモルタル表面に対して十分な粘着力を確保することは難しいことがある。
【0009】
そこで、本発明は、表面が水に濡れ、或いは、水中に施工された既設のコンクリート又はモルタル表面に対しても、十分な粘着力で接着することが可能な粘着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粘着剤組成物に、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を有するアクリル系共重合体を含有させ、かつこれらの含有率を所定の範囲内に調整することで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
【0011】
[1]アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(B)とを有するアクリル系共重合体(X)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、
前記アクリル系共重合体(X)における、前記構造単位(A)の質量基準の含有率をWA、前記構造単位(B)の質量基準の含有率をWBとすると、WA/(WA+WB)が百分率で15%以上85%以下である、アクリル系粘着剤組成物。
[2]前記アクリル系共重合体(X)が、極性基含有モノマーに由来する構造単位(C)をさらに有する、上記[1]に記載のアクリル系粘着剤組成物。
[3]前記アクリル系共重合体(X)の含有量が70質量%以上である、上記[1]又は[2]に記載のアクリル系粘着剤組成物。
[4]粘着付与樹脂を含有せず、又は粘着付与樹脂を含有し、かつその含有量が、前記アクリル系共重合体(X)100質量部に対して、15質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。
[5]架橋剤をさらに含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。
[6]既設のコンクリート又はモルタル用である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル粘着剤組成物からなる、粘着剤層。
[8]厚みが15μm以上2000μm以下である、上記[7]に記載の粘着剤層。
[9]上記[7]又は[8]に記載の粘着剤層を有する、粘着テープ。
[10]基材を有し、前記基材の少なくとも一方の面に前記粘着剤層を有する、上記[9]に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0012】
表面が水に濡れ、或いは、水中に施工された既設のコンクリート、又はモルタル表面に対しても、十分な粘着力で接着することが可能な粘着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、実施形態を用いて詳細に説明する。
<アクリル系粘着剤組成物>
(アクリル系共重合体(X))
本発明のアクリル系粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(B)とを有するアクリル系共重合体(X)を含有する。アクリル系共重合体(X)は、構造単位(A)を有することで、親水性が向上して、水を吸着し、湿潤粘着性を付与することができる。そのため、水が存在する被着面に対しても粘着できるようになる。また、構造単位(B)を有することで、粘着剤組成物の粘着力を高くしやすくなる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルのいずれか」を意味する。他の類似の用語も同様である。
【0014】
本発明では、アクリル系共重合体(X)における、構造単位(A)の質量基準の含有率をWA、構造単位(B)の質量基準の含有率をWBとすると、WA/(WA+WB)は百分率で15%以上85%以下である。WA/(WA+WB)が15%未満となると、親水性が不十分となり、構造単位(A)により水を十分に吸着できず、湿潤粘着性を高くすることが難しくなる。また、85%より高くなると、アクリル系共重合体(X)によって粘着力を発揮させるのが難しくなる。すなわち、WA/(WA+WB)が上記範囲外となると、水が表面に存在する既設のコンクリートやモルタルに対して粘着剤組成物を高い粘着力で接着させることが難しくなる。既設のコンクリートやモルタルは、一般的に屋外で使用され、水に濡れることが多く、また、場合によっては水中で使用されるので、WA/(WA+WB)が上記範囲外となると、既設のコンクリートやモルタル用の粘着剤組成物として実用的に使用することが難しくなる。
【0015】
WA/(WA+WB)は、構造単位(A)によって水を吸着しやすくして湿潤粘着性を高める観点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、WA/(WA+WB)は、湿潤粘着性を高めつつ、乾燥状態の被着体に対する粘着力も高める観点から、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。
【0016】
アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などの炭素数1~4程度のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、上記した中では、粘着剤組成物に高い湿潤粘着性を付与する観点から、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0017】
アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アルコキシアルキル基の炭素数が例えば3~8程度、好ましくは3~5のものが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシブチルなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシトリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールなどが挙げられる。
これらの中では、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、中でも(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルがより好ましく、さらに(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが特に好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~18程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アルキル基は、直鎖であってもよいし、分岐鎖を有していてもよい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中では、アルキル基の炭素数が1~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、中でも炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(B1)は、構造単位(B)の大部分を占めるとよく、具体的には、構造単位(B1)は、構造単位(B)のうち、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルは、中でも炭素数4~6のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、特に炭素数4のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0019】
上記アクリル系共重合体(X)は、構造単位(A)と構造単位(B)が主ユニットとなるものであり、具体的には、構造単位(A)と構造単位(B)の合計量は、アクリル系共重合体(X)全量基準で、例えば50質量%以上であるが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、構造単位(A)と構造単位(B)の合計量は、アクリル系共重合体(X)全量基準で、100質量%以下であればよいが、後述する構造単位(C)などの他のユニットをアクリル系共重合体(X)に導入できるようにするために、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましく、97質量%以下がよりさらに好ましい。
【0020】
上記アクリル系共重合体(X)は、構造単位(A)及び構造単位(B)からなるものでもよいが、構造単位(A)及び(B)に加えて、極性基含有モノマーに由来する構造単位(C)を有することが好ましい。すなわち、アクリル系共重合体(X)は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体でもよいが、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、極性基含有モノマーの共重合体であってもよい。アクリル系共重合体(X)は、構造単位(C)を有することで、粘着性を高めたり、後述する架橋剤などにより架橋しやすくしたりすることができる。
【0021】
極性基含有モノマーにおける極性基としては、活性水素を有し、好ましくは後述する架橋剤と反応可能な官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
極性基含有モノマーのうちカルボキシ基を含有するモノマー(以下、「カルボキシ基含有モノマー」ともいう)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、極性基含有モノマーのうち水酸基を含有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー」ともいう)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
極性基含有モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
極性基含有モノマー由来の構造単位(C)の含有量は、アクリル系共重合体(X)全量基準で、例えば0質量%以上25質量%以下であるが、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。極性基含有モノマー由来の構造単位(C)を一定量以上有すると、アクリル系共重合体(X)を適切に架橋でき、また、湿潤粘着性を高めやすくなる。一方で、上記上限値以下とすることで粘着力が必要以上に高くなることを防止して、粘着テープの剥離性を良好にしやすくなる。なお、0質量%は、アクリル系共重合体(X)が構造単位(C)を含有しないことを意味し、以下も同様の意味である。
【0023】
極性基含有モノマーにおける極性基は、上記した中では、カルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基を含有することがより好ましい。したがって、極性基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマーを使用することが好ましく、カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーの両方を使用することがより好ましい。
極性基含有モノマーとして、カルボキシ基含有モノマーを使用することで、粘着性を高め、湿潤粘着性も高めやすくなる。また、水酸基は、後述する架橋剤との反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能であるので、カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーの両方を使用することで、湿潤粘着性を高めつつ、機械強度、剥離性なども良好にしやすくなる。
【0024】
また、カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーを使用する場合、水酸基含有モノマーをカルボキシ基含有モノマーに対して相対的に少量含有させることが好ましい。このような構成により、カルボキシ基により粘着性を高めつつ、水酸基により架橋効率を向上させることができる。具体的は、アクリル系共重合体(X)における、水酸基含有モノマー由来の構造単位の含有量は、0.005質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.4質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下がさらに好ましい。また、カルボキシ基含有モノマー由来の構造単位の含有量は、水酸基含有モノマー由来の構造単位の含有量より多くするとよく、具体的には好ましくは0.5質量%以上14質量%以下、より好ましくは0.9質量%以上11.5質量%以下、さらに好ましくは1.8質量%以上9質量%以下である。
【0025】
また、アクリル系重合体は、上記構造単位(A),(B)、(C)以外の構造単位(D)を有してよい。構造単位(D)は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び極性基含有モノマー以外のモノマー(以下、「その他のモノマー」ともいう)由来の構造単位である。
すなわち、アクリル系重合体は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマーとの共重合体であってもよいし、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、極性基含有モノマーと、その他のモノマーの共重合体であってもよい。
【0026】
その他のモノマーとしては、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず、例えば、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシプロピルアクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレートで代表されるフェニル基を有する(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル基を有する化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
また、その他のモノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び液状水素化1,2-ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーであってもよい。多官能モノマーを使用することで、後述する架橋剤を使用することなく、アクリル系共重合体(X)を架橋させることができる。多官能モノマーは、光重合によりアクリル系共重合体(X)を得る場合に使用することが好ましい。
その他のモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アクリル系共重合体(X)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、10万以上200万以下が好ましく、15万以上150万以下がより好ましく、20万以上100万以下がさらに好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることで、粘着剤組成物の粘着性能、機械強度などを高めやすくなる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
アクリル系共重合体(X)は、溶液重合法、光重合などの公知の方法で重合することができる。
【0029】
粘着剤組成物において、アクリル系共重合体(X)の含有量は、粘着剤組成物全量基準で、好ましくは70質量%以上である。アクリル系共重合体(X)の含有量が70質量%以上であると、粘着剤組成物における構造単位(A)及び構造単位(B)の存在割合が多くなり、湿潤粘着性が向上して、水が存在する被着面に対しても粘着しやすくなる。アクリル系共重合体(X)の上記含有量は、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がよりさらに好ましい。アクリル系共重合体(X)の上記含有量は、100質量%以下であればよいが、架橋剤などのアクリル系共重合体(X)以外の成分を含有できるようにするために、99.9質量%以下が好ましく、99.7質量%以下がより好ましく、99.5質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
(架橋剤)
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤組成物が架橋剤を含有することで、粘着剤層においてアクリル系共重合体(X)を架橋させることできる。そのため、粘着剤層を被着体から剥離した際の糊残りを少なくでき、剥離性を良好にでき、また粘着剤層の機械強度も向上させやすくなる。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びアジリジン系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0031】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N′-ジフェニルメタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート、イソフタロイルビス(2-メチルアジリジン)等が挙げられる。
【0032】
粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、アクリル系共重合体(X)100質量部に対して、例えば0.05質量部以上15質量部以下、好ましくは0.1質量部以上8質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上2質量部以下である。架橋剤の含有量を上記範囲内とすることで、粘着剤組成物に適度な湿潤粘着性を付与しつつ、粘着剤層を被着体から剥がす際の剥離性、機械強度を良好にしやすくなる。
【0033】
(粘着付与樹脂)
粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有してもよいが、含有しなくてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン系樹脂、ケトン系樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。なお、テルペンフェノール系樹脂はテルペン構造とフェノール構造とを有する樹脂である。粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
粘着剤組成物における粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系共重合体(X)100質量部に対して、例えば15質量部以下であり、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有せず、または含有しても少量であることで、湿潤粘着性を向上し、表面が水で濡れたコンクリートなどに対しても接着しやすくなる。粘着剤組成物が粘着付与樹脂を含有する場合、粘着付与樹脂の含有量は、粘着付与樹脂を含有させた効果を発揮しやすくなる観点から、アクリル系共重合体(X)100質量部に対して、1質量以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。
【0035】
粘着剤組成物は、上記以外にも充填剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、粘度調節剤、顔料、染料、光重合開始剤等の粘着剤に一般的に配合される添加剤(その他の添加剤)が適宜配合されてもよい。
【0036】
粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(X)、必要に応じて適宜配合される架橋剤、粘着付与樹脂、その他の添加剤を公知の方法により混合して得ることができる。また、粘着剤組成物は、適宜溶媒に希釈されて使用されてもよい。なお、溶媒により希釈される場合の粘着剤組成物全量とは、固形分基準を意味し、溶媒を除いた量である。
また、アクリル系共重合体(X)を光重合して得る場合には、アクリル系共重合体(X)を構成するモノマーに、必要に応じて適宜配合される架橋剤、粘着付与樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤を混合して得た粘着剤前駆体を光重合することで粘着剤組成物を製造してもよい。
【0037】
<粘着剤層>
本発明の粘着剤組成物は、一般的に層状(粘着剤層)にして使用されるものである。本発明の粘着剤組成物は、例えば被着体に塗布することで、被着体上に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤組成物は、後述する粘着テープのように予め粘着剤層に形成しておき、粘着剤層を被着体に貼り合わせて使用してもよい。
粘着剤層は、上記した粘着剤組成物からなるものである。粘着剤層において、粘着剤組成物は、架橋剤などによって適宜架橋されてもよい。
粘着剤層の厚みは、例えば15μm以上2000μm以下である。粘着剤層は、厚みが上記範囲内とすることで、必要以上に厚くすることなく、適切な湿潤粘着性を有することができる。粘着剤層の厚みは、50μm以上1500μm以下が好ましく、70μm以上1000μm以下がより好ましい。
【0038】
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、上記した粘着剤層を有するものである。粘着テープは、基材を有さない基材レス粘着テープであってもよいが、基材を有する粘着テープであることが好ましい。
基材を有する粘着テープは、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有するとよい。粘着テープは、基材の片面に粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよいし、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよいが、片面粘着テープが好ましい。
粘着テープの基材は、特に限定されず、従来、粘着テープの基材として使用される各種基材が使用できる。粘着テープの基材は、耐久性、強度などを良好とする観点から、樹脂フィルムが好ましい。具体的な樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルムなどのポリオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムなどが挙げられる。また、樹脂フィルムは、これらを複数積層した多層フィルムであってもよいし、上記した樹脂を2種以上混合したフィルムであってもよい。
基材フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば5μm以上1000μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上250μm以下である。
【0039】
粘着テープにおいて、粘着剤層は、接着面に剥離シートが貼り合わされてもよい。接着面に剥離シートが貼り合わされると、粘着剤層が剥離シートにより保護される。剥離シートは、通常、使用直前に粘着剤層から剥離されて除去されるとよい。剥離シートは、公知のものを使用でき、例えば樹脂フィルム、紙基材などの剥離シート基材の少なくとも一方の面が剥離剤により剥離処理されたものなどが使用できる。
剥離シートは、基材を有する粘着テープにおいて、粘着剤層の基材が設けられる面とは反対側の面に貼り合わされるとよい。また、基材レス両面粘着テープにおいては、いずれの接着面にも剥離シートが貼り合わされるとよい。
さらに、粘着テープは、ロール状に巻き取られたものであってもよい。この場合、例えば、基材を有する片面粘着テープでは、基材の粘着剤層が設けられる面とは反対側の面が剥離処理されて剥離層が設けられてもよい。
【0040】
(粘着テープの製造方法)
粘着テープの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法で粘着テープを得ることができる。まず、上記の通りに調製した粘着剤組成物又はその溶剤による希釈物を、剥離シートに塗布し、必要に応じて適宜加熱乾燥することにより粘着剤層を形成する。そして、剥離シート上に形成された粘着剤層を基材に貼り合わせることで、基材を有する粘着テープを得ることができる。また、粘着テープは、上記粘着剤組成物又はその希釈物を基材に直接塗布し、必要に応じて適宜加熱乾燥することにより、基材を有する粘着テープを得ることができる。
基材レス粘着テープを製造する場合には、上記の通りに剥離シート上に形成された粘着剤層をそのまま基材レス粘着テープとしてもよいし、剥離シート上に形成された粘着剤層の表面にさらに剥離シートを貼り合わせて、両面が剥離シートにより保護された基材レス両面粘着テープとしてもよい。
また、アクリル系共重合体(X)を光重合により合成する場合、基材、又は剥離シートに塗布した粘着剤前駆体を基材又は剥離シート上において光を照射し重合することにより粘着剤層(粘着剤組成物)を形成して、粘着テープを得てもよい。
【0041】
<使用方法>
本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着テープは、例えば、コンクリート又はモルタルに対して使用されるとよく、特に、既設のコンクリート又はモルタルに好適に使用できる。なお、一般的に硬化前の生コンクリート又は生モルタルは、打設され硬化させることで、コンクリート構造物又はモルタル構造物となるが、既設のコンクリート又はモルタルとは、硬化後のコンクリート構造物又はモルタル構造物を意味する。
【0042】
既設のコンクリート又はモルタルは、木造(例えば、基礎部分や壁面)、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄筋鉄骨コンクリート造、工場設備、発電設備などの各種の建築物、道路、橋梁、トンネル、護岸ブロック、堤防、側溝、水路、電柱、プールなどの各種の土木構造物などを構成するとよいが、特に限定されない。既設のコンクリート又はモルタルは、典型的には屋外において雨水、雪、海水、湖水、川の水、工業用水、農協用水などに晒され、表面が水で濡れ得る環境下に設置されることが多く、場合によっては水中に設置されることもある。
【0043】
本発明の粘着剤組成物は、既設のコンクリート又はモルタルに塗布され、又は粘着テープや粘着剤層として既設のコンクリート又はモルタルに貼付されて使用される。本発明の粘着剤組成物は、上記の通り水で濡れたり水中に設置されたりして、水が表面に存在するコンクリート又はモルタル表面に対して使用されても、特定の組成を有することで、良好な粘着力でコンクリート又はモルタル表面に接着することができる。
また、コンクリート又はモルタルは、多孔質体であり、水に接触する環境下で使用することで、内部に水が浸透し、含水率が高くなることがあるが、本発明の粘着剤組成物は、含水率が高くかつ上記のとおり表面に水が存在するようなコンクリート又はモルタル表面に対しても、高い粘着力で接着できる。
【0044】
本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着テープは、例えば、既設のコンクリート又はモルタルの補修用途に使用されるとよい。既設のコンクリート又はモルタルは、設置後に年月が経過すると、劣化が進行し、ひび割れなどが生じることがあるが、本発明の粘着テープは、例えばひび割れが生じた部分を覆うように、コンクリート構造物又はモルタル構造物に貼付されるとよい。コンクリート構造物又はモルタル構造物は、粘着テープが貼付されることで、ひび割れなどから浸水などが生じることを防止し、建築又は土木構造物が劣化することを防止する。また、本発明の粘着テープは、水が表面に存在するような場合でも、高い粘着力で、コンクリート又はモルタルに接着できるので、時間経過とともに剥がれが生じたりすることを防止でき、一定の期間、既設のコンクリート又はモルタルを適切に保護することができる。
【0045】
本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着テープが補修用途に使用される場合、粘着テープ自体によって補修する態様に限定されず、樹脂材料、金属材料、セラミック材料などからなる補修部材を、既設のコンクリートやモルタルに貼り合わるために使用されてもよい。
勿論、本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着テープは、補修用途に限定されず、例えば破損箇所などの特定部位を示すためのマーキング部材として既設のコンクリートやモルタルに貼付されてもよい。さらに、補修部材以外の部材を既設のコンクリートやモルタルに貼付するために使用してもよい。
なお、以上の説明では、粘着テープを使用する例を中心に説明したが、粘着テープ以外の態様によって使用されてもよい。例えば、粘着テープを貼付する代わりに、既設のコンクリートやモルタルに粘着剤組成物を塗布して、補修用途、又はそれ以外の用途に使用してもよい。また、粘着剤層が積層された補修部材又はその他の被着体を、粘着剤層を介して既設のコンクリート又はモルタルに接着させてもよい。
【実施例0046】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
[評価方法]
(被着体準備)
バットの中に砥石(「レジンダイヤモンド砥石」、藤原産業株式会社製、仕上がり#3000)を入れて、砥石の上に100mm×50mm、厚み10mmのモルタル板(ユタカパネルサービス製、#150研磨)を載せた。バットには、砥石とモルタル板の接触面が濡れるように水を入れた。手で約700gの荷重を掛けながらモルタル板を砥石で研磨した。表面の凹凸が最大高さSzで25μm以下となるように研磨を5分間継続した。最大高さSzは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、形状解析レーザー顕微鏡「VK-X1050」)で測定して確認した。その後、目視で砥石による着色(緑色)がなくなるまでモルタル板を水道水で洗い流して、被着体とした。
【0048】
(水中接着による粘着力測定)
上記の通りに準備した被着体(モルタル板)を、水を貯めたバットに入れて、水中(水温25℃)に一定時間(3分又は24時間)浸漬(「事前浸漬」ともいう)させた。一定時間の事前浸漬後、水に浸漬したままの状態で、モルタル板の研磨面に粘着テープ(テープ幅10mm、テープ長さ200mm)を、2kgローラーで10mm/sの速度で2往復することで貼り合わせた。
粘着テープを貼り合わせたモルタル板は、さらに180分間水中(水温25℃)に浸漬させることで養生した。養生後、バットから取り出して、20秒以内にテンシロン(RandD社製、「RTF-1310」)に取り付けて粘着力を測定した。粘着力の測定は、25℃、湿度50%RHの環境下、粘着テープを剥離角度180°、剥離速度300mm/分によりモルタル板から剥離し、剥離する際の剥離強度を測定することで行った。各実施例、比較例において、事前浸漬3分、24時間の両方で行った。
粘着力が2N/10mm以上であれば「OK」、2N/10mm未満であれば「NG」と評価した。なお、総合評価は、事前浸漬3分及び24時間の両方がOKであれば「A」、いずれか一方がOKで他方がNGであれば「B」、両方がNGであれば「C」と評価することで行った。
【0049】
[実施例1]
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル150質量部を加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、アクリル酸2-メトキシエチル(MEA)72.4質量部、n-ブチルアクリレート(BA)22.5質量部、アクリル酸(AAC)5質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.1質量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応することによりアクリル系共重合体を得た。
アクリル系共重合体100質量部に対して、架橋剤(東ソー株式会社、製品名「コロネートL」、イソシアネート系架橋剤)0.67質量部を加えて粘着剤組成物を得た。基材(厚み50μmのPETフィルム)の一方の面上に粘着剤組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように塗工した。塗工後、110℃で5分間乾燥後、40℃で2日間養生して粘着テープを得た。
【0050】
[実施例2、3、比較例1、2]
アクリル系共重合体(X)の合成において、原料モノマーの配合量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0051】
【表1】
※表1において、アクリル系共重合体(X)における質量部は、原料モノマー合計量100質量部に対する各モノマーの質量部であるが、アクリル系共重合体(X)100質量に対する、各モノマー由来の構造単位(A)の質量部とみなすことができる。
※表1における架橋剤の質量部は、アクリル系共重合体(X)100質量部に対する質量部である。
【0052】
以上の通り、各実施例におけるアクリル系共重合体(X)は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(B)とを有し、構造単位(A),(B)の合計量に対する、構造単位(A)の含有量の割合が、15%以上85%以下であった。そのため、各実施例の粘着剤組成物は、湿潤粘着性に優れており、水中で接着させても、高い粘着力でモルタル板に接着させることができた。
それに対して、比較例1、2では、構造単位(A)、(B)のいずれかを含有していなかったため、湿潤粘着性が不十分であり、水中で接着させると、高い粘着力でモルタル板に接着させることができなかった。