(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021062
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】改善されたピストン清浄性のための清浄剤系
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240207BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20240207BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20240207BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20240207BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20240207BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20240207BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20240207BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20240207BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20240207BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M135/10
C10M129/10
C10M159/22
C10M159/24
C10M129/54
C10N10:02
C10N10:04
C10N30:04
C10N40:25
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122249
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】17/879,378
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランサム、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】フィールド、サム
(72)【発明者】
【氏名】カルペンティエル、ギヨーム
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG06C
4H104BH03A
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104FA01
4H104FA02
4H104LA02
4H104PA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CEC L-078-99(VW TDi2)に従う所望のピストン清浄性を達成することができない、CEC L-117-20(VW TDi3)に従うピストン清浄性を達成する潤滑組成物を提供する。
【解決手段】潤滑粘度の1つ以上の基油と、ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する清浄剤系と、を含み、前記潤滑組成物が、CEC L-117-20(VW TDi3)ピストン清浄性試験において定められる潤滑剤性能を満たすか又はそれを超える、潤滑組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑組成物であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する清浄剤系と、を含み、
前記潤滑組成物が、CEC L-117-20(VW TDi3)ピストン清浄性試験において定められる潤滑剤性能を満たすか又はそれを超える、潤滑組成物。
【請求項2】
前記清浄剤系が、約20パーセント以下のフェネート石鹸、約15パーセント以下のフェネート石鹸、約10パーセント以下のフェネート石鹸、又は約5パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記潤滑組成物が、CEC L-078-99(VW TDi2)において定められるピストン清浄性に不合格であり、かつ/又は前記潤滑組成物が、約51以上である、RL276-5のCEC L-117-20試験における平均ピストン清浄性値を示す、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記清浄剤系が、約3~約15mg KOH/gのTBNを有し、かつ/又は前記清浄剤系が、前記清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせのみを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記清浄剤系が、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を実質的に含まないか、又は前記清浄剤系が、約10パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有し、好ましくは、前記清浄剤系が、約5パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、又はこれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記清浄剤系が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、個々に又は組み合わせて、約5000ppmまでの量で提供する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記清浄剤系が、約75:25以上、約80:20以上、約85:15以上、約90:10以上、又は約95:5以上のスルホネート石鹸対フェネート石鹸の比を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記清浄剤系が、前記清浄剤系のTBNを提供する量の中性~低塩基性スルホネート清浄剤と過塩基性スルホネート清浄剤とのブレンドであり、好ましくは、前記清浄剤系が、中性~低塩基性スルホネート清浄剤からの約0~約7重量パーセントのスルホネート清浄剤と、過塩基性スルホネート清浄剤からの約0.1~約3.0重量パーセントのスルホネート清浄剤と、を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
CEC L-117-20ピストン清浄性試験に合格する方法であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mgKOH/gの全塩基価(TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する清浄剤系と、を含む潤滑組成物を提供することと、
CEC L-117-20(VW TDi3)に従ってピストン清浄性を測定することと、を含み、前記潤滑組成物が、約51以上である、RL276-5の前記CEC L-117-20試験における平均ピストン清浄性を有する、方法。
【請求項10】
前記清浄剤系が、約20パーセント以下のフェネート石鹸、約15パーセント以下のフェネート石鹸、約10パーセント以下のフェネート石鹸、又は約5パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記潤滑組成物が、CEC L-078-99(VW TDi2)に従うピストン清浄性に不合格である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記清浄剤系が、約3~約15mg KOH/gのTBNを有し、かつ/又は前記清浄剤系が、前記清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせのみを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記清浄剤系が、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を実質的に含まないか、又は前記清浄剤系が、約10パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有するか、又は好ましくは、前記清浄剤系が、約5パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記清浄剤系が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、若しくはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、個々に若しくは組み合わせて、約5000ppmまでの量で提供し、かつ/又は前記清浄剤系が、約75:25以上、約80:20以上、約85:15以上、約90:10以上、若しくは約95:5以上のスルホネート石鹸対フェネート石鹸の重量比を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記清浄剤系が、前記清浄剤系のTBNを提供する量の中性~低塩基性スルホネート清浄剤と過塩基性スルホネート清浄剤とのブレンドであり、かつ/又は、前記清浄剤系が、中性~低塩基性スルホネート清浄剤からの約0~約7重量パーセントのスルホネート清浄剤と、過塩基性スルホネート清浄剤からの約0.1~約3重量パーセントのスルホネート清浄剤と、を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑組成物に関し、特に、選択された清浄剤系で改善されたピストン清浄性を呈する潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーは、効率、流体寿命、及び燃費の向上を求め続けており、そのため、エンジン、潤滑剤、及びそれらの構成成分に対する需要は増加し続けている。今日のエンジンは、多くの場合、燃費、性能、及び出力を向上させるように設計された技術によって、より小型化、より軽量化、及びより効率化されている。これらの要件はまた、エンジンオイルの性能が、そのような現代のエンジンのより高い要求と、それらのユニークな使用及び用途に関連付けられたそれらの対応する性能基準と、を満たすように進化しなければならないことも意味している。エンジン油に対するそのような厳しい要求により、潤滑剤製造業者は、多くの場合、潤滑剤及びそれらの添加剤を、産業及び/又は製造業者用途のため一定の性能要件を満たすように調整する。典型的には、業界基準及び/又は自動車メーカーは、ある使用又は用途のために設計された潤滑剤が、異なる使用又は用途の全ての性能仕様を満たさなくてもよい、一定の性能基準を要求する。
【0003】
例えば、エンジン油配合物における清浄剤の選択は、多くの場合、ピストン清浄性、酸中和、TBN保持、酸化、低速過早点火(low speed pre-ignition)、摩耗、摩擦性能、燃料経済性、供給、及び/又はコスト要因を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に基づいていたが、これらの要因は、いくつかの関連する考慮事項を示唆している。しかしながら、ディーゼルエンジンにおけるピストン清浄性は、典型的には、スルホネート以外の清浄剤源の使用を必要とすることが以前に受け入れられていた。したがって、ディーゼルピストン清浄性は、概して、フェネート清浄剤とスルホネート清浄剤との組み合わせを必要とした。したがって、ピストン清浄性を達成するために必要とされるこの組み合わせは、配合物中の補助成分の選択を制限することによって配合物の欠点をもたらす傾向があり、かつ/又は全体性能に影響を及ぼし得る配合物のトレードオフを引き起こす傾向があった。
【0004】
より具体的には、ディーゼルピストン清浄性を実証するための最も厳しい産業試験は、VW TDi2試験として一般に知られているCEC L-078-99であった。VW TDi2に従って評価された潤滑剤は、この性能基準に合格する好ましい潤滑剤が、フェネート清浄剤、又は他の清浄剤とフェネート添加剤との組み合わせを含むように、フェネート系清浄剤を含む配合物に対して明確な応答を呈した。最近、VW TDi2性能試験は、CEC L-117-20又はいわゆるVW TDi3試験に置き換えられた。この更新された評価は、より新しいエンジンに基づいており、以前の評価よりも更に厳しい条件で動作する。したがって、エンジン潤滑剤は、現在、新しいTDi3試験のより厳しい動作条件にさらされたときに、合格性能を実証しなければならない。しかしながら、多くの状況において、より新しい性能特性を満足するように潤滑剤組成物内の成分を変動させることは、1つ以上の他の性能特性に悪影響を及ぼす傾向があるしたがって、潤滑剤製造業者が、より新しい産業性能要求を満たす一方で、同時に従来の流体性能も維持することは困難になる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、CEC L-117-20(VW TDi3)試験において合格ピストン清浄性を達成する潤滑組成物に関する。1つのアプローチ又は実施形態では、潤滑組成物は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mg KOH/gの全塩基価(total base number、TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有する清浄剤系と、を含み、潤滑組成物は、CEC L-117-20(VW TDi3)ピストン清浄性試験において定められる潤滑剤性能を満たすか又はそれを超える。
【0006】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落に記載される潤滑組成物は、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択の特性を含み得る。これらの任意選択の特性は、以下の1つ又は複数を含むことができる。清浄剤系は、約20パーセント以下のフェネート石鹸、約15パーセント以下のフェネート石鹸、約10パーセント以下のフェネート石鹸、又は約5パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有し、かつ/又は潤滑組成物は、CEC L-078-99(VW TDi2)において定められるピストン清浄性に不合格であり、かつ/又は清浄剤系は、約3~約15mg KOH/gのTBNを有し、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、又はスルホン酸カルシウムのうちの1つ以上から本質的になり、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせのみを含み、浄剤系は、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を実質的に含まず、かつ/又は清浄剤系は、約10パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有し、かつ/又は清浄剤系は、約5パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有し、かつ/又は清浄剤系は、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を含まず、かつ/又は清浄剤系は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、若しくはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、個々に若しくは組み合わせて、約5000ppmまでの量で提供し、かつ/又は潤滑組成物は、約51以上である、RL276-5のCEC L-117-20試験における平均ピストン清浄性値を示し、かつ/又は清浄剤系は、約75:25以上、約80:20以上、約85:15以上、約90:10以上、若しくは約95:5以上のスルホネート石鹸対フェネート石鹸の重量比を有し(この比の文脈においてより大きいとは、より多くのスルホネート石鹸を意味する)、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量の中性~低塩基性スルホネート清浄剤と過塩基性スルホネート清浄剤とのブレンドであり、かつ/又は、清浄剤系は、中性~低塩基性スルホネート清浄剤からの約0~約7重量パーセントのスルホネート清浄剤と、過塩基性スルホネート清浄剤からの約0.1~約3.0重量パーセントのスルホネート清浄剤と、を含む。
【0007】
他のアプローチ又は実施形態では、CEC L-117-20ピストン清浄性試験に合格する方法が本明細書に記載されるか、又はCEC L-117-20ピストン清浄性試験に合格するための上述の清浄剤系の任意の実施形態の使用が記載される。実施形態では、本使用又は方法は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を提供する清浄剤系と、を含む潤滑組成物を提供することと、CEC L-117-20(VW TDi3)に従ってピストン清浄性を測定することと、を含み、潤滑組成物は、約51以上である、RL276-5のCEC L-117-20試験における平均ピストン清浄性を有する。
【0008】
更に他の実施形態又はアプローチでは、前の段落に記載された使用又は方法は、他の任意選択の特性又は方法ステップを任意の組み合わせで更に含んでもよい。これらの任意選択の特性又は方法ステップは、以下のうちの1つ以上を含むことができる。清浄剤系は、約20パーセント以下のフェネート石鹸、約15パーセント以下のフェネート石鹸、約10パーセント以下のフェネート石鹸、又は約5パーセント以下のフェネート石鹸の石鹸含有量を有し、潤滑組成物は、CEC L-078-99(VW TDi2)に従うピストン清浄性に不合格であり、かつ/又は清浄剤系は、約3~約15mg KOH/gのTBNを有し、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、又はスルホン酸カルシウムのうちの1つ以上から本質的になり、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量で、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせのみを含み、浄剤系は、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を実質的に含まず、かつ/又は清浄剤系は、約10パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有し、かつ/又は清浄剤系は、約5パーセント以下のフェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを有し、かつ/又は清浄剤系は、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、若しくはこれらの組み合わせを提供する清浄剤を含まず、かつ/又は清浄剤系は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、若しくはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、個々に若しくは組み合わせて、約5000ppmまでの量で提供し、かつ/又は清浄剤系は、約75:25以上、約80:20以上、約85:15以上、約90:10以上、若しくは約95:5以上のスルホネート石鹸対フェネート石鹸の重量比を有し(この比の文脈においてより大きいとは、より多くのスルホネート石鹸を意味する)、かつ/又は清浄剤系は、清浄剤系のTBNを提供する量の中性~低塩基性スルホネート清浄剤と過塩基性スルホネート清浄剤とのブレンドであり、かつ/又は、清浄剤系は、中性~低塩基性スルホネート清浄剤からの約0~約7重量パーセントのスルホネート清浄剤と、過塩基性スルホネート清浄剤からの約0.1~約3重量パーセントのスルホネート清浄剤と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、CEC L-117-20又はいわゆるVW TDi3試験に従う合格ピストン清浄性を達成するのに有効な潤滑組成物及びディーゼル内燃機関を潤滑する方法に関する。アプローチ又は実施形態では、潤滑組成物は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、ASTM D2896によって測定される少なくとも約3mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有し、約75パーセント以上のスルホネート石鹸及び約25パーセント未満のフェネート石鹸の石鹸含有量を提供し、好ましくは、フェネート石鹸を実質的に提供しないか又は提供しない少なくとも1つの清浄剤系と、を含む。驚くべきことに、フェネート石鹸(以前の産業試験においてディーゼルピストン清浄性を達成するために以前に必要とされた)をほとんど又は全く含まない組成物を用いても、本明細書中の潤滑組成物は、CEC L-117-20(VW TDi3)ピストン清浄性試験において定められる潤滑剤性能を満たすか又は超える。
【0010】
更に他のアプローチ又は実施形態では、本明細書の清浄剤系は、約3~約15mg KOH/g、約5~約15mg KOH/g、又は約8~約15mg KOH/gのTBNを有し、清浄剤系のTBNを提供する量のスルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、又はスルホン酸カルシウムのうちの1つ以上から本質的になるか、あるいはそれらからなる。換言すれば、本発明の清浄剤系は、主としてスルホネート清浄剤であり、最も好ましくは、以前はディーゼルピストン清浄性試験に合格するのに必要であったフェネート又は他の清浄剤タイプをほとんど又は全く含まない(最も好ましくはフェネート又は他の清浄剤添加剤を含まない)スルホネートのみの清浄剤である。フェネート石鹸を含まなくても、本発明の潤滑剤は、驚くべきことに、より厳しいTDi3ピストン清浄性試験に合格する。本明細書の清浄剤系は、フェネート石鹸を実質的に含まず、これは、約25パーセント以下、約20パーセント以下、約15パーセント以下、約10パーセント以下、約5パーセント以下、約2.5パーセント以下、約1パーセント以下のフェネート石鹸を含むか、又はフェネート石鹸を含まないことを意味する。
【0011】
清浄剤系
本明細書の潤滑組成物は、フェネートをほとんど又は全く用いずに、好ましくはフェネート石鹸を用いずに、VW TDi3ピストン清浄性を達成する清浄剤系を含む。いくつかのアプローチでは、ピストン清浄性は、中性、低塩基性、又は過塩基性スルホネート清浄剤のブレンドであり得るスルホネート添加剤によって最小TBNレベルが維持されるとき、清浄剤を用いて達成される。好ましいTBNレベルは、少なくとも約3mg KOH/g、少なくとも約5mg KOH/g、少なくとも約7mg KOH/g又は少なくとも約8mg KOH/g~約15mg KOH/g以下、約12mg KOH/g以下、約10mg KOH/g以下である。実施形態では、本明細書の清浄剤系は、一般に、スルホネートの1つ以上のアルカリ又はアルカリ金属塩を含み、スルホネート石鹸の最小量、TBNレベル、石鹸含有量の関係、及び/又は本明細書に記載の低レベルの他の清浄剤が満足される限り、フェネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、それらの硫化誘導体、又はそれらの組み合わせなどの他の清浄剤添加剤を少量、残留レベルで含むか、又は全く含まない。
【0012】
好適な清浄剤及びその調製方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献など、多数の特許公報に、より詳細に記載されている。本明細書の潤滑剤組成物は、清浄剤添加剤がスルホネート量及び本明細書に記載の他の関係を満たす限り、約0.1~約5重量パーセントの個々の及び/又は全清浄剤添加剤、他のアプローチでは約0.15~約3重量パーセント、更に他のアプローチでは約0.15~2.6重量パーセントの個々の及び/又は全清浄剤添加剤を含み得る。
【0013】
上記したように、いくつかのアプローチでは、清浄剤系は、選択量のスルホネート石鹸及びTBNレベルを、一定量の清浄剤金属とともに提供する。例えば、本明細書における清浄剤系は、全潤滑組成物に基づいて、約750ppmの全金属を超える、他のアプローチでは、約1000ppm~約5000ppmの全金属、約1200ppm~約3500ppmの全金属、約1400~約3000ppmの全金属、又は約1500ppm~約2500ppmの全金属である量の全清浄剤金属を提供し得る。他のアプローチにおいて、清浄剤金属は、カルシウム、ナトリウム、及び/又はマグネシウムであり、好ましくは、スルホネートによって提供されるカルシウム、ナトリウム、及びマグネシウムであり、より好ましくは、カルシウム、ナトリウム、及び/又はマグネシウムスルホネートのみである。好ましくは、金属は、カルシウム、マグネシウム、又はそれらの組み合わせである。
【0014】
概して、系中の好適な清浄剤は、石油スルホン酸、及びアリール基がベンジル、トリル、並びにキシリルである長鎖モノ若しくはジアルキルアリールスルホン酸、及び/又は様々なフェネート若しくはフェネートの誘導体の直鎖又は分岐鎖アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム、ナトリウム、又はマグネシウムを含み得る。好適な清浄剤の例としては、必要量のスルホネート石鹸に加えて、以下の清浄剤、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性及び過塩基性のバリエーションが挙げられる。
【0015】
清浄剤添加剤は、中性、低塩基性、又は過塩基性であってもよく、好ましくは、過塩基性又は中性から低塩基性及び過塩基性清浄剤の混合物であってもよく、必要に応じて、上記の最小清浄剤TBN数を満たす。理解されるように、過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基質及び二酸化炭素ガスと反応させることによって調製されてもよい。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0016】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超えている、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリシレート、及び/又はフェネートの金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有し得る(すなわち、それらは、酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%超を含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、MRは1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される単位mg KOH/gの全塩基価を表すために使用される。清浄剤は、中性又は過塩基性であり得る。例えば、中性清浄剤は、最大約200mg KOH/グラムの全塩基価(TBN)を有し得る。別の例では、本明細書の潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mg KOH/グラム以上、又は約250mg KOH/グラム以上、又は約350mg KOH/グラム以上、又は約375mg KOH/グラム以上、又は約400mg KOH/グラム以上の全塩基価(total base number、TBN)を有し得る。過塩基性清浄剤は、1.1:1以下、又は2:1以下、又は4:1以下、又は5:1以下、又は7:1以下、又は10:1以下、又は12:1以下、又は15:1以下、又は20:1以下の金属対基材比を有し得る。
【0018】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、(スルホネート石鹸及び本明細書に記載の他の関係を満足する限り)以下に限定されないが、過塩基性カルシウムフィネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フィネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸カルシウム、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄カップリングアルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフィネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄カップリングアルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられる。
【0019】
任意選択で、低塩基性又は中性清浄剤が清浄剤系に組み込まれる場合、低塩基性又は中性清浄剤は、一般に、最大175mg KOH/g、最大150mg KOH/g、最大100mg KOH/g、又は最大50mg KOH/gのTBNを有する。低塩基性/中性清浄剤は、カルシウム又はマグネシウム含有清浄剤を含み得る。好適な低塩基性/中性清浄剤の例としては、(スルホネート石鹸及び本明細書に記載の他の関係を満足する限り)以下に限定されないが、スルホン酸カルシウム、石炭酸カルシウム、カルシウムサリチレート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、及び/又はサリチル酸マグネシウムが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書の潤滑剤に使用される清浄剤は、少なくとも過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸ナトリウム、及び/又は過塩基性スルホン酸マグネシウムを含み、各々が150~400、他のアプローチでは約200~約350の全塩基価を有する。上記のTBN値は、基油中に希釈された仕上がり清浄剤成分の値を反映する。いくつかのアプローチでは、清浄剤系は、中性~低塩基性及び過塩基性スルホネート清浄剤のブレンドを含み、約0~約7.0重量パーセントの中性~低塩基性スルホネート清浄剤及び約0.1~約3.0重量パーセントの過塩基性スルホネート清浄剤(又は他のアプローチでは、約0.2~約2.7重量パーセントの過塩基性スルホネート清浄剤)を含み得る。更に別のアプローチでは、本明細書の清浄剤系は、約0:3~約35:1の低塩基性スルホネート清浄剤対過塩基性スルホネート清浄剤の比を有し得る。
【0021】
他の実施形態では、本明細書の清浄剤のTBNは、清浄剤成分のニート又は非希釈バージョンを反映することがある。例えば、本明細書の流体は、約300~約450、他のアプローチでは約380~約420のTBNを有する未希釈添加剤として過塩基性スルホン酸カルシウム又はナトリウム、及び/又は約500~約700、他のアプローチでは、約600~約700のTBNを有する未希釈添加剤として過塩基性スルホン酸マグネシウムを含むことができる。
【0022】
より具体的には、本明細書の清浄剤系は、少なくとも約3mg KOH/g、少なくとも約5mg KOH/g、少なくとも約8mg KOH/g~約15mg KOH/g以下、約12mg KOH/g以下、又は約10mg KOH/g以下のASTM D2896によって測定される清浄剤TBNを達成するために、中性、低塩基性、及び/又は過塩基性清浄剤(好ましくは、中性~過塩基性スルホン酸カルシウム、中性~過塩基性スルホン酸ナトリウム、及び/又は中性~過塩基性スルホン酸マグネシウム)を含む。清浄剤系はまた、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、したがって以下の金属含有量のうちの1つ以上:ナトリウム:最大約40ppmのナトリウム、少なくとも約40ppmのナトリウム、少なくとも約90ppmのナトリウム、少なくとも約180ppmのナトリウム、少なくとも約200ppmのナトリウム、少なくとも300ppmのナトリウム、又は少なくとも約400ppmのナトリウム(好ましくは約40~約1,000ppmのナトリウム、約180ppm~約1,000ppm、約200ppm~約1,000ppmのナトリウム、300ppm~約1,000ppmのナトリウム、又は400ppm~約1,000ppmのナトリウム)、マグネシウム:最大約90ppmのマグネシウム、少なくとも約90ppmのマグネシウム、少なくとも約180ppmのマグネシウム、少なくとも約200ppmのマグネシウム、少なくとも300ppmのマグネシウム、又は少なくとも約400ppmのマグネシウム(好ましくは約90~約3,500ppmのマグネシウム、約180ppm~約3,000ppmのマグネシウム、約200ppm~約2,000ppmのマグネシウム、300ppm~約1,500ppmのマグネシウム、又は400ppm~約1,000ppmのマグネシウム)、又はいくつかの実施形態では、カルシウム:最大約90ppmのカルシウム、少なくとも約90ppmのカルシウム、少なくとも約180ppmのカルシウム、少なくとも約200ppmのカルシウム、少なくとも300ppmのカルシウム、又は少なくとも約400ppmのカルシウム(好ましくは、約90~約3,500ppmのカルシウム、約180ppm~約3,000ppm、約200ppm~約2,000ppmのカルシウム、300ppm~約1,500ppmのカルシウム、又は400ppm~約1,000ppmのカルシウム)を提供する。以下の実施例に示されるように、このような清浄剤系の寄与を満たす潤滑剤は、驚くべきことに、フェネート清浄剤のレベルがほとんど又は全くない場合であっても、VW TDi3ピストン清浄性を達成する。
【0023】
本明細書の清浄剤系は、選択されたレベルのスルホネート石鹸含有量、特に少なくとも約75パーセントのスルホネート石鹸、他のアプローチでは、少なくとも約80パーセントのスルホネート石鹸、少なくとも約85パーセントのスルホネート石鹸、少なくとも約90パーセントのスルホネート石鹸、少なくとも約95パーセントのスルホネート石鹸、少なくとも約98パーセントのスルホネート石鹸、少なくとも約99パーセントのスルホネート石鹸、又は約100パーセントのスルホネート石鹸(又はこれらの間の任意の範囲)を有する。他のアプローチでは、清浄剤の石鹸量は、フェネート清浄剤をほとんど又は全く用いずにVW TDi3ピストン清浄性を達成するために、選択された清浄剤TBNレベルとバランスがとられる。
【0024】
他のアプローチでは、本明細書の清浄剤系は、約75:25以上、約80:20以上、約85:15以上、約90:10以上、又は更に約95:5以上のスルホネート石鹸対フェネート石鹸の選択重量比を有する(この比の文脈においてより大きいとは、フェネート石鹸に対してより多くのスルホネート石鹸を意味する)。好ましくは、本明細書の清浄剤系は、もしあれば、フェネート石鹸、サリチレート石鹸、カリキサレート石鹸、又はスルホネート以外の石鹸の残留レベルのみを含む。
【0025】
石鹸含有量は、一般に、中性の有機酸塩の量を指し、清浄剤の浄化能力、又は清浄力、及び汚れを浮かせる能力を反映している。潤滑剤の石鹸含有量は、ASTM D3712によって決定することができる。石鹸含有量の決定に関する更なる考察は、FUELS AND LUBRICANTS HANDBOOK,TECHNOLOGY,PROPERTIES,PERFORMANCE,AND TESTING,George Totten,editor,ASTM International,2003の、参照により本明細書に組み込まれるその関連部分に見出すことができる。
【0026】
分散剤
本明細書の潤滑組成物はまた、1つ以上の任意選択の分散剤を含む。分散剤は、潤滑剤組成物への混合前にそれらが灰形成金属を含有せず、潤滑剤への添加時にそれらが通常いかなる灰にも寄与しないため、多くの場合、無灰型分散剤として知られている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000、又は約2,000、又は約1,500の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,897,696号及び米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製されてもよい。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0027】
アプローチにおいて、分散剤のための好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシルアミンから選択され得る。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(pentaethylamine hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。いくつかのアプローチでは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分枝を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物であるいわゆる重質ポリアミンが使用され得る。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7つ以上の窒素原子を含有し、分子当たり2つ以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、含まれる場合、ポリイソブチレン(PIB)は、分散剤を形成するための好ましい反応物であり、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0029】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。そのようなHR-PIBは、市販されているか、又は米国特許第4,152,499号及び米国特許第5,739,355号に記載されるように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成され得る。前述の熱エン反応に使用される場合、HR-PIBは、増加した反応性のために、反応におけるより高い変換率、及びより少ない量の沈殿物形成をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7897696号に記載されている。一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0030】
いくつかのアプローチでは、本明細書における潤滑剤中の分散剤は、任意選択で、様々な薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理され得る。好適な後処理薬剤としては、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物が挙げられる。(例えば、米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、米国特許第8,048,831号、及び米国特許第5,241,003号(これらは、その全体が全て参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)
【0031】
後処理試薬として使用されるホウ素化合物は、窒素組成物1モル当たり約0.1の原子割合のホウ素から使用される窒素の各原子割合当たり約20の原子割合のホウ素を提供する量の、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、及びホウ酸のエステルから選択することができる。ホウ素で後処理された分散剤は、ホウ酸分散剤の総重量に基づいて、約0.05重量パーセント~約2.0重量パーセント、又は他のアプローチでは、約0.05重量パーセント~約0.7重量パーセントのホウ素を含有し得る。
【0032】
他のアプローチでは、カルボン酸はまた、後処理試薬として使用され得、飽和又は不飽和のモノ-、ジ-、又はポリ-カルボン酸であり得る。カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、及びナフタル二酸(例えば、1,8-ナフタル二酸)が挙げられるが、これらに限定されない。無水物はまた、後処理試薬として使用することができ、モノ-不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸)、アルキル又はアルキレン置換環状無水物(例えば、無水コハク酸又は無水グルタミン酸)、及び芳香族無水カルボン酸(無水ナフタル酸、例えば1,8-無水ナフタル酸を含む)からなる群から選択することができる。
【0033】
一実施形態では、分散剤を後処理するプロセスは、最初に、上記のようにスクシンイミド生成物を形成し、次いで、スクシンイミド生成物をホウ酸などのホウ素化合物などの後処理剤と更に反応させることを含む。場合によっては、本明細書の分散剤は、1つを超える後処理剤で後処理され得る。例えば、分散剤は、ホウ酸などのホウ素化合物、及びまた無水マレイン酸及び/又は1,8-ナフタル酸無水物などの無水物で後処理され得る。
【0034】
分散剤は、潤滑組成物の最大約20重量パーセントを提供するのに十分な量で使用することができ、分散剤のうちの1つ以上は、潤滑組成物に少なくとも約40ppmのホウ素及び最大500ppmのホウ素を提供するように後処理される。他のアプローチでは、分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約15重量パーセント、又は約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、約0.1重量パーセント~8重量パーセント、又は約1重量パーセント~約10重量パーセント、又は約1重量パーセント~約8重量パーセント、又は約1重量パーセント~約6重量パーセントの量で、潤滑組成物中で使用され得る。分散剤は、少なくとも約400ppmの窒素及び最大約1,500ppmの窒素を提供し得る。
【0035】
基油又は基油ブレンド:
本明細書の潤滑組成物において使用される基油は、潤滑粘度の油であってもよく、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているAPIグループI~Vの基油のいずれかから選択することができる。5つの基油グループを一般的に以下の表1に示す。
【0036】
【0037】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であってもよい。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、当該産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0038】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱物油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であってもよい。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0039】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得る、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0040】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0041】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導される油もまた、有用であり得る。
【0042】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0043】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0044】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0045】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数改善剤(複数可)及び/又は流動点降下剤(複数可)及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0046】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、本明細書の基油系は、グループI~グループVの基油のうちの1つ以上を含み、約2~約20cSt、他のアプローチでは約2~約10cSt、約2.5~約6cSt、更に他のアプローチでは約2.5~約3.5cSt、及び更に他のアプローチでは約2.5~約4.5cStのKV100を有し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、並びに「潤滑及び冷却流体」という用語は、過半量の基油成分と少量の清浄剤及び他の任意選択の成分とを含む仕上がり潤滑生成物を指す同義の完全に互換的な用語とみなされる。
【0048】
任意選択の添加剤:
本明細書の潤滑油組成物はまた、性能基準を満たすために必要に応じて、清浄剤系、硫化添加剤、及びホウ素化清浄剤と組み合わされたいくつかの任意選択の添加剤を含んでもよい。それらの任意選択の添加剤は、以下の段落で説明する。
【0049】
他の分散剤:潤滑油組成物は、任意選択で1つ以上の他の分散剤又はそれらの混合物を含んでもよい。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製されてもよい。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0050】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシルアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0051】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分枝を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7つ以上の窒素原子を含有し、分子当たり2つ以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、>32重量%)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0052】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0053】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素原子及びより広範な分枝を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0054】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより決定される場合に、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有していてもよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0056】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で使用されるとき、HR-PIBは、反応性の向上により反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0057】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0058】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィー技術を使用して決定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0059】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0060】
別途明記しない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)により決定される数平均分子量である。
【0061】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載されてもよい。ある実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導されてもよい。
【0062】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0063】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であってもよい。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0064】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであってもよい。好適な分散剤はまた、従来の方法によって様々な薬剤のいずれかと反応させて後処理されてもよい。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理されてもよい。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択でそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0066】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0067】
更に他の実施形態では、任意選択の分散剤添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であってもよい。アプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導されてもよく、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定した場合、約250~約5,000の数平均分子量を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビル基である。
【0068】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0069】
【化1】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R
1及びR
2は、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択で融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比の2つ以上の種類の分散剤の混合物を使用することができる。
【0071】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0072】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含んでもよく、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有してもよい。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0073】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有していてもよいため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在していてもよい。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0074】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0075】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0076】
別の代替の実施形態では、酸化防止剤組成物は、上述のフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノールとアミンとモリブデン含有成分の処理率の比は、(0~3):(0~3):(0~3)である。
【0077】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0078】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、以下に限定されないが、チオリン酸金属、ジアルキルジチオリン酸金属;リン酸エステル若しくはその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、並びにビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなど、チオカルバメート含有化合物;及びそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であってもよい。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであってもよい。
【0079】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有していてもよく、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であってもよい。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0080】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0081】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。ホウ素含有化合物の例は、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化清浄剤、及びホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤を含む。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0082】
追加の清浄剤:潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上の中性清浄剤、低塩基性清浄剤、又は過塩基性清浄剤、及びこれらの混合物を更に含んでもよい。好適な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ及び/若しくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0083】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有してもよい。好適な清浄剤には、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ又はジアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が含まれてもよい。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0084】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製することができる。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0085】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。正塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0086】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mg KOH/g以上、又は更なる例として、約250mg KOH/g以上、若しくは約350mg KOH/g以上、若しくは約375mg KOH/g以上、若しくは約400mg KOH/g以上の総塩基価(TBN)を有してもよい。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定されている。
【0087】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ及び/又はジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウム及び/又はジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0088】
過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D2896の方法により測定される、少なくとも約150mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g~約400mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g~約350mg KOH/g、又は約230mg KOH/g~約350mg KOH/gの総塩基価を有する。そのような清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えばプロセス油、通常は鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の物質(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0089】
過塩基性清浄剤は、1.1:1から、又は2:1から、又は4:1から、又は5:1から、又は7:1から、又は10:1からの金属対基質比を有していてもよい。いくつかの実施形態では、清浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。清浄剤は、潤滑組成物中に、約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%超~約8重量%で存在してもよい。
【0090】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化Diels-Alder付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド、硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0091】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれてもよく、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0092】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有していてもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル、又はジエステル、又は(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0093】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれてもよい。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含んでもよい。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0094】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含んでいてもよい。そのような化合物は、直鎖、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和、不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有していてもよい。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0095】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用してもよい。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載される。
【0096】
摩擦調整剤は、任意選択で、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在してもよい。
【0097】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれてもよい。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデンであり得る。
【0098】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、及びMolyvan(登録商標)855など、並びにAdeka Corporationから入手可能なAdeka Sakura-Lube(登録商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、US 5,650,381、US RE 37,363 E1、US RE 38,929 E1、及びUS RE 40,595 E1に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、並びに他のアルカリ金属モリブレート及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Mo3SkLnQzの化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルの群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在していてもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0101】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0102】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0103】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能してもよい。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であってもよい。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート、チタンカルボキシレート、例えばチタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドがある。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在していてもよい。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在していてもよい。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供されてもよい。
【0104】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製されてもよい。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用してもよいし、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(又はアルキル)無水コハク酸及びポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、又はそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの物質のうちのいずれかと反応させてもよい。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用してもよいか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応させてもよい。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応させてもよい。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成させてもよい。
【0105】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC6~C25カルボン酸との反応生成物であってもよい。反応生成物は、以下の式によって表されてもよく、
【0106】
【化2】
式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、又は以下の式によって表されてもよく、
【0107】
【化3】
式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、R
4は、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、R
1は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2及びR
3は、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、又はチタン化合物は、以下の式によって表されてもよく、
【0108】
【化4】
式中、xは、0~3の範囲であり、R
1は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2、及びR
3は、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
4は、H、C
6~C
25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。
【0109】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0110】
一実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35~約500重量ppmのチタン、又は約50~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0111】
粘度指数改善剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含み得、好適な例は米国公開第2012/0101017 A1号に記載されている。
【0112】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0113】
粘度指数改善剤及び/又は分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であってもよい。
【0114】
他の任意選択の添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0115】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択で他の性能添加剤を含んでもよい。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であってもよく、並びに/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、清浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでいてもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0116】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択で酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0117】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0118】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0119】
好適な錆抑制剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。
【0120】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0121】
一般的に言えば、本明細書における清浄剤金属を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲の添加剤成分を含み得る。
【0122】
【0123】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全に配合された潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【0124】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。更に、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999、及び「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で一般的に例示されるように、又は特定のクラス、サブクラス、及び本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。
【0126】
その内容から特に明らかでない限り、「多量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量パーセント以上、例えば、約80~約98重量パーセントの量を意味すると理解される。また、本明細書で使用されるとき、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビル基」又は「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族置換、脂肪族置換、並びに脂環族置換された芳香族置換基、並びに環が、分子の別の部分を介して完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって脂環族ラジカルを形成する)環状置換基;(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、及びスルホキシ)を含有する置換基;(3)ヘテロ置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素の特性を有する一方で、環又は鎖中に炭素以外のものを含有するか、さもなければ炭素原子から構成される置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、又は更なる例として、ただ1個の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は、存在しないであろう。
【0128】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択で置換されている。
【0129】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、又は1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、又は2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、又はヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、置換され(すなわち、任意選択で置換され)得る。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、及びアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、又はハロアルキルが挙げられる。
【0130】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4個)の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、及び2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、又は脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO2-、脂環式-SO2-、又はアリール-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、任意選択で置換され得る。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、又はハロアルケニルが挙げられる。
【0131】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基をいう。アルキニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、これらに限定されないプロパルギル及びブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル又は脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル又は脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-、脂肪族アミノ-SO2-、又は脂環式-SO2-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、又は(ヘテロアリール)アルコキシで、任意選択で置換されることができる。
【0132】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRXRYを指し、式中、RX及びRYの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、又は(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択で置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは-NRX-によって表される。RXは、上記で定義されたものと同義である。
【0133】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式又は二環式(融合又は架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、又は((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0134】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式又は二環式(融合又は架橋)(例えば、5~10員の単環式又は二環式)飽和環構造を指し、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、及び2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが、挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0135】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式又は4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)、単環式環系は、香族であるか、又は二環式又は三環式環系中の環の少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合基は、1又は2個の4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル又はイソキノリニル)と縮合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、又は1,8-ナフチリジルである。
【0136】
限定するものではないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、又は1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0137】
二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、又はプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0138】
本明細書で使用される場合、「処理率」という用語は、潤滑及び冷却流体中の成分の重量パーセントを指す。
【0139】
重量平均分子量(molecular weight、Mw)及び数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は同様の機器と、Waters Empower Software又は同様のソフトウェアとを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択の機器)を設けることができる。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、960~1,568,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate、PMMA)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPMMA標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【実施例0140】
本開示及びその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例示的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用できることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載する全ての百分率、比、及び部は、重量基準である。
【0141】
実施例1
潤滑組成物を、CEC L-117-20(TDi3)に従ってピストン清浄性について評価した。本実施例について評価した潤滑組成物は、以下の表3の流体関係を提供するためのスルホネート及び/又はフェネート清浄剤、並びに分散剤、耐摩耗添加剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及び残部の基油を含む同様の添加剤パッケージを含んでおり、約4.0~約26.1cStのKV100を達成するようになっていた。(KV100は、ASTM D445に従って測定された。)表4は、VW TDi3ピストン清浄性の結果を提供する。
【0142】
【0143】
【0144】
ピストン清浄性は、RL276-5に対して測定され、合格ピストン清浄性は、一般に、TDi3試験において約51、52、又は53以上のピストン清浄性等級である参照流体と同等又はそれより良好である。比較例1及び3は合格ピストン清浄性を達成するが、両方の潤滑剤がフェネート石鹸を含んでいた。本発明の流体1、2、及び3が、スルホネート石鹸のみを用いてTDi3ピストン清浄性に合格したことは予想外であった。
【0145】
実施例2
実施例1の清浄剤添加剤を含む更なる潤滑組成物を、より古いCEC L-078-99又はVW TDi2試験を用いてピストン清浄性について評価した。本実施例の潤滑剤は、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡添加剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及び基油の残部の同じ添加剤パッケージに加えて、以下の表5の流体関係を含んでおり、約4~約26.1cStのKV100を達成するようになっていた。(ASTM D445に従って測定されたKV100)。表6は、VW TDi2ピストン清浄性を提供する。
【0146】
【0147】
【0148】
TDi2の合格ピストン清浄性は、一般に約65を超えるピストン清浄性等級であった参照流体と同等又はそれよりも良好なピストン清浄性であった。表6のデータは、大部分のスルホネート石鹸を有する清浄剤系が、古いVW TDi2性能基準を使用して評価した場合に、適切なピストン清浄性を与えることができなかったことを示す。しかしながら、実施例1からの表4のデータは、TBNレベルが主要スルホネート(及び好ましくはスルホネートのみ)清浄剤系において満足される場合、潤滑剤は、驚くべきことに、より厳しく新しいVW TDi3性能基準に従って所望のピストン清浄性を達成することができることを示す。
【0149】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0150】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0151】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0152】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0153】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0154】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0155】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物を包含することを意図している。