(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021065
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】試験室及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240207BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01N17/00
C09K5/04 B ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122512
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22188400
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァート ヤニック
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA05
2G050EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷媒として炭化水素を用いて試験室の安全な運転を確保できる試験室及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、特に人工気候室などの空気調和のための方法と試験室に関し、試験室は、周囲に対して閉鎖可能で且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間(11)と、試験空間を温度制御するための温度制御装置とを備え、温度制御装置によって試験空間内に-40℃から+180℃の範囲の温度を発生させることができ、温度制御装置は、加熱装置と、冷却サイクル(10)を有する冷却装置とを備え、冷却サイクルは、冷媒、試験空間内に配置された熱交換器(12)、圧縮機(13)、凝縮器(14)、及び膨張要素(15)を有し、冷媒は炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒である。冷却サイクルには熱交換器の下流側且つ圧縮機の上流側に停止要素(23)が配置され、停止要素は、熱交換器内の冷媒の逆流を止めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に人工気候室などの空気調和のための試験室であって、前記試験室は、周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間(11)と、前記試験空間を温度制御するための温度制御装置とを有し、前記温度制御装置によって前記試験空間内で-40℃から+180℃の範囲の温度を発生させることができ、前記温度制御装置は、加熱装置と、冷却サイクル(10,24,27)を有する冷却装置とを備え、前記冷却サイクルは、冷媒、前記試験空間内に配置される熱交換器(12)、圧縮機(13)、凝縮器(14)及び膨張要素(15)を有し、冷媒は炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒であり、
前記冷却サイクルには前記熱交換器の下流側且つ前記圧縮機の上流側に停止要素(23,25,28)が配置され、前記停止要素は前記熱交換器内で冷媒の逆流を止めることが可能である試験室。
【請求項2】
請求項1に記載の試験室において、
前記冷媒は可燃性であり、及び/またはフッ素化炭化水素を含まないことを特徴とする試験室。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試験室において、
前記停止要素(23,25,28)は、前記冷却サイクル(10,24,27)の前記熱交換器(12)のすぐ下流側に配置されていることを特徴とする試験室。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の試験室において、
前記停止要素(23,25)が逆止弁(26)であることを特徴とする試験室。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の試験室において、
前記停止要素(23,25)は電磁弁(29)であり、圧力逃し弁(31)を有するバイパス(30)が前記冷却サイクル(27)に配置され、前記バイパスは前記熱交換器(12)の下流側且つ前記電磁弁の上流側と、前記電磁弁の下流側且つ前記圧縮機(13)の上流側とに接続されていることを特徴とする試験室。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の試験室において、
前記冷却サイクル(10,24,27)は、前記冷却サイクルの高圧部(17)と低圧部(16)の間に延びる圧力補正管(19,21)を有し、前記圧力補正管に電磁弁(20,22)が配置されていることを特徴とする試験室。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の試験室において、
前記温度制御装置は、前記冷却サイクル(10,24,27)に少なくとも1つの圧力センサを有する調節器を備え、前記圧力センサは、前記膨張要素(15)の下流側且つ前記停止要素(23,25,28)の上流側に配置され、前記膨張要素は前記調節器によって閉鎖可能であり、測定される圧力の作用で前記圧縮機(13)の運転を継続可能であることを特徴とする試験室。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の試験室において、
前記試験室は、少なくとも1つのガスセンサを有する検知器と、前記試験空間(11)に対して気密状態で隔てられた前記試験室の機関室内に設けられた1つの換気設備とを有することを特徴とする試験室。
【請求項9】
特に人工気候室などの試験室の断熱された試験空間(11)内を空気調和する方法であって、前記試験空間は周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有し、前記試験室の温度制御装置によって前記試験空間内に-40℃から+180℃の範囲の温度を発生させ、加熱装置を有する前記温度制御装置によって前記試験空間内に-50℃から180℃の範囲の温度を発生させ、前記温度制御装置は、加熱装置、及び冷媒、前記試験空間内に配置された熱交換器(12)、圧縮機(13)、凝縮器(14)及び膨張要素(15)を有する冷却サイクルを備え、冷媒は炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒であり、
前記熱交換器の下流側且つ前記圧縮機の上流側で前記冷却サイクルに配置された停止要素(23,25,28)によって、前記熱交換器内での冷媒の逆流が防止されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記膨張要素(15)が前記温度制御装置の調節器によって停止し、前記加熱装置によって前記試験空間内に+50℃から+180℃の温度を発生させることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
前記膨張要素(15)が前記温度制御装置の調節器によって停止し、前記圧縮機(13)の運転が継続されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、
前記冷媒の圧力が、前記冷却サイクル(10,24,27)において、前記調節器の少なくとも1つの圧力センサによって、前記膨張要素(15)の下流側且つ前記停止要素(23,25,28)の上流側で測定され、測定された圧力の作用で前記圧縮機(13)の運転が継続されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記圧縮機(13)は、圧力が1.5bar以下で且つ1barよりも高い範囲、好ましくは1.1bar以下で且つ1barよりも高い範囲にあるときにスイッチがオフに切り換えられることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載の方法において、
前記冷却サイクル(10,24,27)の低圧部(16)で目標圧力に達すると、前記調節器によって前記圧縮機(13)のスイッチがオフに切り換えられ、前記停止要素(23,25,28)を閉鎖することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和のための方法及び特に人工気候室などの空気調和のための試験室に関し、試験室は、周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間と、試験空間を温度制御するための温度制御装置とを備え、温度制御装置によって試験空間内に-40℃から+180℃の範囲の温度を発生させることができ、温度制御装置は、加熱装置と、冷却サイクルを有する冷却装置とを有し、冷却サイクルは、冷媒、試験室に配置された熱交換器、圧縮機、凝縮器、及び膨張要素を有し、冷媒は、炭化水素、または炭化水素で作られた混合冷媒である。
【背景技術】
【0002】
この種の試験室は、一般に、対象物、特に装置(デバイス)の物理的特性及び/または化学的特性を観測するために使用される。そのため、-40℃から+180℃までの範囲の温度を設定できる温度試験用の入出力装置(コンソール)または気候試験用の入出力装置が知られている。気候試験用の入出力装置では、さらに所望の気候条件を設定でき、装置及び/または試験材料は所定の期間にわたってその条件にさらされる。試験すべき試験材料を受け入れる試験空間の温度は、通常は試験空間内の循環空気流路で調整される。循環空気流路は試験空間内に空気処理空間を形成し、この空気処理空間内に、循環空気流路及び/または試験空間を流れる空気を加熱または冷却するための熱交換器が配置される。これに関し、試験空間に存在する空気をファンが吸引し、循環空気流路内で対応の熱交換器に導く。試験材料の温度はこのようにして調整することができ、所定の温度変化をさせることもできる。試験インターバルの間に、温度は例えば試験室の最高温度と最低温度の間で変化し得る。この種の試験室は、例えば特許文献1により知られている。
【0003】
冷却サイクルで用いる冷媒は、放出される時に冷媒によって周囲へ間接的に影響が与えられるのを避けるために、CO2量を相対的に少なくすべきであり、言い換えると相対的な温室効果の可能性または地球温暖化係数(GWP)を可能な限り小さくすべきである。冷媒として炭化水素を用いることも知られているが、炭化水素は引火性である点が不利である。引火性は、熱を放出しながら周囲の酸素と反応する冷媒特性であると分かっている。冷媒は、優先日において有効なバージョンの欧州規格DN2またはDIN378の分類A2,A2L、及びA3による分類Cの火災に該当する場合に、特に引火性を有する。引火性の冷媒を用いる場合、冷却サイクル及び/または試験室の中身、輸送及び運転が、維持すべき安全対策のためにより複雑になる。電気抵抗ヒータ及び電気的に作動する装置が試験材料として存在する試験空間内において、冷却サイクルで漏れのおそれがあることは大きな問題である。漏れが発生した場合、破裂が生じる可能性がある。
【0004】
法令の定めによれば、冷媒は大気中のオゾン層破壊または地球温暖化に大きく寄与してはならない。そのため、基本的にフッ化ガスやフッ化された物質でないものを冷媒として使用すべきであり、そのために二酸化炭素(CO2)などの自然冷媒が検討されている。低GWPの冷媒の欠点は、これらの冷媒が、冷却サイクルに関係する温度範囲において、比較的高GWPの冷媒と比べて、冷却能力が部分的には著しく低いことである。より低いGWPは、二酸化炭素の質量分率が比較的大きな混合冷媒で実現でき、これらの混合冷媒は異なる物質同士が混合されるために非共沸性を有するが、このことは殆どの冷却サイクルにおいて望ましくない。さらに、二酸化炭素の割合は十分に大きくて冷媒が不燃性でなければならない。特許文献2によれば、基本的に二酸化炭素、ペンタフルオロエタン及びジフルオロメタンからなる冷媒を用いる試験室が知られている。この場合、特に低温を実現するためには冷却サイクルの内部熱交換器による冷媒の過冷却が必要であるという不利な点がある。また、冷媒は非共沸性を有し、成分としてフッ化ガスを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0344397号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/048250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、試験室、及び試験室によって空気調和をする方法であって、冷媒として炭化水素を用いて試験室の安全な運転を確保できる試験室及び方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する試験室及び請求項9の特徴を有する方法によって達成される。
【0008】
特に人工気候室などの空気調和のための試験室は、周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間と、試験空間を温度制御するための温度制御装置とを有し、温度制御装置によって試験空間内で-40℃から+180℃の範囲の温度を生成可能であり、温度制御装置は、加熱装置と、冷却サイクルを有する冷却装置とを備え、冷却サイクルは、冷媒、試験空間内に配置される熱交換器、圧縮機、凝縮器及び膨張要素を有し、冷媒は、炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒であり、冷却サイクルには熱交換器の下流側且つ圧縮機の上流側に停止要素が配置され、停止要素は熱交換器内の冷媒の逆流を止めることが可能である。
【0009】
本発明に係る試験室を使用することにより、冷却サイクルの冷媒として炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒を安全に使用できる。冷却装置の運転中、及び/または圧縮された冷媒を試験室の中に配置された熱交換器により冷却するとき、圧縮された冷媒は、膨張要素を介して熱交換器に供給され、及び/または膨張し、それによって熱交換器の温度が低下する。圧縮機は、冷媒の流れ方向において熱交換器の下流側に配置され、冷媒を冷却サイクルの低圧部と呼ばれる側から吸入し、冷却サイクルの高圧部と呼ばれる側で圧縮する。試験シーケンスの範囲内で、試験空間により高温を発生させる場合、試験空間の空気は加熱装置で加熱される。このために、熱交換器とその中に含まれる冷媒が加熱され、その結果、熱交換器内の冷媒が熱膨張する。同様に、試験空間を加熱する段階では、熱交換器及び/または試験空間は同時に冷却されないので、熱交換器に冷媒は必要でない。冷媒は、さらに冷却サイクルの高圧部と低圧部との間で行うことが可能な圧力補正により、例えば高圧部と低圧部との間で延び、弁、電磁弁、絞り要素及び/または圧力補正キャピラリを有することのできるバイパスを介して、熱交換器に還すことができる。冷媒の流れと逆方向における熱交換器への冷媒の逆流を停止させることができる停止要素が、冷却サイクルにおいて熱交換器の下流側且つ圧縮機の上流側に配置されているため、熱交換器において起こりうる冷媒のこの逆流を阻止できる。熱交換器において漏れが発生して可燃性の冷媒が試験空間に流入すると、冷却サイクルに残存する冷媒が熱交換器に流入せず、逆流によって試験空間に吸入しないため、試験空間に流入する冷媒の量は比較的少量となる。停止要素により、試験室をより安全に構成し、可燃性の冷媒及び/または炭化水素を試験室の冷媒として利用することが可能になる。
【0010】
冷媒は、可燃性であり、及び/またはフッ素化炭化水素を含まないようにすることが可能である。例えば、冷媒は、プロパン、エタン、エチレン、プロペン、イソブテン、ブタン等にすることができる。また、冷媒は、炭化水素及び/または前述した成分からなる混合冷媒もしくは炭化水素を主成分とする混合冷媒にすることもできる。さらに、冷媒は、フッ素化炭化水素を含まないものとすることができる。このことにより、冷媒に対する将来の規制要件を満たし、フッ素化炭化水素の欠点を回避することが可能になる。冷媒はまた、試験空間内で-40℃から+180℃、好ましくは-70℃から+180℃、特に好ましくは-85℃から+200℃の範囲の温度を発生させるのに適したものにすることができる。
【0011】
停止要素は、冷却サイクルの熱交換器のすぐ下流側に配置することができる。その結果、熱交換器と停止要素との間に延びる冷却サイクルの配管部分において、停止要素と熱交換器との間に他の配管や冷却サイクルの弁等を接続することがない。したがって、必要に応じて、熱交換器における冷媒の逆流を冷却サイクルの他の配管から安全に回避することができる。
【0012】
有利には、停止要素は逆止弁にすることができる。逆止弁は、冷却サイクルにおいて、冷媒が逆止弁を介して熱交換器から圧縮機へ向かう方向に流れることができるが逆方向へは流れないように配置することができる。したがって、熱交換器内での冷媒の逆流を簡単かつ安価な手段で防止できる。また、熱交換器内で冷媒が膨張しても、膨張要素が閉じられると冷媒は熱交換器から逆止弁を介して流出するため、熱交換器内の冷媒の量または質量をさらに少なくすることができる。
【0013】
あるいは、停止要素を電磁弁にすることができ、圧力逃し弁を有するバイパスを冷却サイクルに配置することができ、バイパスを、熱交換器の下流側且つ電磁弁の上流側と、電磁弁の下流側且つ圧縮機の上流側とに接続することができる。膨張要素が閉鎖されている場合は電磁弁も閉鎖することができ、冷媒が流れ方向に逆らって熱交換器に逆流することはない。冷媒が熱交換器内で加熱されると、ある量の冷媒は、圧力逃し弁及び/またはバイパスを通って熱交換器から圧縮機の上流側に流れることができる。熱交換器内の圧力が圧縮機上流側の冷却サイクル内の圧力に対して高いため、熱交換器内の冷媒が圧力逃し弁を通って逆流することはできない。電磁弁が故障して電磁弁を開くことができない場合でも、膨張要素が開いたときに冷媒が熱交換器に入りすぎることを防止でき、熱交換器内の圧力が不要に上昇することを防止できる。この場合、熱交換器内が液冷媒で満たされ、その液冷媒が膨張要素または電磁弁を介して排出されなくなる可能性がある。この望まれない運転状態は圧力逃し弁によって防止され、この圧力逃し弁は、熱交換器内が許容できないほど圧力上昇したときに開くことができるので、冷媒は低圧部における圧縮機の上流側の電磁弁を通過して流れることが可能になる。
【0014】
冷却サイクルは、冷却サイクルの高圧部と低圧部の間に延びる圧力補正管を有するようにしてもよく、圧力補正管に電磁弁を配置することができる。この圧力補正管により、圧縮機が運転されていないときに高圧部と低圧部の間で圧力の補正が可能になる。圧力補正管は、冷却サイクルの高圧部に圧縮機のすぐ下流側且つ凝縮器の上流側で接続詞、及び/または凝縮器の上流側且つ膨張要素の上流側で接続することができ、冷却サイクルの低圧部では圧縮機の上流側に通じさせることができる。圧縮機が運転されていないために冷媒が膨張すると、高圧部と低圧部との間で圧力の補正が可能となる。同時に、圧力補正管は、圧縮機の上流側の吸入圧力と冷媒温度を調節するために使用することもできる。
【0015】
温度制御装置は、冷却サイクルに少なくとも1つの圧力センサを有する調節器を有してもよく、圧力センサは、膨張要素の下流側且つ停止要素の上流側に配置でき、調節器が膨張要素を閉鎖し、測定される圧力の作用で圧縮機の運転を継続する。圧力センサにより、熱交換器内の冷媒の圧力を測定及び/または計測することが可能になる。このことにより、膨張要素が停止していても、圧縮機の運転を継続することで熱交換器内の冷媒の圧力を低下させることができる。圧縮機が冷媒を吸入すると、熱交換器からさらに多くの冷媒を取り出すこと、つまり熱交換器内の冷媒量をさらに少なくすることができる。圧縮機の運転は、例えば熱交換器内に所望の圧力が発生する限り続けることができる。あるいは、膨張要素を閉じた後に熱交換器から冷媒を取り出すために圧縮機停止時間を定めてもよい。
【0016】
試験室は、少なくとも1つのガスセンサを有する検知器と、試験空間に対して気密状態で隔てられた試験室の機関室内に設けられた換気設備とを有するようにしてもよい。冷却サイクルの漏れが発生した場合、検知器を用いて、ガスセンサにより漏れを特定し、換気設備によって機関室を換気することが可能になる。冷却サイクルが普通は機関室に配置されるため、冷媒が機関室に侵入することもある。ガスセンサは機関室に設置可能な最も低い位置に設置されるので、炭化水素または冷媒の生じ得る漏れを可能な限り迅速に検出できる。機関室内での漏洩冷媒の蒸発を防止するために、機関室に設けることのできる開口部をガスセンサの上方に、例えばガスセンサの10cm上方に形成することができる。このことにより、密度が大きいために機関室の底部に自然に溜まる漏洩炭化水素をガスセンサによって安全に検出できる。さらに、換気設備を機関室の底部に直接配置するようにしてもよい。換気設備は、ATEX(欧州の防爆規格)認定ファンで形成することができる。ガスセンサが炭化水素を検出した場合にファンを作動させることができる。ファンの通気管は試験室の機関室の外側に延びるようにしてもよい。
【0017】
特に人工気候室などの試験室の断熱された試験空間内を空気調和する方法において、試験空間は周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有し、試験室の温度制御装置によって試験空間内に-40℃から+180℃の範囲の温度を発生させ、加熱装置を有する温度制御装置の冷却装置によって試験空間内で温度を生成し、冷媒、試験空間内に配置された熱交換器、圧縮機、凝縮器、及び膨張要素を有する冷却サイクルを備え、冷媒は、炭化水素または炭化水素で作られた混合冷媒であり、熱交換器の下流側且つ圧縮機の上流側で冷却サイクルに配置された停止要素によって、熱交換器内の冷媒の逆流が防止される。本発明に係る方法の有利な効果については、本発明に係る試験室の利点の説明を参照されたい。
【0018】
膨張要素は、温度制御装置の調節器によって閉鎖することができ、加熱装置によって試験空間内に+50℃から+180℃の温度を発生させることができる。したがって、調節器は、膨張要素を閉じて、熱交換器を通る冷媒の流れを止めるのに用いることができる。同時に、調節器は、試験空間内の温度を上昇させるように加熱装置に接続することができる。その場合、冷媒は流れ方向に逆らって熱交換器に逆流せずに熱交換器から漏れ続け得る。
【0019】
さらに、温度制御装置の調節器によって膨張要素を閉鎖し、温度制御装置の調節器によって圧縮機の運転を継続させることができる。前記と同様に、調節器は冷媒が熱交換器を流れるのを止めることができる。同時に、圧縮機の運転が継続されるようにすることができ、冷媒は、加熱される試験空間とは無関係に熱交換器から取り出されることになる。このようにして熱交換器内で冷媒の量を減少させることができ、熱交換器内での冷媒の逆流は停止要素によりもはや起こらなくなる。
【0020】
冷媒の圧力は、冷却サイクルにおいて、調節器の少なくとも1つの圧力センサによって、膨張要素の下流側且つ停止要素の上流側で測定することができ、測定された圧力の作用で圧縮機の運転を継続することができる。このようにして、熱交換器内の冷媒量をさらに減少させることができる。圧力センサを使用すると、熱交換器内の冷媒の圧力を測定及び/または監視することが可能になり、熱交換器の冷媒量が最小になるまで圧縮機を運転することができる。熱交換器に漏れが発生した場合、冷媒は最小限の量しか試験空間に流入しない。
【0021】
圧縮機は、圧力が1.5bar以下で且つ1barよりも高い範囲、好ましくは≦1.1bar以下で且つ1barより高い範囲にあるときにスイッチをオフに切り換えることができる。したがって、絶対圧で圧力が1barを下回らないようにすることができる。熱交換器及び/または冷却サイクルが密閉されていない場合、周囲及び/または試験空間から冷却サイクルに空気が吸引されるのを圧縮機の運転により防ぐことができる。冷却サイクル内で空気と冷媒が混合されると、冷却サイクル内で爆発しやすい混合物が形成されるおそれがある。
【0022】
冷却サイクルの低圧部で目標圧力に達すると、調節器によって圧縮機のスイッチをオフに切り換え、停止要素を閉鎖するようにしてもよい。圧縮機は、冷却サイクルの低圧部で目標圧力に達するまで運転することができ、冷媒が、目標圧力に達するまで低圧部の熱交換器から取り出される。停止要素を閉鎖することにより、熱交換器への冷媒の逆流が防止される。停止要素は、逆止弁または電磁弁とすることができる。
【0023】
本方法のさらに有利な実施形態は、装置の請求項1を引用する従属請求項の特徴の説明から導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態の冷却サイクルの概略図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の冷却サイクルの概略断面図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態の冷却サイクルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態をさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、空気調和用の試験室(図示せず)の冷却サイクル10を、試験室の試験空間11とともに示す。冷却サイクル10は冷媒が充填され、試験空間11に配置された熱交換器12と、圧縮機13と、凝縮器14と、膨張要素15とを有する。用いられる冷媒は可燃性で、炭化水素、または炭化水素で作られた混合冷媒である。冷媒は、冷却サイクル10の低圧部16で圧縮機13に吸入され、冷却サイクル10の高圧部17に送られる。この点に関し、冷媒は凝縮器14,貯蔵容器18及び膨張要素15を通って低圧部16へ戻る。冷媒は、膨張要素15を通過する際に膨張し、このようにして試験空間11内の熱交換器12を冷却する。
【0027】
さらに、冷却サイクル10は、高圧部17と低圧部16との間で延びる、第1電磁弁20を有する第1圧力補正管19を有する。第1圧力補正管19は、冷媒の流れ方向において、凝縮器14の下流側且つ膨張要素15の上流側と、熱交換器12の下流側且つ圧縮機13の上流側とに接続される。圧縮された冷媒及び/または凝縮器14で液化した冷媒は、第1圧力補正管を通じ、第1電磁弁20を用いて圧縮機13の上流側の高圧部17から供給することができる。例えば、冷媒を膨張要素15に流さずに圧縮機13の運転を継続することができる。少なくとも低圧部16の吸入圧力を調節できる。これは調節器(図示せず)を用いて行うことができる。さらに、第2電磁弁22を有する第2圧力補正管21が設けられている。第2圧力補正管21は、冷媒の流れ方向において直接に、圧縮機13の下流側且つ凝縮器14の上流側と、熱交換器12の下流側且つ凝縮器13の上流側とで、冷却サイクル10に接続されている。この第2圧力補正管21によって、圧縮された、すなわちまだガス状で比較的高温の冷媒を圧縮機13の上流側に還すことができる。圧力補正に加えて、圧縮機13の吸入圧力と冷媒の温度も圧縮機13の上流側で調節することができる。
【0028】
冷却サイクル10では、特に停止要素23が設けられており、この停止要素23は、冷却サイクル10において、冷媒の流れ方向で熱交換器12の下流側且つ圧縮機13の上流側に配置されている。また、停止要素23は、第1圧力補正管19及び第2圧力補正管21の上流側に配置されている。停止要素23により、冷却サイクル10を止めることが可能になり、熱交換器12において、冷媒の流れ方向に対する冷媒の逆流を回避できる。したがって、冷媒が流れ方向に逆らって熱交換器12へ流れることはない。このことは、試験空間11の温度が上昇し、膨張要素15が閉鎖された場合に特に有利である。このとき、熱交換器12は冷却されず、熱交換器12において冷媒の熱膨張は起こらない。さらに、冷媒を圧縮機13によって熱交換器12から吸入できるため、熱交換器12には比較的少量の冷媒しか存在しなくなる。試験空間11内で圧縮機13または冷却サイクル10からの漏れが発生した場合、ごくわずかの可燃性冷媒が試験空間11に流入するだけである。
【0029】
図2は、
図1の冷却サイクルとは異なり、逆止弁26として構成された停止要素25が設けられた冷却サイクル24を示す。冷媒は、膨張要素15を閉じた後、例えば試験空間11が加熱されたときの熱膨張の結果として、その流れ方向に逆止弁26を通って熱交換器12から流出することができ、熱交換器12への冷媒の逆流は逆止弁26によって阻止される。選択的に、圧縮機(図示せず)により熱交換器12のガス抜きをすること、及び/または熱交換器12内の圧力を、実質的に周囲圧力に対応するように、及び/またはそれより低下しない程度に下げることができる。
【0030】
図3は、停止要素28を有する冷却サイクル27を示す。
図1の冷却サイクルとは異なり、停止要素28は電磁弁29で構成されている。さらに、圧力逃し弁31を有するバイパス30が設けられている。バイパス30は、冷却サイクル27に、冷媒の流れ方向において、熱交換器12の下流側且つ電磁弁29の上流側と、電磁弁29の下流側且つ圧縮機(図示せず)の上流側とで接続されている。前述のように膨張要素15を閉じた後、熱交換器12の冷媒量を減少させることができる。その後、電磁弁29を閉じることができる。電磁弁29が故障した場合、電磁弁29を開くことができなくなって、膨張要素15の再度の開放後に多量の冷媒が熱交換器12に流入する可能性がある。この冷媒は、熱交換器12内の圧力が許容できないレベルまで上昇したときに、圧力逃し弁31を通じて排出及び/またはオーバーフローさせることができる。
【外国語明細書】