(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021068
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】フッ素含有芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20240207BHJP
C07C 25/13 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C25/13
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125256
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022123473
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 新吾
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆行
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB80
4H006AC30
4H006BC11
4H006BC31
4H006BE01
4H006EA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パーフルオロトルエン等のフッ素含有芳香族化合物を効率よく製造することができる新規な方法を提供する。
【解決手段】一般式(2):
[式中、nは1~5の整数を示す。X
3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
3
3において、3個のX
3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。X
4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]で表される化合物と、フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸とを反応させ、少なくとも、基-CX
3
3における1個以上のX
3をフッ素化した化合物を生成させる、フッ素含有芳香族化合物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
[式中、
X
1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
1
3において、3個のX
1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X
2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【化2】
[式中、
nは前記に同じである。
X
3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
3
3において、3個のX
3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X
4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸とを反応させ、少なくとも、基-CX
3
3における1個以上のX
3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させる工程
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記X1がいずれもフッ素原子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記n個のX4のうち、少なくとも1つはハロゲン原子である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が、前記フッ化水素及び前記塩基を混合して混合物を得た後に、前記混合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記フッ化水素以外の酸とを反応させる工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記フッ化水素以外の酸のpKaが-10~20である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記塩基が、アミン、ウレア、アミド、エーテル、エステル、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属、及びポリマーが担持されていてもよい水酸化アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(1A):
【化3】
[式中、
X
2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物と、
一般式(1B):
【化4】
[式中、
X
2及びnは前記に同じである。
X
1aは同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
1a
3において、3個のX
1aのうち1個又は2個がフッ素原子であり、残り2個又は1個が水素原子又はフッ素原子以外のハロゲン原子である。]
で表される化合物とを含有し、
組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、0.1~95.0モル%である、組成物。
【請求項8】
(1)前記n個のX2のうち、0~4個がハロゲン原子であり、且つ、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、40.0~95.0モル%である、及び
(2)前記n個のX2のうち、1~5個がハロゲン原子であり、且つ、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、0.1~15.0モル%である
のいずれかを満たす、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
エッチングガス、クリーニングガス、又はデポジットガスとして用いられる、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸を含有する、フッ素化剤。
【請求項11】
一般式(2):
【化5】
[式中、
X
3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
3
3において、3個のX
3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X
4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物のフッ素化剤である、請求項10に記載のフッ素化剤。
【請求項12】
一般式(1):
【化6】
[式中、
X
1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
1
3において、3個のX
1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X
2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【化7】
[式中、
nは前記に同じである。
X
3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX
3
3において、3個のX
3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X
4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
フッ化水素とを反応させ、少なくとも、基-CX
3
3における1個以上のX
3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させる工程
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素含有芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代エッチングガス等として期待されるパーフルオロトルエンの製造方法としては、例えば、フッ化水素と、特定の構造を有するウレア、アミド、エーテル、エステル、リン酸等とからなるフッ素化剤を用いて、ベンゾトリクロリドのフッ素化を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、パーフルオロトルエン等のフッ素含有芳香族化合物を効率よく製造することができる新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の構成を包含する。
【0006】
項1.一般式(1):
【0007】
【0008】
[式中、
X1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1
3において、3個のX1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【0009】
【0010】
[式中、
nは前記に同じである。
X3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸とを反応させ、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させる工程
を備える、製造方法。
【0011】
項2.前記X1がいずれもフッ素原子である、項1に記載の製造方法。
【0012】
項3.前記n個のX4のうち、少なくとも1つはハロゲン原子である、項1又は2に記載の製造方法。
【0013】
項4.前記反応が、前記フッ化水素及び前記塩基を混合して混合物を得た後に、前記混合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記フッ化水素以外の酸とを反応させる工程である、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【0014】
項5.前記フッ化水素以外の酸のpKaが-10~20である、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
項6.前記塩基が、アミン、ウレア、アミド、エーテル、エステル、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属、及びポリマーが担持されていてもよい水酸化アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【0016】
項6-1.前記塩基が、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含む、項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【0017】
項7.一般式(1A):
【0018】
【0019】
[式中、
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物と、
一般式(1B):
【0020】
【0021】
[式中、
X2及びnは前記に同じである。
X1aは同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1a
3において、3個のX1aのうち1個又は2個がフッ素原子であり、残り2個又は1個が水素原子又はフッ素原子以外のハロゲン原子である。]
で表される化合物とを含有し、
組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、0.1~95.0モル%である、組成物。
【0022】
項8.(1)前記n個のX2のうち、0~4個がハロゲン原子であり、且つ、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、40.0~95.0モル%である、及び
(2)前記n個のX2のうち、1~5個がハロゲン原子であり、且つ、前記一般式(1B)で表される化合物の含有量が、0.1~15.0モル%である
のいずれかを満たす、項7に記載の組成物。
【0023】
項9.エッチングガス、クリーニングガス、又はデポジットガスとして用いられる、項7又は8に記載の組成物。
【0024】
項10.フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸を含有する、フッ素化剤。
【0025】
項10-1.前記フッ化水素以外の酸のpKaが-10~20である、項10に記載のフッ素化剤。
【0026】
項10-2.前記塩基が、アミン、ウレア、アミド、エーテル、エステル、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属、及びポリマーが担持されていてもよい水酸化アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項10又は10-1に記載のフッ素化剤。
【0027】
項10-3.前記塩基が、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含む、項10~10-2のいずれか1項に記載のフッ素化剤。
【0028】
項11.一般式(2):
【0029】
【0030】
[式中、
X3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物のフッ素化剤である、項10~10-3のいずれか1項に記載のフッ素化剤。
【0031】
項12.一般式(1):
【0032】
【0033】
[式中、
X1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1
3において、3個のX1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【0034】
【0035】
[式中、
nは前記に同じである。
X3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
フッ化水素とを反応させ、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させる工程
を備える、製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本開示によれば、フッ素含有芳香族化合物を効率よく製造することができる新規な方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0038】
また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0039】
本開示において、「選択率」とは、反応器出口からの流出ガスにおける原料化合物以外の化合物の合計モル量に対する、当該流出ガスに含まれる目的化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0040】
本開示において、「転化率」とは、反応器に供給される原料化合物のモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる原料化合物以外の化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0041】
本開示において、「収率」とは、反応器に供給される原料化合物のモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる目的化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0042】
1.フッ素含有芳香族化合物の製造方法
本開示の製造方法は、
一般式(1):
【0043】
【0044】
[式中、
X1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1
3において、3個のX1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【0045】
【0046】
[式中、
nは前記に同じである。
X3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸とを反応させ、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させる工程
を備える。
【0047】
本開示の製造方法では、上記の方法のみに限定されることはなく、上記した一般式(2)で表される化合物と、フッ化水素とを反応させることによっても、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させることが可能である。つまり、塩基及びフッ化水素以外の酸のうち片方又は双方を使用しない場合においても、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化し、上記一般式(1)で表される化合物を生成させることが可能である。ただし、反応の安定性や取扱い性の観点からは、フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸を使用することが好ましい。
【0048】
(1-1)出発化合物(一般式(2))
本開示の製造方法において、一般式(2)で表される化合物は、一般式(2):
【0049】
【0050】
[式中、
X3は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X4は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物である。
【0051】
一般式(2)において、X3で示されるハロゲン原子としては、特に制限はなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、転化率、選択率、収率等の観点から、塩素原子が好ましい。
【0052】
X3は、水素原子であってもよいし、ハロゲン原子であってもよいが、X3のすべてが水素原子である場合は、反応はほとんど進行せず、温度を上昇させても目的物である一般式(1)で表される化合物はほとんど得られないし、X3のすべてがフッ素原子である場合は、既にフッ素化されており本開示の製造方法を採用する必要がないため、基-CX3
3において、3個のX3のうち少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子である。
【0053】
一般式(2)において、X4で示されるハロゲン原子としては、特に制限はなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、転化率、選択率、収率等の観点から、フッ素原子が好ましい。
【0054】
なお、n個のX4のうち、ハロゲン原子(特にフッ素原子)の個数が増えると、反応の転化率が低下しやすい傾向にある。本開示においては、それにも関わらず、フッ化水素以外の酸を使用することにより、転化率を高くすることが可能である。このため、n個のX4のうち、ハロゲン原子(特にフッ素原子)の個数が多いほど、本開示の製造方法を採用することによる効果が高い。このことから、n個のX4のうち、少なくとも1つはハロゲン原子であることが好ましい。例えば、nが5である場合は、5個のX4のうち、ハロゲン原子(特にフッ素原子)の数は、転化率、選択率、収率等の観点から、1~5個が好ましく、2~5個がより好ましく、3~5個がさらに好ましく、4~5個が特に好ましい。
【0055】
一般式(2)において、nは1~5の整数である。転化率、選択率、収率等の観点からは、nは、2~5の整数が好ましく、3~5の整数がより好ましく、4~5の整数がさらに好ましい。
【0056】
なお、X4の置換数であるnが5である場合、一般式(2)で表される化合物は、一般式(2A):
【0057】
【0058】
[式中、X3及びX4は前記に同じである。]
で表される化合物である。
【0059】
なお、本開示において基質として使用する一般式(2)で表される化合物は、ニトロ基を含んでいないことが好ましい。ニトロ基を有する化合物を基質として使用すると、基-CX3
3の反応性が極端に高く、副反応が進行する結果、目的物の選択率が低下しやすい。
【0060】
上記のような条件を満たす一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、
【0061】
【0062】
【0063】
等が挙げられる。
【0064】
上記の一般式(2)で表される化合物は、公知又は市販品を用いることができる。また、上記の一般式(2)で表される化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0065】
(1-2)反応
本開示の反応では、上記した一般式(2)で表される化合物において、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3がフッ素化され、上記一般式(1)で表される化合物が生成される。なかでも、上記した一般式(2)で表される化合物において、少なくとも、基-CX3
3における全てのX3がフッ素化され、X1がいずれもフッ素原子である上記一般式(1)で表される化合物が生成されやすい。
【0066】
この際、X4が水素原子又はフッ素原子である場合は、本開示の反応によっても変わらず残存する。つまり、X4が水素原子又はフッ素原子である場合は、X2も水素原子又はフッ素原子である。
【0067】
一方、X4がフッ素原子以外のハロゲン原子である場合は、本開示の反応によってフッ素化されやすい。つまり、X4がフッ素原子以外のハロゲン原子である場合は、X2はフッ素原子となりやすい。
【0068】
以上から、本開示の反応では、上記した一般式(2)で表される化合物において、X4がフッ素原子以外のハロゲン原子を含んでいる場合は、1個以上のX4で示されるフッ素原子以外のハロゲン原子もフッ素化され、上記一般式(1)で表される化合物が生成されやすい。なかでも、上記した一般式(2)で表される化合物において、X4がフッ素原子以外のハロゲン原子を含んでいる場合は、全てのX4がフッ素化され、X2がいずれもフッ素原子である上記一般式(1)で表される化合物が生成されやすい。
【0069】
一方、上記した一般式(2)で表される化合物において、X4が水素原子又はフッ素原子を含んでいる場合は、当該水素原子又はフッ素原子は、本開示の反応によっても、変わらず残存する。
【0070】
この結果、一般式(1)で表される化合物が得られる。
【0071】
(1-3)フッ化水素
本開示の製造方法で使用するフッ化水素は、気体状のフッ化水素であってもよいし、液体状のフッ化水素であってもよいし、水溶液(フッ化水素酸)であってもよい。なかでも、生産性、腐食性等の観点から、気体状のフッ化水素が好ましい。なお、液体状のフッ化水素又は水溶液(フッ化水素酸)を使用する場合は、当該フッ化水素を溶媒として使用することも可能である。
【0072】
フッ化水素は、公知又は市販品を用いることができる。
【0073】
本開示の製造方法で使用するフッ化水素の使用量は、特に制限されるわけではないが、転化率、選択率、収率等の観点から、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、1~100モルが好ましく、10~50モルがより好ましく、15~25モルがさらに好ましい。
【0074】
(1-4)塩基
塩基としては、特に制限されるわけではなく、例えば、アミン、ウレア、アミド、エーテル、エステル、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属、ポリマーが担持されていてもよい水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。
【0075】
アミンとしては、例えば、脂肪族アミン(脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン)、脂環式アミン(脂環式第二級アミン、脂環式第三級アミン)、芳香族アミン(芳香族第一級アミン、芳香族第二級アミン、芳香族第三級アミン)、
複素環式アミン、ポリマー担持アミン(ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン等)等が挙げられる。
【0076】
脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。
【0077】
脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ(n-プロピル)アミン、ジイソプロピルアミン、ジ(n-ブチル)アミン、ジイソブチルアミン、ジ(sec-ブチル)アミン、ジ(tert-ブチルアミン)、ジ(n-ペンチル)アミン、ジ(n-ヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0078】
脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0079】
脂環式第二級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0080】
脂環式第三級アミンとしては、例えば、N-メチルピペラジン、N-メチルピロリジン、5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0081】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ハロアニリン、ニトロアニリン等が挙げられる。
【0082】
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、イミダゾール等が挙げられる。
【0083】
ウレアしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1.3-ジ(n-プロピル)-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(n-ブチル)-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N,N’-ジエチルプロピレンウレア、N,N’-ジ(n-プロピル)プロピレンウレア、N,N’-ジ(n-ブチル)プロピレンウレア等が挙げられる。
【0084】
アミドとしては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0085】
エーテルとしては、例えば、ジ(n-ブチル)エーテル、ジ(n-ヘキシルエーテル)、アニソール、フェネトール、n-ブチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、2-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0086】
エステルとしては、例えば、酢酸n-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソペンチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0087】
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
【0088】
アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0089】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムn-ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等が挙げられる。
【0090】
アルカリ金属水素化物としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等が挙げられる。
【0091】
アルカリ土類金属水素化物としては、例えば、水素化カルシウム等が挙げられる。
【0092】
アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、マグネシウムオキシド、カルシウムオキシド等が挙げられる。
【0093】
アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
【0094】
ポリマーが担持されていてもよい水酸化アンモニウム塩としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ(n-ブチル)アンモニウム、水酸化(n-オクチル)トリエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、アンバーライト樹脂等が挙げられる。
【0095】
これらの塩基は、公知又は市販品を用いることができる。また、塩基は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、転化率、選択率、収率等の観点から、アミンが好ましく、脂肪族アミン、複素環式アミン等がより好ましく、脂肪族第三級アミン、複素環式アミン等がさらに好ましい。なお、液体状の塩基又は水溶液を使用する場合は、当該塩基を溶媒として使用することも可能である。
【0096】
本開示の製造方法で使用する塩基の使用量は、特に制限されるわけではないが、転化率、選択率、収率等の観点から、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、1~100モルが好ましく、10~50モルがより好ましく、15~25モルがさらに好ましい。
【0097】
(1-5)フッ化水素以外の酸
本開示の製造方法で使用できるフッ化水素以外の酸は、特に制限されるわけではないが、転化率、選択率、収率等の観点から、pKaが-10~20であることが好ましく、-7.5~15であることがより好ましく、-5~10であることがさらに好ましい。
【0098】
このようなフッ化水素酸以外の酸としては、例えば、スルホン酸化合物(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)、カルボン酸化合物(トリフルオロ酢酸等)等の有機酸の他、リン酸等の無機酸も使用することができる。なかでも、転化率、選択率、収率等の観点から、有機酸が好ましく、スルホン酸化合物がより好ましい。
【0099】
これらのフッ化水素以外の酸は、公知又は市販品を用いることができる。また、上記のフッ化水素以外の酸は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なお、液体状のフッ化水素以外の酸又は水溶液を使用する場合は、当該フッ化水素以外の酸を溶媒として使用することも可能である。
【0100】
本開示の反応において、フッ化水素以外の酸の使用量は、特に制限されないが、転化率、選択率、収率等の観点から、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、1~100モルが好ましく、10~50モルがより好ましく、15~25モルがさらに好ましい。なお、フッ化水素以外の酸を複数使用する場合は、その合計量を上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0101】
(1-6)反応温度
本開示の反応では、反応温度は、特に制限されないが、転化率、選択率、収率等の観点から、通常50~250℃が好ましく、100~200℃がより好ましく、125~175℃がさらに好ましい。
【0102】
(1-7)反応時間
本開示の反応の反応時間(最高到達温度における維持時間)は反応が十分に進行する程度とすることができ、転化率、選択率、収率等の観点から、1分~48時間が好ましく、5分~24時間がより好ましい。なお、本開示の反応を気相、特に気相流通連続式で行う場合は、原料化合物(一般式(2)で表される化合)の触媒(フッ化水素以外の酸)に対する接触時間(W/F)[W:触媒の重量(g)、F:原料化合物(オクタフルオロブテン)の流量(cc/sec)]は、1~100が好ましく、5~75がより好ましく、10~50がさらに好ましい。
【0103】
(1-8)反応圧力
本開示の反応の反応圧力は、特に制限されないが、転化率、選択率、収率等の観点から、-2.0~2.0MPaが好ましく、-1.0~1.0MPaがより好ましく、-0.5~0.5MPaがさらに好ましい。なお、本開示において、圧力については特に表記が無い場合はゲージ圧とする。
【0104】
本開示の反応において、採用できる反応器としては、上記温度及び圧力に耐え得るものであれば、形状及び構造は特に限定されない。反応器としては、例えば、縦型反応器、横型反応器、多管型反応器等が挙げられる。反応器の材質としては、例えば、ガラス、ステンレス、鉄、ニッケル、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
【0105】
(1-9)反応の例示
この本開示の反応は、反応器中に原料を一括して仕込むバッチ式と、原料を反応器中に連続して供給しながら生成物を反応器から抜き出す流通式のいずれの方式でも採用できる。
【0106】
また、上記した本開示の反応は、液相で行うこともできるし、気相で行うこともできる。なかでも、設備価格、生産性等の観点から、液相で行うことが好ましい。
【0107】
また、本開示の反応は、一般式(2)で表される化合物、フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸を、同時に添加することもできるし、逐次的に添加することもできる。また、一部の成分を前もって反応させた後に、残りの成分を反応させることもできる。なかでも、ハンドリング性の観点から、フッ化水素及び塩基をあらかじめ混合(反応)させてフッ化水素及び塩基の混合物を製造した後に、前記混合物と、一般式(2)で表される化合物と、フッ化水素以外の酸とを反応させることが好ましい。なお、フッ化水素及び塩基を混合させて得られる混合物は、ハンドリング性の観点から、フッ化水素及び塩基が結合して一体となった複合体であることが好ましい。また、上記のとおり、本開示の反応は、一般式(2)で表される化合物及びフッ化水素を、添加することで反応を進行させることも可能である。
【0108】
ただし、フッ化水素単独ではその沸点の低さ(沸点20℃)から通常取り扱う条件では気体となり、フッ化水素の毒性の高さも相まってハンドリングがしにくく、工業スケールではフッ化水素は単独使用しにくい。一方、複合体とすることにより沸点を上げることが出来、通常取り扱う条件で液体とすることができるため、ハンドリングがしやすく工業スケールでの取り扱いもしやすい。さらに、複合体を用いたほうが、実施例にもあるようにその他不純物の量を減らしやすく、リサイクル不可能な不純物を減らしやすいため価格の面からも有利となる。
【0109】
以上から、本開示の製造方法で使用できる、フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸は、フッ素化剤、特に、一般式(2)で表される化合物のフッ素化剤として使用することが可能である。この本開示のフッ素化剤においては、本開示のフッ素化剤の総量を100モル%として、フッ化水素の含有量を0.1~99モル%(好ましくは1~90モル%)、塩基の含有量を0.1~99モル%(好ましくは1~90モル%)、フッ化水素以外の酸の含有量を0.1~99モル%(好ましくは1~90モル%)とすることが好ましい。
【0110】
本開示の反応を行う際の雰囲気については、一般式(2)で表される化合物、フッ化水素、塩基及びフッ化水素以外の酸の劣化を抑制する点から、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0111】
当該不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらの不活性ガスのなかでも、コストを抑える観点から、窒素が好ましい。
【0112】
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0113】
(1-10)目的化合物(一般式(1))
このようにして生成される目的化合物は、一般式(1):
【0114】
【0115】
[式中、
X1は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1
3において、3個のX1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物である。
【0116】
一般式(1)において、X1で示されるハロゲン原子としては、特に制限はなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0117】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)で表される化合物のうち、少なくとも、基-CX3
3における1個以上のX3をフッ素化したものであるため、基-CX1
3において、3個のX1のうち少なくとも1つはフッ素原子である。
【0118】
また、一般式(1)において、X2で示されるハロゲン原子としては、特に制限はなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なお、一般式(2)で表される化合物において、X4が水素原子又はフッ素原子である場合は、一般式(1)で表される化合物においても、そのままX2が水素原子又はフッ素原子である。一方、一般式(2)で表される化合物において、X4がフッ素原子以外のハロゲン原子である場合は、一般式(1)で表される化合物においても、そのままX2がフッ素原子以外のハロゲン原子となる場合もあるし、フッ素化されてX2がフッ素原子となる場合もある。
【0119】
一般式(1)において、nは、一般式(2)と同様に、1~5の整数であり、2~5の整数が好ましく、3~5の整数がより好ましく、4~5の整数がさらに好ましい。
【0120】
以上から、本開示で生成される目的化合物である一般式(1)で表される化合物は、具体的には、
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
等が挙げられる。
【0126】
2.組成物
以上のようにして、一般式(1)で表される化合物を得ることができるが、一般式(1)で表される化合物として、一般式(1A):
【0127】
【0128】
[式中、
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物と、
一般式(1B):
【0129】
【0130】
[式中、
X1aは同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。ただし、基-CX1a
3において、3個のX1aのうち1個又は2個がフッ素原子であり、残り2個又は1個が水素原子又はフッ素原子以外のハロゲン原子である。
X2は同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
nは1~5の整数を示す。]
で表される化合物との双方を含む組成物の形で得られることもある。
【0131】
一般式(1A)及び(1B)において、X1、X2及びnは上記したものを採用できる。好ましい具体例も同様である。
【0132】
このため、一般式(1A)で表される化合物としては、例えば、
【0133】
【0134】
【0135】
等が挙げられる。
【0136】
また、一般式(1B)で表される化合物としては、例えば、
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
等が挙げられる。
【0141】
本開示の組成物において、一般式(1A)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、1.0~99.9モル%、特に5.0~99.5モル%、さらには8.0~99.0モル%とすることができる。
【0142】
本開示の組成物において、一般式(1B)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、0.1~95.0モル%、特に0.5~94.0モル%、さらには1.0~92.0モル%とすることができる。
【0143】
なお、n個のX2のうち、0~4個がハロゲン原子である場合は、一般式(1A)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、1.0~60.0モル%、特に5.0~40.0モル%、さらには8.0~20.0モル%とすることができる。
【0144】
また、n個のX2のうち、0~4個がハロゲン原子である場合は、一般式(1B)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、40.0~95.0モル%、特に60.0~94.0モル%、さらには80.0~92.0モル%とすることができる。
【0145】
また、n個のX2のうち、1~5個がハロゲン原子である場合は、一般式(1A)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、80.0~99.9モル%、特に81.0~99.5モル%、さらには82.0~99.0モル%とすることができる。
【0146】
また、n個のX2のうち、0~4個がハロゲン原子である場合は、一般式(1B)で表される化合物の含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、0.1~15.0モル%、特に0.5~14.5モル%、さらには1.0~14.0モル%とすることができる。
【0147】
本開示の組成物においては、一般式(1A)で表される化合物及び一般式(1B)で表される化合物の合計含有量は、本開示の組成物の総量を100モル%として、90.0~100モル%、特に93.0~99.9モル%、さらには95.0~99.8モル%とすることができる。
【0148】
このような本開示の組成物は、エッチングガス、クリーニングガス、デポジットガス等の各種用途に有効利用できる。
【0149】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。
【実施例0150】
以下に実施例を示し、本開示の特徴を明確にする。本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0151】
実施例及び比較例においては、基質としては、
【0152】
【0153】
を使用し、nが5であるペンタフルオロベンゾトリクロリド、nが2である2,4-ジフルオロベンゾトリクロリド、nが0であるベンゾトリクロリドを使用した。
【0154】
なお、以下の実施例及び比較例においては、フッ化水素とアミンとの複合物として、フッ化水素-トリエチルアミン複合体(フッ化水素:トリエチルアミン=1:3(モル比))及びフッ化水素-ピリジン複合体(フッ化水素:トリエチルアミン=1:9(モル比))を使用した。なお、フッ化水素-トリエチルアミン複合体はトリエチルアミンにフッ化水素を吹き込むことにより製造し、フッ化水素-ピリジン複合体はピリジンにフッ化水素を吹き込むことにより製造した。
【0155】
実施例1~15及び比較例1~5
SUS製反応器に、表1~4に示す基質(1g,0.005mol)と、フッ化水素-トリエチルアミン複合体(10g,0.06mol)、フッ化水素-ピリジン複合体(5g,0.02mol)又は無水フッ化水素(10g,0.5mol)と、表1~4に示す酸(0.0005mol,基質のモル数に対して10mol%)とを添加し、反応器の蓋を閉め、表1~5に示す温度まで加熱し、24時間反応を進行させた。ただし、実施例16~17では、塩基及びフッ化水素以外の酸は使用していない。
【0156】
反応終了後、ガスクロマトグラフィー、GCMS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)にて質量分析を行い、NMR(核磁気共鳴)を用いて構造解析を行った。
【0157】
質量分析及び構造解析の結果から、目的物として、基質としてnが5であるペンタフルオロベンゾトリクロリドを用いた場合はペンタフルオロトリフルオリドが確認でき、基質としてnが2である2,4-ジフルオロベンゾトリクロリドを用いた場合は2,4-ジフルオロベンゾトリフルオリドが確認でき、基質としてnが0であるベンゾトリクロリドを用いた場合はベンゾトリフルオリドが確認できた。
【0158】
結果を表1~5に示す。
【0159】
また、表1~5において、「トリフルオロ」は、基質が有するトリクロロメチル基における全ての塩素原子がフッ素化されてトリフルオロメチル基となった化合物を意味し、「ジフルオロ」は、基質が有するトリクロロメチル基における2個の塩素原子がフッ素化されてクロロジフルオロメチル基となった化合物を意味し、「モノフルオロ」は、基質が有するトリクロロメチル基における1個の塩素原子がフッ素化されてジクロロモノフルオロメチル基となった化合物を意味する。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】