(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021069
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】多層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240207BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240207BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240207BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240207BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20240207BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36 102
B32B7/06
C09J7/38
C09J7/22
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125319
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022123041
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】石井 太樹
(72)【発明者】
【氏名】木稲 圭佑
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AK03C
4F100AK03E
4F100AK42C
4F100AK42E
4F100AK45A
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CB05B
4F100CB05D
4F100DD07B
4F100DD07C
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA07
4F100JK07
4F100JL04
4F100JL13B
4F100JL13D
4F100JL14B
4F100JL14D
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00C
4J004AA07
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
(57)【要約】
【課題】 薄いポリカーボネートフィルムの表面に粘着層を有する保護フィルムを有する多層体であって、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生しにくい多層体の提供。
【解決手段】 厚み20~75μmのポリカーボネートフィルムと、ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムとを有する多層体であって、保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、樹脂を含む層とを有し、粘着層が前記ポリカーボネートフィルムと接しており、かつ、多層体から、ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりMaが、0.01~0.12μmである、多層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み20~75μmのポリカーボネートフィルムと、
前記ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムとを有する多層体であって、
前記保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、樹脂を含む層とを有し、
前記粘着層が前記ポリカーボネートフィルムと接しており、かつ、
前記多層体から、前記ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりMaが、0.01~0.12μmである、多層体。
【請求項2】
前記ポリカーボネートフィルムの厚みが67μm未満である、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記樹脂を含む層が、ポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項4】
前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記樹脂を含む層は、それぞれ、ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項5】
前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記ポリカーボネートフィルムの一方の面上の樹脂を含む層は、ポリオレフィン樹脂を含み、前記ポリカーボネートフィルムの他方の面上の樹脂を含む層は、ポリエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項6】
前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記樹脂を含む層は、それぞれ、ポリエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項7】
前記樹脂を含む層の表面の点状欠陥の数が2000個/m2以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項8】
下記条件(1)および(2)のいずれか一方を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の多層体。
(1)多層体の引張弾性率が1800MPa以上;
(2)多層体の引張弾性率が1800MPa未満、かつ、前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが0.15μm以上。
【請求項9】
前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項10】
前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項11】
ヘイズが30%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項12】
ヘイズが10%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項13】
前記ポリカーボネートフィルムが、示差走査熱量測定(DSC)で測定したガラス転移温度が115~142℃である、請求項1~12のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項14】
前記ポリカーボネートフィルムが、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の多層体。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【請求項15】
芯材と、前記芯材に巻き取った請求項1~13のいずれか1項に記載の多層体を有する、巻取体。
【請求項16】
前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、請求項15に記載の巻取体。
【請求項17】
前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、請求項15または16に記載の巻取体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層体に関する。特に、薄いポリカーボネートフィルムと、保護フィルムを有する多層体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用途のフィルムロール等を製造する為、粘着層を有する保護フィルムをポリカーボネートフィルムに積層して巻き上げることが行われている。すなわち、光学用途の平坦なポリカーボネートフィルムに、粘着層を有する保護フィルムを貼り付けて積層し、その表面を保護すると同時に、保護フィルムの反対側の面は適度に粗面化されていて滑りやすい構造(摺動性を有するもの)とし、このフィルムを積層した多層体をロール状に巻き上げることができるようにしている。
このような多層体は、例えば、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、多層体の保護フィルムに摺動性を持たせるために、表面に凹凸を付与すると、ポリカーボネートフィルムの厚みが薄い場合には、各層を積層してロールを通過させ、貼り合わせる際の条件(例えば、貼り合わせのロールの圧力等)やその後の保存状態等によっては、最表層の凹凸がポリカーボネートフィルムに追従されてしまい、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生してしまうことが分かった。
本発明は、上記課題を解決することを目的とするものであって、薄いポリカーボネートフィルムの表面に粘着層を有する保護フィルムを有する多層体であって、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生しにくい多層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、多層体から保護フィルムを剥がしたときに、ポリカーボネートフィルムに接している側の粘着層の表面が所定のうねりを有するように調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>厚み20~75μmのポリカーボネートフィルムと、
前記ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムとを有する多層体であって、
前記保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、樹脂を含む層とを有し、
前記粘着層が前記ポリカーボネートフィルムと接しており、かつ、
前記多層体から、前記ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりMaが、0.01~0.12μmである、多層体。
<2>前記ポリカーボネートフィルムの厚みが67μm未満である、<1>に記載の多層体。
<3>前記樹脂を含む層が、ポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂を含む、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記樹脂を含む層は、それぞれ、ポリオレフィン樹脂を含む、<1>または<2>に記載の多層体。
<5>前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記ポリカーボネートフィルムの一方の面上の樹脂を含む層は、ポリオレフィン樹脂を含み、前記ポリカーボネートフィルムの他方の面上の樹脂を含む層は、ポリエステル樹脂を含む、<1>または<2>に記載の多層体。
<6>前記多層体は、前記ポリカーボネートフィルムの両面上に、それぞれ、前記保護フィルムを含み、
前記樹脂を含む層は、それぞれ、ポリエステル樹脂を含む、<1>または<2に記載の多層体。
<7>前記樹脂を含む層の表面の点状欠陥の数が2000個/m
2以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体。
<8>下記条件(1)および(2)のいずれか一方を満たす、<1>~<7>のいずれか1つに記載の多層体。
(1)多層体の引張弾性率が1800MPa以上;
(2)多層体の引張弾性率が1800MPa未満、かつ、前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが0.15μm以上。
<9>前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<10>前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<11>ヘイズが30%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の多層体。
<12>ヘイズが10%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の多層体。
<13>前記ポリカーボネートフィルムが、示差走査熱量測定(DSC)で測定したガラス転移温度が115~142℃である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の多層体。
<14>前記ポリカーボネートフィルムが、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートを含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の多層体。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
<15>芯材と、前記芯材に巻き取った<1>~<13>のいずれか1つに記載の多層体を有する、巻取体。
<16>前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、<15>に記載の巻取体。
<17>前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、<15>または<16>に記載の巻取体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、薄いポリカーボネートフィルムの表面に粘着層を有する保護フィルムを有する多層体であって、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生しにくい多層体を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態の多層体の一例の層構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、フィルムにおけるうねりと粗さの違いを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における多層体は、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の多層体は、厚み20~75μmのポリカーボネートフィルムと、前記ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムとを有する多層体であって、前記保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、さらに、樹脂を含む層とを有し、前記粘着層が前記ポリカーボネートフィルムと接しており、かつ、前記多層体から、前記ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除く凹凸の算術平均うねりMaが、0~0.12μmであることを特徴とする。
本実施形態においては、粘着層のMaを上記範囲とすることにより、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生してしまうのを効果的に抑制できる。
【0010】
本発明者が検討を行ったところ、ゆず肌が発生するのは、ポリカーボネートフィルムが薄いことが原因であることが分かった。この点について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の多層体の一例の層構成を示す概略図であって、1は多層体を、2はポリカーボネートフィルムを、3は保護フィルムを、4は粘着層を、5は樹脂を含む層(以下、「樹脂層」ということがある)を示している。すなわち、保護フィルム3は、ポリカーボネートフィルム2と剥離可能な粘着層4と、樹脂層5を有している。各層の縮尺度合いは必ずしも整合しているものではない。
図1に示す態様においては、ポリカーボネートフィルム2の使用時には、
図1に示す矢印の界面で、保護フィルム3が剥離される。また、本実施形態においては、これらの層以外の層を含んでいてもよい。
図1に示すような多層体においては、樹脂層5が最表層となっているが、最表層は、多層体に摺動性を持たせるために、表面に粗さ(凹凸)を付与することが一般的である。
保護フィルム3は、ポリカーボネートフィルム2と積層する前に、粘着層4と樹脂層5が接する形で芯材に巻き取られており、その際に、樹脂層5の凹凸が粘着層4に転写する。ポリカーボネートフィルム2の厚みが薄いと、ポリカーボネートフィルム2と保護フィルム3を貼り合わせる際に、粘着層4の凹凸がポリカーボネートフィルム2に追従されてしまい、ゆず肌が発生してしまう場合があることが分かった。また、芯材に巻き取る場合にも、粘着層4の凹凸がポリカーボネートフィルム2に追随する場合があることが分かった。
さらに、ポリカーボネートフィルム2と保護フィルム3を貼り合わせ直後には、ゆず肌が発生していなくても、経時によりゆず肌が発生してしまう場合もあることが分かった。すなわち、粘着層4は、通常、柔らかいため、ポリカーボネートフィルム2と保護フィルム3を貼り合わせた直後は影響が少ない。しかしながら、経時により、薄いポリカーボネートフィルム2のクリープ現象により、ゆず肌が発生しやすくなる。また、多層体の保管条件などによってもゆず肌が出やすくなる場合があることが分かった。特に、多層体を比較的高めの温度で保管するとゆず肌が出やすいことが分かった。
一方、ポリカーボネートフィルムの厚みが一定以上ある場合には、ゆず肌の問題が格段に起こりにくいことが分かった。これは、ポリカーボネートフィルムの厚みが厚くなると剛性が高くなることにより、上記のような影響を受けにくくなることが理由と推測された。
【0011】
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、ゆず肌には、粘着層のうねりが影響していることを見出した。すなわち、多層体1から、ポリカーボネートフィルム2を剥離したときの、粘着層4における、表面の算術平均うねりMa、特に、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除く凹凸の算術平均うねりMaを調整することにより、ポリカーボネートフィルム2の表面にゆず肌が発生することを効果的に抑制しうることを見出した。この理由としては、ゆず肌は、主に目視により確認できる凹凸であり、例えば、大きなうねりやRaで示されるような小さな凹凸、小さなうねりは影響が小さいためであると推測された。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<厚み20~75μmのポリカーボネートフィルム>
本実施形態で用いるポリカーボネートフィルムは、厚みが20~75μmのフィルムである。このような厚みの薄いポリカーボネートフィルムを用いると、種々の理由・状況により、ポリカーボネートフィルムと、粘着層および樹脂層を有する保護フィルムを、粘着層側で貼り合わせた後、保護フィルムを剥がしたときに、ゆず肌が認められていた。本実施形態では、薄いポリカーボネートフィルムを用いても、この点を回避できる点で有益である。
前記ポリカーボネートフィルムの厚みは、25μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることが一層好ましく、45μm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、多層体の巻取り性がより向上する傾向にある。また、前記ポリカーボネートフィルムの厚みは、70μm以下であることが好ましく、67μm未満であることがより好ましく、65μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが一層好ましく、55μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱成形性が向上する傾向にある。
本実施形態におけるポリカーボネートフィルムの厚みは、任意の5点の平均厚みを意味する。また、本実施形態におけるポリカーボネートフィルムは、その厚みが全領域において、平均厚みの±20%以内であることが好ましく、平均厚みの±10%以内であることがより好ましく、平均厚みの±5%以内であることがさらに好ましい。粘着層の厚み等、他の厚みについても同様である。
【0013】
本実施形態で用いるポリカーボネートフィルムは、ポリカーボネートを含む。本実施形態においては、ポリカーボネートは、ビスフェノール型ポリカーボネートであることが好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネートであることがより好ましい。
【0014】
ビスフェノールA型ポリカーボネートは、また、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態におけるビスフェノール型ポリカーボネートは、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位が、末端構造を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0015】
ビスフェノールA型ポリカーボネートの製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0016】
本実施形態においては、ポリカーボネートフィルムが、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートを含むことが好ましい。
【化2】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【0017】
R1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表し、炭素数10以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数12以上のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましく、さらに炭素数14以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。これにより樹脂のガラス転移温度をより低くし、多層体の熱曲げ性を向上させることができる。また、R1は、炭素数22以下のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数18以下のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。これにより、他の樹脂との相溶性が向上する傾向にある。R1は、アルキル基であることが好ましい。アルキル基およびアルケニル基は、直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。
本実施形態では、R1は、特に、ヘキサデシル基であることが好ましい。
また、R1は、メタ位、パラ位、オルト位のいずれに位置していてもよいが、メタ位またはパラ位に位置していることが好ましく、パラ位に位置していることがより好ましい。
【0018】
R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、または、フェニル基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子またはメチル基であることがより好ましい。
nは0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0019】
式(1)で表される末端構造は、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル等の末端封止剤を用いることによって、ポリカーボネートに付加することができる。これらの詳細は、特開2019-002023号公報の段落0022~0030の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造のポリカーボネートは、式(1)で表される末端構造が1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートは、すべての末端構造が式(1)で表される末端構造ではない場合もある。通常は、本実施形態で用いるポリカーボネートの末端構造の80%以上(好ましくは90%以上)が式(1)で表される末端構造である。
【0020】
本実施形態においては、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートは、ビスフェノール型ポリカーボネートであることが好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネートであることがより好ましい。また、ビスフェノール型ポリカーボネートの50質量%以上が式(1)で表される末端構造を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0021】
ビスフェノールA型ポリカーボネートは、また、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態におけるビスフェノール型ポリカーボネートは、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位が、末端構造を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態で用いるポリカーボネートの粘度平均分子量は、17,000~40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が17,000以上であることにより、折れ曲がりに強くすることが可能になり、耐屈曲性に優れた多層体が得られる。また、粘度平均分子量が40,000以下であることにより、前記上限値以下とすることにより、押出成形時のトルク上昇を抑える効果がより向上する傾向にある。
前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、20,000以上であることがより好ましく、22,000以上であることがさらに好ましく、24,000以上であることが一層好ましい。また、前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、38,000以下であることがより好ましく、さらには、35,000以下、特には30,000未満であってもよく、より特には28,000以下であってもよい。特に、粘度平均分子量を30,000未満、さらには28,000以下とすることにより、ポリカーボネートの粘度が低くなり、フィルター透過性が向上する傾向にある。フィルター透過性が向上すると、フィルム中の異物を少なくすることができる。
ポリカーボネートの粘度平均分子量は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0023】
本実施形態で用いるポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、155℃以下であることが好ましく、152℃以下であることがより好ましく、142℃以下であることがさらに好ましく、138℃以下であることが一層好ましく、132℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の熱曲げ成形性がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、115℃以上であることが好ましく、122℃以上であることがより好ましく、126℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、湿熱試験、高温試験などの耐環境試験の耐久性がより向上する傾向にある。
ガラス転移温度(Tg)は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0024】
本実施形態で用いるポリカーボネートフィルムは、ポリカーボネートをフィルムの90質量%以上の割合で含むことが好ましく、95質量%以上の割合で含むことがより好ましく、98質量%以上の割合で含むことが一層好ましく、また、100質量%以下であってもよい。
【0025】
本実施形態で用いるポリカーボネートフィルムは、ポリカーボネート以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、近赤外線遮蔽剤、光拡散剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの総量は、ポリカーボネートフィルム中、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~2質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態で用いるポリカーボネートフィルムは、フィルム成形時の残留応力を開放するために、保護フィルムとの積層前にアニール処理していてもよい。アニール処理方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。アニール処理したポリカーボネートフィルムを積層することにより、積層後の加熱工程における反りや剥がれを効果的に抑制することができる。
【0027】
<保護フィルム>
本実施形態の多層体は、ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムを含む。保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムの一方の表面に設けられていてもよいし、両方の表面に設けられていてもよい。本実施形態においては、ポリカーボネートフィルムの両面に保護フィルムを設けることが好ましい。ポリカーボネートフィルムの両面に保護フィルムを設ける場合、それぞれの保護フィルムは同一であっても異なっていてもよい。
前記保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、樹脂層を有する。以下、これらの層について説明する。
【0028】
<<粘着層>>
本実施形態の多層体は、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層を有する。粘着層は、通常、ポリカーボネートフィルムに接して設けられており、ポリカーボネートフィルムから剥離可能である。
本実施形態においては、多層体から、ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりMaが、0~0.12μmである。このような構成とすることにより、薄いポリカーボネートフィルムの表面に粘着層を有する保護フィルムを有する多層体であって、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生しにくい多層体とすることができる。ここで、算術平均うねりMaとは、平均面に対するうねりの絶対値の平均値を意味する。算術平均うねりとしては、算術平均うねりWaが知られているが、これは、平均線に対するうねりの絶対値の平均値であり、平均面に対するうねりとは異なるものである。ここで、うねりについて、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、フィルムにおけるうねりと粗さの違いを説明するための概略図であって、寸法尺度などは必ずしも正しいものではない。
図2において、20はフィルムの断面から見た場合の表面の凹凸を示しているとする。このフィルムの凹凸20は、粗さ曲線21とうねり曲線22に大きく分けられる。粗さ曲線21は、細かい表面の凹凸を示すものであるのに対し、うねり曲線22は、大きな凹凸を示すものである。本実施形態においては、ポリカーボネートフィルムから剥離した粘着層の、粗さ曲線21ではなく、うねり曲線22が所定の値とすることによって、ゆず肌の発生を効果的に抑制できることを見出したものである。特に、本発明者が検討を行った結果、ガウシアンフィルタを用いてうねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを分離した算術平均うねりMa(以下、単に、「算術平均うねりMa」ということがある)を所定の範囲に調整することによって、ゆず肌の発生を抑制できることを見出したものである。ここで、うねり幅とは、うねりの基準面に対する凸部の幅を意味し、例えば、
図2における符号23で示される矢印間の長さを意味する。
すなわち、ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方の表面に設けられた保護フィルムを有する多層体において、ポリカーボネートフィルムの厚みが薄いと、各層を積層してロールと通過させ貼り合わせる際の条件(例えば、貼り合わせのロールの圧力)等によっては、最表層の凹凸がポリカーボネートフィルムに追従されてしまい、ゆず肌が発生してしまうことがある。本実施形態では、ポリカーボネートフィルムを剥離したときの粘着層の算術平均うねりを所定の範囲とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0029】
前記ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりMaは、0.12μm以下であり、0.11μm以下であることが好ましく、0.09μm以下であることがさらに好ましく、0.07μm以下であることが一層好ましく、0.06μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ゆず肌の発生を抑える効果がより向上する傾向にある。前記算術平均うねりMaは、0μm以上であり、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましく、0.04μm以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、多層体の摺動性がより向上する傾向にある。
このような算術平均うねりMaは、例えば、多層体のうねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaを大きくすることによって達成される。
前記算術平均うねりMaは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0030】
粘着層の素材は、ポリカーボネートフィルムと剥離可能であれば、特に定めるものではなく、公知の粘着層を用いることができる。
粘着剤の種類は、特に制限はないが、ポリオレフィン粘着剤、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤およびウレタン粘着剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0031】
ポリオレフィン粘着剤は、ポリプロピレン系粘着剤(ホモポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンとブテンとプロピレンとの3元共重合体)等が例示される。
ポリオレフィン粘着剤は、ポリオレフィン系樹脂を含む粘着剤であり、具体例として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレンであるノバテック(LC522)、東ソー株式会社製のエチレン酢酸ビニル共重合体であるウルトラセン(750)等が挙げられる。
アクリル粘着剤は、アクリル系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、DIC社製のファインタック(CT-3088、CT-3850、CT-6030、CT-5020、CT-5030)、クイックマスター(SPS-900-IV、クイックマスターSPS-1040NT-25)、および、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
シリコーン粘着剤は、シリコーン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、信越化学工業社製のKR-3704(主剤)とCAT-PL-50T(白金触媒)とにより製造されるポリマー等が挙げられる。
ウレタン粘着剤は、ウレタン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
本明細書では、高分子とは、数平均分子量が1000以上の化合物をいい、好ましくは2000以上の化合物を意味する。
【0032】
粘着層としては、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2017-200975号公報の段落0026~00053に記載の粘着剤層、特開2013-020130号公報の段落0056~0060に記載の粘着層、国際公開第2016/158827号の粘着シート、特開2016-182791号公報の段落の0031~0032の粘着層、特開2015-147837号公報の段落0057~0084のゴム系粘着剤層、特開2019-178273号公報の段落0024および0026に記載の粘着層、特開2018-145365号公報の段落0027~0032に記載の粘着層を採用することもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
粘着層の厚みは、特に制限はないが、1μm以上であることが好ましく、また、70μm以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、より適切な粘着特性および粘着強度が達成される。
【0034】
次に、粘着層の剥離力について述べる。
本発明では、ポリカーボネートフィルムと保護フィルムを貼り合わせた後、JIS Z0237に準拠した、180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、0.001~4.5N/25mmの剥離力を示すことが好ましい。
【0035】
剥離力は、粘着層の組成によって制御が可能となる。例えば、シリコーン系粘着層の場合、構成されるポリオルガノシロキサンの主鎖構造、末端構造、分岐構造および分子量などによって剥離力の調整が可能となる。また、ウレタン系粘着層の場合、構成されるポリオールとポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、およびそれらの比率などによって剥離力の調整が可能となる。また、アクリル系粘着層の場合、構成されるアクリル含有樹脂のモノマー構造や分子量、共重合比率、およびポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、さらにはアクリル含有樹脂とポリイソシアネートの比率などよって剥離力の調整が可能となる。
また、粘着力の異なる粘着剤を組み合わせることによっても、任意の剥離力を有する粘着層を形成させることが可能となる。
【0036】
<<樹脂を含む層(樹脂層)>>
前記保護フィルムは、ポリカーボネートフィルムと剥離可能な粘着層と、樹脂層を有する。粘着層は、通常、ポリカーボネートフィルムに接して設けられており、ポリカーボネートフィルムから剥離可能である。樹脂層は、通常、保護フィルムの基材となる層である。
樹脂層を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂がより好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0037】
樹脂層中の樹脂(好ましくは、熱可塑性樹脂)の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
樹脂層には、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、近赤外線遮蔽剤、光拡散剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの総量は、樹脂層中、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~2質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態における樹脂層は、表面の点状欠陥の数が2000個/m2以下であることが好ましい。このような表面の点状欠陥は、成形時の滞留時間の低減やポリマーフィルターの使用によって達成することができる。前記表面の点状欠陥の数は、1000個/m2以下であることがより好ましく、500個/m2以下であることがさらに好ましく、250個/m2以下であることが一層好ましく、100個/m2以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネートフィルムの点状欠陥も減らすことができる。前記表面の点状欠陥の数の下限値は、0個/m2が理想であるが、1個/m2以上が実際的である。
前記表面の点状欠陥の数は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0040】
本実施形態においては、また、樹脂層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03μm~0.35μm(好ましくは、0.30μm以下)であることが好ましい。ここでの、最も表側の層とは、保護フィルムが2層以上の樹脂層を含む場合、最も表側に存在する層のことを意味する。また、保護フィルムが多層体の両面に設けられている場合、算術平均うねりWaが大きい方の値を意味する。ここで、算術平均うねりWaとは、平均線に対するうねりの高さの平均値を意味する。
上記最表層の少なくとも一方が、上記算術平均うねりWaを満たすようにすることにより、摺動性を有する層とすることができる。摺動性を有する最表層の一例は、微粒子含有層である。微粒子としては、アクリル微粒子、スチレン微粒子、シリカ微粒子などが挙げられる。また、樹脂層における微粒子の割合は、0.01~20質量%であることが好ましい。
樹脂層に非相溶な樹脂を混合することもまた有効である。一例としてポリプロピレン系樹脂に低密度ポリエチレンを混合することが挙げられる。
【0041】
前記樹脂層(好ましくは最表層)の算術平均うねりWaは、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、さらには、0.10μm以上、0.15μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、摺動性がより向上する傾向にある。前記樹脂層(好ましくは最表層)の算術平均うねりWaは、0.35μm以下であることが好ましく、0.30μm以下であることがより好ましく、0.25μm以下であることがさらに好ましく、0.18μm以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、粘着層の算術平均うねりMaの上昇を抑える効果がより向上する傾向にある。
このような算術平均うねりWaは、微粒子の添加量および樹脂層に非相溶な樹脂の混合比の調整によって達成される。
前記算術平均うねりWaは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0042】
<<他の層>>
本実施形態における保護フィルムは、樹脂層および粘着層以外の層を含んでいてもよい。具体的には、プライマー層、ハードコート層、アンチブロッキング層、微粒子含有層が例示される。微粒子含有層としては、樹脂層に無機微粒子を配合した層が例示される。
【0043】
本実施形態で用いる保護フィルムは、フィルム成形時の残留応力を開放するために、ポリカーボネートフィルムとの積層前にアニール処理していてもよい。アニール処理方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。アニール処理した保護フィルムを積層することにより、積層後の加熱工程における反りや剥がれを効果的に抑制することができる。
【0044】
本実施形態で用いる保護フィルムは、その厚みが、それぞれ、90μm以下であることが好ましく、以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが一層好ましく、35μm以下であることがより一層好ましく、また、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、前記上限値以下とすることにより、ポリカ ーボネートフィルムにゆず肌が発生することを効果的に抑制できる。
本実施形態における多層体は、粘着層と樹脂層の合計厚みが、それぞれ、90μm以下であることが好ましく、以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが一層好ましく、35μm以下であることがより一層好ましく、また、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、前記上限値以下とすることにより、ポリカ ーボネートフィルムにゆず肌が発生することを効果的に抑制できる。
【0045】
<多層体の層構成>
次に、本実施形態の多層体の層構成について、説明する。
本実施形態の多層体は、ポリカーボネートフィルムと、ポリカーボネートフィルムの少なくとも一方も表面に設けられた保護フィルムとを有する。
本実施形態の好ましい多層体の一例は、上述の
図1に示される構成である。すなわち、ポリカーボネートフィルム2の両面に保護フィルム3が設けられている態様である。なお、両面に保護フィルムが設けられている場合、少なくとも一方の面が、ポリカーボネートフィルムを剥離したときの、粘着層における算術平均うねりMaが所定の範囲を満たしていればよい。
【0046】
本実施形態の多層体の第一の実施形態は、ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、保護フィルムを含み、樹脂層は、それぞれ、ポリオレフィン樹脂を含む形態である。このような形態とすることにより、反りを小さくできると共に、加熱引張試験時の応力を低くすることができる。本実施形態において、それぞれのポリオレフィン樹脂を含むフィルムは、同じフィルムであっても異なるフィルムであってもよいが、同じフィルムであることが好ましい。本実施形態においては、樹脂層に含まれるポリオレフィン樹脂の量が、それぞれ、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の多層体の第二の実施形態は、ポリカーボネートフィルムの両方の面上に、それぞれ、保護フィルムを含み、ポリカーボネートフィルムの一方の面上の樹脂層は、ポリオレフィン樹脂を含み、ポリカーボネートフィルムの他方の面上の樹脂層は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。このような構成とすることにより、芯材に巻き取った時の巻きコブの発生を効果的に抑制することができると共に、ポリエステルを含む樹脂層からなる保護フィルムを剥がすことにより加熱引張試験時の応力を低くすることができる。本実施形態においては、一方の樹脂層に含まれるポリオレフィン樹脂の量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。また、他方の樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態の多層体の第三の実施形態は、ポリカーボネートフィルムの両面上に、それぞれ、保護フィルムを含み、樹脂層は、それぞれ、ポリエステル樹脂を含む形態である。このような形態とすることにより、得られる多層体の反りを効果的に抑制することができる。また、得られる多層体のヘイズを低くすることができる。本実施形態において、それぞれのポリエステル樹脂を含むフィルムは、同じフィルムであっても異なるフィルムであってもよいが、同じフィルムであることが好ましい。本実施形態においては、樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の量が、それぞれ、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0048】
本実施形態の多層体は、上記の他、他の構成層を有していてもよい。他の構成層としては、アンチブロッキング層、微粒子含有層が例示される。これらは、通常、保護層の外側に設けられる。
【0049】
本実施形態の多層体は、ポリカーボネートフィルムに、保護フィルムの粘着層側が接するように積層し、ロール等で貼り合わせることによって製造することができる。
また、上述の通り、ポリカーボネートフィルムおよび/または保護フィルムは、貼り合わせ前にアニール処理をしてもよい。アニール処理をすることにより、積層後の加熱工程における反りや層間の剥がれを効果的に抑制できる。
【0050】
<多層体の物性>
次に、本実施形態の多層体の各種物性について説明する。
本実施形態の多層体は、下記条件(1)および(2)のいずれか一方を満たすことが好ましい。
(1)多層体の引張弾性率が1800MPa以上;
(2)多層体の引張弾性率が1800MPa未満、かつ、樹脂層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが0.15μm以上。
このような構成とすることにより、巻きコブの発生を効果的に抑制できる。
上記(1)の多層体を達成するための手段としては、少なくとも1方の樹脂層にポリエステルフィルムを使用することが挙げられる。上記(1)においては、引張弾性率が3000MPa以下であることが好ましい。
上記(2)の多層体を達成するための手段としては、樹脂層の算術平均うねりWaが上記(2)の範囲を満たすポリオレフィンフィルムを使用することが挙げられる。上記(2)においては、引張弾性率が1000MPa以上であることが好ましい。また、算術平均うねりWaが0.35μm以下(好ましくは0.30μm以下)である。
【0051】
本実施形態の多層体は、透明性を求められない用途に用いる場合には特に定めるものではない。一方で、本実施形態の多層体は、ヘイズが50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが一層好ましく、20%以下であることがより一層好ましく、18%以下であることがさらに一層好ましく、10%以下であることが特に好ましい。前記ヘイズの下限値は1%以上が実際的である。このような低ヘイズを達成するための手段としては、微粒子の添加量または樹脂層に非相溶な樹脂の混合比を調整することが挙げられる。
【0052】
本実施形態の多層体の引張弾性率は、例えば、1000MPa以上であることが好ましく、1100MPa以上であることがより好ましく、さらには、1400MPa以上、1800MPa以上であってもよい。本実施形態の多層体の引張弾性率は、また3000MPa以下であることが好ましく、算術平均うねりWaの値等によっては、1800MPa未満であってもよい。前記引張弾性率を高くするための手段としては、樹脂層にポリエステルを含む保護フィルムを使用することが挙げられる。前記引張弾性率を低くするための手段としては、樹脂層にポリオレフィンを含む保護フィルムを使用することが挙げられる。
前記引張弾性率は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
本実施形態の巻取体は、芯材と、前記芯材に巻き取った本実施形態の多層体を有する。このような巻取体は、保護フィルムを剥離しても、ポリカーボネートフィルムにゆず肌が発生することを効果的に抑制できる。
本実施形態においては、樹脂層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03μm~0.35μm(好ましくは0.30μm以下)である樹脂層が、芯材から遠い側となるように巻き取られていることが好ましい。このような構成とすることにより、多層体の巻き取り時の背面側に来る層(外側)の凹凸に由来して、ポリカーボネートフィルムにゆず肌が発生することを効果的に抑制できる。
【0054】
本実施形態の多層体の厚みは特に定めるものではないが、例えば、60μm以上であり、また、例えば、400μm以下である。
【0055】
本実施形態の多層体および巻取体は、保護フィルムを剥離してポリカーボネートフィルム(特に、単層のポリカーボネートフィルム)として用いることができる。また、本実施形態の多層体は、他の層を含んでいてもよく、他の層としては、公知の層を採用でき、粘着層やハードコート層が例示され、粘着層を含むことが好ましい。もちろん、粘着層とハードコート層の両方を有していてもよい。
粘着層としては、ポリオレフィン樹脂層が例示される。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリカーボネートフィルムは、透明導電性フィルムの保護フィルムや基材として好ましく用いられる。特に、保護層と、粘着層と、基材と、電極層とをこの順で有する、透明導電性フィルムであって、基材および保護層の少なくとも一方(好ましくは少なくとも保護層)が、ポリカーボネートフィルムである、透明導電性フィルムとして好ましく用いられる。
また、上記透明導電性フィルムは、タッチパネルのフィルムセンサー、電子ペーパーや色素増感型太陽電池、タッチセンサー等に用いる透明導電性フィルムとして好ましく用いられる。
さらに、ポリカーボネートフィルムは、上記以外でも、透明性が高いことが求められる用途のフィルムに好ましく用いられる。例えば、飛散防止フィルムとして用いられる。
【実施例0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0057】
1.原料
ポリカーボネートフィルムとしては、以下に示すものを用いた。
<ポリカーボネートフィルム1の製造>
ビスフェノールA型ポリカーボネートフレーク(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、E-2000F、粘度平均分子量27,000、Tg:150℃)とビスフェノールA型ポリカーボネートフレーク(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、S-3000F、粘度平均分子量21,000、Tg:146℃)を質量比率が1:1となるようにドライブレンドし、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、シリンダー温度280℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
<フィルムの製造>
上記で得られたペレットを用いて、以下の方法でフィルムを製造した。
上記で得られたペレットを、バレル直径32mm、スクリューのL/D=31.5のベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量10kg/h、スクリュー回転数150rpmの条件で、溶融状に押し出し、第一ロールと第二ロールで圧着した後、冷却固化し、フィルムを作製した。シリンダーおよびTダイ温度は280℃とした。
最終的に得られるフィルムの厚み(単位:μm)の調整は、50μmとなるように、第一ロールおよび第二ロールのロール速度を変更して行った。
用いた第一ロールおよび第二ロールの詳細は以下の通りである。
・第一ロール:持田商工社製、シリコーンゴムロール(IT68S-MCG)
寸法:外径260mm×幅600mm
ロール温度:50℃
・第二ロール:鏡面金属剛体ロール(表面:ハードクロム処理)
芯金寸法:外径250mm×幅600mm
ロール温度:120℃
【0058】
<ポリカーボネートフィルム2の製造>
<<PC-1の合成例>>
有機化学ハンドブックP143~150の記載に基づき、東京化成工業(株)製、4-ヒドロキシ安息香酸と東京化成工業(株)製、1-ヘキサデカノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)を得た。
9質量%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鉄住金化学社製ビスフェノールA(BPA)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15~25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、9質量%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメタン11kg、および、上記で得られたCEPB443g(1.22mol)をジクロロメタン10kgに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として10mLのトリエチルアミンを加え約40分間重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製された芳香族ポリカーボネート溶液から有機溶媒を蒸発留去することにより芳香族ポリカーボネート粉末(PC-1)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネート粉末の粘度平均分子量(Mv)およびガラス転移温度(Tg)を測定した。粘度平均分子量:25500、Tg:130℃
【0059】
<<フィルムの製造>>
上記<ポリカーボネートフィルム1の製造>において、ポリカーボネートの種類を上記<<PC-1の合成例>>で合成したポリカーボネートに変更した他は同様に行った。
【0060】
<ポリカーボネートフィルム3の製造>
ポリカーボネートフィルム1において、厚さが100μmとなるように調整し、他は同様に行った。
【0061】
<粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネートの粘度平均分子量は以下の方法で測定した。
溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
-4Mv
0.83から算出した。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[η
sp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0062】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ポリカーボネートのガラス転移温度は以下の通り測定した。
ポリカーボネート(ペレット)約10mgを下記DSC(示差走査熱量)の測定条件のとおりに、昇温および降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点を本発明におけるガラス転移温度(Tg、単位:℃)とした。
測定開始温度:30℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:250℃
降温速度:20℃/分
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
【0063】
<保護フィルム>
保護フィルムとしては、下記表1に示すものを用いた。いずれの保護フィルムも、粘着層と樹脂層を有しており、一方の面の最表面が粘着層であり、他方の面の最表面が樹脂層である。PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
【表1】
【0064】
※1:樹脂層のうち、粘着層と反対側におけるうねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねり(Wa)
保護フィルム4と比較用保護フィルム1は、同じ品番で厚み違いのものである。
【0065】
<樹脂層の算術平均うねりWa[μm]>
保護フィルムの樹脂層の、粘着層と反対側の表面の算術平均うねりWaを以下の通り測定した。
表面形状測定機を用いて、JIS B0601:2001に基づいてWaを測定した。測定条件は基準長さ=0.8mm、区間数=5、λf=3.0mm、λc=0.5mmとした。フィルムの流れ方向を測定方向とし、3回測定した平均値を算出した。
表面形状測定機は、ミツトヨ社製、接触式表面形状測定機CS-H5000CNCを用いた。
尚、表2および表3においては、保護フィルムaと保護フィルムbのうち、値が大きい方のWaを、保護フィルム樹脂層の算術平均うねりWa[単位:μm]として示した。
【0066】
<樹脂層の点状欠陥>
保護フィルムの樹脂層の点状欠陥の数について、以下の通り評価した。
保護フィルムの10cm×10cmの範囲について、樹脂層側表面の20°~70°の角度からフィルム面上の照度が1000Luxになるように光を照射し、その反射光で目視観察して点状欠陥を検出した。この欠点をNikon社製光学顕微鏡で観察して、長径が100μm以上のものを計数した。これを3回繰り返した平均値から1m2あたりの個数を算出した。
【0067】
<保護フィルムのヘイズ>
多層体について、ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0068】
2.実施例1~11、比較例1~4
<多層体の製造>
表2または表3に示す層構成となるように、保護フィルム/ポリカーボネートフィルム/保護フィルムの多層体を製造した。具体的には、以下のとおり行った。
上記ポリカーボネートフィルムを製造する工程において、第一ロールおよび第二ロールで圧着および冷却固化しポリカーボネートフィルムを作製した後、下流側の工程において表2および表3に示す保護フィルムを、金属鏡面ロールとゴムロールを用いて3N/mmの線圧で貼合し、100N/mの張力で、300Mを芯材に巻き取って、保護フィルム/ポリカーボネートフィルム/保護フィルムの多層体を製造した。このとき、保護フィルムaと保護フィルムbのうち、Waの値が大きい方が外側になるように巻き取った。
得られた多層体について、以下の評価を行った。
【0069】
<多層体積層体の引張弾性率[MPa]>
多層体を試験片形状(JIS K 7127 試験片タイプ1B)に打ち抜き、オートグラフ(島津製作所社製、AGS-500NX)を用いて、シート押出方向(流れ方向)の引張試験を行った。JIS K 7127に準拠し、試験速度1mm/minで、ひずみが0.0005と0.0025の2点における応力の差をひずみの差で除した値を引張弾性率とした。
【0070】
<剥離後の粘着層の算術平均うねりMa[μm]>
多層体から剥離した保護フィルムの粘着面について、日立ハイテク社製走査型白色干渉顕微鏡VS1800を用いて表面形状を測定した。測定条件および処理条件は以下の通りとし、バンド分解した時の中間波長成分の算術平均うねりMaを採用した。
測定条件
測定用CCDカメラ:高画素
鏡筒:0.5x
対物レンズ:2.5x
測定モード:waveモード
波長フィルター:530nm White
観察面積:10721.79×10728.91μm2、
画像サイズ:1000×1000pixels
処理条件
面補正:4次
バンド分解:短波長λs500μm、中間波長λl3000μm、長波長(最大:5361.7664μm)
保護フィルムaと保護フィルムbのうち、値が大きい方の剥離後の粘着層Maを、Maの最大値[単位:μm]とした。
【0071】
<ゆず肌>
積層体を温度23℃、相対湿度50%で24時間保管したのち、積層体から保護フィルムを剥離し、ポリカーボネートフィルム表面の45°からフィルム面上の照度が1000Luxになるように光を照射し、フィルム面上に映る光源の輪郭を目視で観察してゆず肌(凹凸)を評価した。評価は5人の専門家が行い多数決で判断した。
A:強いゆず肌が発生している
B:弱いゆず肌が発生している
C:ゆず肌が発生していない
【0072】
<ポリカーボネートフィルムの凹み欠陥>
ポリカーボネートの凹み欠陥の数について、以下の通り評価した。
多層体から保護フィルムを剥離し、ポリカーボネートフィルムの10cm×10cmの範囲について、ポリカーボネートフィルム側表面の20°~70°の角度からフィルム面上の照度が1000Luxになるように光を照射し、その反射光で目視観察して点状欠陥を検出した。この欠陥を日立ハイテク社製走査型白色干渉顕微鏡VS1800で表面形状を測定し、直径100μm以上のものを計数した。これを3回繰り返した平均値から1m2あたりの個数を算出した。
A:点状欠陥の数が100個/m2以下である。
B:点状欠陥の数が100個/m2超1000個/m2以下である。
C:点状欠陥の数が1000個/m2超2000個/m2以下である。
D:点状欠陥の数が2000個/m2超である。
【0073】
<巻コブ>
多層体300Mをロール状に巻き取り、巻コブを目視で確認した。このとき、保護フィルムaが有する樹脂層のWaと保護フィルムbが有する樹脂層のWaうち、値が大きい方の樹脂層が外側となるように巻き取った。評価は5人の専門家が行い多数決で判断した。
A:強い巻コブが発生している。
B:弱い巻コブが発生している。
C:巻コブが発生していない。
【0074】
<反り>
多層体の反りについて、以下の通り評価した。
多層体を150mm×150mm切り出して、平板上に静置し、フィルム端部の接地面からの高さの最大値を測定した。
A:反りが5mm以下である。
B:反りが5mm超15mm以下である。
C:反りが15mm超である。
【0075】
<加熱引張試験時の応力>
多層体を試験片形状(JIS K 7127 試験片タイプ1B)に打ち抜き、保護フィルムaを剥がし、オートグラフ(島津製作所社製 AGS-500NX)とAGS-500NX用恒温槽THC1WF-200Tを用いて、恒温槽が150±5℃に昇温後試験片を取り付け、1分間保持したあとに、100mm/minでひずみ100%まで引張試験をしたときの応力の最大値を測定した。これを3回繰り返し、平均値を採用した。
A:加熱試験時の応力が5MPa以下である。
B:加熱試験時の応力が5MPa超10MPa以下である。
C:加熱試験時の応力が10MPa超である。
【0076】
<ヘイズ>
多層体について、ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0077】
【0078】
【0079】
※2 保護フィルムaのWaと保護フィルムbのWaうち、値が大きい方のWaを、樹脂層の算術平均うねりWa[単位:μm]として示した。
上記結果から明らかなとおり、本発明の多層体は、保護フィルムを剥離したときに、ポリカーボネートフィルムの表面にゆず肌が発生しにくいものであった(実施例1~11)。
さらに、樹脂層として、両面にポリオレフィンフィルムを用いた場合(実施例1、2、5および6)、多層体の反りが抑制され、かつ、加熱引張試験時の応力が効果的に抑制された。
また、樹脂層として、ポリエステルフィルムを少なくとも一方の面に用いた場合(実施例3、4、7、8、10)、巻きコブの発生を効果的に抑制できた。特に、実施例4および実施例8では、ポリエステルを含む樹脂層からなる保護フィルムを剥がすことにより加熱引張試験時の応力を低くすることができた。
さらに、樹脂層として、両面にポリエステルフィルムを用いた場合(実施例3、7)、多層体の凹み欠陥が効果的に抑制された。
また、保護フィルムの厚みが薄い方が、うねりを小さくできた(実施例11)。
一方、剥離後の粘着層のMaが0.12μmを超える場合(比較例1、2)、ゆず肌が発生してしまった。
一方、ポリカーボネートフィルムの厚さが厚い場合(比較例3、4)、算術平均うねりMaの値にかかわらず、ゆず肌は発生しなかった。
前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである、請求項1または2に記載の多層体。
前記樹脂を含む層の最も表側の層の、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである、請求項1または2に記載の多層体。
前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.35μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、請求項15に記載の巻取体。
前記樹脂を含む層のうち、うねり幅が500μm未満および3000μm超のうねりを除くうねりの算術平均うねりWaが、0.03~0.30μmである樹脂を含む層が、芯材から遠い側となるように巻き取られている、請求項15に記載の巻取体。