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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021077
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】電波反射体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240207BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240207BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240207BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B7/025
B32B7/12
H01Q15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126251
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2022123578
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 弾一
(72)【発明者】
【氏名】畠井 宗宏
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
4F100AB24A
4F100AK42B
4F100AK51C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02C
4F100CA07B
4F100CB00C
4F100DC16A
4F100GB41
4F100JD04B
4F100JD08A
4F100JD09B
4F100JG01A
4F100JK12B
4F100JL11C
4F100JN01
4F100JN06A
4F100YY00B
4F100YY00C
5E321AA33
5E321AA44
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB25
5E321BB41
5E321BB44
5E321BB60
5E321CC16
5E321GG05
5E321GH01
5J020AA03
5J020BA06
5J020BD03
5J020BD04
5J020CA06
5J020EA07
(57)【要約】
【課題】導電体を保護し、電波反射性を損なわないようにできること。
【解決手段】電波反射体11は、電波を反射する導電体12を含む導電層16と、導電層16を保護する保護層15と、を備える。電波反射体11に対して鉛筆硬度試験を行った場合に、保護層15に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度がF以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波反射体であって、
電波を反射する導電体を含む導電層と、
前記導電層を保護する保護層と、
を備え、
前記電波反射体に対して鉛筆硬度試験を行った場合に、前記保護層に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度がF以上である、
電波反射体。
【請求項2】
前記保護層の厚さが38μm以上である、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項3】
前記保護層に対して鉛筆硬度試験を行った場合に、前記保護層に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度がF以上である、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項4】
前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、
前記接着層の水酸基価が5mgKOH/g以上である、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項5】
前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、
前記接着層の酸価が50mgKOH/g以下である、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項6】
前記保護層は、40℃、90%rhでの透湿度が20g/m・24h以下である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項7】
前記保護層の被着層に対する接着力は、耐熱耐湿試験後の低減率が50%以下である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項8】
前記電波反射体の全光線透過率が70%以上である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項9】
前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、
前記接着層は、紫外線防止剤を不含有である、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項10】
前記導電層は、前記導電体が無い領域と、前記領域を囲むように形成された前記導電体と、を有し、
前記領域は同一形状の領域を複数含み、
前記同一形状の複数の領域は、一定の間隔で配置されている、
請求項1に記載の電波反射体。
【請求項11】
耐熱耐湿試験後における前記電波反射体の表面抵抗率は、100Ω/□以下である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項12】
前記保護層は、紫外線防止剤を含有している、または、表面に紫外線カット処理が施されている、の少なくともいずれか1つである、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項13】
前記電波反射体のヘーズは、30%以下である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項14】
耐光性試験後における前記電波反射体の全光線透過率は、70%以上である、請求項1に記載の電波反射体。
【請求項15】
耐光性試験の前後における前記電波反射体の黄変度Δb*は、15以下である、請求項1に記載の電波反射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線通信においては、センチ波やミリ波と呼ばれる3GHz以上300GHz以下程度の周波数帯の電波が用いられる。このような波長が短い電波は直進性が強く、障害物があっても回り込みにくいため、電波を広い範囲に届かせるために、建造物の壁や床面、天井、柱等の建造物の表面(以下、「壁等」という。)に反射板が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、モノポールアンテナと、電波を反射する金属反射板とを屋内の床下空間に配置した通信システムが記載されている。金属反射板により、モノポールアンテナから出力される電波を床下空間に拡散させるとともに、床下空間から居室(建物)外に漏洩したり、建造物の床部に電波が吸収されたりすることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-258514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の金属反射板は、単に金属製の反射板であるが、電波をより効率よく反射するために、本発明者らは、導電体を有する導電層と、これを保護する保護層とを積層することを考えた。
【0006】
しかし、保護層の表面の硬度が弱いと、導電体の保護が十分でないことがあり、電波反射性が損なわれることがある。
【0007】
本発明の目的は、導電体を保護し、電波反射性を損なわないようにできる電波反射体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1.電波反射体であって、
電波を反射する導電体を含む導電層と、
前記導電層を保護する保護層と、
を備え、
前記電波反射体に対して鉛筆硬度試験を行った場合に、前記保護層に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度がF以上である、電波反射体。
【0010】
項2.前記保護層の厚さが38μm以上である、項1に記載の電波反射体。
【0011】
項3.前記保護層に対して鉛筆硬度試験を行った場合に、前記保護層に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度がF以上である、項1又は項2に記載の電波反射体。
【0012】
項4.前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、前記接着層の水酸基価が5mgKOH/g以上である、項1~項3のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0013】
項5.前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、前記接着層の酸価が50mgKOH/g以下である、項1~項4に記載の電波反射体。
【0014】
項6.前記保護層は、40℃、90%rhでの透湿度が20g/m・24h以下である、項1~項5のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0015】
項7.前記保護層の被着層に対する接着力は、耐熱耐湿試験後の低減率が50%以下である、項1~項6のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0016】
項8.前記電波反射体の全光線透過率が70%以上である、項1~7のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0017】
項9.前記導電層と前記保護層との間に設けられ、前記導電層と前記保護層とを接着する接着層を更に備え、前記接着層は、紫外線防止剤を不含有である、項1~8のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0018】
項10.前記導電層は、前記導電体が無い領域と、前記領域を囲むように形成された前記導電体と、を有し、
前記領域は同一形状の領域を複数含み、
前記同一形状の複数の領域は、一定の間隔で配置されている、項1~9のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0019】
項11.耐熱耐湿試験後における前記電波反射体の表面抵抗率は、100Ω/□以下である、項1~10のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0020】
項12.前記保護層は、紫外線防止剤を含有している、表面に紫外線カット処理が施されている、の少なくともいずれか1つである、項1~項11のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0021】
項13.前記電波反射体のヘーズは、30%以下である、項1~項12のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0022】
項14.耐光性試験後における前記電波反射体の全光線透過率は、70%以上である、項1~項13のいずれか一項に記載の電波反射体。
【0023】
項15.耐光性試験の前後における前記電波反射体の黄変度Δb*は、15以下である、項1~項14のいずれか一項に記載の電波反射体。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る上記態様の電波反射体は、導電体を保護し、電波反射性を損なわないようにできる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係る電波反射体により反射する反射波の角度範囲を説明するための模式図である。
図2図2は、実施形態に係る電波反射体の模式断面図である。
図3図3(A)は、実施形態に係る電波反射体の模式平面図であり、図3(B)は(A)のA部分の拡大図である。
図4図4(A)~(E)は、導電体の配置パターンの変形例を示す模式平面図である。
図5図5(A)は実施形態に係る電波反射体の使用例を示す説明図である。図5(B)は建築材料の室内への適用例を示す模式平面図である。
図6図6は、変形例1に係る電波反射体の模式平面図である。
図7図7は、変形例2に係る電波反射体の一部分の模式断面図である。
図8図8(A)は、変形例3に係る電波反射体の模式平面図である。図8(B)は、図8(A)のB部分の拡大図である。
図9図9(A)は、変形例4に係る電波反射体の模式平面図である。図9(B)は、図9(A)のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態>
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の電波反射体11は、図1に示すように、電波を反射することができるシート状の部材である。電波反射体11は、例えば、電波発生部20から出力された電波を反射するように構成されている。電波反射体11によって反射した電波は、受信部21によって受信される。電波反射体11は、図2に示すように、導電体12を含む導電層16と、接着層14と、保護層15と、がこの順で積層されている。
【0027】
本明細書でいう「シート」とは、その物体の厚さが、平面視における外縁の間の最大長さに対して、10%以下である形状を意味する。平面視における形状が矩形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、対角線の長さを意味する。また、平面視における形状が円形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜、箔、フィルム等も「シート」に含まれる。
【0028】
電波発生部20は、電波を出力する装置である。本実施形態に係る電波発生部20は、電波を媒体とする無線信号を出力可能な送信アンテナを持つ通信装置である。電波発生部20としては、例えば、固定型基地局、移動基地局、電波式発信器、無線端末等が挙げられる。
【0029】
受信部21は、電波を受信可能な機器である。本実施形態に係る受信部21は、受信アンテナを持つ通信機器である。受信部21としては、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ノートPC、携帯ゲーム機、中継器、ラジオ、テレビ等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係る電波反射体11が反射可能な電波は、例えば、入射波の周波数が3GHz以上5GHz以下、25GHz以上30GHz以下、及び100GHz以上300GHz以下のいずれかの範囲に属する電波である。ここでいう「反射可能な電波」とは、入射角が15度以上75度以下のいずれかの入射波の強度に対する、正規反射した出射波の強度(これを「正規反射強度」という場合がある)が、-30dB以上0dB以下となる電波を、少なくとも1つ有することを意味する。好ましくは、入射角が15度以上75度以下におけるいずれの入射波に対しても、正規反射強度が、-30dB以上0dB以下となることが好ましい。
【0031】
より具体的には、周波数28.5GHzにおいて、正規反射強度が入射波に対して-30dB以上0dB以下となることが好ましく、より好ましくは、20GHz以上60GHz以下の周波数帯域全てにおいて、正規反射強度が入射波に対して-30dB以上0dB以下となり、更に好ましくは3GHz以上300GHz以下の周波数帯域全てにおいて、正規反射強度が入射波に対して-30dB以上0dB以下となる。
【0032】
正規反射強度は、入射波に対する減衰がより小さいことが好ましい。入射波に対する正規反射強度は、-25dB以上0dB以下が好ましく、より好ましくは、-22dB以上0dB以下であり、更に好ましくは、-20dB以上0dB以下であり、更に好ましくは、-15dB以上0dB以下である。
【0033】
入射波に対する正規反射強度が、-30dB以上であることで、電波反射体11は反射強度を保った状態で電波を反射させることができる。この結果、受信部21は、実用的な強度で電波を受信することができる。本明細書における「反射強度」及び「正規反射強度」は、反射点11aと測定点との間の距離が1mである場合の強度を意味する。また、正規反射強度は、電波反射体11を湾曲及び屈曲させることなく、平面状にした状態で測定することとする。
【0034】
本実施形態に係る電波反射体11は、図3に示すように、平面視において、四角形(正方形、長方形を含む)である。電波反射体11の一辺の長さL10としては、例えば、20cm以上が好ましく、より好ましくは、100cm以上であり、更に好ましくは、200cm以上である。一方、電波反射体11の一辺の長さL10の上限は、特に制限はないが、例えば、400cm以下である。一辺の長さL10が、20cm以上であると、電波を十分な強度で反射させやすい。
【0035】
電波反射体11の形状としては、四角形に限らず、例えば、三角形、五角形、六角形、円形、楕円形等の幾何学的形状であってもよいし、非幾何学的な形状であってもよい。電波反射体11において、端縁間の距離のうちの最大値の寸法が、20cm以上400cmm以下であることが好ましい。「端縁間の距離のうちの最大値の寸法」は、電波反射体11が長方形である場合、対角の寸法を指し、電波反射体11が円形である場合、直径の寸法を指し、電波反射体11が楕円形である場合、長軸の長さを指す。
【0036】
電波反射体11の厚さL1は、0.01mm以上であることが好ましく、より好ましくは、0.05mm以上であり、更に好ましくは、0.2mm以上である。一方、電波反射体11の厚さL1の上限としては、0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.4mm以下である。電波反射体11の厚さL1が0.01mm以上であることで、可撓性を有しながら、強度を保つことができる。電波反射体11の厚さL1が0.5mm以下であることで、電波反射体11を湾曲させたときに、折れ曲がりにくく、この結果、導電体12に応力集中が生じにくい。ここでいう「折れ曲がる」とは、電波反射体11のいずれかの層において、塑性変形を伴う曲げを意味する。
【0037】
電波反射体11に対して鉛筆硬度試験を行った場合、保護層15に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度は、「F」以上であることが好ましく、より好ましくは、「H」以上であり、更に好ましくは「4H」以上である。本明細書でいう「鉛筆硬度試験」は、JIS K 5600-5-4(1999)に準拠した試験である。また、「表面荷重500g」は、鉛筆硬度試験に際して表面に加わる荷重が、500g±10gであれば、これに含まれることとする。
【0038】
また、電波反射体11は、耐熱耐湿試験を行った後、保護層15における被着層に対する接着力の低減率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは、45%以下であり、更に好ましくは40%以下である。本明細書でいう「被着層」とは、対象の層に直接接触した層を意味する。保護層15の被着層は、本実施形態では、接着層14である。接着力の測定方法は、JIS K 6849(1994)に準拠した引張り接着強さ試験によって測定される。
【0039】
耐熱耐湿試験は、温度60℃、湿度95%rh(相対湿度)に調整した恒温恒湿槽に電波反射体11を配置し、500時間静置したあと、電波反射体11を恒温恒湿槽から取り出して、常温で4時間静置した後、性状の変化を確認する試験である。
【0040】
耐熱耐湿試験の後の電波反射体11の反射波の強度と、耐熱耐湿試験前の電波反射体11の反射波の強度との差は、3dB以内であることが好ましい。このような耐熱耐湿試験の前後の反射波の強度の差が3dB以内となる入射波の入射角は、少なくとも、15度以上75度以下の1つの角度で存在することが好ましく、45度であることがより好ましく、15度以上75度以下の角度の範囲の全ての角度であることがより好ましい。耐熱耐湿試験の前後の反射波の強度の差が3dB以内となる入射波の周波数は、3GHz以上300GHz以下の間で少なくとも1つ存在することが好ましく、あることが好ましく、3GHz以上、300GHz以下の周波数帯域の全ての周波数であることがより好ましい。
【0041】
また、電波反射体11において、耐熱耐湿試験後の表面抵抗率は、100Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは、50Ω/□以下であり、更に好ましくは20Ω/□以下である。耐熱耐湿試験後の表面抵抗率が20Ω/□以下であることで、電波反射体11は、高温高湿環境下に長期間置かれても、反射強度が損なわれることなく、実用性のある電波反射体11を維持できる。
【0042】
また、耐熱耐湿試験前の電波反射体11の表面抵抗率は、0.003Ω/□以上10Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは、0.01Ω/□以上9Ω/□以下であり、更に好ましくは、0.02Ω/□以上8Ω/□以下である。なお、表面抵抗率は、平面からなる載置面に電波反射体11を載置した状態で測定した値である。
【0043】
耐熱耐湿試験前に対する、耐熱耐湿試験後の電波反射体11の表面抵抗率の変化率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは、17%以下であり、更に好ましくは、15%以下である。耐熱耐湿試験前の表面抵抗率をrとし、耐熱耐湿試験前の表面抵抗率をrとすると、変化率rは、r=(r-r)/r×100で求められる。
【0044】
また、電波反射体11は、電波反射体11を曲率半径200mmの曲面を有する部材の表面に沿って湾曲させた状態の前後における表面抵抗率の変化率(「湾曲時の表面抵抗率の変化率」ともいう)Rが-10%以上10%以下であってもよい。湾曲時の表面抵抗率の変化率Rとは、電波反射体11を平らとした状態の電波反射体11の表面抵抗率Rに対して、電波反射体11を曲率半径200mmの曲面を有する部材の表面に沿って湾曲させた状態の表面抵抗率Rが変化する割合を意味する。表面抵抗率の変化率Rは、R=(R-R)/R×100で求められる。
【0045】
電波の反射強度は表面抵抗率に応じて変化する。しかし、電波反射体11の湾曲時の表面抵抗率の変化率Rは-10%以上10%以下であるため、電波反射体11を湾曲させた状態であっても平らにした状態と同様に十分な電波の反射強度を実現できる。
【0046】
本明細書において、表面抵抗率は、1cm当たりの表面抵抗を意味する。表面抵抗率は導電層の表面に測定端子を接触させて、JIS K 6911に準拠して四端子法で測定することができる。なお、樹脂シート等で保護が施され導電層が露出していない場合には、非接触式抵抗測定器(ナプソン株式会社製、商品名:EC-80P、又はその同等品)を用いて渦電流法によって測定することができる。
【0047】
電波反射体11は、全体として可視光透過性を有することが好ましい。すなわち、電波反射体11は透明であることが好ましい。導電層16、接着層14及び保護層15は、可視光透過性を有する材料及び/又は可視光透過性を有する厚さに形成されてもよい。ここにおいて「透明」とは、電波反射体11の一方側にある物体を他方側からみて視認可能であることを意味し、全光線透過率が100%でなくてもよい。「透明」には、半透明を含む。また、電波反射体11は着色されていてもよい。
【0048】
電波反射体11は、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは、75%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。本明細書において、「全光線透過率」とは、D65標準光源からの光線の透過率を意味する。全光線透過率は、JIS K 7375(2008)に準拠して測定される。電波反射体11は、後述の耐光性試験後においても、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは、75%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。
【0049】
電波反射体11は、ヘーズが30%以下であることが好ましい。ヘーズとは、電波反射体11の曇り度合いを意味し、JIS―K7136:2000に定義されている。特に耐光性試験の後においてもヘーズは30%以下であることが好ましい。
【0050】
耐光性試験は以下のような試験である。測定装置(例えばアトラス社製キセノンサンシャインウェザオメータCi4000)の槽内に電波反射体11を載置する。槽内を放射照度60W/m(300~400nm)、ブラックスタンダード温度(BST)65±3℃、湿度50±5%RH、槽内温度38℃になるように設定し、1300時間、光を照射(直射日光1年分)して、電波反射体11の性状の変化を確認する。
【0051】
上記の耐光性試験の前後における電波反射体11の黄変度Δb*は、15以下であることが好ましい。黄変度Δb*とは、CIE(国際照明委員会)により定義されたL*a*b*表色系において、耐光性試験の前の+b*の色み(黄)の強さb*1と、耐光性試験の後の+b*の色み(黄)の強さb*2との差(b*2―b*1)であり、値が大きいほど黄色への変色が強くなることを示す。黄変度Δb*が15以下であれば、電波反射体11の黄色への変化を視認しにくく、変色や劣化の影響が小さい。黄変度Δb*はJIS Z 8781-4に準拠して測定される。
【0052】
電波反射体11の曲げ弾性率は、0.05GPa以上4GPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率を上記の範囲内とすることで、電波反射体11は可撓性を有し、電波反射体11を屈曲や破断を生じさせずに、電波反射体11を湾曲させて、曲面や球面に貼り付けることができる。曲げ弾性率はJIS K7171に準拠して測定される。本明細書において「可撓性」とは、常温常圧下において、曲げの力を加えても、破断や塑性変形したりすることなしに、撓む性質をいう。
【0053】
電波反射体11は、縦弾性係数が0.01GPa以上80GPa以下であることが好ましい。縦弾性係数を上記の範囲内とすることで、電波反射体11が変形しやすくなり、電波反射体11を破断させずに電波反射体11を湾曲させて、曲率半径が200mm以上の曲面に貼り付けることができる。縦弾性係数は、ヤング率、引張弾性率ともいわれ、JIS K7161-2014に定義されており、JIS K 7127(1999)に準拠して測定される。
【0054】
本実施形態に係る電波反射体11は、少なくとも、曲率半径が200mm以上の曲面に沿って貼付けることのできる程度の可撓性を有し、好ましくは曲率半径が100mm以上の曲面に沿って貼り付けることのできる程度の可撓性を有する。
【0055】
電波反射体11は、可塑性を有していてもよい。可塑性とは、外圧を加えることにより変形が可能であり、加圧によって弾性限界を超える変形を与えたとき、力を取り去っても変形した形状を保持する性質を意味する。導電層16、接着層14及び保護層15の全てが可塑性を有するものであってもよいし、導電層16、接着層14及び保護層15のうちの少なくとも1つが可塑性を有してもよい。
【0056】
導電体12の表面粗さSaは特に限定されないが、1μm以上7μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1.03μm以上6.72μm以下である。表面粗さSaがこの範囲内であることで、電波を拡散反射させやすくなる。
【0057】
表面粗さSaはISO 25178の算術平均高さにより求められ、ISO 25178に準拠して測定される。レーザー顕微鏡(製品名VK-X1000/1050、キーエンス社製、又はその同等品)を用いて、導電体12の表面の複数箇所で表面粗さを測定して、得られた測定値の平均値を算出することで導電体12の表面粗さSaを求めることができる。
【0058】
また、電波反射体11は、図1に示すように、入射波A1と反射波とを含む仮想平面において、反射波の受信角度位置を、正規反射の反射波A2に対して-15度以上、+15度以下の角度範囲αで変化させた時の、各受信角度位置における反射波の強度の分布の尖度が-0.4以下となることが好ましい。尖度は、より好ましくは-1.0以下、更に好ましくは-1.1以下、更により好ましくは-1.2以下である。尖度の下限は、特に限定されないが、例えば、-0.5以上である。仮想平面上には、電波反射体11の反射面上の反射点11aと、電波発生源20と、反射波の受信部21とが位置する。尖度の測定は、電波反射体11を平面状にした状態で行うこととする。
【0059】
尖度は、分布が正規分布からどれだけ逸脱しているかを表す統計量で、山の尖り度と裾の広がり度を示す。図1に示すように、電波発生源20から出力された電波が、電波反射体11に対して入射角θ1で入射し、出射角θ2で正規反射したとする。受信部21の受信角度位置iを、電波の正規反射した反射波A2に対して、反射点11aを中心として所定の角度ずつ(例えば5度ずつ)、-15度以上+15度以下の角度範囲α内で移動させて、反射強度xを測定する。受信部21の受信角度位置iは、反射点11aを中心とした円弧上に位置している。各受信角度位置iでの反射強度の値x(i:1,2,…,n)の平均値を

、標準偏差をsとすると、尖度は次の式から求められる。
【数1】
【0060】
尖度は、負の値の場合に各角度位置における強度データが正規分布より扁平な分布、すなわち、データが平均値付近から散らばり分布の裾が広がっている状態を示しており、尖度の値が小さいほど分布が扁平である。本実施形態では、尖度を-0.4以下に設定することで、正規反射した反射波に対して±15度の角度範囲α内においては、受信角度位置による反射強度の差が小さくなる。
【0061】
以下、電波反射体11の各層について、より詳細に説明する。以下の説明では、複数の層の重なる方向を「上下方向」として定義する。また、電波反射体11を上下方向に見た場合において、「縦方向」及び「横方向」を定義する。ただし、これら方向の定義は、説明のために用いているに過ぎず、用途を特定するものではない。また、各図は、模式的な図に過ぎず、厳密な縮尺を表すものではない。
【0062】
(導電層16)
導電層16は、導電体12を有する層である。導電層16は、基材13と、電波を反射するための導電体12と、を備える。
【0063】
(基材13)
基材13は、導電体12を支持する。基材13は、本実施形態では、外形が平面視において長方形状(より具体的には、正方形状)に形成されている。基材13は、全面にわたって厚さが均一に形成されている。ただし、基材13としては、厚さは均一でなくてもよく、例えば、くさび形に形成されてもよいし、部分的に球面を有したり、凹凸形状を有した三次元形状に形成されてもよい。
【0064】
基材13としては、例えば、合成樹脂、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、カーボン、ガラス等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリフォルムアルデヒド、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上が挙げられる。基材としては、これら合成樹脂の複合材料であってもよい。本実施形態に係る基材13は、PETシートにより構成されている。
【0065】
基材13の厚さL2としては、例えば、15μm以上が好ましく、より好ましくは、20μm以上であり、更に好ましくは、25μm以上である。一方、基材13の厚さL2の上限値としては、例えば、200μm以下が好ましく、より好ましくは、150μm以下であり、更に好ましくは、125μm以下である。
【0066】
基材13は、可撓性を有することが好ましい。基材13は、保護層15よりも縦弾性係数が高いことが好ましい。基材13の縦弾性係数としては、例えば、1GPa以上が好ましく、より好ましくは、1.2GPa以上であり、更に好ましくは、1.5GPa以上である。一方、基材13の縦弾性係数の上限としては、例えば、4GPa以下が好ましく、より好ましくは、3.8GPa以下であり、更に好ましくは、3.5GPa以下である。(導電体12)
【0067】
導電体12は、電波を反射する導体である。導電体12は、基材13の上面に形成されている。導電体12は、例えば、ウェットエッチング又はドライエッチングにより形成される。ウェットエッチングとしては、例えば、スクリーン印刷法、フォトリソグラフ法、オフセット印刷法等が挙げられる。ドライエッチングとしては、例えば、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザビームエッチング等が挙げられる。
【0068】
また、導電体12は、樹脂に埋め込まれて薄膜状に形成されてもよい。例えば、導電体膜を成形した後、エッチングによりパターンを形成し、パターンを有する導電薄膜体を取り出してもよい。また、リフトオフ層を設けたベースフィルム上に、感光性レジストを塗工し、フォトリソグラフ法によりパターン形成し、パターン部に導電体を充填した後に、パターンを有する導電薄膜体を取り出してもよい。また、導電体12は、金属薄膜を接着してもよいし、金属を蒸着してもよい。
【0069】
薄膜状の導電体12を用いる場合、導電体12を有する薄膜(導電膜層)は、基材13に積層されて、導電層16を構成する。
【0070】
導電体12としては、例えば、銀、金、銅、白金、アルミニウム、チタニウム、シリコーン、酸化インジウム錫、及び合金(例えばニッケル、クロム及びモリブデンを含有する合金)の1種以上等が挙げられる。ニッケル、クロム及びモリブデンを含有する合金としては、例えば、ハステロイB-2、B-3、C-4、C-2000、C-22、C-276、G-30、N、W、X等の各種グレードが挙げられる。
【0071】
導電体12の厚さL3としては、5nm以上が好ましく、より好ましくは、0.05μm以上である。一方、導電体12の厚さL3の上限値としては、10μm以下が好ましい。導電体12の厚さL3が5nm以上であると、適切な電波強度を確保することができる。
【0072】
導電体12のパターンは、図3(B)に示すように、導電体12が無い複数の領域(ここでは、「第1の領域12a」という場合がある)と、第1の領域12aを囲む導電体12と、で構成されている。第1の領域12aには、後述の接着層の一部が充填されてもよいが、導電層16を形成する樹脂が充填されてもよい。複数の第1の領域12aは、同一形状に形成されており、本実施形態では正方形状であるが、長方形状であってもよい。同一形状の複数の第1の領域12aは、一定の間隔で配置されている。
【0073】
本実施形態に係る導電体12をより詳細に説明すると、第1の領域12aは、平行な2つの第1の線状体12Aと、平行な2つの第2の線状体12Bとからなる長方形状の導電体12で囲まれている。第1の線状体12Aと第2の線状体12Bとは、互いに直交する。
【0074】
隣り合う第1の領域12aの間には、共通する1つの線状体12A、12Bが位置している。第1の線状体12Aと第2の線状体12Bとの交点では、電気的に接続されている。線状体の幅L6は、0.05μm以上15μm以下に設定されることが好ましい。
【0075】
第1の領域12aにおける縁の間の最大長さL7、または、隣合う第1の線状体12A、隣合う第2の線状体12Bの間隔L8は、可視光線の波長より大きく、かつ電波反射体11に反射する電波の波長より小さくなるように設定されている。第1の領域12aの辺のうちの最大長さは、2μm以上10cm以下に設定されることが好ましく、より好ましくは、20μm以上1cm以下であり、更に好ましくは、25μm以上1mm以下であり、更に好ましくは、30μm以上、250μm以下である。これにより、最大長さL7は、可視光線の波長より大きく、かつ電波反射体11に反射する電波の波長より小さくすることができる。
【0076】
導電層16の厚さ(L2+L3)は、基材13の厚さが支配的である。導電層の厚さ(L2+L3)としては、例えば、0.1μm以上が好ましく、より好ましくは、0.2μm以上であり、更に好ましくは、0.3μm以上である。一方、導電層の厚さ(L2+L3)の上限値としては、例えば、20μm以下が好ましく、より好ましくは、15μm以下であり、更に好ましくは、10μm以下である。
【0077】
(導電体12のパターンの変形例)
導電体12のパターンは、実施形態のような格子状に限らず、例えば、図4(A)から(E)に示すようなパターンであってもよい。
【0078】
一変形例において、図4(A)に示すように、レンガ積み状のパターンであってもよい。すなわち、複数の第1の線状体12Aが横方向において一直線上に並び、かつ一直線上に並ぶ第1の線状体12Aが、縦方向に間隔をおいて配置される。第2の線状体12Bは、縦方向に隣り合う第1の線状体12A同士を接続するが、縦方向に隣り合う第2の線状体12Bは、互いにずれている。
【0079】
一変形例において、図4(B)に示すように、三角状のパターンであってもよい。本変形例では、導電体12が無い複数の領域として、三角形状の第1の領域12aと、逆三角形状の第2の領域12bと、を備える。第2の領域12bは、隣り合う第1の領域12aの間に配置されている。第1の領域12a及び第2の領域12bの各々は、第1の線状体12Aと、第2の線状体12Bと、第3の線状体12Cとで囲まれている。複数の第1の領域12aは、横方向及び縦方向において、一定の間隔で配置されている。また、複数の第2の領域12bも、横方向及び縦方向において、一定の間隔で配列されている。しかも、第1の領域12a及び第2の領域12bでなす形状は、同じ周期で配列されている。
【0080】
なお、領域12a及び領域12bの各々の形状は、正三角形であるが、例えば、二等辺三角形や3辺の長さが異なる三角形であってもよい。
【0081】
一変形例において、図4(C)に示すように、線状の導電体12に囲まれた正六角形の第1の領域12aであってもよい。複数の第1の領域12aは、縦方向及び横方向において、一定の間隔で配列されている。
【0082】
一変形例において、図4(D)に示すように、形状の異なる複数種類の導電体12の無い領域を有してもよい。すなわち、一変形例では、導電体12の無い領域として、線状の導電体12に囲まれた正五角形の第1の領域12aと、逆正五角形の第2の領域12bと、菱形の第3の領域12cとを備える。複数の第1の領域12aは、横方向及び縦方向において、一定の間隔で配置されている。また、複数の第2の領域12bも、横方向及び縦方向において、一定の間隔で配列されている。また、複数の第3の領域12cも、横方向及び縦方向において、一定の間隔で配列されている。しかも、第1の領域12a、第2の領域12b及び第3の領域12cでなす形状は同じ周期で配列されている。
【0083】
一変形例において、図4(E)に示すようなパターンであってもよい。すなわち、導電体12の無い領域として、線状の導電体12に囲まれた円形状の第1の領域12aと、略三角形状の第2の領域12bと、略逆三角形状の第3の領域12cとを備えてもよい。
【0084】
(接着層14)
接着層14は、導電層16と保護層15との間に設けられ、導電層16と保護層15とを接着する。接着層14としては、導電層16と保護層15との間の全面にわたって設けられることが好ましいが、導電層16と保護層15との間の一部のみに設けられてもよい。接着層14としては、例えば、合成樹脂、ゴム製の粘着シート等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂や、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。接着層14としては、導電層と保護層との間に流動性のある接着剤を充填し、これを硬化することで構成されてもよいし、粘着面を有する粘着シートを導電層16と保護層15との間に配置してもよい。
【0085】
接着層14の厚さL4は、5μm以上が好ましく、より好ましくは、10μm以上であり、更に好ましくは、15μm以上である。接着層14の厚さL4の上限としては、150μm以下が好ましく、より好ましくは、125μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下である。
【0086】
また、接着層14は、水酸基価が5mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは、8mgKOH/g以上であり、更に好ましくは、30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは、90mgKOH/g以上である。一方、接着層14の水酸基価の上限は、120mgKOH/g以下であることが好ましい。接着層14の水酸基価が5mgKOH/g以上であると、高温高湿環境下において、接着層14が発泡又は/及び白化しにくいという利点がある。本明細書において、水酸基価は、JIS K 1557に準拠する試験方法により測定される。
【0087】
また、接着層14の酸価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは、45mgKOH/g以下であり、更に好ましくは、30mgKOH/g以下であり、更に好ましくは、10mgKOH/g以下である。一方、接着層14の酸価の下限は、0.1mgKOH/g以上であることが好ましい。接着層14の酸価が50mgKOH/g以下であると、導電体12が腐食することを防ぐことができ、電波反射性の経時的な安定性を高くすることができる。本明細書において、酸価は、JIS K 2501に準拠する試験方法により測定される。
【0088】
接着層14は、紫外線防止剤を不含有であることが好ましい。接着層14が紫外線防止剤を不含有であると、接着層14を無色透明に調整しやすいという利点がある。ここで、「不含有」には、紫外線防止剤を全く含有していない場合だけでなく、接着層14が無色透明を損なわない程度の僅かな量を含有する場合も含むものとする。紫外線防止剤は、紫外線を吸収または散乱させて紫外線の侵入を防ぐものであり、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤のいずれであってもよい。
【0089】
接着層14は、誘電正接(tanδ)が0.018以下の材料が用いられることが好ましい。誘電正接の値は低いほど好ましい。誘電正接の下限値としては、例えば、0.0001以上が挙げられる。誘電正接が0.018以下の接着層14を用いることで、電波反射体11における電波の電気エネルギーの損失が少なくなり、反射強度をより強くすることができる。
【0090】
また、接着層14の合成樹脂材料は、電場の周波数に応じて比誘電率が変化するものであることが好ましい。比誘電率とは、媒質(本実施形態では合成樹脂材料)の誘電率と真空の誘電率の比である。電場に応じて比誘電率が変化することで、特定の周波数の電場での反射波の強度を高めることができる。比誘電率は、1.5以上7以下の間で変化することが好ましく、1.8以上6.5以下の間で変化することがより好ましい。
【0091】
(保護層15)
保護層15は、導電層16の少なくとも一面を覆い、導電層16を保護する。本実施形態に係る保護層15は、平面視において基材13に対応する大きさを有する。保護層15としては、例えば、合成樹脂製のシート(フィルム)等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリフォルムアルデヒド、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0092】
保護層15の厚さL5は、20μm以上であることが好ましく、より好ましくは、38μm以上であり、更に好ましくは、50μm以上である。一方、保護層15の厚さL5の上限値としては、200μm以下が好ましく、より好ましくは、150μm以下である。
【0093】
保護層15のみに対して鉛筆硬度試験を行った場合、保護層15に対する表面荷重500gでの鉛筆硬度は、「4B」以上であることが好ましく、より好ましくは、「B」以上であり、更に好ましくは「F」以上である。保護層15のみの鉛筆硬度試験で、「4B」以上であれば、導電体12を保護することができる。また、保護層15のみの鉛筆硬度試験で「F」以上であれば、導電体12をより強固に保護することができる。
【0094】
保護層15は、温度40℃、湿度90%rh(相対湿度)での透湿度が、20g/m・24h以下であることが好ましく、より好ましくは、16g/m・24h以下であり、更に好ましくは、12g/m・24h以下であり、更に好ましくは、10g/m・24h以下である。保護層15の温度40℃、湿度90%rh(相対湿度)での透湿度が、20g/m・24h以下であると、導電層16が腐食しにくく、導電層16の表面抵抗率が上昇しにくいという利点がある。本明細書でいう「透湿度」は、JIS Z 0208(1976)に準拠した試験方法で測定される。
【0095】
保護層15は、可撓性を有することが好ましい。保護層15の縦弾性係数としては、例えば、1GPa以上が好ましく、より好ましくは、1.2GPa以上であり、更に好ましくは、1.5GPa以上である。一方、保護層15の縦弾性係数の上限としては、例えば、4GPa以下が好ましく、より好ましくは、3.8GPa以下であり、更に好ましくは、3.5GPa以下である。
【0096】
保護層15には、アンチグレア処理またはアンチリフレクション処理が施されていてもよい。アンチグレア処理またはアンチリフレクション処理は、例えば、保護層15がフィルムで構成されている場合、フィルムの上面(表面)、下面(接着層14に対向する面)の少なくとも一方に施されていてもよい。
【0097】
アンチグレア処理は、保護層15の少なくとも一方の面に凹凸形状を形成し、光を散乱させて保護層15への照明等の光源の映り込みを抑制する処理を意味する。アンチグレア処理を施す方法として、例えば、微粒子を分散させたバインダー樹脂をフィルムの面に塗布する方法、サンドブラスト、ケミカルエッチング等が挙げられる。
【0098】
アンチリフレクション処理は、保護層15の少なくとも一方の面に反射防止膜を形成し、反射防止膜表面から反射する反射光と、反射防止膜とフィルムとの界面から反射する反射光とを干渉により減衰させ、照明等の光源の映り込みを抑制する処理を意味する。反射防止膜は単層でもよいが、屈折率の異なる薄膜を交互に積層させたものでもよい。
【0099】
保護層15は、合成樹脂製のフィルムの片面または両面に、アンチグレア処理またはアンチリフレクション処理が施されたフィルムが貼り付けられたものであってもよい。
【0100】
保護層15は紫外線防止剤を含有してもよく、保護層15の上面(表面)に紫外線カット処理が施されていてもよく、または、紫外線防止剤の含有と紫外線カット処理の両方が行われていてもよい。紫外線カット処理とは、紫外線防止剤を含有する膜を塗布等により形成する処理を意味する。この構成によれば、紫外線が電波反射体11の内部に侵入しにくくなるので、電波反射体11を長期にわたり使用した場合であっても、紫外線による電波反射体11の変色を抑制することができる。紫外線防止剤は、上述のように紫外線吸収剤、紫外線散乱剤のいずれであってもよい。紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジメチル PABA オクチル等が例示され、紫外線散乱剤として、酸化チタン、酸化亜鉛等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0101】
(使用方法)
上記実施形態に係る電波反射体11は、例えば、内装紙や装飾材として用いられる。内層紙は、内装材の内面に取り付けられる紙材である。内装材としては、例えば、内壁、天井板、間仕切り、床材等が挙げられる。装飾材としては、例えば、ポスター、装飾シール、ステンドグラス風シール等が挙げられる。装飾材は、壁材、床材、ドア、照明カバー、欄間、柱、テレビ、机の天板、等が挙げられる。図5では、装飾材30Aとしてのポスターが壁面に取り付けられ、装飾材30Bが照明カバーに取り付けられた例を図示している。
【0102】
電波反射体11を含む装飾材30A、30Bを、室内の機器や建築材料に取り付けることで、屋外から窓33等を通して室内に入った電波が装飾材30A、30Bで反射する。これにより、室内空間Sのより広範囲に電波が届き、電波受信の利便性が向上する。
【0103】
また、電波反射体11は、壁紙として用いる例に限らず、例えば、プリント合板の印刷紙に用いられてもよい。この場合、電波反射体11を含む合板を用いて、ドア、壁面、間仕切り、外壁材、屋根、天井板、床材、幅木等が構成されてもよい。
【0104】
また、電波反射体11としては、平板状に用いるものに限らず、球面に用いられてもよい。例えば、図5(B)は室内を平面から見た図である。電波反射体11を表面に有する建築材料30は、部屋の隅の球面を有する隅柱30Cである。窓33から入った電波が隅柱30Cに反射し、室内空間Sにおいて、より広範囲に電波が拡がる。なお、図5(A)、図5(B)は、出射波を示した模式図に過ぎず、実際の電波の反射の範囲を示すものではない。
【0105】
<評価試験>
電波反射体11について実施例1~13を作製すると共に、比較例1~8を作製し、鉛筆硬度試験、保護層の被着層に対する接着力、電波反射性、全光線透過率、ヘーズ、表面抵抗率、発泡、白化、黄変度Δb*等について、評価試験を行なった。ただし、本発明の電波反射体11は、実施例1~13に限定されない。
【0106】
(実施例及び比較例の説明)
実施例1~13及び比較例1~8において、試験片を次のように作製した。下記の接着剤100部に対して架橋剤1部を添加し、3分間撹拌することによって、接着剤組成物を得た。次に、塗工台に保護層を敷き、接着剤組成物を滴下し、厚さ25μmに調整したコーターを動かすことで接着層を得た。これを温度110℃で5分乾燥させ、その後40℃で48時間加熱養生することで、試験片の保護層及び接着層を得た。
【0107】
次いで、導電層と、先に作製した保護層及び接着層を40℃で6分で真空ラミネートすることにより、試験片を得た。なお、下記条件において、接着層及び保護層が無い試験片については、保護層及び接着層を得る工程は行っていない。
【0108】
(1)実施例1
実施例1として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
(格子状パターンとは、導電体12により囲まれる導電体がない領域12aの形状が正方形状の格子状パターン(図3(B)に示す導電体12のパターン)をいう。格子ピッチとは、上記格子状パターンにおいて、隣合う平行な導電体12間の間隔L8をいう。)
・接着層
接着剤:X313-295S-14(サイデン化学製)
酸価:0.8mgKOH/g
水酸基価:115mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0109】
(2)実施例2
実施例2として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0110】
(3)実施例3
実施例3として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2006HE(綜研化学製)
酸価:30mgKOH/g
水酸基価:10mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0111】
(4)実施例4
実施例4として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2137KH(綜研化学製)
酸価:10mgKOH/g
水酸基価:8.0mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0112】
(5)実施例5
実施例5として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:75μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:8.0g/m・24h
【0113】
(6)実施例6
実施例6として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:50μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:12g/m・24h
【0114】
(7)実施例7
実施例7として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ45μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0115】
(8)実施例8
実施例8として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:1604N(綜研化学製)
酸価:45mgKOH/g
水酸基価:6.6mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0116】
(9)実施例9
実施例9として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:1502C(綜研化学製)
酸価:0.1mgKOH/g
水酸基価:8.8mgKOH/g
架橋剤:E-AX(綜研化学製) エポキシ系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0117】
(10)実施例10
実施例10として上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2147(綜研化学製)
酸価:4.0mgKOH/g
水酸基価:32mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:4.8g/m・24h
【0118】
(11)実施例11
実施例11として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート(KIMOTO製 KB125N05)
厚さ:125μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):3H
透湿度:4.8g/m・24h
【0119】
(12)実施例12
実施例12として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:38μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:16g/m・24h
【0120】
(13)実施例13
実施例13として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銅(Cu)からなる格子状・円形状パターン 線幅2.3μm、線厚み1.6μm、格子ピッチ100μm
(格子状・円形状パターンとは、導電体12により囲まれる導電体がない領域12aの形状が正方形状のパータンと円形状のパターンとを含むものであり、後述する変形例4(図9)に示すパターンをいう。格子ピッチとは、正方形状の領域12aを囲む隣合う平行な導電体12(図9においては第1の囲み部41)間の間隔L8をいい、円形に配置された導電体12(図9においては第2の囲み部51)の直径は格子ピッチと等しい。)
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート(東洋紡エステルフィルムHB3UO)
厚さ:50μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):3H
透湿度:4.8g/m・24h
【0121】
(14)比較例1
比較例1として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層、保護層
無し
【0122】
(15)比較例2
比較例2として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ45μm
・接着層、保護層
なし
【0123】
(16)比較例3
比較例3として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:38μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:16g/m・24h
【0124】
(17)比較例4
比較例4として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:38μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:16g/m・24h
【0125】
(18)比較例5
比較例5として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:25μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:24g/m・24h
【0126】
(19)比較例6
比較例6として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PETシート
厚さ:25μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):F
透湿度:24g/m・24h
【0127】
(20)比較例7
比較例7として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:PPシート
厚さ:50μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):B
透湿度:4.5g/m・24h
【0128】
(21)比較例8
比較例8として、上記試験片についての条件は次の通りである。
・導電層
形状:一辺の長さが20cmの正方形
材料:PETシート
導電体:銀(Ag)からなる格子状パターン 線幅0.8μm、線厚み0.5μm、格子ピッチ30μm
・接着層
接着剤:2980(綜研化学製)
酸価:0.5mgKOH/g
水酸基価:95mgKOH/g
架橋剤:L-45K(綜研化学製) イソシアネート系
・保護層
材料:LDPEシート
厚さ:50μm
鉛筆硬度試験(保護層のみ):4B
透湿度:10g/m・24h
【0129】
(測定方法)
(1)保護層の透湿度の測定
測定器に保護層をセットし、温度40℃湿度90%rhの雰囲気中に48時間置き、一方から水蒸気を供給したあと、透過した水分量を測定することで、透湿度を得た。
【0130】
(2)接着力測定
接着層及び保護層を、25mm四方にカットした厚さ188μmのPETフィルムに貼り付け、オートグラフで300mm/minの速度で、PETフィルムに対して180度方向に引くことにより得た。
【0131】
(3)電波反射性の評価
4.7GHz及び28GHzの入射波について、入射角及び反射角を変化させながら、受信強度を測定し、アルミ板の受信強度と比べることで評価した。受信強度の評価は、アルミ板と同等と評価の場合「◎」とし、アルミ板との受信強度の差が、-10dB以上-20dB未満の場合「〇」とし、アルミ板との受信強度の差が、-20dB以上の場合「×」として評価した。
【0132】
(4)全光線透過率測定、ヘーズ測定
試験片を5cm四方にカットし、ヘーズメーターHM-150(村上色彩技術研究所社製)にてJIS―K7136:2000に準拠した測定方法により全光線透過率、ヘーズを測定することにより得た。
【0133】
(5)表面抵抗率の測定
各試験片について、後述の(7)耐熱耐湿試験を実施した後、ナプソン社製EC-80Pを使用し、測定することにより得た。
【0134】
(6)鉛筆硬度試験方法
JIS K 5600-5-4に準拠し、500±10g以内の荷重をかけ、導電体のメッシュパターンが変形したときの硬さを確認し、その1段階低い硬さを硬度とした。
【0135】
(7)耐熱耐湿試験方法
試験片を温度60℃湿度95%rhに調整した恒温恒湿槽に500時間投入・静置した後、試験片を取り出し、常温で4時間放置したあと、目視で、発泡及び白化の有無を確認した。その後、上記(2)接着力測定、(3)電波反射性の評価、(4)透過率測定、ヘーズ測定を再度行い、耐熱耐湿試験の前(初期)と後で比較した。接着力については、耐熱耐湿試験の前(初期)に対する耐熱耐湿試験の後の接着力の比(初期比)を算出した。
【0136】
(8)耐光性試験
試験片をアトラス社製キセノンサンシャインウェザオメータCi4000中に載置し、槽内を放射照度60W/m(300~400nm)、ブラックスタンダード温度(BST)65±3℃、湿度50±5%RH、槽内温度38℃になるように設定した。1300時間照射(直射日光1年分)前後での黄変度Δb*を測定した。その後、上記(3)電波反射性の評価、(4)透過率測定、ヘーズ測定を再度行い、耐光性試験の前(初期)と後で比較した。
【0137】
(試験結果)
表1-1、表1-2に実施例の試験結果を示し、表2に比較例の試験結果を示す。
【表1-1】

【表1-2】

【表2】
【0138】
表1-1、表1-2、表2からもわかるように、実施例1~13は、試験片に対する鉛筆効果試験が、「4H」であるのに対し、比較例1~8では、「6B」「B」「2B」「5B」であった。このとき、実施例1~13は、電波反射性の評価が「◎」であるのに対し、比較例1~8では、電波反射性の評価が「×」である。
【0139】
この結果から、保護層の硬度に応じて電波反射性の評価が決まることがわかるため、電波反射性を良好に保つためにも、適切な保護層の硬度を選定することが必要であることがわかった。また、比較例1、2について、表面抵抗率が高い値を示し、かつ電波反射性が「×」であることから、表面抵抗率が高い値を示した場合、保護層が剥がれたり、変形したり、損傷したりしていることがわかり、この場合、電波反射性が悪くなることもわかった。
【0140】
要するに、実施例1~13では、鉛筆硬度試験が「F」以上であるため、導電体を保護することができながら、電波反射性についても損なわないようにでき、実用的な電波反射性が得られることがわかった。
【0141】
また、実施例1~13では、耐熱耐湿試験の後および耐光性試験の後においても、電波反射性の評価は「◎」であり、電波反射性が損なわれないことが確認された。また、これらの試験後においてヘーズは30%より小さく、全光線透過率は70%以上であり、透明が保たれることが確認された。さらに、実施例1~13では耐光性試験後の黄変度が15以下であり、変色が大きく進まず劣化が生じにくいことが確認された。
【0142】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0143】
(1)変形例1
導電層16は、例えばメタマテリアル構造を有していてもよい。メタマテリアル構造は、誘電体であるシート形状の導電体12を周期的に等配列させたものであり、この周期配列構造により負の誘電率を有し、周期間隔に基づいて定まる特定の周波数帯域に属する電波を反射する。各導電体12の形状は限定されず上述の形状であってよいが、例えば、図6に示すように、各導電体12は正方形状であってもよい。導電体12が3GHz以上、300GHz以下の周波数の電波を反射するように、一辺の長さL20及び隣り合う導電体12の間の間隔L21が設定されていてもよい。この場合、導電体12の一辺の長さL20は0.7mm以上、800mm以下であってもよく、間隔L21は1μm以上、1000μm以下であってもよい。導電体12の厚みL3は、350nm(0.35μm)以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、さらに50nm以下であることがより好ましい。導電体12の数は基材13の大きさ(面積)に合わせて適宜設定される。一例では、導電体12は基材13の大きさに合わせて基材13上に縦に2つ、横に2つの合計4つ形成されていてもよい。この場合、各導電体12の一辺の長さL20は77.460mm、隣り合う導電体12の間の間隔L21は100μm、厚みL3は350nm(0.35μm)以下に設定されている。導電層16はメタマテリアル構造に限定されず、金属ナノワイヤ積層膜、多層グラフェン、部分剥離グラファイトのいずれかであってもよい。
【0144】
(2)変形例2
図7に示すように、電波反射体11は、上下方向に複数層を積層してもよい。例えば、導電層16Aの上に、接着層14Aを介して別の導電層16Bが接着され、導電層16Bの上に、接着層14Bを介して、保護層15が接着されている。なお、導電層16Aは、実施形態と同様、基材13と導電体12とを備える。導電層16Bは、同様に、基材13と導電体12とを備える。
【0145】
なお、導電層16に形成された導電体12は3層以上積層されていてもよい。導電体12を積層する数が多くなると反射強度が大きくなるが、電波反射体11全体の厚さが厚くなるため可撓性が低下し、また、可視光透過性も低下する。このため、特に可撓性や透明性が必要でない場所に電波反射体11を設ける場合には積層数を多くするなど、積層数は使用用途等に応じて適宜設定される。
【0146】
(3)変形例3
導電体12は、例えば、図8に示すような態様でもよい。導電体12は、複数の第1の囲み部41を含む第1の導電部4と、複数の第2の囲み部51を含む第2の導電部5とが、重なるようなパターンで形成されている。第1の囲み部41と第2の囲み部51とは、導電層に平行な投影面に投影した場合に、互いに共有した部分を有していない。
【0147】
第1の導電部4は、導電体12が形成されていない第1の領域R1を囲む第1の囲み部41が、一定のピッチで繰り返し形成されている。ここでは、第1の導電部4は、格子状に形成されているが、五角形状、六角形状、円形状等に形成されてもよい。
【0148】
第2の導電部5は、導電体12が形成されていない領域である第4の領域R4を囲む第2の囲み部51が、一定のピッチで繰り返し形成されている。第4の領域R4は、隣り合う複数の第1の領域R1にまたがるように形成されている。第2の導電部5は、第1の導電部4と同じ平面上に位置してもよいし、異なる平面上に位置してもよい。すなわち、第2の導電部5は、第1の導電部4に対して導通していてもよいし、導通していなくてもよい。また、隣り合う第2の導電部5は互いに離れているが、接していてもよい。なお、第2の導電部5は、四角形状に形成されているが、五角形状、六角形状等に形成されてもよい。
【0149】
変形例3の態様の導電体12によれば、電波の拡散性を向上することができる。ここでいう「電波の拡散性」とは、正規反射強度と、正規反射の周囲の電波強度との差が一定の範囲に収まることを意味する。
【0150】
(4)変形例4
導電体12は、例えば、図9に示すような態様でもよい。図9の態様は、図8の態様と第2の導電部5(第2の囲み部51)の形状が異なっており、第2の囲み部51は円形状である。第2の囲み部51の中心点は、格子状に形成された第1の導電部4の交点と重なるように配置され、第2の囲み部51の直径は、第1の導電部4の格子ピッチに等しい。すなわち、隣り合う第2の囲み部51は互いに接している。なお、隣り合う第2の囲み部51は互いに離れていてもよい。その他の構成は変形例3と同様であるため、対応する構成に同じ符号を振って説明を省略する。
【0151】
このように、円形の第2の囲み部51を有することで、平面視において、電波反射体11に対する入射方向が反射強度に与える影響を小さくできる。言い換えると、この場合、平面視において、電波が、電波反射体11に対してどの方向から入射しても、入射方向に応じた拡散性の変動を小さくできる。
【0152】
(5)その他
上記実施形態では、電波反射体11は、シート状に形成されたが、本発明ではこれに限らず、例えば、板状、ブロック状、球状、箱状等の形状であってもよい。また、電波反射体11の取付け対象は、建築材料に限らず、電化製品、建築構造物、自動車、電車、航空機等であってもよい。
【0153】
上記実施形態では、電波反射体11は、導電層16と保護層15との間に接着層14を備えたが、保護層15は自己接着力を有していれば、接着層14はなくてもよい。また、保護層15は、導電層16に対して、外縁部を封着材で封止することで、接着層14によらず固定されてもよい。なお、保護層15は、導電層16に対して、必ずしも固定される必要はない。
【0154】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0155】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0156】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0157】
11 電波反射体
12 導電体
12a 第1の領域(導電体の無い領域)
12b 第2の領域(導電体の無い領域)
12c 第3の領域(導電体の無い領域)
14 接着層
15 保護層
16 導電層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9