(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021092
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ろ過体及びろ材の交換方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20240208BHJP
B01D 46/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D29/10 510D
B01D29/10 501A
B01D29/10 530A
B01D46/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123653
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】591254291
【氏名又は名称】関西金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 晴加
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友一
(72)【発明者】
【氏名】辻 篤
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直樹
【テーマコード(参考)】
4D058
4D116
【Fターム(参考)】
4D058JA42
4D058KA03
4D058KA16
4D058KA27
4D058KC63
4D116AA08
4D116BB01
4D116BC27
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4D116BC45
4D116BC46
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4D116FF12B
4D116FF13B
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4D116GG02
4D116GG13
4D116KK04
4D116QB02
4D116QB03
4D116QB12
4D116QB17
4D116QB22
4D116QB23
4D116QB25
4D116QB34
4D116QB36
4D116QB37
4D116VV07
4D116ZZ01
(57)【要約】
【課題】 ろ材を容易に交換することができるろ過体及びろ材の交換方法を提供する。
【解決手段】 ろ過体1は、中空筒状に形成され、複数の貫通孔10及び長手方向に延びるスリット13が形成された支持体2と、シート状に形成され、支持体2の周方向周囲に巻き付けると共に巻き付け方向の両端部がスリット13に挿入されるろ材としての金網3と、スリット13に嵌合自在であって、金網3の両端部をスリット13に固定する固定部材4とから主に構成されている。このように構成すると、固定部材4を取り外すことで金網3が支持体2から取り外し可能となるため、金網3を容易に交換することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状であり、外部から内部又は内部から外部へ流体を通過させてろ過するために用いられるろ過体であって、
中空筒状に形成され、複数の貫通孔及び長手方向に延びるスリットが形成された支持体と、
シート状に形成され、前記支持体の周方向周囲に巻き付けると共に巻き付け方向の両端部が前記スリットに挿入されるろ材と、
前記スリットに嵌合自在であって、前記ろ材の前記両端部を前記スリットに固定する固定部材とを備える、ろ過体。
【請求項2】
前記スリットは、前記固定部材によりシールされる、請求項1記載のろ過体。
【請求項3】
前記支持体の内部において、前記ろ材の巻き付け方向の前記両端部を収納する空間を区画するポケット部材を更に備える、請求項1又は請求項2記載のろ過体。
【請求項4】
前記固定部材は、
前記スリットに沿う方向を長手方向として延びる板状に形成され、前記スリットより短手方向の幅が大きく、その内面が前記支持体の外周面に整列するカバー部と、
前記スリットに嵌合する前記短手方向の幅を有する柱状に形成され、前記スリットに挿入される挿入部とを備える、請求項1又は請求項2記載のろ過体。
【請求項5】
前記挿入部は、前記短手方向の幅が狭くなり前記スリットが嵌まり込む絞り部を有する、請求項4記載のろ過体。
【請求項6】
前記支持体の長手方向端部において、外周面に嵌まり込むガスケットを更に備える、請求項1又は請求項2記載のろ過体。
【請求項7】
前記固定部材は、前記挿入部が前記長手方向に前記カバー部より長く延びることで、長手方向端部において前記挿入部側に前記カバー部の厚さ分の段差部が設けられ、
前記段差部に前記ガスケットが嵌まり込み、
前記ガスケットは、前記ろ材の前記長手方向端部、及び、前記支持体の前記長手方向端部における前記ろ材が巻き付けられていない部分を覆う、請求項6記載のろ過体。
【請求項8】
前記支持体の胴部において、前記ろ材の周囲に巻き付ける拘束部材を更に備える、請求項1又は請求項2記載のろ過体。
【請求項9】
中空筒状であり、外部から内部又は内部から外部へ流体を通過させてろ過するために用いられるろ過体におけるろ材の交換方法であって、
前記ろ過体は、中空筒状に形成され複数の貫通孔及び長手方向に延びるスリットが形成された支持体と、シート状に形成され前記支持体の周方向周囲に巻き付けると共に巻き付け方向の両端部が前記スリットに挿入されるろ材と、前記スリットに嵌合自在であって前記ろ材の前記両端部を前記スリットに固定する固定部材とを備え、
前記固定部材を前記スリットから取り外し、前記ろ材を取り外す取り外し工程と、
新たなろ材を前記支持体に取り付ける装着工程とを備える、ろ材の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はろ過体及びろ材の交換方法に関し、中空筒状であり外部から内部又は内部から外部へ流体を通過させてろ過するために用いられるろ過体及びろ材の交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のろ過体として、特許文献1には、筒状をなすろ過材が多孔性の支持体により支持され中心軸線方向両端を開口部とするろ過体が開示されている。ろ過時には開口部から原水が流入しろ過材を透過してろ過水としてろ過体の周面から外方へ排水され、さらに逆洗時には、ろ過体外の逆洗水がろ過体の周面から内部へ流入してろ過材の内面の付着物を剥離し開口部から排水されることとする。そのろ過材としては、金属メッシュフィルタを用いて周縁で溶接等により一体化して、一つの筒状シートとするものが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のろ過体は、ろ過材(ろ材)が支持体と一体化しているものが一般的であったため、使用を続けてろ材が劣化した際にはろ過体全体を取り換える必要がありコスト高となっていた。
【0005】
一方、上記の特許文献1に記載のろ過体では、ろ材が支持体に固定されていないため、保守時にはろ過体全体を取り換えることなくろ材のみを開口端部から外すことで交換することができたが、周縁で溶接され一体化したろ材を長手方向に延びる支持体から取り外すことは必ずしも容易ではなく、より簡単にろ材を交換することができるものが求められていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ろ材を容易に交換することができるろ過体及びろ材の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、中空筒状であり、外部から内部又は内部から外部へ流体を通過させてろ過するために用いられるろ過体であって、中空筒状に形成され、複数の貫通孔及び長手方向に延びるスリットが形成された支持体と、シート状に形成され、支持体の周方向周囲に巻き付けると共に巻き付け方向の両端部がスリットに挿入されるろ材と、スリットに嵌合自在であって、ろ材の両端部をスリットに固定する固定部材とを備えるものである。
【0008】
このように構成すると、固定部材を取り外すことでろ材が支持体から取り外し可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、スリットは、固定部材によりシールされるものである。
【0010】
このように構成すると、ろ過対象物がろ材を介さずに二次側に通過することを防止する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、支持体の内部において、ろ材の巻き付け方向の両端部を収納する空間を区画するポケット部材を更に備えるものである。
【0012】
このように構成すると、ろ材の巻き付け方向の両端部がポケット部材により被覆される。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、固定部材は、スリットに沿う方向を長手方向として延びる板状に形成され、スリットより短手方向の幅が大きく、その内面が支持体の外周面に整列するカバー部と、スリットに嵌合する短手方向の幅を有する柱状に形成され、スリットに挿入される挿入部とを備えるものである。
【0014】
このように構成すると、挿入部により固定部材がスリットから抜け止めされ、カバー部によりろ材をスリットに押さえつけることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、挿入部は、短手方向の幅が狭くなりスリットが嵌まり込む絞り部を有するものである。
【0016】
このように構成すると、絞り部によりろ材がスリットに更に固定される。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、支持体の長手方向端部において、外周面に嵌まり込むガスケットを更に備えるものである。
【0018】
このように構成すると、ガスケットによりろ材が支持体の長手方向端部に押さえつけられる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、固定部材は、挿入部が長手方向にカバー部より長く延びることで、長手方向端部において挿入部側にカバー部の厚さ分の段差部が設けられ、段差部にガスケットが嵌まり込み、ガスケットは、ろ材の長手方向端部、及び、支持体の長手方向端部におけるろ材が巻き付けられていない部分を覆うものである。
【0020】
このように構成すると、ガスケットの嵌まり込みが抜け止めされる。又、ろ材の浮きを防止する。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、支持体の胴部において、ろ材の周囲に巻き付ける拘束部材を更に備えるものである。
【0022】
このように構成すると、拘束部材によりろ材が支持体の胴部に押さえつけられる。
【0023】
請求項9記載の発明は、中空筒状であり、外部から内部又は内部から外部へ流体を通過させてろ過するために用いられるろ過体におけるろ材の交換方法であって、ろ過体は、中空筒状に形成され複数の貫通孔及び長手方向に延びるスリットが形成された支持体と、シート状に形成され支持体の周方向周囲に巻き付けると共に巻き付け方向の両端部がスリットに挿入されるろ材と、スリットに嵌合自在であってろ材の両端部をスリットに固定する固定部材とを備え、固定部材をスリットから取り外し、ろ材を取り外す取り外し工程と、新たなろ材を支持体に取り付ける装着工程とを備えるものである。
【0024】
このように構成すると、固定部材を取り外すことでろ材が支持体から取り外し可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、固定部材を取り外すことでろ材が支持体から取り外し可能となるため、ろ材を容易に交換することができる。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、ろ過対象物がろ材を介さずに二次側に通過することを防止するため、ろ過体の信頼性が向上する。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、ろ材の巻き付け方向の両端部がポケット部材により被覆されるため、ろ材の両端部の損傷が低減する。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、挿入部により固定部材がスリットから抜け止めされ、カバー部によりろ材をスリットに押さえつけることができるため、ろ材が強固に固定される。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、絞り部によりろ材がスリットに更に固定されるため、ろ材の固定がより強固となる。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、ガスケットによりろ材が支持体の長手方向端部に押さえつけられるため、シール性が向上する。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、ガスケットの嵌まり込みが抜け止めされるため、固定部材の固定がより強固となる。又、ろ材の浮きを防止するため、ろ過体のシール性が更に向上する。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、拘束部材によりろ材が支持体の胴部に押さえつけられるため、ろ材の浮きを防止する。
【0033】
請求項9記載の発明は、固定部材を取り外すことでろ材が支持体から取り外し可能となるため、ろ材を容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】この発明の第1の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【
図2】
図1で示したろ過体に含まれる支持体を示す斜視図である。
【
図3】
図1で示したろ過体に含まれる固定部材を示す斜視図である。
【
図4】
図3で示したIV-IVラインの断面図である。
【
図5】
図1で示したV-Vラインの断面を示す斜視図である。
【
図6】この発明の第2の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【
図7】
図6で示したろ過体に含まれる支持体を示す斜視図である。
【
図8】
図6で示したろ過体に含まれるポケット部材を示す斜視図である。
【
図9】
図6で示したろ過体に含まれる固定部材を示す斜視図である。
【
図10】
図9で示したX-Xラインの断面図である。
【
図11】
図6で示したXI-XIラインの断面を示す斜視図である。
【
図12】この発明の第3の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【
図13】この発明の第4の実施の形態によるろ過体を用いたろ過装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1はこの発明の第1の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【0036】
同図を参照して、ろ過体1は、中空円筒状に形成された金属製で多孔性の支持体2と、シート状に形成され支持体2の周方向周囲に巻き付けられたろ材としての金網3と、金網3を支持体2に固定するゴム製の固定部材4とから主に構成されている。
【0037】
図2は
図1で示したろ過体に含まれる支持体を示す斜視図である。
【0038】
同図を参照して、支持体2の基本骨格を構成する支持体本体8は、長手方向両端部が開放されている中空円筒状であり、縦横に規則的な間隔で複数の貫通孔10が形成されている。そのため、支持体本体8の外周面に金網3を巻き付けたろ過体1にあっては、ろ過体1の外部(一次側)から内部(二次側)へ、ろ過対象物である異物を含む液体、気体といった流体を通過させ、ろ過することができる。そしてろ過された流体は、開放された長手方向両端部からろ過体1外へ排出される。又、逆に内部から外部方向のろ過も可能である。
【0039】
又、支持体本体8の胴部9には、長手方向の一方端部11から他方端部12にかけて外部から内部へ貫通するスリット13が形成されている。尚、支持体本体8の長手方向の一方端部11及び他方端部12には、支持体本体8の胴部9の外周面が連続するようにスリット13上部及び下部を架橋する架橋部14、15が設けられている。
【0040】
図3は
図1で示したろ過体に含まれる固定部材を示す斜視図であり、
図4は
図3で示したIV-IVラインの断面図である。
【0041】
これらの図を参照して、固定部材4は、スリット13に沿う方向を長手方向として延びる湾曲した板状のカバー部17と、カバー部17の一方面側に一体化され、長手方向にカバー部17より長く延びる柱状の挿入部18とから構成されている。
【0042】
カバー部17は、スリット13より短手方向の幅が大きく形成されている。又、挿入部18は、スリット13に嵌合する短手方向の幅を有するように形成されている。具体的には、挿入部18の最も大きい短手方向の幅Wが、スリット13の短手方向の幅よりも大きく設定されている。固定部材4がゴム製で可撓性を有することにより、固定部材4をスリット13に位置を合わせ押し付けることで、挿入部18がスリット13に嵌合し、
図1に示したように固定部材4を取り付けた状態となる。又、カバー部17はスリット13に挿入されることはなく、カバー部17の内面が支持体2の外周面に整列する。
【0043】
又、固定部材4は短手方向だけでなく長手方向においてもスリット13に嵌合する大きさを有しており、これによってスリット13は固定部材4によりシールされる。このように構成することで、ろ過対象物が金網3を介さずに内部(二次側)に通過することを防止するため、ろ過体1の信頼性が向上する。
【0044】
又、挿入部18は、短手方向の幅が狭くなった絞り部19を有する。このように構成した効果については後述する。
【0045】
次に、ろ過体1におけるろ材の装着工程を説明する。
【0046】
まず金網3を支持体2の周囲に巻き付け、金網3の巻き付け方向の両端部をスリット13に挿入する。次に、固定部材4を金網3の両端部ごとスリット13に嵌合させることで、金網3が固定されると共にスリット13がシールされる。
【0047】
このようにして金網3が取り付けられたろ過体1の内部構造について説明する。
【0048】
図5は
図1で示したV-Vラインの断面を示す斜視図である。
【0049】
同図を参照して、金網3は支持体2の周囲に巻き付けられると共に固定部材4により固定されており、金網3の巻き付け方向の両端部23a、23bはスリット13を通って支持体2内部に露出している。固定部材4の挿入部18により固定部材4全体がスリット13から抜け止めされると共に、カバー部17の内面(挿入部18側の面)が支持体2に押し付けられることで、間に挟み込まれた金網3をスリット13に押さえつけることができるため、金網3が強固に固定される。又、ろ過対象物が金網3を介さずにスリット13を通過することを防止する。
【0050】
又、このように金網3を支持体2の周方向周囲に巻き付けると共に固定部材4によりスリット13に押さえつけるように固定することで、ろ過体1の外部から内部へ流体が通過する使用方法の場合、流体圧が固定部材4を押さえつける方向にかかるため、シール性が向上し、固定部材4の抜け防止にも繋がるメリットがある。
【0051】
又、固定部材4の挿入部18にあっては、短手方向の幅が狭くなる絞り部19においてスリット13が嵌まり込む。そのため、金網3が絞り部19とスリット13との間に挟み込まれることで、絞り部19により金網3がスリット13に更に固定されるため、金網3の固定がより強固となる。
【0052】
又、
図1を参照して、支持体2の長手方向両端部において、支持体2の外周面にガスケット5a、5bが嵌まり込んでいる。このようなリング型ガスケットにより、金網3が支持体2の長手方向端部に押さえつけられるため、金網3の浮きを防止することができる。又、固定部材4が不用意にスリット13から外れることを防止する。
【0053】
更に、固定部材4におけるカバー部17と挿入部18の長手方向の長さの差により、固定部材4の長手方向端部において挿入部18側にカバー部17の厚さ分生じた段差部20(
図3参照)にガスケット5a、5bのサイズを合わせることで、ガスケット5a、5bの嵌まり込みが抜け止めされ、固定部材4の固定がより強固となる。
【0054】
又このとき、ガスケット5a、5bは、金網3の長手方向端部、及び、支持体2の長手方向端部における金網3が巻き付けられていない部分を覆うように構成されている。このように構成することで、金網3の浮きを長手方向端部の全周にわたって防止すると共に、支持体2における金網3が巻き付けられていない部分の露出を防ぐため、ろ過体1のシール性が更に向上する。
【0055】
そして、使用を続け金網3が劣化した際には、固定部材4をスリット13から取り外すことで、金網3が支持体2から取り外し可能となる。劣化した金網3を除去した後、新たな金網3を支持体2に同様に取り付けることで、金網3を容易に交換することができる。
【0056】
ここで、上述した第1の実施の形態によるろ過体1にあっては、金網3の巻き付け方向の両端部23a、23bがろ過体1の内部(二次側)に露出している。そのため、金網3の巻き付け方向の両端部23a、23bが使用に伴って損傷した場合、欠落した金網3がろ過された流体に混入する虞が考えられた。
【0057】
次に、この課題を解決するための本発明の第2の実施の形態によるろ過体について説明する。尚、基本的な構成は第1の実施の形態によるものと同様であるため、以下では相違点を中心に述べる。
【0058】
図6はこの発明の第2の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【0059】
同図を参照して、ろ過体31では、金網33の固定部材34による固定方法は上述したろ過体1の場合と基本的に同様であるため、金網33の巻き付け方向の両端部はスリット43を通って支持体32内部に挿入されている。しかし、支持体32内部のスリット43周囲に取り付けられたポケット部材35により金網33の両端部は被覆され、支持体32内部で露出することがない。ポケット部材35の詳細な構成については後述する。
【0060】
次に
図7は
図6で示したろ過体に含まれる支持体を示す斜視図である。
【0061】
同図を参照して、支持体32には、外周面の一部を切り欠くように、スリット43が支持体32の長手方向の一方端部41から他方端部42にかけて連通して形成されている。
【0062】
次に
図8は
図6で示したろ過体に含まれるポケット部材を示す斜視図である。
【0063】
同図を参照して、ポケット部材35では、長手方向に延びる四角筒状のポケット部材本体38において、一つの側周面40が長手方向に連通して切り欠かれることで二次スリット39が形成されている。換言すると、ポケット部材本体38の側周面40における切り欠き端部46a、46bが二次スリット39を介して離間している。又、切り欠き端部46a、46bは互いに近づく方向に先細りに形成されている。
【0064】
金網33の取り付けに際しては、金網33の巻き付け方向の両端部をポケット部材35の二次スリット39に挿入することで、ポケット部材35の内部に金網33の両端部が収納される。又、ポケット部材本体38の長手方向両端部に係合する蓋部44、45を取り付けることで、長手方向両端部においても金網33の両端部の露出を防止している。即ち、ポケット部材35を支持体32に取り付けた状態にあっては、ポケット部材35は支持体32の内部において、金網33の巻き付け方向の両端部を収納する空間を区画する。
【0065】
このように構成することで、金網33の巻き付け方向の両端部がポケット部材35により被覆されるため、金網33の両端部の損傷が低減する。又、金網3が欠落した場合であっても、ろ過された流体に混入する虞を防止することができる。 次に
図9は
図6で示したろ過体に含まれる固定部材を示す斜視図であり、
図10は
図9で示したX-Xラインの断面図である。
【0066】
これらの図を参照して、固定部材34は、スリット43に沿う方向を長手方向として延びる平板状のカバー部47と、カバー部47の一方面側に一体化された柱状の挿入部48とから構成されている。
【0067】
挿入部48は、幅が狭くなった絞り部49からカバー部47側にかけて徐々に短手方向の幅が広くなる膨出部51を有している。
【0068】
図11は
図6で示したXI-XIラインの断面を示す斜視図である。
【0069】
同図を参照して、上述したようにポケット部材35の側周面40における切り欠き端部46a、46bが先細りに構成されているため、二次スリット39に挿入された固定部材34の挿入部48の絞り部49及び膨出部51と噛み合う。そのため、固定部材34はより強固にスリット43に固定される。
【0070】
又、金網33がポケット部材35の切り欠き端部46a、46bと固定部材34の挿入部48との間に挟み込まれるため、金網33はより強固に支持体32に固定される。
【0071】
次に
図12はこの発明の第3の実施の形態によるろ過体を示す斜視図である。
【0072】
このろ過体61の基本的な構成は第2の実施の形態によるろ過体31と同様であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0073】
同図を参照して、ろ過体61において、支持体62の長手方向の一方端部71にはフランジ74が設けられており、他方端部72には他方端部72を塞ぐように底板75が設けられている。
【0074】
このように構成すると、ろ過した流体は他方端部72側から一方端部71側に流れるため、流体を方向付けたい場面の使用で有用である。
【0075】
次に
図13はこの発明の第4の実施の形態によるろ過体を用いたろ過装置を示す断面図である。
【0076】
このろ過体81の基本的な構成は上述したろ過体61と同様である。尚、同図においてろ過体81に描いた一点鎖線より下側はろ過体81の外観を描画し、一点鎖線より上側はろ過体81の内部構造を描画している。
【0077】
同図を参照して、水を流す配管86a、86bに対し、流水のろ過を目的としてろ過装置80は設置されている。流水は、矢印87aで示すように、
図13の右側から左側にかけてろ過装置80に入る。即ち、配管86a側が一次側であり、配管86b側が二次側である。
【0078】
ろ過装置80は、配管86a、86b間に設置された円筒状のハウジング88と、ハウジング88内部に収納されたろ過体81とから主に構成されている。ハウジング88の内壁に設けられた取付座89には雌ねじ加工が施されており、ろ過体81の二次側端部に設けられた取付金具90には雄ねじ加工が施されている。そのため、取り付けに際しては、ろ過体81の二次側先端に設けられた取っ手91を回しながらねじ込むことで、水密に螺合され、ろ過体81はハウジング88内に収納される。又、取付金具90と取付座89の間にはガスケット92が設けられ、より強固にシールする。
【0079】
使用に際して、配管86aからハウジング88内に入った流水は、矢印87bで示すように、ろ過体81の金網83及び支持体82を通過してろ過される。そして、矢印87cで示すように、ろ過体81を一次側に抜け、配管86bに合流する。
【0080】
使用を続けろ過装置80のろ過機能が低下した際には、ハウジング88からろ過体81を取り出し、固定部材84を取り外して金網83の固定を解除して交換することができる。このようにして、容易にろ過装置80のろ過機能を回復して再使用することができる。
【0081】
このようにろ材を容易に交換できるろ過体は、強固な目詰まりや汚れの固着により、ろ材を洗浄して再使用することが難しい場合や、異物濃度が高く、ろ材の交換頻度が高い場合等に特に有用である。
【0082】
尚、本発明の各実施の形態によるろ過体は、配管に設けた比較的小型のハウジングに用いる場合を説明していたが、これに限られず、用途に応じて長さや大きさ、本数を適宜設定することができる。例えば、一つのハウジングに複数本設置されるカートリッジフィルター、キャンドルフィルターや、比較的大型のバスケットフィルター等の用途に用いることができる。
【0083】
尚、本発明の各実施の形態にあっては、支持体が金属製であって特定の形状であったが、中空筒状であれば他の素材や形状であっても良い。又、支持体の貫通孔の位置、大きさや数も適宜変更することができる。
【0084】
又、本発明の各実施の形態にあっては、ろ材として金網を用いていたが、他の種類のろ材を用いても良い。例えば、樹脂網、ろ紙、ろ布、折り曲げ可能な金属薄膜に所定間隔で孔を形成したエッチングシート等が挙げられる。又、ろ材の孔の大きさは用途に応じて適宜設定することができ、1μm~1000μmのものが挙げられる。更に、孔の大きさが同一又は異なる複数枚のろ材を重ねて使用しても良い。
【0085】
更に、本発明の各実施の形態にあっては、固定部材がゴム製であって特定の構造であったが、スリットに嵌合自在であってろ材の両端部をスリットに固定することができれば他の素材や構造であっても良い。例えば、スリットと略同一の大きさに成形した樹脂製としても良い。又、固定部材をガスケット等の別部材で固定しても良い。
【0086】
更に、本発明の各実施の形態にあっては、挿入部が絞り部を有していたが、絞り部を有していなくとも良い。又逆に、絞り部と同様の構造を複数個設けて段々構造としても良く、このように構成すると、金網を張った状態としてより強固に固定することができる。
【0087】
更に、本発明の各実施の形態にあっては、支持体の長手方向両端部にガスケットを備えていたが、ガスケットが無くとも良い。又、一方の端部のみにガスケットを設けても良い。
【0088】
更に、本発明の各実施の形態において、支持体の長手方向両端部に段差や溝を設けても良い。このように構成すると、ガスケットを用いる場合には段差や溝にガスケットを嵌め、抜け止めすることができる。
【0089】
更に、本発明の各実施の形態において、新たなろ材を支持体に取り付ける際、支持体のスリットと対応した部分が開放されたC型リングを用いて仮止めしても良い。このように構成すると、ろ材の巻き付け方向の両端部をスリットに挿入する装着工程がより容易となる。
【0090】
更に、本発明の各実施の形態において、支持体の胴部において、ろ材の周囲に巻き付ける拘束部材を更に備えても良い。このように構成すると、拘束部材によりろ材が支持体の胴部に押さえつけられるため、ろ材の浮きを防止する。拘束部材としては、支持体の胴部のろ材上にらせん状にワイヤーを巻き付けるものや、適当なピッチで輪状クランプを設けるものが挙げられる。
【0091】
更に、本発明の第2の実施の形態にあっては、ポケット部材本体の側周面における切り欠き端部が先細りに形成されていたが、平らに形成されていても良い。
【0092】
更に、本発明の第2の実施の形態にあっては、支持体とポケット部材とが別体とされていたが、これらを一体的に成形しても良い。
【符号の説明】
【0093】
1、31、61、81…ろ過体
2、32、62、82…支持体
3、33、83…金網
4、34、84…固定部材
5…ガスケット
8…支持体本体
9…胴部
10…貫通孔
13、43…スリット
17、47…カバー部
18、48…挿入部
19、49…絞り部
23…端部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。