(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021093
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】キャスター
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B60B33/00 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123654
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】597100860
【氏名又は名称】ゴールドキャスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 政広
(57)【要約】
【課題】ブレーキ部材を備えたキャスターにおいて、構造簡易なキャスターを提供する。
【解決手段】車輪6を回動可能に軸支する本体部材と、本体部材に回動可能に軸支されると共に、制動部23Sが車輪6に近付く制動方向に回転して車輪6の外周面6Gを押圧可能なブレーキ部材21と、制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れる制動解除方向にブレーキ部材21を付勢するダブルトーションバネ27と、ブレーキ部材21に設けられた筒部26と、本体部材に回動可能に軸支されたブレーキ操作部材31とを備える。ブレーキ操作部材31の先端側を下方向に回転することにより、ブレーキ操作部材31が筒部26を押してブレーキ部材21が制動方向に回転し、この制動方向の回転により制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回動可能に軸支する本体部材と、
前記本体部材に回動可能に軸支されると共に、制動部が前記車輪に近付く制動方向に回転して前記車輪の外周面を押圧可能なブレーキ部材と、
前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れる制動解除方向に前記ブレーキ部材を付勢する付勢手段と、
前記ブレーキ部材に設けられた作動部と、
前記本体部材に回動可能に軸支されたブレーキ操作部材とを備え、
前記ブレーキ操作部材の先端側を下方向に回転することにより、該ブレーキ操作部材が前記作動部を押して前記ブレーキ部材が前記制動方向に回転し、この制動方向の回転により前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧するように構成したことを特徴とするキャスター。
【請求項2】
前記ブレーキ操作部材は、前記作動部に対応して揺動腕部を有し、
前記本体部材に前記揺動腕部の基端側を回動可能に軸支し、
前記揺動腕部の先端側を下方向に回転することより、前記揺動腕部が前記作動部を押して前記ブレーキ部材が前記制動方向に回転し、この制動方向の回転により前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧し、
前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧した位置で、前記作動部が係止する係止部を、前記揺動腕部に設けたことを特徴とする請求項1記載のキャスター。
【請求項3】
前記本体部材に設けられ、前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れた位置で前記作動部が当接して前記ブレーキ部材の前記制動解除方向の回転を規制する当接受部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のキャスター。
【請求項4】
前記ブレーキ操作部材の上方位置で前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れ、前記ブレーキ操作部材の下方位置で前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧し、
前記ブレーキ操作部材の前記上方位置で隠れ、前記ブレーキ操作部材の前記下方位置で該ブレーキ操作部材上に現れる識別表示部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のキャスター。
【請求項5】
前記識別表示部を備えた識別部材を前記本体部材に揺動可能に設け、
前記ブレーキ操作部材の前記下方位置で前記ブレーキ操作部材上に前記識別表示部が現れるように前記識別部材に係合する作動部材を備え、
前記作動部材の基端側を前記ブレーキ操作部材に回動可能に軸支し、
前記作動部材の先端側に、前記車輪に係合する車輪係合部を設けると共に、前記車輪係合部が前記車輪に係合した状態で、前記識別表示部が前記ブレーキ操作部材上に現れるように前記識別部材に係合する識別部材係合部を設けたことを特徴とする請求項4記載のキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、ブレーキ部は、ブレーキフレームに外装した操作レバーと、ブレーキフレームに内装したブレーキシューからなり、前記ブレーキシューの軸孔の周囲に設けた輪状突部は、ブレーキフレームの下転動孔に入り込むようにしており、操作レバーの操作部を足先などで押し下げ、操作レバーを下げた状態にすると、操作レバーを軸支するリベット頭部がブレーキフレームの上転動孔を転動して、この上転動孔の下方に移動すると共に、ブレーキシューを軸支するリベットがブレーキフレームの下転動孔を下降して、この下転動孔の下方に移動し、このリベットの下降にともないブレーキシューも下降し、ブレーキシューのブレーキライニングが、車輪の接地面に接触し、車輪がロック状態となるキャスター(例えば特許文献1)がある。
【0003】
上記特許文献1のキャスターでは、操作レバーの操作部を足先などで押し下げることにより、比較的大きな制動力を得ることができる。
【0004】
一方、上記特許文献1のキャスターは、キャスター部にブレーキ部を取り付けたり、キャスター部からブレーキ部を取り外す場合に、この取り付けたり、取り外す作業を簡便なものとするため、構造が複雑になる面があった。
【0005】
また、車輪の制動状態を表示するものとして、ペダルの踏部の前部を前方へ押し倒すと、車輪は回転することができず、制動され、この状態で踏部の上面が後部を向くことになり、斜め上からは制動表示を認識することはでき、一方、ペダルの踏部の後部を下方へ傾倒させると、車輪に対するストッパの制動が解除され、踏部の下に隠れていたハウジングの後上部に制動解除表示が現れ、車輪がフリー状態で走行移動可能なことを認識することができるキャスター(例えば特許文献2)がある。
【0006】
上記特許文献2のキャスターでは、表示を視認して車輪の制動状態と制動解除状態が判るが、ペダルの前部を前方に押し倒してロックするものであるため、ペダルを足で踏んでロックする場合に比べて、ペダルに大きな力を加えることができず、構造的に大きな制動力が得られ難い面がある。また、踏部の上面や、踏部の下に隠れていたハウジングに制動表示や制動解除表示を設けるため、真上から近付いた位置でないと、制動状態と制動解除状態とを判別し難い面があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-243943号公報
【特許文献1】特開2000-296701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、ブレーキ部材を備えたキャスターにおいて、構造簡易なキャスターを提供することを目的とし、加えて、ブレーキ部材の制動状態の識別が容易なキャスターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、車輪を回動可能に軸支する本体部材と、前記本体部材に回動可能に軸支されると共に、制動部が前記車輪に近付く制動方向に回転して前記車輪の外周面を押圧可能なブレーキ部材と、前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れる制動解除方向に前記ブレーキ部材を付勢する付勢手段と、前記ブレーキ部材に設けられた作動部と、前記本体部材に回動可能に軸支されたブレーキ操作部材とを備え、前記ブレーキ操作部材の先端側を下方向に回転することにより、該ブレーキ操作部材が前記作動部を押して前記ブレーキ部材が前記制動方向に回転し、この制動方向の回転により前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、前記ブレーキ操作部材は、前記作動部に対応して揺動腕部を有し、前記本体部材に前記揺動腕部の基端側を回動可能に軸支し、前記揺動腕部の先端側を下方向に回転することより、前記揺動腕部が前記作動部を押して前記ブレーキ部材が前記制動方向に回転し、この制動方向の回転により前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧し、前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧した位置で、前記作動部が係止する係止部を、前記揺動腕部に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、前記本体部材に設けられ、前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れた位置で前記作動部が当接して前記ブレーキ部材の前記制動解除方向の回転を規制する当接受部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、前記ブレーキ操作部材の上方位置で前記制動部が前記車輪の前記外周面から離れ、前記ブレーキ操作部材の下方位置で前記制動部が前記車輪の前記外周面を押圧し、前記ブレーキ操作部材の前記上方位置で隠れ、前記ブレーキ操作部材の前記下方位置で該ブレーキ操作部材上に現れる識別表示部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、前記識別表示部を備えた識別部材を前記本体部材に揺動可能に設け、前記ブレーキ操作部材の前記下方位置で前記ブレーキ操作部材上に前記識別表示部が現れるように前記識別部材に係合する作動部材を備え、前記作動部材の基端側を前記ブレーキ操作部材に回動可能に軸支し、前記作動部材の先端側に、前記車輪に係合する車輪係合部を設けると共に、前記車輪係合部が前記車輪に係合した状態で、前記識別表示部が前記ブレーキ操作部材上に現れるように前記識別部材に係合する識別部材係合部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、ブレーキ操作部材の先端側を下方向に回転すると、ブレーキ操作部材が作動部を押してブレーキ部材が制動方向に回転し、制動部が車輪の外周面を押圧する制動状態とすることができ、ブレーキ部材に設けた作動部とブレーキ操作部材とにより制動状態に切替える構造であるから、構造が比較的簡易で、製造が容易となる。
【0015】
請求項2の構成によれば、ブレーキ操作部材の先端側を下方向に回転すると、揺動腕部が作動部を押してブレーキ部材が車輪の外周面に押圧することより、車輪を制動状態にすることができる。また、揺動腕部の係止部に作動部が係止することにより、制動位置でブレーキ操作部材が位置固定される。
【0016】
請求項3の構成によれば、制動部が車輪の外周面から離れた位置で、作動部が本体部材の当接受部に当接してブレーキ部材の制動解除方向の回転が規制される。このように作動部を利用してブレーキ部材の制動解除方向の回転を規制するため、付勢手段により制動解除方向に付勢されているブレーキ部材の制動解除方向への回り止め構造を、別途に設ける必要が無くなる。
【0017】
請求項4の構成によれば、車輪の制動解除状態で隠れていた識別表示部が、制動状態でブレーキ操作部材上に現れるため、制動状態と制動解除状態が判り易いものとなる。
【0018】
請求項5の構成によれば、上方位置から下方位置にブレーキ操作部材を回転すると、車輪係合部が車輪に係合し、識別部材係合部が識別部材に係合して識別表示部がブレーキ操作部材上に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に実施例1を示す制動解除状態のキャスターの一部を切り欠いた側面図である。
【
図2】同上、制動解除状態の要部の一部切欠き断面図である。
【
図3】同上、制動状態のキャスターの一部を切り欠いた側面図である。
【
図5】同上、保持部材とブレーキ操作部材の斜視図である。
【
図6】同上、制動解除状態の要部の一部切欠き断面図である。
【
図7】本発明の実施例2を示す制動解除状態のキャスターの一部を切り欠いた側面図である。
【
図9】同上、ブレーキ操作部材が上方位置の要部に一部切欠き断面図である。
【
図10】同上、ブレーキ操作部材が下方位置の要部に一部切欠き断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須条件であるとは限らない。
【実施例0021】
図1乃至
図6は、本発明のキャスターの一実施形態について示している。本実施例において、便宜上、
図1~
図3及び
図6において、右側を前側、左側を後側とする。キャスター1の上部には、円形取付板である上皿部材2が設けられ、この上皿部材2の中央に、中心軸が垂直方向の中空軸3を固定し、その上皿部材2の下側に第1の鋼球4を介して中皿部材5を回動自在に配設し、この中皿部材5の下側に、車輪6を回動自在に軸支する支持部材たるフォーク7の上部7Aを、固定部7Bにより固定している。
【0022】
また、フォーク7の上部7Aの下面側は、第2の鋼球4Aを介して前記中空軸3の下部により支持され、上皿部材2と中空軸3に対して、中皿部材5とフォーク7とが回動可能に連結されている。尚、車輪6はその外周が硬質ウレタンゴムなどから形成される。
【0023】
前記フォーク7は、前記上部7Aの左右に下向きの腕部7C,7Cを有し、これら左右の腕部7C,7Cの間に車輪6を配置すると共に、左右の腕部7C,7C間に円筒状の軸部9を設け、この軸部9により車輪6を回動可能に軸支している。また、左右の腕部7C,7Cと軸部9にボルト10を挿通し、このボルト10の先端にナット10A(
図4)を螺合してフォーク7に車輪6が取り付けられている。
【0024】
図4などに示すように、前記フォーク7の前記腕部7C,7Cの後部には、保持部材たるブラケット11が固定されている。そして、このブラケット11と前記フォーク7とにより本体部材8を構成している。
【0025】
前記ブラケット11は、
図1などに示すように、前縁12M側が後縁側より高くなるように傾斜した上面部12と、この上面部12の左右に設けた下向きの左右の側板部13,13とを備える。この側板部13は、先端が前側上部に位置する上腕部14と、先端が前側下部に位置する下腕部15と、これら上腕部14と下腕部15と間に設けられ、前側が開口した開口溝部16とを備え、この開口溝部16は、後側から前側に向かって拡大する。
【0026】
図4に示すように、前記上腕部14,14は、これらの先端側(前端側)が前記フォーク7の左右の腕部7C,7Cの上側外面を左右から挟んだ状態で、ボルト18とナット18Aとにより、左右の腕部7C,7Cの上部に固定されている。一方、前記下腕部15,15は、これらの先端側(前端側)が前記フォーク7の左右の腕部7C,7Cの下側外面を挟んだ状態で、上述したボルト10とナット10Aにより左右の腕部7C,7Cに固定されている。そして、そのボルト10は、前記軸部9,左右の腕部7C,7C及び左右の下腕部15,15に挿通され、挿通したボルト10の先端にナット10Aが螺合されている。
【0027】
ブレーキ部材21は、
図1に示すように、側面視で略V字形の左右の側板部22,22と、これら左右の側板部22,22の上縁を連結するブレーキ板23とを一体に備え、このブレーキ板23の後縁側を斜め下向きに折り曲げて制動部23Sが形成されている。
【0028】
そして、
図3に示すように、左右の側板部22,22の前側上部に軸受部22A,22Aを突設し、これら左右の軸受部22A,22Aと前記ブラケット11の左右の側板部13,13に、ブレーキ部材用横軸たるボルト24が挿通され、このボルト24の先端にナット25(
図4)を螺合し、これによりブレーキ部材21の制動部23Sが上下方向に揺動するように、本体部材8のブラケット11にブレーキ部材21が上下方向回動可能に軸支されている。
【0029】
尚、制動方向S(
図2)は、ブレーキ操作部材31により前記制動部23Sが前記車輪6の外周面6Gに近付く回転方向であり、制動解除方向K(
図3)は、ブレーキ操作部材31により前記制動部23Sが前記車輪6の外周面6Gから離れる回転方向である。
【0030】
また、前記左右の側板部22,22の外面には、作動部たる左右の筒部26,26が左右外向きに突設され、この筒部26は前記ボルト24の下方で、側板部22の下部側の該ボルト24から離れた位置に設けられている。尚、筒部26は金属製の側板部22の一部をプレスによる塑性加工により中空筒状に形成したものである。
【0031】
前記制動部23Sが前記車輪6の外周面6Gから離れる制動解除方向Kにブレーキ部材21を付勢する付勢手段を備え、この付勢手段としてコイル部を有するダブルトーションバネ27を用いている。
【0032】
前記ダブルトーションバネ27に前記ボルト24を挿通し、そのダブルトーションバネ27の中央部27Sを前記上面部12の前縁12Mに係止し、そのダブルトーションバネ27の両端部27T,27Tをブレーキ板23の下面に係止しており、ダブルトーションバネ27により、前記ブレーキ部材21の制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れる制動解除方向Kである上方向に該ブレーキ部材21を付勢している。
【0033】
図5などに示すように、前記開口溝部16は、前記上腕部14の下縁14Fと前記下腕部15の上縁15Fとの間に設けられたものであり、それら下縁14Fと上縁15Fの間隔は後方に向かって縮小するように形成されている。
【0034】
また、前記開口溝部16は、下縁14Fと上縁15Fの後端に、略一定幅の案内溝部17が設けられ、この案内溝部17は、上縁部17Uと下縁部17S(
図5)を有し、その案内溝部17の後端に、前記筒部26が当接する当接受部たる当接底部17Tが設けられ、この当接底部17Tは筒部26の外形に対応して半円形に形成されている。
【0035】
そして、ダブルトーションバネ27により、筒部26が後方に移動するように、ブレーキ部材21が制動解除方向Kに付勢されており、筒部26が当接底部17Tに圧接する(
図2)ことにより、制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れた位置でブレーキ部材21が回り止めされ、車輪6が制動解除状態に保持され、その位置がブレーキ部材21の制動解除位置である。
【0036】
尚、
図2などに示すように、筒部26が当接底部17Tに圧接した状態で、筒部26と当接底部17Tとの間には隙間が見えるが、これは上述したように塑性加工で形成した筒部26は、外周面が先端側に向かってテーパー状に縮小する形状を有するためであり、筒部26の外周面の基端側の少なくとも一部は、ダブルトーションバネ27の付勢により当接底部17Tに圧接する。
【0037】
前記ブレーキ部材21を制動状態と制動解除状態とに切替え操作するブレーキ操作部材31を備える。このブレーキ操作部材31は、略円弧状をなす板状の左右の揺動腕部32,32を備え、これら左右の揺動腕部32,32の基端側を左右方向の連結部たる前部33により連結すると共に、それら左右の揺動腕部32,32の先端側(後側)を踏み部たる左右方向の踏み板34により連結して枠状をなす。
【0038】
また、
図4に示すように、ブラケット11の後部にブレーキ操作部材31の先端を挿入した状態で、ブラケット11の左右の側板部13,13の透孔13T,13T(
図2)とブレーキ操作部材31の左右の揺動腕部32,32の基端側の透孔32T,32T(
図2)とに、ブレーキ操作部材用横軸たるボルト41を挿通し、この挿通したボルト41にナット41Aを螺合し、これによりブレーキ操作部材31の基端側に挿通したボルト41を中心として、本体部材8のブラケット11にブレーキ操作部材31を軸支している。
【0039】
尚、ボルト41は、先端側のみにナット41Aが螺合する雌螺子部(図示せず)が形成され、雌螺子部の無いボルト41の軸部に揺動腕部32,32が回動可能に設けられ、他の上述したボルト24も同様に先端側のみに雌螺子部が形成されている。
【0040】
図1などに示すように、前記ボルト24は車輪6の外周面6Gの上方に位置する。また、筒部26は、前記ボルト24から離れた下方で、車輪6の回転中心であるボルト10の上方に位置する。さらに、平面視で、ボルト41の位置は、前記ボルト24及び筒部26の位置より後方に位置する。
【0041】
図2に示すように、前記揺動腕部32には、前記前部33側に位置する直線状の上縁51と前縁52との角部に、乗り越え突起たる湾曲状の凸部53を設け、この凸部53の下部に、前記筒部26が圧接する位置決め用凹部54を設け、この位置決め用凹部54は前記筒部26の外周に対応して円弧状をなす。
【0042】
また、その位置決め用凹部54の下部に乗り越え突起たる湾曲状の凸部55を設け、この凸部55の下部に前記筒部26が圧接する制動用凹部56を設け、この制動用凹部56の下部に凸部57を設けている。尚、凹部54,56の一方に筒部26が係止した状態で、前縁52の上下の凸部53,57間は、ボルト41の前方に位置する。また、ボルト41の中心に対して、凹部54に比べて凹部56は離れた位置にある。
【0043】
図1及び
図2に示すように、筒部26が当接底部17Tに圧接し、位置決め用凹部54に筒部26が嵌合した状態では、ブレーキ板23の制動部23Sが外周面6Gから離れた制動解除状態となり、ブレーキ操作部材31は前記嵌合により上方位置(
図1)に位置決め状態となる。
【0044】
この上方位置から踏み板34が上側に上がるようにブレーキ操作部材31を上方向に回転すると、凸部53に押されて筒部26が制動解除方向K(前方)に僅かに移動した後、筒部26が凸部53を乗り越え、再び筒部26が当接底部17Tに圧接する。尚、凸部53が筒部26の下部に位置する状態で、ブレーキ操作部材31はその前部33が外周面6Gに当たる位置まで制動解除方向Kに回動可能である。
【0045】
そして、筒部26が当接底部17Tに圧接することにより、ブレーキ板23が制動解除位置に位置決めされる。
【0046】
図2及び
図6に示す位置決め用凹部54に筒部26が嵌合した状態から、踏み板34を下方に踏むと、凸部55に押されて筒部26が制動解除方向K(前方)に僅かに移動した後、筒部26が凸部55を乗り越え、筒部26が制動用凹部56に嵌合する。この嵌合した状態で、
図6に示すように、制動用凹部56は当接底部17Tに比べて前方に位置し、筒部26が前方に移動すると共にブレーキ部材21が制動方向Sに回転し、制動部23Sが外周面6Gに圧接した制動状態となる。尚、制動用凹部56に筒部26が嵌合した位置がブレーキ操作部材31の下方位置(
図3)である。
【0047】
図6に示すように、制動用凹部56に筒部26が圧接した状態では、ボルト24の中心と筒部26の中心とを結ぶ仮想線(図示せず)の延長線上の近傍、又は、仮想線の前側に凸部57が位置するため、ブレーキ操作部材31を制動方向Sに回そうとしても、筒部26を前側に押す分力が発生しないため、その位置から制動方向Sにブレーキ操作部材31を回すことができず、ブレーキ操作部材31の先端側である踏み板34側を下に回すことが規制される。
【0048】
このように凸部57は、ブレーキ操作部材31の制動解除方向Kへの回り止めとして機能する回り止め部となる。尚、凹部56に嵌合した位置が筒部26の最大前方移動位置であり、この位置の筒部26の中心より、平面視でボルト24の中心が前側に位置し、平面視で最大前方移動位置の筒部26の中心の後方に前記ボルト41の中心が位置する。
【0049】
また、
図6に示す制動用凹部56に筒部26が圧接したブレーキ操作部材31の下方位置において、ブレーキ操作部材31を上方位置に切替えるには、ダブルトーションバネ27の付勢に抗して、筒部26が凸部55を乗り越える必要があるため、所定以上の力が必要となる。このためブレーキ操作部材31に単に接触しただけでは、ブレーキ操作部材31は下方位置に保持され、このように凸部55は、ブレーキ操作部材31の制動解除方向K及び制動方向Sの回り止め効果を奏する。尚、前記凸部53及び後述する凸部も同様に回り止め効果を奏する。
【0050】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車輪6を回動可能に軸支する本体部材8と、本体部材8に回動可能に軸支されると共に、制動部23Sが車輪6に近付く制動方向Sに回転して車輪6の外周面6Gを押圧可能なブレーキ部材21と、制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れる制動解除方向Kにブレーキ部材21を付勢する付勢手段たるダブルトーションバネ27と、ブレーキ部材21に設けられた作動部たる筒部26と、本体部材8に回動可能に軸支されたブレーキ操作部材31とを備え、ブレーキ操作部材31の先端側を下方向に回転することにより、ブレーキ操作部材31が筒部26を押してブレーキ部材21が制動方向Sに回転し、この制動方向Sの回転により制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧するように構成したから、ブレーキ操作部材31の先端側を下方向に回転すると、ブレーキ操作部材31が筒部26を押してブレーキ部材21が制動方向Sに回転し、制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧する制動状態とすることができ、ブレーキ部材21に設けた筒部26とブレーキ操作部材31とにより制動状態に切替える構造であるから、構造が比較的簡易で、製造が容易となる。
【0051】
このように本実施例では、請求項2に対応して、ブレーキ操作部材31は、作動部たる筒部26に対応して揺動腕部32を有し、本体部材8に揺動腕部32の基端側を回動可能に軸支し、揺動腕部32の先端側を下方向に回転することより、揺動腕部32が筒部26を押してブレーキ部材21が制動方向Sに回転し、この制動方向Sの回転により制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧し、制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧した位置で、筒部26が係止する係止部たる制動用凹部56を、揺動腕部32に設けたから、ブレーキ操作部材31の先端側を下方向に回転すると、揺動腕部32が筒部26を押してブレーキ部材21が車輪6の外周面6Gに押圧することより、車輪6を制動状態にすることができる。また、揺動腕部32の制動用凹部56に筒部26が係止することにより、制動位置でブレーキ操作部材31が位置固定される。
【0052】
このように本実施例では、請求項3に対応して、本体部材8に設けられ、制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れた位置で作動部たる筒部26が当接してブレーキ部材21の制動解除方向Kの回転を規制する当接受部たる当接底部17Tを備えるから、制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れた位置で、筒部26が本体部材8の当接底部17Tに当接してブレーキ部材21の制動解除方向Kの回転が規制される。このように筒部26を利用してブレーキ部材21の制動解除方向Kの回転を規制するため、付勢手段により制動解除方向Kに付勢されているブレーキ部材21の制動解除方向Kへの回り止め構造を、別途に設ける必要が無くなる。
【0053】
以下、実施例上の効果として、本体部材8は、フォーク7と、このフォーク7の後方に取り付けたブラケット11とからなり、このブラケット11の前側が開口した開口溝部16の後部に、筒部26を案内する案内溝部17を設けると共に、筒部26が当接する当接底部17Tを設けたから、ブラケット11にブレーキ部材21とダブルトーションバネ27とブレーキ操作部材31を取り付けた後、ブラケット11をフォーク7に取り付けることができ、構造が比較的簡易にして、製造も容易となる。
【0054】
また、ブラケット11にフォーク7を取り付けると、開口溝部16の案内溝部17の前側がフォーク7の後縁7U(
図2)により塞がれ、フォーク7により筒部26の前方移動を規制することができる。このように開口溝部16と後縁7U内に筒部26を配置することができ、先行文献1のように下転動孔に輪状突部を挿入して組立てる必要がなく、製造を容易に行うことができる。
【0055】
また、筒部26は金属製の側板部22をプレスによる塑性加工により形成したものであるから、製造が容易で、筒部26が当接底部17Tに直接当接するから、筒部26に他の部材を挿通する必要がなく、構造簡易となる。
【0056】
また、揺動腕部32には、前部33側に位置する上縁51と前縁52との角部に、乗り越え突起たる湾曲状の凸部53を設け、この凸部53の下部に、前記筒部26が圧接する位置決め用凹部54を設け、この位置決め用凹部54は前記筒部26の外周に対応して円弧状をなすから、凸部53を筒部26が通過する際、所定の反力が得られ、乗り越えた後、筒部26が位置決め用凹部54にスムーズに嵌合する。
【0057】
また、位置決め用凹部54の下部に乗り越え突起たる湾曲状の凸部55を設け、この凸部55の下部に前記筒部26が圧接する制動用凹部56を設け、この制動用凹部56の下部に凸部57を設けているから、同様に、乗り越えた後、筒部26が制動用凹部56にスムーズに嵌合すると共に、嵌合後、回り止め部たる凸部57によりブレーキ操作部材31の下方向への回転を止めることができる。
【0058】
また、揺動腕部32には、前部33側に位置する上縁51と前縁52との角部に、乗り越え突起たる湾曲状の凸部53を設け、この凸部53の下部に、前記筒部26が圧接する位置決め用凹部54を設けたから、この位置決め用凹部54に筒部26が嵌合することにより、上方位置でブレーキ操作部材31が位置決めされる。
また、この例のブレーキ操作部材31Aは、前後方向に長い略長方形形状の左右の揺動腕部32,32を備え、これら左右の揺動腕部32,32の上縁51,51を、踏み部たる左右方向の踏み板34により連結し、その踏み板34は揺動腕部32,32の後端から張り出す部分を有する。また、踏み板34の前縁34Mと車輪6の外周面6Gとの間に隙間35ができるように、前記ブレーキ操作部材31Aが回動する。
また、前記前縁52の下部には制動用凹部63が形成され、この制動用凹部63の底部は前記係合凹部62の底部に比べて前記ボルト41の中心から離れている。また、前記前縁52には、係合凹部62と制動用凹部63との間に湾曲状凸部64が形成され、この湾曲状凸部64は、略前記ボルト41を中心とした円弧状をなし、その半径は前記ボルト41の中心と制動用凹部63の底部との間隔に略等しい。また、前縁52には、制動用凹部63の下部に凸部65を設けている。
また、車輪6の制動及び制動解除状態を示す識別機構71を備える。この識別機構71は、ブレーキ操作部材31Aに連動し、左右方向に長い識別部材72と、この識別部材72をブレーキ操作部材31A上に出没するように作動する作動部材73とを備える。また、前記識別部材72は合成樹脂などからなる。
前記本体81の前側(先端側)には、前記識別部材72に係合する識別部材係合部たる左右の係合腕部84,84が設けられると共に、これら左右の係合腕部84,84の間に、車輪係合部たる車輪係合腕部85が形成されている。
本体81を略水平にした状態で、前記係合腕部84の先端側には、上向きに折り曲げられた上向き部84Aと、この上向き部84Aの先端から前側斜め上向きに折り曲げられた先端部84Bとが設けられている。また、前記車輪係合腕部85の先端側には、下側が凸な湾曲部85Aが設けられている。
このように本実施例では、請求項4に対応して、ブレーキ操作部材31の上方位置で制動部23Sが車輪6の外周面6Gから離れ、ブレーキ操作部材31の下方位置で制動部23Sが車輪6の外周面6Gを押圧し、ブレーキ操作部材31の前記上方位置で隠れ、ブレーキ操作部材31の前記下方位置で該ブレーキ操作部材31上に現れる識別表示部たる後面76Uを備えるから、車輪6の制動解除状態で隠れていた後面76Uが、制動状態でブレーキ操作部材31上に現れるため、制動状態と制動解除状態が判り易いものとなる。
このように本実施例では、請求項5に対応して、識別表示部たる後面76Uを備えた識別部材72を本体部材8に揺動可能に設け、ブレーキ操作部材31の前記下方位置でブレーキ操作部材31上に後面76Uが現れるように識別部材72に係合する作動部材73を備え、作動部材73の基端側をブレーキ操作部材31に回動可能に軸支し、作動部材73の先端側に、車輪6に係合する車輪係合部たる車輪係合腕部85を設けると共に、車輪係合腕部85が車輪6に係合した状態で、後面76Uがブレーキ操作部材31上に現れるように識別部材72に係合する識別部材係合部たる係合腕部84を設けたから、上方位置から下方位置にブレーキ操作部材31を回転すると、車輪係合腕部85が車輪6に係合し、係合腕部84が識別部材72に係合して後面76Uがブレーキ操作部材31上に現れる。
また、ブラケット11にブレーキ操作部材31Aを取り付けるブレーキ操作部材用横軸たるボルト41に、識別部材72を回動可能に設けたから、識別部材72用に枢軸を設ける必要がなく、構造簡易で製造が容易となる。さらに、識別部材72は回動するから、現れた状態で見易い向きとすることができる。
また、作動部材73は、識別部材72に係合する識別部材係合部たる左右の係合腕部84,84と、車輪係合部たる車輪係合腕部85とを備え、係合腕部84,84が識別部材72の前側に係合し、車輪係合腕部85が車輪6に係合することにより、識別パッド76を出没可能に設けることができる。また、車輪係合腕部85の先端側には、車輪6の外周面6Gより曲率が小さく下側が凸な湾曲部85Aが設けられているから、湾曲部85Aが外周面6Gに係合して作動部材73をスムーズに傾動することができる。
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、本体部材は、支持部材と、この支持部材に取り付ける保持部材により構成したが、支持部材と保持部材を一体にしたものでもよく、この場合は、開口溝部に代えて、作動部が所定範囲移動可能な長孔を設ければよい。また、車輪は、双輪や3つ以上の多輪でもよい。さらに、支持受部の形状は適宜選定可能である。さらに、横軸はボルト以外のものを用いてもよい。