(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021108
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ダクト受発注支援システム、受発注管理サーバー、受発注管理サーバーのプログラム、情報処理装置、情報処理装置プログラム、ダクト受発注支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20240208BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240208BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123695
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000136321
【氏名又は名称】株式会社フカガワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】深川 和己
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB54
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】
設備CADから部材リスト抽出、注文リスト作成、また、必要に応じて受発注迄を、システム上でシームレスに行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムにおいて、受発注管理サーバーは、受信した部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するダクト製作属性抽出手段とを有し、受発注管理サーバーが、ダクト製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補が表示させるように構成されたダクト受発注支援システムにより、前述の課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムであって、
情報処理装置と、受発注管理サーバーを備え、
情報処理装置は、
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、
生成された部材リストを受発注管理サーバーへ送信すると共に、注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、
ダクト製作属性データの選択候補からダクト製作属性を選択可能な操作入力手段と、を有し、
受発注管理サーバーは、
受信した部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、
不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するダクト製作属性抽出手段と、
抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成する注文リスト作成手段と、を有するダクト受発注支援システムにおいて、
受発注管理サーバーが、注文リスト及び/又はダクト製作属性データを情報処理装置に送信することにより、情報処理装置の表示装置に注文リストが表示され、かつ、ダクト製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補が表示されることを特徴とするダクト受発注支援システム。
【請求項2】
受発注管理サーバーは、さらに、
注文リストに基づいて見積額を算出する見積額算出手段と、
注文リストに基づいて受注及び必要に応じて発注処理を行う受発注処理手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のダクト受発注支援システム。
【請求項3】
部材リストには、CAD種別データが含まれており、
ダクト製作属性抽出手段は、CAD種別データに基づいてダクト製作属性の選択候補を抽出することを特徴とする請求項1に記載のダクト受発注支援システム。
【請求項4】
受発注管理サーバーは、単価に対して異なる複数の掛率が、商品ごと及び/又は顧客ごとに保存された掛率データ記憶手段を、有し、
見積額算出手段は、注文リストと対象となる顧客の掛率データに基づいて見積額を算出することを特徴とする請求項2に記載のダクト受発注支援システム。
【請求項5】
情報処理装置は、設備CADデータがない状況で設備施工図から部材リストを入力するための支援を行う入力支援手段を、さらに有し、かつ、
受発注管理サーバー又は情報処理装置は、入力支援手段から製作図データを取得する場合にも、不足するダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信した上で、ダクト部材データと副資材データを抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載のダクト受発注システム。
【請求項6】
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、部材リストを送信すると共に注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、を備えた情報処理装置と通信を行うことによって、ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムを構築するための受発注管理サーバーであって、
受発注管理サーバーは、受信した部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するダクト製作属性抽出手段と、抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて、情報処理装置の表示装置に表示させるための注文リストを作成する注文リスト作成手段と、を有し、
受発注管理サーバーは、ダクト製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補を情報処理装置の表示装置に表示させることを特徴とする受発注管理サーバー。
【請求項7】
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、部材リストを送信すると共に注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、を備えた情報処理装置と通信を行うことによって、ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムを構築するための受発注管理サーバーのコンピュータに、
情報処理装置から部材リストを受信するステップと、
受信した部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出するステップと、
抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成するステップと、
不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するステップと、
抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて、情報処理装置の表示装置に表示させるための注文リストを作成するステップ
を少なくとも実行させるサーバープログラムであって、
ダクト製作属性データが不足している場合に、未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補を、情報処理装置の表示装置に表示させることを特徴とする受発注管理サーバーのプログラム。
【請求項8】
受発注管理サーバーと通信を行うことによって、ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムを構築するための情報処理装置であって、
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、
生成された部材リストを受発注管理サーバーへ送信すると共に、注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、
ダクト製作属性データの選択候補からダクト製作属性を選択可能な操作入力手段と、を有し、
受発注管理サーバーから受信した注文リスト及び/又はダクト製作属性データに基づいて、情報処理装置の表示装置に注文リストを表示し、かつ、ダクト製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補を表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
受発注管理サーバーと通信を行うことによって、ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムを構築するための情報処理装置のコンピュータに、
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成するステップと、
生成された部材リストを受発注管理サーバーへ送信するステップと、
注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信するステップ
を少なくとも実行させる情報処理装置プログラムであって、
ダクト製作属性データが不足している場合に、未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補を、表示装置に表示させることを特徴とする情報処理装置プログラム。
【請求項10】
ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援装置であって、
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、
生成された部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、
不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するダクト製作属性抽出手段と、
抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成する注文リスト作成手段と、
ダクト製作属性データの選択候補からダクト製作属性を選択可能な操作入力手段と、を有し、
ダクト受発注支援装置の表示装置に注文リストが表示され、かつ、ダクト製作属性データが不足している場合には、ダクト受発注支援装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補が表示されることを特徴とするダクト受発注支援装置。
【請求項11】
ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援装置のコンピュータに、
ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成するステップと、
生成された部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出するステップと、
不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するステップと、
抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成するステップと、
ダクト製作属性データの選択候補からダクト製作属性を選入力するステップ
を少なくとも実行させるプログラムであって、
ダクト受発注支援装置の表示装置に注文リストが表示され、かつ、ダクト製作属性データが不足している場合には、ダクト受発注支援装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補が表示させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等のネットワークを利用したダクト受発注支援システム、受発注管理サーバー、受発注管理サーバーのプログラム、情報処理装置、情報処理装置プログラム、ダクト受発注支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築現場での人手不足や建築市場の縮小の問題に対処するべく、BIM(Building Information Modeling)の活用を中心としたデジタル技術による効率化が進行している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0057826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が示すように、欧米においては建築市場のデジタル化普及が着々と進んでいるのに対して、日本では、思うように進展がみられず、大手ゼネコンで、ようやくスタートを切ったという状況である。理由として、共通プラットフォームの欠如、デジタル情報を扱うことのできる現場施工者の不足などに原因がある。
さらに、ダクト施工分野といった設備資材施工分野においては、BIMといった発想は皆無といってもよく、例えば、ダクト部品の発注という場面についてみても、ダクト施工業者がCADデータをプリントアウトさせた施工図から、必要なダクト部材をリストアップする「手拾い」と呼ばれる作業を行って注文リスト化し、電話、FAX、電子メール等の旧態の通信手段により、ダクト製造業者に対して、見積書の発行依頼をかけるといった態様が実情である。また、コンピュータやネットワークを利用した発注システムが存在したとしても、リスト化されたダクト部材をシステムに手入力するのが精々といった状況である。決定的な要因は、CAD等の利用すべきデジタル情報をダクト施工業者が扱う環境にない、或いは、設備CADといったデジタル情報を扱おうにも、ダクトについての詳細な仕様データを有する設備CADと詳細な仕様データが不備の設備CADとが混在するためである。要するに、ダクト施工業界においては、共通プラットフォームの欠如という大きな障壁があり、デジタル化という発想自体が根付いていないのである。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、デジタル情報を活用するべく、設備CADから部材リスト抽出、注文リスト作成、また、必要に応じて受発注迄を、システム上でシームレスに行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダクトの注文リスト作成及び/又は受発注を行うダクト受発注支援システムであって、情報処理装置と、受発注管理サーバーを備え、情報処理装置は、ダクト製作属性データが完備された設備CADデータ又はダクト製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、生成された部材リストを受発注管理サーバーへ送信すると共に、注文リスト及び/又はダクト製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、ダクト製作属性データの選択候補からダクト製作属性を選択可能な操作入力手段と、を有し、受発注管理サーバーは、受信した部材リストに基づいてダクト部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、不足する場合にダクト製作属性データを検索し、ダクト製作属性の選択候補を抽出するダクト製作属性抽出手段と、抽出されたダクト部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成する注文リスト作成手段と、を有するダクト受発注支援システムにおいて、受発注管理サーバーが、注文リスト及び/又はダクト製作属性データを情報処理装置に送信することにより、情報処理装置の表示装置に注文リストが表示され、かつ、ダクト製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストとダクト製作属性の選択候補が表示されることを特徴とするダクト受発注支援システムにより、前述の課題を解決した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムのシステム構成兼機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおいて、ダクト製作属性について適用される処理の内容を示す表である。
【
図3】本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける一部処理を示すフローチャートであって、(a)は部材データ抽出手段により実行される処理を、(b)は商品特定手段により実行される処理を、それぞれ示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける一部処理を示すフローチャートであって、注文リスト作成手段により実行される処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける一部処理を示すフローチャートであって、(a)は注文リスト表示手段により実行される処理を、(b)は注文データ補填手段により実行される処理を、それぞれ示すフローチャートである。
【
図6】本発明の別の実施形態に係るダクト受発注支援システムのシステム構成兼機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るダクト受発注システムのシステム構成図兼機能ブロック図である。複数の情報処理装置1(汎用PC)と受発注管理サーバー2とデータベース・サーバー3とがネットワークで接続されたシステム構成となっている。情報処理装置1や受発注管理サーバー2内のハードウェア構成は、CPU、CPUとバス接続されたメモリ(ROM及びRAM)、ストレージデバイス、表示手段、通信手段、操作入力手段といった汎用PCやサーバーが通常に備えるシステム構成にすぎないため、ここでは図示を省略し、機能ブロック図として示している。また、破線矢印で示される向きは、各機能ブロックでの実行処理の順序ないしデータ(情報)の流れを表している。
【0010】
(システム全体の構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムは、情報処理装置1、受発注管理サーバー2及びデータベース・サーバー3から構成され、当該情報処理装置1と受発注管理サーバー2とは携帯電話通信網及び/又はインターネット通信網で接続されている。受発注管理サーバー2は、データベース・サーバー3とインターネット通信網で接続されている。なお、受発注管理サーバー2とデータベース・サーバー3は単一のサーバーとして構築されてもよい。
【0011】
情報処理装置1は、
図1に示される例としてはパーソナルコンピュータ(汎用PC)が想定されているが、スマートフォン、タブレット端末等の携帯通信端末であってもよいし、情報処理装置1はサーバーに接続される複数の端末と位置付けられるところ、汎用PCとスマートフォン等が併用される態様であっても良い。情報処理装置1内に記憶されている、若しくは、別の機器から取り込まれるCADデータ内の必要な情報を、受発注管理サーバー2へ送信するために必要な事前処理を、情報処理装置1が行う。
【0012】
受発注管理サーバー2は、情報処理装置1やデータベース・サーバー3から必要な情報を受け取り、ダクトの注文リスト作成、注文リストに基づいた見積額の算出、受発注処理等を行うと共に、情報処理装置1に必要な情報を送信し、情報処理装置1の表示装置に注文リストを表示させる等の処理を行うためのものである。
【0013】
データベース・サーバー3は、受発注管理サーバー2が処理を行う上で必要な情報を、複数の格納領域に分けて蓄積している。具体的に、ダクト製作属性DB31の領域には、後記するダクト製作属性データが、単価・掛率DB32の領域には、価格決定をするための得意先別単価や掛率、商品ランク単価といった情報が蓄積されている。
【0014】
(情報処理装置の構成)
情報処理装置1は、
図1において機能ブロックとして示されるように、部材リスト生成手段11、入力支援手段12、注文リスト表示手段13、注文データ補填手段14から構成される。
【0015】
部材リスト生成手段11は、情報処理装置1内に記憶されている、若しくは、別装置からCSV形式の設備CADデータを取り込み、部材リストを生成する。情報処理装置1内に施工図を作成するための設備CADが搭載されている場合には、当然、設備CADデータも情報処理装置1内に記憶されていることになるし、別PCで施工図を作成している場合には、別PCから設備CADデータを取り込むことになる。
設備CADは、様々なメーカーから提供されているところ、一部の設備CADは、後記するダクト製作属性データを完備している一方で、他の設備CADは、ダクト製作属性データを持たない、若しくはダクト製作属性データが不足しているという場合がある。これらの違いに関わらず、部材リスト生成手段11は、獲得したCSV形式の設備CADデータに基づいて、取得可能な範囲で部材リストを生成する。
部材リストのコンテンツとして、1行目には、CADメーカーを特定するためのCAD種別データが記憶されており、2行目以降には、部材別に、ダクト製作属性が記憶されている。ダクト製作属性とは、設備とダクト或いはダクト同士を接続組み合わせる際に必要となる詳細仕様であって、ダクト製造業者毎に取り決められている仕様である。例えば、あるダクト製造業者においては、規格品である丸ダクトについては、商品分類、寸法1~8(ただし、部材によって、要求される寸法の数は異なり、必ずしも寸法8まで要求される訳ではない。)、材質、板厚、仕上げといった項目が設定されている一方で、規格外である角ダクトについては、板厚指定、補強加工の仕様、空気漏れ加工の仕様が設定されているといった具合に取り決めがなされている。
【0016】
図2(a)は、部材リストに格納される値の例であり、参考として、
図2(d)には、具体的な項目が示されている。商品分類がDTFPとされる部材は、
図2(d)が示すように、寸法1から寸法8まで全ての項目が要求される部材であるが、
図2(a)が示すように、この例での設備CADデータからは、寸法1、寸法5、寸法7及び寸法8の値を取得できないことが分かる。商品分類がSPとされる部材は、
図2(d)が示すように、寸法1と寸法2のみが要求される部材である。商品分類がFGRFとされる部材は、
図2(d)が示すように、寸法1から寸法5までの項目が要求される部材であるが、
図2(a)が示すように、この例での設備CADデータからは、寸法4及び寸法5の値を取得できないことが分かる。
【0017】
入力支援手段12は、設備CADデータを全く利用できない場合に、部材リストの項目を入力して部材リストを生成するための入力支援を行う手段である。先に、従来、「手拾い」と呼ばれる作業を行って注文リスト化を行っていたことを説明したが、もう少し詳しく従来の作業について説明する。設備工事会社が描いた施工図だけでは、必要なダクトは把握できず、ダクトの分割位置や詳細な加工寸法を決めるためには、施工図を基にしてダクト製作図を作り、さらに、その製作図を基にして各ダクトの寸法や部材を書き込んだ部材図を作成して必要なダクト部材を把握するという作業が従来行われていた。必要なダクト部材が把握できた後は、注文リストを起こし、発注をかけることになる。
入力支援手段12は、この作業における把握された各ダクトの寸法や部材を手入力で行うための手段である。具体的には、紙ベースの原設計または建築設備施工図からダクト施工業者が担当する施工範囲をスケールして手拾いで必要な値を抽出することになる。このままでは、従来の作業と同じと思われるかもしれないが、実は、そうではない。設備CADデータの種類によっては、全てのダクト製作属性が備わっていない旨を説明したことから理解されるように、全ての寸法を入力する必要はなく、設備CADデータが備える属性と同程度のダクト製作属性を入力すれば、その後は、後記する部材データ抽出手段が不足するダクト製作属性を補うべくアシストしてくれることになる。このため、設備CADデータを全く利用できない環境であっても、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムは有効に機能することになる。
【0018】
この他の入力支援手段12の例として、印刷出力された画像データを読み込んで、或いは、画像データそのものの電子フォーマットを読み込んだ上で、深層学習モデルを適用した画像分析及び分類モデル構築技術を利用して、入力支援を行うことも有効である。これまでの受注実績から基幹データベースに蓄積されている情報によって、教師データを用意すればよい。また、この形態での入力支援を行う場合には、当然、利用者が確認し確定するという作業を伴うことになるため、その際の入力確定データを訓練データとして活用すれば、学習率(Learning Rate)は、飛躍的に向上することになる。さらに、所定期間で編纂される商品・部材別売上傾向といった統計データに基づき、技術者がハイパーパラメータチューニングを行えば、正解率はさらに高まることが期待できる。
また、情報処理装置1がスマートフォンやタブレット端末である場合には、カメラ機能を利用して施工図を撮影することによって、オフィスでなくとも施工現場においても見積依頼や発注を行うことができる。つまり、場所や時間を選ばずに見積依頼や発注が可能となる。
【0019】
部材リスト生成手段11或いは入力支援手段12において生成された部材リストは、ネットワーク回線を通じて、受発注管理サーバー2へアップロードされ、部材データ抽出手段21による処理において用いられることになる。この処理については、後記する。
【0020】
注文リスト表示手段13は、受発注管理サーバー2から受信した注文リストに基づいて、情報処理装置1の表示装置に注文リストを表示する手段であるが、ダクト製作属性データが不足している場合には、ダクト製作属性の選択候補についても表示することが可能とされている。
【0021】
注文データ補填手段14は、ダクト製作属性が不足している注文リストが表示される場合に、同時に表示されるダクト製作属性の選択候補の中から選択を確定させる手段であり、例えばプルダウンメニューにより、選択を確定できるようにされている。また、選択候補の中に適切なものが存在しない場合には、手入力もできるようにされている。さらに、顧客に対して設定されているマイページに記憶されている過去の注文履歴から選択候補を呼び出すことも可能である。いずれにせよ、ダクト製作属性データの不備が補填されて、注文リストが完全なものとなった後は、当該注文リストが受発注管理サーバー2に送信されることになる。
また、注文データ補填手段14は、ダクト製作属性が完備された注文リストが表示される場合であっても、注文リストの承認等、必要な処理を行う機能も果たす。
【0022】
(受発注管理サーバーの構成)
受発注管理サーバー2は、
図1において機能ブロックとして示されるように、部材データ抽出手段21、商品特定手段22、注文リスト作成手段23、受注処理手段24から構成される。ただし、これらの手段は、Webブラウザ上で実行されるものであり、各手段における必要な設定入力等の利用者が行う操作は情報処理装置1からの操作入力によってなされる。
【0023】
部材データ抽出手段21は、ネットワーク回線を通じて、情報処理装置1からアップロードされた部材リストにつき、CAD種別データからCADメーカーを特定し、CADメーカー毎に設定されているルールに従って、注文リスト作成に適したデータ構造となるようにするべく、データ成型を行う。このことから理解されるように、部材データ抽出手段21のプログラムは、CADメーカー毎の特性を判断すべく、個別にルール化を行い、そのルールに従って(ダクト部材と副資材との関係を示す)データの成型を行う処理となる。
【0024】
商品特定手段22は、部材データ抽出手段21によって成形されたデータを基にして、ダクト製作属性DB31内の情報を基に商品情報を特定する。ダクト製作属性DB31内の情報は、商品毎に、注文リスト作成に適した並び順とされているため、部材データ抽出手段21により成型されたデータと突き合わせることで、商品を特定することが可能となっている。
【0025】
注文リスト作成手段23は、注文リストの作成と商品単価の特定を行う手段である。詳細には、不足し未確定であるダクト製作属性データと、確定しているダクト製作属性データを判別した上で、項目が完備された注文リスト、若しくは、項目不備の情報が存在する注文リストを作成する。また、単価・掛率DB32の情報を基にして、メニュー価格としての単価や掛率、得意先別の掛率やランクの設定を行う。
項目が完備された注文リスト、若しくは、項目不備の情報が存在する注文リストは、情報処理装置1へ送信され、情報処理装置1では、先述した注文リスト表示手段13及び注文データ補填手段14による処理が実行されることになる。
【0026】
受注処理手段24は、情報処理装置1において、承認された注文リスト、或いは、必要なダクト製作属性等の補填がされた後に承認された注文リストを受信し、ダクト施工業者からの発注を受ける処理を行う手段である。また、受注処理手段24は、正式な発注を受ける前に、ダクト部品の積算見積を作成する機能も有している。
受注処理手段24にて受け付けられた発注内容は、受発注管理サーバー2を管理する管理者の基幹サーバーに取り込まれ、情報一元化がなされ、その後の受発注にも活用される。たとえば、顧客ごとにIDやパスワードを付与することで、顧客ごとのマイページで確認できるようにしたり、さらに、マイページに注文履歴(月別、現場別、商品群別)、納品履歴(月別、現場別)を閲覧できるように構築したりすることが可能である。顧客側では、マイページ情報を自身が管理するDB等に取り込むことで自社の納品データを管理することが可能となる。これらの機能は、従来からの電子商取引技術において通常に行われていることであるため、詳細な説明は割愛する。
一方、本発明の実施形態においては、従来の通常の電子商取引技術とは圧倒的に異なる特徴があるので、このことにつき説明しておく。通常の電子商取引技術は、ネットワークを介して行われた注文データを蓄積して、それを活用するという考え方に基づくものであるため、それ以前に旧態の形式で行った注文実績が存在したとしても、当該情報が活用されることはない。自身の馴染みの店で初めてネット通販を利用しても、それまでに多くに購入した商品の情報を閲覧できずに不満に感じた経験を有する消費者は少なくないであろう。対して、本発明の実施形態は、管理者の基幹サーバーに蓄積された情報を活用するものであることから、旧態の体系の下でなされた受発注の実績データで記録が残っているものであれば、それを有効活用することができるのである。また、本システムが稼働する状況においても、旧態の体系での受発注は完全には無くならないため、基幹サーバーの情報を活用できることは大いに意味がある。後で詳しく説明する注文データ補填手段14による処理では、これらの実績データも活用されるところ、顧客がストレスの少ない注文を行うことを、本発明の実施形態は可能としている。
【0027】
(データベース・サーバーの構成)
データベース・サーバー3は、受発注管理サーバー2が処理を行う上で必要な情報、具体的には、ダクト製作属性データや、価格決定をするための得意先別単価や掛率、商品ランク単価といった情報が蓄積されており、受発注管理サーバー2からのアクセスにより、適宜の通信を行う。具体的に、データベース・サーバー3は、ダクト製作属性DB31と単価・掛率DB32とから構成されている。
ダクト製作属性DB31には、設備とダクト或いはダクト同士を接続組み合わせる際に必要となる詳細仕様であるダクト製作属性データが、メーカー別・部材別毎に分類されて記憶されている。
単価・掛率DB32には、得意先別単価や掛率、商品ランクでの単価や掛率等が記憶されている。ダクト供給業者が顧客であるダクト施工業者と取引を行うに際して、取引の実状に照らして、顧客に応じたサービスや契約を締結している場合がある。これらの内容は、当然、注文内容の価格に反映されるところ、本発明の実施形態は、これらの顧客別の条件も加味して、発注に係る概算価格の提示や積算見積の提示を行うことを可能としている。なお、実際の業務においては、発注に係る概算価格とその後に確定した請求額が異なるケースが生じる場合もあるが、本発明の技術内容とは直接に関係するところではないので、説明は省略する。
なお、本実施形態において、データベース・サーバー3は、受発注管理サーバー2とインターネット通信網で接続されているが、受発注管理サーバー2とデータベース・サーバー3を単一のサーバーとして構築してもよい。
【0028】
本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムが実行する処理につき、フローチャートを用いて、各手段が行う処理別に説明する。なお、部材リスト生成手段11や入力支援手段12が実行する処理など、既に記載した以上の説明を要しないと思われる処理については、説明を省略する。
【0029】
(部材データ抽出手段による処理)
図3(a)は、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける部材データ抽出手段21により実行される処理を示すフローチャートである。
ステップS101において、情報処理装置1より受信した配列形式の部材リストが展開される。以降、部材リストの全ての行に亘って、ステップS102からステップS106迄の処理が繰り返し実行されることになる。
ステップS103では、CADメーカーを特定するCAD種別データが記載された行であるか否かをチェックし、当該行であれば、ステップS104において、CADメーカーを特定する。この際、ダクト製作属性DB31の情報が参照されることになる。本実施形態では、部材リストの1行目にCAD種別データが記載されているので、ステップS103では、部材リストの1行目であるか否かが判定されることになる。
ステップS103において、1行目ではないと判断された場合には、ステップS105において、既に特定されているCADメーカーに応じた(ダクト部材と副資材との関係を示す)ルールに従って部材リストのデータを成型処理(見出し等に応じた適宜の並び替え処理)する。この際にも、ダクト製作属性DB31の情報が参照されて、ルールが確認されることになる。無論、CADメーカーを特定する情報やメーカー毎のルールについての情報は、受発注管理サーバー2に一時記憶されても良いし、データベース・サーバー3を参照することなく、受発注管理サーバー2に恒常記憶されるように構成してもよい。
ステップS102からステップS106迄の処理が部材リストの全行に亘って実行されたならば、部材データ抽出手段21による処理を終了して、次処理である商品特定手段22による処理へと進む。
【0030】
(商品特定手段による処理)
図3(b)は、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける商品特定手段22により実行される処理を示すフローチャートである。
部材データ抽出手段21による処理において成型された全ての行に亘って、ステップS201からステップS203迄の処理が繰り返し実行されることになる。
ステップS202では、成型されたデータを条件にダクト属性DB31を参照して、商品情報を抽出して取得する。
ステップS201からステップS203迄の処理がファイルの全行に亘って実行され、全ての商品情報が取得されたならば、商品特定手段22による処理を終了して、次処理である注文リスト作成手段23による処理へと進む。
【0031】
(注文リスト作成手段による処理)
図4は、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける注文リスト作成手段23により実行される処理を示すフローチャートである。
商品特定手段22による処理において取得された全ての行に亘って、ステップS301からステップS318迄の処理が繰り返し実行されることになる。
ステップS302では、ダクト製作属性が特定されていない要素が有るか否か判断される。具体的には、例えば、丸ダクトであれば、商品分類、寸法1~8、材質、板厚、仕上げのうち未特定のデータが有るか否かを判断する。
図4においてステップS302は一つの判断処理として示されているが、実際には、商品分類、寸法1~8、材質、板厚、仕上げの一つ一つについての判断と次処理のステップS303を繰り返し処理する。ステップS302において未特定であると判断された仕様については、未特定フラグをONとする。
ステップS304において、全てのダクト製作属性が特定されているか判断する。全てのダクト属性が特定されている訳ではない場合には、ステップS318に進むが、これについては後記する。このような処理が適用されたデータを、
図2(b)に示す。商品分類がDTFPとされる部材については、
図2(b)が示すように、寸法1、寸法5、寸法7及び寸法8に未特定フラグが設定されている。商品分類がSPとされる部材については、
図2(b)が示すように、未特定フラグは設定されていない。商品分類がFGRFとされる部材については、
図2(b)が示すように、寸法4及び寸法5に未特定フラグが設定されている。
ステップS304において、全てのダクト製作属性が特定されていると判断された場合には、部材毎の商品単価を決定するための一連の処理へと進む。
一連の処理として、先ず、ステップS305において、単価・掛率DB32にアクセスして、商品単価設定情報を抽出する。商品単価設定情報は、得意先別単価や掛率、商品ランクでの単価や掛率等であり、これらの情報を単価・掛率DB32から読取った注文リスト作成手段23は、これらの情報を一時記憶する。
以降は、商品単価を決定するための具体的項目が設定される。ステップS306では、メニュー価格としての単価が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS307において商品の単価(デフォルト値)をメニュー価格としての単価に変更する。ステップS308では、メニュー価格としての掛率が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS309において商品の単価(デフォルト値)にメニュー価格としての掛率を乗じて単価を変更する。ステップS310では、メニュー価格として粗利が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS311において商品の単価を粗利に変更する。ステップS312では、得意先設定1としての得意先別掛率が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS313において得意先別掛率を乗じて単価設定する。ステップS314では、得意先設定2としての粗利が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS315において商品の単価を得意先別の粗利とする。ステップS316では、得意先設定3としての得意先別ランク(ABC)が設定されているか否かを判断し、設定されていると判断されれば、ステップS317において商品の単価を該当するランクに設定する。
商品単価を決定するための一連の処理が全て終了した場合、若しくは、ステップS304において、全てのダクト属性が特定されている訳ではないと判断された場合、ステップS318に進んで、データが最終行でない場合には、次行のデータについて、ステップS302からステップS317迄の処理を再び行う。データの最終行まで実行された後には、完成された注文リスト、或いは、未特定フラグがあり属性不足のある注文リストを情報処理装置1へ送信する。
【0032】
(注文リスト表示手段による処理)
図5(a)は、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける注文リスト表示手段13により実行される処理を示すフローチャートである。
ステップS401において、受発注管理サーバー2より受信した完成された注文リスト、或いは、未特定フラグがあり属性不足のある注文リストに基づいての描画処理が実行される。すなわち、注文リスト作成手段23により作成されたリストデータの全ての行に亘って、ステップS401からステップS408迄の処理が繰り返し実行されることになる。
ステップS402では、ダクト製作属性が特定されていない要素が有るか否か判断される。具体的には、例えば、丸ダクトであれば、商品分類、寸法1~8、材質、板厚、仕上げのうち未特定のデータが有るか否かを判断する。
図5(a)においてステップS402は一つの判断処理として示されているが、実際には、商品分類、寸法1~8、材質、板厚、仕上げの一つ一つについての判断と次処理のステップS403を繰り返し処理する。ステップS402において未特定であると判断された仕様がある場合には、ステップS403において、当該仕様につき未確定状態のままで画面へ描画する。ステップS402において、ダクト製作属性が特定されていない要素はないと判断された場合には、ステップS404において、未確定となっていない仕様を確定状態とした上で画面へ描画する。
ステップS405において、商品の属性が全て特定されているか否かを判断する。全て特定されている訳ではないと判断されたならば、ステップS406において価格をブランクとさせた状態で描画を行い、全て特定されていると判断されたならば、ステップS407において特定済みの価格を画面に描画する。
ステップS401からステップS408迄の処理がリストデータの全行に亘って実行された結果、完全な注文リストが表示されたならば、処理を終了し、必要な承認等の手続を行う処理(不図示)へと進む。一方、ブランクの項目がある場合には、注文データ補填手段14による処理へと進む。
【0033】
(注文データ補填手段による処理)
図5(b)は、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムにおける注文データ補填手段14により実行される処理を示すフローチャートである。
ステップS501において、注文リスト表示手段13より引き継いだ未特定項目のある注文リストを補填するための処理が実行される。すなわち、注文リスト表示手段13による処理が実行された結果として描画されている全ての行に亘って、ステップS501からステップS504迄の処理が繰り返し実行されることになる。
ステップS502では、未確定状態で画面へ描画されている情報が存在するか否かを、利用者が判断する。具体的には、
図2(b)に示される情報が画面表示とされているので、これを利用者が確認する。ただし、
図2(b)は説明のために示された態様であって、「未特定」とされている箇所には、例えば、「選択してください」等の表示がされることになる。この表示は、例えば、プルダウン形式により、部材データ抽出手段21が抽出し、情報処理装置1へ送信済みのダクト属性データの選択候補が選択可能なリストとして表示されることによりなされる。リストの中に適切な選択候補が存在しない場合には、手入力もできるようにされている。この他、フローチャートや
図2においては、図示を省略しているが、
図4の注文リスト作成手段23の実行処理で説明したように、ステップS304において、全てのダクト製作属性が特定されている訳ではないと判断された場合には、ステップS318に進むため、対象部材の価格設定については一切なされてないことになるところ、注文データ補填に係る処理においては、価格情報の補填も行われることになる。
ステップS501からステップS504迄の処理が描画されているリストの全行に亘って実行され、ステップS505において、その後の承認手続等の必要な入力手続が行われて、注文リストが確定されたならば、ステップS506において、確定・承認済みの注文リストが受発注管理サーバー2へ送信されて、処理を終了する。
【0034】
注文リストを受信した受発注管理サーバー2は、受注処理手段24において、受注処理、注文起票、仕入先注文といった必要な処理を実行すると共に、受注により得た情報をデータベース・サーバー3の顧客DB領域(不図示)や基幹サーバー(不図示)に送信する。これらの蓄積データに基づいて、顧客は、マイページによって、注文履歴(月別、現場別、商品群別)、納品履歴(月別、現場別)を閲覧できるようになる。
【0035】
<別の実施形態>
これまでに説明した本発明の実施形態は、部材データ抽出手段21、商品特定手段22、注文リスト作成手段23、受注処理手段24にて行われる処理がWebブラウザ上で実行されるものであり、さらにいえば、
図1の機能ブロックとしては、情報処理装置1側に示した注文リスト表示手段13や注文データ補填手段14による処理も、実質的には、Webブラウザ上で実行されるものである。しかし、これらの処理の一部ないし全部についての処理実行プログラムを用意して、情報処理装置1にダウンロード、インストールさせて、情報処理装置1で実行させるように構成することも可能である。この構成の一例を示したものが、
図6として示されるシステム構成兼機能ブロック図である。
図1のシステム構成は、SaaS(Software as a Service)として観念されるものであったが、
図6のシステム構成は、クライアントサーバモデルとして観念されるものである。すなわち、情報処理装置4に実装されるアプリとデータベース・サーバー5とからのシステム構成となる。プログラム中に、XML等でデータを扱えるようにすることで、ダクト製作属性抽出に係る処理も情報処理装置1側で実行できるようになり、通信環境が不安定な状況でも、安定した処理を実行できるようになる。
図6に示される実施形態において、情報処理装置4自身が、ダクト製作属性データ及び単価・掛率データを記憶しているが、これらのデータは、データベース・サーバー5にアクセスすることによって、適時に更新されるように構成されている。
【0036】
本発明の実施形態及び別の実施形態によれば、次に挙げるような効果が見込まれる。
設備CADで作成された単品図(丸ダクト・角ダクト)や副資材リストをデジタルデータとして、システム上で抽出可能となる。すなわち、ダクト施工業者が発注元から受け取る設備CADで作成された図面から拾い出されたデータを、システム内で照合し、必要な部材の選択及び仕様を簡便に追加入力して発注することが可能となる。また、設備CADがなく、施工図から手拾いでの作業を行う場合であっても、副資材の情報の全てを完全に入力する必要が無く、本システムが補充のためのアシストをすることができる。当然に、FAX等での見積依頼書・見積書回答といった旧態のやり取りは不要となり、ペーパーレス化が見込まれる。
また、[背景技術]の項での説明は割愛したが、現在普及している設備CADで作成された設備業者の施工図は、正確性を欠く場合があり、この施工図通りにダクト業者がダクト製作を行うと実際の現場で合わず、最大30%の作り直しが発生しているというのが実情である。この背景には、不鮮明な施工図やヒューマンエラーといった原因が挙げられる。本システムでは、CADデータを利用するのであれば、情報が正確に伝達されることになるものであるし、CADデータを利用できない場合であっても、各種の支援が行われるため、作り直しの事態が発生することを著しく低減させることができる。
【0037】
以上、ダクト受発注支援システムについて説明したが、背景技術で述べた問題は、重層請負形態の周辺業界(保温業界、管材業界、給排水設備業界、土木資材業界、電設資材業界など)においても、同様に当て嵌まることは、容易に理解されよう。すなわち、本発明の技術的思想は、これらの業界における受発注システムないし受発注支援システムにおいても同様に適用し得るものである。
【0038】
[付記]
上記したように、本発明の技術的思想は、より広範な分野に適用し得るものであるところ、保温業界、管材業界、給排水設備業界、土木資材業界、電設資材業界などにおける受発注支援システム一般として技術的思想を化体させた場合の発明思想(態様)を以下に示しておく。
【0039】
(付記1)
(1)設備資材受発注支援システムとしての発明の一態様は、設備資材の注文リスト作成及び/又は受発注を行う設備資材受発注支援システムであって、情報処理装置と、受発注管理サーバーを備え、情報処理装置は、設備資材製作属性データが完備された設備CADデータ又は設備資材製作属性データが無い若しくは不足している設備CADデータから部材リストを生成する部材リスト生成手段と、生成された部材リストを受発注管理サーバーへ送信すると共に、注文リスト及び/又は設備資材製作属性データを受発注管理サーバーから受信する送受信手段と、設備資材製作属性データの選択候補から設備資材製作属性を選択可能な操作入力手段と、を有し、受発注管理サーバーは、受信した部材リストに基づいて部材データ及び副資材データを抽出する部材データ抽出手段と、不足する場合に設備資材製作属性データを検索し、設備資材製作属性の選択候補を抽出する設備資材製作属性抽出手段と、抽出された部材データ及び副資材データに基づいて注文リストを作成する注文リスト作成手段と、を有する設備資材受発注支援システムにおいて、受発注管理サーバーが、注文リスト及び/又は設備資材製作属性データを情報処理装置に送信することにより、情報処理装置の表示装置に注文リストが表示され、かつ、設備資材製作属性データが不足している場合に、情報処理装置の表示装置に未確定状態の項目を含む注文リストと設備資材製作属性の選択候補が表示されることを特徴とする設備資材受発注支援システム。
【0040】
(付記2)
(2)設備資材受発注支援システムとしての発明の一態様は、(1)に記載の設備資材受発注支援システムであって、受発注管理サーバーは、さらに、注文リストに基づいて見積額を算出する見積額算出手段と、注文リストに基づいて受注及び必要に応じて発注処理を行う受発注処理手段と、を有することを特徴とする設備資材受発注支援システム。
【0041】
(付記3)
(3)設備資材受発注支援システムとしての発明の一態様は、(1)又は(2)に記載の設備資材受発注支援システムであって、部材リストには、CAD種別データが含まれており、設備資材製作属性抽出手段は、CAD種別データに基づいて設備資材製作属性の選択候補を抽出することを特徴とする設備資材受発注支援システム。
【0042】
(付記4)
(4)設備資材受発注支援システムとしての発明の一態様は、(2)に記載の設備資材受発注支援システムであって、受発注管理サーバーは、単価に対して異なる複数の掛率が、商品ごと及び/又は顧客ごとに保存された掛率データ記憶手段を、有し、見積額算出手段は、注文リストと対象となる顧客の掛率データに基づいて見積額を算出することを特徴とする設備資材受発注支援システム。
【0043】
(付記5)
(5)設備資材受発注支援システムとしての発明の一態様は、(1)から(4)の何れか一に記載の設備資材受発注支援システムであって、情報処理装置は、設備CADデータがない状況で設備施工図から部材リストを入力するための支援を行う入力支援手段を、さらに有し、かつ、受発注管理サーバー又は情報処理装置は、入力支援手段から製作図データを取得する場合にも、不足する設備資材製作属性データを受発注管理サーバーから受信した上で、部材データと副資材データを抽出することを特徴とする施設部材受発注システム。
【0044】
この他、ここでは記載を省略するが、受発注支援システムとしての発明の一態様がサーバーやサーバープログラムとしても観念できることは明らかである。
【0045】
以上、本発明の実施形態に係るダクト受発注支援システムについて、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、本明細書において、ダクト製作属性に関し、規格品の丸ダクトと角ダクトとの間に違いがある旨を説明したが、本明細書から把握される技術的思想は、ダクト製造加工という限られた状況についての特有のものではない。多様な建築・設計様式が混在する日本の建築市場において、ゼネコン業界本体は、まだしも、設備資材業界においては共通プラットフォームの欠如という大きな障壁を克服できないでいる点に着目した上で、それを克服し得るシステムの提案という、より大所からの立場に立脚した技術的思想を様々な分野に敷衍して考えることができるということは明確に理解されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 情報処理装置
11 部材リスト生成手段
12 入力支援手段
13 注文リスト表示手段
14 注文データ補填手段
2 受発注管理サーバー
21 部材データ抽出手段
22 商品特定手段
23 注文リスト作成手段
24 受注処理手段
3 データベース・サーバー
31 ダクト製作属性DB
32 単価・掛率DB
4 情報処理装置
5 データベース・サーバー