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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021111
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240208BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G31/00 611A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123702
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314PC02
2B314PC27
2B314PC29
2B314PD01
(57)【要約】
【課題】培地片における苗の生育状態がばらつくのを抑えつつ、複数の培地片の各々にて植物の苗を良好に生育させる。
【解決手段】本発明の植物の栽培方法は、培地シートにおける複数の領域の各々に設けられた2つ以上の孔に種を入れ、それぞれの孔内で生育された植物の苗を得る第1工程と、培地シートに対して、各々の領域において少なくとも1つの孔から苗を間引く処理、及び切り取り線に沿って領域を培地シートから分離する処理を、領域毎に繰り返し実施して、苗が入った第1孔と苗が間引かれた第2孔とを有する培地片を複数得る第2工程と、2つ以上の培地片を含む列が複数形成されるように複数の培地片を配置する第3工程と、各培地片において第1孔に入った苗を育成する第4工程と、を有する。第3工程にて形成された列に含まれる2つ以上の培地片の各々の中心を結んだ仮想線に対して、2つ以上の培地片の各々の第2孔が同じ側に配置される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り取り線により区画された複数の領域を有する培地シートにおいて、各々の前記領域に設けられた2つ以上の孔のそれぞれに植物の種を入れ、それぞれの前記孔内で生育された前記植物の苗を得る第1工程と、
前記培地シートに対して、各々の前記領域において少なくとも1つの前記孔から前記苗を間引く処理、及び、前記切り取り線に沿って前記領域を前記培地シートから分離する処理を、前記領域毎に繰り返し実施することで、前記苗が入った第1孔と前記苗が間引かれた第2孔とをそれぞれ1つ以上有する培地片を、複数得る第2工程と、
2つ以上の前記培地片を含む列が複数形成されるように複数の前記培地片を配置する第3工程と、
前記第3工程にて形成された前記列に含まれる2つ以上の前記培地片の各々において、前記第1孔に入った前記苗を育成する第4工程と、を有し、
前記第3工程にて形成された前記列を平面視した場合に、前記列に含まれる2つ以上の前記培地片の各々の中心を結んで規定される仮想線に対して、前記列に含まれる2つ以上の前記培地片の各々の前記第2孔が同じ側に配置される、植物の栽培方法。
【請求項2】
前記第3工程では、3つ以上の前記培地片を含む前記列が複数形成され、且つ、1つ以上の前記列において、前記列に含まれる3つ以上の前記培地片の各々が有する前記第2孔が一直線上に並ぶように複数の前記培地片を配置する、請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項3】
前記第3工程では、複数の前記列のそれぞれにおいて、前記列に含まれる3つ以上の前記培地片の各々が有する前記第2孔が一直線上に並ぶように複数の前記培地片を配置する、請求項2に記載の植物の栽培方法。
【請求項4】
前記第2工程では、1つ以上の前記第1孔と1つの前記第2孔とを有する前記培地片を、複数得る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の植物の栽培方法。
【請求項5】
各々の前記領域には、3つの前記孔が設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の植物の栽培方法。
【請求項6】
前記培地シートを平面視した場合、各々の前記領域において、3つの前記孔が二等辺三角形状又は正三角形状に配置されている、請求項5に記載の植物の栽培方法。
【請求項7】
前記第2工程では、2つの前記第1孔と1つの前記第2孔とを有する前記培地片を、複数得て、
前記第3工程では、1つ以上の前記列において、前記列に含まれる3つ以上の前記培地片の各々が有する前記第1孔が一直線上に並ぶように複数の前記培地片を配置する、請求項6に記載の植物の栽培方法。
【請求項8】
前記第3工程では、保持プレートに設けられた複数の保持孔のそれぞれに、前記培地片を嵌め込むことで、複数の前記培地片を配置し、
前記保持プレートにおいて、前記複数の保持孔が、2つ以上の前記保持孔を含む孔列を複数構成した状態で設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培方法に係り、培地シートの各領域にて播種し、培地シートから切り離して構成される培地片にて苗を生長させる栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培する際に、ウレタン等によって構成される培地シートを用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。培地シートは、一般的に切り取り線によって複数の領域に区画され、各領域には播種用の孔が設けられている。各領域では、孔に種が投入され、孔内で発芽した植物の苗を生長させる。
【0003】
そして、苗が所定の大きさまで生長した時点で、その苗を支持している領域を培地シートから切り離す。以降、切り離されたシート断片は、引き続き、苗の栽培床(培地片)として用いられる。具体的に説明すると、一つの培地シートから複数の領域を切り離して複数の培地片を得る。それぞれの培地片には植物の苗が支持されており、複数の培地片は、例えば、定植先の場所にて並べられた状態で利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-11145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、培地シートにおける複数の領域の各々に2つ以上の孔を設け、それぞれの孔に対して播種を行った場合、培地シートから切り離して得られる複数の培地片のそれぞれには、2つ以上の苗が支持されるようになる。このようなケースにおいて、複数の培地片を並べた状態で各培地片にて苗を生長させる場合に、苗の葉及び茎(すなわち、地上部)が密集すると、苗の生育が阻害される可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。具体的には、上述した従来技術の問題点を解決し、培地片における苗の生育状態がばらつくのを抑えつつ、複数の培地片にて植物の苗を良好に生育させるための栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の植物の栽培方法は、切り取り線により区画された複数の領域を有する培地シートにおいて、各々の領域に設けられた2つ以上の孔のそれぞれに植物の種を入れ、それぞれの孔内で生育された植物の苗を得る第1工程と、培地シートに対して、各々の領域において少なくとも1つの孔から苗を間引く処理、及び、切り取り線に沿って領域を培地シートから分離する処理を、領域毎に繰り返し実施することで、苗が入った第1孔と苗が間引かれた第2孔とをそれぞれ1つ以上有する培地片を、複数得る第2工程と、2つ以上の培地片を含む列が複数形成されるように複数の培地片を配置する第3工程と、第3工程にて形成された列に含まれる2つ以上の培地片の各々において、第1孔に入った苗を育成する第4工程と、を有し、第3工程にて形成された列を平面視した場合に、列に含まれる2つ以上の培地片の各々の中心を結んで規定される仮想線に対して、列に含まれる2つ以上の培地片の各々の第2孔が同じ側に配置されることを特徴とする。
上記の栽培方法によれば、苗の葉及び茎(すなわち、地上部)が密集する状況を回避し易くなるため、複数の培地片のそれぞれにおいて、植物の苗を良好に生育させ、且つ、苗の生育状態のばらつきを抑えることができる。
【0008】
また、第3工程では、3つ以上の培地片を含む列が複数形成され、且つ、1つ以上の列において、列に含まれる3つ以上の培地片の各々が有する第2孔が一直線上に並ぶように複数の培地片を配置するとよい。
上記の構成によれば、苗の地上部が密集する状況をより回避し易くなるため、より効率よく、苗の生育状態のばらつきを抑えながら苗を良好に生育させることができる。
【0009】
また、第3工程では、複数の列のそれぞれにおいて、列に含まれる3つ以上の培地片の各々が有する第2孔が一直線上に並ぶように複数の培地片を配置すると、より好適である。
上記の構成によれば、苗の地上部が密集する状況をより回避し易くなるため、より一層効率よく、苗の生育状態のばらつきを抑えながら苗を良好に生育させることができる。
【0010】
また、第2工程では、1つ以上の第1孔と1つの第2孔とを有する培地片を、複数得てもよい。
また、各々の領域には、3つの孔が設けられてもよい。
また、培地シートを平面視した場合、各々の領域において、3つの孔が二等辺三角形状又は正三角形状に配置されてもよい。
【0011】
また、第2工程では、2つの第1孔と1つの第2孔とを有する培地片を、複数得てもよい。この場合、第3工程では、1つ以上の列において、列に含まれる3つ以上の培地片の各々が有する第1孔が一直線上に並ぶように複数の培地片を配置すると、より好適である。
上記の構成によれば、苗の地上部が密集する状況をより回避し易くなるため、より効率よく、苗の生育状態のばらつきを抑えながら苗を良好に生育させることができる。
【0012】
また、第3工程では、保持プレートに設けられた複数の保持孔のそれぞれに、培地片を嵌め込むことで、複数の培地片を配置してもよい。この場合、保持プレートにおいて、複数の保持孔が、2つ以上の保持孔を含む孔列を複数構成した状態で設けられていると、より好適である。
上記の構成によれば、第3工程において、2つ以上の培地片を含む列が複数形成されるように複数の培地片を配置することが容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、培地片における苗の生育状態がばらつくのを抑えつつ、複数の培地片の各々にて植物の苗を良好に生育させるための栽培方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】培地を用いた植物の栽培方法の基本的な流れを示す図である。
図2】培地シートの平面図である。
図3】培地片の説明図であり、一つの培地片が培地シートから切り離されている状態を示す。
図4】培地片の側方断面図である。
図5】培地片の使用方法についての説明図であり、培地片がセットされた状態の栽培装置の平面図である。
図6】培地片の使用方法についての説明図であり、図5のA-A断面を模式的に示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る植物の栽培方法の手順を示す図である。
図8】複数の培地片の配置位置を示す図である。
図9】変形例に係る複数の培地片の配置位置を示す図である。
図10】第二の変形例に係る培地シートの部分拡大図であり、一つの領域を拡大して示した平面図である。
図11】第二の変形例に係る培地シートにおける複数の培地片の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0016】
また、本明細書において、各機器(機器中の構成部品を含む)の位置、方向及び状態等を説明する場合には、特に断る場合を除き、当該機器が利用されている状態での位置、方向及び状態等を説明することとする。例えば、以下の説明において、「上面」とは、使用状態において上側に位置する面、換言すると、上方を向く面を意味する。また、以下の説明において、「平面視」とは、対象とする機器又は部材の上面を真上から見ることを意味する。
【0017】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている場合が含まれ得る。
また、本明細書において、「同じ」、「同一」及び「等しい」という意味には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合が含まれ得る。
【0018】
<<本実施形態に係る植物栽培の概要について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)に係る植物の栽培方法について説明する。
本実施形態に係る植物の栽培方法では、固形培地(以下、培地)を栽培床として用い、農作物又は鑑賞用の植物(以下、単に植物と称する)を栽培する。本実施形態の栽培方法によって栽培される植物の種類は、特に限定されないが、葉及び茎(つまり、地上部)が生長に伴って肥大化する種類の植物、例えば、葉菜類の植物であれば、本実施形態の栽培方法を有効に活用することができる。また、本実施形態に係る植物の栽培方法は、家庭菜園のような比較的小規模な栽培形態のみならず、農園又は植物工場等での比較的大規模な栽培にも利用可能である。
【0019】
また、本実施形態に係る植物の栽培方法において、栽培方式は特に限定されず、土耕栽培方式でもよく、又は水耕栽培方式であってもよい。以下では、植物工場にて水耕栽培方式で植物を栽培するケースを例に挙げて説明する。
【0020】
培地を用いた植物栽培方法の基本的な流れについて、図1を参照しながら説明すると、植物の栽培は、播種から開始され、定植及び育苗の工程を経て、収穫可能な状態に至るまで行われる。栽培中の各時点では、例えば多孔質体又は発泡材等からなる培地100が栽培床として用いられる。具体的に説明すると、播種の時点では、図1に示すように、培地100の上面に設けられた孔102内に種が投入される。培地100には複数の孔102が設けられることがあり、この場合、各孔102に種が投入される。発芽後から定植までの期間中には、図1に示すように、培地100が植物の苗Vを支持する。この期間中、植物の根は、培地100内を通りながら下方に向かって伸び、やがて培地100の下面から突出する(図4参照)。
【0021】
培地100に複数の孔102が設けられている場合、それぞれの孔102内で苗Vが生長する。換言すると、複数の孔102を有する培地100は、複数の苗Vを支持する。そして、苗が所定の大きさまで生長した時点で定植が行われる。定植では、図1に示すように、植物の苗Vが培地100とともに移設される。
【0022】
また、培地100に複数の苗が支持されている場合、定植の直前又直後には、複数の苗Vのうち、生長度合いが小さい苗(生長速度が遅い苗)を選んで取り除く(間引く)処理が行われる。定植後の育苗期間中、培地100は、移設先の場所にて、引き続き栽培床として用いられる。すなわち、定植以降、収穫の時点まで苗Vが培地100にて支持される。
【0023】
上述した基本的な流れは、本実施形態に係る栽培方法においても共通する。また、本実施形態では、播種から定植までの期間中、シート状の培地(培地シート)を用いて植物を栽培する。そして、定植の時点で、培地シートを断片化して複数の培地片に分け、定植以降は、複数の培地片のそれぞれにて植物の苗を栽培する。なお、培地シート、及び培地片のそれぞれの構成については、次の項で説明することとする。
【0024】
<<培地シート及び培地片>>
本実施形態に係る培地シート10及び培地片20の構成について、図2~6を参照しながら説明する。図2は、培地シート10の平面図である。図3は、培地片20の説明図であり、一つの培地片20が培地シート10から切り離されている状態を示す。図4は、培地片20の側方断面図である。図5及び6は、培地片の使用方法についての説明図であり、図5は、培地片がセットされた栽培装置30の平面図であり、図6は、図5のA-A断面を模式的に示す図である。なお、図5では、図示の都合上、植物の苗を省略している。
【0025】
(培地シート)
培地シート10は、吸水性(吸液性)を有する多孔質材料、例えば、スポンジ、発泡材又は繊維マット等によって構成されている。培地シート10を構成する材質としては、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリスチレン等の発泡樹脂、並びに、ロックウール、ヤシがら、パルプ、紙、レーヨン、パーライト、ピートモス、バーミキュライト、籾殻、樹皮及びココマット等の繊維材料が挙げられる。これらのうち、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、及びロックウールが好ましく、フェノール樹脂が特に好ましい。培地シート10を構成する材質の吸水率は、50~99.9%であるのがよく、好ましくは70~99%であるのがよく、より好ましくは80~98%であるのがよい。
【0026】
培地シート10の形状は、図2に示すように平面視で略矩形であり、長辺及び短辺のそれぞれが数cm~数十cm程度の長さである。培地シート10の各辺は、50mm~2000mmであるとよく、好ましくは100mm~1500mmであるとよく、より好ましくは200~1000mmであるとよい。また、培地シート10は、数mm~数cm程度の厚みを有し、その厚みは、例えば、1~200mmであるとよく、好ましくは5~100mmであるとよく、より好ましくは10~50mmmであるとよい。
【0027】
また、培地シート10は、図2に示すように、切り取り線によって複数の領域12に区画されている。詳しく説明すると、培地シート10には、培地シート10の長手方向に延出する切り取り線L1と、培地シート10の短手方向に延出する切り取り線L2とが、それぞれ1つ以上形成されている。これにより、培地シート10には、平面視で方形状又は矩形状の領域12が、長手方向にm個、短手方向にn個(m、nは2以上の自然数)並んだ状態で配置されている。
【0028】
複数の領域12の各々は、互いに同じサイズであり、隣り合う2つの領域12同士は、切り取り線L1又は切り取り線L2を挟んで互いに隣接している。また、複数の領域12の各々は、図3に示すように、切り取り線L1,L2に沿って培地シート10(厳密には、培地シート10における他の領域12)から切り離されることで断片化した培地、すなわち培地片20を構成する。
なお、各領域12及び培地片20の平面形状は、方形又は矩形に限定されず、円孔、正三角形又はそれ以外の正多角形であってもよい。
【0029】
各切り取り線L1,L2は、線状に断続的に並んだスリット状の溝、ミシン目又は穴によって構成されている。また、培地シート10において切り取り線L1,L2が形成された箇所は、培地シート10にて植物を栽培する際には切断されにくい一方で、培地シート10から培地片20を切り離す際には切断し易いことが好ましい。
【0030】
また、各領域12において、培地シート10の厚み方向における一端面、詳しくは、各領域の12上面には、図2に示すように、播種用の孔14a,14b,14cが3つ形成されている。この3つの孔14a,14b,14cは、培地シート10を平面視した場合に一直線上に並んでおらず、換言すると三角形状に配置されている。ここで、3つの孔14a,14b,14cが三角形状に配置されるとは、仮想的な三角形の各頂点に各孔の中心が位置することを意味する。また、本実施形態では、図2に示すように、各領域12において、3つの孔14a,14b,14cが二等辺三角形状に配置され、より詳しくは正三角形状に配置されている。
【0031】
各領域12に設けられた3つの孔14a,14b,14cがなす仮想的な三角形(以下、仮想的な三角形)は、前述したように正三角形であり、且つ領域12間で略同一サイズである。このように複数の領域12の各々は、栽培環境(詳しくは、育苗環境)の観点では、領域12間で均一な構造をなしている。なお、各領域12における仮想的な三角形の一辺、すなわち孔間の距離は、育苗期間中における苗同士の干渉(接触)を考慮して好適な間隔に設定されているのが好ましい。
【0032】
各孔14a,14b,14cは、円形又は楕円形の開口を有する。孔14a,14b,14cの開口径は、種の径(相当円直径)より一回り大きいとよい。また、孔14a,14b,14cの開口形状は、円形又は楕円に限られず、四角形又は三角形等の多角形、星形、又はその他の形状でもよい。
【0033】
そして、播種時には、開口を通じて植物の種が各孔14a,14b,14c内に投入される(入れられる)。各孔14a,14b,14cに投入される種の数は、栽培が適切に行われる限り、任意の個数に設定できるが、本実施形態では、1つの孔14a,14b,14cに種が1つずつ投入されることとする。
【0034】
以上のような構成の培地シート10は、播種から定植までの間、栽培床として利用される。具体的には、不図示の浅底トレーの内部に養液を溜めた状態で、培地シート10をトレー内に配置し、培地シート10の下面部全体をトレー内の養液に浸す。かかる状態で培地シート10をトレー内に保持することで、各領域12において孔14a,14b,14cに入った種が発芽し、発芽後の植物の苗を定植の直前まで生長させることができる。
【0035】
(培地片)
培地片20は、図3に示すように柱状又はキューブ状のシート断片であり、培地シート10に含まれる領域12を残りの領域12から切り離すことで構成される。培地片20は、弾性変形可能であり、例えば、培地片20の平面サイズよりも一回り小さい円穴に培地片20を嵌め込んだ場合には、円穴の内周面にフィットするような略円柱の形状に弾性変形する。
【0036】
本実施形態において、培地片20(厳密には、弾性変形前の培地片20)は、平面視で方形であり、その一辺は、1~100mmであるとよく、好ましくは5~60mmであるとよく、より好ましくは10~40mmであるとよい。
【0037】
培地片20は、定植後の育苗期間中、図4に示すように植物の苗Vを保持し、具体的には、苗Vにおける根の根元部分(茎側の部分)を保持する。本実施形態では、各培地片20には3つの孔14a,14b,14cが設けられており(図3参照)、各孔14a,14b,14cには植物の種が1つずつ投入されているため、各培地片20は、最大で3つの苗Vを保持することができる。
【0038】
以上のような構成の培地片20は、定植の直前又は直後の時点で取得される。具体的には、定植の直前又は直後において、一つの培地シート10から複数(具体的には、m×n個)の領域12の各々が切り離されることで、領域12と同数の培地片20が取得される。この段階において、各培地片20は、3つの苗Vを支持している。
【0039】
また、定植以降、培地片20は、図5及び6に示された栽培装置30にセットされた状態で利用される。栽培装置30は、図5及び6に示すように、箱型の容器32と、容器32の上端開口の内側に配置されて当該開口を塞ぐフロート34とを有する。
【0040】
容器32は、十分な深さを有し、容器32の内部には養液が溜められる。容器32内に溜められた養液は、容器32の外に配置された不図示の循環機構によって循環する。
【0041】
フロート34は、平面視で略矩形状のプレート体(保持プレートに相当)であり、容器32内に溜められた養液の液面よりも上方に位置した状態、あるいは養液上に浮かべられた状態で配置される。フロート34を養液上に浮かべて用いる場合、フロート34は、発泡スチロール等のような養液より比重が小さい材料によって構成される。
【0042】
フロート34は、定植後の育苗期間中、図6に示すように培地片20を保持する。具体的に説明すると、フロート34には、複数の保持孔36が形成されており、各保持孔36は、フロート34を貫通した円穴であり、そのサイズは、培地片20の平面サイズよりも幾分小さい。そのため、培地片20を保持孔36内に嵌め込むと、培地片20が保持孔36の内周面にフィットするように弾性変形して保持孔36内で保持されるようになる。このように、培地片20は、保持孔36に嵌め込まれることでフロート34に保持される。
【0043】
培地片20がフロート34に保持された状態では、図6に示すように、培地片20によって支持された苗Vの根のうち、培地片20の下面から突出した部分が、容器32内に溜められた養液に浸るようになる。
【0044】
また、保持孔36は、円孔に限定されず、正方形、正三角形又はそれ以外の正多角形の外縁形状をなす貫通孔でもよい。
【0045】
ここで、フロート34の長手方向を第1方向とし、フロート34の短手方向を第2方向とする。フロート34に設けられた複数の保持孔36は、図5に示すように、第1方向に沿って並んだ2つ以上の保持孔36を含む孔列38が、第2方向に間隔を空けて複数配置された状態で設けられている。
【0046】
なお、孔列38に含まれる保持孔36の個数は、2つ以上であればよいが、以下では、孔列38に含まれる保持孔36の数が3つ以上であることとする。
また、保持孔36間の間隔、及び、孔列38の本数は、特に限定されず、フロート34の平面サイズに応じた数に設定されるとよい。例えば、保持孔36の間隔は、100mm~300mm程度であるとよい。
【0047】
フロート34における複数の保持孔36の配置位置について説明すると、図5に示すように、第2方向において隣り合う2つの孔列38の間で、孔列38に含まれる2つ以上の保持孔36の、第1方向における位置が、互いに異なっている。具体的には、図5に示すように、隣り合う2つの孔列38のうち、一方の孔列38に含まれる3つ以上の保持孔36と、もう一方の孔列38に含まれる3つ以上の保持孔36とが、千鳥状に配置されている。
ただし、複数の保持孔36の配置位置は、上記の位置に限定されず、例えば、各孔列38に含まれる2つ以上の保持孔36の、第1方向における位置が、孔列38の間で揃っていてもよい。つまり、フロート34において、複数の保持孔36が格子状に配置されてもよい。
【0048】
フロート34における上記以外の構成については、公知のフロート(例えば、特開2020-137513号公報に記載の栽培パレット)と同様の構成を利用することができるため、説明を省略することとする。
【0049】
<<本実施形態に係る植物の栽培方法>>
本実施形態に係る植物の栽培方法では、図7に示すように、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程がこの順に実施される。
【0050】
第1工程は、播種から定植直前までの間に行われる。第1工程では、培地シート10において、複数の領域12の各々に設けられた3つの孔14a,14b,14cのそれぞれに植物の種を入れ、それぞれの孔内で生育された植物の苗を得る。
【0051】
第2工程は、定植に際して行われる。第2工程では、定植対象の苗を支持した培地シート10に対して、間引き処理と分離処理とを実施する。間引き処理では、培地シート10が備える複数の領域12の各々において少なくとも1つの孔から苗Vを取り除く(間引く)。本実施形態では、3つの孔14a,14b,14cにて生育された3つの苗Vのうち、最も生長量が小さい苗を間引き、残り2つの苗を残す。以下では、3つの孔14a,14b,14cのうち、苗Vが入った(残った)孔を第1孔と呼び、苗Vが間引かれた孔を第2孔と呼ぶこととする。
分離処理では、培地シート10から各領域12を切り取り線L1,L2に沿って分離し、詳しくは切り離す。切り離された領域12は、培地片20を構成する。
【0052】
第2工程において、間引き処理及び分離処置は、領域12毎に繰り返し実施される。これにより、2つの第1孔と1つの第2孔とを有する培地片20を複数取得することができ、具体的にはm×n個の培地片20を得ることができる。
なお、第2工程では、間引き処理を分離処理よりも先に実施してもよいし、反対に、分離処理を間引き処理よりも先に実施してもよい。
【0053】
第3工程は、定植時に行われる。第3工程では、2つ以上の培地片20を含む列(以下、培地片列22)が複数形成されるように複数の培地片20を並べて配置する。具体的に説明すると、第3工程では、フロート34に設けられた複数の保持孔36のそれぞれに、培地片20を嵌め込むことで、複数の培地片20を配置する。これにより、図8に示すように、フロート34において、第1方向に沿って並んだ3つ以上の培地片20を含む培地片列22が、第2方向において間隔を空けて複数形成される。
図8は、複数の培地片20の配置位置を示す図であり、フロート34に形成された複数の培地片列22の各々における3つ以上の培地片20の位置を模式的に示す図である。なお、図8では、図示の都合上、植物の苗を省略している。
【0054】
フロート34における複数の培地片20の保持位置について説明すると、図8に示すように、第2方向において隣り合う2つの培地片列22の間で、培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の、第1方向における位置が、互いに異なっている。具体的には、図8に示すように、隣り合う2つの培地片列22のうち、一方の培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20と、もう一方の培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20とが、千鳥状に配置されている。
ただし、複数の培地片20の保持位置は、上記の位置に限定されず、例えば、各培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の、第1方向における位置が、培地片列22の間で揃っていてもよい。つまり、フロート34において、複数の培地片20が格子状に配置されてもよい。
【0055】
第4工程は、定植後、収穫時点までの期間中に行われる。第4工程では、第3工程にて形成された複数の培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々において、第1孔に入った苗Vを収穫可能な大きさまで育成する。
【0056】
<<培地片の配置形式について>>
フロート34における複数の培地片20の配置形式について、図8を参照しながら、より詳細に説明する。
【0057】
複数の培地片20を配置する第3工程では、前述したように、3つ以上の培地片20を含む培地片列22が複数形成されるように複数の培地片20を配置する。より具体的には、フロート34に設けられた複数の孔列38に含まれる2以上の保持孔36のそれぞれに、培地片20を嵌め込む。この際、複数の培地片20の各々は、培地片20の向き、換言すると、培地片20が備える第1孔及び第2孔の位置を調整しながら、保持孔36内に嵌め込まれる。
【0058】
そして、図8から分かるように、本実施形態では、下記の配置条件を満たすように複数の培地片20が配置される。
配置条件:第3工程にて形成された各培地片列22を平面視した場合に、各培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々の中心を結んで規定される仮想線ILに対して、各培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々の第2孔が同じ側に配置される。
ここで、培地片20の中心とは、保持孔36の外縁の中心と同義であり、外縁が円である場合には、その円の中心に相当し、外縁が正多角形である場合には、その正多角形の幾何学的重心に相当する。なお、仮想線ILは、図中、一点鎖線にて図示している。
【0059】
以上のように、フロート34に形成された複数の培地片列22の各々において、その列に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第2孔、すなわち苗Vが間引かれた孔が上記の仮想線ILから見て同じ側に存在する。これにより、上記の培地片列22にて栽培される苗Vの生育方向を調整し易くなる。具体的に説明すると、各培地片列22において苗Vの地上部は、苗Vが間引きされた第2孔側に向かって伸び易い。この性質に着目して、培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々の第2孔の位置を同じ側に配置することで、その培地片列22にて栽培される苗Vの生育方向を、第2孔が位置する側に調整し易くなる。
【0060】
そして、各培地片列22にて栽培される苗Vの生育方向が調整し易くなることで、第2方向において隣り合う2つの培地片列22の間で、苗V同士が接触(干渉)して苗Vの地上部が密集するのを抑えることができる。この結果、各培地片列22にて苗Vを良好に生長させ、培地片列22の間で苗Vの生育状態がばらつくのを抑制することができる。
【0061】
また、第3工程では、図8に示すように、フロート34に形成される複数の培地片列22のうち、1つ以上の培地片列22において、その培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第2孔が第1方向に沿って一直線に並ぶように、複数の培地片20を配置する。
【0062】
以上のように、1つ以上の培地片列22において、3つ以上の培地片20の各々の第2孔が一直線上に並ぶことで、その培地片列22にて栽培される苗Vの生育方向をより調整し易くなる。具体的には、上記の培地片列22にて栽培される苗Vの地上部が、第2孔が並んだ直線に沿って広がり易くなる。この結果、苗Vの地上部が密集する状況をより回避し易くなり、より一層効率よく、苗Vの生育状態のばらつきを抑えながら苗Vを良好に生育させることができる。
【0063】
ここで、3つ以上の第2孔が一直線上に並ぶとは、3つ以上の第2孔のうち、2つの第2孔を通る直線上に、残りの第2孔が存在することを意味する。また、直線上に第2孔が存在する状態には、一部の第2孔が、上記の直線に差し掛かって重なった状態が含まれ得る。つまり、3つ以上の第2孔のうち、2つの第2孔を通る直線に対して、残りの第2孔が若干ずれた位置に配置された形態も、3つ以上の第2孔が一直線上に並んだ形態に含まれ得る。
【0064】
以下、複数の培地片列22のうち、3つ以上の培地片20の各々の第2孔が一直線上に並んだ培地片列22を「特定列」と呼ぶこととする。本実施形態では、上記の効果をより効果的に発揮させる目的のため、図8に示すように、複数の培地片列22のすべてが特定列に該当する。つまり、第3工程では、複数の培地片列22のそれぞれにおいて、その培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第2孔が一直線上に並ぶように複数の培地片20を配置する。
なお、上記の構成には限定されず、複数の培地片列22のうち、少なくとも1つ以上の培地片列22が特定列に該当すればよい。
【0065】
また、本実施形態では、第3工程において、図8に示すように、特定列に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第1孔が第1方向に沿って一直線上に並ぶように、複数の培地片20を配置する。つまり、特定列に含まれる3つ以上の培地片20は、それぞれの培地片20が有する3つの孔14a,14b,14cによって構成される仮想的な三角形の三辺のうち、第1孔同士を結んだ一辺が第1方向に沿うように配置される。
【0066】
以上のように、特定列に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第1孔が第1方向に沿って一直線上に並んでいることで、特定列にて栽培される苗V(詳しくは、苗Vの根の根元部分)が直線状に並ぶことになる。これにより、特定列に含まれる3つ以上の培地片20の間で、苗Vの位置が揃うため、特定列にて栽培される苗Vの生育方向を、所定方向(例えば、第2方向)になるように調整することがより容易になる。この結果、苗Vの地上部が密集する事態をさらに回避し易くなり、一段と効率よく、苗Vの生育状態のばらつきを抑えながら苗Vを良好に生育させることができる。
【0067】
なお、図8に示すように、特定列に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第1孔は、当該3つ以上の培地片20の各々の中心を結んで構成された仮想線ILから見て、第2孔とは反対側で一直線上に並んでいるとよい。この場合には、苗Vの地上部が密集する状況を益々回避し易くなり、より一段と効率よく、苗Vの生育状態のばらつきを抑えながら苗Vを良好に生育させることができる。
【0068】
<<本実施形態の有効性について>>
次に、本実施形態に係る植物の栽培方法を用いて行った試験(以下、実施例)と、従来の栽培方法を用いて行った2つの試験(以下、比較例1及び2)とについて、それぞれの試験結果を説明することとする。
【0069】
各試験では、培地にて播種した後に育苗を14日間実施してから、同じ構造のフロートに70個の苗を保持させて10日間育苗した後、フロート1基における苗の保持数を30個に減らして苗をさらに10日間生長させた。なお、各試験では、栽培対象の植物をリーフレタス(品種名:スマシャキ)とした。また、各試験では、複数のフロート(保持プレート)を用い、以下に記載する事項を除き、試験間で共通の環境の下で育苗を行った。
【0070】
各試験において、フロートに保持される苗は、培地シートから分離された培地片によって支持した。より詳しく説明すると、各培地片には3つの孔が形成され、それぞれの孔に種を投入した。その後、3つの孔のそれぞれにて、植物を発芽させて、その苗を生長させた。そして、実施例及び比較例2では、播種後、14日経過した後の育苗期間(以下、第1育苗期間)の終了時点で、3つの孔のうち、1つの孔にて生長している苗(例えば、3つの苗の中で生長度合いが最も小さいもの)を間引くこととした。他方、比較例1では、間引きを実施せず、3つの孔のそれぞれにて生長させた苗を全て残すこととした。
【0071】
また、各試験では、苗の保持数を30個に減らしてから10日間の育苗期間(以下、第2育苗期間)において、フロートに複数の培地片列が形成されるように複数(詳しくは30個)の培地片をフロートにセットした。この際、実施例では、各培地片列に含まれる3つ以上の培地片の各々が有する第2孔、すなわち苗が間引かれた孔が仮想線から見て同じ側に存在するように複数の培地片を並べた。これに対して、比較例1及び2では、上記の並べ方を採用せず、無造作に複数の培地片を並べた。
【0072】
そして、第2育苗期間の終了時点で各培地片の重量を測定し、フロートにおける複数の培地片の平均重量を算出した。また、測定結果のバラツキ(標準偏差σを平均重量で除した値)と、第2育苗期間の終了時点におけるフロート1基分の平均重量を算出した。
結果を下記の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記の表1から分かるように、各培地片列に含まれる3つ以上の培地片の各々が有する第2孔が仮想線に対して同じ側に存在するように複数の培地片を並べることで、各培地片における苗の生長量が増加することが明らかになった。このことから、本実施形態に係る植物の栽培方法が、従来の栽培方法に比べて優れており、培地片における苗の生育状態のバラツキを抑えつつ、複数の培地片にて植物の苗を良好に生育させることができるものと判明した。
【0075】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の植物の栽培方法について具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0076】
上記の実施形態では、第3工程にて形成される複数の培地片列22のうち、1つ以上の培地片列22において、その培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する第2孔が第1方向に沿って一直線に並ぶこととした。ただし、上記3つ以上の培地片20の各々が有する第2孔は、仮想線ILに対して同じ側に配置されていればよく、例えば、図9に示すように一直線上に並んでいなくてもよい。
【0077】
上記の実施形態では、培地シート10における複数の領域12の各々、及び、培地片20に3つの孔14a,14b,14cが設けられていることとしたが、これに限定されるものではない。各領域12及び各培地片20に設けられる孔の数は、図10に示すように2個でもよいし、あるいは4個以上でもよい。
【0078】
培地片20に設けられる孔の数が2個である場合、一方の孔が第1孔に相当し、もう一方の孔が第2孔に相当する。この場合の第3工程では、複数の培地片列22が形成され、且つ、各培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々の第2孔が仮想線ILに対して同じ側に位置するように、複数の培地片20を配置するとよい。この際、図11に示すように、1つ以上の培地片列22において、その列に含まれる3つ以上の培地片20の各々の第2孔が第1方向に沿って一直線上に並ぶように、複数の培地片20を配置するとよい。
【0079】
また、培地片20に設けられる孔の数が4個以上である場合、1つ以上の孔が第1孔に相当し、残りの孔が第2孔に相当する。ここで、第2孔に相当する孔は、2つ以上あってもよい。この場合の第3工程では、複数の培地片列22が形成され、且つ、各培地片列22に含まれる3つ以上の培地片20の各々が有する2つ以上の第2孔が仮想線ILに対して同じ側に位置するように、複数の培地片20を配置するとよい。
【0080】
上記の実施形態では、複数の培地片20が、フロート34に形成された複数の保持孔36に嵌め込まれてフロート34に保持された状態で利用されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、複数の培地片20の各々が、養液が入った浅底トレー(不図示)の底面に載せられた状態でトレー内に配置されてもよい。この場合、トレー内には、各培地片20の下端部が浸かる程度に養液が溜められているとよい。
【0081】
上記の実施形態では、フロート34の長手方向を第1方向とし、短手方向を第2方向とした場合に、第1方向に沿って並んだ3つ以上の培地片20を含む培地片列22が、第2方向に間隔を空けて複数形成されることとした。ただし、これに限定されず、第2方向に沿って並んだ3つ以上の培地片20を含む培地片列22が、第1方向に間隔を空けて複数形成されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 培地シート
12 領域
14a,14b,14c 孔
20 培地片
22 培地片列
30 栽培装置
32 容器
34 フロート(保持プレート)
36 保持孔
38 孔列
100 培地
102 孔
IL 仮想線
L1,L2 切り取り線
V 苗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11