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特開2024-2112カルバート用主桁とそれが組み込まれた分割型カルバートおよびその施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002112
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】カルバート用主桁とそれが組み込まれた分割型カルバートおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E01D1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101113
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】594074805
【氏名又は名称】東栄コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】新 田 裕 之
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059BB39
2D059GG01
2D059GG55
2D059GG61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】展張格子筋をより効率的に配筋可能として、製造工数および製造コストを大幅削減可能とする上、耐久強度、耐摩耗強度をより高めて施工およびメンテナンスのコストを大幅に削減できる新たなプレキャストコンクリート製のカルバート技術を提供する。
【解決手段】橋脚の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁2であって、該主桁2の主桁本体20内に、主桁本体20の主桁長L方向両端間の中央の下面寄りの適宜被り厚となる位置に、主桁長L方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法Wの展張格子筋4が設けられると共に、主桁本体20の主桁長L方向両端間の両端寄りの上面寄りの適宜被り厚となる位置に、主桁長L方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法Wの展張格子筋4,4が設けられてなるカルバート用主桁2である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中には、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、該両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられたものとされたことを特徴とするカルバート用主桁。
【請求項2】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、該両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられたものとされたことを特徴とするカルバート用主桁。
【請求項3】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、該両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられたものとされたことを特徴とするカルバート用主桁。
【請求項4】
展張格子筋が、長方形または正方形の何れか一方の素材鋼板からなり、該素材鋼板の表面には、該素材鋼板の一辺に平行し、該一辺に交叉する展張方向に平行する方向に隣接する複数の主筋部、および、複数の前記主筋部の互いに隣接する主筋部同士を連結する複数の副筋部が設けられ、前記主筋部および副筋部は、前記素材鋼板の一辺に平行する方向に延びる概略Z字形または概略S字形の何れか一方の平面視形状とされ、前記素材鋼板の表裏面間に貫通された複数のスリットを境に区割りされ、該素材鋼板には、前記スリットが前記展張方向に引き伸ばされた結果物としての開口部が開口されてなる、前記請求項1ないし3何れか一方記載のカルバート用主桁。
【請求項5】
展張格子筋は、複数のスリットが、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する一方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の一方端と、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する他方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の他方端とを、互いに素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に重なり合うよう配置されてなる、前記請求項1ないし4何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項6】
展張格子筋が、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方に、側面凹部および側面凸部の少なくとも何れか一方が形成されてなる、前記請求項1ないし5何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項7】
展張格子筋が、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方には、表面凸部、表面凹部、裏面凸部および裏面凹部の少なくとも何れか一が形成されてなる、前記請求項1ないし6何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項8】
展張格子筋が、素材鋼板の一辺に平行する方向、および、該一辺に交叉する展張方向に平行する方向の何れか一方の断面形状が、鋸刃状折れ線形、台形状折れ線形、波状曲線形の中の少なくとも何れか一に成型されてなる、前記請求項1ないし7何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項9】
展張格子筋が、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部に平行する方向と、主桁本体の主桁長方向とを一致されて配置された、前記請求項1ないし8何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項10】
展張格子筋が、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部に交叉する展張方向に平行する方向と、主桁本体の主桁長方向とを一致されて配置された、前記請求項1ないし9何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項11】
両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有し、ズレ防止機構の一部をなす上向き誘導壁とされた場合に、両橋脚上頭部の橋脚上頭部の下端底壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有し、該ズレ防止機構の他部をなす下向き誘導壁とされ、該ズレ防止機構の各上向き誘導壁と各下向き誘導壁とが接合状とされた場合に、主桁の外端方向への移動を規制するものとされた、前記請求項1ないし10何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項12】
両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合する凹形または凸形の少なくとも何れか一方の面壁からなる脱落防止機構の一部をなす上向き噛合壁とされた場合に、両橋脚上頭部の橋脚上頭部の下端底壁が、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合する凹形または凸形の少なくとも何れか他方の面壁からなる脱落防止機構の他部をなす下向き噛合壁とされ、該脱落防止機構の各上向き噛合壁と各下向き噛合壁とが噛合状とされた場合に、主桁の同主桁長方向に直行する水平方向の移動を規制するものとされた、記請求項1ないし請求項11何れか一記載のカルバート用主桁。
【請求項13】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に、単位幅および主桁長のプレキャストコンクリート製の主桁が架け渡された分割型カルバートであって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなる、前記請求項1ないし12何れか一記載の主桁が組み込まれた分割型カルバート。
【請求項14】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁にズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて対峙された上、両橋脚本体上に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と橋脚本体との間のズレ防止機構および機械的連結機構を含むグラウト注入空間にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化されたものとしてなる、前記請求項11記載の主桁が組み込まれた分割型カルバート。
【請求項15】
主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁にズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて接合状に対峙されると共に、両橋脚本体の上端天壁に脱落防止機構の他部をなすよう設けられた上向き噛合壁が、両橋脚上頭部の各下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて噛合状に対峙された上、両橋脚本体上に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と両橋脚本体との間の各ズレ防止機構、各脱落防止機構および機械的連結機構を含むグラウト注入空間にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化されてなる、前記請求項12記載の主桁が組み込まれた分割型カルバート。
【請求項16】
主桁本体の両橋脚上頭部および両橋脚本体は、両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間に形成されたグラウト注入空間の下り勾配の上端にグラウト注入口が設けられ、機械的連結機構が、該グラウト注入空間中の両橋脚上頭部の下端底壁の下り勾配の上端よりも下方に配され、当該グラウト注入空間の該機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわに、同下り勾配の上端と同じ高さまで上昇するグラウト揚がり路が設けられた上、該グラウト揚がり路の外端にグラウト揚がり口が設けられたグラウト注入機構を有した、前記請求項11または請求項12何れか一方記載の主桁が組み込まれた請求項13記載の分割型カルバート。
【請求項17】
主桁長相当の間隔を隔てた位置に、一対の両橋脚本体を立設し、両橋脚本体の上端に対し、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構を介して主桁の主桁本体の両橋脚上頭部の下端を嵌合するよう架け渡し、該主桁本体の両端のレベルを調節し、両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間にグラウト注入空間、グラウト注入口、グラウト揚がり路およびグラウト揚がり口を有したグラウト注入機構を設けた後、該グラウト注入空間の外周囲に相当する両橋脚上頭部の下端底壁および両橋脚本体の上端天壁の外壁であって、下り勾配の上端に相当する外壁に開口されたグラウト注入口、および、同下り勾配の下端に相当する外壁に開口されたグラウト揚がり口を除き、該グラウト注入空間の上下外壁間の隙間を覆うシーリング材を全周囲に貼着した上、当該グラウト注入口から、機械的連結機構およびグラウト揚がり路を経てグラウト揚がり口に達するまでグラウトを注入し、該グラウトの硬化を確認した後、当該シーリング材、および、グラウト注入口とグラウト揚がり口から外部に突出したグラウトを撤去するようにした工程を特徴とする、前記請求項16記載の分割型カルバートの施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カルバートの施工技術に関連するものであり、特に、製造および輸送の効率が高く、しかも高耐久強度に優れたカルバートの製造および施工に係わる技術分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
プレキャストコンクリート製の門型カルバートは、図32に示すように、コンクリート製品工場にて一体型の門型形状に製造されているから、該門型カルバート1をコンクリート製品工場から設置場所まで輸送し、河川や地下道などの対象地形Tを跨ぐ箇所に、予め、ベタ基礎または布基礎の何れか選択的に打設し準備しておいた基礎B,B上に跨ぐよう簡単に設置することができ、設置場所における作業工数を大幅に削減することができるという利点を有しているが、主桁2の長さや橋脚3,3の高さが大型化してしまうと、コンクリート製品工場から設置場所までの輸送が困難になるという課題があった。
【0003】
また、門型カルバート1は、例えば、片側一車線の道路に設置された場合に、該門型カルバート1の主桁2の長さLの中央を境に、同主桁2の長さLの約1/2の寸法範囲に相当する左右がわの夫々の上部を車両V,Vが走行し、同主桁2の長さLの方向の両端間の中央から約1/4の位置(L/4)に下向きの荷重Fが加わり、同主桁2の長さLの方向の両端間の中央から約1/4の位置を含む車両Vの幅に相当する付近の主桁2の上面に摩耗や亀裂などの劣化が生じ易く、さらに、同主桁2の長さLの方向の両端間の中央となる1/2に相当する付近(L/2)の主桁の下面にも、荷重Fが集中して亀裂や、それに伴う劣化が生じ易く、こうして発生した亀裂から雨水や雪解け水などが浸入すると、鉄筋の錆びやコンクリートの剥離および崩壊などが発生して、同主桁2の寿命を縮めてしまう原因となるから、頻繁に点検およびメンテナンスする必要があり、維持経費が嵩むという欠点を残すものであった。
【0004】
さらに、橋脚3,3と主桁2とが一体化された門型カルバート1は、大型化すると輸送および設置工事が困難なものとなってしまうため、橋脚3,3と主桁2とを別体のもとして製造し、設置場所にて組み立てながら設置することが考えられるが、このような橋脚3,3および主桁2が別体のプレキャストコンクリート製の門型カルバート1は、その設置工事に際し、該主桁2の水平調整および充分な強度を持たせた連結状態を得るのに多大な作業工数を要するものとなっており、設置後も長期に亘って大型車両の走行や、地震による震動などを受けることに変わりはなく、次第に老朽化したり、大地震による過大な振動を受けたりすると、両橋脚3,3間に架け渡された主桁2が、主桁長L方向や、主桁長L方向に直交する水平方向などにズレ動いてしまったり、主桁長L方向の軸心周りに横転してしまったり、橋脚3,3間から脱落してしまったりする虞があり、このような破損を防止するために、メンテナンスコストが嵩むという欠点も有していた。
【0005】
こうした事情に加え、両橋脚3,3とその間に架け渡された主桁2を結合する場合、両者間の鉄筋などの継ぎ手類同士からなる機械的連結構造を該主桁2の高さ、および水平姿勢などの姿勢状態を微調整しながら、しかも充分な強度をもって連結しなければならないが、該主桁2と両橋脚3,3との連結部分には鉛直ハンチ21,21が一体に設けられているから、該機械的連結構造まで作業者の手が届き難く、効率的な作業が困難なものとなっていた。
加えて、該機械的連結構造を含む該主桁2と両橋脚3,3と間の隙間空間中に液状のグラウトを注入する際には、同グラウト中に気泡を含まないよう密に充填し、且つ、相互対峙壁面間にムラ無く万遍に行き渡らせなければ、高い結合強度を得ることができず、グラウトの注入後や硬化後には、グラウト内部の気泡の有無を確認するのが困難な上、非破壊検査などによって中空部分を発見したときなども、コンクリートの肉厚内部に新たなグラウトを注入する工事を行うには、多大な労力と経費とを新たに要することとなってしまう虞があるという欠点を残すものであった。
【0006】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、展張格子筋を構造部材としてコンクリート中に配筋してなり、耐荷重性能を向上させた鉄筋コンクリート構造や、同特許文献1(2)に見られるような、鉄筋コンクリート構造物の内面側から外面側に向けてスリットが形成され、該スリット内に複数の貫通孔が設けられた鋼板からなる補強部材が配置され、前記補強部材が配置された前記スリット内に充填材が充填されてなり、十分な強度を付与する補強構造が簡易かつ低コストで実現された鉄筋コンクリート構造物の補強構造などが散見される。
【0007】
しかし、当該特許文献1(1)に示されているような鉄筋コンクリート構造や、後者特許文献1(2)の鉄筋コンクリート構造物の補強構造などは、その構造をそのまま門型カルバートに採用しようとすると、橋脚や主桁の略全体のコンクリート外壁肉厚中に、展張格子筋などの構造部材や、複数の貫通孔が設けられた鋼板からなる補強部材などが配筋されたものとなってしまい、配筋工数および施工コストが増大してしまうという致命的な欠点があった。
【0008】
また、橋脚と主桁との結合部の耐久性を向上させようとする技術としては、下記の特許文献1(3)にも提案されているもののように、平板状の部材の長手方向縁部を相手部材の縁部に重ね合わせて結合して用いる構造物用部材において、平板状の部材の縁部に沿って形成された継手部を備え、この継手部は、縁部に沿って溝が形成され、この溝の底面の幅が縁部の端と溝との間に形成された凸状条部の幅より大きく形成され、構造物用部材を施工現場で溶接を用いることなしにボルトで結合できるようにした構造物用部材および桁構造物や、同特許文献1(4)に見られるように、鋼製の主桁と、この主桁に載置するコンクリート床版と、このコンクリート床版および前記主桁を結合するスタッドとを有する桁橋であって、その軸部が前記主桁に固定されている部分からその頭部に向かう所定長さの部分である前記スタッドの根元部のまわりに、前記主桁および前記コンクリート床版の境界面から前記軸部の所定高さまで所定の厚さでクッション材を介在させることを特徴とする桁橋などが散見される。
【0009】
しかしながら、当該特許文献1(3)に示されるような構造物用部材および桁構造物は、鋼板とH形鋼とをボルト・ナットを用いて結合するのに有効な構造であって、そのままプレキャストコンクリート同士の結合構造に採用するのは困難なものであり、また、当該特許文献1(4)のに見られる桁橋などは、コンクリート床版の耐久性を高めることができるが、設置工事に際してコンクリート床版を水平に微調整しながら設置するのが困難であるという欠点を残すものであった。
【0010】
そして、下記の特許文献1(5)にも示されているように、複数の主筋と継手とがコンクリートに埋め込まれ、主筋の下端部が継手の略上半部に収容または連結され、継手の下端がコンクリートの下端面に開口したプレキャスト鉄筋コンクリート製の柱を、下方構成部材の上面にグラウト注入空間(目地空間)を形成するようにして載せると共に、下方構成部材の上面から突出する複数の主筋の上端部を継手の略下半部に夫々収容させ、次にグラウト注入空間の周縁部に全周に亘ってモルタルを配して型枠を形成し、次にこのモルタル型枠に囲われたグラウト注入空間、およびこのグラウト注入空間に連なる継手の内部空間にグラウトを注入して硬化させることにより、柱を下方構成部材に接合する方法において、供給器具を用意し、この供給器具は、シリンダと、シリンダの先端に設けられたノズルと、このシリンダ内をスライドするピストンと、ピストンに連結されこのピストンをシリンダに沿ってスライド操作する操作ロッドとを備えたポンプからなり、該ポンプのノズルは当該グラウト注入空間の高さより大きい幅の扁平形状をなし、ピストンを後退させることによりモルタルをノズルからシリンダ内に吸引し、ピストンを前進させることによりモルタルをノズルから吐出するようになっており、当該ポンプのシリンダに流動性のあるモルタルを収容して該ノズルを立て、その吐出縁を傾斜させ、吐出縁の一端を柱下端部の壁面に当てると共に、他端を下方構成部材の上面に当て、このノズルと下方構成部材の上面の接点が柱の壁面から離れた状態とし、ノズルを柱の下端周縁に沿って移動させながらピストンを前進させてノズルからモルタルを吐出させることにより、このモルタルを、その一部が柱壁面から食み出させてグラウト注入空間の周縁部を塞ぐように供給し、このモルタルの硬化によって当該型枠を形成するものとされたプレキャスト鉄筋コンクリート製の柱の接合方法が知られている。
【0011】
このように、外周囲を密閉されたグラウト注入空間に加圧されたグラウトを注入する技術は、該グラウトを注入するノズル先端よりも継手の内部空間が上方に配されているから、同グラウト注入空間にグラウトが注入されると、継手の内部空間の上端までグラウトが満たされる前に、注入がわとは反対がわのはみ出し部が形成されてしまい、外観からは、全てのグラウト注入空間がグラウトで満たされた状態となってしまう虞があり、グラウトの充填が不十分に終わってしまうことが懸念されるものであった。
【特許文献1】(1)特許第6253058号公報 (2)特開2014-70389号公報 (3)特開2001―107316号公報 (4)特許第3867345号公報 (5)特許第4177688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種格子筋がコンクリート肉厚中に内蔵された鉄筋コンクリート構造などは、何れも鉄筋コンクリート構造物の外表面の所定被り厚となる肉厚中に、鋼板やその他の格子状に加工された格子筋が内蔵されたものとなっているが、鉄筋コンクリート構造物の外周壁の略全体に格子筋が配されたものか、または、鉄筋コンクリート構造物の外周壁の一部に格子筋が配されたものかの何れか一方と理解できるものであって、格子筋をより効率的に配筋可能とし、最小限の量の格子筋によって、最大限の耐久強度を達成可能とするものとなっておらず、より経済的な施工を実現化できるものではなかった。
【0013】
また、従前までの橋桁の設置技術は、プレキャストコンクリート製の門型カルバートの設置工事に際し、両橋脚間に主桁を高精度で水平に架け渡し、連結する作業の効率化が困難なものであり、さらに、設置後の長期に亘る利用や大地震などによって被災した場合に、主桁が両橋脚に対してズレ動いてしまったり、横転してしまったり、脱落してしまったりする虞があるなど、設置工事の施工性、および設置後の耐久強度に課題を残すものであったし、さらに、両橋脚と主桁との間には、鉛直ハンチが配されているから、鉄筋類の機械的連結機構を連結する作業が困難な上、両橋脚と主桁との間の該機械的連結機構を含むグラウト注入空間内にグラウトを満遍なく気泡を含まず密に充填することが困難なものとなっていた。
【0014】
(発明の目的)
そこで、この発明は、格子筋を、より効率的に配筋可能として製造工数および製造コストを大幅削減可能とする上、耐久強度、耐摩耗強度をより高めて施工およびメンテナンスのコストを大幅に削減できる新たなプレキャストコンクリート製のカルバート技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造のカルバート用主桁、およびそれが組み込まれた新規な構造の分割型カルバートおよび、新規な構成からなる分割型カルバートの施工方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明のカルバート用主桁は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中には、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられたものとされた構成を要旨とするカルバート用主桁である。
【0016】
この基本的な構成からなるカルバート用主桁は、より具体的に示すと、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、該両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられた構成からなるカルバート用主桁である。
【0017】
この基本的な構成からなるカルバート用主桁を、さらに別の表現で示すならば、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁であって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられ、該主桁本体の主桁長方向の両外端の夫々には鉛直ハンチが一体化され、該両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化され、両橋脚上頭部の下端には、両橋脚本体の上端との間に配された機械的連結機構の一部をなす下向き嵌合金具が設けられたものとされた構成からなるカルバート用主桁となる。
【0018】
(関連する発明1)
上記したカルバート用主桁に関連し、この発明には、それが組み込まれた分割型カルバートも包含している。
即ち、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端間に、単位幅および主桁長のプレキャストコンクリート製の主桁が架け渡された分割型カルバートであって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなる、この発明の基本をなす前記主桁が組み込まれた分割型カルバートである。
【0019】
また、この発明の分割型カルバートを、より具体的なものとして示すならば、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁に、主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有する主桁長方向のズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて対峙された上、両橋脚本体上に水平に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と橋脚本体との間のズレ防止機構および機械的連結機構を含むグラウト注入空間にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化され、両橋脚本体の上端間に、単位幅および主桁長のプレキャストコンクリート製の主桁が架け渡された分割型カルバートであって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなる、この発明の基本をなす前記主桁が組み込まれた分割型カルバートと云うことができる。
【0020】
この発明の分割型カルバートを、さらに具体的なものとして示すと、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁に、主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有する主桁長方向のズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し対峙されると共に、両橋脚本体の上端天壁の上向き誘導壁に一体化され、両橋脚上頭部の下向き噛合壁に噛み合う形状とされ、脱落防止機構の他部をなすものとされた各上向き噛合壁が、両橋脚上頭部の各下向き誘導壁に対峙された上、両橋脚本体上に水平に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と両橋脚本体との間のズレ防止機構および脱落防止機構を兼ねた機械的連結機構にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化され、両橋脚本体の上端間に、単位幅および主桁長のプレキャストコンクリート製の主桁が架け渡された分割型カルバートであって、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなる、この発明の基本をなす前記主桁が組み込まれた分割型カルバートとなる。
【0021】
さらに、この発明の分割型カルバートの施工方法にも特徴がある。
即ち、主桁長相当の間隔を隔てた位置に、一対の両橋脚本体の立設し、橋脚本体の上端に対し、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構を介して主桁の主桁本体の両橋脚上頭部の下端を架け渡し、該主桁本体の両端のレベルを調節し、両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間にグラウト注入空間、グラウト注入口、グラウト揚がり路およびグラウト揚がり口を有したグラウト注入機構を設けた後、該グラウト注入空間の外周囲に相当する両橋脚上頭部の下端底壁および両橋脚本体の上端天壁の外壁であって、下り勾配の上端に相当する外壁に開口されたグラウト注入口、および、同下り勾配の下端がわに相当する外壁に開口されたグラウト揚がり口を除き、該グラウト注入空間の上下外壁間の隙間を覆うシーリング材を全周囲に貼着した上、当該グラウト注入口から、機械的連結機構およびグラウト揚がり路を経てグラウト揚がり口に達するまでグラウトを注入し、該グラウトの硬化を確認した後、当該シーリング材、および、グラウト注入口とグラウト揚がり口から外部に突出したグラウトを撤去するようにした工程からなる、この発明の分割型カルバートの施工方法にある。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、この発明のカルバート用主桁によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、主桁本体中の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に設けられた、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が、両橋脚によって両端支持された主桁の、最も大きな応力が発生する主桁長方向両端間の1/2の位置の下面がわの要所を重点的に補強し、設置後のカルバートの利用によって発生する主桁の主桁長方向両端間の中央付近の下面のコンクリート壁の亀裂や剥離、および亀裂から雨水や雪解け水などの浸入に起因する鉄筋の錆びなどを、より確実に防止することができる上、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に設けられた、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が、設置後のカルバート上を往来する車両によって加わる断続的な荷重や、舗装路面の老朽に伴って受ける摩耗や亀裂、および、摩耗や亀裂箇所から侵入する雨水や雪解け水などによる鉄筋の錆びなどを、より効果的に防止し、主桁の上下面の耐久強度および耐久寿命を格段に高め、カルバートの維持経費を大幅に削減できるものとなる。
【0023】
加えて、展張格子筋が、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法に設定されたものの場合には、同展張格子筋の格段の小型化、軽量化を達成し、プレキャストコンクリート製の主桁の耐久強度を高めながら、生産コストをさらに削減することができるという利点が得られるものとなり、また、展張格子筋が、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法に設定されたものの場合には、主桁の上面がわの両端がわに配された2枚の展張格子筋の内端がわと、主桁の下面がわ中央に配された展張格子筋の両端とが、互いに上下に重なり合う位置関係に配筋されたものとなるから、主桁の一体的強度が一層高められ、より耐久強度に優れた主桁になるという秀でた効果が得られる。
【0024】
展張格子筋が、長方形または正方形の何れか一方の素材鋼板を素材とし、素材鋼板の表裏面間に貫通された複数のスリットを境に区割りされた、複数の主筋部、および、複数の前記主筋部の互いに隣接する主筋部同士を連結する複数の副筋部を有し、所定の展張方向に引き伸ばされ、前記スリットが開口部とされてなるものは、主桁の展張格子筋が配筋された部分において、鉄筋鋼棒をなまし鉄線などで結束するような工数の嵩む配筋作業が不要となり、さらに、素材鋼板にプレス加工や切削加工などによって複数の開口部が開口された格子筋を用いる場合よりも、鋼板素材を無駄なく効率的に利用することができるから、生産効率を高めると共に製造コストを大幅に削減できるという特徴が得られ、さらに、複数のスリットが、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する一方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の一方端と、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する他方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の他方端とを、互いに素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に重なり合うよう配置されてなる展張格子筋が用いられた主桁の場合には、前記複数の主筋部、および、複数の副筋部の各部寸法を、より一段と均質化されたものとすることができるから、展張格子筋の全面的強度を均等化し、主桁の耐久強度を、より高めたものとすることができる。
【0025】
展張格子筋が、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方に、側面凹部および側面凸部の少なくとも何れか一方が形成されてなる主桁や、展張格子筋が、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方に表面凸部、表面凹部、裏面凸部および裏面凹部の少なくとも何れか一が形成されてなる主桁は、展張格子筋と、主桁の主桁本体のコンクリートとの結合強度を格段に高め、主桁の耐久強度を格段に高めたものとすることができ、さらに、素材鋼板の一辺の方向、および該一辺に交叉する展張方向の何れか一方の断面形状が、鋸刃状折れ線形、台形状折れ線形、波状曲線形の中の少なくとも何れか一に成型されてなる主桁によれば、展張格子筋それ自体の、外部荷重に対する強度が大幅に強化されると共に、展張格子筋と主桁の主桁本体のコンクリートとの結合強度を格段に高めて、主桁の強度をさらに向上するものになる。
【0026】
展張格子筋が、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部の向きと、主桁本体の主桁長方向とが一致するよう配置された主桁は、複数の主筋部が主桁の主桁長方向に向けられて延伸する配置となるから、主桁の主桁長方向の両端間の梁強度が一段と高められたものとなり、また、展張格子筋が、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部に交叉する展張方向と、主桁本体の主桁長方向とが一致するよう配置された主桁は、複数の主筋部が主桁の主桁長方向に交叉する方向に向けられた配置となるから、主桁の主桁長方向に交叉する方向(奥行き方向)の耐摩耗性を一層高めることができるものとなる。
【0027】
また、主桁の両外端の夫々に鉛直ハンチが一体化されると共に、両鉛直ハンチの外端には、該鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化されてなるものとされた主桁は、コンクリート工場にて製造される場合などに、橋脚本体との結合部の生コンクリートを充填、成型する際の型枠の形状、および、鉄筋や機械的連結機構などの各部品類の密集化を回避し、該型枠の組み立て作業をより平易なものとする上、設置場所における主桁と橋脚本体との結合作業の際にも、該鉛直ハンチに邪魔されることなく容易に機械的連結機構まで手が届くようになって施工作業性が大幅に改善され、さらに、両鉛直ハンチによって両橋脚本体と主桁との結合剛性がより高められたものとなる。
【0028】
そして、両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有するものとされ、ズレ防止機構の一部をなす上向き誘導壁とされた場合に、両橋脚上頭部の下端底壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有し、このズレ防止機構の他部をなす下向き誘導壁とされた、この発明のカルバート用主桁によれば、該ズレ防止機構の各上向き誘導壁と各下向き誘導壁とが接合状とされた場合に、主桁の外端方向への移動を規制するものとされ、より耐久強度および耐震強度が高められたものとなる。
また、両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合する凹形または凸形の少なくとも何れか一方の面壁からなる脱落防止機構の一部をなす上向き噛合壁とされた場合に、両橋脚上頭部の下端底壁が、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合する凹形または凸形の少なくとも何れか他方の面壁からなる脱落防止機構の他部をなす下向き噛合壁とされた、この発明のカルバート用主桁によると、該脱落防止機構の各上向き噛合壁と各下向き噛合壁とが噛合状とされた場合には、主桁の同主桁長方向に直行する水平方向の移動を規制するものとなり、さらに耐久強度および耐震強度を高めたものとなる。
【0029】
この発明の主桁が組み込まれた分割型カルバートによれば、主桁と橋脚とを分割された部品として製造されたものとすることが可能であるから、一体型のカルバートよりも、小型化されたコンクリート製品として輸送することが可能となり、特に、大型のカルバートを施工する場合の輸送コストを大幅に削減することができるものとなる上、主桁の応力集中箇所となる主桁長方向両端間の中央の下面寄りの適宜被り厚となる位置、および主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの適宜被り厚となる位置の要所のみに、展張格子筋が設けられているから、一段と経済的で、しかも耐久性に秀でたものになるという大きな効果を奏することになる。
加えて、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁に、ズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて接合状に対峙された上、両橋脚本体上に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と橋脚本体との間のズレ防止機構および機械的連結機構を含むグラウト注入空間にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化された、この発明の分割型カルバートによれば、両橋脚本体上に、正確に架け渡し配置された主桁が、グラウトの注入および硬化によって、秀でた施工性が確保される上、耐久性を格段に高められたものとすることができる。
【0030】
さらに、主桁長相当の間隔を隔てて立設された両橋脚本体の上端に機械的連結機構の他部をなすよう設けられた上向き嵌合金具が、両橋脚上頭部の下端の下向き嵌合金具に組み合わされ、両橋脚本体の上端天壁にズレ防止機構の他部をなすよう設けられた上向き誘導壁が、両橋脚上頭部の下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて噛合状に対峙されると共に、両橋脚本体の上端天壁に脱落防止機構の他部をなすよう設けられた上向き噛合壁が、両橋脚上頭部の各下向き誘導壁に対し、グラウト注入空間を隔てて噛合状に対峙された上、両橋脚本体上に架け渡された主桁が、両橋脚上頭部と両橋脚本体との間の各ズレ防止機構、各脱落防止機構および機械的連結機構を含むグラウト注入空間にグラウトを充填されてなるレベル調節機構で一体化された、この発明の分割型カルバートは、前述のズレ防止機構に加えて脱落防止機構も兼ね備えたものとなるから、当該主桁が主桁長方向に直行する水平方向に脱落してしまうのをより効果的に阻止し、耐震強度を大幅に高めたものとなる。
【0031】
そして、主桁本体の両橋脚上頭部および両橋脚本体は、両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間に形成されたグラウト注入空間の下り勾配の上端にグラウト注入口が設けられ、機械的連結機構が、該グラウト注入空間中の両橋脚上頭部の下端底壁の下り勾配の上端よりも下方に配され、当該グラウト注入空間の該機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわに、同下り勾配の上端と同じ高さまで上昇するグラウト揚がり路が設けられた上、該グラウト揚がり路の外端にグラウト揚がり口が設けられた、この発明の分割型カルバートによると、グラウト注入空間にグラウトが気泡などを含まずムラ無く注入されるから、当該機械的連結機構の連結強度が格段に高められたものとなる。
【0032】
さらに、この発明の分割型カルバートの施工方法は、主桁長相当の間隔を隔てた位置に、一対の両橋脚本体の立設し、両橋脚本体の上端に対し、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構を介して主桁の主桁本体の両橋脚上頭部の下端を嵌合するよう架け渡し、該主桁本体の両端のレベルを調節し、両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間にグラウト注入空間、グラウト注入口、グラウト揚がり路およびグラウト揚がり口を有したグラウト注入機構を設けた後、該グラウト注入空間の外周囲に相当する両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の外壁であって、下り勾配の上端に相当する外壁に開口されたグラウト注入口、および同下り勾配の下端に相当する外壁に開口されたグラウト揚がり口を除き、該グラウト注入空間の隙間を覆う上下間幅のシーリング材を全周囲に施工した上、当該グラウト注入口から、機械的連結機構およびグラウト揚がり路を経てグラウト揚がり口に達するまでグラウトを注入し、該グラウトの硬化を確認した後、当該シーリング材、およびグラウト注入口とグラウト揚がり口から外部に突出したグラウトを撤去するようにした工程からなるから、グラウト注入空間に気泡などを含まないよう、グラウトを満遍なくより確実に注入し、より効率的に施工できる上、当該機械的連結機構の連結強度を格段に高め、より耐久性に秀でた分割型カルバートをより短い工期の内に完成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
カルバートは、コンクリート製品工場などで製作され、施工場所まで搬送して河川や道路などに短工期で設置されるという機能を担い、コンクリート製品工場などで門型、または口字断面形のボックス型などに成型されたプレキャストコンクリート製品とすることができる外、大型化されて輸送が困難なものの場合には、コンクリート製品工場などで製作された段階では、例えば主桁と橋脚とに分割された個別部品として出荷され、施工場所で組み立てられる構造を有するプレキャストコンクリート製部品群からなるカルバートとすることができ、より具体的には、施工されると門型または箱型などの形状をなし、少なくとも主桁が、平板状や直線棒状、またはそれらの形状要素を内包し、主桁の主桁本体内に、主桁本体の主桁長方向両端間の中央の下面寄りの被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなるものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、展張格子筋に加えて一般的な鋼棒製や鉄筋用合成樹脂製などの鉄筋類が配筋されたものとすることができる。
【0034】
また、カルバートは、新設されるものに留まらず、既に設置、利用されている既存のカルバートとすることが可能であり、既存のカルバートのメンテナンス工事の際に、主桁部分の要所々々に展張格子筋が被り厚をもって設けられたものとすることが可能であり、さらにまた、主桁の上下に合計3枚配された展張格子筋は、互いの端部がわの一部が上下に重なり合わない配置関係(例えば主桁長の1/4を超え、且つ主桁長の1/3未満の幅寸法)に配筋されたものとすることができる外、主桁の上下に合計3枚配された展張格子筋が、互いの端部がわの一部が上下に重なり合う配置関係(例えば、主桁長の1/3を超え、且つ主桁長の1/2未満の幅寸法)に配筋されたものとすることが可能である。
【0035】
主桁は、カルバートの天面相当部分となる機能を担っており、門型およびボックス型の何れか一方のカルバートの天面相当部分であるということができ、コンクリート製品工場などにおいて生産された段階でカルバートに既に一体化されてなるものとすることができる外、分割型カルバートの天面相当部分となる独立部品としてコンクリート製品工場などで生産され、施工場所にて、橋脚に組み合わせされるなどして分割型カルバートが完成されるものとすることが可能であり、より具体的には、展張格子筋が配筋されたプレキャストコンクリート製の部品とし、主桁長相当の間隔を隔てて立設された橋脚の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるものであり、主桁が、その主桁本体の全長に渡って一体化されたものとし、主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置に所定幅寸法の展張格子筋が設けられてなるものとすることができ、プレテンション方式やポストテンション方式などによって製造されたものとすることが可能であり、後述する実施例にも示しているように、展張格子筋に加えて通常の鉄筋が配筋され、主桁長方向の両端に、橋脚に連結する機械的連結機構の一部または全部の何れか一方が設けられたものとするのが良い。
【0036】
また、主桁は、橋脚本体との連結強度およびその連結工事の作業性を考慮すると、後述する実施例にも示しているように、その主桁本体の両外端の夫々に、鉛直ハンチが一体化されると共に、該両鉛直ハンチの外端には、該両鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部が一体化されたものとするのが望ましく、さらに、主桁の運搬、輸送性を考慮すると、両橋脚上頭部の大型化を避けるべきであり、より具体的には、両橋脚上頭部の下端は、鉛直ハンチの下端から、橋脚本体の主桁長方向の厚み寸法と同じ寸法、ないし、橋脚本体の主桁長方向の厚み寸法の1.5倍の寸法の範囲内の垂下寸法に制限されたものとするのが良く、両橋脚上頭部の垂下寸法が(橋脚本体の主桁長方向の厚み寸法よりも)短すぎると、コンクリート工場における型枠の組立ておよび配筋作業が繁雑化したり、カルバートの設置工事の、橋脚本体との継ぎ手部品同士の連結作業に際し、鉛直ハンチが邪魔になり、施工性を悪化させてしまったりするという欠点が生じ、また、両橋脚上頭部の垂下寸法が(橋脚本体の主桁長方向の厚み寸法の1.5倍を超え)長すぎると、主桁が大型化してしまい輸送性が悪化し、輸送コストが高騰してしまうという欠点を招く恐れがある。
加えて、主桁本体の両外端に一体化された両橋脚上頭部の下端底壁、および該両下端底壁に連結される両橋脚本体の上端天壁が、主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有するものとされ、ズレ防止機構の一部をなす下向き誘導壁、および上向き誘導壁とされ、主桁の外端方向への移動を規制する機能が与えられたものとすることができ、さらに、主桁本体の各橋脚上頭部の下端底壁の下向き誘導壁、および該両下端底壁に連結される両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合状となる面壁からなる脱落防止機構の一部をなす下向き噛合壁、および上向き噛合壁とされ、主桁が、両橋脚本体から脱落するのを防止する機能を与えられたものとすることができる。
【0037】
展張格子筋は、主桁の主桁本体内から、該主桁の主桁長方向両端間の応力が集中する要所々々を補強可能とする機能を担い、該主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置、および主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置の夫々に、所定幅寸法をもって配筋されたものとしなければならず、より具体的に示すと、主桁長相当の間隔を隔てて立設された橋脚の上端間に架け渡されてカルバートの一部となるプレキャストコンクリート製の主桁の主桁本体中の、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられてなるものとすることができる。
より具体的には、主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられてなるものということが可能である外、主桁の主桁本体中に、主桁本体の主桁長方向両端間の1/2の位置の下面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられると共に、主桁本体の主桁長方向両端間の両端寄りの上面寄りの被り厚を有した位置に、主桁長方向両端間寸法の1/3を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法の展張格子筋が設けられてなるものとすることができる。
【0038】
また、展張格子筋は、後述する実施例にも示すとおり、長方形または正方形の何れか一方の素材鋼板を素材とするものであって、該素材鋼板の表面には、該素材鋼板の一辺に平行し、該一辺に交叉する展張方向に隣接する複数の主筋部、および複数の前記主筋部の互いに隣接する主筋部同士を連結する複数の副筋部が設けられ、前記主筋部および副筋部は、前記素材鋼板の一辺の方向に延びる概略Z字形および概略S字形の何れか一方の平面視形状とされ、前記素材鋼板の表裏面間に貫通された複数のスリットを境に区割りされ、該素材鋼板には、前記スリットが前記展張方向に引き伸ばされた結果物としての開口部が開口されてなるものとするのが良い。
さらに、展張格子筋は、複数のスリットが、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する一方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の一方端と、素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に互いに隣接する他方のスリットの、素材鋼板の一辺に平行する方向の他方端とを、互いに素材鋼板の一辺に交叉する展張方向に重なり合うよう配置されてなるものとすることができ、加えて、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方に、側面凹部および側面凸部の少なくとも何れか一方が形成されてなるものや、主筋部および副筋部の少なくとも何れか一方に、表面凸部、表面凹部、裏面凸部および裏面凹部の少なくとも何れか一が形成されてなるものとすることができる。
【0039】
そして、展張格子筋は、素材鋼板の一辺に平行する向き、および該一辺に交叉する展張方向に平行する向きの何れか一方の断面形状が、鋸刃状折れ線形、台形状折れ線形、波状曲線形の中の少なくとも何れか一に成型されてなるものとすることができ、また、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部の向きと、主桁本体の主桁長方向とが一致するよう配置されたもの、または、素材鋼板の一辺に平行とされた主筋部に交叉する展張方向と、主桁本体の主桁長方向とが一致するよう配置されたものとすることができる。
この展張格子筋は、樹脂塗装やメッキ、酸化皮膜処理などが施されたものとすることにより、防錆性能を高めたものとすることができ、展張格子筋の素材鋼板は、純鉄、炭素鋼、工具鋼、合金工具鋼、クロムモリブデン鋼、クロム鋼、高炭素クロム軸受け鋼、ステンレス鋼、高速度鋼、マンガン鋼、高張力鋼、チタン、アルミ合金、およびその他の鉄筋として使用可能な金属とすることができる外、各種硬質合成樹脂、各種高強度合成樹脂および各種繊維強化樹脂の何れかとすることが可能であり、スリットは、主筋部と副筋部との境界となり、素材鋼板が展張加工を受けると拡張して開口部となる機能を分担し、レーザー加工、熱間または冷間のプレス加工、溶断加工、放電加工、ウォータージェット加工、その他の各種切削加工などによって加工されたものとすることができ、換言すると、展張格子筋は、予め格子形状や網目形状などに成型加工、プレス加工、切削加工されるなどしてあり、展張加工が施されていない各種金属板や合成樹脂板などに置き換えることが可能である。
【0040】
鉛直ハンチは、主桁の主桁本体を、その主桁長方向の両端がわの夫々を下がわから補強し、下向きの剪断力への抗力を高める機能を分担し、主桁本体の主桁長方向の両端がわと両橋脚の上端がわとの間に配されたものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、分割型のカルバートの場合には、主桁本体の主桁長方向の両端に一体に設けられたものとすべきであり、より具体的には、主桁長方向の両端がわに一体化された両鉛直ハンチの、同主桁長方向の外端がわには、両橋脚上頭部が一体化され、該両橋脚上頭部が、主桁とは別体部品とされた両橋脚本体の上端間に連結される構造のものとするのが良いと云える。
【0041】
橋脚は、主桁の主桁長方向の両端を下がわから支持してカルバートを設置可能とする機能を分担し、カルバートの設置対象となる河川や道路などの対岸間に少なくとも一対立設され、杭基礎(既成杭工法、場所打ち杭工法)、直接基礎(独立基礎、ベタ基礎、フーチング基礎、布基礎)、特殊基礎またはケーソン基礎の上に立設されたものとすることができ、プレキャストコンクリート製のものとするのが望ましく、後述する実施例にも示すように、プレストレスト・コンクリート製とすることが可能であり、上端の主桁との接合部間に、機械的連結機構およびレベル調節機構が介在するものや、レベル調節機構を兼ねる機械的連結機構が介在されたものなどとするのが良く、より具体的には、主桁本体の両外端に夫々一体化された両橋脚上頭部、および、それら両橋脚上頭部の各下端に対し、上端が夫々連結される両橋脚本体からなるものとするのが望ましく、両橋脚上頭部の各下端と、両橋脚本体の各上端との間には、夫々レベル調節機構を兼ねる機械的連結機構が配されたものとし、さらに、各機械的連結機構にはズレ防止機構および脱落防止機構が併設されたものとするのが良い。
また、後述する実施例にも示しているが、両橋脚は、その上がわの一部である両橋脚上頭部が、両橋脚本体とは別体の部品とされ、当該両橋脚上頭部は、主桁本体の主桁長方向の両端に両鉛直ハンチを伴って一体化されたものとするのが良く、機械的連結機構の連結作業性を考慮すると、両橋脚上頭部の下端は、該両鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下されたものとするのが望ましい。
【0042】
機械的連結機構は、両橋脚の上端間に、主桁の主桁長方向の両端を架け渡し状に連結する機能を担い、鉄筋鋼棒をなまし鉄線などで結束してなるものとすることができる外、双方の連結作業性および主桁の設置位置の微調整の作業性などを考慮すると、レベル調節機構を兼ねたものとするのが望ましく、後述する実施例にも示しているように、主桁本体の主桁長方向の両端がわに設けられた下向き嵌合金具と、両橋脚の上端に設けられた上向き嵌合金具とからなり、連結の上下高さを調節可能なレベル調節機構を兼ねたものとすることができ、より具体的には、主桁本体の両端がわに下向き雌金具が設けられ、橋脚の上端には上向き雌金具が設けられたもの、また、この発明の分割型カルバートの施工方法を実施する場合には、主桁本体の両端がわに下向き雌金具が設けられ、橋脚の上端には上向き雄金具が設けられ、後述するグラウト注入空間内に配された(繋がる)ものとすべきである。
【0043】
また、両橋脚上頭部の下端に設けられた各機械的連結機構の一部(下向き雌金具または下向き雄金具の何れか一方など)の少なくとも1つは、鉛直上方に配された展張格子筋に対し、直接結合されるか、または連結部品類を介して間接的に結合されるかの少なくとも何れか一方の結合構造によって一体化されたものとされ、橋脚本体の直上に配された該展張格子筋に加わる荷重を同橋脚本体がわへより直接的に伝達するものとされ、より耐久強度を高められたものとすることができる。
機械的連結機構の下向きまたは上向き何れか一方の雌金具は、垂直方向に上向きまたは下向き何れか一方の雄金具が、垂直方向の上下位置を調節可能に挿し込まれた状態に嵌合可能とする機能を分担し、筒状の雌金具に対し棒状の雄金具が、鉛直方向の高さ位置を調節自在に嵌合されるものか、または、ナット状の雌金具に対しボルト状の雄金具が、鉛直方向の高さ位置を調節自在に螺合されるものなどとすることが可能であり、何れの場合にも、後述するグラウト注入空間内に配された(繋がる)ものとしなければならない。
【0044】
ズレ防止機構は、両橋脚本体の上端間に両端を架け渡された主桁が、同主桁長方向の外端方向への不要な移動を規制する機能を分担し、両橋脚本体の上端天壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有し、ズレ防止機構の一部をなす上向き誘導壁とされ、さらに、両橋脚上頭部の下端底壁が、主桁の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配を有し、該ズレ防止機構の他部をなす下向き誘導壁とされたものとしなければならず、後述する実施例にも示すように、両橋脚本体の上端天壁と主桁の両橋脚上頭部の下端底壁との間に形成されるグラウト注入空間にグラウト注入口、グラウト揚がり路およびグラウト揚がり口が設けられ、グラウト注入機構をなすものの場合には、当該下向き誘導壁および当該上向き誘導壁の、機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわが、グラウト揚がり路の形状に倣って下り勾配の上端と同じ高さまで達する傾斜面壁形状をなすものとするのが良い。
そして、このズレ防止機構の主桁長方向両端間寸法の1/2の位置に向けた下り勾配は、後述する実施例にも示しているように、1/100ないし1/50に設定するのが望ましく、1/100未満の下り勾配では、主桁の主桁長方向の外側へのズレ防止の効果が充分に得られ難く、また、1/50を超えた下り勾配では、主桁の橋脚上頭部の下端底壁の下向き誘導壁と、橋脚本体の上端天壁の上向き誘導壁との間に過大な剪断力が発生してしまい、返って耐久強度が低下してしまう虞がある。
【0045】
脱落防止機構は、主桁が両橋脚上から脱落してしまうことを防止する機能を担っており、主桁の各橋脚上頭部の下端底壁と、各橋脚本体の上端天壁との間に配され、該主桁の各橋脚上頭部の下端底壁に対し、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合状となる面壁からなる下向き噛合壁が一体化され、さらに、当該両橋脚本体の上端天壁に対し、主桁の主桁長方向に平行し、同主桁長方向に直行する水平方向に噛合状となる面壁からなる上向き噛合壁が一体化され、各下向き誘導壁と各上向き噛合壁とが互いに噛合状とされてなるものとすべきであり、後述する実施例にも示しているように、上向き噛合壁、および下向き噛合壁は、主桁長方向の断面形状が、V字形か、上下反転V字形か、台形か、上下反転台形か、矩形か、またはそれら少なくとも何れか1つが主桁長方向に直交する平行方向に並ぶものかの何れか一とされたものとすることができる。
この脱落防止機構の下向き噛合壁および上向き噛合壁は、後述する実施例にも示すように、主桁の主桁長方向に直行する水平方向に噛合状となる形状のものであり、主桁の主桁長方向から見た形状が、へ字形、V字形、凹字形などの外、W字形やM字形などの形状のものとすることができる。
脱落防止機構は、後述する実施例にも示すように、両橋脚本体の上端天壁と主桁の両橋脚上頭部の下端底壁との間に形成されるグラウト注入空間にグラウト注入口、グラウト揚がり路およびグラウト揚がり口が設けられるものの場合には、当該下向き噛合壁および当該上向き噛合壁の、機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわが、グラウト揚がり路の形状に倣って下り勾配の上端と同じ高さまで達する傾斜面壁形状をなすものとするのが望ましいと云える。
【0046】
グラウト注入機構は、両橋脚本体の上端間に主桁を架け渡して分割型カルバートを施工する際に、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁と、両橋脚本体の上端天壁との間にグラウトをより効率的かつ万遍なく注入可能とする機能を分担し、主桁本体の両橋脚上頭部および両橋脚本体は、両橋脚上頭部の下端底壁と両橋脚本体の上端天壁との間に形成されたグラウト注入空間の下り勾配の上端にグラウト注入口が設けられ、機械的連結機構が、該グラウト注入空間中の両橋脚上頭部の下端底壁の下り勾配の上端よりも下方に配され、当該グラウト注入空間の該機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわに、同下り勾配の上端と同じ高さまで上昇するグラウト揚がり路が設けられた上、該グラウト揚がり路の外端にグラウト揚がり口が設けられたものとすべきである。
グラウト注入機構のグラウト注入口は、グラウト注入空間にグラウトを無駄なく、より効率的に注入可能とする機能を担い、主桁本体の両橋脚上頭部および両橋脚本体は、両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の、下り勾配の上端に相当する外壁にグラウト注入口が設けられたものとするのが望ましく、両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の間のスリット状の隙間形状とすることができる外、両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の間の隙間より僅かに大きな横向き漏斗状または横向き環状路とすることが可能であり、後述する実施例にも示しているが、当該グラウト注入空間の下り勾配の上端に相当する外壁の、主桁長方向に直交する水平方向の互いに略等間隔を隔てた位置毎に、同グラウト注入空間に繋がるグラウト注入口が複数個配設されたものとすることができる外、脱落防止機構が設けられたものの場合には、グラウトの流れへの重力の影響を考慮すると、当該グラウト注入空間の下り勾配の上端に相当する外壁における、主桁長方向に直交する水平方向の配置が、該グラウト注入空間の下り勾配の上端の最も高い位置寄りのグラウト注入口ほど互いに密(水平方向の距離が密)に配置され、低い位置寄りのグラウト注入口ほど互いに疎(水平方向の距離が疎)となるよう複数個のグラウト注入口が配設されたものとするのが良い。
【0047】
グラウト注入機構のグラウト揚がり路は、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁と両橋脚本体の上端天壁との間に形成されたグラウト注入空間に、同グラウト注入空間の下り勾配の上端のグラウト注入口より注入されたグラウトが下り勾配に沿って流れ下り、機械的連結機構(レベル調節機構)を満たした上、該機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわに、同下り勾配の上端と同じ高さまで上昇するよう誘導する機能を分担し、後述する実施例にも示すように、傾斜登り坂形、または階段形の少なくとも何れか一方の形状のものとするのがよく、さらに、グラウト揚がり路は、グラウト注入空間に繋がる板状空間、管路状空間、またはそれらの組み合わせからなるものとすることが可能である。
グラウト注入機構におけるグラウト揚がり口は、グラウト注入口より注入されたグラウトが、グラウト注入空間内を下り勾配に沿って流下され、機械的連結機構(レベル調節機構)を満たした後、該機械的連結機構よりも下り勾配の下端がわのグラウト揚がり路を通じて、該下り勾配の上端と同じ高さまで上昇された上、グラウト注入空間の外がわに露出され、これによって同グラウト注入空間内がグラウトで満たされたことを目視確認可能とする機能を分担し、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の、当該下り勾配方向の下端がわ(グラウト注入口が設けられたのとは反対がわとなる外壁)であってグラウト揚がり路の外端に開口されたものとするのが良い。
このグラウト揚がり口は、それとは反対がわとなる壁面に配されたグラウト注入口に対峙(一致)する配置とされたものとすることが可能である外に、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の間のスリット状の隙間形状とすることができ、また、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の間の隙間より僅かに大きな横向管路状のものとすることが可能である。
【0048】
シーリング材は、グラウト注入口から注入されたグラウトが、機械的連結機構(レベル調節機構)を含むグラウト注入空間内を満たし、グラウト揚がり路を経てグラウト揚がり口より漏出するまでの間に、主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の間の隙間から外側へ漏出するのをより確実に防止する機能を分担し、該グラウト注入空間の外周囲に相当する主桁本体の両橋脚上頭部の下端底壁、および両橋脚本体の上端天壁の外壁であって、下り勾配の上端に相当する外壁に開口されたグラウト注入口、および同下り勾配の下端に相当する外壁に開口されたグラウト揚がり口を除き、該グラウト注入空間の隙間の全周囲を密閉するものとすべきであり、グラウトが注入され、充分に効果した後に、簡単に撤去可能なものとすることができる外、該グラウト注入空間の外周に型枠状のものやベルト(帯状)のもが、脱着自在に巻き付けられたものとすることができ、さらに、シーリング材にグラウト注入口部品およびグラウト揚がり口部品が一体化され、使用後は、該シーリング材と共に、該グラウト注入口部品および該グラウト揚がり口部品を撤去可能なものとすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図面は、この発明のカルバート用主桁とそれが組み込まれた分割型カルバートおよびその施工方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】分割型カルバート用主桁の一例を示す三面図である。
図2】主桁の製造工程を断面化して示す正面図である。
図3】展張格子筋の製造工程の一例を示す平面図である。
図4】展張格子筋の製造工程の他の例を示す平面図である。
図5】分割型カルバート用主桁の他の例を示す三面図である。
図6】展張格子筋の一例を示す三面図である。
図7】展張格子筋の他の例を示す正面図である。
図8】分割型カルバートの施工状態を断面化して示す正面図である。
図9】分割型カルバートを断面化して示す正面図である。
図10】設置作業中の分割型カルバート群を示す斜視図である。
図11】河川に設置された分割型カルバートを断面化して示す正面図である。
図12】水路に設置された分割型カルバートを断面化して示す正面図である。
図13】ズレ防止機構が設けられた設置作業中の分割型カルバート群を示す斜視図である。
図14】ズレ防止機構が設けられた分割型カルバートを断面化して示す正面図である。
図15】鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部を示す正面図である。
図16】鉛直ハンチの下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部を示す正面図である。
図17】鉛直ハンチおよび橋脚上頭部を示す三面図である。
図18】橋脚本体の上端天壁を示す三面図である。
図19】脱落防止機構が設けられた設置作業中の分割型カルバート群を示す斜視図である。
図20】脱落防止機構が設けられた橋脚上頭部を示す三面図である。
図21】脱落防止機構が設けられた橋脚本体の上端天壁を示す三面図である。
図22】脱落防止機構が設けられた橋脚上頭部を示す三面図である。
図23】脱落防止機構が設けられた橋脚本体の上端天壁を示す三面図である。
図24】脱落防止機構が設けられた橋脚上頭部を示す三面図である。
図25】脱落防止機構が設けられた橋脚本体の上端天壁を示す三面図である。
図26】グラウト注入機構を示す断面図である。
図27】グラウト注入機構のその他の例を示す断面図である。
図28】グラウト注入口の配置を示す側面図である。
図29】グラウト注入口のその他の配置を示す側面図である。
図30】直物製品の分割型カルバートの設置状態を示す平面図である。
図31】斜角製品の分割型カルバートの設置状態を示す平面図である。
図32】従来の門型カルバートの設置状態を断面化して示す正面図である。
【実施例0050】
図1ないし図12に示す事例は、主桁長L相当の間隔を隔てて立設された橋脚3,3の上端間に架け渡されてカルバート1の一部となるプレキャストコンクリート製の主桁2であって、該主桁2の主桁本体20中に、主桁本体20の主桁長L方向両端間の1/2の位置の下面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長L方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法Wの展張格子筋4が設けられると共に、主桁本体20の主桁長L方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚を有した位置に、主桁長L方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/2未満に相当する幅寸法Wの展張格子筋4,4が設けられてなるものとされた、この発明のカルバート用主桁2における代表的な一実施例を示すものである。
以下では、この発明のカルバート1用主桁2が、分割型カルバート1用の主桁2である場合の構造について、その製造工程の一例に従い順次示して行くこととする。
【0051】
図1ないし図3からも明確に把握できるとおり、この発明の分割型カルバート1用主桁2は、コンクリート製品工場にて主桁2用の型枠Mを組み立て、該型枠M内に鉄筋R、および機械的連結機構(レベル調節機構)Aの一部である下向き雌金具a0,a0,……を組み込み、さらに、主桁長L方向両端間の1/2(中央)の位置の下面寄りとなる被り厚(25~30mm)を有した位置に、主桁長L方向両端間寸法Lの1/4を超え、且つ1/3未満(例えば3/10)に相当する幅寸法Wの展張格子筋4を配すると共に、主桁長L方向両端間の両端寄りの上面寄りとなる被り厚(25~30mm)を有した位置に、主桁長L方向両端間寸法の1/4を超え、且つ1/3未満(例えば3/10)に相当する幅寸法Wの展張格子筋4,4を配筋した上、型枠M中に生コンクリートCを密に充填し、コンクリートCを養成、硬化したした後、主桁2を型枠Mから離型するようにして全長Lが約13m、奥行き約1mのプレキャストコンクリート製品とされたものである。
【0052】
図1に示すように、主桁2の主桁長L方向両端間の1/2の位置の下面寄りにある展張格子筋4は、その幅寸法Wの中央が、主桁2の両端から主桁長Lの1/2となる位置に一致するよう配され、また、主桁2の主桁長L方向両端間の両端寄りの上面寄りにある展張格子筋4,4は、その幅寸法Wの中央が、主桁2の両端から主桁長Lの1/6となる位置に一致するよう配されたものとすることができる。
図3に示すとおり、展張格子筋4は、長方形または正方形の何れか一方の素材鋼板40製であって、該素材鋼板40の表面には、該素材鋼板40の一辺43に平行し、該一辺43に直交状に交叉する展張方向Eに隣接する複数の主筋部5,5,……、および複数の前記主筋部5,5,……の互いに隣接する主筋部5,5同士を連結する複数の副筋部6,6,……が設けられ、前記主筋部5,5,……および副筋部6,6,……は、前記素材鋼板40の一辺43に平行するように延びる概略Z字形の平面視形状とされ、前記素材鋼板40の表裏面41,42間に貫通された複数のスリット7,7,……を境に区割りされ、該素材鋼板40が、前記展張方向Eに引き伸ばされ、前記スリット7,7,……が、その展張率の高まりに従って、次第に矢羽根形状を経て矩形状の開口部8,8,……とされてなり、展張格子筋4の素材鋼板40の一辺43に平行とされた主筋部5,5,……の向きと、主桁本体20の主桁長L方向とが一致するよう配置されたものである。
また、図4および図5に示すように、この展張格子筋4は、その展張率を低く抑えて矢羽根状の開口部8,8,……とされてなるものとすることが可能であり、展張格子筋4の素材鋼板40の一辺43に平行とされた主筋部5,5,……に直交する展張方向Eと、主桁本体20の主桁長L方向とが一致するよう配置されたものとすることができる。
【0053】
展張格子筋4は、主筋部5,5,……および副筋部6,6,……の少なくとも何れか一方に凹凸部9が設けられたものとするのが望ましく、例えば、図6に示すように、主筋部5,5,……の側壁に側面凹部90,90,……が設けられ、副筋部6,6,……の側壁には、側面凸部91,91,……が設けられたものとし、さらに、主筋部5,5,……および副筋部6,6,……の表裏面41,42には、素材鋼板40の一辺43の方向、および一辺43に交叉する展張方向Eの夫々に隣り合うもの同士が交互に凹凸関係となるよう配された、表面凸部92、表面凹部93、裏面凸部94および裏面凹部95が形成されたものとすることができる。
【0054】
さらに、図7図3および図4を参照)に示すように、展張格子筋4は、素材鋼板40の一辺43の方向(図3および図4を参照)、および該一辺43に交叉する展張方向Eの何れか一方の断面形状が、鋸刃状折れ線形(7a)、台形状折れ線形(7b)、波状曲線形(7c)の何れか一に成型されてなるものか、または、鋸刃状折れ線形(7a)、台形状折れ線形(7b)、波状曲線形(7c)の中の2パターン以上が、部分毎に組み合わされた断面形状に成型されてなるものかの何れか一方とすることが可能であり、さらに、異なる別の断面形状のものとすることもできる。
【0055】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の分割型カルバート1用主桁2は、図1および図8ないし図12に示すように、コンクリート製品工場で生産された主桁2,2,……および橋脚3,3,……をカルバート設置場所まで輸送し、2本の橋脚3,3,……を、河川や道路などの対象地形Tを跨いだカルバート設置対象地盤の主桁長L相当の間隔を隔てた位置に予め打設されたフーチングB,B上に、複数の橋脚3,3,……を、水平面上で主桁長L方向に対し、60°ないし90°の角度θ方向に密に隣接するよう立設し、両橋脚3,3,……の上端に突出するレベル調節機構Aを兼ねた機械的連結機構Aの一部である上向き雄金具a1,a1,……に対し、主桁2の両端下面に開口する下向き雌金具a0,a0,……を組み合わせるようにして主桁2を架け渡すと共に、該主桁2の両端高さ位置を調節した上、当該上向き雄金具a1,a1,……と下向き雌金具a0,a0,……との間に、グラウトGを充填、硬化して両橋脚3,3と主桁2とを機械的に連結するようにすることが可能である。
そして、図11ないし図12に示すように、設置済みとなった分割型カルバート1の主桁2上には、0.2mないし1mの上下厚寸法の土被り層S、および、該土被り層S上に、コンクリート製またはアスファルト製などの所定上下厚さ寸法の舗装層Pが設けられたものとすることができる。
【0056】
また、図30および図31に示すように、主桁2および橋脚3,3の概略的平面形状は、長方形の外、平行四辺形のものとすることができ、図31に示すように、概略的平面形状が平行四辺形とされた主桁2および橋脚3,3は、河川や道路などの対象地形Tに対して60°ないし90°の角度θで跨ぐよう設置されたものとすることが可能であり、図30に示すような、欄干外がわ(路肩)の余剰な突出形状を生じることなく設置することが可能なものとなる。
図31に示した、分割型カルバート1の主桁2に設けられた展張格子筋4は、素材鋼板40が、平行四辺形に裁断されたものが展張加工されたものとすることができる外、正方形または長方形の何れか一方の素材鋼板40が展張加工された上で、平行四辺形状に裁断されたものとすることが可能であり、さらにまた、正方形または長方形の何れか一方の素材鋼板40が、素材鋼板40の一辺43に対して傾斜する角度θ方向などの展張方向Eに展張加工されて平行四辺形状とされたものとすることが可能である。
【実施例0057】
図13ないし図18に示すように、この発明の分割型カルバート1の主桁2の主桁本体20は、その両外端の夫々に、図15および図16に示すように、鉛直ハンチ21,21が一体化されると共に、両鉛直ハンチ21,21の外端には、該鉛直ハンチ21,21の下端から、(橋脚本体30の上端天壁31の主桁長L方向の厚み寸法dと同じ寸法、ないし、橋脚本体30の上端天壁31の主桁長L方向の厚み寸法dの1.5倍の寸法の範囲内の垂下寸法dないし1.5×dに規制された寸法)、橋脚本体30の上端天壁31主桁長L方向の厚み寸法dと同じ寸法h分、下方となる位置まで、各下端底壁23,23が垂下された両橋脚上頭部22,22が一体化されたものとなっている。
【0058】
そして、図17に示すように、各橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23には、両橋脚本体30,30の上端天壁31,31との間に配された機械的連結機構(レベル調節機構)Aの一部をなす縦筒状の複数の下向き雌金具a0が設けられた上、各橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23が、各橋脚本体30,30の上端天壁31,31との間に配され、主桁2の主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた(1/100ないし1/50の)下り勾配DSを有し、ズレ防止機構SHの一部をなす傾斜平面状の下向き誘導壁DGとされ、主桁2の外端方向への移動を規制するものとされている。
また、図18に示すように、各橋脚本体30,30の上端天壁31,31には、機械的連結機構Aの他部をなす縦棒状の複数の上向き雄金具a1が立設され、同上端天壁31,31は、主桁2の主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた(1/100ないし1/50であって、しかも下向き誘導壁DGと一致する)下り勾配DSを有し、ズレ防止機構SHの他部をなす傾斜平面状の上向き誘導壁UGとされたものとなっている。
【0059】
図2に示すように、コンクリート工場にて主桁2を製造する際に使用される主桁2用の型枠Mの一部は、図15および図16の、主桁2の両鉛直ハンチ21,21、および同鉛直ハンチ21,21よりも下方まで垂下されてなる両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23を含む範囲が、同図15および図16中に二点鎖線で示される形状の木製の型枠部MW(,MW)からなるものに置き換えられ、該木製の型枠部MW(,MW)を交換することにより、両鉛直ハンチ21,21下に垂下された両橋脚上頭部22,22および各下端底壁23,23の寸法および形状を簡便且つ低価格にて変更可能とされたものとすることが可能となる。
【0060】
(実施例2の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の分割型カルバート1用主桁2は、主桁本体20の両端に設けられた両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23が、鉛直ハンチ21,21の下端から、橋脚本体30の上端天壁31の主桁長L方向の厚み寸法dと同じ寸法h分、下方となる位置まで垂下されたものとなっているから、主桁2を両橋脚本体30,30の上端天壁31,31上に架け渡し、機械的連結機構Aを結合する作業の際に、鉛直ハンチ21,21が邪魔にならず、分割型カルバート1の組み立て作業性をより高めたものすることができる。
加えて、この発明の主桁2および橋脚本体30,30は、機械的連結機構(レベル調節機構)Aにズレ防止機構SHを有するから、組み立て設置された分割型カルバート1は、その自重により、主桁2の両端間の主桁長Lの1/2の位置に向けて加圧(圧縮)する力が発生するから、永年に亘る車両通過による加振や、地震による震動を受けた場合にも、橋脚本体30,30に対し、主桁2が、主桁長L方向にズレ動いてしまうのを、より確実に防止できるものとなる。
【実施例0061】
図19ないし図25に示す3つの事例は、何れも機械的連結機構(レベル調節機構)Aにズレ防止機構SHおよび脱落防止機構DRが併設されたものであり、図19ないし図21に示す事例は、主桁本体20の両外端の夫々に、鉛直ハンチ21,21が一体化されると共に、両鉛直ハンチ21,21の外端には、該鉛直ハンチ21,21の下端を超える下方まで垂下された両橋脚上頭部22,22が一体化され、各橋脚上頭部22,22の下端23,23には、図20に示すように、両橋脚本体30,30の上端31,31との間に配された機械的連結機構Aの一部をなす下向き雌金具a0が設けられた上、各橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23が、各橋脚本体30,30の上端天壁31,31との間に配され、当該主桁2の主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた(1/100ないし1/50の)下り勾配DSを有し、ズレ防止機構SHの一部をなす下向き誘導壁DG,DGとされ、しかも各下向き誘導壁DG,DGには、各橋脚本体30,30の上端天壁31,31との間に配され、主桁2の主桁長L方向に平行し、同主桁長L方向に直行する水平方向に噛合状となる面壁からなる脱落防止機構DRの一部をなす(主桁長L方向の形状がV字形の)下向き噛合壁DMが一体化されたものとなっている。
【0062】
また、図21に示すように、各橋脚本体30,30の上端天壁31,31には、主桁2の主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた(1/100ないし1/50であってしかも下向き誘導壁DGに一致する)下り勾配DSを有し、ズレ防止機構SHの他部をなす上向き誘導壁UG,UGとされ、しかも各上向き誘導壁UG,UGには、各橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23との間に配され、主桁2の主桁長L方向に平行し、同主桁長L方向に直行する水平方向に噛合する面壁からなる脱落防止機構DRの他部をなす(主桁長L方向の形状がV字形の)上向き噛合壁UMが一体化されてなるものとなっている。
【0063】
図22および図23に示す事例は、脱落防止機構DRの下向き噛合壁DMおよび上向き噛合壁UMの噛合部分の主桁長L方向の形状が、上下反転されたV字形(へ字形)とされたものであり、また、図24および図25に示す事例は、脱落防止機構DRの下向き噛合壁DMおよび上向き噛合壁UMの噛合部分の主桁長L方向の形状が、上下反転された台形が桁長L方向に直交する水平方向に3個(複数個)並んだ形状のものとされ、該下向き噛合壁DMは、下向きの凸条(上下反転台形断面形)が主桁長L方向に直交する水平方向に3個配列され、また、上向き噛合壁UMは、上向きの凹条(上下反転台形断面形)が主桁長L方向に直交する水平方向に3個配列されたものとなっており、しかも各凸条および凹条は何れも主桁長L方向に平行に配設されたものとなっている。
該下向き噛合壁DMは、下向きの凹条が主桁長L方向に直交する水平方向に複数個配列され、また、上向き噛合壁UMは、上向きの凸条が主桁長L方向に直交する水平方向に複数個配列されたものに置き換えられたものとすることができる。
【0064】
(実施例3の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の分割型カルバート1用主桁2は、この発明の主桁2および橋脚本体30,30が、機械的連結機構(レベル調節機構)Aにズレ防止機構SHおよび脱落防止機構DRを有するから、組み立て設置された分割型カルバート1は、大地震などの災害に被災したような場合にも、橋脚本体30,30に対し、主桁2が、主桁長L方向にズレ動くのを防止する上、主桁長L方向に直交する水平方向に脱落してしまうのを、より確実に防止できるものとなる。
【実施例0065】
図26および図28に示す事例は、主桁本体20の両橋脚上頭部22,22および両橋脚本体30,30は、両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23と、両橋脚本体31,31の上端天壁31,31との間に形成されたグラウト注入空間GSの下り勾配DSの上端にグラウト注入口IJが設けられ、機械的連結機構Aが、該グラウト注入空間GS中の両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23の下り勾配DSの上端よりも下方に配され、当該グラウト注入空間GSの該機械的連結機構Aよりも下り勾配DSの下端がわに、同下り勾配DSの上端と同じ高さまで上昇するグラウト揚がり路GRが設けられた上、該グラウト揚がり路GRの外端にグラウト揚がり口GFが設けられたグラウト注入機構GIを有したものである。
以下では、この発明のグラウト注入機構GIを有した分割型カルバート1の構成について、その施工方法と共に示して行くこととする。
【0066】
主桁2の主桁本体20は、その両端の内隅に配された鉛直ハンチ21,21の直下より、橋脚本体30の主桁長L方向の厚み寸法dと同じ寸法dか、または、それを僅かに超える寸法hかの何れか一方の寸法分鉛直下方に垂下された橋脚上頭部22,22が一体化され、同橋脚上頭部22,22の下端には、主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた1/100ないし1/50の下り勾配DSに設定され、ズレ防止機構SHの他部をなす下向き誘導壁DGとされた下端底壁23,23が設けられ、各下端底壁23,23からはレベル調節機構をかねた機械的連結機構Aの一部をなす複数本の下向き雄金具a0,a0,……が垂下され、同複数本の下向き雄金具a0,a0,……の上方の基端がわは、橋脚上頭部22の肉厚中に内蔵された鉄筋に一体化されたものとなっている。
また、両橋脚3、3の各橋脚本体30,30の上端に設けられた上端天壁31,31は、夫々主桁長L方向両端間寸法の1/2の位置に向けた1/100ないし1/50の下り勾配DSに設定され、ズレ防止機構SHの一部をなす上向き誘導壁UG,UGとされ、各上端天壁31,31には、レベル調節機構をかねた機械的連結機構Aの他部をなす複個の上向き雌金具a1,a1,……が、天壁に開口するよう埋設され、同複数個の上向き雌金具a1,a1,……の下方の基端がわは、橋脚本体30,30の肉厚中に内蔵された鉄筋に一体化されたものとなっている。
【0067】
コンクリート工場で生産された主桁2および両橋脚3,3は、主桁2の両橋脚上頭部22,22の各下端底壁23,23と、橋脚3,3の両橋脚本体30,30の各上端天壁31,31との間に、互いに組み合わされた場合にグラウト注入機構GIのグラウト注入空間GSが形成され、該グラウト注入空間GSの下り勾配DSの上端に複数個のグラウト注入口IJ,IJ,……が開口され、各グラウト注入口IJ,IJ,……とは反対がわとなる下り勾配DSの下端がわに、グラウト揚がり路GRが配され、同グラウト揚がり路GRに連なる複数個のグラウト揚がり口GF,GF,……が開口され、図28に示すように、各グラウト注入口IJ,IJ,……は、主桁長L方向の外壁に、例えば水平方向に等間隔SPを隔てて、(より具体的には、橋脚本体30の主桁長L方向端の水平方向の奥行き寸法Dの1/4の等間隔SPを隔てて)配置され、下り勾配DSに軸心が一致された円錐漏斗形状の大口径がわが外がわに向けられた複数個が開口するよう、半裁された漏斗形状部分の複数個が、当該下端底壁23,23および上端天壁31,31の夫々の下り勾配DSの上端に設けられたものとすることができる。
【0068】
前記グラウト揚がり路GRは、機械的連結機構Aの下り勾配DSの下端がわから同方向の外端までの間に、同下り勾配DSの上端のグラウト注入口IJ,IJ,……と略同じ高さまで上昇する傾斜直線状(または曲線状)に形状され、その外端にはグラウト揚がり口GF,GF,……が開口されており、該グラウト揚がり口GF,GF,……は、主桁長L方向の外壁に、例えば水平方向に等間隔を隔てて、(例えば、橋脚本体30の主桁長L方向の端の水平方向の奥行き寸法Dの1/4の等間隔SPを隔てて)配され、該グラウト揚がり路GRに連通された複数個が外がわに向けて開口するよう、半裁された管形状部分の複数個が、当該下端底壁23,23および上端天壁31,31の夫々のグラウト揚がり路GRの下り勾配DSの下端がわの該グラウト揚がり路GRの外端に配されたものとすることができる。
【0069】
そして、図27に示すとおり、グラウト揚がり路GRの形状は下り勾配DSの下端がわのグラウト揚がり口GF,GF,……に向けて階段状に上昇する形状のものとすることができる外、図29に示すように、グラウト注入空間GSの形状を、主桁長L方向から見た形状が、開き角度が鈍角とされたV字形状をなし、脱落防止機構DRを兼ねた形状のものとすることが可能であり、この場合の各グラウト注入口IJ,IJ,……および各グラウト揚がり口GF,GF,……は、高い位置で隣合うもの同士の水平方向の間隔NPが狭く、また、低い位置で隣合うもの同士の水平方向の間隔WPがそれ(間隔NP)よりも広く設定されたものとすることができる。
さらに、グラウト注入機構GIを形成する前記下端底壁23,23および前記上端天壁31,31は、図13ないし図25に示した、ズレ防止機構SHおよび脱落防止機構DRの少なくとも何れか一方を兼ね備えた形状のものとすることが可能である。
また、グラウト注入機構GIの、グラウト注入口IJ,IJ,……およびグラウト揚がり口GF,GF,……は、コンクリート工場で製造された主桁2および両橋脚3,3には設けられておらず、分割型カルバート1の設置場所にてグラウト注入空間GSの外周囲にシーリング材SLを施工する際に、グラウト注入口IJ,IJ,……およびグラウト揚がり口GF,GF,……の位置に、シーリング材SLを設けない部分が開口部を形成したものとしたり、または、グラウト注入作業時のみに使用するノズル部品や吐出口部品などを着脱可能に仮装着されたものとしたりして、同様の作用が得られるものとすることができる。
【0070】
(実施例4の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明のグラウト注入機構GIを有した分割型カルバート1は、以下のような施工方法によって設置される。
カルバート設置場所に主桁2および両橋脚3,3を輸送し、両橋脚3,3を夫々対象地盤の主桁長L相当の間隔を隔てた位置に鉛直姿勢に立設し、両橋脚3,3の両橋脚本体30,30の上端天壁31,31のレベル調節機構を兼ねた機械的連結機構A,Aの一部をなす複数個の上向き雌金具a1,a1,……に対し、主桁2の主桁本体20の両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23のレベル調節機構を兼ねた機械的連結機構A,Aの他部をなす複数本の下向き雄金具a0,a0,……を鉛直方向に進退自在な状態に嵌合させて架け渡す。
この上向き雌金具a1,a1,……に対して下向き雄金具a0,a0,……を結合する場合、鉛直ハンチ21,21から寸法h分鉛直下方に離れた位置で結合作業を行うことができるから、鉛直ハンチ21,21が結合作業を妨げない。
【0071】
主桁本体20の両端のレベルを、上向き雌金具a1,a1,……に対し、下向き雄金具a0,a0,……を上下進退させるようにして微調整し、両橋脚上頭部22,22の下端底壁23,23と、両橋脚本体30,30の上端天壁31,31との間にグラウト注入空間GSとなる隙間を形成した後、該下端底壁23,23と、上端天壁31,31との外周囲に相当する両橋脚上頭部22,22および両橋脚本体30,30の外周囲壁の、グラウト注入口IJ,IJ,……およびグラウト揚がり口GF,GF,……を除くグラウト注入空間GSとなる上下間寸法の上下端にさらに一定上下幅(例えば1~10cm程度)を加えた帯状の範囲に、両橋脚上頭部22,22および両橋脚本体30,30の周囲を取り巻くよう、図26および図28(または図27および図29)に二点鎖線で示す帯状範囲をシーリング材SLで密閉状とし、グラウト注入空間GSを設ける。
グラウト注入口IJ,IJ,……は、下端底壁23,23と、上端天壁31,31との夫々に刻設されたものとすることができる外、シーリング材SLそれ自体に開口されたものや、別部品の注入口部品が該シーリング材SLを介して仮接着されたものなどとすることが可能であり、注入口部品を仮接着した場合には、グラウト注入後にシーリング材SLと共に該注入口部品も撤去するものとする。
【0072】
シーリング材SLが充分に硬化したのを確認した上でグラウトGを注入する作業に移る、グラウトGをグラウト注入空間GSに注入する際、複数個あるグラウト注入口IJ,IJ,……より、全てに同時に同一の圧力で注入するようにすることができる外、一方の外端がわに配されたグラウト注入口IJから注入し、順次他方の外端がわに移動しながら注入を繰り返すようにすることや、水平方向両端間の1/2の位置(中央がわ)付近のグラウト注入口IJから次第に外端がわの順に注入して行くようにすることなどが可能であり、グラウト注入口IJ,IJ,……から圧力を伴って注入されたグラウトGは、下り勾配DSに沿って流下するように流動され、グラウト注入空間GSの隅々まで行き渡ると共に、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構A,Aを満たしながらグラウト揚がり路GRを上昇することとなり、該グラウト揚がり路GRを上昇する過程で、該グラウト注入空間GSおよびそれに含まれる、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構A,A中の気泡が、同グラウト揚がり路GRを上昇し、各グラウト揚がり口GF,GF,……から外部に放出されることとなり、さらに続けてグラウトGが充填されると、該グラウト注入空間GSおよびそれに含まれる、レベル調節機構を兼ねた機械的連結機構A,A中を満遍なく満たした上、全ての内部気泡を放出した後に、グラウトGそれ自体がグラウト揚がり口GF,GF,……から吐出されてくることとなり、これを目視確認した後に、グラウトGの注入作業を終了する。
【0073】
充填したグラウトGの硬化を待ち、完全にグラウトGが硬化したのを確認した後、前記シーリング材SLを剥離撤去すると共に、グラウト注入口IJ,IJ,……とグラウト揚がり口GF,GF,……から外部に突出したグラウトを切除し、分割型カルバート1の施工作業を完了する。
【0074】
(結 び)
叙述の如く、この発明のカルバート用主桁とそれが組み込まれた分割型カルバートおよびその施工方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのカルバート技術に比較して大幅に耐久強度を高め、鉄筋鋼棒などの通常の鉄筋のみによるプレキャストコンクリート製品に比較して軽量且つ低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、プレキャストコンクリート製品の製造および輸送作業性を大幅に改善し、メンテナンスに要する経費を大幅削減し得るものとなることから、カルバートの製造、施工に関わるコンクリート製品工場、建築、土木業界は勿論のこと、経済的恩恵を受ける道路管理者や道路利用者においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0075】
1 分割型カルバート
2 主桁
L 同 主桁長寸法
20 同 主桁本体
21 同 鉛直ハンチ
22 同 橋脚上頭部
23 同 下端底壁
h 同 鉛直ハンチ21の下端から下端底壁23までの寸法
3 橋脚
30 同 橋脚本体
31 同 上端天壁
d 同 橋脚本体30の主桁長L方向の厚み寸法
D 同 橋脚本体30の主桁長L方向端の水平方向の奥行き寸法
4 展張格子筋
W 同 展張格子筋4の幅寸法
40 同 素材鋼板
41 同 素材鋼板41の表面
42 同 素材鋼板41の裏面
43 同 素材鋼板41の一辺
E 同 素材鋼板41の一辺に交叉する展張方向
5 主筋部
6 副筋部
7 スリット
8 開口部
9 凹凸部
90 同 側面凹部
91 同 側面凸部
92 同 表面凸部
93 同 表面凹部
94 同 裏面凸部
95 同 裏面凹部
GI グラウト注入機構
IJ 同 グラウト注入口
SP 同 水平方向の等間隔
NP 同 狭い間隔
WP 同 広い間隔
GR 同 グラウト揚がり路
GF 同 グラウト揚がり口
GS 同 グラウト注入空間
V 車両
F 荷重
M 型枠
MW 同 木製の型枠部
R 鉄筋
C コンクリート(生コンクリート)
G グラウト
SL シーリング材
B フーチング(基礎)
A 機械的連結機構(レベル調節機構)
a0 同 下向き雌金具(下向き嵌合金具、下向き雄金具)
a1 同 上向き雄金具(上向き嵌合金具、上向き雌金具)
SH ズレ防止機構
DG 同 下向き誘導壁
UG 同 上向き誘導壁
DS 同 下り勾配
DR 脱落防止機構
DM 同 下向き噛合壁
UM 同 上向き噛合壁
T 河川や道路などの対象地形
θ 角度
S 土被り層
P 舗装層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
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図32