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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021120
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】調光シート
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240208BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123724
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安原 寿二
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA32
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA11
2H088MA01
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA05
2H189BA04
2H189HA16
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA14
(57)【要約】
【課題】赤外波長域の電磁波の遮蔽と、赤外波長域よりも長波長域の電磁波の透過との両立可能にしたを調光シートを提供する。
【解決手段】調光層13と、調光層13を挟む2つの透明電極シート11,12とを備える調光シート10であって、透明電極シート11,12は、透明基材フィルム11A,12Aと、透明基材フィルム11A,12Aに支持された非金属導電層である透明電極層11B,12Bとを備える。透明基材フィルム11A,12Aは、相互に隣り合う非金属層1A1,1A2の屈折率差によって赤外波長域の平均反射率が30%以上、かつ赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下になるように複数の非金属層1A1,1A2が積み重なる多層干渉フィルムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物を含む調光層と、
前記調光層を挟む2つの透明電極シートと、を備え、
前記透明電極シートの間の電圧変更が前記調光層を透明から不透明に可逆的に変更する調光シートであって、
前記透明電極シートは、
透明基材フィルムと、
前記透明基材フィルムに支持され、かつ前記透明基材フィルムと前記調光層との間に配置された非金属導電層である透明電極層と、を備え、
前記透明基材フィルムは、相互に隣り合う非金属層の屈折率差によって赤外波長域の平均反射率が30%以上、かつ赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下になるように複数の前記非金属層が積み重なる多層干渉フィルムである
ことを特徴とする調光シート。
【請求項2】
複数の前記非金属層は、
相互に組成が異なる厚さが複数のポリエチレンテレフタレート層と、
相互に組成が異なる複数のポリエチレンナフタレート層と、を備え、
前記各非金属層の厚さが、100nm以上200nm以下であり、
前記透明基材フィルムは、
相互に隣り合う前記非金属層の屈折率差によって800nm以上1300nm以下の波長域の平均反射率が80%以上になるように前記ポリエチレンテレフタレート層と前記ポリエチレンナフタレート層とを重ねる
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記透明電極層は、導電性無機酸化物である、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項4】
前記調光層は、
複数の空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する前記液晶組成物と、を備え、
前記調光シートの全光線透過率は、80%以上である、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項5】
前記透明基材フィルムに接着された紫外吸収フィルムをさらに備える
請求項1に記載の調光シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明から不透明に可逆的に切り替わる調光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、調光層と、調光層を挟む一対の透明電極シートとを備える。調光層は、複数の空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物とを備える。透明電極シート間の印加電圧は、液晶組成物と透明樹脂層との間の屈折率差を変える。液晶組成物と透明樹脂層との間の屈折率差の変更は、透明から不透明に調光シートの状態を可逆的に変更する。調光シートを貼り着けられるガラス板に熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、または遮熱ガラスを採用する技術は、熱による液晶組成物の劣化を抑制すると共に、ガラス板に区切られた空間の快適性を高める(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-200856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光シートの適用対象は、商業施設や公共施設に設置された窓、オフィスや医療施設に設置されるパーティション、展示施設や文化施設に設置されるショーウインドウ、車両や航空機の窓などのように多様化する一途である。一方、熱線吸収ガラスや遮熱ガラスなどの特別なガラス板が上記適用範囲に十分に普及しているとはいえないため、液晶組成物に対し遮熱性を高める要請は依然として強く残っている。他方、携帯端末による通信の普及が進む近年では、調光シートが区切る空間にUHF帯やマイクロ波帯などの各通信波長域の透過性が新たに要求されはじめている。このように、UHF帯やマイクロ波帯の電磁波の透過と赤外波長域の電磁波の遮蔽とを調光シート自体が両立可能となれば、調光シートの普及が一層に促進され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、前記調光層を挟む2つの透明電極シートと、を備え、前記透明電極シートの間の電圧変更が前記調光層を透明から不透明に可逆的に変更する調光シートである。前記透明電極シートは、透明基材フィルムと、前記透明基材フィルムに支持され、前記透明基材フィルムと前記調光層との間に配置された非金属導電層である透明電極層と、を備える。前記透明基材フィルムは、相互に隣り合う非金属層の屈折率差によって赤外波長域の平均反射率が30%以上、かつ赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下になるように複数の前記非金属層が積み重なる多層干渉フィルムである。
【0006】
上記構成によれば、透明基材フィルムが複数の非金属層から構成される多層干渉フィルムである。そして、多層干渉フィルムにおける赤外波長域の平均透過率が30%以下であるため、調光シートが赤外波長域の電磁波を遮蔽できる。また、多層干渉フィルムにおける赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下であるため、調光シートがUHF帯やマイクロ波帯の電磁波を透過できる。
【0007】
上記調光シートにおいて、複数の前記非金属層は、相互に組成が異なる複数のポリエチレンテレフタレート層と、相互に組成が異なる複数のポリエチレンナフタレート層と、を備え、前記各非金属層の厚さが、100nm以上200nm以下でもよい。そして、前記透明基材フィルムは、相互に隣り合う前記非金属層の屈折率差によって800nm以上1300nm以下の波長域の平均反射率が80%以上になるように前記ポリエチレンテレフタレート層と前記ポリエチレンナフタレート層とを重ねてもよい。
【0008】
上記構成によれば、上述した効果を得る実効性が高まる。また、各非金属層の厚さが薄いため、多層干渉フィルムの厚さが過度に厚くなることが抑制されると共に、調光シートの可撓性が保たれる。
【0009】
上記調光シートにおいて、前記透明電極層は、導電性無機酸化物でもよい。この構成によれば、調光シートがUHF帯やマイクロ波帯の電磁波を透過できることの実効性が高まる。
【0010】
上記調光シートにおいて、前記調光層は、複数の空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する前記液晶組成物と、を備え、前記調光シートの全光線透過率は、80%以上でもよい。この構成によれば、調光シートの全光線透過率が80%以上であるため、透明基材フィルムが多層干渉フィルムであることに起因した呈色や視認性の低下が抑制される。
【0011】
上記調光シートは、前記透明基材フィルムに接着された紫外吸収フィルムをさらに備えてもよい。この構成によれば、紫外波長域の照射による調光層や透明電極シートの劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
上記調光シートは、赤外波長域の電磁波の遮蔽と、赤外波長域よりも長波長域の電磁波の透過との両立を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、調光シートの断面図である。
図2図2は、試験例の透過率スペクトルを示すグラフである。
図3図3は、試験例の反射率スペクトルを示すグラフである。
図4図4は、試験例の調光シートにおける評価結果を示す表である。
図5図5は、試験例13の光学スペクトルを示すグラフである。
図6図6は、試験例11の光学スペクトルを示すグラフである。
図7図7は、試験例11,12の反射率スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[調光シート]
調光シート10は、空間を区切る部材として用いられる。調光シート10そのものが空間を区切る部材であってもよいし、透明部材に貼り着けられた貼着体が空間を区切る部材であってもよい。貼着体は、1つの透明体に調光シート10を貼り着けられてもよいし、2つの透明部材に調光シート10を挟まれてもよい。空間を区切る部材は、窓ガラスや間仕切りである。窓ガラスは、車両や航空機の移動体に搭載されたり、オフィスビルや公共施設などの建物に設置されたりする。間仕切りは、車内空間や屋内空間に配置される。調光シート10は、平面状でもよいし曲面状でもよい。調光シート10は、透明粘着層を介して透明部材に貼り着けられる。透明粘着層の一例は、OCAフィルム(Optical Clear Adhesiveフィルム)である。
【0015】
調光シート10の駆動型式は、ノーマル型でもよいしリバース型でもよい。ノーマル型の調光シート10は、電圧信号の供給で不透明から透明に遷移し、かつ供給の停止によって透明から不透明に戻る。リバース型に適用される調光シート10は、電圧信号の供給によって透明から不透明に遷移し、かつ供給の停止によって不透明から透明に戻る。
【0016】
調光シート10の全光線透過率は、調光シート10に区切られた空間における視認性を透明時に高める観点から、透明時に80%以上であることが好ましい。調光シート10のヘイズは、調光シート10に区切られた空間におけるプライバシーの保護性を不透明時に高める観点から、不透明時に85%以上であることが好ましい。
【0017】
[透明電極シート11,12]
図1が示すように、調光シート10は、第1透明電極シート11、第2透明電極シート12、および調光層13を備える。第1透明電極シート11は、第1透明基材フィルム11Aと、第1透明基材フィルム11Aに支持された第1透明電極層11Bとを備える。第2透明電極シート12は、第2透明基材フィルム12Aと、第2透明基材フィルム12Aに支持された第2透明電極層12Bとを備える。
【0018】
各透明基材フィルム11A,12Aは、それぞれ独立に無色透明フィルムでもよいし、有色透明フィルムでもよい。各透明基材フィルム11A,12Aの構成材料は、それぞれ独立に透明樹脂でもよいし、透明無機ガラスでもよい。透明樹脂の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリカーボネートからなる群から選択されるいずれか一種である。透明無機ガラスの一例は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0019】
各透明基材フィルム11A,12Aは、それぞれ多層干渉フィルムである。各透明基材フィルム11A,12Aは、図1の破線に区切られた多数の非金属層1A1,1A2から構成される。多層干渉フィルムは、相互に隣り合う非金属層1A1,1A2の屈折率差を積層方向に繰り返し、これによって多層干渉フィルムに入射する光50の赤外波長域、および赤外波長域よりも長波長域の反射を制御する。各非金属層1A1,1A2の構成材料は、それぞれ独立に透明樹脂でもよいし、透明無機ガラスでもよい。相互に隣り合う非金属層1A1,1A2の屈折率差は、各非金属層1A1,1A2の構成材料を変更したり、各非金属層1A1,1A2の引っ張り弾性率を変更したりすることによって形成される。各非金属層1A1,1A2の厚さは、それぞれ50nm以上1μm以下である。非金属層1A1,1A2の層数は、例えば50層以上1000層以下である。
【0020】
各透明基材フィルム11A,12Aは、下記条件1,2を満たす。
[条件1]赤外波長域の平均反射率が30%以上である。
[条件2]赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下である。
[条件3]800nm以上1300nm以下の波長域の平均反射率が80%以上である。
【0021】
条件1,2を満たす非金属層1A1,1A2の一例は、相互に組成が異なる複数のポリエチレンテレフタレート層(PET層)と、相互に組成が異なる複数のポリエチレンナフタレート層(PEN層)と、を備える。各非金属層1A1,1A2の厚さは、100nm以上200nm以下である。こうした各透明基材フィルム11A,12Aは、各透明基材フィルム11A,12Aの厚さが過度に厚くなることを抑制できる観点から、下記条件3を満たすことが好ましい。
【0022】
各透明基材フィルム11A,12Aの厚みは、調光シート10の機械的耐性を向上する観点から、20μm以上であることが好ましい。各透明基材フィルム11A,12Aの厚みは、調光シート10の光透過性を向上する観点から、200μm以下であることが好ましい。各透明基材フィルム11A,12Aの全光線透過率は、調光シート10の光透過性を向上する観点から、70%以上であることが好ましい。
【0023】
各透明電極層11B,12Bは、それぞれ非金属導電層である。各透明電極層11B,12Bは、それぞれ独立に無色透明である。各透明電極層11B,12Bの構成材料は、それぞれ導電性無機酸化物である。導電性無機酸化物の一例は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0024】
各透明電極層11B,12Bの厚みは、電気伝導性を向上する観点から、0.1μm以上であることが好ましい。各透明電極層11B,12Bの厚みは、光透過性を向上する観点から、10μm以下であることが好ましい。
【0025】
[調光層13]
調光層13は、透明樹脂層13Pと液晶組成物13Lとを備える。調光層13は、調光層13の全体に分散されたスペーサを備える。調光層13は、第1透明電極層11Bと第2透明電極層12Bとの間に位置する。調光層13は、第1透明電極層11Bと第2透明電極層12Bとに直接的に接してもよいし、配向層を介して第1透明電極層11Bと第2透明電極層12Bとに接合されてもよい。配向層は、調光層13の液晶化合物に配向規制力を加える。配向層が液晶化合物に加える配向規制力は、調光層13を透明にする。第1透明電極層11Bと第2透明電極層12Bとは、第1透明基材フィルム11Aと第2透明基材フィルム12Aとの間に位置する。
【0026】
透明樹脂層13Pは、調光層13に複数の空隙を区画する。液晶組成物13Lは、液晶化合物と添加物とを含有する。添加剤は、粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、および二色性色素からなる群から選択されるいずれか一種である。透明樹脂層13Pは、電離線硬化性化合物の硬化体である。電離線硬化性化合物の一例は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。液晶組成物13Lは、透明樹脂層13Pに区画される空隙を充填する。液晶化合物の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0027】
透明樹脂層13Pと液晶組成物13Lとの総量に対する透明樹脂層13Pの含有率は、透明と不透明とを両立させやすい観点から、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。調光層13の厚みは、低消費電力下で透明と不透明とを両立させやすい観点から、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、調光層13における液晶組成物13Lの保持型式は、高分子分散型の他に、高分子ネットワーク型でもよいし、カプセル型でもよい。高分子ネットワーク型は、三次元網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークの空隙に液晶組成物13Lを保持する。カプセル型は、高分子ネットワークのなかのカプセルに液晶組成物13Lを保持する。
【0028】
[第1試験例]
図2は、第1透明基材フィルム11Aの各試験例1A,2A、および第1透明電極シート11の各試験例1B,2B,1C,2Cの透過率スペクトルを示す。
図3は、第1透明基材フィルム11Aの各試験例1A,2A、および第1透明電極シート11の各試験例1B,2B,1C,2Cの反射率スペクトルを示す。
【0029】
なお、2000nmを超える波長域において、各試験例1A,2A,1B,2B,1C,2Cの透過率と反射率とは、それぞれ2000nmの透過率と反射率とをほぼ保つ。
【0030】
試験例1Aは、厚さが150μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである。試験例2Aは、相互に組成が異なる複数のPET層と、相互に組成が異なる複数のPEN層とを、それぞれが100nm以上200nm以下の厚さで50層だけ積み重ねられた、厚さが150μmのフィルムである。
【0031】
試験例1Bは、試験例1Aの第1透明基材フィルム11Aに、厚さが0.5μmの酸化インジウムスズ層を第1透明電極層11Bとして積層した第1透明電極シート11である。試験例2Bは、試験例2Aの第1透明基材フィルム11Aに、厚さが0.5μmの酸化インジウムスズ層を第1透明電極層11Bとして積層した第1透明電極シート11である。
【0032】
試験例1Cは、試験例1Aの第1透明基材フィルム11Aに、厚さが0.5μmの銀ナノワイヤー層を第1透明電極層11Bとして積層した第1透明電極シート11である。試験例2Cは、試験例2Aの第1透明基材フィルム11Aに、厚さが0.5μmの銀ナノワイヤー層を第1透明電極層11Bとして積層した第1透明電極シート11である。
【0033】
図2が示すように、試験例1A,1Bは、400nm以上2000nm以下の全体にわたり70%以上の高い透過率を示す。試験例1C,2Cは、1200nm以上2000nm以下の全体にわたり、波長が高まるほど40%から20%に向けて徐々に吸収率を低める。一方、試験例2A,2Bは、800nm以上1300nm以下の波長域の全体にわたり20%以下の低い透過率を示す。
【0034】
図3が示すように、試験例1A,1Bは、400nm以上2000nm以下の全体にわたり10%程度の低い反射率を示す。試験例1C,2Cは、1200nm以上2000nm以下の全体にわたり、波長が高まるほど50%から80%に向けて徐々に反射率を高める。一方、試験例2A,2Bは、800nm以上1300nm以下の波長域の全体にわたり80%以下の高い反射率を示す。
【0035】
このように、800nm以上2000nm以下の赤外波長域における試験例2A,2Bの反射率の平均値は30%以上である。なお、800nm以上2000nm以下の赤外波長域における試験例1C,2Cの反射率の平均値もまた30%以上である。一方、赤外波長域よりも長波長域である4000nm以上において、試験例2A,2Bの反射率の平均値は20%以下である。なお、赤外波長域よりも長波長域である4000nm以上において、試験例1A,1Bの反射率の平均値もまた20%以下である。
【0036】
すなわち、試験例2Aの赤外波長域における平均反射率は30%以上であり、かつ赤外波長域よりも長波長域における平均反射率は20%以下である。試験例2Aの800nm以上1300nm以下の波長域における平均反射率は80%以上である。言い換えれば、試験例2Aは、条件1,2を満たす。また、試験例2Aは、条件3を満たす。さらに、第1透明電極層11Bとして非金属導電層を備えた試験例2Bもまた、条件1,2,3を満たす。なお、試験例1Aは、条件2を満たす一方、条件1,3を満たさない。試験例2Cは、条件1,3を満たす一方、条件2を満たさない。
【0037】
[第2試験例]
相互に組成が異なる複数のPET層と、相互に組成が異なる複数のPEN層とを、それぞれが100nm以上200nm以下の厚さで50層だけ積み重ね、これによって、条件1,2,3を満たす試験例11,12の各透明基材フィルム11A,12Aを得た。この際、試験例11の各透明基材フィルム11A,12Aにおいて、800nm以上1300nm以下の波長域の平均反射率が80%以上であった。試験例12の各透明基材フィルム11A,12Aにおいて、800nm以上1500nm以下の波長域の平均反射率が80%以上であった。
【0038】
次に、試験例11,12の各透明基材フィルム11A,12Aに厚さが0.5μmの酸化インジウムスズ層を各透明電極層11B,12Bとして積層し、試験例11,12の各透明電極シート11,12を得た。そして、試験例11,12の各透明電極シート11,12を用い、試験例11,12の調光シート10を得た。
【0039】
また、各透明基材フィルム11A,12Aに試験例1Bの第1透明基材フィルム11Aを用い、それ以外を試験例11と同じくして、試験例13の調光シート10を得た。
また、各透明基材フィルム11A,12Aに試験例1Cの第1透明基材フィルム11Aを用い、それ以外を試験例11と同じくして、試験例14の調光シート10を得た。
【0040】
次に、調光シート10の試験例11~14、および第1透明電極シート11の試験例1Bの日射熱取得率、遮熱率、および電波遮蔽の有無を測定した。日射熱取得率は、JIS A1493に準じた測定方法によって得た。遮熱率は、JIS L1951に準じた測定方法によって得た。電波遮蔽の有無は、電磁材評価方法であるKEC法に準じた測定方法によって得た。図4に、日射熱取得率、遮熱率、および電波遮蔽の評価結果を示す。図5に、試験例13の光学スペクトルを示す。図6に、試験例11の光学スペクトルを示す。図7に、試験例11,12の反射率スペクトルを示す。
【0041】
図4が示すように、試験例11~13,15が試験例14よりも高い日射熱取得率、および遮熱率を示すことが認められた。また、試験例11,12,14,15が電波遮蔽を有さず、試験例13が電波遮蔽を有することが認められた。
【0042】
図5が示すように、試験例13は、可視波長域である400nm以上800nm以下に20%以上の透過率を示す。試験例13は、800nm以上1100nm以下の赤外波長域に5%以下の低い透過率を示す一方で、1200nm以上2000nm以下の赤外波長域にも20%に満たない低い透過率を示す。また、試験例13は、800nm以上1100nm以下の赤外波長域に反射率のピークを示す一方で、1200nm以上2000nm以下の赤外波長域にも50%を超える高い反射率を示す。
【0043】
図6が示すように、試験例11は、可視波長域である400nm以上800nm以下に30%以上の透過率を示す。試験例11は、800nm以上1100nm以下の赤外波長域に5%以下の低い透過率を示す一方で、1200nm以上2000nm以下の赤外波長域には50%以上の高い透過率を示す。また、試験例11は、800nm以上1200nm以下の赤外波長域に反射率のピークを示す一方で、1200nm以上2000nm以下の赤外波長域には10%に満たない反射率を示す。これにより、試験例11が試験例14よりも高い日射熱取得率、および遮熱率を示すことが、光学スペクトルの観点から認められた。また、試験例11が電波遮蔽を有さず、試験例13が電波遮蔽を有することが、光学スペクトルの観点から認められた。
【0044】
図7が示すように、試験例11,12の反射率は、可視波長域である400nm以上800nm以下において15%以上に満たない。90%を超える高い反射率が認められる波長域は、試験例11において850nm以上1200nmである一方、試験例12において850nm以上1400nm以下まで広げられることが認められた。図7の破線が示すように、太陽光のエネルギースペクトルは、400nm以上800nm以下の可視波長域に最大値を有し、波長が可視波長域から高まるほどエネルギーを低める。850nm以上1400nm以下まで高い反射率を有する試験例12は、試験例11と同じく電波遮蔽を有さず、かつ太陽光に対して試験例11よりも高い遮熱性を有する。
【0045】
[効果]
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)各透明基材フィルム11A,12Aが複数の非金属層1A1,1A2から構成される多層干渉フィルムである。各透明基材フィルム11A,12Aにおける赤外波長域の平均透過率が30%以下であるため、調光シート10が赤外波長域の電磁波を遮蔽できる。また、各透明基材フィルム11A,12Aにおける赤外波長域よりも長波長域の平均反射率が20%以下であるため、調光シート10がUHF帯やマイクロ波帯の電磁波を透過できる。
【0046】
(2)各透明基材フィルム11A,12Aは、相互に組成が異なる複数のポリエチレンテレフタレート層と、相互に組成が異なる複数のポリエチレンナフタレート層とを備える。各非金属層の厚さは、100nm以上200nm以下である。各透明基材フィルム11A,12Aは、相互に隣り合う非金属層1A1,1A2の屈折率差によって800nm以上1300nm以下の波長域の平均反射率が80%以上になるようにポリエチレンテレフタレート層とポリエチレンナフタレート層とを重ねる。
【0047】
これにより、上記(1)に準じた効果を得る実効性が高まる。また、各非金属層の厚さが薄いため、各透明基材フィルム11A,12Aの厚さが過度に厚くなることが抑制されると共に、調光シート10の可撓性が保たれる。
【0048】
(3)各透明電極層11B,12Bが導電性無機酸化物から構成される場合、調光シート10がUHF帯やマイクロ波帯の電磁波を透過できることの実効性が高まる。
【0049】
(4)調光層13が透明樹脂層13Pと液晶組成物13Lとを備えて、調光シート10の全光線透過率が80%以上である場合、各透明基材フィルム11A,12Aが多層干渉フィルムであることに起因した呈色や視認性の低下が抑制される。
【0050】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
・調光シート10は、第1透明電極シート11、第2透明電極シート12、および調光層13以外の機能層を、調光層13に対する第1透明電極シート11の側に備えてもよい。また、調光シート10は、第1透明電極シート11、第2透明電極シート12、および調光層13以外の機能層を、調光層13に対する第2透明電極シート12の側に備えてもよい。
【0051】
機能層の一例は、第1透明電極シート11や第2透明電極シート12に接着されて、調光層13や各透明電極層11B,12Bを保護するための保護フィルムである。保護フィルムの一例は、ガスバリアフィルム、紫外吸収フィルム、およびハードコートからなる群から選択される少なくとも1つである。機能層の他の例は、光透過性の制御に寄与する偏光フィルムである。
【符号の説明】
【0052】
1A1,1A2…非金属層
10…調光シート
11,12…透明電極シート
11A,12A…透明基材フィルム
11B,12B…透明電極層
13…調光層
13L…液晶組成物
13P…透明樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7