(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021128
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】膝サポータ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20240208BHJP
A61F 13/00 20240101ALI20240208BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20240208BHJP
A41D 13/015 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A41D13/06 105
A61F13/00 355P
A61F13/06 B
A41D13/015
A61F13/00 355J
A41D13/015 103
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123738
(22)【出願日】2022-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228866
【氏名又は名称】日本シグマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】須賀 武彦
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA13
3B011AB18
3B011AC04
3B011AC05
3B011AC21
3B211AA13
3B211AB18
3B211AC04
3B211AC05
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】膝関節の安定性と動きやすさを両立できる膝サポータを提供する。
【解決手段】ある態様のサポータ1は、膝関節を覆うように装着される筒状のサポータ本体10と、サポータ本体10の内面における膝蓋骨CKに対応する位置に配置されるパッド12と、サポータ本体10の内面との間にパッド12を収容する収容空間Sを形成するように内面に固定されるカバー20と、を備える。パッド12は、カバー20の一部と接合されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節を覆うように装着される筒状のサポータ本体と、
前記サポータ本体の内面における膝蓋骨に対応する位置に配置されるパッドと、
前記サポータ本体の内面との間に前記パッドを収容する収容空間を形成するように前記内面に固定されるカバーと、
を備え、
前記パッドは、前記カバーの一部と接合されていることを特徴とする膝サポータ。
【請求項2】
前記パッドは、前記サポータ本体とは接合されていないことを特徴とする請求項1に記載の膝サポータ。
【請求項3】
前記パッドは、前記膝蓋骨の下方位置においてのみ、前記カバーに接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の膝サポータ。
【請求項4】
前記パッドは、前記膝蓋骨の中心よりも右側の第1位置と左側の第2位置においてそれぞれ前記カバーに接合されていることを特徴とする請求項3に記載の膝サポータ。
【請求項5】
前記パッドは、前記サポータ本体および前記カバーのいずれよりも伸張性の低い素材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の膝サポータ。
【請求項6】
前記パッドは、前記膝蓋骨を受け入れ可能な凹部又は孔部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の膝サポータ。
【請求項7】
前記パッドにおける前記カバーとの当接面および前記サポータ本体との当接面が、前記パッドの本体よりも摩擦抵抗が小さい素材で覆われていることを特徴とする請求項6に記載の膝サポータ。
【請求項8】
前記パッドは、前記膝蓋骨の中心よりも右側領域と左側領域のそれぞれにおいて前記カバー側に突出する一対の段差を有し、
前記一対の段差の内側に前記膝蓋骨を受け入れ可能であり、
前記段差の上面に前記カバーとの接合部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の膝サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節を保護するサポータに関する。
【背景技術】
【0002】
膝サポータとして、筒状のサポータ本体の内側にパッドを配置した構造が広く採用されている。一般に、サポータ本体には伸びの良い素材が採用され、膝への装着感が高められている。パッドが膝蓋骨を取り囲むように設けられることで、膝関節の安定感を高めることができる。一方で、パッドを設けることで膝周辺への拘束力が大きくなる。すなわち、このような膝サポータは屈伸時の皮膚の伸びや関節の突出に追従し難く、膝関節の可動域を狭めてしまう可能性があった。
【0003】
そこで、サポータ本体に対してパッドを分割して配置する、あるいはパッドに切れ込みを設けるなどして拘束力を低減する技術も提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-237579号公報
【特許文献2】特開2010-229594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パッドを複数のパッド片に分割してサポータ本体に配置した場合、サポータ本体の伸びに伴ってパッド片間の隙間が広がり、膝関節の安定効果が低減したり、パッド全体として本来の適正位置からずれやすくなる。また、パッドに切れ込みを入れる場合、屈伸時にパッドの一部が突出することでサポータ本体の生地が押し出されるように伸ばされ、その反力による抵抗が生じやすくなる。すなわち、膝関節の動きやすさを担保しようとすると安定性が損なわれ、逆に安定性を担保しようとすると動きやすさが損なわれるといった問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、膝関節の安定性と動きやすさを両立できる膝サポータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の膝サポータは、膝関節を覆うように装着される筒状のサポータ本体と、サポータ本体の内面における膝蓋骨に対応する位置に配置されるパッドと、サポータ本体の内面との間にパッドを収容する収容空間を形成するように内面に固定されるカバーと、を備える。パッドは、カバーの一部と接合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膝関節の安定性と動きやすさを両立できる膝サポータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るサポータの外観を表す図である。
【
図4】膝関節へのサポータの装着態様を表す図である。
【
図5】膝を90度屈曲させたときの膝周辺の皮膚の伸び分布を表す図である。
【
図6】膝関節周辺とパッドとの位置関係を模式的に表す図である。
【
図7】膝関節周辺とパッドとの位置関係を模式的に表す図である。
【
図8】膝の屈曲角度に応じた膝サポータによる圧迫力の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の膝サポータは、サポータ本体の内面に配置されるパッドを覆うようにカバーが設けられる。サポータ本体とカバーとの間に形成される収容空間にパッドが配置される。パッドの一部がカバーと接合されることでパッドを安定した姿勢で保持できる。一方、パッドの大部分は固定されないため、パッドによる拘束力がサポータ本体に及び難い。このため、膝関節の安定性と動きやすさを両立できる。以下、その具体的構成について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るサポータの外観を表す図である。
図1(A)は正面図であり、
図1(B)は背面図である。なお、以下の説明では便宜上、サポータを装着したユーザからみた方向を基準に上下、左右、前後方向を表現する。
【0012】
サポータ1は、ユーザの膝関節を覆うように装着される膝サポータである。サポータ1は、ユーザの片足を挿入可能なサポータ本体10を有する。サポータ本体10は、伸張性(伸縮性)を有する生地からなり、筒状の編み物(丸編み)として得られる。サポータ本体10の上端部10aおよび下端部10bには例えばマイクロファイバーが使用され、装着後のずれが生じ難くされている。
【0013】
サポータ本体10の前側部中央にはパッド12が配置されている(
図1(A))。パッド12の詳細については後述する。サポータ本体10の後側部中央にはメッシュ生地14が採用されており、その部位における伸縮性と通気性が高められている(
図1(B))。サポータ本体10の左右側部には、一対のステー16が収容される収容部18がそれぞれ設けられている。
【0014】
ステー16は、適度な剛性および弾性を有する長尺状の部材であり、膝関節の両サイドにあてがうように配置されることで、歩行時等の膝関節への負担を軽減する。ステー16は、樹脂部材からなるものでもよいし、金属部材からなるものでもよい。例えば特願2021-127515号に記載のステーを採用できるが、これに限られない。ステー16の構造等の詳細については説明を省略する。
【0015】
図2は、サポータ1を裏返した状態を表す図である。
図2(A)は正面図であり、
図2(B)は背面図である。
サポータ本体10の前側部裏面10dの中央にパッド12が配置され、そのパッド12を覆うようにカバー20が設けられている。本実施形態では、カバー20の素材として、高い伸張性を有する生地、例えばポリエステルおよびポリウレタンを含む2wayトリコット生地を採用する。この素材は摩擦係数が小さく、肌との摩擦が少なく、パッド12との摩擦抵抗も小さい。
【0016】
カバー20は、パッド12の外形と概ね相似形状の薄手の生地からなり、パッド12よりもやや大きい。カバー20の外周縁がサポータ本体10の裏面10dに溶着されることで、カバー20とサポータ本体10との間に閉じた収容空間Sが形成される。その収容空間Sにパッド12が収容される。本実施形態では、サポータ本体10とパッド12とを合わせて140%以上伸張できるよう、両者の素材や構造が選定されている。
【0017】
収容部18は、伸張性を有する帯状の生地をサポータ本体10の裏面10dに縫い付けて袋状に構成され、サポータ本体10の側部に上端近傍から下端近傍にわたって延在する。収容部18の内部にステー16が収容される。なお、本実施形態では、収容部18をサポータ本体10の内側面(裏面)に設けているが、外側面に設けてもよい。
【0018】
図3は、パッド12の構成を表す図である。
図3(A)は斜視図、
図3(B)は平面図である。
図3(A)に示すように、パッド12は、環状の第1パッド22と、第1パッド22の片面に段差を形成するように設けられた左右一対の第2パッド24を有する。第1パッド22は、その中央に膝蓋骨を受け入れ可能な孔部26を有する。第1パッド22および第2パッド24はそれぞれ一定の厚みを有するが、第1パッド22のほうが第2パッド24よりも厚みが大きい。
【0019】
図3(B)に示すように、パッド12は、中心線Lに対して左右対称な形状を有する。第1パッド22の上半部が半円形状、下半部が逆三角形状をなす。孔部26も同様の形状を有する。これらは膝蓋骨の形状に対応させたものである。一対の第2パッド24は、孔部26の左右に配置され、第1パッド22の形状に沿って帯状(レール状)に延在する。
【0020】
第2パッド24は、孔部26の上端もよりやや下方の位置から孔部26の下端よりも下方の位置まで延びている。第2パッド24は、第1パッド22の下方に向かうほど中心線Lに近づく形状を有する。このため、一対の第2パッド24の間隔(つまり左右の段差の間隔)は、それらの上端位置において下端位置よりも大きい。また、膝蓋骨の形状に合わせて第1パッド22の下方に向かうほど小さくなっている。第2パッド24の上部は中心線Lとほぼ平行に延びるが、その上端部は中心線L側にやや傾斜している。一対の第2パッド24の間の空間が、膝蓋骨周辺を受け入れる領域となる(詳細後述)。
【0021】
本実施形態では、第1パッド22および第2パッド24の素材として、高弾性および高反発性を有するクロロプレンフォームなどのゴムを採用するが、同様の特性を有するものであれば他の素材を採用してもよい。また、第2パッド24を第1パッド22に対して接着してパッド12を得ているが、両者を一体成形してもよい。なお、パッド12は、伸張性を有するが、サポータ本体10およびカバー20のいずれよりもその伸張性は低い。
【0022】
第1パッド22および第2パッド24の表面には、摩擦抵抗を低減するための滑りの良い生地がラミネート加工されている。この生地は例えばポリエステル素材からなり、サポータ本体10やカバー20との間の滑りを向上させる。すなわち、パッド12におけるカバー20との当接面およびサポータ本体10との当接面が、パッド12の本体よりも摩擦抵抗が小さい素材で覆われている。それにより、ユーザの動作に伴うサポータ本体10やカバー20の伸びをパッド12が阻害しないようにされている。第2パッド24の上面には、カバー20との接合部28が設けられるが、その説明については後述する。
【0023】
図4は、膝関節へのサポータの装着態様を表す図である。本図は、ユーザがサポータ1を装着した状態で膝関節をやや曲げた状態を示す。
ユーザは、パッド12の孔部26に膝蓋骨が受け入れられるようにサポータ1を足に装着する。サポータ本体10の上端部10aが大腿部に、下端部10bが下腿部にそれぞれ装着される。
【0024】
このとき、膝蓋骨の頂部が孔部26に受け入れられ、膝蓋骨の側部が左右の第2パッド24に挟まれる態様となり、膝蓋骨およびその周辺がパッド12と部分的に嵌合する。このため、パッド12が膝に引っ掛かる状態となり、膝関節の曲げに伴ってサポータ本体10が伸びたとしても、膝関節に対するパッド12の位置は安定に保持される。また、膝関節の曲げに伴ってステー16もこれに追従して変形するが、膝関節は一対のステー16により挟まれる態様で安定に支持され、その左右へのブレを抑制できる。
【0025】
次に、サポータ1により発揮される機能について説明する。
本実施形態では、膝関節の安定支持と動きやすさとを両立させるために、膝関節の挙動に追従したサポータ本体10の変形を促しつつ、膝蓋骨に対するパッド12の位置は安定に保てるような工夫をしている。それに先立ち、屈伸時の膝関節周辺の挙動を検証した。
【0026】
図5は、膝を90度屈曲させたときの膝周辺の皮膚の伸び分布を表す図である。
本実施形態では、直立時(膝関節伸展時)において図示のようなメッシュ(5cm角)を皮膚上に描き、膝関節伸展位と90度屈曲位のそれぞれでメッシュを構成する線分の長さを計測し、各部の変化率(皮膚の伸び分布)を算出した。図中左側には実験結果が可視表示され、右側には算出値(算出値の範囲)が示されている。「タテ」は縦方向の線分を示し、「ヨコ」は横方向の線分を示す。変化率が正の部分は皮膚の伸びを、負の部分は縮みを示している。
【0027】
本実験によれば、膝の屈曲時に膝蓋骨の位置はほとんど変化しないにもかかわらず、膝蓋骨付近の皮膚が大きく伸ばされることが分かる。特に膝蓋骨の直上(膝蓋骨付近)の伸びが著しい。このため、サポータ1がこの伸びに追従しないと動き難くなる。一方、膝蓋骨の下方位置の伸びは比較的小さい。このような知見に基づき、サポータ1におけるパッド12の固定位置を工夫した。
【0028】
図6および
図7は、膝関節周辺とパッド12との位置関係を模式的に表す図である。
図6は正面図、
図7は側面図である。
図6に示すように、パッド12は、左右の第2パッド24により形成される段差の内側に膝蓋骨CKを受け入れる。孔部26が膝蓋骨CKの中央部を受け入れる。一対の第2パッド24が、膝蓋骨CKの中心Poよりも右側領域と左側領域のそれぞれにおいて段差を形成し、それらの内側に膝蓋骨CKを受け入れる。このような構成により、第1パッド22が膝関節に対して位置決めされる。
【0029】
一対の第2パッド24の上端部がやや内側(膝蓋骨CK側)に湾曲しているため、パッド12が膝蓋骨CK周辺に引っ掛かり、膝関節に対する位置を安定に保持できる。その結果、サポータ1全体として膝関節に適度な拘束力を付与でき、その安定性を維持できる。
【0030】
一方、パッド12における第2パッド24よりも上方領域UAおよび下方領域LAにおいては段差を設けていない。上方領域UAは大腿四頭筋の領域に対応し、下方領域LAは膝蓋靭帯の領域に対応する。これらの領域は、運動時に生じる筋腱の隆起や筋腹移動、硬度変化に応じたサポータ1の変形を確保すべき領域である。そのため、パッド12による圧迫力が作用し難くしている。
【0031】
図7にも示すように、パッド12は、サポータ本体10の内面における膝蓋骨CKに対応する位置に配置される。なお、ここでいう「膝蓋骨CKに対応する位置」は、膝蓋骨CKおよびその周辺に対応する位置であってよい。カバー20は、サポータ本体10との間にパッド12を収容する収容空間Sを形成するようにサポータ本体10の内面に固定されている。第2パッド24は、第1パッド22におけるサポータ本体10とは反対側面からカバー20側に突出する。
【0032】
図6に戻り、第2パッド24の下部に接合部28が設けられている。接合部28は、本実施形態では接着シート(両面テープなど)からなり、膝蓋骨CKよりも下方に位置する。パッド12は、膝蓋骨CKの中心Poよりも右側の第1位置Prと左側の第2位置Plにおいてそれぞれカバー20に接合されている(
図7参照)。すなわち、パッド12は、膝蓋骨CKの下方位置においてのみ、カバー20に接合されている。パッド12は、サポータ本体10とは反対側面においてカバー20の一部と接合されているが、サポータ本体10とは接合されていない。
【0033】
前述のように、膝の屈曲時には、膝蓋骨CKの直上の伸びが顕著に大きくなる一方、膝蓋骨CKの下方位置の伸びは小さい。本実施形態ではこの点に着目し、第2パッド24における接合部28の位置、つまりパッド12のカバー20との接合部を膝蓋骨CKの下方に設定している。それにより、膝の屈曲時にサポータ1において相対的に大きく伸びる位置にはパッド12による拘束力が作用し難くされている。その結果、屈伸時等における動きやすさを高めることができる。
【0034】
図8は、膝の屈曲角度に応じた膝サポータによる圧迫力の変化を表す図である。図中の実線が本実施形態の特性を示し、破線は市販品の特性を示す。市販品は、段差のない円環状のパッドを採用している以外は本実施形態とほぼ同様である。横軸は膝の屈曲角度(°)を示す。0度は膝の伸展状態、90度は膝の90度屈曲状態を示す。縦軸は膝蓋骨CKの外側上部に作用する圧迫力(kPa)の計測結果を示す。
【0035】
この計測結果によれば、本実施形態では膝の屈曲角度が大きくなるにつれて膝蓋骨CKへの圧迫力も大きくなる。これに対し、市販品では膝の屈曲角度が変化しても圧迫力はほとんど変化せず、30度、60度の軽度屈曲位のときに最小値をとる。また、本実施形態によれば、市販品の2~5倍程度の圧迫力が得られることが分かる。屈伸時においては特に軽度屈曲位のときに膝蓋骨が側方へ不安定となり、膝関節への負担が大きくなるところ、本実施形態によれば十分に大きな圧迫力が得られることが分かる。すなわち、本実施形態によれば屈伸時における膝関節の安定性を維持しやすくなる。
【0036】
以上に説明したように、本実施形態のサポータ1は、サポータ本体10とカバー20との間にパッド12を収容する収容空間Sを形成する。このため、ユーザがサポータ本体10を装着したときにはパッド12が自ずと膝蓋骨CKに対応するよう位置決めされ、膝関節を適正な位置で支持できる。一方、パッド12の一部のみをカバー20の限定された箇所に接合することとしたため、屈伸時などにサポータ本体10やカバー20がパッド12から伸びどまりの影響を受けることなく、皮膚の伸びに追従して伸びることができる。逆に、サポータ本体10やカバー20の伸びに伴うパッド12のずれも生じ難い。また、パッド12の表面を摩擦抵抗の小さい素材で覆ったことが、サポータ本体10およびカバー20の伸びをさらに促進している。このため、膝関節の動きやすさを担保できる。すなわち、サポータ1によれば、膝関節の安定性と動きやすさを両立できる。
【0037】
より具体的には、パッド12とカバー20との接合部を皮膚の変位が比較的少ない膝蓋骨CKの下方に設けることで、膝の曲げ伸ばしをしても、膝関節の動き難さやパッド12のずれが生じ難い。膝を曲げると、パッド12がその接合部を起点に若干伸びるものの、膝を伸ばして元に戻すと、パッド12も元の形状に戻る。このとき、パッド12の接合部がカバー20に対して位置決めされているため、適正位置からずれることもない。
【0038】
接合部28を膝蓋骨CKの左右にそれぞれ設けたことで、屈伸動作中にパッド12が回転したり、折れ曲がることが防止される。すなわち、パッド12を適正な位置に保持して膝関節を安定させるための適度な押圧力(圧迫力)を付与しつつ、皮膚の伸びに追従するサポータ本体10の動きを促すことができる。
【0039】
また、パッド12がひとつながりの単体として作製され、外周部や内周部に切れ込みなども設けられていないため、サポータ1の使用時にパッド12そのものの形状を安定に保つことができる。パッド12が局所的に変形してサポータ本体10に無用な負荷を及ぼすこともない。したがって、パッド12とサポータ本体10との間に相互の機能を損なうような力も作用し難い。この点も膝関節の安定性と動きやすさの両立に寄与する。
【0040】
[変形例]
上記実施形態では、サポータ1の一態様を示したが、具体的構造について適宜変形可能であることは言うまでもない。例えば、パッドの形状や厚み、段差の配置や数、材質などを上記実施形態と異ならせてもよい。上記実施形態では、パッド12として中央部に孔部26を設ける構造を例示した。変形例においては、孔部を凹部に置き換え、パッドの中央部を貫通させない構造を採用してもよい。その場合、パッドにおける凹部の厚みは他の部分よりも小さくなる。
【0041】
上記実施形態では、第1パッド22の左右に第2パッド24を設けて段差を形成し、各第2パッド24の下部をカバー20に接合した。すなわち、パッド12をカバー20に対して2点で接合する例を示した。変形例においては、パッドにおける段差を3箇所以上設けてもよく、パッドをカバーに対して3点以上で接合してもよい。ただし、左右の段差の数や膝との対向面積を等しくしたほうがパッドに作用する摩擦力をバランスさせ易く、パッドを適正な位置に保ち易い。また、パッドとカバーとの接合面積を小さくしたほうがカバーひいてはサポータ本体への拘束力を低減でき、動きやすさを担保し易い。
【0042】
あるいは、パッドの段差(第2パッド)をU字状又はV字状に構成し、その下端部の1点又は一領域をカバーに接合してもよい。このようにしても、パッドのカバーへの拘束力を低減できる。ただし、上述のように膝蓋靭帯に対応する領域においてはサポータの変形を確保できるのが好ましく、上記実施形態のように第2パッドの下部を開放する構造を採用するのが好ましい。
【0043】
上記実施形態では、
図6に示したように、パッド12における一対の接合部28の位置(つまり左右の接合部28の位置)を同じ高さとした。変形例においては、両者の高さを異ならせてもよい。筋肉や靭帯の配置や配向に応じて両者の高さを調整してもよい。
【0044】
上記実施形態では、パッド12として、サポータ本体10およびカバー20のいずれよりも伸張性の低い素材からなるものを採用した。変形例においては、パッドの素材として、サポータ本体およびカバーの少なくとも同程度の伸張性を有するものを採用してもよい。このような構成としても、上記実施形態のように段差の厚みを十分に確保することでパッドの剛性を確保でき、パッドによる安定性を発揮させることができる。ただし、高い安定性を得るためには、上記実施形態のようにパッドの伸張性は相対的に低くするのが好ましい。
【0045】
上記実施形態では、カバー20をサポータ本体10の裏面10dに溶着する例を示した。変形例においては、カバーをサポータ本体に縫製するなどその他の固定手段を採用してもよい。
【0046】
上記実施形態では、サポータ本体10を編み物として筒状に編成する例を示した。変形例においては、裁断された生地を縫製や溶着することにより筒状のサポータ本体を作製してもよい。
【0047】
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 サポータ、10 サポータ本体、12 パッド、14 メッシュ生地、16 ステー、18 収容部、20 カバー、22 第1パッド、24 第2パッド、26 孔部、28 接合部、CK 膝蓋骨、L 中心線、LA 下方領域、Pl 第2位置、Po 中心、Pr 第1位置、S 収容空間、UA 上方領域。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節を覆うように装着される筒状のサポータ本体と、
前記サポータ本体の内面における膝蓋骨に対応する位置に配置されるパッドと、
前記サポータ本体の内面との間に前記パッドを収容する収容空間を形成するように前記内面に固定されるカバーと、
を備え、
前記パッドは、前記カバーの一部と接合され、
前記パッドは、前記膝蓋骨を受け入れ可能な凹部又は孔部を有し、
前記パッドにおける前記カバーとの当接面および前記サポータ本体との当接面が、前記パッドの本体よりも摩擦抵抗が小さい素材で覆われていることを特徴とする膝サポータ。
【請求項2】
前記パッドは、前記サポータ本体とは接合されていないことを特徴とする請求項1に記載の膝サポータ。
【請求項3】
前記パッドは、前記膝蓋骨の下方位置においてのみ、前記カバーに接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の膝サポータ。
【請求項4】
前記パッドは、前記膝蓋骨の中心よりも右側領域と左側領域のそれぞれにおいて前記カバー側に突出する一対の段差を有し、
前記一対の段差の内側に前記膝蓋骨を受け入れ可能であり、
前記段差の上面に前記カバーとの接合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の膝サポータ。