(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002113
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】遠心圧縮機のインペラ、遠心圧縮機及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/30 20060101AFI20231228BHJP
F04D 17/10 20060101ALI20231228BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F04D29/30 C
F04D17/10
F02B37/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101114
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩範
(72)【発明者】
【氏名】神坂 直志
(72)【発明者】
【氏名】冨田 勲
【テーマコード(参考)】
3G005
3H130
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA05
3G005GB81
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC14
3H130BA66C
3H130CB02
3H130CB03
3H130EA06C
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EB04C
3H130ED04C
(57)【要約】
【課題】 インペラを通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる遠心圧縮機のインペラ、該インペラを備える遠心圧縮機及びターボチャージャを提供する。
【解決手段】 遠心圧縮機のインペラは、ハブと、ハブの周りに設けられた複数の翼を備え、複数の翼の各々は、横軸を翼のハブ側端における無次元子午面長位置とし、縦軸を翼の子午面における翼高さとするグラフにおいて、翼の前縁と後縁を結ぶ直線よりも翼高さが大きくなる領域を有するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、前記ハブの周りに設けられた複数の翼を備える遠心圧縮機のインペラであって、
前記複数の翼の各々は、
横軸を前記翼のハブ側端における無次元子午面長位置とし、縦軸を前記翼の子午面における翼高さとするグラフにおいて、前記翼の前縁と後縁を結ぶ直線よりも前記翼高さが大きくなる領域を有するように構成された、
遠心圧縮機のインペラ。
【請求項2】
前記翼は、前記グラフにおいて、前記ハブ側端における前記無次元子午面長位置の前縁位置と後縁位置の中間位置よりも前記前縁位置側に前記直線よりも前記翼高さが大きくなる領域が形成されるように構成された、
請求項1に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項3】
前記翼は、前記グラフにおいて、前記ハブ側端における前記無次元子午面長位置の前縁位置から後縁位置までに亘って、前記翼高さが前記直線と同じ、又は前記直線よりも大きくなるように構成された、
請求項1に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項4】
前記翼は、
前記翼高さを構成する線分を前記インペラの回転軸回りに展開させたときの面積を翼展開面積と定義し、前記ハブ側端における前記無次元子午面長位置の前縁位置と後縁位置の中間位置における前記翼展開面積をAMと定義し、前記ハブ側端の前記前縁位置における前記翼展開面積をALEと定義した場合において、
AM≧0.95×ALEの条件を満たすように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項5】
前記翼は、
前記ハブ側端における前記無次元子午面長位置の前記前縁位置と前記後縁位置の間の任意の位置における前記翼展開面積をAFと定義した場合において、
AF>ALEの条件を満たす領域を有するように構成された、
請求項4に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項6】
前記ハブは、
前記ハブの前記翼の前縁位置における直径をDLEと定義し、前記ハブの前記翼の後縁位置における直径をDTEと定義した場合において、
DLE≧0.25×DTEの条件を満たすように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項7】
前記インペラは、
前記翼の前縁における翼高さをhLEと定義し、前記ハブの前記翼の後縁位置における直径をDTEと定義した場合において、
hLE≧0.12×DTEの条件を満たすように構成された、
請求項6に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項8】
前記翼の前記前縁は、前記前縁のチップ側端が前記前縁の前記ハブ側端よりも前記インペラを通過する気体の流れ方向の上流側に位置するように傾斜している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項9】
前記ハブは、
前記ハブの前記翼の後縁位置における直径をDTEと定義した場合において、
DTE≦300mm以下の条件を満たすように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項10】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のインペラと、
前記インペラを収容するように構成されたハウジングと、
を備える遠心圧縮機。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記翼にクリアランスを介して対向するシュラウド面を有し、
前記遠心圧縮機は、
前記翼の後縁と前記シュラウド面との間の前記クリアランスをCLTEと定義し、前記翼の前記後縁における翼高さをhTEと定義した場合において、
クリアランス比CLTE/hTEが、0.15<CLTE/hTE<0.30の条件を満たすように構成された、
請求項10に記載の遠心圧縮機。
【請求項12】
請求項10に記載の遠心圧縮機と、
前記遠心圧縮機を駆動させるように構成されたタービンと、
を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機のインペラ、該インペラを備える遠心圧縮機及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジンなどのエンジン(内燃機関)の出力を向上させる技術として、エンジンが吸い込む吸気を圧縮し、密度を高くして酸素を多く含んだ吸気をエンジンに供給するターボチャージャ(過給機)が多用されている。
【0003】
ターボチャージャは、例えば、回転シャフトの一端側に設けられる遠心圧縮機と、回転シャフトの他端側に設けられるタービンと、を備える。エンジンから送られた排ガスのエネルギによりタービンロータ(タービンのインペラ)を回転させ、タービンロータの回転に連動して回転する遠心圧縮機のインペラを回転させて吸気を圧縮し、エンジンに供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6924844号公報
【特許文献2】特開2020-186649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠心圧縮機の低比速度化に伴い、インペラの外径は拡大し流路幅は狭まるが、回転系と静止系のクリアランスは同じようには狭まらないため、低比速度遠心圧縮機のクリアランス比は相対的に大きくなる。クリアランス比の拡大は漏れ流れに起因する損失の増大につながるため、低比速度遠心圧縮機の高効率化には漏れ流れ(特にインペラの後半部の漏れ流れ)を抑制することが必要となる。
【0006】
なお、特許文献1には、オープンタイプの遠心圧縮機のインペラのボス部の径D1とコンプレッサ翼の最大外径D2の比D1/D2が0.18以下を満たすことが開示されている。また、特許文献2には、遠心圧縮機のインペラの翼角分布の一例が開示されている。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、インペラを通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる遠心圧縮機のインペラ、該インペラを備える遠心圧縮機及びターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機のインペラは、
ハブと、前記ハブの周りに設けられた複数の翼を備える遠心圧縮機のインペラであって、
前記複数の翼の各々は、
横軸を前記翼のハブ側端における無次元子午面長位置とし、縦軸を前記翼の子午面における翼高さとするグラフにおいて、前記翼の前縁と後縁を結ぶ直線よりも前記翼高さが大きくなる領域を有するように構成された。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機は、
前記インペラと、
前記インペラを収容するように構成されたハウジングと、を備える。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、
前記遠心圧縮機と、
前記遠心圧縮機を駆動させるように構成されたタービンと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、インペラを通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる遠心圧縮機のインペラ、該インペラを備える遠心圧縮機及びターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係るターボチャージャの軸線に沿った概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係る遠心圧縮機のインペラの子午面断面を示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係るインペラの翼高さを説明するためのグラフである。
【
図4】一実施形態に係るインペラの翼展開面積を説明するためのグラフである。
【
図5】一実施形態に係るインペラを通過する流体の流速および流れ角を説明するためのグラフである。
【
図6】一実施形態に係るインペラの子午面形状を説明するための説明図である。
【
図7】一実施形態に係るインペラを通過する流体のマッハ数を説明するための説明図である。
【
図8】一実施形態に係るインペラのハブの翼の前縁位置における直径と遠心圧縮機の効率との関係を示す図である。
【
図9】一実施形態に係るインペラの入口翼高さと遠心圧縮機の効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
以下の実施形態では、本開示の遠心圧縮機は、ターボチャージャに具備されているものとして説明を行うが、本開示の遠心圧縮機は、電動の遠心圧縮機などであってもよい。また、本開示の遠心圧縮機の圧縮対象の気体を空気に限定する必要はない。すなわち、本開示の遠心圧縮機は、気体を圧縮して送ることが可能であればよく、遠心圧縮機単体で構成しても、タービン以外の機構や装置と複合して構成してもよい。また、その用途等を限定する必要もない。
【0015】
(遠心圧縮機、ターボチャージャ)
図1は、一実施形態に係るターボチャージャ10の軸線LAに沿った概略断面図である。
図2は、一実施形態に係る遠心圧縮機1のインペラ2の子午面断面を示す概略図である。幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1は、
図1、
図2に示されるように、インペラ2と、インペラ2を回転可能に収容するように構成されたハウジング(コンプレッサハウジング)3と、を備える。本開示にかかる遠心圧縮機1は、例えば、自動車用、舶用又は産業用(例えば、陸上発電用)のターボチャージャ(過給機)10などに搭載可能である。
【0016】
ターボチャージャ10は、
図1に示されるように、遠心圧縮機1と、遠心圧縮機1を駆動するように構成されたタービン11と、を備える。タービン11は、不図示のエンジン(内燃機関)から排出された排ガスのエネルギにより回転するタービンロータ12と、タービンロータ12を回転可能に収容するように構成されたタービンハウジング13と、を含む。
【0017】
遠心圧縮機1は、インペラ2が取り付けられる回転シャフト4と、回転シャフト4を回転可能に支持する軸受5と、をさらに備える。ターボチャージャ10においては、回転シャフト4の一端側にインペラ2が連結され、回転シャフト4の他端側にタービンロータ12が連結される。軸受5は、インペラ2とタービンロータ12の間において回転シャフト4を回転可能に支持する。ターボチャージャ10は、ハウジング3とタービンハウジング13との間に配置され、回転シャフト4および軸受5を収容するように構成された軸受ハウジング14をさらに備えていてもよい。
【0018】
タービン11(ターボチャージャ10)は、上記エンジンから排出された排ガスのエネルギにより、タービンロータ12を回転させるように構成されている。インペラ2は、回転シャフト4を介してタービンロータ12と同軸上に連結されているため、タービンロータ12の回転に連動してインペラ2の軸線LA回りに回転駆動する。遠心圧縮機1(ターボチャージャ10)は、インペラ2が軸線LA回りに回転駆動することにより、ハウジング3の内部に空気(給気、気体)を吸入し、該空気を圧縮し、圧縮された空気を上記エンジンに送るように構成されている。
【0019】
遠心圧縮機1から上記エンジンに送られた圧縮空気は、上記エンジンにおける燃焼に供されるようになっている。上記エンジンにおける燃焼により生じた排ガスは、上記エンジンからタービン11に送られ、タービンロータ12を回転させるようになっている。
【0020】
以下、
図2に示されるように、インペラ2の軸線LAが延在する方向をインペラ2の軸方向とし、軸線LAに直交する方向をインペラ2の径方向とし、軸線LA回りの周方向をインペラ2の周方向とする。インペラ2の軸方向において、ハブ6の背面62に対してハブ6の外周面61が位置する側を前方側とし、外周面61に対して背面62が位置する側を後方側とする。
【0021】
(タービンロータ)
タービンロータ12は、
図1に示されるように、略円錐台形状のハブ121と、ハブ121の外周面に設けられた複数のタービン翼122と、を含む。ハブ121や複数のタービン翼122は、軸線LAを中心として回転シャフト4と一体的に回転可能に設けられている。タービンロータ12は、タービンロータ12の径方向における外側から導入される排ガスをタービンロータ12の軸方向に沿って導くように構成されている。
【0022】
(タービンハウジング)
タービンハウジング13の内部には、上記エンジンから排出された排ガスをタービンロータ12に導くためのタービンスクロール流路131と、タービンロータ12を通過した排ガスをタービンハウジング13の外部に排出するための排ガス排出流路132が形成されている。タービンスクロール流路131は、タービンロータ12の外周側に設けられ、タービンロータ12の周方向に沿って延在する渦巻状の流路からなる。排ガス排出流路132は、タービンロータ12の軸方向に沿って延在している。
【0023】
上記エンジンから排出された排ガスは、タービンスクロール流路131を介してタービンロータ12に導かれ、タービンロータ12を回転駆動させる。タービンロータ12を回転駆動させた排ガスは、排ガス排出流路132を介してタービンハウジング13の外部に排出される。
【0024】
(インペラ)
インペラ2は、
図1、
図2に示されるように、略円錐台形状のハブ6と、ハブ6の周りに設けられた複数の翼(インペラ翼)7と、を含む。ハブ6の外周面61は、インペラ2の軸方向における後方側(ハブ6の背面62側)に向かうにつれて軸線LAからの距離が大きくなる凹湾曲状に形成されている。複数の翼7の各々は、ハブ6の外周面61から立設し、軸線LA周りの周方向において他の翼7との間に間隔を開けて配置されている。
【0025】
図2に示されるように、ハブ6の複数の翼7の各々は、インペラ2に導かれる空気の流れ方向における最も上流側に位置する前縁LEと、最も下流側に位置する後縁TEと、ハブ側端71と、チップ側端72と、を含む。複数の翼7の各々は、前縁LEと後縁TEとの間において、ハブ側端71とチップ側端72との間をスパン方向に沿って延在している。
【0026】
ハブ側端71は、翼7のスパン方向における一方側の端であり、ハブ6の外周面61に接続される端である。チップ側端72は、翼7のスパン方向における他方側の端であり、ハブ側端71とは反対側に位置する端である。本明細書において、スパン方向とは、各無次元子午面長位置におけるハブ側端71とチップ側端72を結ぶ方向である。
【0027】
ハブ6は、回転シャフト4の一端側に固定されているため、ハブ6や複数のインペラ翼7は、インペラ2の軸線LAを中心として回転シャフト4と一体的に回転可能に設けられている。インペラ2は、インペラ2の軸方向に沿って導入される空気をインペラ2の径方向における外側に導くように構成されている。
【0028】
図2に示されるように、複数の翼7の各々のチップ側端72は、シュラウド面31との間に形成されるクリアランスCLを挟んで、シュラウド面31と対向している。すなわち、インペラ2は、チップ側端72を覆う環状部材を含まないオープンタイプのインペラからなる。
【0029】
(ハウジング)
ハウジング3は、
図2に示されるように、上述したシュラウド面31と、流体導入流路32と、ディフューザ流路33と、スクロール流路34と、を有する。換言すると、ハウジング3の内部には、シュラウド面31と、流体導入流路32と、ディフューザ流路33と、スクロール流路34が形成されている。
【0030】
シュラウド面31は、インペラ2の軸方向における前方側から後方側に向かうにつれて軸線LAからの距離が大きくなる凸湾曲状に形成されている。
【0031】
流体導入流路32は、ハウジング3の外部から空気を取り込み、取り込んだ空気(流体)をインペラ2に導くための流路である。流体導入流路32は、インペラ2よりもインペラ2の軸方向における前方側に設けられ、インペラ2の軸方向に沿って延在している。インペラ2を回転駆動させることで、流体導入流路32にハウジング3の外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気が流体導入流路32をインペラ2の軸方向における後方側に向かって流れてインペラ2に導かれる。
【0032】
ディフューザ流路33およびスクロール流路34は、インペラ2を通過してインペラ2により圧縮された圧縮空気(圧縮流体)を遠心圧縮機1の外部に導くための流路である。スクロール流路34は、インペラ2の外周側(径方向における外側)に設けられ、インペラ2の周方向に沿って延在する渦巻状の流路からなる。ディフューザ流路33は、インペラ2の径方向においてスクロール流路34とインペラ2との間に設けられ、インペラ2の径方向に沿って延在している。ディフューザ流路33は、その下流端部(外周端部)に設けられた出口331において、スクロール流路34と連通している。インペラ2により圧縮された圧縮空気は、ディフューザ流路33に流入し、ディフューザ流路33をインペラ2の径方向における外側に向かって流れてスクロール流路34に導かれる。
【0033】
(翼高さ、翼展開面積の定義)
図2に示されるような子午面にて、ハブ側端71における無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の間の任意の位置と、この任意の位置との距離が最小となるチップ側端72における無次元子午面長位置mtの前縁位置721と後縁位置722の間の位置と、を繋いだものを翼高さhと定義する。上記任意の位置における翼高さhを構成する線分をインペラ2の回転軸(軸線LA)回りに展開させたときの面積を翼展開面積Aと定義する。
【0034】
図3は、一実施形態に係るインペラ2の翼高さhを説明するためのグラフである。
図3のグラフは、横軸を翼7のハブ側端71における無次元子午面長位置mとし、縦軸を翼7の子午面における翼高さhとして、上記無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の間の翼高さhの分布が示されている。
図3~5では、無次元子午面長位置mの前縁位置711を0とし、後縁位置712を1とし、無次元子午面長位置m上における各位置を0以上1以下の値で表している。無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の中間位置(m=0.5)をMPとする。中間位置MPよりも前縁LE側(m<0.5)をインペラ前半部とし、中間位置MPよりも後縁TE側(m>0.5)をインペラ後半部とする。
【0035】
図3のグラフには、翼7の前縁LEと後縁TEを結ぶ直線(基準線)SL1が示されている。直線SL1は、翼7の翼高さhが前縁LEから後縁TEまでに亘り線形減少することを示している。
図3のグラフに示される曲線C1は、比較例に係るインペラの翼7Aの翼高さhの分布の一例を示すものである。翼7Aは、通常の比較的比速度の低いインペラ2の翼と同様に、前縁LEから後縁TEまでの間に直線SL1よりも翼高さhが大きくなる領域である第1領域AR1が形成されないようになっている。
【0036】
図3のグラフに示される曲線C2は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7B)の翼高さhの分布の一例を示すものであり、曲線C3は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7C)の翼高さhの分布の一例を示すものである。これらの翼7B、7Cは、上述した第1領域AR1を有するようになっている。
【0037】
図4は、一実施形態に係るインペラ2の翼展開面積Aを説明するためのグラフである。
図4のグラフは、横軸を翼7のハブ側端71における無次元子午面長位置mとし、縦軸を翼7の翼展開面積Aとして、上記無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の間の翼展開面積Aの分布が示されている。
図4に示される曲線C4は、比較例に係るインペラの翼7Aの翼展開面積Aの分布の一例を示すものであり、曲線C5は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7B)の翼展開面積Aの分布の一例を示すものである。
【0038】
図4に示されるように、比較例に係る翼7Aは、インペラ前半部および後半部の両方において、翼展開面積Aが比較的大きく減少しているのに対して、上述した第1領域AR1を有する翼7Bは、翼7Aに比べて、インペラ前半部における翼展開面積Aの減少が抑制されている。
【0039】
図5は、一実施形態に係るインペラ2を通過する流体の流速MVおよび流れ角FAを説明するためのグラフである。
図5のグラフは、横軸を翼7のハブ側端71における無次元子午面長位置mとし、縦軸をインペラ2を通過する流体の流速MVおよび流れ角FAとして、上記無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の間の流速MVおよび流れ角FAの分布が示されている。
【0040】
図5に示される曲線C6は、比較例に係るインペラの翼7Aでの流速MVの分布の一例を示すものであり、曲線C7は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7B)での流速MVの分布の一例を示すものである。
図5に示される曲線C8は、比較例に係るインペラの翼7Aでの流れ角FAの分布の一例を示すものであり、曲線C9は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7B)での流れ角FAの分布の一例を示すものである。
【0041】
図5に示されるように、上述した第1領域AR1を有する翼7Bは、翼7Aに比べて、インペラ前半部における翼展開面積Aの減少が抑制されることで、インペラ2を通過する流体の流路面積が縮小するため、インペラ前半部における流体の増速が抑制される。これにより、インペラ2を通過する流体の流れが転向され易くなる。すなわち、翼7Bは、翼7Aに比べて、インペラ前半部における流れ角FAを増加させることができ、インペラ2を通過する流体の転向量を増加させることができる。この結果、翼7Bは、翼7Aに比べて、インペラ前半部における翼の負荷が増大する。
【0042】
(翼高さの分布)
幾つかの実施形態に係るインペラ2の複数の翼7(7B、7C)の各々は、
図3に示されるようなグラフにおいて、上述した直線SL1よりも翼高さhが大きくなる領域AR1を有するように構成されている。
【0043】
上記の構成によれば、複数の翼7の各々は、グラフ上の直線SL1よりも翼高さhが大きい第1領域AR1において、翼高さhの縮小が抑制され、且つ流路面積の減少が抑制される。流路面積の減少が抑制された第1領域AR1では、インペラ2を通過する流体の流れの転向が促進され、インペラ2の翼7に係る負荷が増大する。第1領域AR1において翼7に係る負荷を大きなものとし、上記流体の流れの転向を促進させることで、第1領域AR1よりも下流側における上記流体の流れの転向が緩やかでも良くなるため、第1領域AR1よりも下流側における翼7に係る負荷を小さくできる。第1領域AR1よりも下流側における翼7に係る負荷を小さくすることで、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部(中間位置MPよりも後縁TE側)の漏れ流れを抑制できる。
【0044】
幾つかの実施形態では、上述した翼7(7B、7C)は、
図3に示されるようなグラフにおいて、ハブ側端71における前記無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の中間位置MPよりも前縁位置711側に直線SL1よりも翼高さhが大きくなる領域AR1(第1領域)が形成されるように構成されている。図示される実施形態では、上述した第1領域AR1は、前縁位置711から中間位置MPまでに亘り形成されている。
【0045】
上記の構成によれば、複数の翼7(7B、7C)の各々は、グラフ上の直線SL1よりも翼高さhが大きい領域AR1(第1領域)をインペラ前半部に設け、インペラ前半部における翼7に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼7に係る負荷を小さくできる。これにより、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0046】
幾つかの実施形態では、上述した翼7(7C)は、
図3に示されるようなグラフにおいて、ハブ側端71における前記無次元子午面長位置mの前縁位置711から後縁位置712までに亘って、翼高さhが直線SL1と同じ、又は直線SL1よりも大きくなるように構成されている。
【0047】
上記の構成によれば、グラフ上の直線SL1よりも翼高さhが大きい領域(第1領域AR1)をインペラ前半部に設け、インペラ前半部における翼7に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼7に係る負荷を小さくできる。また、上記の構成によれば、前縁位置711から後縁位置712までに亘って、グラフ上の直線SL1よりも翼高さhが小さい領域(第2領域AR2)を形成しないことで、インペラ2を通過する流体の漏れ流れを抑制できる。
【0048】
なお、上述した翼7(7B)は、
図3に示されるようなグラフにおいて、直線SL1よりも翼高さhが小さい領域(第2領域AR2)が形成されるように構成されていてもよい。図示される実施形態では、上述した第2領域AR2は、インペラ後半部に形成されている。この場合には、第2領域AR2にて翼高さhや翼展開面積Aの減少が促進され、第2領域AR2よりも下流側における翼7に係る負荷が小さくなるため、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0049】
(翼展開面積の分布)
幾つかの実施形態に係るインペラ2の複数の翼7(7B)の各々は、
図4に示されるように、ハブ側端71における無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の中間位置MPにおける翼展開面積AをA
Mと定義し、ハブ側端71の前縁位置711における翼展開面積AをA
LEと定義した場合において、
A
M≧0.95×A
LEの条件を満たすように構成されている。
【0050】
上記の構成によれば、複数の翼7の各々は、インペラ前半部における翼展開面積Aの減少を抑制し、インペラ前半部における翼7に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼7に係る負荷を小さなものとすることができる。これにより、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0051】
図4に示される曲線C10は、一実施形態に係るインペラ2の翼7(7C)の翼展開面積Aの分布の一例を示すものである。幾つかの実施形態に係るインペラ2の複数の翼7(7C)の各々は、
図4に示されるように、ハブ側端71における前記無次元子午面長位置mの前縁位置711と後縁位置712の間の任意の位置における翼展開面積AをA
Fと定義した場合において、
A
F>A
LEの条件を満たす領域(第3領域AR3)を有するように構成されている。
【0052】
図示される実施形態では、上述した第3領域AR3は、インペラ前半部やインペラ後半部に形成されている。翼7(7B、7C)は、前縁位置711から中間位置MPまでに亘って、AF≧0.95×ALEの条件を満たすように構成されている。
【0053】
上記の構成によれば、複数の翼7の各々は、前縁位置711よりも翼展開面積Aが大きい領域(第3領域AR3)において、インペラ2を通過する流体の流れの転向が促進され、インペラ2の翼7に係る負荷が増大する。これにより、第3領域AR3よりも下流側における上記流体の流れの転向が緩やかでも良くなるため、第3領域AR3よりも下流側における翼7に係る負荷を小さくできる。第3領域AR3よりも下流側における翼7に係る負荷を小さいものとすることで、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0054】
(ハブの直径)
図6は、一実施形態に係るインペラ2の子午面形状を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、上述したハブ6は、
図6に示されるように、ハブ6の翼7の前縁位置711における直径をD
LEと定義し、ハブ6の翼7の後縁位置712における直径をD
TEと定義した場合において、
D
LE≧0.25×D
TEの条件を満たすように構成された。
【0055】
図6では、前縁位置711を0とするインペラ2の軸方向位置Zを横軸とし、直径Dを縦軸とするグラフが示されている。
図6では、本実施形態に係るインペラ2の子午面形状を実線で示し、比較例に係るインペラの子午面形状を一点鎖線で示している。
図6に示されるように、インペラ2の直径D
LEは、比較例に係るインペラよりも大きくなっている。
【0056】
図7は、一実施形態に係るインペラ2を通過する流体のマッハ数を説明するための説明図である。
図7では、インペラ2を通過する流体のマッハ数MNを横軸とし、スパン方向を縦軸とするグラフが示されている。本実施形態に係るインペラ2のマッハ数MNの分布を実線で示し、比較例に係るインペラのマッハ数MNの分布を一点鎖線で示している。
図7に示されるように、本実施形態に係るインペラ2は、比較例に係るインペラに比べて、スパン方向におけるハブ側端71からシュラウド面31までに亘り、全体的にマッハ数MNが増大している。
【0057】
図8は、一実施形態に係るインペラ2のハブ6の翼7の前縁位置711における直径D
LEと遠心圧縮機1の効率CEとの関係を示す図である。
図8では、遠心圧縮機1の効率CEが良好となるように直径D
LEの最適化結果が示されている。
図8に示されるように、ハブ6は、0.25×D
TE≦D
LE≦0.33×D
TEの条件を満たすことが好ましく、0.27×D
TE≦D
LE≦0.31×D
TEの条件を満たすことがさらに好ましい。
【0058】
上記の構成によれば、上記条件を満たすインペラ2は、上記条件を満たさない場合に比べて、翼7の周速を増大させることができる。翼7の周速を増大させ、インペラ前半部における翼7に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼7に係る負荷低減を補うことができる。具体的には、翼7の周速を増大させることで、インペラ2を通過する流体のマッハ数MNが増加し、翼角、流れ角および入口翼高さ(翼高さhLE)のマッチングが向上するため、より効率的にインペラ2を通過する流体の流れを転向させることができる。
【0059】
(前縁の翼高さ)
幾つかの実施形態では、上述したインペラ2は、
図6に示されるように、翼7の前縁LEにおける翼高さhをh
LEと定義し、ハブ6の翼7の後縁位置712における直径をD
TEと定義した場合において、
h
LE≦0.12×D
TEの条件を満たすように構成されている。
【0060】
図9は、一実施形態に係るインペラ2の入口翼高さ(翼高さh
LE)と遠心圧縮機1の効率CEとの関係を示す図である。
図9では、遠心圧縮機1の効率CEが良好となるように翼高さh
LEの最適化結果が示されている。
図9に示されるように、インペラ2は、0.08×D
TE≦h
LE≦0.12×D
TEの条件を満たすことが好ましく、0.10×D
TE≦h
LE≦0.11×D
TEの条件を満たすことがさらに好ましい。
【0061】
上記条件を満たすインペラ2は、比較的比速度が低いインペラ2であり、このようなインペラ2においても、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0062】
(前縁のスイープ形状)
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した翼7の前縁LEは、前縁LEのチップ側端72が前縁LEのハブ側端71よりもインペラ2を通過する気体の流れ方向の上流側に位置するように傾斜している。すなわち、前縁LEのチップ側端72は、インペラ2の軸方向において前縁LEのハブ側端71よりも背面62から離れた位置に設けられている。
【0063】
上記の構成によれば、翼7の前縁LEに上述した傾斜を設けることで、インペラ2を通過する流体の圧縮時に翼7の前縁LEに生じる衝撃波の強度を低減できるため、翼7の前縁LEに上述した傾斜を設けない場合に比べて、遠心圧縮機1の圧力比や効率の向上が図れる。
【0064】
幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1は、
図1、
図2に示されるように、上述したインペラ2と、インペラ2を収容するように構成された上述したハウジング3と、を備える。上記の構成によれば、インペラ2を備える遠心圧縮機1は、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部(中間位置MPよりも後縁TE側)の漏れ流れを効果的に抑制できるため、遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、
図2に示されるように、上述した遠心圧縮機1のハウジング3は、翼7にクリアランスCLを介して対向する上述したシュラウド面31を有する。遠心圧縮機1は、翼7の後縁TEとシュラウド面31との間のクリアランス(最短距離)CLをCL
TEと定義し、翼7の後縁TEにおける翼高さhをh
TEと定義した場合において、クリアランス比CL
TE/h
TEが、0.15<CL
TE/h
TE<0.30の条件を満たすように構成されている。
【0066】
インペラ2の比速度が低くなるにつれて、インペラ2の外径(出口径DTE)が拡大し、これに伴い翼高さh(hTE)が小さくなるが、インペラ2(回転系)とハウジング3(静止系)との間のクリアランスCL(CLTE)は、翼高さhのように小さくはならない。このため、比速度が低いインペラ2を備える遠心圧縮機1は、比速度が高いインペラ2を備える遠心圧縮機1に比べて、クリアランス比CLTE/hTEが相対的に大きくなる。上記の構成によれば、上述したインペラ2を備える遠心圧縮機1は、クリアランス比CLTE/hTEが上記条件を満たす場合において、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを効果的に抑制できる。
【0067】
(小型インペラ)
幾つかの実施形態では、上述したインペラ2のハブ6は、
図6に示されるように、ハブ6の前記翼7の後縁位置712における直径をD
TEと定義した場合において、
D
TE≦300mm以下の条件を満たすように構成されている。
【0068】
上記直径DTEが小さい程、クリアランス比CLTE/hTEを小さくすることが困難となり、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制することが困難となる。上記の構成によれば、上記条件DTE≦300mm以下を満たす場合にも、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。なお、ハブ6は、DTE≦100mm以下の条件を満たすように構成されていることが好ましい。
【0069】
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ10は、
図1に示されるように、上述した遠心圧縮機1と、遠心圧縮機を駆動させるように構成された上述したタービン11と、を備える。上記の構成によれば、遠心圧縮機1を備えるターボチャージャ10は、インペラ2を通過する流体のインペラ後半部(中間位置MPよりも後縁TE側)の漏れ流れを効果的に抑制できるため、ターボチャージャ10の効率を向上させることができる。
【0070】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0071】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0072】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0073】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機(1)のインペラ(2)は、
ハブ(6)と、前記ハブ(6)の周りに設けられた複数の翼(7)を備える遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記複数の翼(7)の各々は、
横軸を前記翼(7)のハブ側端(71)における無次元子午面長位置(m)とし、縦軸を前記翼(7)の子午面における翼高さ(h)とするグラフにおいて、前記翼(7)の前縁(LE)と後縁(TE)を結ぶ直線(SL1)よりも前記翼高さ(h)が大きくなる領域(AR1)を有するように構成された。
【0074】
上記1)の構成によれば、複数の翼(7)の各々は、グラフ上の直線(SL1)よりも翼高さ(h)が大きい領域(第1領域AR1)において、翼高さ(h)の縮小が抑制され、且つ流路面積の減少が抑制される。流路面積の減少が抑制された第1領域(AR1)では、インペラ(2)を通過する流体の流れの転向が促進され、インペラ(2)の翼(7)に係る負荷が増大する。第1領域(AR1)において翼(7)に係る負荷を大きなものとし、上記流体の流れの転向を促進させることで、第1領域(AR1)よりも下流側における上記流体の流れの転向が緩やかでも良くなるため、第1領域(AR1)よりも下流側における翼に係る負荷を小さくできる。第1領域(AR1)よりも下流側における翼(7)に係る負荷を小さくすることで、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0075】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記翼(7)は、前記グラフにおいて、前記ハブ側端(71)における前記無次元子午面長位置(m)の前縁位置(711)と後縁位置(712)の中間位置(MP)よりも前記前縁位置(711)側に前記直線(SL1)よりも前記翼高さ(h)が大きくなる領域(AR1、第1領域)が形成されるように構成された。
【0076】
上記2)の構成によれば、複数の翼(7)の各々は、グラフ上の直線(SL1)よりも翼高さ(h)が大きな領域(AR1、第1領域)をインペラ前半部(中間位置MPよりも前縁LE側)に設け、インペラ前半部における翼(7)に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼(7)に係る負荷を小さくできる。これにより、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0077】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記翼(7)は、前記グラフにおいて、前記ハブ側端(71)における前記無次元子午面長位置(m)の前縁位置(711)から後縁位置(712)までに亘って、前記翼高さ(h)が前記直線(SL1)と同じ、又は前記直線(SL1)よりも大きくなるように構成された。
【0078】
上記3)の構成によれば、グラフ上の直線(SL1)よりも翼高さ(h)が大きい領域(第1領域AR1)をインペラ前半部に設け、インペラ前半部における翼(7)に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼(7)に係る負荷を小さくできる。また、上記3)の構成によれば、上記前縁位置(711)から上記後縁位置(712)までに亘って、グラフ上の直線(SL1)よりも翼高さ(h)が小さい領域(第2領域AR2)を形成しないことで、インペラ(2)を通過する流体の漏れ流れを抑制できる。
【0079】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)までの何れかに記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記翼(7)は、
前記翼高さ(h)を構成する線分を前記インペラの回転軸(LA)回りに展開させたときの面積を翼展開面積(A)と定義し、前記ハブ側端(71)における前記無次元子午面長位置(m)の前縁位置(711)と後縁位置(712)の中間位置(MP)における前記翼展開面積をAMと定義し、前記ハブ側端(71)の前記前縁位置(711)における前記翼展開面積をALEと定義した場合において、
AM≧0.95×ALEの条件を満たすように構成された。
【0080】
上記4)の構成によれば、複数の翼(7)の各々は、インペラ前半部における翼展開面積(A)の減少を抑制し、インペラ前半部における翼(7)に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼(7)に係る負荷を小さなものとすることができる。これにより、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0081】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記翼(7)は、
前記ハブ側端(71)における前記無次元子午面長位置(m)の前記前縁位置(711)と前記後縁位置(712)の間の任意の位置における前記翼展開面積をAFと定義した場合において、
AF>ALEの条件を満たす領域を有するように構成された。
【0082】
上記5)の構成によれば、複数の翼(7)の各々は、前縁位置よりも翼展開面積(A)が大きい領域(第3領域AR3)において、インペラ(2)を通過する流体の流れの転向が促進され、インペラ(2)の翼(7)に係る負荷が増大する。これにより、第3領域(AR3)よりも下流側における上記流体の流れの転向が緩やかでも良くなるため、第3領域(AR3)よりも下流側における翼(7)に係る負荷を小さくできる。第3領域(AR3)よりも下流側における翼(7)に係る負荷を小さいものとすることで、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0083】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)までの何れかに記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記ハブ(6)は、
前記ハブ(6)の前記翼(7)の前縁位置(711)における直径をDLEと定義し、前記ハブ(6)の前記翼(7)の後縁位置(712)における直径をDTEと定義した場合において、
DLE≧0.25×DTEの条件を満たすように構成された。
【0084】
上記6)の構成によれば、上記条件を満たすインペラ(2)は、上記条件を満たさない場合に比べて、翼(7)の周速を増大させることができる。翼(7)の周速を増大させ、インペラ前半部における翼(7)に係る負荷を大きくすることで、インペラ後半部における翼に係る負荷低減を補うことができる。
【0085】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記インペラ(2)は、
前記翼(7)の前縁(LE)における翼高さ(h)をhLEと定義し、前記ハブ(6)の前記翼(7)の後縁位置(712)における直径をDTEと定義した場合において、
hLE≦0.12×DTEの条件を満たすように構成された。
【0086】
上記7)の構成によれば、上記条件を満たす比速度が低いインペラ(2)においても、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0087】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)までの何れかに記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記翼(7)の前記前縁(LE)は、前記前縁(LE)のチップ側端(72)が前記前縁(LE)の前記ハブ側端(71)よりも前記インペラ(2)を通過する気体の流れ方向の上流側に位置するように傾斜している。
【0088】
上記8)の構成によれば、翼(7)の前縁(LE)に上述した傾斜を設けることで、インペラ(2)を通過する流体の圧縮時に翼(7)の前縁(LE)に生じる衝撃波の強度を低減できるため、翼(7)の前縁(LE)に上述した傾斜を設けない場合に比べて、遠心圧縮機(1)の圧力比や効率の向上が図れる。
【0089】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から8)までの何れかに記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)であって、
前記ハブ(6)は、
前記ハブ(6)の前記翼(7)の後縁位置(712)における直径をDTEと定義した場合において、
DTE≦300mm以下の条件を満たすように構成された。
【0090】
上記直径DTEが小さい程、クリアランス比(CLTE/hTE)を小さくすることが困難となり、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制することが困難となる。上記9)の構成によれば、上記条件(DTE≦300mm以下)を満たす場合にも、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを抑制できる。
【0091】
10)本開示の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機(1)は、
上記1)から9)までの何れかに記載の遠心圧縮機(1)のインペラ(2)と、
前記インペラ(2)を収容するように構成されたハウジング(3)と、を備える。
【0092】
上記10)の構成によれば、上述したインペラ(2)を備える遠心圧縮機(1)は、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを効果的に抑制できるため、遠心圧縮機(1)の効率を向上させることができる。
【0093】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載の遠心圧縮機(1)であって、
前記ハウジング(3)は、前記翼(7)にクリアランス(CL)を介して対向するシュラウド面(31)を有し、
前記遠心圧縮機(1)は、
前記翼(7)の後縁(TE)と前記シュラウド面(31)との間の前記クリアランス(CL)をCLTEと定義し、前記翼(7)の前記後縁(TE)における翼高さをhTEと定義した場合において、
クリアランス比CLTE/hTEが、0.15<CLTE/hTE<0.30の条件を満たすように構成された。
【0094】
インペラ(2)の比速度が低くなるにつれて、インペラ(2)の外径(出口径)が拡大し、これに伴い翼高さ(h)が小さくなるが、インペラ(2、回転系)とハウジング(3、静止系)との間のクリアランス(CL)は、翼高さ(h)のように小さくはならない。このため、比速度が低いインペラ(2)を備える遠心圧縮機(1)は、比速度が高いインペラ(2)を備える遠心圧縮機(1)に比べて、クリアランス比(CLTE/hTE)が相対的に大きくなる。上記11)の構成によれば、上述したインペラ(2)を備える遠心圧縮機(1)は、クリアランス比(CLTE/hTE)が上記条件を満たす場合において、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを効果的に抑制できる。
【0095】
12)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ(10)は、
上記10)又は11)に記載の遠心圧縮機(1)と、
前記遠心圧縮機を駆動させるように構成されたタービン(11)と、を備える。
【0096】
上記12)の構成によれば、上述した遠心圧縮機(1)を備えるターボチャージャ(10)は、インペラ(2)を通過する流体のインペラ後半部の漏れ流れを効果的に抑制できるため、ターボチャージャ(10)の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 遠心圧縮機
2 インペラ
3 ハウジング
4 回転シャフト
5 軸受
6 ハブ
7 翼
10 ターボチャージャ
11 タービン
12 タービンロータ
13 タービンハウジング
14 軸受ハウジング
31 シュラウド面
32 流体導入流路
33 ディフューザ流路
34 スクロール流路
61 外周面
62 背面
71 ハブ側端
72 チップ側端
121 ハブ
122 タービン翼
131 スクロール流路
132 排ガス排出流路
331 出口
711,721 前縁位置
712,722 後縁位置
LE 前縁
TE 後縁
A 翼展開面積
AR1 第1領域
AR2 第2領域
AR3 第3領域
C1~C10 曲線
CE 効率
CL クリアランス
D 直径
FA 流れ角
LA 軸線
LE 前縁
MN マッハ数
MP 中間位置
MV 流速
SL1 直線
TE 後縁
Z 軸方向位置
h 翼高さ
m 無次元子午面長位置