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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021134
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】液体噴射装置、及び、充填方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240208BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240208BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240208BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240208BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B41J2/165 205
B41J2/165 505
B41J2/17 101
B41J2/14
B41J2/18
B41J2/19
B41J2/14 305
B41J2/14 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123747
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 英徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 寛之
(72)【発明者】
【氏名】勝家 隼
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EC18
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB25
2C057AF80
2C057AG14
2C057AG33
2C057AG77
(57)【要約】
【課題】フィルターを有する共通液室に対して充填処理を実行する場合に、下流室に気泡が残留することを低減すること。
【解決手段】液体噴射装置は、複数のノズルと、複数のノズルに連通する共通液室と、共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、上流室に液体を導入するための導入口と、上流室から液体を導出するための導出口と、液体貯留部と、導入口と液体貯留部とを連通させる供給流路と、導出口と液体貯留部とを連通させる回収流路とを備え、下流室内には下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、供給流路を加圧することで複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、液体貯留部、供給流路、共通液室、回収流路を含む循環経路を、液体貯留部、供給流路、共通液室、回収流路、液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作とを実行可能であり、循環経路に液体を充填する充填処理は、加圧排出動作後に循環動作を実行する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、
前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、
前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、
前記上流室に液体を導入するための導入口と、
前記上流室から液体を導出するための導出口と、
液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、
前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、
を備え、
前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、
前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、
前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、
前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、
前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記回収流路を開放及び閉塞可能な開閉弁を更に備え、
前記加圧排出動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を閉塞した状態で実行され、
前記循環動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を開放した状態で実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記加圧排出動作は、前記供給流路及び前記回収流路を加圧することで、前記供給流路、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第1の流れと、前記回収流路の一部又は全部、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第2の流れと、を発生させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記下流室の一部を画定するとともに前記フィルターを支持する流路形成部材を備え、
前記梁部は、前記流路形成部材の一部であり、
前記フィルターの一部は、前記梁部に支持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記フィルターと前記梁部とは、前記噴射方向において隙間を空けて配置され、
前記隙間の前記噴射方向における寸法は、前記梁部と前記下流室の底面との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向及び前記第1方向の双方に直交する第2方向における寸法よりも短い、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向における寸法、及び、前記梁部の前記第1方向における寸法の夫々よりも短い、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記梁部は、前記噴射方向に見て、前記導入口と前記導出口との間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、
前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、
前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、
前記上流室に液体を導入するための導入口と、
前記上流室から液体を導出するための導出口と、
液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、
前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、
を備える液体噴射装置の充填方法であって、
前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、
前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、
前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、
前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、
前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する、
ことを特徴とする充填方法。
【請求項10】
前記回収流路を開放及び閉塞可能な開閉弁を更に備え、
前記加圧排出動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を閉塞した状態で実行され、
前記循環動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を開放した状態で実行される、
ことを特徴とする請求項9に記載の充填方法。
【請求項11】
前記加圧排出動作は、前記供給流路及び前記回収流路を加圧することで、前記供給流路、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第1の流れと、前記回収流路の一部又は全部、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第2の流れと、を発生させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の充填方法。
【請求項12】
前記下流室の一部を画定するとともに前記フィルターを支持する流路形成部材を備え、
前記梁部は、前記流路形成部材の一部であり、
前記フィルターの一部は、前記梁部に支持される、
ことを特徴とする請求項9に記載の充填方法。
【請求項13】
前記フィルターと前記梁部とは、前記噴射方向において隙間を空けて配置され、
前記隙間の前記噴射方向における寸法は、前記梁部と前記下流室の底面との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項9に記載の充填方法。
【請求項14】
前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向及び前記第1方向の双方に直交する第2方向における寸法よりも短い、
ことを特徴とする請求項13に記載の充填方法。
【請求項15】
前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向における寸法、及び、前記梁部の前記第1方向における寸法の夫々よりも短い、
ことを特徴とする請求項13に記載の充填方法。
【請求項16】
前記梁部は、前記噴射方向に見て、前記導入口と前記導出口との間に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、及び、充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク等の液体を複数のノズルから噴射する液体噴射装置が知られている。例えば、特許文献1には、液体を貯留可能な液体貯留部と、複数のノズルに連通する共通液室と、液体貯留部から共通液室に液体を供給するための供給流路と、共通液室から液体貯留部に液体を回収するための回収流路と、を備える液体噴射装置が開示されている。特許文献1に開示の液体噴射装置の共通液室は、フィルターによって上流室と下流室とに区画される。上流室には、回収流路に連通し、液体を上流室に導入するための導入口と、回収流路に連通し、液体を導出するための導出口とが設けられる。
【0003】
また、特許文献2には、液体貯留部と、複数のノズルを有する液体噴射ヘッドと、液体貯留部から液体噴射ヘッドに液体を供給するための供給流路と、液体噴射ヘッドから液体を回収するための回収流路と、を備え、液体貯留部と液体噴射ヘッドとの間で液体を循環させる液体噴射装置が開示されている。特許文献2に開示の液体噴射装置は、回収流路を開放及び閉塞可能な開閉弁を有する。更に、特許文献2には、供給流路、回収流路、及び、液体噴射ヘッドに液体を充填する充填処理において、開閉弁によって回収流路を開放した状態で液体を循環させる循環動作を実行した後、開閉弁によって回収流路を閉塞して液体噴射ヘッドから液体を排出させる加圧排出動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-217612号公報
【特許文献2】特開2021-187003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、下流室を構成する流路部材に、共通液室内に導入口から排出口へ液体が流動する方向に交差する方向に延在する梁部を設けることが考えられる。特許文献1に記載の液体噴射ヘッドが梁部を有する場合に、特許文献2に記載の充填処理を行うと、循環動作によってフィルターと梁部との間に気泡が滞留する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、前記上流室に液体を導入するための導入口と、前記上流室から液体を導出するための導出口と、液体を貯留可能な液体貯留部と、前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、を備え、前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の好適な態様に係る充填方法は、噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、前記上流室に液体を導入するための導入口と、前記上流室から液体を導出するための導出口と、液体を貯留可能な液体貯留部と、前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、を備える液体噴射装置の充填方法であって、前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態にかかる液体噴射装置100を例示する模式図。
図2】循環機構15及び開閉弁16を説明するための図。
図3】第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50及び支持体41の斜視図。
図4】第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50の分解斜視図。
図5】ヘッドチップ54の分解斜視図。
図6図5中のA-A線断面図。
図7図5中のB-B線断面図。
図8】循環経路KJにインクが充填されていない状態で循環動作を実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図。
図9】循環動作後に加圧排出動作を実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図。
図10】本実施形態の充填処理を示すフローチャート。
図11】ステップS2における共通液室R内のインクの流れを示す図。
図12】ステップS6における共通液室R内のインクの流れを示す図。
図13】第1変形例に係る液体噴射装置100-Aにおける加圧排出動作実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図。
図14】第2変形例に係る液体噴射装置100-Bにおける加圧排出動作後に行われる循環動作の実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図。
図15】第3変形例に係る液体噴射装置100-Cにおける加圧排出動作後に行われる循環動作の実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図。
図16図15中のC-C線断面図。
図17】第4変形例におけるヘッドチップ54-Dを説明するための図。
図18】第4変形例におけるヘッドチップ54-Dを説明するための図。
図19】第5変形例における液体噴射装置100-Eの流路を説明するための図。
図20】第6変形例に係る液体噴射装置100-Fの流路を説明するための図。
図21】第7変形例に係る液体噴射装置100-Gを説明するための図。
図22】第8変形例に係る液体噴射装置100-Hを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向及びY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向及びZ2方向である。また、Z軸方向にみることを単に「平面視」という場合がある。なお、Z2方向は、「噴射方向」の一例である。Y1方向又はY2方向は、「第1方向」の一例である。X1方向又はX2方向は、「第3方向」の一例である。
【0011】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、第1実施形態では、Z2方向が重力方向GVに一致する。また、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。
【0012】
1-1.液体噴射装置の概略構成
図1は、第1実施形態にかかる液体噴射装置100を例示する模式図である。液体噴射装置100は、「液体」の一例であるインクを液滴として媒体PPに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。例えば、液体噴射装置100は、略箱状であり、重力方向GVに直交する載置面に載置される。媒体PPは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体PPは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルム又は布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0013】
図1に示すように、液体噴射装置100は、メインタンク10と、ポンプ12と、循環機構15と、開閉弁16と、制御モジュール20と、搬送機構30と、移動機構40と、液体噴射ヘッド50とを有する。
【0014】
メインタンク10は、インクを貯留する容器である。メインタンク10の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンク等の容器が挙げられる。
【0015】
図示しないが、メインタンク10は、互いに種類の異なるインクを貯留する複数の容器を有する。当該複数の容器に貯留されるインクとしては、特に限定されないが、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、クリアインク、ホワイトインク及び処理液等が挙げられ、これらのうちの2種以上の組み合わせが用いられる。なお、インクの組成は、特に限定されず、例えば、染料又は顔料等の色材を水系溶媒に溶解させた水系インクでもよいし、色材を有機溶剤に溶解させた溶剤系インクでもよいし、紫外線硬化型インクでもよい。
【0016】
本実施形態では、互いに異なる4種類のインクが用いられる構成が例示される。当該4種類のインクは、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクのような互いに色の異なるインクである。
【0017】
制御モジュール20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。例えば、制御モジュール20は、CPU又はFPGA等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含む。CPUは、Central Processing Unitの略である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略である。制御モジュール20は、駆動信号Com及び制御信号SIを液体噴射ヘッド50に向けて出力する。駆動信号Comは、液体噴射ヘッド50の駆動素子を駆動する駆動パルスを含む信号である。制御信号SIは、当該駆動素子に駆動信号Comを供給するか否かを指定する信号である。
【0018】
搬送機構30は、制御モジュール20による制御のもとで、媒体PPをY1方向である搬送方向DMに搬送する。移動機構40は、制御モジュール20による制御のもとで、液体噴射ヘッド50をX1方向とX2方向とに往復させる。図1に示す例では、移動機構40は、液体噴射ヘッド50を収容するキャリッジと称される略箱型の支持体41と、支持体41が固定される搬送ベルト42と、を有する。なお、支持体41には、液体噴射ヘッド50のほかに、前述のメインタンク10が搭載されてもよい。
【0019】
液体噴射ヘッド50は、後述するように複数のヘッドチップ54を有しており、制御モジュール20による制御のもとで、メインタンク10から供給されるインクを各ヘッドチップ54の複数のノズルNの夫々から媒体PPに向けて噴射方向であるZ2方向に噴射する。液体噴射装置100は、この噴射が搬送機構30による媒体PPの搬送と移動機構40による液体噴射ヘッド50の往復移動とに並行して行うことにより、媒体PPの表面にインクによる所定の画像が形成される印刷動作を実行する。
【0020】
液体噴射ヘッド50には、循環機構15を介してメインタンク10が接続される。循環機構15は、制御モジュール20による制御のもとで、複数の液体噴射ヘッド50の夫々にインクを供給するとともに、複数の液体噴射ヘッド50の夫々から排出されるインクを液体噴射ヘッド50への再供給のために回収する機構である。循環機構15及び開閉弁16は、互いに種類の異なるインクごとに設けられる。循環機構15及び開閉弁16について、図2に基づいて説明する。
【0021】
1-2.循環機構15及び開閉弁16
図2は、循環機構15及び開閉弁16を説明するための図である。図2に示すように、循環機構15は、サブタンク151と、ポンプ159とを有する。図2では、複数種類のインクのうち、任意の1種類のインクについて説明する。図2では、図面の煩雑化を防ぐため、複数のヘッドチップ54のうち、1種類のインクが供給される2個のヘッドチップ54のみ表示してある。更に、図2では、図面の煩雑化を防ぐため、2個のヘッドチップ54のうち1個のヘッドチップ54のみ内部を示してある。
【0022】
サブタンク151は、供給流路SF1及び回収流路CF1に接続されており、複数の液体噴射ヘッド50に供給するためのインクを貯留する。サブタンク151には、液体噴射ヘッド50に供給するためのインクと、液体噴射ヘッド50から回収したインクと、メインタンク10から補充されたインクとが貯留される。なお、サブタンク151が、「液体貯留部」の一例である。
【0023】
供給流路SF1は、ヘッドチップ54へのインクを導入するための導入口Pinとサブタンク151とを連通させる。供給流路SF1は、装置内供給流路SJ1と、ヘッド内供給流路SH1とを有する。装置内供給流路SJ1は、液体噴射ヘッド50の外部に設けられた流路であり、サブタンク151に接続されるとともに液体噴射ヘッド50にインクを導入するためのヘッド導入口Qinに連通する。ヘッド内供給流路SH1は、液体噴射ヘッド50内に設けられた流路であり、複数のヘッドチップ54の夫々にインクを供給する。ヘッド内供給流路SH1は、装置内供給流路SJ1に接続された本流部分と、当該本流部分から当該複数のヘッドチップ54ごとに分岐する複数の支流部分とを有する。本実施形態では、メインタンク10が4種類のインクごとに設けられ、図2に示すように、1種類のインクが2個のヘッドチップ54に供給される例を用いて説明する。更に、1個のヘッドチップ54には、2種類のインクが供給可能であることを前提とする。但し、液体噴射ヘッド50は、任意の1種類のインクを3個以上のヘッドチップ54に供給してもよいし、1個のヘッドチップ54に供給してもよい。
【0024】
回収流路CF1は、ヘッドチップ54からインクを導出するための導出口Poutとサブタンク151とを連通させる。回収流路CF1は、装置内回収流路CJ1と、ヘッド内回収流路CH1とを有する。装置内回収流路CJ1は、液体噴射ヘッド50の外部に設けられた流路であり、サブタンク151に接続されるとともに液体噴射ヘッド50からインクを導出するためのヘッド導出口Qoutに連通する。ヘッド内回収流路CH1は、液体噴射ヘッド50内に設けられた流路であり、複数のヘッドチップ54の夫々からインクを回収する。ヘッド内回収流路CH1は、装置内回収流路CJ1に接続された本流部分と、当該本流部分と当該複数のヘッドチップ54の夫々とを接続するための複数の支流部分とを有する。
【0025】
開閉弁16は、装置内回収流路CJ1の途中に設けられる。開閉弁16は、制御モジュール20の制御のもとで、装置内回収流路CJ1を閉塞及び開放可能である。以下の記載では、開閉弁16が装置内回収流路CJ1を閉塞することを、「開閉弁16を閉じる」と記載することがあり、開閉弁16が装置内回収流路CJ1を開放することを、「開閉弁16を開く」と記載することがある。なお、制御モジュール20以外の装置が、開閉弁16を制御してもよい。開閉弁16は、制御モジュール20等の装置から制御可能な弁であればどのようなものでよく、例えば、ダイアフラム弁、電磁弁、及び、電動弁等である。
【0026】
なお、本実施形態では、開閉弁16は、装置内回収流路CJ1の途中に設けられているが、ヘッド内回収流路CH1の当該本流部分の途中に開閉弁16が設けられるようにしてもよいし、ヘッド内回収流路CH1の当該複数の支流部分の夫々の途中に複数の開閉弁16が設けられるようにしてもよい。
【0027】
ポンプ159は、装置内供給流路SJ1の途中に設けられる。ポンプ159は、制御モジュール20の制御のもと、サブタンク151の第1インクを液体噴射ヘッド50に流動させる。
【0028】
ヘッドチップ54には、複数のノズルNに連通する共通液室Rが設けられる。共通液室Rは、フィルター54oによって上流室URと下流室DRとに区画される。図2に示すように、導入口Pin及び導出口Poutは、上流室URに設けられる。複数のノズルNは、下流室DRに連通する。ヘッドチップ54の内部の要素については、図5図6、及び、図7を用いて後述する。
【0029】
以上により、液体噴射装置100は、サブタンク151、供給流路SF1、共通液室R、及び、回収流路CF1を有する循環経路KJを有する。液体噴射装置100は、制御モジュール20の指示のもと、循環経路KJを、サブタンク151、供給流路SF1、共通液室R、回収流路CF1、サブタンク151の順にインクを循環させる循環動作を実行可能である。
【0030】
また、ノズルNからインクが噴射されると、サブタンク151のインクの量が減少する。このため、適宜、ポンプ12は、制御モジュール20の制御のもとで、メインタンク10からサブタンク151にインクを供給することにより、サブタンク151のインクを補充する。サブタンク151のインクを補充するタイミングは、例えば、サブタンク151のインクの高さが所定の高さよりも下がったときに補充を行う。
【0031】
1-3.液体噴射ヘッド50の取付状態
図3は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50及び支持体41の斜視図である。図3に示すように、液体噴射ヘッド50は、支持体41に支持される。支持体41は、液体噴射ヘッド50を支持する部材であり、前述のように、本実施形態では、略箱状のキャリッジである。
【0032】
ここで、支持体41には、開口41a及び複数のネジ孔41bが設けられる。本実施形態では、支持体41が板状の底部を有する略箱状をなしており、例えば、当該底部に開口41a及び複数のネジ孔41bが設けられる。液体噴射ヘッド50は、開口41aに挿入された状態で、複数のネジ孔41bを用いたネジ止めにより支持体41に固定される。以上のように、液体噴射ヘッド50は、支持体41に対して取り付けられる。
【0033】
図3に示す例では、支持体41に取り付けられる液体噴射ヘッド50の数が1個である。なお、支持体41に取り付けられる液体噴射ヘッド50の数は、2個以上でもよい。この場合、支持体41には、例えば、当該数に応じた数又は形状の開口41aが適宜に設けられる。
【0034】
1-4.液体噴射ヘッドの構成
図4は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50の分解斜視図である。図4に示すように、液体噴射ヘッド50は、流路構造体51と基板ユニット52とホルダー53と4個のヘッドチップ54_1~54_4と固定板55とカバー58とを有する。これらは、Z2方向に向かって、カバー58、基板ユニット52、流路構造体51、ホルダー53、4個のヘッドチップ54、固定板55の順に並ぶように配置される。以下、液体噴射ヘッド50の各部を順次説明する。
【0035】
流路構造体51は、前述のメインタンク10に貯留されたインクを4個のヘッドチップ54に供給するための流路が内部に設けられる構造体である。流路構造体51は、流路部材51aと8個の接続管51bとを有する。
【0036】
流路構造体51には、図示しないが、4種類のインクの種類ごとに設けられる4つのヘッド内供給流路SH1と、4種類のインクの種類ごとに設けられる4つのヘッド内回収流路CH1と、が設けられる。当該4つのヘッド内供給流路SH1の夫々は、装置内供給流路SJ1からインクの供給を受ける1つのヘッド導入口Qinと、インクをヘッドチップ54の導入口Pinに向けて排出する2つの排出口と、を有する。当該4つのヘッド内回収流路CH1の夫々は、ヘッドチップ54の導出口Poutからインクの供給を受ける2つの導入口と、装置内回収流路CJ1にインクを排出する1つのヘッド導出口Qoutと、を有する。複数の接続管51bの夫々は、ヘッド導入口Qin又はヘッド導出口Qoutの何れかであり、流路部材51aのZ1方向を向く面に設けられる。これに対し、各ヘッド内供給流路SH1の排出口及び各ヘッド内回収流路CH1の導入口の夫々は、流路部材51aのZ2方向を向く面に設けられる。
【0037】
また、流路部材51aには、複数の配線孔51cが設けられる。当該複数の配線孔51cの夫々は、ヘッドチップ54の後述の配線基板54iが基板ユニット52に向けて通される孔である。なお、流路部材51aの側面には、周方向での2箇所に切り欠いた部分が設けられる。また、流路部材51aには、図示しない孔が設けられており、ホルダー53に対して当該孔を用いたネジ止めにより固定される。
【0038】
流路部材51aは、図示しないが、複数の基板をZ軸に沿う方向に積層した積層体で構成される。当該複数の基板の夫々には、前述のヘッド内供給流路SH1及びヘッド内回収流路CH1を形成するための溝及び孔が適宜に設けられ、例えば、接着剤、溶接又はネジ止め等により互いに接合される。
【0039】
8個の接続管51bの夫々は、流路部材51aのZ1方向を向く面から突出する管体である。8個の接続管51bは、前述の4つのヘッド内供給流路SH1と4つのヘッド内回収流路CH1とに対応している。以上の8個の接続管51bは、装置内供給流路SJ1及び装置内回収流路CJ1を構成するチューブ等を介して前述したサブタンク151に接続して用いられる。
【0040】
基板ユニット52は、液体噴射ヘッド50を制御モジュール20に電気的に接続するための実装部品を有するアセンブリーである。基板ユニット52は、回路基板52aとコネクター52bと支持板52cとを有する。
【0041】
回路基板52aは、各ヘッドチップ54とコネクター52bとを電気的に接続するための配線を有するリジッド配線基板等のプリント配線基板である。回路基板52aは、支持板52cを介して流路構造体51上に配置されており、回路基板52aのZ1方向を向く面には、コネクター52bが設置される。
【0042】
コネクター52bは、液体噴射ヘッド50と制御モジュール20とを電気的に接続するための接続部品である。支持板52cは、回路基板52aを流路構造体51に対して取り付けるための板状の部材である。支持板52cの一方の面には、回路基板52aが載置されており、回路基板52aは、支持板52cに対してネジ止め等により固定される。
【0043】
ホルダー53は、4個のヘッドチップ54を収容及び支持する構造体である。ホルダー53は、4個のヘッドチップ54を収容及び支持する構造体である。ホルダー53は、略トレイ状をなしており、凹部53aと複数の配線孔53cと複数の凹部53dと複数の孔53eと複数のネジ孔53iと複数のネジ孔53kとを有する。凹部53aは、Z1方向に向けて開口しており、前述の流路部材51aが配置される空間である。当該複数の配線孔53cの夫々は、ヘッドチップ54の配線基板54iが基板ユニット52に向けて通される孔である。当該複数の凹部53dの夫々は、Z2方向に向けて開口しており、ヘッドチップ54が配置される空間である。複数の孔53eは、後述する複数のヘッドチップ54が備える複数の導入口Pinの夫々及び導出口Poutの夫々と、流路部材51aに形成されるヘッド内供給流路SH1の排出口及びヘッド内回収流路CH1の導入口の夫々とを接続するための貫通孔である。当該複数のネジ孔53iは、ホルダー53を支持体41に対してネジ止めするためのネジ孔である。当該複数のネジ孔53kは、ホルダー53に対してカバー58をネジ止めするためのネジ孔である。
【0044】
各ヘッドチップ54は、インクを噴射する。各ヘッドチップ54は、第1インクを噴射する複数のノズルNと、第1インクとは異なる種類の第2インクを噴射する複数のノズルNと、を有する。ここで、第1インク及び第2インクは、前述の4種類のインクのうちの2種のインクである。例えば、ヘッドチップ54_1及びヘッドチップ54_2の夫々には、第1インク及び第2インクとして当該4種類のインクのうちの2種のインクが用いられる。そして、ヘッドチップ54_3及びヘッドチップ54_4の夫々には、当該4種類のインクのうちの残りの2種のインクが用いられる。各ヘッドチップ54には、配線基板54iが設けられる。なお、図4では、各ヘッドチップ54の構成が簡略化して図示される。ヘッドチップ54の構成については、後述の図5に基づいて詳述する。
【0045】
固定板55は、4個のヘッドチップ54とホルダー53とが固定される板状部材である。具体的には、固定板55は、ホルダー53との間に4個のヘッドチップ54を挟む状態で配置され、各ヘッドチップ54及びホルダー53が接着剤等により固定される。固定板55には、4個のヘッドチップ54のノズル面FNを露出させる複数の開口部55aが設けられる。図4に示す例では、当該複数の開口部55aは、ヘッドチップ54ごとに個別に設けられる。固定板55は、例えば、ステンレス鋼、チタン及びマグネシウム合金等の金属材料等で構成される。
【0046】
カバー58は、基板ユニット52を収容する箱状の部材である。カバー58には、8個の貫通孔58aと開口部58bとが設けられる。当該8個の貫通孔58aは、流路構造体51の8個の接続管51bに対応しており、各貫通孔58aには、対応する接続管51bが挿入される。開口部58bには、カバー58の内側から外側に前述のコネクター52bが通される。
【0047】
1-5.ヘッドチップの構成
図5は、ヘッドチップ54の分解斜視図である。図6は、図5中のA-A線断面図である。図7は、図5中のB-B線断面図である。但し、図の煩雑化を防ぐため、図7では、配線基板54iの図示を省略してある。図5及び図6に示すように、ヘッドチップ54は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNを有する。当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列L1と第2ノズル列L2とに区分される。第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々は、Y軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0048】
ヘッドチップ54は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、第1ノズル列L1の複数のノズルNと第2ノズル列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。図6では、第1ノズル列L1の複数のノズルNと第2ノズル列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0049】
図5及び図6に示すように、ヘッドチップ54は、流路形成部材54aと、圧力室基板54bと、ノズル板54cと、吸振体54dと、振動板54eと、複数の圧電素子54fと、保護基板54gと、配線基板54iと、駆動回路54jと、枠体54kと、ケース54nと、フィルター54oと、を有する。但し、図の煩雑化を防ぐため、図5では、圧力室基板54bと振動板54eと複数の圧電素子54fと吸振体54dと配線基板54iと駆動回路54jと枠体54kとの図示を省略する。
【0050】
流路形成部材54a及び圧力室基板54bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路形成部材54aよりもZ1方向に位置する領域には、フィルター54oと圧力室基板54bと振動板54eと複数の圧電素子54fと保護基板54gとケース54nと配線基板54iと駆動回路54jとが設置される。他方、流路形成部材54aよりもZ2方向に位置する領域には、ノズル板54cと吸振体54dと枠体54kとが設置される。ヘッドチップ54の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ54の各要素を順に説明する。
【0051】
ノズル板54cは、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々の複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNの夫々は、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズル板54cのZ2方向を向く面がノズル面FNである。つまり、ノズル面FNの法線方向は、ノズル面FNの法線ベクトルの方向であり、噴射方向であるZ2方向である。
【0052】
流路形成部材54aには、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々について、後述する下流室DRと複数の接続流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。ここで、第1ノズル列L1の複数のノズルNに連通する下流室DRを、下流室DR[L1]と表現する。第2ノズル列L2の複数のノズルNに連通する下流室DRを、下流室DR[L2]と表現する。
【0053】
下流室DR[L1]は、流路形成部材54aをZ軸方向に貫通する開口DR1[L1]と、流路形成部材54aをZ軸方向に貫通する開口DR2[L1]と、接続流路Xa[L1]とを含む。開口DR1[L1]と開口DR2[L1]とは、X軸方向に延在する梁部BR[L1]によって分割されている。開口DR1[L1]及び開口DR2[L1]の夫々は、Y軸方向に延在している。同様に、下流室DR[L2]は、流路形成部材54aをZ軸方向に貫通する開口DR1[L2]と、流路形成部材54aをZ軸方向に貫通する開口DR2[L2]と、接続流路Xa[L2]とを含む。開口DR1[L2]と開口DR2[L2]とは、X軸方向に延在する梁部BR[L2]によって分割されている。開口DR1[L2]及び開口DR2[L2]の夫々は、Y軸方向に延在している。
【0054】
ここで、開口DR1[L1]とDR1[L2]を特に区別しない場合、単に開口DR1と記載する。また、接続流路Xa[L1]と接続流路Xa[L2]を特に区別しない場合には、単に接続流路Xaと記載する。更に、開口DR2[L1]と開口DR2[L2]を特に区別しない場合、単に開口DR2と記載する。梁部BR[L1]と梁部BR[L2]を特に区別しない場合には、単に梁部BRと記載する。
【0055】
梁部BRは、X軸に沿って延在しており、下流室DRの内壁wDR同士を接続する。内壁wDRは、X軸に沿う方向に離間する。但し、梁部BRの延在方向は、Y軸に交差する方向であればよく、X軸に限らない。梁部BRは、流路形成部材54aの一部である。梁部BRは、Y軸に沿う方向の略中央の位置に設けられる。従って、図6において、A-A線断面をY2方向に見た場合、本来梁部BRが見えるが、開口DR1を理解しやすくするため、表示していない。図5の例では、梁部BRは、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々に対応して1つ設けられているが、第1ノズル列L1及び第2ノズル例L2に対応して複数設けられてもよい。X軸に沿う方向は、Y軸に沿う方向に交差する方向であるとも言える。なお、X軸に沿う方向は、「第1方向に交差する方向」の一例である。
【0056】
接続流路Xaは、X軸方向の一端で複数の接続流路Raと連通し、X軸方向の他端で開口DR1及び開口DR2の双方と連通する。つまり、開口DR1及び開口DR2を通過したインクは、接続流路Xaを介して複数の接続流路Raに流れる。接続流路Ra及び連通流路Naの夫々は、ノズルNごとに形成された貫通孔である。
【0057】
図6に図示するように、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々について、複数のノズルNに連通する共通液室Rが設けられる。共通液室Rは、噴射方向であるZ2方向に直交するY軸に沿う方向に延在する。以下の記載において、第1ノズル列L1の複数のノズルNに連通する共通液室Rを共通液室R[L1]と表現することがある。第2ノズル列L2の複数のノズルNに連通する共通液室Rを共通液室R[L2]と表現することがある。共通液室Rは、複数の圧力室CBに供給されるインクを貯留する。共通液室Rは、吸振体54dと、流路形成部材54aと、フィルター54oと、ケース54nとによって画定される。フィルター54oは、共通液室Rを、上流室URと、下流室DRとに区画する。流路形成部材54aは、下流室DRの一部を画定する。
【0058】
圧力室基板54bは、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々について、複数の圧力室CBが設けられた板状部材である。複数の圧力室CBは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室CBは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。流路形成部材54a及び圧力室基板54bの夫々は、前述のノズル板54cと同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路形成部材54a及び圧力室基板54bの夫々の製造には、他の公知の方法及び材料が適宜に用いられてもよい。
【0059】
また、流路形成部材54aと梁部BRは一体のシリコンの単結晶基板によって形成されることが好ましい。但し、流路形成部材54aと梁部BRとが夫々別体で製造されたのち、流路形成部材54aに梁部BRを溶接してもよい。
【0060】
圧力室CBは、流路形成部材54aと振動板54eとの間に位置する空間である。第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々について、複数の圧力室CBがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室CBは、連通流路Na及び接続流路Raの夫々に連通する。従って、圧力室CBは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、接続流路Raを介して下流室DRに連通する。
【0061】
圧力室基板54bのZ1方向を向く面には、振動板54eが配置される。振動板54eは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板54eは、例えば、第1層と第2層とを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。第1層は、例えば、酸化シリコンで構成される弾性膜である。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。第2層は、例えば、酸化ジルコニウムで構成される絶縁膜である。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板54eは、前述の第1層及び第2層の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0062】
振動板54eのZ1方向を向く面には、第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2の夫々について、互いにノズルNに対応する複数の圧電素子54fが駆動素子として配置される。各圧電素子54fは、駆動信号Comの供給により変形する受動素子である。各圧電素子54fは、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子54fは、複数の圧力室CBに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子54fは、平面視で圧力室CBに重なる。
【0063】
各圧電素子54fは、図示しないが、第1電極と圧電体層と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極及び第2電極のうちの一方の電極は、圧電素子54fごとに互いに離間して配置される個別電極であり、当該一方の電極には、駆動信号Comが印加される。第1電極及び第2電極のうちの他方の電極は、複数の圧電素子54fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、当該他方の電極には、所定の基準電位が供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金、アルミニウム、ニッケル、金、銅等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独で又は2種以上を合金又は積層等の態様で組み合わせて用いることができる。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電材料で構成されており、例えば、複数の圧電素子54fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ただし、圧電体層は、複数の圧電素子54fにわたり一体でもよい。この場合、圧電体層には、互いに隣り合う各圧力室CBの間隙に平面視で対応する領域に、当該圧電体層を貫通する貫通孔がX軸に沿う方向に延びて設けられる。以上の圧電素子54fの変形に連動して振動板54eが振動すると、圧力室CB内の圧力が変動することで、インクがノズルNから噴射される。なお、駆動素子として、当該圧電素子54fに代えて、圧力室CB内のインクを加熱する発熱素子を用いてもよい。
【0064】
保護基板54gは、振動板54eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子54fを保護するとともに振動板54eの機械的な強度を補強する。図5及び図6に示すように、保護基板54gには、開口h1が設けられる。開口h1は、配線基板54iが通される孔である。また、保護基板54gのZ2方向を向く面には、Z1方向に凹む凹部が2つの第1ノズル列L1と第2ノズル列L2との夫々に対応して2つ形成されている。保護基板54gの当該凹部と振動板54eとの間に、複数の圧電素子54fが収容される。保護基板54gは、例えば、シリコン単結晶基板で構成される。
【0065】
フィルター54oは、流路形成部材54aのZ1方向を向く面に積層される板状又はシート状の部材である。フィルター54oは、インクの通過を許容しつつ、インクに混入する異物等を捕捉する。
【0066】
フィルター54oには、インクを通過する複数のフィルター孔h23と、開口h21とが設けられる。開口h21は、圧力室基板54bが通される貫通孔である。複数のフィルター孔h23は、フィルター孔領域FR内に設けられる。以下の記載において、下流室DR[L1]に連通するフィルター孔h23が設けられたフィルター孔領域FRをフィルター孔領域FR[L1]と表現し、下流室DR[L2]に連通するフィルター孔h23が設けられたフィルター孔領域FRをフィルター孔領域FR[L2]と表現することがある。フィルター孔領域FR[L1]に設けられたフィルター孔h23を、フィルター孔h23[L1]と表現し、フィルター孔領域FR[L2]に設けられたフィルター孔h23を、フィルター孔h23[L2]と表現することがある。フィルター孔領域FRは、電鋳フィルターにより構成される。電鋳フィルターの構成材料は、例えば、Ni-Pd合金である。又は、電鋳フィルターの構成材料は、ステンレス鋼でもよい。
【0067】
ケース54nは、フィルター54oのZ1方向を向く面に積層される部材である。ケース54nは、上流室URを画定する。ケース54nには、開口h41と、第1ノズル列L1の複数のノズルNに連通する上流室URと、第2ノズル列L2の複数のノズルNに連通する上流室URと、この2つの上流室URの夫々に設けられた導入口Pinと、この2つの上流室URの夫々に設けられた導出口Poutと、が設けられる。開口h41は、配線基板54iが通される孔である。以下の記載において、共通液室R[L1]に含まれる上流室URを、上流室UR[L1]と表現することがあり、共通液室R[L2]に含まれる上流室URを、上流室UR[L2]と表現することがある。上流室URは、ケース54nのZ2方向を向く面SZ2からZ1方向に凹むことにより形成される。
【0068】
ケース54nは、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料によって構成されている。又は、ケース54nは、金属材料によって構成されてもよい。
【0069】
吸振体54dは、コンプライアンス基板とも称され、共通液室Rの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、共通液室R内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体54dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体54dのZ1方向を向く面は、流路形成部材54aに接着剤等により接合される。一方、吸振体54dのZ2方向を向く面には、枠体54kが接着剤等により接合される。枠体54kは、吸振体54dの外周に沿う枠状の部材であり、前述の固定板55に接触する。ここで、枠体54kは、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン及びマグネシウム合金等の金属材料で構成される。
【0070】
配線基板54iは、振動板54eのZ1方向を向く面に実装されており、制御モジュール20とヘッドチップ54とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板54iは、例えば、COF、FPC又はFFC等の可撓性の配線基板である。COFは、Chip On Filmの略語である。FPCは、Flexible Printed Circuitの略語である。FFCは、Flexible Flat Cableの略語である。本実施形態の配線基板54iには、各圧電素子54fに駆動電圧を供給するための駆動回路54jが実装される。駆動回路54jは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスとして供給するか否かを切り替える回路である。
【0071】
1-6.梁部BRについて
流路形成部材54aの剛性は、ケース54nの剛性よりも低くなる傾向にある。具体的には、ケース54nでは、Z1方向の外壁を有するため、剛性をある程度維持できる一方で、流路形成部材54aでは、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口が形成されるため、剛性が低下してしまうためである。剛性が低下すると、例えば接着剤を硬化する場合の加圧などによって、流路形成部材54aが変形する虞がある。そこで、本実施形態では、流路形成部材54aに梁部BRを設けることにより、流路形成部材54aの剛性が低下することを抑制できる。
【0072】
梁部BRは、Y軸において、下流室DRのうち中央に位置することに応じて、流路形成部材54aの剛性が低下することをより抑制できる。具体的には、梁部BRは、図7に示すように、下流室DRをXZ平面に平行な面で均等に3分割した場合の範囲YDR1、範囲YDR2、及び、範囲YDR3のうち、中央に位置する範囲YDR2に含まれる。更に、図7では図示していないが、梁部BRが、下流室DRをXZ平面に平行な面で均等に5分割した場合の中央に位置する範囲に含まれることが好ましい。
【0073】
導入口Pinと導出口Poutとは、夫々、Y軸に沿う方向において共通液室RのY軸に沿う方向の両端部に設けられることが好ましい。例えば、導入口Pinと導出口Poutとが共通液室RのY軸に沿う方向の中央に設けられると、共通液室RのY軸に沿う方向の両端部においてインクの淀みが発生し、気泡が滞留する可能性が高くなるためである。従って、必然的に、図5及び図7から理解されるように、Z軸に沿う方向に見て、梁部BRは、導入口Pinと導出口Poutとの間に位置する。より具体的な梁部BRと導入口Pinと導出口Poutとの位置について、共通液室RをXZ平面に平行な面で均等に3分割した場合の範囲YR1、範囲YR2、及び、範囲YR3を用いて説明する。梁部BRは、範囲YR1、範囲YR2、及び、範囲YR3のうち、中央に位置する範囲YR2に含まれる。導入口Pinは、範囲YR1、範囲YR2、及び、範囲YR3のうち最もY2方向に位置する範囲YR3に含まれる。導出口Poutは、範囲YR1、範囲YR2、及び、範囲YR3のうち最もY1方向に位置する範囲YR1に含まれる。
【0074】
図7に示すように、梁部BRのケース54nを向く面SB1は、流路形成部材54aのケース54nを向く面SB2と面一である。面一は、2つの面の間に段差が無いことを意味する。従って、梁部BRとフィルター54oとのZ軸に沿う方向における隙間は生じていない。梁部BRは、フィルター54oの一部、具体的には、Z軸に沿って見た場合に梁部BRと重なる部分を支持する。
【0075】
1-7.充填処理
循環経路KJにインクが充填されていない状態で、循環経路KJにインクを充填する方法としては、例えば、循環動作を実行した後に、開閉弁16を閉じて、ポンプ159により供給流路SF1を加圧することで複数のノズルNからインクを排出させる加圧排出動作を実行する態様が考えられる。しかしながら、共通液室Rにフィルター54oを有し、且つ、流路形成部材54aに梁部BRを有する態様において、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する充填処理では、循環動作によって、気泡が、フィルター54oと梁部BRとにより挟まれる領域、又は、梁部BRの角に滞留し、更に、気泡が滞留した位置に他の気泡と結合して大きな気泡へ成長することがあることが、発明者らの実験によってわかった。2つの部材に挟まれる領域とは、この領域に対して一方向に2つの部材の一方の部材が接しており、この領域に対して一方向とは異なる他方向に2つの部材の他方の部材が接していることを意味する。フィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域又は梁部BRの角に気泡が滞留することを図8及び図9を用いて説明する。
【0076】
図8は、循環経路KJにインクが充填されていない状態で循環動作を実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図である。但し、図8、後述する図9図11、及び、図12では、インクの流れの容易に示すため、共通液室Rを矩形として表示してある。更に、図8図9図11、及び、図12では、インクの流れを直感的に示すため、インクの流量が大きくなることに応じて、インクの流れを示す矢印の大きさを大きくすることで示してある。更に、図8図9図11、及び、図12では、インクが充填された範囲を水平方向の破線による網掛けによって示す。更に、図8図9図11、及び、図12では、共通液室RとノズルNの位置関係を示すため、ノズルNの輪郭を破線で示してある。更に、図8図9図11、及び、図12では、重力方向GVを示してある。上述したように、第1実施形態では、重力方向GVは、Z2方向に一致する。従って、水平面HFとノズル面FNとが平行である。更に、図8図9図11、及び、図12では、理解を容易にするため、開閉弁16が開いた状態では、開閉弁16を白抜きの図形として示し、開閉弁16が閉じた状態には、開閉弁16を黒塗りの図形として示す。図8に示すように、循環動作中では開閉弁16が開いている。
【0077】
図8に示すように、導入口Pinから導入されたインクは、上流室UR内を流動し、導出口Poutから排出される。更に、導入口Pinから導入されたインクの一部は、フィルター孔h23を介して下流室DRに流入し、下流室DR内を流動する。フィルター孔h23を介する分、下流室DR内のインクの流量は、上流室UR内のインクの流量よりも小さい。更に、図8に示すように、下流室DR内を流動するインクは、梁部BRに衝突し、Z2方向と、Z1方向とに分岐する。
【0078】
循環経路KJにインクが充填されていない状態でインクを流入するため、循環経路KJに充填していた空気が気泡となって共通液室Rに発生する。循環動作を実行している間に共通液室Rを流れるインクの圧力は、導出口Pout付近では負圧が強く作用するため、気泡が滞留しにくく、導出口Pout付近の気泡は導出口Poutから排出されやすい。一方、導入口Pinから導出口Poutとの間では、導出口Pout付近と比較して負圧が作用しにくいため、インクの流量が低下する。更に、上述したように、下流室DR内のインクの流量は、上流室UR内のインクの流量よりも小さい。従って、下流室DR内の気泡は、循環動作によるインクの流れの影響が小さくなって浮力の影響が相対的に大きくなるため、Y1方向に移動しつつも、重力方向GVの反対方向であるZ1方向にも移動する。以上により、下流室DR内の梁部BRよりもY2方向に位置する気泡が、フィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域又は梁部BRの角に集まり、成長してしまう傾向にある。図8では、梁部BRに対してY2方向に位置し、且つ、フィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域に集まり成長した気泡BLを示してある。梁部BRに対するY2方向の位置は、梁部BRに対してY軸に沿う2つの方向のうち、導入口Pinに近い位置ともいえる。
【0079】
図9は、循環動作後に加圧排出動作を実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図である。加圧排出動作では、開閉弁16を閉じて供給流路SF1を加圧することで複数のノズルNからインクを排出させる。従って、図9に示すように、加圧排出動作中では開閉弁16が閉じている。加圧排出動作では、インクの排出口がノズルNのみであるため、インクがノズルNから排出される。図9に示すように、複数のノズルNの夫々から液滴DPが排出される。図9に示すように、上流室UR内のインクの流れは、フィルター54oのフィルター孔h23を介して下流室DRに到達する。図9に示すように、下流室DR内のインクの流れの方向は、概ねZ2方向に平行な方向である。加圧排出動作により発生する流れの程度では、気泡BLに作用する浮力と相殺されてしまい、気泡BLはフィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域、又は梁部BRの角に滞留したままとなる傾向にある。
【0080】
気泡BLが滞留したまま印刷動作が実行されると、ベタ印字等、インクを大量に消費する場合に共通液室Rに大きな負圧が作用することにより気泡BLが共通液室RからノズルNに引き込まれ、噴射不良を引き起こす虞がある。
【0081】
そこで、本実施形態における充填処理において、液体噴射装置100は、加圧排出動作を実行した後に循環動作を実行する。
【0082】
1-8.第1実施形態の充填処理
図10は、本実施形態の充填処理を示すフローチャートである。ステップS2において、液体噴射装置100は、循環経路KJにインクが充填されていない状態で、開閉弁16を閉じて、加圧排出動作を実行する。
【0083】
図11は、ステップS2における共通液室R内のインクの流れを示す図である。循環経路KJにインクが充填されていない状態でインクを流入するため、循環経路KJに充填していた空気が気泡となって下流室DRに発生する。しかしながら、図11では、導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが生じていないため、気泡がフィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域又は梁部BRの角に集まることがない。従って、下流室DRに発生した気泡は、他の気泡と結合していないため、フィルター孔h23を通過しやすくなり、上流室URに移動できる。また、下流室DR内の気泡は比較的小さいため、加圧排出動作によって当該気泡を、導入口Pinから複数のノズルNへ向かうインクの流れに乗せてノズルNから排出しやすい。
【0084】
ステップS2の終了後、液体噴射装置100は、ステップS4において、開閉弁16を開き、ステップS6において循環動作を実行する。
【0085】
図12は、ステップS6における共通液室R内のインクの流れを示す図である。下流室DRから気泡が除去された状態で循環動作を実行することにより、図12に示すように、フィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域、又は、梁部BRの角に滞留することがない。更に、開閉弁16が開かれることにより、回収流路CF1にもインクが充填される。
【0086】
ステップS6の終了後、液体噴射装置100は図10に示す一連の処理を終了する。
【0087】
1-9.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、噴射方向であるZ2方向へインクを噴射する複数のノズルNと、複数のノズルNに連通し、Z2方向に直交するY軸に沿う方向に延在する共通液室Rと、共通液室Rを上流室URと下流室DRとに区画するフィルター54oと、上流室URにインクを導入するための導入口Pinと、上流室URからインクを導出するための導出口Poutと、インクを貯留可能なサブタンク151と、導入口Pinとサブタンク151とを連通させる供給流路SF1と、導出口Poutとサブタンク151とを連通させる回収流路CF1と、を備え、下流室DR内には、Z軸に沿う方向に見てX軸に沿う方向に見て離間するとともに下流室DRを画定する一対の内壁wDR同士を接続する梁部BRが設けられ、供給流路SF1を加圧することで複数のノズルNからインクを排出させる加圧排出動作と、サブタンク151、供給流路SF1、共通液室R、回収流路CF1を含む循環経路KJを、サブタンク151、供給流路SF1、共通液室R、回収流路CF1、サブタンク151の順にインクを循環させる循環動作と、を実行可能であり、循環経路KJにインクを充填する充填処理は、加圧排出動作を実行した後に循環動作を実行する。
循環動作よりも先に加圧排出動作を実行することにより、加圧排出動作の前に導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが生じていないため、気泡が成長しにくくなる。従って、下流室DR内の気泡が排出されやすくなる。即ち、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、下流室DR内の気泡を排出した後に循環動作を行うことにより、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作によって梁部BRとフィルター54oとに挟まれる領域に気泡が滞留することを抑制でき、循環動作後に下流室DRに気泡が残留する虞を低減できる。
【0088】
また、第1実施形態に係る回収流路CF1を開放及び閉塞可能な開閉弁16を更に備え、加圧排出動作は、開閉弁16によって回収流路CF1を閉塞した状態で実行され、循環動作は、開閉弁16によって回収流路CF1を開放した状態で実行される。
【0089】
また、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、下流室DRの一部を画定するとともにフィルター54oを支持する流路形成部材54aを備え、梁部BRは、流路形成部材54aの一部であり、フィルター54oの一部は、梁部BRに支持される。
第1実施形態に係る液体噴射装置100は、梁部BRがない態様と比較すると、フィルター54oがZ2方向に撓むことを抑制できる。従って、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、フィルター54oが撓むことを抑制してフィルター54oを安定して支持できるとともに、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室DRに気泡が滞留することを抑制できる。
【0090】
また、梁部BRは、Z軸に沿う方向に見て、導入口Pinと導出口Poutとの間に配置される。
上述したように、導入口Pinと導出口Poutとは、夫々、Y軸に沿う方向において共通液室RのY軸に沿う方向の両端部に設けられることが好ましい。従って、本実施形態では、梁部BRは、Z軸に沿う方向に見て、導入口Pinと導出口Poutとの間に配置されることにより、導入口Pinと導出口Poutとの間に梁部BRがない態様と比較して、共通液室RのY軸に沿う方向の両端部においてインクの淀みが発生することを抑制できる。そして、Z軸に沿う方向に見て、導入口Pinと導出口Poutとの間に配置した場合、加圧排出動作の前に循環動作を実行するとフィルター54oと梁部BRとに挟まれる領域、又は梁部BRの角に気泡が滞留するが、本実施形態では、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室DRに気泡が滞留することを抑制できる。
【0091】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0092】
2-1.第1変形例
第1実施形態では、Z2方向が重力方向GVに一致していたが、これに限らない。
【0093】
図13は、第1変形例に係る液体噴射装置100-Aにおける加圧排出動作実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図である。液体噴射装置100-Aでは、Y2方向が重力方向GVに一致する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。従って、第1変形例では、ノズル面FNは水平面HFに対して90度傾いている。また、言い換えれば、第1変形例に係る共通液室Rは、第1実施形態に係る共通液室Rを、X軸を中心軸とし、X1方向からX2方向に見て反時計回りに90度回転させた状態で液体噴射装置100-Aが使用されるとも言える。
【0094】
仮に、循環動作後に加圧排出動作を実行する態様では、循環動作によって加圧排出動作の前に導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが発生するため、図13に示す領域ARに気泡が滞留する虞がある。領域ARは、梁部BRのY2方向に位置し、且つ、フィルター54oと梁部BRとで挟まれる領域である。一方、第1変形例に係る液体噴射装置100-Aは、循環動作よりも先に加圧排出動作を実行することにより、循環動作による導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが発生しないため、領域ARに気泡が滞留することを抑制できる。
【0095】
また、第1変形例では、X軸を中心軸とし、共通液室RをX1方向からX2方向に見て反時計回りに90度回転させた状態で液体噴射装置100-Aを使用する態様を示したが、液体噴射装置100を使用する態様は第1変形例に限らない。例えば、X軸を中心軸とし、共通液室RをX1方向からX2方向に見て反時計回りに、0度より大きく90度未満で回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できる。
【0096】
2-2.第2変形例
第1実施形態では、水平面HFからの導入口Pinと導出口Poutの夫々の距離が同一であり、第1変形例では、水平面HFから導入口Pinまでの距離が、水平面HFから導出口Poutまでの距離より短いが、液体噴射装置100を使用する態様は第1実施形態及び第1変形例に限らない。例えば、水平面HFから導入口Pinまでの距離が水平面HFから導出口Poutまでの距離より長い状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できることがある。
【0097】
図14は、第2変形例に係る液体噴射装置100-Bにおける加圧排出動作後に行われる循環動作の実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図である。液体噴射装置100-Bは、X軸に直交し、X1方向からX2方向に見て反時計回りにZ2方向を15度回転させたV1方向が重力方向GVに一致する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。図14では、X軸を中心軸とし、共通液室RをX1方向からX2方向に見て時計回りに15度で回転させた状態で液体噴射装置100-Bを使用する態様を示す。
【0098】
第2変形例において、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様では、気泡が浮力によりY2方向に移動させる力よりも、循環動作によりY1方向に移動させる力が大きい場合がある。しかしながら、第2変形例に係る液体噴射装置100-Bを使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できる。
【0099】
また、第2変形例では、X軸を中心軸とし、共通液室RをX1方向からX2方向に見て時計回りに15度回転させた状態で液体噴射装置100-Bを使用する態様を示したが、液体噴射装置100を使用する態様は第2変形例に限らない。例えば、X軸を中心軸とし、共通液室RをX1方向からX2方向に見て時計回りに0度より大きく15度未満の角度で回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できる。
【0100】
2-3.第3変形例
第1変形例及び第2変形例では、X軸を中心軸として共通液室Rを回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であったが、液体噴射装置100を使用する態様はこれらに限らない。例えば、Y軸を中心軸として共通液室Rを回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できることがある。
【0101】
図15は、第3変形例に係る液体噴射装置100-Cにおける加圧排出動作後に行われる循環動作の実行中の共通液室R内のインクの流れを示す図である。図16は、図15中のC-C線断面図である。但し、図15では、第3変形例に係るヘッドチップ54を、XZ平面に平行であり、且つ、梁部BRを通過する面で切断した断面のうち、配線基板54iのX2方向のみ表示してある。液体噴射装置100-Cは、X1方向が重力方向GVに一致する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。図15及び図16では、Y軸を中心軸とし、共通液室RをY2方向からY1方向に見て時計回りに90度で回転させた状態で液体噴射装置100-Cを使用する態様を示す。また、図16では、ヘッドチップ54を簡略化して表示してあり、ノズル板54c及び吸振体54dの表示を省略し、更に、下流室DR[L1]付近を表示してある。更に、図16では、下流室DR[L1]と導入口Pin[L1]と導出口Pout[L1]との位置関係を示すため、導入口Pin[L1]と導出口Pout[L1]とを一点鎖線で示してある。
【0102】
仮に、循環動作後に加圧排出動作を実行する態様では、循環動作によって加圧排出動作の前に導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが発生するため、図16に示す領域AR-Cに気泡が滞留する虞がある。領域AR-Cは、梁部BR[L1]に対してY2方向に位置し、且つ、開口DR1[L1]のX2方向の内壁wDRと、梁部BR[L1]とに挟まれる領域である。一方、第3変形例に係る液体噴射装置100-Cは、循環動作よりも先に加圧排出動作を実行することにより、循環動作による導入口Pinから導出口Poutへのインクの流れが発生しないため、領域AR-Cに気泡が滞留することを抑制できる。
【0103】
また、第3変形例では、Y軸を中心軸とし、共通液室RをY2方向からY1方向に見て時計回りに90度で回転させた状態で液体噴射装置100-Cを使用する態様を示したが、液体噴射装置100を使用する態様は第3変形例に限らない。例えば、Y軸を中心軸とし、共通液室RをY2方向からY1方向に見て時計回りに0度より大きく90度未満の角度で回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できる。更に、Y軸を中心軸とし、共通液室RをY2方向からY1方向に見て反時計回りに0度より大きく90度以下の角度で回転させた状態で液体噴射装置100を使用する態様であっても、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作後に共通液室Rに気泡が残留する虞を低減できる。
【0104】
2-4.第4変形例
上述の各態様では、フィルター54oと梁部BRとは、Z軸に沿う方向において隙間を空けずに配置されていたが、隙間を空けて配置されてもよい。
【0105】
図17及び図18は、第4変形例におけるヘッドチップ54-Dを説明するための図である。図17では、ヘッドチップ54-Dを、図5中のB-B線で切断した場合の断面を示す。図18では、ヘッドチップ54-Dを、図5中のB-B線で切断した場合の断面のうち、配線基板54iよりもX2方向に位置する要素のみを表示してある。
【0106】
ヘッドチップ54-Dは、流路形成部材54aの替わりに流路形成部材54a-Dを有する点で、ヘッドチップ54と相違する。流路形成部材54a-Dには、梁部BRの替わりに梁部BR-Dが設けられる点で、流路形成部材54aと相違する。図17及び図18に示すように、梁部BR-Dのケース54nを向く面SB1-Dは、流路形成部材54aのケース54nを向く面SB2よりもZ2方向に位置する。従って、フィルター54oと梁部BR-Dとは、Z軸に沿う方向において隙間GPが形成される。
【0107】
図17及び図18に示すように、隙間GPのZ軸に沿う方向における寸法CZは、梁部BR-Dと下流室DRの底面との間の距離DZよりも短い。また、図18に示すように、寸法CZは、梁部BR-DのX軸に沿う方向の寸法BXよりも短い。更に、寸法CZは、梁部BR-DのZ軸に沿う方向の寸法BZ、及び、梁部BR-DのY軸に沿う方向の寸法BYよりも短い。
【0108】
以上、第4変形例に係る液体噴射装置100は、フィルター54oと梁部BR-Dとは、Z軸に沿う方向において隙間GPを空けて配置され、隙間GPのZ軸に沿う方向における寸法CZは、梁部BR-Dと下流室DRの底面との間の距離DZよりも短い。
寸法CZが長くなることに応じて、フィルター54oとのZ軸に沿う方向の距離が離れるため、フィルター54oを安定して支持することが困難になる。しかしながら、第4変形例に係る液体噴射装置100は、寸法CZが距離DZよりも短くなるように隙間GPが形成されているため、寸法CZが距離DZよりも長い態様と比較して、フィルター54oを安定して支持できる。但し、寸法CZが距離DZよりも短いことにより、下流室DR内の気泡が隙間GPを通過して導入口Pinから導出口Poutまで移動しにくくなるが、第4変形例においても加圧排出動作後に循環動作を実行する為、隙間GPを通過できずに梁部BR-Dの導入口Pin側に気泡が滞留及び成長することを抑制し、第1実施形態と同様に下流室DRに気泡が滞留することを抑制できる。
【0109】
また、寸法CZは、梁部BR-DのX軸に沿う方向の寸法BXよりも短い。
前述と同様に、第4変形例に係る液体噴射装置100は、寸法CZが寸法BXより長い態様と比較して、フィルター54oを安定して支持できる。また、加圧排出動作後に循環動作を実行する為、下流室DRに気泡が滞留することを抑制できる。
【0110】
また、寸法CZは、梁部BR-DのZ軸に沿う方向の寸法BZ、及び、梁部BR-DのY軸に沿う方向の寸法BYよりも短い。
寸法BZ及び寸法BYの夫々が短くなると、梁部BR-Dの剛性が低下し、ひいては流路形成部材54a-Dの剛性が低下する。従って、第4変形例に係る液体噴射装置100は、寸法CZが寸法BZより長い態様、及び、寸法CZが寸法BYよりも長い態様と比較して、流路形成部材54a-Dの剛性が低下することを抑制できる。また、加圧排出動作後に循環動作を実行するため、下流室DRに気泡が滞留することを抑制できる。
【0111】
2-5.第5変形例
上述の各態様における液体噴射装置100は、更に、供給流路SF1と回収流路CF1とを接続するバイパス流路BPを有してもよい。
【0112】
図19は、第5変形例における液体噴射装置100-Eの流路を説明するための図である。液体噴射装置100-Eは、供給流路SF1と回収流路CF1とを接続するバイパス流路BPを有する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。図19の例では、バイパス流路BPは、液体噴射ヘッド50の外部に設けられた流路である。バイパス流路BPの一端Rinは、供給流路SF1のうち、装置内供給流路SJ1のポンプ159とヘッド導入口Qinとの間に設けられる。但し、バイパス流路BPは、液体噴射ヘッド50の内部に設けられてもよく、更に、ヘッドチップ54ごとに設けられてもよい。
【0113】
バイパス流路BPの他端Routは、回収流路CF1のうち、装置内回収流路CJ1の開閉弁16とヘッド導出口Qoutとの間に設けられる。
【0114】
図19では、加圧排出動作の実行中のインクの流れを示してある。加圧排出動作では、開閉弁16が閉じている。図19に示すように、ポンプ159の加圧によって、流れFR1と流れFR2とが発生する。流れFR1は、供給流路SF1、共通液室R、ノズルNの順にインクが流れる流れである。流れFR2は、バイパス流路BP、回収流路CF1のうち他端Routから導出口Poutまでの流路、共通液室R、ノズルNの順にインクが流れる流れである。なお、回収流路CF1のうち他端Routから導出口Poutまでの流路は、「回収流路の一部」の一例である。
【0115】
以上、第5変形例に係る液体噴射装置100-Eにおいて、加圧排出動作は、供給流路SF1及び回収流路CF1を加圧することで、供給流路SF1、共通液室R、複数のノズルNの順にインクが流れる流れFR1と、回収流路CF1の一部、共通液室R、複数のノズルNの順にインクが流れる流れFR2と、を発生させる。
第5変形例に係る液体噴射装置100-Eは、第1実施形態のように、加圧排出動作において流れFR1のみ共通液室R内の気泡を排出する態様と比較して、共通液室R内に残留する気泡の量を低減できる。具体的には、第1実施形態では、導入口Pinのみ加圧され、導出口Poutからは加圧されないが、第5変形例では、導入口Pin及び導出口Poutから加圧される。従って、第5変形例に係る液体噴射装置100-Eは、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、複数のノズルNのうち導入口Pinよりも導出口Poutに近いノズルNに与える圧力を大きくできるので、ノズルNから気泡をより排出できる。
【0116】
2-6.第6変形例
第5変形例を除く上述の各態様における液体噴射装置100は、装置内回収流路CJ1に開閉弁16の替わりにポンプを有してもよい。
【0117】
図20は、第6変形例に係る液体噴射装置100-Fの流路を説明するための図である。液体噴射装置100-Fは、開閉弁16の替わりにポンプ158を有する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。ポンプ158は、導出口Poutに対して正圧及び負圧を与えることが可能である。
【0118】
図20の例では、ポンプ158は、循環機構15に含まれる。循環動作において、ポンプ158が導出口Poutに対して負圧を発生させることにより、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、インクをより速く循環させることができる。
【0119】
更に、循環動作よりも前に実行される加圧排出動作は、ポンプ159によって供給流路SF1を加圧し、ポンプ158によって回収流路CF1を加圧することで、供給流路SF1、共通液室R、複数のノズルNの順にインクが流れる流れFR1と、回収流路CF1、共通液室R、複数のノズルNの順にインクが流れる流れFR2-Fと、を発生させる。
【0120】
以上、第6変形例に係る液体噴射装置100-Fは、第5変形例に係る液体噴射装置100-Eと同様に、加圧排出動作において流れFR1のみ共通液室R内の気泡を排出する態様と比較して、共通液室R内に残留する気泡の量を低減できる。
【0121】
2-7.第7変形例
上述の各態様に係る共通液室Rには、1つの導入口Pinと1つの導出口Poutとが設けられたが、これに限らない。
【0122】
図21は、第7変形例に係る液体噴射装置100-Gを説明するための図である。液体噴射装置100-Gは、ケース54nの替わりにケース54n-Gを有し、流路形成部材54aの替わりに流路形成部材54a-Gを有するヘッドチップ54を有する点で、第1実施形態に係る液体噴射装置100と相違する。ケース54n-Gと流路形成部材54a-Gとにより、共通液室R-Gが形成される。共通液室R-Gは、上流室URの替わりに上流室UR-Gを有し、下流室DRの替わりに下流室DR-Gを有する点で、共通液室Rと相違する。
【0123】
ケース54n-Gには、導入口Pinの替わりに導入口Pin-G1及び導入口Pin-G2が設けられ、導出口Poutの替わりに導出口Pout-Gが設けられる点で、ケース54n-Gはケース54nと相違する。以下、導入口Pin-G1と導入口Pin-G2とを、導入口Pin-Gと総称することがある。図21に示すように、導入口Pin-G1は、上流室UR-GのY1方向の端部に設けられる。導入口Pin-G2は、上流室UR-GのY2方向の端部に設けられる。導出口Pout-Gは、導入口Pin-G1と導入口Pin-G2との間に設けられ、より具体的には上流室UR-Gの中央付近に設けられる。
【0124】
図21に示すように、導入口Pin-G1は、ヘッド内供給流路SH1-G1に接続され、導入口Pin-G2は、ヘッド内供給流路SH1-G2に接続される。ヘッド内供給流路SH1-G1とヘッド内供給流路SH1-G2とは、第7変形例に係る液体噴射ヘッド50内の流路であり、ヘッド内供給流路SH1の替わりに設けられる流路である。ヘッド内供給流路SH1-G1とヘッド内供給流路SH1-G2とは、ヘッド導入口Qinに接続される本流部分に夫々接続される。導出口Pout-Gは、ヘッド内回収流路CH1に接続される。
【0125】
流路形成部材54a-Gには、梁部BRの替わりに梁部BR-G1及び梁部BR-G2が設けられる点で、流路形成部材54a-Gが流路形成部材54aと相違する。図21から理解されるように、梁部BR-G1は、Z軸に沿う方向に見て、導入口Pin-G1と導出口Pout-Gとの間に設けられる。梁部BR-G2は、Z軸に沿う方向に見て、導入口Pin-G2と導出口Pout-Gとの間に設けられる。
【0126】
図21では、第7変形例において、加圧排出動作後の循環動作におけるインクの流れを示す。図21に示すように、上流室UR-GのY軸に沿う方向における両端部の夫々に設けられた導入口Pin-Gから供給されたインクは、上流室UR-Gの中央に設けられた導出口Pout-Gから排出される。更に、導入口Pin-Gから供給されたインクのうち、フィルター54oを介して下流室DR-Gに流入されるインクも、下流室DR-Gの中央から上流室UR-Gを介して導出口Pout-Gから排出される。
【0127】
仮に、循環動作後に加圧排出動作を実行する態様では、循環動作によって加圧排出動作の前に夫々の導入口Pin-Gから導出口Pout-Gへのインクの流れが発生するため、図21に示す領域AR-G1及び領域AR-G2に気泡が滞留する虞がある。領域AR-G1は、梁部BR-G1に対してY1方向に位置し、且つ、梁部BR-G1とフィルター54oとに挟まれる領域である。領域AR-G2は、梁部BR-G2に対してY2方向に位置し、且つ、梁部BR-G2とフィルター54oとに挟まれる領域である。一方、第7変形例に係る液体噴射装置100-Gは、循環動作よりも先に加圧排出動作を実行することにより、循環動作による導入口Pin-G1及び導入口Pin-G2から導出口Pout-Gへのインクの流れが発生しないため、領域AR-G1及び領域AR-G2に気泡が滞留することを抑制できる。
【0128】
2-8.第8変形例
第7変形例では、1つの共通液室Rに対して2つの導入口Pinが設けられ、1つの共通液室Rに対して1つの導出口Poutが設けられるが、これに限らない。
【0129】
図22は、第8変形例に係る液体噴射装置100-Hを説明するための図である。液体噴射装置100-Hは、第8変形例に係る共通液室R-Hに対して1つの導入口Pin-Hが設けられ、導出口Pout-H1及び導出口Pout-H2が設けられる点で、液体噴射装置100-Gと相違する。以下、導出口Pout-H1と導出口Pout-H2とを、導出口Pout-Hと総称することがある。第8変形例に係るヘッドチップ54の形状は、第7変形例に係るヘッドチップ54の形状と同一である。第8変形例では、ケース54n-Gと流路形成部材54a-Gとにより、共通液室R-Hが形成される。共通液室R-Hは、上流室UR-Gの替わりに上流室UR-Hを有する点で、共通液室R-Gと相違する。
【0130】
上流室UR-Hでは、上流室UR-Gでは導入口Pin-G1として機能した開口が導出口Pout-H1として機能し、上流室UR-Gでは導入口Pin-G2として機能した開口が導出口Pout-H2として機能し、上流室UR-Gでは導出口Pout-Gとして機能した開口が導入口Pin-Hとして機能する。
【0131】
図22に示すように、導出口Pout-H1は、ヘッド内回収流路CH1-H1に接続され、導出口Pout-H2は、ヘッド内回収流路CH1-H2に接続される。ヘッド内回収流路CH1-H1とヘッド内回収流路CH1-H2とは、第8変形例に係る液体噴射ヘッド50内の流路であり、ヘッド内回収流路CH1の替わりに設けられる流路である。ヘッド内回収流路CH1-H1とヘッド内回収流路CH1-H2とは、ヘッド導出口Qoutに接続される本流部分に夫々接続される。導入口Pin-Hは、ヘッド内供給流路SH1に接続される。
【0132】
図22では、第8変形例において、加圧排出動作後の循環動作におけるインクの流れを示す。図22に示すように、上流室UR-GのY軸に沿う方向の中央に設けられた導入口Pin-Hから供給されたインクは、上流室UR-HのY軸に沿う方向における両端部の夫々に設けられた導出口Pout-Hから排出される。更に、導入口Pin-Hから供給されたインクのうち、フィルター54oを介して下流室DR-Gに流入されるインクも、下流室DR-Gの両端部の夫々から上流室UR-Hを介して導出口Pout-Hから排出される。
【0133】
仮に、循環動作後に加圧排出動作を実行する態様では、循環動作によって加圧排出動作の前に導入口Pin-Hから夫々の導出口Pout-Hへのインクの流れが発生するため、図22に示す領域AR-H1及び領域AR-H2に気泡が滞留する虞がある。領域AR-H1は、梁部BR-G1に対してY2方向に位置し、且つ、梁部BR-G1とフィルター54oとに挟まれる領域である。領域AR-H2は、梁部BR-G2に対してY1方向に位置し、且つ、梁部BR-G2とフィルター54oとに挟まれる領域である。一方、第8変形例に係る液体噴射装置100-Hは、循環動作よりも先に加圧排出動作を実行することにより、循環動作による導入口Pin-Hから導出口Pout-H1又は導出口Pout-H2へのインクの流れが発生しないため、領域AR-H1及び領域AR-H2に気泡が滞留することを抑制できる。
【0134】
2-9.第9変形例
上述した各態様では、液体噴射ヘッド50を、X軸に沿う方向に往復同させるシリアル方式の液体噴射装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体噴射装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体噴射装置であってもよい。
【0135】
2-10.第10変形例
上述した第1実施形態では、循環機構15が1つのサブタンク151を含んでいたが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体噴射装置100の循環機構15は、サブタンク151の替わりに、供給流路SF1に接続されるとともに液体噴射ヘッド50に供給するためのインクを貯留する供給側タンクと、回収流路SC1に接続されるとともに液体噴射ヘッド50から回収したインクを貯留する回収側タンクと、供給側タンク内を加圧する加圧部と、回収側タンク内を減圧する減圧部と、供給側タンクと回収側タンクとを連通させる中継流路と、当該中継流路の途中に設けられ回収側タンクから供給側タンクへ中継流路を介してインクを移動させるための中継ポンプと、を含んでいてもよい。加圧部は、例えばコンプレッサーである。減圧部は、例えば真空ポンプである。このような循環機構15では、加圧部を駆動することで供給側タンクを正圧にし、減圧部を駆動することで回収側タンクを負圧にし、中継ポンプを駆動することで、供給側タンク、供給流路SF1、ヘッドチップ54、回収流路SC1、回収側タンク、中継流路、供給側タンクの順にインクを循環させる循環動作が可能である。また、このような構成においては、ポンプ159の替わりに当該加圧部によって供給流路SF1を加圧することで加圧排出動作を実行ようにしてもよい。本変形例において、供給側タンク及び回収側タンクは、「液体貯留部」の一例である。
【0136】
2-11.その他の変形例
上述の液体噴射装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【0137】
3.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0138】
好適な態様である態様1に係る液体噴射装置は、噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、前記上流室に液体を導入するための導入口と、前記上流室から液体を導出するための導出口と、液体を貯留可能な液体貯留部と、前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、を備え、前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する。
態様1に係る液体噴射装置は、下流室内の気泡を排出した後に循環動作を行うことにより、循環動作を実行した後に加圧排出動作を実行する態様と比較して、循環動作によって梁部とフィルターとに挟まれる領域に気泡が滞留することを抑制でき、循環動作後に下流室に気泡が残留する虞を低減できる。
【0139】
態様1の具体例である態様2において、前記回収流路を開放及び閉塞可能な開閉弁を更に備え、前記加圧排出動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を閉塞した状態で実行され、前記循環動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を開放した状態で実行される。
【0140】
態様1の具体例である態様3において、前記加圧排出動作は、前記供給流路及び前記回収流路を加圧することで、前記供給流路、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第1の流れと、前記回収流路の一部又は全部、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第2の流れと、を発生させる。
態様3に係る液体噴射装置は、態様1に係る液体噴射装置のように、加圧排出動作において第1の流れのみ共通液室内の気泡を排出する態様と比較して、共通液室内に残留する気泡の量を低減できる。
【0141】
態様1の具体例である態様4において、前記下流室の一部を画定するとともに前記フィルターを支持する流路形成部材を備え、前記梁部は、前記流路形成部材の一部であり、前記フィルターの一部は、前記梁部に支持される。
態様4に係る液体噴射装置は、フィルターが撓むことを抑制してフィルターを安定して支持できるとともに、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室に気泡が滞留することを抑制できる。
【0142】
態様1の具体例である態様5において、前記フィルターと前記梁部とは、前記噴射方向において隙間を空けて配置され、前記隙間の前記噴射方向における寸法は、前記梁部と前記下流室の底面との間の距離よりも短い。
態様5に係る液体噴射装置は、フィルターが撓むことを抑制してフィルターを安定して支持できるとともに、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室に気泡が滞留することを抑制できる。
【0143】
態様5の具体例である態様6において、前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向及び前記第1方向の双方に直交する第2方向における寸法よりも短い。
態様6に係る液体噴射装置は、隙間の噴射方向における寸法が梁部の第2方向の寸法より長い態様と比較して、流路形成部材の剛性が低下することを抑制しつつ、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室に気泡が滞留することを抑制できる。
【0144】
態様5の具体例である態様7において、前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向における寸法、及び、前記梁部の前記第1方向における寸法の夫々よりも短い。
態様7に係る液体噴射装置は、隙間の噴射方向における寸法が寸法BZより長い態様、及び、梁部の前記噴射方向における寸法が梁部の第1方向における寸法よりも長い態様と比較して、流路形成部材の剛性が低下することを抑制しつつ、循環動作の前に加圧排出動作を実行することにより、下流室に気泡が滞留することを抑制できる。
【0145】
態様1の具体例である態様8において、前記梁部は、前記噴射方向に見て、前記導入口と前記導出口との間に配置される。
【0146】
好適な態様である態様9に係る充填方法は、噴射方向へ液体を噴射する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通し、前記噴射方向に直交する第1方向に延在する共通液室と、前記共通液室を上流室と下流室とに区画するフィルターと、前記上流室に液体を導入するための導入口と、前記上流室から液体を導出するための導出口と、液体を貯留可能な液体貯留部と、前記導入口と前記液体貯留部とを連通させる供給流路と、前記導出口と前記液体貯留部とを連通させる回収流路と、を備える液体噴射装置の充填方法であって、前記下流室内には、前記下流室を画定する一対の内壁同士を接続する梁部が設けられ、前記一対の内壁同士は、前記噴射方向に見て前記第1方向に交差する方向に離間し、前記供給流路を加圧することで前記複数のノズルから液体を排出させる加圧排出動作と、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路を含む循環経路を、前記液体貯留部、前記供給流路、前記共通液室、前記回収流路、前記液体貯留部の順に液体を循環させる循環動作と、を実行可能であり、前記循環経路に液体を充填する充填処理は、前記加圧排出動作を実行した後に前記循環動作を実行する。
態様9によれば、態様1と同様の効果が得られる。
【0147】
態様9の具体例である態様10において、前記回収流路を開放及び閉塞可能な開閉弁を更に備え、前記加圧排出動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を閉塞した状態で実行され、前記循環動作は、前記開閉弁によって前記回収流路を開放した状態で実行される。
【0148】
態様9の具体例である態様11において、前記加圧排出動作は、前記供給流路及び前記回収流路を加圧することで、前記供給流路、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第1の流れと、前記回収流路の一部又は全部、前記共通液室、前記複数のノズルの順に液体が流れる第2の流れと、を発生させる。
態様11によれば、態様3と同様の効果が得られる。
【0149】
態様9の具体例である態様12において、前記下流室の一部を画定するとともに前記フィルターを支持する流路形成部材を備え、前記梁部は、前記流路形成部材の一部であり、前記フィルターの一部は、前記梁部に支持される。
態様12によれば、態様4と同様の効果が得られる。
【0150】
態様9の具体例である態様13において、前記フィルターと前記梁部とは、前記噴射方向において隙間を空けて配置され、前記隙間の前記噴射方向における寸法は、前記梁部と前記下流室の底面との間の距離よりも短い。
態様13によれば、態様5と同様の効果が得られる。
【0151】
態様13の具体例である態様14において、前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向及び前記第1方向の双方に直交する第2方向における寸法よりも短い。
態様14によれば、態様6と同様の効果が得られる。
【0152】
態様13の具体例である態様15において、前記隙間の前記噴射方向における前記寸法は、前記梁部の前記噴射方向における寸法、及び、前記梁部の前記第1方向における寸法の夫々よりも短い。
態様15によれば、態様7と同様の効果が得られる。
【0153】
態様9の具体例である態様16において、前記梁部は、前記噴射方向に見て、前記導入口と前記導出口との間に配置される。
【符号の説明】
【0154】
10…メインタンク、12…ポンプ、15…循環機構、16…開閉弁、20…制御モジュール、30…搬送機構、40…移動機構、41…支持体、41a…開口、41b…ネジ孔、42…搬送ベルト、50…液体噴射ヘッド、51…流路構造体、51a…流路部材、51b…接続管、51c…配線孔、52…基板ユニット、52a…回路基板、52b…コネクター、52c…支持板、53…ホルダー、53a…凹部、53c…配線孔、53d…凹部、53e…孔、53i,53k…ネジ孔、54,54-D…ヘッドチップ、54…ヘッドチップ、54a,54a-D,54a-G…流路形成部材、54b…圧力室基板、54c…ノズル板、54d…吸振体、54e…振動板、54f…圧電素子、54g…保護基板、54i…配線基板、54j…駆動回路、54k…枠体、54n,54n-G…ケース、54o…フィルター、55…固定板、55a…開口部、58…カバー、58a…貫通孔、58b…開口部、100,100-A,100-B,100-C,100-E,100-F,100-G,100-H…液体噴射装置、151…サブタンク、158,159…ポンプ、AR,AR-C,AR-G1,AR-G2,AR-H1,AR-H2…領域、BL…気泡、BP…バイパス流路、BR,BR-D,BR-G1,BR-G2…梁部、BX,BY,BZ…寸法、CB…圧力室、CF1…回収流路、CH1…ヘッド内回収流路、CH1…回収流路、CH1-H1,CH1-H2…ヘッド内回収流路、CJ1…装置内回収流路、CZ…寸法、Com…駆動信号、DM…搬送方向、DP…液滴、DR,DR-G…下流室、DR1,DR2…開口、DZ…距離、FN…ノズル面、FR…フィルター孔領域、GP…隙間、GV…重力方向、HF…水平面、KJ…循環経路、L1…第1ノズル列、L2…第2ノズル列、N…ノズル、Na…連通流路、PP…媒体、Pin,Pin-G,Pin-G1,Pin-G2,Pin-H…導入口、Pout,Pout-G,Pout-H,Pout-H1,Pout-H2…導出口、Qin…ヘッド導入口、Qout…ヘッド導出口、R,R-G,R-H…共通液室、Ra…接続流路、SB1,SB1-D,SB2…面、SF1…供給流路、SH1,SH1-G1,SH1-G2…ヘッド内供給流路、SI…制御信号、SJ1…装置内供給流路、SZ2…面、UR,UR-G,UR-H…上流室、Xa…接続流路、YDR1,YDR2,YDR3,YR1,YR2,YR3…範囲、h1,h21…開口、h23…フィルター孔、h41…開口、wDR…内壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図20
図21
図22